JP4958361B2 - タイヤのトレッドパターン - Google Patents
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Description
(技術分野)
本発明は、特にタイヤに設けられるトレッドに関し、より詳しくは、これらのトレッドのトレッドパターンに関する。また、本発明は、これらのトレッドを製造する金型に関する。
【0002】
(背景技術)
走行中にトレッドにより与えられるタイヤの路面グリップ性能を改善するため、トレッドにブロックやリブ等のレリーフ状モチーフを設けることは知られている。レリーフ状モチーフ自体には、タイヤと路面との間の接触領域での作用リッジ(active ridges)の数および長さを増大させるため、切開部が設けられている。「切開部(incision)」とは、トレッドの幅に比べて小さい幅をもつ溝を意味すると理解すべきである(例えば、重車両用タイヤでは、切開部は1.5mm以下の幅を有する)。これらの切開部がレリーフ状モチーフの厚さに実質的に等しい深さを有する場合には、接触している切開部の数が大きいほど、走行中の騒音の発生が増大することが判明している。
【0003】
タイヤの走行中に発生される騒音レベルを低下させるため、レリーフ状モチーフの深さに実質的に等しい切開部がタイヤのトレッドに設けられ、本件出願人は、切開部の個別的ブリッジングを行なうことを提案している(国際特許公開WO 98/35842参照)。公開された欧州特許出願EP 858875には、このようなブリッジングがなされた切開部が設けられたトレッドを形成するための金型が開示されており、この金型は、走行中に路面と接触するためのトレッドの外方面を成形する第一金型部分および内方面を成形する第二金型部分の2つの部分からなる。成形形態において、第一金型部分の成形要素は、第二金型部分の成形要素と協働して1つの同一の成形要素を形成するように、かつ少なくとも1つの連結ブリッジを成形すべく成形中にゴム配合物が通ることを許容する少なくとも1つのオリフィスを形成するように機能的に構成されている。この金型は、非常に優れた騒音結果が得られる連結ブリッジが設けられた切開部および溝を有するトレッドパターンを有効に形成できるが、コストが嵩みかつ使用が困難である。前記成形要素を協働させるには、成形要素を、両金型部分の各々に充分に正確に位置決めすることが肝要である。
【0004】
また、例えば英国特許出願GB 511,271に開示されているように、新しいときにはトレッドの走行面に開口しておりかつトレッドのレリーフ状モチーフの高さの約1/2の均一深さを有している切開部で形成された第一連の切開部と、新しいときにトレッドの走行面に開口していない切開部で形成された第二連の切開部とを有するトレッドを形成することは知られている。トレッドが部分的に摩耗(トレッドの厚さの極く一部についてトレッドに影響を与える摩耗)した後でも優れたグリップ性能を維持するため、第二連の切開部が新しい走行面に現われて、少なくとも初期性能に等しい湿路面上のグリップ性能をトレッドに付与する。部分的摩耗後に走行面に現われるこれらの第二連の切開部自体は、トレッドの厚さの極く一部に存在するか、残余の厚さにも存在することがある。これらの第二連の切開部は第一連の切開部に対して長手方向にオフセットしており、第一連の切開部が完全に見えなくなる前でも走行面に現われることができる。
【0005】
この英国特許出願に開示されているようなトレッドパターンが設けられたトレッドは、レリーフ状モチーフの全厚に亘って形成された切開部が設けられた同じトレッドに比べて優れた騒音性能を有することが注目されているが、得られる性能レベルは、切開部の主壁を連結する複数の連結ブリッジが設けられた1つの同じトレッドパターンに比べて遥かに劣っている。
【0006】
(発明の開示)
トレッドの摩耗レベルの如何に係わらず満足できるグリップ性能が得られ、かつこのようなトレッドが設けられたタイヤが新しいときでも摩耗したときでも走行中の騒音発生を最小にできると同時に、実施が容易かつ経済的な成形方法により製造できるトレッドパターンを得ることが要望されている。
【0007】
上記目的を達成するため、全厚Eを有する本発明によるトレッドは、Eより小さい深さPを有しかつ最大でも厚さEに等しい厚さを有するレリーフ状モチーフを形成する溝を有し、少なくとも1つのこれらのレリーフ状モチーフには第一および第二切開部が設けられ、各切開部は一端面が連結された2つの主側面により形成され、各第一切開部は新しいときのトレッドの走行面に開口し、各第二切開部は全体が新しいときの走行面の下にありかつトレッドの走行面から少なくとも深さPまで延びている。
【0008】
本発明のトレッドは、下記構成、すなわち、
各第一切開部は、新しいときに、新しいときの前記走行面と、前記第一切開部の最大深さP1Mの最大でも80%に等しい最小深さP1mとの間の走行面に平行な任意の面上の連続的な軌跡を有し、前記両深さは新しいときの走行面に垂直に測定されたものであり、この連続的な軌跡は、新しいときの走行面上の同じ第一切開部のトレースの長さL0の少なくとも75%に等しく、
各第一切開部の底を形成する端面は最小深さP1mと最大深さP1Mとの間に延びており、新しいときの走行面に平行な任意の表面上でP1mとP1Mとの間の距離に位置にあるこの第一切開部の軌跡の全長は徐々に減少して深さP1MでL1Mに等しくなり、この長さL1Mは、最大でも、深さP1mでのこの切開部の軌跡の長さL1mの75%に等しく、
各第二切開部は、第二切開部の頂部を形成する端面を有し、該端面は前記切開部の主壁を連結しかつ新しいときの走行面に最も接近して配置された切開部の表面に一致しかつ最小深さP2mと最大深さP2Mとの間で延びており、P2mはP2Mより小さく、これらの深さは新しいときの走行面に対して測定されたものであり、
各第一切開部は、対象とするレリーフのモチーフについておよび路面とのタイヤの接触ゾーンにおいて、トレッドの摩耗レベルの如何に係わらず、走行面上での第一切開部および第二切開部の合計の軌跡の長さが、トレッドが新しいときに地面と接触する第一切開部のトレースの長さの75%より大きくなるように、少なくとも1つの第二切開部と関連していることに特徴を有する。
【0009】
「対象とする摩耗状態の走行面に開口する切開部の軌跡の長さ」とは、前記切開部の各主壁と前記走行面との交差により形成される1つのリッジに沿って測定される平均長さを意味すると理解されたい。
【0010】
切開部の底部での長さL1Mは、最大でも、深さP1mでのこの切開部の軌跡の長さL1mの1/2に等しいことが好ましい。
【0011】
同時に、本発明によるトレッドパターンは、充分な長さのリッジの存在により、摩耗レベルの如何に係わらず、満足できるレベルの路面グリップを得ることができる。リッジは、新しいときは第一切開部により形成され、部分的摩耗の後は第二切開部によりされ、走行中に低レベルの騒音が得られる。重要なことは、P1mとP1Mとの間の各第一切開部の長さが実質的に減少すること、および組合せにおいて、少なくとも1つの第二切開部がこの長さ減少を補償するためのオーバーラップ領域を得ることである。
【0012】
各第二切開部は、P2mとP2Mとの間で徐々に増大する、新しいときに走行面に平行な任意の表面上にその長さを有し、増大量はこれと機能的に配置された第一切開部の長さの減少量に比例することが好ましい。深さP2mでの各第二切開部のトレースの長さL2Mは、例えば、深さP2Mでの同じ切開部の長さL2Mの1/2より小さい。
【0013】
第一切開部と第二切開部との間に有効移行部を形成するためには、これらの切開部が次の関係を満たすことが好ましい。
P1m≦P2m≦P1M
また、これらの同じ第二切開部が次の関係を満たすことが好ましい。
P1m≦P2M≦P1M
この関係を満たすときには、第一切開部と第二切開部とが部分的にオーバーラップする。
【0014】
第一切開部が次の関係を満たすとき、最適な性能が得られる。
P1M−P1m≧E/5および
0.40×E≦P1M+P1m≦0.6×E
ここで、Eは、走行中に使用される全厚に実質的に等しいトレッドの厚さを表す。
【0015】
これらの値範囲との組合せにおいて、第二切開部は次の関係を満たすことが好ましい。
P2M−P2m≧E/5および
0.40×E≦P2M+P2m≦0.60×E
第一および第二切開部の端面(底面および頂面)の幾何学的形状は複数の波を形成することが好ましい。ここで、「波(undulation)」とは、破断面の連続により形成された湾曲形状または幾何学的形状(すなわち、異なる傾斜面をもつ表面)または湾曲面と破断面との組合せを意味するものと理解されたい。これらの波は、トレッドの厚さの方向およびこの厚さに垂直な方向の両方向に組み合わされる。
【0016】
本件出願人はまた、第二切開部の方向とは異なる断面方向をもつ第一切開部を形成することにより走行騒音が更に低減されることに注目した(第一方向は新しいときのトレッドの走行面に実質的に垂直であるのが好ましい)。
【0017】
また本発明は、側面により連結された主外方面および内方面を備えたトレッドを成形するための金型に関する。このトレッドは第一および第二切開部を有し、第一切開部は新しいときのトレッドの走行面を形成する外方面に開口し、第二切開部は新しいときの走行面には開口せず、内方面に開口する。
【0018】
この目的のため、ゴムトレッドを成形する金型が提案され、この金型は上方ダイおよび下方ダイを有し、各ダイにはトレッドの上面および下面をそれぞれ成形する成形面が設けられ、前記ダイは、金型が閉位置にあるときに、ゴムトレッドの体積に等しい内部成形体積を形成し、上下の各ダイはこれらの成形面から突出している少なくとも1つの板(lamella)を有し、該板は、外方面および内方面の一方のみに開口する少なくとも1つの切開部をゴムトレッド内に形成し、前記板には側面と、該側面を連結する端面とが設けられ、上方ダイの1つの板には、前記一方の板の1つの面に実質的に垂直な方向で測定してオフセットdを形成するように下方ダイの少なくとも1つの他の板が配置される。
【0019】
この金型は、上方ダイおよび下方ダイの板の端面が、最小深さP1m,P2mおよび最大深さP1M、P2Mをそれぞれ通る幾何学的形状を有し、前記最小深さおよび最大深さは金型の閉位置における上方ダイの成形面に対して測定され、P2Mは次の関係、すなわち、
P1m<P2M<P1M
を満たす特徴を有している。
【0020】
また、本発明による金型はP1m<P2m<P1Mの関係を満たし、この場合には、上方ダイの板と下方ダイの板とのオーバーラップが、上記のような金型で成形されるトレッドの騒音性能に対して好ましいゾーン内に位置する。
【0021】
1つの同じレリーフ状モチーフに、新しいときのトレッドの走行面に開口する複数の第一切開部を設ける場合には、第一切開部は実質的に規則的なピッチpで配置される。この場合に、符号dが2つの切開部間の平均距離を表すものとすると、第一切開部と第二切開部との間のこの距離dは、ピッチpの値の0.15〜1.5倍であるのが好ましい。
【0022】
上記トレッド金型は、平らで非連続的なトレッドまたはリング状トレッドの成形に使用できる。また、この金型は、トレッドのレリーフのモチーフを形成する溝を成形するための1つ以上の他の成形要素を、その上方ダイに設けることができる。
もちろん、本発明による金型を使用して、本願に説明する他の実施形態のトレッドを製造することもできる。
【0023】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明の他の特徴および長所は、本発明の要旨である金型およびトレッドパターンの実施形態を非制限的な形態で示す添付図面を参照して以下に述べる説明から明らかになるであろう。
【0024】
図1には、トレッドの成形形状を有する本発明による金型が示されている。この図1では、金型10は上方金型部分101および下方金型部分102を有し、各部分には、トレッドの外方面および内方面を成形するためのそれぞれの成形面103および104が設けられている(外方面が走行面に一致する)。金型の上方部分101には複数の第一板1が固定されており、該第一板1は、新しいときにトレッドの走行面に開口する切開部を成形すべく、この上方部分101の成形面103から突出している。図1に示す板1は平らな形状を有しかつ深さP1mまで一定の幅を有している。また、板1は端部11を有し、該端部11の母線は、図1の平面内で、2つの部分12、13からなる軌跡(trace)を有する。これらの部分12、13は実質的に直線でありかつ同平面上での成形面103の軌跡に対して平行である。また、これらの2つの部分12、13は、成形面103の方向に延びている湾曲部分14を介して連結されている。板1の端部11は、最小距離P1mと、この板1により成形される切開部の最大深さに一致する最大距離P1Mとを通る。距離P1mは距離P1Mの実質的に1/2に等しく、一方、距離P1Mは、上下の金型部分101、102の成形面間の距離Eの実質的に1/2に等しい(距離P1mおよび距離P1Mは、成形面103に対して測定したものである)。この構成により、板1は、成形後のトレッドの走行面に対して切開部の底が一定の同深さにない構成をもつ切開部の成形を行なうことができる。板1は、成形面103に対して平行な面上での切開部の軌跡が、2つの不連続な軌跡を有しかつ新しいときに走行面上での同じ切開部の長さの実質的に75%に等しい構成の切開部を成形する。
【0025】
第一連の板との組合せにおいて、第二板2が金型10の下方部分102に固定されかつ該部分102の成形面104から突出しており、トレッドの内方面に開口する切開部を成形する。図示の板2は平らな形状を有しかつ端壁21により境界が定められている。図2の平面内での端壁21のトレースは実質的に直線状の2つの部分22、23を有し、これらの部分は、金型の下方部分102の成形面104に対して垂直な方向に前記2つの部分22、23を超えて延びている部分24により連結されている。この板2は、成形されたトレッドの内方面にのみ開口する切開部を成形するためのものである。板2の端部21のトレースは最小距離P2mおよび最大距離P2Mを通り、この実施形態では、これらの距離P2m、P2Mは、上下の金型部分101、102の成形面間の距離Eより小さい。
【0026】
外方部分101の板1と内方部分102の板2との間には幾つかのオーバーラップ領域が形成されており、このため、この金型で成形されたトレッドが充分に摩耗すると、第一板1および第二板2により成形された切開部は走行面に開口する。また、これらの板は次の3つの関係を満足する。
P1m<P2m<P1M
P1m<P2M<P1M
P2M≒E/2
【0027】
図1の同じ金型のII−II線およびIII−III線に沿う断面図である図2および図3から明らかなように、この実施形態での第一板1および第二板2の各々は、それぞれ、下方部分および上方部分の各成形面に対して実質的に垂直である。板1および板2は、これらの板の厚さに実質的に等しい距離dだけ互いに間隔を隔てている。第一板および第二板により成形された切開部が全く結合しないようにするため、第一板と第二板との間の距離dは、ゼロより大きくするのが好ましい(ここで、「結合」とは、切開部の体積が連続することを意味すると理解すべきである)。
【0028】
ここに説明する例では、第一板および第二板の各々は全体として平らな形状を有するが、全体として湾曲した形状の板を使用すること、および平らな形状の第一板および複数の波を備えた波型状の第二板を使用することもできる(或いはこの逆も可能である)。
【0029】
図4には、本発明による金型10′の他の形態が成形態様で示されており、該金型10′は、上方金型部分101′および下方金型部分102′を有し、これらの両金型部分は厚さEの成形空間を形成する。上方金型部分101′には全体として平らな形状の第一板1′が支持され、該第一板1′は、図4のV−V線に沿う断面図である図5に示すように、金型の成形面103′に対して90°以外の角度αを形成している。この板1′は新しいトレッドの走行面に開口する第一切開部を成形するためのものであり、走行面に対して実質的に平行な部分12′で形成された端部11′を有し、部分12′は走行面に対して傾斜した部分13′により延長されている。図4の平面上のこの端面のトレース11′は、最小距離P1mおよび最大距離P1Mを通る。
【0030】
内方金型部分102′には、第一板1′と組み合わされる、第一板1′と同じ厚さの平らな第二板2′が支持されている。第二板2′には、該第二板により成形される切開部の頂部を形成する端面21′が設けられており、該端面21′の軌跡21′は直線で、かつ最小距離P2mと最大距離P2Mとの間で外方部分の成形面に対して傾斜している。
【0031】
図6には、図1に関連して説明した金型により成形されたゴムブロックが示されている。このブロック6には3つの切開部64、65、66が設けられており、これらの全ての切開部はブロック6の2つの側面62、63に開口している。中間切開部64は、新しいときにブロック6の走行面61に開口しておりかつ前記走行面に対して測定して最大でもP2Mに等しい深さに亘って延びている。中間切開部64の両側には、該切開部64と組み合わされる切開部65、66が成形されており、該切開部65、66は成形されたトレッドの内方面に開口している。また、中間切開部とオーバーラップする領域を備えているという長所を有しており、これにより、いかなる摩耗レベルでもおよびトレッドの摩耗により中間切開部が徐々に見えなくなっても、走行面上に或る長さ(新ときのリッジの長さの実質的に2倍の長さ)のリッジを維持できる。
【0032】
図7は本発明による金型70の一例を示す部分図であり、この金型70は、上方金型部分701に取り付けられた第一板71と、下方金型部分702に取り付けられた第二板72とを有している。この図面の平面内で、第一板71は、実質的に同じ振幅をもつ3つの波で形成された端面74を有し、この端面74は、金型部分701の成形面に対して測定した最大深さP71Mと最小深さP71mとの間で延びている(最小深さP71mは、最大深さP71Mの80%に等しい)。板71は上方金型部分701の成形面の幅L0を有し、この幅L0は、新しいときにトレッドの走行面上でこの板により成形される切開部のトレースの長さに等しい。深さP71mで、切開部の軌跡は連続しており、この連続的な軌跡の長さL1mはL0の実質的に80%に等しい。
【0033】
板72は3つの波を備えた端面73を有し、中央の波は他の2つの波より振幅が大きい。この端面73は、金型部分701の成形面に対して測定した最大深さP72Mと最小深さP72mとの間で延びている。これらの2つの板71、72はトレッドの長手方向にオフセットされており(図7のVIII−VIII線に沿う断面を示す図8参照)、部分的摩耗の後に第一切開部がトレッドの走行面から消失し始めると、第二切開部が徐々に現われ始めて、走行面が永久的に新しいときのリッジの長さの少なくとも75%に等しいリッジの長さを有するように成形されるようになっている。
【0034】
図8は、金型70の部分断面図であり、第一板71を支持する上方部分701および第二板72を支持する下方部分702が、互いに長手方向にオフセットしているところを示すものである。第一板と第二板との間に設けられる空間は、第一および第二板により成形される切開部が設けられたレリーフ状モチーフの最も均質な剛性および操作が得られるように、2つの第一板の間の距離の1/2に実質的に等しい。第一板71は上方部分701の成形面に対して垂直であるのに対し、第二板72はこの成形面に対して垂直にならないように傾斜している。
【0035】
本件出願人は、315/80R22.5の寸法をもつタイヤについて比較走行試験を行なった。
・新しいときにトレッドの走行面に開口する、レリーフ状モチーフの全高に亘って配置されたトレッドパターンを有するコントロールT1
・同一切開部が設けられたトレッドパターンであって、前記切開部自体にこれらの対向壁を連結する複数の連結ブリッジが設けられているトレッドパターンを有するコントロールT2
・レリーフ状モチーフが同分布であり、各モチーフには第一および第二切開部が設けられている(図9参照)本発明によるタイヤ(符号Aで示す)
これらの種々のタイヤは、ISOトラック上で走行する重車両について走行試験を行ない、トルクを受けて走行する間にタイヤが発生する騒音を、ISO 362試験手順に従って測定した。
【0036】
図9には、タイヤAに設けられる本発明によるトレッドのレリーフ状モチーフが新しいときの走行面が示されている。レリーフのこのモチーフは5つの切開部を有し、これらのうちの2つの切開部は、両方とも、前記走行面に開口しかつ前記レリーフ状モチーフの2つの側壁に開口している。これらの2つの第一切開部は、最小深さと、前記レリーフ状モチーフの厚さの1/2に実質的に等しい最大深さとの間で徐々に消失する。また、他の3つの切開部はレリーフ状モチーフの長手方向に規則的間隔で設けられており、これらの3つの切開部には2つの第一切開部が介在され、レリーフ状モチーフが摩耗すると前記第一切開部と連続する。
このタイヤAについて、本件出願人は、E=16mm、P1m=5mm、P1M=10mm、P2m=8mm、P2M=10mmを得た。
【0037】
第一切開部と第二切開部との長手方向距離d=7.5mmであり、第一切開部および第二切開部を成形する板の厚さは1mmである。
下記表には、コントロールT1に対して得られた偏差が要約されている。測定は新しいときのタイヤについて行なった。
【表1】
正の値は性能低下を示し、一方、負の値は走行中に発生される騒音に関して優れた性能を有することを示す。
【0038】
本発明によるトレッドパターンは、コスト高の金型を必要とするタイヤにより得られる利得に等しくはないが、コントロールT1に比べて非常に大きい利得を達成できることに留意されたい。最後に、騒音に関するこの利得は、このようなトレッドパターンが設けられたトレッド有するタイヤの全使用期間に亘って維持されることを指摘しておく。
【0039】
図10には、ゴムブロック80が断面図で示されている。ブロック80は2つの第一切開部82、83を有し、該切開部はブロック80の走行面に開口しかつブロックの厚さEの一部に延びている。これらの第一切開部82、83は1つの同じ幾何学的形状を有し、ブロック80が摩耗するにつれて、最小深さP1mと最大深さP1Mとの間で徐々に消失するようになっている。これらの各第一切開部との組合せにおいて、2つの第二切開部84、85および86、87が成形されており、これらの第二切開部は、タイヤが新しいときはブロックの走行面に開口していない。各第二切開部は、新しいときは全部が走行面の下に配置されており、最小深さと最大深さとの間で徐々に現われるようになっている。より詳しくは、ブロック80が摩耗するにつれて、両第一切開部82、83の間に配置された第二切開部85、86が走行面に現われ、その後第一切開部82、83が完全に消失する前に、今度は第二切開部84、87が現われる。
【0040】
図11は図10のブロック80のXI−XI平面に沿う断面図であり、この図11の左側にはブロックの第一摩耗レベルで得られる状態が示され、実際に、切開部82は徐々に消失し始めており、新しい走行面での切開部82の軌跡は不連続である。一方、切開部86が現われており、その不連続な軌跡は平均距離d1だけ隔たっている。図11の右側部分には、同じブロックの第一摩耗レベルの後の第二摩耗レベルで得られる状態が示されている。この状態では、第一切開部83を包囲する2つの第二切開部84、85が現われており、一方、この走行面での第一切開部83のトレースは、第一摩耗レベルで考察された軌跡に比べて短くなっている。
【0041】
この実施形態は多くの長所を有している。すなわち、ブロック80の1回のみの最小摩耗で活動する多数の第二切開部を利用できるという事実により、半摩耗切開部からの距離d1、d2の如何に係わらずブロックの可撓性を増大させることができ、グリップに関して大きい利得が得られる。
【0042】
図12には、重車両用タイヤの周方向に配置されかつ実質的に周方向の溝5′により形成された5列のブロックを有する本発明のトレッドの表面が部分的に示されている。中央列および中間列の各ブロック51、52、53は、新しいときに2つの切開部55を有し、これらの切開部55はブロックの走行面および側壁に開口している。トレッドの部分的摩耗が生じた後に現われるように設けられた3つの隣接切開部56の軌跡が破線で示されている。新しいときの走行面の第一切開部57の軌跡の初期形状が異なっている点を除き、トレッドの両側列のブロック53、54にも同じ構造が再現されている。
【0043】
本願に示した全ての実施形態において、新しいときに走行面に開口している第一切開部であって、該切開部の底部近くに実質的な幅広部分を有し、これにより走行面の下の第二切開部との連通を引き起こし、従って付加走行騒音を生じさせる原因となる第一切開部の底部の破断の問題を防止できる第一切開部を設けるのが有効である。同様に、第一切開部は、捕捉された空気を側方から排出できるように最小深さP1mまでレリーフ状モチーフの両側面に開口していて、走行騒音を更に低減できるように構成するのが有効である(同じ目的で、第二切開部も同じレリーフ状モチーフの側面に開口させることができる)。
上記説明の例は、より複雑な幾何学的形状を有する切開部、より詳しくは相対移動時に切開部の主壁を閉塞する手段を備えた切開部にも容易に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による金型を示す部分図である。
【図2】 図1の金型のII−II線に沿う断面図である。
【図3】 図1の金型のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】 本発明による金型の変更形態を示す部分図である。
【図5】 図4の金型のV−V線に沿う断面図である。
【図6】 図1に示した金型により成形した切開部が設けられたトレッドパターンのゴムブロックを示す概略図である。
【図7】 板(その端部プロファイルは波型である)を有する本発明による金型の変更形態を示す図面である。
【図8】 図7の金型のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】 図7の金型により成形された本発明による第一切開部および第二切開部が設けられたトレッドパターンのゴムブロックの表面を示す図面である。
【図10】 本発明によるトレッドパターンブロックの変更形態を示す長手方向断面図である。
【図11】 図10に示したブロックのXI−XIに沿う断面図である。
【図12】 本発明によるトレッドパターンを示す平面図である。
Claims (11)
- 最大でも、少なくとも2つの側面が設けられたレリーフ状モチーフ(50、51、52、53、54)を形成する厚さEに等しい深さPをもつ溝(5′)を有し、これらのレリーフ状モチーフのうち少なくとも1つのレリーフ状モチーフには第一および第二切開部(55、56、57)が設けられ、各切開部は一端面により連結された2つの主側面により形成され、新しいときに第一切開部(55、57)の各々が該第一切開部を備えるレリーフ状モチーフの2つの側面およびトレッドの走行面に開口しており、各第二切開部(56)がトレッドの走行面から少なくとも深さPまで延びている構成を有する全厚Eのトレッドにおいて、
最大深さP1Mの各第一切開部(55、57)は、新しいときに、新しいときの前記走行面と、前記第一切開部の最大深さP1Mの最大でも80%に等しい最小深さP1mとの間の走行面に平行な任意の面上の連続的な軌跡を有し、前記両深さは新しいときの走行面に垂直に測定されたものであり、この連続的な軌跡は、新しいときの走行面上の同じ第一切開部の軌跡の長さL0の少なくとも75%に等しく、
各第一切開部(55、57)の底を形成する端面は最小深さP1mと最大深さP1Mとの間に延びており、新しいときの走行面に平行な任意の表面上でP1mとP1Mとの間の距離に位置にあるこの第一切開部の軌跡の全長は徐々に減少して深さP1MでL1Mに等しくなり、この長さL1Mは、最大でも、深さP1mでのこの切開部の軌跡の長さL1mの75%に等しく、
各第二切開部(56)は、第二切開部の頂部を形成する端面を有し、該端面は前記切開部の主壁を連結しかつ新しいときの走行面に最も接近して配置された切開部の表面に一致しかつ最小深さP2mと最大深さP2Mとの間で延びており、P2mはP2Mより小さく、これらの深さは新しいときの走行面に対して測定されたものであり、
各第一切開部(55)は、対象とするレリーフ状モチーフについておよび路面とのタイヤの接触ゾーンにおいて、トレッドの摩耗レベルの如何に係わらず、走行面上での第一切開部および第二切開部の合計の軌跡の長さが、トレッドが新しいときに地面と接触する第一切開部の軌跡の長さの75%より大きくなるように、少なくとも1つの第二切開部(56)と関連していることを特徴とするトレッド。 - 前記長さL1Mは最大でも長さL1mの50%に等しいことを特徴とする請求項1記載のトレッド。
- 前記第二切開部(56)は、新しいときの走行面から距離P2mに位置する、新しいときの走行面に平行な表面上の前記切開部の軌跡が、距離P2Mに位置する表面上の同じ切開部の軌跡の長さより小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のトレッド。
- 前記第一切開部(55、57)は、
P1M−P1m≧E/5および
0.40×E≦P1M+P1m≦0.60×E
の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のトレッド。 - 前記第二切開部(56)は、
P2M−P2m≧E/5および
0.40×E≦P2M+P2m≦0.60×E
の関係を満たすことを特徴とする請求項4記載のトレッド。 - 前記第一切開部および第二切開部は、
P1m<P2m<P1Mおよび
P1m<P2M<P1M
の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のトレッド。 - 少なくとも1つの前記第二切開部が、新しい走行面に対して90°以外の傾斜を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のトレッド。
- 前記第一および第二切開部は、走行面上での切開部の軌跡の長さ方向に延びている複数の波をもつ端面を有していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のトレッド。
- 新しいときに走行面に開口しない第二切開部(56)の数は、走行面に開口する第一切開部(55)の数より大きいことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のトレッド。
- 前記第一切開部は最小深さP1mまでレリーフ状モチーフの2つの側面に開口していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載のトレッド。
- 重車両の車軸に取り付けられる、請求項1〜10のいずれか1項記載のトレッドを有することを特徴とするタイヤ。
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