JP4961531B2 - 異種金属の接合方法及び接合構造 - Google Patents
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Description
このような異種金属の接触による腐食は、金属のイオン化傾向の違いによってこれら金属間に電位差が生じ、腐食電流が流れることによって発生するとされており、従来、異種金属接触による腐食を防止するために、以下のような対策が知られている。
また、特許文献2には、鉄系材料とアルミニウム又はアルミニウム合金材料が接合された部材をフルオロ錯イオン及び亜鉛イオンを含有する溶液中に浸漬して、接合部近傍に緻密かつ強固で密着性が高く、しかもアルミニウムと鉄との中間的なイオン化傾向を有する金属亜鉛を析出させ、もって接合部における異種金属接触耐食性を向上させることが記載されている。
また、特許文献2に記載の技術においては、接合された部材をフルオロ錯イオン及び亜鉛イオンを含有する溶液中に浸漬するようにしているが、接合材表面に析出した亜鉛だけでは、自動車部品に求められる耐食性能を十分に満足させることができないばかりでなく、自動車の生産工程の過程において、車体部品をこのような溶液中に浸漬する工程を組み込むことは、浸漬タンク等の新たな設備投資を必要とし、コストが増加することが問題となる。
また、本発明の異種金属の接合構造は、重ね合わせた異種金属材料の間に、接合予定部位を囲んでシール材を配置した状態で溶接して得られるものであって、接合部を囲んで凹部又は凸部が形成され、その周囲にシール材が介在していることを特徴とする。
この場合、シール材の塗布に際しては、被接合材の接合予定部位、つまり接合部が形成される位置を避けて塗布することが必要であり、シート状のシール材には、接合予定部位に相当する個所に貫通孔を予め形成しておくことが必要となる。
また、当該シール材に接着機能を有する材料を用いることによって、電食を防止するシール効果に加えて、接合強度を向上させることが可能となる。
なお、被接合材の接合予定部位に形成する凸部の形状としては、例えば円弧状に湾曲した面を備えていることが望ましく、これによって、接合面に介在する酸化皮膜や接合過程で生じる種々の反応生成物などの接合部からの排出性が向上し、高強度な接合部を得ることができる。
一方、上記した凹部又は凸部を隣接する複数の点状接合部の周囲を囲むように設けることもでき、この場合には、シール材によって複数の点接合部を纏めて外気と遮断することができることから、作業効率が向上することになる。
さらに、接合部の周囲に形成した凹部の接合部側の縁を接合面に対して略垂直に立ち上がり、接合部の内部にシール材が侵入していかない構造とすることができ、これによって接合後の接合界面にはシール材が残存せず、しかも接合部に近い位置にシール材を位置させることができるので、より高い防水、耐食性能を発揮することができ、強度低下の防止と優れた耐食性を両立することが可能となる。
また、次に述べるように、点接合には抵抗スポット溶接、線接合には抵抗シーム溶接といった接合工法を用いたが、接合工法に関してもこれらのみに限定される訳ではなく、このような重ね接合が実施可能な全ての接合工法を適用することができる。
図3(a)及び(b)に示すように、亜鉛めっき鋼板1の接合面側に、凹部3aを接合予定部位1aを囲むようなリング状に形成し、この凹部3aの内側を除く外側部分に、エポキシ樹脂系接着剤をシール材5としてを塗布した。
なお、この凹部3aの接合予定部位側の内側縁Wは、接合面に対してほぼ垂直に立ち上がっており、凹部3aの内側、すなわち接合予定部位1aの内部にシール材4が侵入していかない構造となっている。
そして、この場合、接合部6に近い側の縁Wが接合面に対して略垂直に立ち上がっていることから、シール材が侵入せず、接合後の接合界面にシール剤が残存することがなく、しかも、上記のように接合部6に近い位置にシール5を配置することができるので、より高い防水、耐食性能を発揮することができた。
これらの結果、接合界面におけるシール材残存による強度低下の防止と優れた耐食性を両立することができた。
図4(a)及び(b)に示すように、亜鉛めっき鋼板1の接合面側に、凹部3bを複数の接合予定部位1a(図では2個所)を囲むような矩形状に形成し、この凹部3bの内側を除く外側部分に、上記同様のシール材4を塗布した。
そして、これ以降は、上記実施例1と同様に、両材料1,2を接合予定部位1aにおいてスポット溶接したのち、凹部3bによる突出部を表面側から押し潰し、同様にシール材5を被接合材料1,2に密着させた。
図5(a)及び(b)に示すように、亜鉛めっき鋼板1の接合面側に、凹部3cを線状の接合予定部位1aに沿って、これを囲むような矩形状に形成し、この凹部3cの内側を除く外側部分に、上記同様のシール材4を塗布した。
そして、アルミニウム合金材2と重ねあわせ、図2に示した抵抗シーム溶接装置を用いて、両ローラ電極の間に400kgfの一定な加圧力を加え、30000Aの交流電流を通電しながら、1.8m/分の速度で、両材料1,2を接合予定部位1aにおいてシーム溶接したのち、形成された溶接線16(接合部)の周囲に突出した凹部3cの裏面側を矢印方向に押し潰しシール材5を両材料1,2に密着させた。
なお、上記凹部3cに換えて、図5(c)に示すように、接合面側に突出する凸部4cを線状の接合予定部位1aを囲む矩形状に形成しても同様の効果が得られることは、上記実施例1,2と全く同様である。
図6(a)及び(b)は、本発明の第4の実施例に関する説明図であって、ここでは、板厚0.8mmの亜鉛めっき鋼板から成るハット型断面部材1と、板厚1.0mmの6000系アルミニウム合金板材2とをシート状のシール材15を介してスポット溶接する例を示している。
次に、アルミニウム合金板材2の両端部に、シール材15を載置し、板材2の凸部2aがシール材15の貫通孔15aに嵌合するように位置合せをし、この上に亜鉛めっき鋼板部材1のフランジ部を重ねた。
当該実施例においては、シール材として接合予定部位に相当する箇所に貫通孔15aを備えたシート状のものを用いることによって、シール材の塗布工程が省略でき、しかも両材料間に挟み込むだけで、一度に多数の接合部に対して耐食機能を付与することができる。また、凸部2aによって、シート状シール材15の位置決めが容易にできるようになり、高い生産性のもとに、シール材残存による強度低下の防止と優れた耐食性を両立することができた。
なお、ここでは、アルミニウム合金板材2の接合面に凸部2aを設けた例を示したが、鋼材1の側や、これらの両方に凸部を設けても構わない。
実施例1で使用した亜鉛めっき鋼板1とアルミニウム合金板材2を用いて、接合面にシール材を塗布することなく、実施例1と同様の条件でスポット溶接した(比較例1)。
一方、上記亜鉛めっき鋼板1の接合予定部位をも含めた接合面全体にシール材5を塗布した状態で、同様の条件でスポット溶接し(比較例2)、これらを比較した。その結果を図7(a)及び(b)に示す。
これに対し、接合面全体にシール材5を塗布した状態で接合した場合には、水等の浸入を防ぎ、耐食性能は得られるものの、図7(b)に示すように、拡散反応層が部分的に形成されているに過ぎなく、接合界面にシール材5が残存しているため、接合強度が低下してしまい、これらの場合は共に、接合界面におけるシール材残存による強度低下の防止と、電食による耐食性劣化の防止の両立を実現することができない。表1に、これら比較例と、本発明の上記実施例1の性能を比較して示す。
1a 接合予定部位
2 アルミニウム合金材
2a 凸部
3a、3b、3c 凹部
4a、4b、4c 凸部
5、15 シール材
6、16 接合部
15a 貫通孔
Claims (6)
- 異種金属から成る材料を重ね接合するに際して、接合予定部位を囲繞する凹部又は凸部を両材料の少なくとも一方の接合面に形成すると共に、重ね合わせた両材料の間に、上記接合予定部位を囲んでシール材を配置した状態で溶接することを特徴とする異種金属の接合方法。
- 重ね合わせた異種金属材料の間に、接合予定部位を囲んでシール材を配置した状態で溶接して得られる接合構造であって、接合部が点状をなし、該点状接合部を囲んで凹部又は凸部が形成され、該凹部又は凸部の周囲にシール材が介在していることを特徴とする異種金属の接合構造。
- 重ね合わせた異種金属材料の間に、接合予定部位を囲んでシール材を配置した状態で溶接して得られる接合構造であって、接合部が点状をなし、複数の点状接合部を囲んで凹部又は凸部が形成され、該凹部又は凸部の周囲にシール材が介在していることを特徴とする異種金属の接合構造。
- 重ね合わせた異種金属材料の間に、接合予定部位を囲んでシール材を配置した状態で溶接して得られる接合構造であって、接合部が線状をなし、該線状接合部を囲んで凹部又は凸部が形成され、該凹部又は凸部の周囲にシール材が介在していることを特徴とする異種金属の接合構造。
- 上記凹部又は凸部が押し潰され、周囲のシール材が両材料に密着していることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つの項に記載の異種金属の接合構造。
- 接合部の周囲に凹部を備え、該凹部の接合部側の縁が接合面に対して略垂直に立ち上がっていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つの項に記載の異種金属の接合構造。
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