JP4957230B2 - 位相差フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、優れた透明性、耐熱性、溶融成形加工性、低吸水性および低誘電率などの特性を示す環状オレフィン系付加共重合体からなる位相差フィルムに関する。
光学材料用途に用いられる透明樹脂としては、たとえば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂などが知られているが、これらの樹脂では原料樹脂の光弾性係数が大きいために、微小な応力変化により位相差が発現したり、位相差値が変化したりしてしまう。また、トリアセチルアセテートなどのアセテート系樹脂フィルムは、光弾性係数が比較的低いものの、ポリアリレート樹脂またはポリエーテルサルホン樹脂などと同様、耐熱性、吸水性および透明性などの特性が十分ではなかった。
一方、透明性および耐熱性に優れた樹脂として、環状オレフィン系化合物の開環重合体の水素添加物または付加重合体が数多く提案されている。これらは主鎖が脂環式炭化水素によって構成されているため、芳香族系樹脂と比較して短波長領域での吸収が小さいことからも有用である。
環状オレフィン系開環重合体およびその水素添加物は、光学フィルムを製造するための光学材料として有用であるとして多数提案されており(たとえば、特許文献1〜4参照)、これらに開示された環状オレフィン系開環(共)重合体およびその水素添加物は、耐熱性、低吸水(湿)性および透明性などの光学特性に優れ、さらに射出成形などの成形性にも優れている。また、分子内に極性基を導入した環状オレフィン系単量体の開環重合体およびその水素添加物なども提案されており(たとえば、特許文献5〜7参照)、耐熱性、光学特性、成形性および他素材との親和性に優れ、さらに接着後の加工性にも優れることが記載されている。しかしながら環状オレフィン系開環重合体は重合反応後の主鎖に二重結合を含むため、耐熱劣化性を向上させるには水素添加工程が必要であり、工業的生産性および経済性の点で問題を残している。
一方、環状オレフィン化合物を付加重合することにより、耐熱性および透明性に優れた樹脂が得られることが知られている。また重合反応後、主鎖に二重結合が存在しないため耐熱劣化性に優れ、水素添加不要であることから工業的生産性および経済性の点でも優れている。
環状オレフィン化合物の付加重合体の例としては、環状オレフィン系化合物とα−オレフィンとの付加共重合体が数多く報告されている(たとえば、特許文献8,9参照)。し
かし、それらの共重合体においてはエチレンなどのα−オレフィンに由来する構造単位の連鎖が結晶化する場合があり、透明性が低下するなど、光学材料に用いるには必ずしも十分ではない。また、環状オレフィンとα−オレフィンとの重合反応性に大きな差がある共重合体の組成に分布が生じ、透明性が低下する場合がある。
一方、環状オレフィン系化合物に由来する構造単位のみから形成される環状オレフィン系付加重合体は、チタニウム触媒、ジルコニウム触媒、コバルト触媒、ニッケル触媒およびパラジウム触媒などを用いて製造でき、非常に優れた耐熱性および透明性を示す樹脂であることが知られている。ここで、用いる触媒の選択により生成する重合体の立体規則性(アタクティック/erythro−ジシンジオタクティック/erythro−ジアイソタクティックなど)、付加重合の様式(2,3位での付加および2,7位での付加)および分子量の制御性などが異なることがこれまでに知られている。たとえば、ジルコニウ
ム系メタロセン触媒を用いて重合されたノルボルネン重合体は不融で、一般的な溶媒に対し不溶であることが報告されている(非特許文献1参照)。また、ニッケル系触媒を用いて重合されたノルボルネンの付加重合体はシクロヘキサンなどの炭化水素溶媒に対して良好な溶解性を示す(特許文献10参照)が、機械強度に劣り脆いことが報告されている(特許文献11参照)。
それに対し、パラジウム化合物を含む特定の触媒を用いて重合された環状オレフィン系付加重合体は、高い重合活性を示すとともに優れた透明性、耐熱性および機械的強度を有することが報告されている(特許文献11〜13参照)。また、特許文献14には、加水分解性シリル基含有環状オレフィンを有し、パラジウム化合物を含む触媒を用いて得られる環状オレフィン共重合体が優れた耐熱性および寸法安定性を示すことが開示されている。しかしながらこれらに記載される付加重合体は非常に高い耐熱性を示す反面、熱溶融成形が不可能であり、成形方法は溶液流延法(キャスト法)に限定される。キャスト法は多量の溶媒を用いる上に、その溶媒の除去および回収工程が必要であるため、設備が大型化し、生産性が低く、高コストであるなどの工業的な問題がある。
環状オレフィン系付加重合体の溶融成形を可能とするために、ガラス転移温度を低下させるべく、アルキル置換基を有する環状オレフィン化合物を単量体として用いることが提案されている。たとえば、特許文献15には、5−ヘキシル−2−ノルボルネンを用いた付加型共重合体が記載されている。また、特許文献10および非特許文献2には、長鎖アルキル基を有するノルボルネンを単量体として用い、その鎖長や割合によって付加共重合体のガラス転移温度をコントロールできることが記載されている。しかし、これらの先行技術文献には、得られる成形体の機械強度に対する重合触媒の影響は記載されていない。また、これらにおいて用いられている重合触媒は、その活性において満足のいくものではなく、反応後に残留する未反応単量体および触媒を除去する工程を必要とする。
さらには、長鎖アルキル基を有する環状オレフィンはノルボルネンと比較して重合反応性が低いため、両者の共重合の際に共重合体の組成に分布が生じるが、前記特許文献15、特許文献10および非特許文献2においては、単量体の反応性の差および組成分布については言及していない。転化率が高い場合にその分布は顕著となり、得られる成形体の透明性および強度が損なわれることがあるため、高転化率および高透明性の両立が課題となる。すなわち、経済性および生産性に優れ、良好な耐熱性および溶融成形加工性を示し、高い転化率における高透明性を獲得した環状オレフィン共重合体からなる光学フィルムの製造方法が望まれるにもかかわらず、現在までに報告されていない。
特開平1−168725号公報 特開平2−102221号公報 特開平2−133413号公報 特開平4−170425号公報 特開昭50−111200号公報 特開平9−324036号公報 特開平10−251342号公報 特開昭61−292601号公報 米国特許第2,883,372号明細書 特表平9−508649号公報 特開2006−52347号公報 特開2005−162990号公報 特開2005−213435号公報 特開2005−48060号公報 特開平8−198919号公報 Makromol. Chem. Macromol. Symp., Vol.47, 831 (1991) Proc. Am. Chem. Soc. Div. Polym. Mater.: Sci. Eng. Vol. 75, 56 (1997)
本発明は、上記の課題を解決するものであり、溶融成形加工性ならびに優れた透明性、耐熱性、低吸水性および低誘電率などの特性を示す環状オレフィン系付加共重合体を主成分とするフィルムを延伸してなる位相差フィルムを提供することを目的とする。
本発明の位相差フィルムは、下記式(1)で表される構造単位(1)、および、下記式(2)で表される構造単位(2)を含有する環状オレフィン系付加共重合体からなるフィルムを延伸してなることを特徴とする。
Figure 0004957230
(式(1)中、A,A,AおよびAのうちのいずれか1つは炭素数が4のアルキル基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子およびメチル基のいずれかである。pは0〜5の整数である。)
Figure 0004957230
(式(2)中、B,B,BおよびBのうちいずれか1つは炭素数が5〜12のアルキル基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子およびメチル基のいずれかである。qは0〜5の整数である。)。
前記位相差フィルムは、構造単位(1)および構造単位(2)のモル比(構造単位(1)/構造単位(2))が、10/90〜90/10であり、構造単位(1)および構造単位(2)を、全構造単位中に合計80〜100mol%の量で含有することが好ましい。
上記位相差フィルムは、下記式(3)で表される構造単位(3)を、全構造単位中に20モル%以内の量で含有することが好ましい。
Figure 0004957230
(式(3)中、C、C、CおよびCは、それぞれ独立に、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、酸無水物基、オキセタニル基および加水分解性シリル基よりなる群から選ばれる官能基、水素原子、メチル基ならびにハロゲン原子よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表す。rは0〜5の整数
である。)
本発明の位相差フィルムは、延伸温度が、Tg〜(Tg−70)℃(ただし、Tgは、環状オレフィン系付加共重合体のガラス転移温度を表す。)を満たし、延伸倍率が1.1〜3.0倍の範囲であることを特徴とする。
上記位相差フィルムは、フィルムの位相差値(Re)、厚みおよび延伸倍率が下記式を満たすことが好ましい。
[(Re(nm)/フィルム厚み(nm))/延伸倍率 ]>0.001
上記位相差フィルムは、環状オレフィン系付加共重合体を延伸してなるフィルムの厚みが0.1〜150μmであることが好ましい。
環状オレフィン系付加共重合体のガラス転移温度(Tg)が120〜250℃であり、数平均分子量が20,000〜200,000の範囲であることが好ましい。
本発明に係る環状オレフィン系付加共重合体からなるフィルムを延伸してなる位相差フィルムは、熱劣化を引き起こすことなく、透明性および耐熱性に優れ、吸水性および誘電率が低く、金属含有量が少なく、柔軟性および強靭性にも優れる。また、フィルム面内での位相差の均一性が高く、得られた位相差特性が環境の温度や湿度に影響されにくく、経時安定性に優れ、また、位相差の発現性にも優れる。
以下、本発明について具体的に説明する。
<環状オレフィン系付加共重合体>
〔単量体成分〕
本発明に用いる樹脂成形体が含有する重合体は、上記一般式(1)および(2)で表される構成単位を有している。
このような本発明の樹脂成形体を構成する重合体は、炭素数4のアルキル基を置換基として有する下記式(1)で表される構造単位(1)と、炭素数5〜12のアルキル基を置換基として有する下記式(2)で表される構造単位(2)とを有し、必要に応じて下記式(3)で表される構造単位(3)を有する。本発明の環状オレフィン系付加共重合体は、構造単位(1)、構造単位(2)および必要に応じて有する構造単位(3)のみから構成されるのが好ましい。
Figure 0004957230
(式(1)中、A,A,AおよびAのうちのいずれか1つは炭素数が4のアルキル基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子およびメチル基のいずれかである。pは0〜5の整数である。)
Figure 0004957230
(式(2)中、B,B,BおよびBのうちいずれか1つは炭素数が5〜12のアルキル基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子およびメチル基のいずれかである。qは0〜5の整数である。)
Figure 0004957230
(式(3)中、C、C、CおよびCは、それぞれ独立に、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、酸無水物基、オキセタニル基および加水分解性シリル基よりなる群から選ばれる官能基、水素原子、メチル基ならびにハロゲン原子よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表す。rは0〜5の整数
である。)
ここで、通常、構造単位(1)は、下記式(1m)で表される単量体(1m)に由来し、構造単位(2)は、下記式(2m)で表される単量体(2m)に由来し、必要に応じて
含まれる構造単位(3)は、下記式(3m)で表される構造単位(3m)に由来する。
Figure 0004957230
(式(1m)中、A,A,A,Aおよびpは、式(1)において定義されたとおりである。)
Figure 0004957230
(式(2m)中、B,B,B,Bおよびqは、式(2)において定義されたとおりである。)
Figure 0004957230
(式(3m)中、C、C、C、Cおよびrは、式(3)において定義されたとお
りである。)
本発明の環状オレフィン系付加共重合体は、上記単量体(1m)と、単量体(2m)と、必要に応じて単量体(3m)とを含む単量体組成物を、付加共重合して得ることができる。
構造単位(1)および単量体(1m)において、置換基である炭素数4のアルキル基としては、1−ブチル基が好ましい。構造単位(2)および単量体(2m)における好ましい炭素数5〜12のアルキル基としては、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、2−デシル基および8−メチル−1−ノニル基などの直鎖もしくは分岐アルキル基を有するものが挙げられ、なかでもn−デシル基、n−ドデシル基が好ましい。
単量体(1m)としては、具体的には、5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンおよび8−ブチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エ
ンなどが挙げられる。なかでも、式(1m)中のpが0である、5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンが好ましい。
単量体(2m)としては、具体的には、5−ペンチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘプチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ノニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ウンデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ドデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、8−ペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ヘキシル−テトラシクロ[4.4
.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ヘプチル−テトラシクロ[4.4.0.
2,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−オクチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ノニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
ドデカ−3−エン、8−デシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−
3−エン、8−ウンデシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−
エンおよび8−ドデシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エ
ンなどの直鎖アルキル基を有するもの、ならびに2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5−イル)デセンおよび8−メチル−1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5−イル)ノナンなどの分岐アルキル基を有するものが挙げられる。なかでも、式(2m)中のqが0である、炭素数5〜12の5−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンが好ましい。さらに、5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ドデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンは、原料を工業的に入手しやすいため、より好ましい。アルキル基の炭素数が5以上のものを単量体(2m)として用いると、優れた溶融成形加工性を示し、成形加工時の温度を高くしすぎることなく成形加工することができ、成形体の劣化および着色を防止することができる。一方、アルキル基の炭素数が12を超えると、5−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの沸点が高くなりすぎるため、工業生産時の精製が困難となる。
単量体(3m)は、式(3m)中のC〜Cのうち少なくとも一つが、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、酸無水物基、オキセタニル基および加水分解性シリル基よりなる群から選ばれる官能基であってもよく、また、C〜Cがいずれも水素原子、メチル基およびハロゲン原子から選ばれる原子もしくは基であってもよい。単量体(3m)が官能基を有する単量体である場合には、該単量体(3m)を含む単量体組成物の付加共重合体が、架橋基を導入しやすくなり、付加共重合体を成形して得られるフィルムなどの成形体に密着性および接着性を付与することができる。このため、単量体(3m)としては、架橋基導入や成形体への接着性付与な
どの目的で、式(3m)中のC〜Cのうち少なくとも一つが、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、酸無水物基、オキセタニル基および加水分解性シリル基よりなる群から選ばれる官能基を用いることが好ましい。また、溶融成形の目的には、官能基を持たない構造単位(3)を含有させることが好ましい。
官能基を有する単量体(3m)の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸メチル、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸メチル、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸tert−ブチル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸tert−ブチル、酢酸(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)、酢酸(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−メチル−2−イル)、酢酸(テトラシクロ[6.2.1.13,6
2,7]ドデカ−9−エン−4−イル)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2
、3−無水カルボン酸、5−[(3−エチル−3−オキタセニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−[(3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸(3−エチル−3−オキセタニル)メチル、5−トリメトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンおよび5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンなどが挙げられる。
これらの単量体(3m)としては、式(3m)中のrが0であるものが好ましい。
〔単量体組成物〕
本発明で用いられる単量体組成物は、上記単量体(1m)および単量体(2m)を必須成分としており、必要に応じて単量体(3m)を含んでいてもよい。単量体(2m)の割合が増加するにしたがい、該共重合体を用いて得られるフィルムやシートなどの成形体の柔軟性は増し、ガラス転移温度が低下する傾向がある。単量体(3m)の割合が増加するにしたがい、該共重合体を用いて得られるフィルムやシートなどの成形体の弾性率が向上する反面、柔軟性(伸び)が低下する傾向にある。また、官能基を有する単量体(3m)の割合が高いと、重合活性が低下し、生産性が悪化する場合がある。そのため単量体(3m)の使用量には限度がある。
このため、単量体組成物中において、構造単位(1)と構造単位(2)とのモル比(構造単位(1)/構造単位(2))は、通常10/90〜90/10であり、20/80〜90/20であることが好ましく、40/60〜90/10であることが特に好ましい。また、構造単位(1)と構造単位(2)との合計量は、全構造単位中に80〜100mol%であることが好ましい。単量体(1m)と単量体(2m)との合計に対する単量体(1m)の割合が10mol%を下回ると、得られる付加共重合体のガラス転移温度が低くなりすぎ、耐熱性が不十分となる場合がある。一方、単量体(1m)と単量体(2m)の合計に対する単量体(1m)の割合が90mol%を超えると、ガラス転移温度が高くなりすぎ、成形加工性が悪化する場合がある。また、構造単位(2)の割合が増加するにしたがい、該共重合体を用いて得られるフィルムおよびシートなどの成形体の柔軟性が増し、ガラス転移温度(Tg)が低下する傾向がある。
本発明で用いる単量体組成物中の構造単位(1)と構造単位(2)との合計に対する構造単位(2)の割合が、90モル%を超えるとガラス転移温度が低下し、耐熱性が劣るため好ましくなく、10モル%未満になると、得られるフィルムやシートなどの柔軟性が不足したり、成形加工性が劣るため好ましくない。
単量体組成物中に、単量体(1m)および単量体(2m)以外の単量体が20mol%以上含まれる場合には、得られる共重合体の成形加工性および共重合体から得られる成形体の強度が低下する場合がある。すなわち、全構造単位中における構造単位(3)の割合が20モル%を超えるとフィルムやシートなどの柔軟性が不足し、脆くなるため好ましくない。このため、本発明で用いる単量体組成物が単量体(3m)を含む場合、単量体(3m)の量は、単量体組成物中に0〜20モル%、好ましくは10〜20モル%の割合で含まれるのが好ましい。
本発明で用いる単量体組成物は、特に限定されるものではないが、単量体(1m)、単量体(2m)および必要に応じて単量体(3m)から構成され、それ以外の単量体を含まないのが好ましい。単量体(1m)、単量体(2m)および単量体(3m)は、それぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
〔付加共重合体〕
本発明に関する環状オレフィン系付加共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が、動的粘弾性で測定される貯蔵弾性率(E’)および損失弾性率(E”)から導かれるTanδ=E”/E’の温度分散ピーク温度から求められ、120〜250℃、好ましくは150〜240℃である。このガラス転移温度が120℃未満の場合は、耐熱性が要求される用途に適さなくなり、一方、ガラス転移温度が250℃を超えると溶融成形が困難となる。
本発明に関する環状オレフィン系付加共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が20,000〜200,000、好ましくは30,000〜100,000である。数平均分子量が20,000未満では、成形したフィルムまたはシートの機械的強度が低下し、割れ易くなる傾向がある。一方、その数平均分子量が200,000を超えると、溶融粘度が高くなりすぎるため、成形が困難になるか、または成形体の平坦性が損なわれる傾向がある。環状オレフィン系付加共重合体の分子量は、適当な分子量調節剤の存在下で重合を行うことによって調節することが可能である。
本発明に関する環状オレフィン系付加共重合体は透明性に優れ、膜厚100μmのフィルムで測定される波長400nmでの分光光線透過率は、通常85%以上、好ましくは88%以上であり、ヘイズ値は通常2.0%以下、好ましくは1.0%以下であり、イエローインデックス(YI)は通常2.0%以下、好ましくは1.0%以下である。
〔重合触媒成分〕
本発明に関する環状オレフィン系付加共重合体の製造方法としては、上記単量体組成物を、下記(a)、(b)および(d)を用いて得られる触媒、あるいは、下記(c)および(d)を用いて得られる触媒の存在下に付加共重合する方法が挙げられる。
(a)パラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ−ジケトネート化合物、
(b)下記式(b)で表されるホスフィン化合物、
P(R12(R2) …(b)
[式(b)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基およびイソプロピル基より
選ばれる置換基であり、R2は炭素数3〜10の炭化水素基を表す。]
(c)下記式(c)で表される2価パラジウムのホスフィン錯体、
Pd[P(R12(R2)] …(c)
[式(c)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基およびイソプロピル基より選
ばれる置換基であり、R2は炭素数3〜10の炭化水素基を表し、Xは有機酸アニオンま
たはβ−ジケトネートアニオンであり、nは1または2を示す。]
(d)イオン性のホウ素化合物。
本発明では、上記触媒成分を用いて得られるパラジウム系触媒を用いることにより、機械的強度に優れた成形体を得ることができる。さらには、パラジウム触媒は、非常に高い重合活性を示すため、非常に少量のパラジウム化合物を用いるだけで95%を超える転化率で付加共重合体を製造することができるとともに、得られる付加共重合体中に残留する単量体や金属成分を十分に低く抑えることができる。
以下、上記各触媒成分について説明する。
(a)パラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ−ジケトネート化合物とは、たとえば、2価パラジウムのカルボン酸塩、スルホン酸塩およびβ−ジケトネート化合物であり、具体的には、
酢酸パラジウム、クロロ酢酸パラジウム、フルオロ酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸パラジウム、酪酸パラジウム、3−メチル酪酸パラジウム、ペンタン酸パラジウム、ヘキサン酸パラジウム、2−エチルヘキサン酸パラジウム、オクタン酸パラジウム、ドデカン酸パラジウム、2−メチルプロペン酸パラジウム、オクタデカ−9−エン酸パラジウム、シクロヘキサンカルボン酸パラジウム、安息香酸パラジウム、2−メチル安息香酸パラジウム、4−メチル安息香酸パラジウムおよびナフタレンカルボン酸パラジウムなどの炭素数1〜15の有機モノカルボン酸塩;
メタンスルホン酸パラジウム、トリフルオロメタンスルホン酸パラジウム、p−トルエンスルホン酸パラジウム、ベンゼンスルホン酸パラジウム、ナフタレンスルホン酸パラジウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸パラジウムなどの炭素数1〜20の有機スルホン酸塩;
パラジウムの2,4−ペンタジオン(アセチルアセトネート)、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルおよびヘキサフルオロアセチルアセトンなどの炭素数5〜15のβ−ジケトネート化合物;
が挙げられる。なかでも酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、2−エチルヘキサン酸パラジウム、パラジウムビス(アセチルアセトネート)が好ましく、酢酸パラジウムがより好ましい。
(b)前記式(b)で表されるホスフィン化合物の具体例としては、トリシクロペンチルホスフィン、ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン、ジシクロペンチル(3−メチルシクロヘキシル)ホスフィン、ジシクロペンチル(イソプロピル)ホスフィン、ジシクロペンチル(sec−ブチル)ホスフィン、ジシクロペンチル(tert−ブチル)ホスフィン、ジシクロペンチル(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン、ジシクロヘキシル(3−メチルシクロヘキシル)ホスフィン、ジシクロヘキシル(イソプロピル)ホスフィン、ジシクロヘキシル(2−メチルフェニル)ホスフィンおよびトリイソプロピルホスフィンなどが挙げられる。なかでもトリシクロペンチルホスフィンおよびトリシクロヘキシルホスフィンが好ましい。
(c)前記式(c)で表される2価パラジウムのホスフィン錯体は、触媒成分(a)に挙げたパラジウム化合物と比較して良好な炭化水素溶媒への溶解性を示すため、溶液重合プロセスにおいて有利である。また、活性種の生成効率が高く、誘導期間がほとんどみられないことにおいても有利であるため好ましい。
式(c)で表されるパラジウムのホスフィン錯体としては、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、〔ビス(トリシクロペンチルホスフィン)〕パラジウムジ(アセテート)、〔ジシクロペンチル(tert−ブ
チル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、〔ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、〔ジシクロペンチル(2−メチルフェニル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、〔ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン〕パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、〔ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン〕パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、〔ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)〕パラジウムジ(アセテート)、〔ジシクロヘキシル(tert−ブチル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、〔ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、〔ジシクロヘキシル(2−メチルフェニル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、〔ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン〕パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、〔ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン〕パラジウムビス(アセチルアセトネート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)およびビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
なかでも(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)および(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)が好ましく、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)および(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)がより好ましい。これらのホスフィン錯体
(c)の合成には、公知の方法を適宜用いることができ、精製または単離して用いてもよいし、合成後に単離せずに用いてもよい。たとえば、適切なパラジウム化合物と触媒成分(b)で例示されるホスフィン化合物とを、芳香族炭化水素溶媒またはハロゲン化炭化水素溶媒中で、0〜70℃の温度範囲で反応させることにより合成してもよい。
(d)イオン性のホウ素化合物としては、たとえば、下記式(d)で表される化合物が用いられる。
〔R+〔M(R- …(d)
[式(c)中、Rはカルベニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、アンモニウムカチオンおよびアニリニウムカチオンから選ばれた炭素数4〜25の有機カチオンを示し、Mはホウ素原子またはアルミニウム原子を示し、R4はフッ素原子置換またはフッ化アル
キル置換のフェニル基を示す。]
具体例としては、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレート、トリ(p−トリル)カルベニウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(2,4,6−トリフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびN,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることができる。なかでもカチオンがカルベニウムカチオンであり、アニオンがテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンまたはテトラキス(パーフルオロアルキルフェニル)ボレートアニオンであるイオン性ホウ素化合物が好ましく、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびトリフェニルカルベニウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレートがより好ましい。
〔重合触媒の調製〕
(a)パラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ−ジケトネート化合物あるいは(c)2価パラジウムのホスフィン錯体は、単量体1モル当たり、パラジウム原子として0.0005〜0.02ミリモル、好ましくは0.001〜0.01ミリモル、より好ましくは0.001〜0.005ミリモルの範囲で用いる場合に、高い転化率を得ることができ、高い経済性および生産性を示す。また、付加共重合体中に残留する金属成分量を少なく抑えることができるため、着色が少なく、透明性に優れた成形体を得ることが可能であり、脱灰工程を省略できることもある。また、(b)ホスフィン化合物に関しては、触媒成分(a)に含まれるパラジウム原子1モルに対して、通常0.1〜5モル、好ましくは0.5〜2モルの範囲で使用すると、重合活性が高く、最適である。また、上記触媒成分(d)イオン性のホウ素化合物に関しては、触媒成分(a)に含まれるパラジウム原子1モルに対して、通常0.5〜10モル、好ましくは0.7〜5.0モル、より好ましくは1.0〜2.0モルの範囲で用いられる。上記(a)〜(d)の各触媒成分に関し、本発明においては添加順序などの調製法および使用法に特に制限はなく、本発明で重合反応に供される単量体と溶媒との混合物へ同時に、または逐次的に添加してもよい。
〔付加共重合反応〕
本発明において、付加共重合反応は、バッチ式で行ってもよく、たとえば、適当な単量体の供給口を装備した管型連続反応器を使用して行ってもよい。付加共重合反応は、必要に応じて窒素またはアルゴン雰囲気下で行なわれるが、空気中で行ってもよい。反応温度は0〜150℃、より好ましくは10〜100℃、特に好ましくは20〜80℃の範囲で
行なわれる。用いられる溶媒は特に限定されないが、シクロヘキサン、シクロペンタンおよびメチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼンおよびメシチレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエチレン、1,1−ジクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンおよびジクロロべンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒を1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも脂環式炭化水素溶媒および芳香族炭化水素溶媒が好ましい。これらの溶媒は、全単量体100重量部に対し、通常、0〜2,000重量部の範囲で用いられる。
本発明に関する付加共重合体の製造方法においては、分子量調節剤の存在下で付加共重合を行うことで、得られる共重合体の分子量を任意に制御することができ、その結果、溶融成形における流動特性などを制御できる。分子量調節剤としては、好ましくはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、トリメチルビニルシランおよびトリメトキシビニルシランなどの置換または非置換α−オレフィン化合物、シクロペンテンなどの単環式モノオレフィン化合物ならびにスチレンおよびα−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物などが用いられる。なかでも、α−オレフィン化合物または単環式モノオレフィン化合物を用いることが好ましく、なかでもエチレンがより好ましい。分子量調節剤の使用量は、環状オレフィン系付加共重合体の目標とする分子量、触媒成分の選択および重合温度条件の選択などによって変わるため一概には言えないが、全単量体に対しモル比で0.001〜0.5倍の量を用いることが好ましい。これらの分子量調節剤は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明に関する環状オレフィン系付加共重合の製造方法で用いるパラジウム系重合触媒は、非常に高活性であるため、少量の触媒を用いるだけで、転化率を96%以上、好ましくは99%以上とすることができる。その結果、残留する単量体および金属成分の除去工程を必ずしも必要としない。また、必要に応じて単量体および金属成分の除去を行う場合は公知の方法を適宜用いることができ、たとえば、重合反応溶液を乳酸、グリコール酸、オキシプロピオン酸およびオキシ酪酸などのオキシカルボン酸、あるいはトリエタノールアミン、ジアルキルエタノールアミンおよびエチレンジアミンテトラ酢酸塩などの水溶液、メタノール溶液およびエタノール溶液から選ばれた溶液を用いて抽出または分離処理するか、あるいは珪藻土、シリカ、アルミナ、活性炭およびセライトなどの吸着剤を用いて吸着およびフィルターろ過による分離などの処理により金属成分を除去できる。または、重合反応溶液を、メタノール、エタノールおよびプロパノールなどのアルコール類やアセトンおよびメチルエチルケトンなどのケトンを用いて凝固することもできる。本発明の環状オレフィン系付加共重合体に含まれる金属成分は、Pd原子として好ましくは10ppm以下、特に好ましくは5ppm以下にすることができる。
重合反応溶液からさらに脱溶工程を経ると環状オレフィン系付加共重合体が得られる。その際、必要に応じて添加剤を配合してもよい。脱溶方法は特には限定されないが、たとえば、溶液を減圧下にて加熱濃縮したり、スチームを導入するなどしてもよく、押出機などを用いて乾燥およびペレット化してもよい。または、重合反応溶液をそのままキャストすることでフィルムに成形してもよい。
<添加剤>
本発明に関する環状オレフィン系付加共重合体には、必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。たとえば、酸化安定性を向上させ、着色および劣化を防ぐため、フェノール系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびイオウ系酸化防止剤から選ばれる酸化防止剤を配合することができる。前記酸化防止剤は、前記共重合体100重量部当たり0.001〜5重量部の割合で配合することができる。酸化防止剤の具
体例としては、
2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−
tert−ブチル−3−メチル−フェニル)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)
シクロヘキサン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキ
シフェニル)プロピオン酸ステアレート、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノンお
よびペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒド
ロキシフェニル)]プロピオネートなどのフェノール系酸化防止剤またはヒドロキノン系
酸化防止剤;
ビス (2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジ
ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)4,4'−ビフェニレンジ
ホスホナイト、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイトおよびトリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどのリン系2次酸化防止剤;
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネートおよび2−メルカプトベンズイミダゾールなど;
のイオウ系2次酸化防止剤などを挙げることができる。
また本発明に関する環状オレフィン系付加共重合体には難燃剤を配合することもできる。難燃剤としては公知のものを使用することができ、たとえば、ハロゲン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤および金属水酸化物などを挙げることができる。なかでも少量の配合で効果を示し、吸水性、低誘電性および透明性の悪化を最小限にすることができるリン酸エステル系難燃剤が好ましく、1,3−ビス(フェニルホスホリル)ベンゼン、1,3−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン、1,3−ビス[ジ(アルキルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’,6'−ジメチルフェニ
ル)ホスホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’,6'−ジエチルフェニル)ホスホ
リル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’,6’−ジイソプロピルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’,6’−ジブチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’−tert−ブチルフェニル)ホスフホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’−イソプロピルフェニル)ホスホリル]ベンゼン1,3−ビス[ジ(2’−メチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’,6’−ジメチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’,6’−ジエチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’,6’−ジイソプロピルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’−tert−ブチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’−イソプロピルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’−メチルフェニル)ホスホリル]ベンゼンおよび4,4’−ビス[ジ(2”,6”−ジメチルフェニル)ホスホリルフェニル]ジメチルメタンなどの縮合型リン酸エステル系難燃剤がより好ましい。配合量は選択される難燃剤および要求される難燃性の程度によって決まるが、環状オレフィン共重合体100重量部に対し0.5〜40重量部が好ましく、2〜30重量部がより好ましく、4〜20重量部が特に好ましい。上記難燃剤の配合量が0.5重量部より少ない場合には、効果が不十分であり、一方、40重量部を超えて使用すると透明性が損なわれたり、誘電率などの電気特性が悪化したり、吸水率が増大したり、耐熱性が悪化したりする。
本発明に関する環状オレフィン系付加共重合体には、さらに必要に応じて、公知の滑剤、紫外線吸収剤、レベリング剤および染料などを配合することもできる。
<成形体>
本発明の位相差フィルムは、加熱延伸処理により位相差フィルムとすることのできる成形体を用いて製造する。成形体は、所望の形状であればよいが、フィルム状、シート状および板状など、光学用途に使用できる形状であるのが好ましく、フィルム状およびシート状などがより好ましい。
本発明に関する環状オレフィン系付加共重合体は、適当な溶媒に溶解し、キャストすることでフィルムおよびシートなどの形状に成形することができる。また、熱溶融成形に適したガラス転移温度を有するため、押出成形法で成形することもできる。前記熱溶融成形は、溶媒を必要とせず、経済性および生産性に有利であるため好ましい成形方法である。
本発明に関する環状オレフィン系付加共重合体は、透明性などの光学特性、耐薬品性、耐熱性、耐水性および耐湿性などに優れ、かつ、溶融成形に好適なガラス転移温度を有するため、特に、溶融成形による光学フィルムの製造に好適に用いることができる。得られた光学フィルムは、透明性などの光学特性、耐薬品性、耐熱性、耐水性および耐湿性などにバランスよく優れる。
<加熱延伸処理>
本発明の位相差フィルムを得るためには、環状オレフィン系付加共重合体からなるフィルムなどの成形体に対して加熱延伸処理を施す工程を要する。
加熱延伸処理を行う温度は、本発明の環状オレフィン系付加共重合体からなる溶融押出フィルムのガラス転移温度(Tg)を基準として、通常、Tg〜(Tg−70)℃の範囲であり、好ましくは(Tg−20)℃〜(Tg−60)℃の範囲である。上記範囲ではフィルムの熱劣化が起きることなく、また、フィルムが破断することなく延伸できるため好ましい。
ここでTgは粘弾性測定装置を用い、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/分、引張モードで貯蔵弾性率(E')および損失弾性率(E")から導かれるTanδ(=E"/E')の温度分散より求めたピークの値である。
延伸倍率は、所望の位相差値により適宜選択され、また、1軸延伸か2軸延伸かにより異なる。1軸延伸の場合、通常1.01〜5倍、好ましくは1.1〜3倍、特に好ましくは1.3〜2.7倍である。
また、本発明の位相差フィルムは、波長550nmおける位相差Re(nm)、厚み(nm)および未延伸のフィルムを加熱延伸する延伸倍率が、下記式で表される関係を満たすことが好ましい。
[(Re(nm)/フィルム厚み(nm))/延伸倍率 ]>0.001
ここで、下記式の値αを位相差発現性とする。
α=1000×(Re/フィルム厚み)/延伸倍率
このようにして得られた本発明の位相差フィルムの厚みは、0.1〜150μm、好ましくは10〜150μmである。
本発明の位相差フィルムのヘイズは、2.0%以下、好ましくは1.0%以下であることが好ましい。
本発明の位相差フィルムのイエローインデックス(YI)は、2.0以下、好ましくは1.0以下である。
また、本発明に関する環状オレフィン系付加共重合体の成形体には、必要に応じてIT
O、ポリチオフェンおよびポリアニリンなどの導電性膜、二酸化ケイ素、窒化ケイ素および酸化アルミニウムなどのバリアー膜ならびにその他公知のハードコート層、反射防止層、防汚層、赤外線フィルター層、紫外線フィルター層および粘着剤層などを形成してもよい。これらの形成の手段としては、塗布および貼合による方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法など挙げられる。
<用途>
本発明に関する環状オレフィン系付加共重合体を延伸してなる位相差フィルムは、優れた透明性および耐熱性ならびに低い吸水性および誘電率を有するため、液晶表示素子、有機EL素子、プラズマディスプレイ、電子ペーパー、偏向フィルムおよび位相差フィルムなどの光学材料として好適に用いられる。
〔実施例〕
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、環状オレフィン系付加共重合体の分子量、ガラス転移温度、フィルムの透明性および位相差などの各種性状は、下記の方法で求めた。
(1)分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(昭和電工(社)製Shodex GPC−101)により、THFを溶媒として測定し、標準ポリスチレン換算により分子量を求めた。
(2)ガラス転移温度(Tg)
粘弾性測定装置(ティー・エー・インスツルメント・ジャパン製)を用い、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/分、引張モードで貯蔵弾性率(E')および損失弾性率(E")から導かれるTanδ(=E"/E')のピーク温度を共重合体のガラス転移温度とした。
(3)共重合体組成
重合反応溶液の一部を採取し、過剰のイソプロパノールで重合体を凝固した上澄みをガスクロマトグラフィ(島津製作所製GC−14B;キャピラリーカラム(膜厚1μm、内径0.25mmおよび長さ60m))により分析し、残留する単量体を定量することで、組成を算出した。
(4)分光光線透過率
膜厚100μmのフィルムについて、可視・紫外分光光度計(日立製U−2010 Spectro Photo Meter)により、波長400nmでの光線透過率を測定した。
(5)ヘイズ
膜厚100μmのフィルムについて、Haze−Gard plus(BYK−Gardner製)を用い、JIS K7105に準じて測定した。
(6)イエローインデックス(YI)
膜厚100μmのフィルムについて、TCSII分光測色計(BYK−Gardner製)を用い、ASTM D1925に準じて測定した。
(7)透過光の位相差
RETS−1200VA(大塚電子株式会社製)により位相差を測定した。
(8)残留溶媒量(残留溶媒濃度)
ガスクロマトグラフ(GC)装置(島津製作所製GC−2100型)で、キャピラリー
カラム(ジーエルサイエンス(株)製TC−1)を用い、フィルム中の有機溶剤を塩化メチレンで抽出して測定した。残留溶媒量は検量線法にて決定した。
[参考例1]
1リットルのステンレス製反応器に窒素雰囲気下で脱水したトルエン520g、5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン83g(0.55mol)および5−デシ
ルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを70g(0.30mol)仕込み、撹拌し
ながらエチレンを0.025MPaとなるまで導入した。容器内を30℃に昇温し、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)(3.40×10−3mmol)のトルエン溶液およびトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(3.40×10−3mmol)のトルエン溶液を加えて重合を開始した。重合を計12時間行った結果、未反応の単量体の定量結果から、転化率は99%、共重合体中の5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は34モル%と計算された。トルエンで希釈した反応溶液を4リットルのイソプロピルアルコールで凝固し、ついで真空下で加熱乾燥し151gの共重合体Aを得た。共重合体AのMnは82,000、Mwは283,000およびガラス転移温度は205℃であった。
[参考例2]
1リットルのステンレス製反応器に窒素雰囲気下で脱水したトルエン450g、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(0.15mol)の乾燥トルエン溶液を21.3ml、5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを69g(0.46mol)および5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを65g(0.28mol)仕
込み、撹拌しながらエチレンを0.037MPaとなるまで導入した。容器内を50℃に昇温し、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)(3.08×10−3mmol)のトルエン溶液およびトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(3.08×10−3mmol)のトルエン溶液を加えて重合を開始した。重合開始後90分および210分経過した際に、上記ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンのトルエン溶液をそれぞれ4.00mlおよび1.33ml添加し、重合を計6時間行った結果、未反応の単量体の定量結果から、転化率は99%、共重合体中の5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は50モル%、5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は29モル%と計算された。トルエンで希釈した反応溶液を4リットルのイソプロピルアルコールで凝固し、ついで真空下で加熱乾燥し151gの共重合体Bを得た。共重合体BのMnは55,000、Mwは208,000およびガラス転移温度は193℃であった。
[参考例3]
1リットルのステンレス製反応器に窒素雰囲気下で脱水したトルエン600g、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(0.50mol)の乾燥トルエン溶液を72.1mlおよび5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを50g(0.33mol)仕込み、撹拌しながらエチレンを0.069MPaとなるまで導入した。容器内を50℃に昇温し、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)(1.66×10−3mmol)のトルエン溶液およびトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1.66×10−3mmol)のトルエン溶液を加えて重合を開始した。重合を計7時間行った結果、未反応の単量体の定量から転化率は99%、共重合体中の5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は39モル%と計算された。トルエンで希釈した反応溶液を4リットルのイソプロピルアルコールで凝固し、ついで真空下で加熱乾燥し96gの共重合体Cを得た。共重合体CのMnは45,000、Mwは192,000およびガラス転移温度は268℃であった。
[製造例1]
共重合体A100重量部に対し、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート0.5重量部およびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニルホスファイト0.5重量部を、トルエン350重量部に溶解した。この溶液を25℃でキャストし、残存溶媒濃度が15重量%となるまで徐々に溶剤を蒸発させた後、支持体から剥離し、続いて100℃にて180分間真空で保持し、残存溶媒濃度が0.1重量%、厚さ110μmのフィルムAを得た。
[製造例2]
共重合体A100重量部に対し、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート0.5重量部およびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニルホスファイト0.5重量部を、トルエン350重量部に溶解した。この溶液を25℃でキャストし、残存溶媒濃度が13重量%となるまで徐々に溶剤を蒸発させた後、支持体から剥離し、続いて100℃にて120分間真空で保持し、残存溶媒濃度が0.1重量%、厚さ144μmのフィルムBを得た。
[製造例3]
共重合体A100重量部に対し、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート0.5重量部およびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニルホスファイト0.5重量部を混合し、続いて単軸押出機により樹脂温度275℃で押し出し、フィルム化し、厚さ109μmのフィルムCを得た。
[製造例4]
共重合体B100重量部に対し、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート0.5重量部およびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニルホスファイト0.5重量部を、トルエン350重量部に溶解した。この溶液を25℃でキャストし、残存溶媒濃度が15重量%となるまで徐々に溶剤を蒸発させた後、支持体から剥離し、続いて100℃にて180分間真空で保持し、残存溶媒濃度が0.1重量%、厚さ77μmのフィルムDを得た。
[製造例5]
共重合体C100重量部に対し、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート0.5重量部およびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニルホスファイト0.5重量部を、トルエン350重量部に溶解した。この溶液を25℃でキャストし、残存溶媒濃度が15重量%となるまで徐々に溶剤を蒸発させた後、支持体から剥離し、続いて180℃にて90分間窒素下で保持し、残存溶媒濃度が0.1重量%、厚さ86μmのフィルムEを得た。
[実施例1]
フィルムAをテンター内で、179℃(共重合体AのTg−26℃)に加熱して、延伸速度120%/分で1.52倍に延伸した後、室温まで冷却し、位相差フィルムA−1を得た。このフィルムA−1の加熱延伸処理後の分光光線透過率、ヘイズ、波長550nmにおける位相差値および厚みを測定した。これらの結果を表1に示す。このときの分光光線透過率は91%、ヘイズは0.3%、YIは0.4、波長550nmにおける位相差値は314nmとなり良好な結果を示した。また、厚さは96μmであった。
[実施例2]
フィルムAをテンター内で、159℃(共重合体AのTg−46℃)に加熱して、延伸速度120%/分で1.59倍に延伸した後、室温まで冷却し、位相差フィルムA−2を作製した以外は実施例1と同様の方法で測定を行った。これらの結果を表1に示す。このときの分光光線透過率は91%、ヘイズは0.4%、YIは0.4および波長550nmにおける位相差値は386nmであり、良好な結果を示した。また、厚さは88μmであった。
[実施例3]
フィルムBをテンター内で、149℃(共重合体AのTg−56℃)に加熱して、延伸速度120%/分で2.43倍に延伸した後、室温まで冷却し、位相差フィルムB−1を作製した以外は実施例1と同様の方法で測定を行った。これらの結果を表1に示す。このときの分光光線透過率は91%、ヘイズは0.4%、YIは0.4および波長550nmにおける位相差値は697nmであり、良好な結果を示した。また、厚さは101μmであった。
[実施例4]
フィルムCをテンター内で、159℃(共重合体AのTg−46℃)に加熱して、延伸速度120%/分で1.50倍に延伸した後、室温まで冷却し、位相差フィルムC−1を作製した以外は実施例1と同様の方法で測定を行った。これらの結果を表1に示す。このときの分光光線透過率は91%、ヘイズは0.5%、YIは0.5および波長550nmにおける位相差値は344nmであり、良好な結果を示した。また、厚さは92μmであった。
[実施例5]
フィルムDをテンター内で、158℃(共重合体CのTg−35℃)に加熱して、延伸速度120%/分で1.56倍に延伸した後、室温まで冷却し、位相差フィルムD−1を作製した以外は実施例1と同様の方法で測定を行った。これらの結果を表1に示す。このときの分光光線透過率は91%、ヘイズは0.7%、YIは0.4および波長550nmにおける位相差値は326nmであり、良好な結果を示した。また、厚さは63μmであった。
[比較例1]
フィルムEをテンター内で、235℃(共重合体DのTg−33℃)に加熱して、延伸速度120%/分で1.63倍に延伸した後、室温まで冷却し、位相差フィルムE−1を得ようとしたが、酸化劣化によりフィルムが着色してしまい、このときの分光光線透過率は75%、ヘイズは0.4%およびYIは6.0となり、位相差フィルムとして評価に耐えられるものが得られなかった。
Figure 0004957230
本発明に関する環状オレフィン系付加共重合体は、透明性などの光学特性、耐熱性、耐水性および耐湿性などに優れ、かつ、安定な位相差特性を有するため、光学フィルム、特に位相差フィルムに好適に用いることができる。
本発明の位相差フィルムには、光拡散機能を付与することができ、また、透明導電層や反射防止層を積層することにより光拡散フィルム、透明導電膜および反射防止フィルムとして使用できる。また、保護フィルムおよび偏光板としても使用できる。

Claims (7)

  1. 下記式(1)で表される構造単位(1)、および、下記式(2)で表される構造単位(2)を含有する環状オレフィン系付加共重合体からなるフィルムを延伸してなる位相差フィルム;
    Figure 0004957230
    (式(1)中、A,A,AおよびAのうちのいずれか1つは炭素数が4のアルキル基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子およびメチル基のいずれかである。pは0〜5の整数である。)
    Figure 0004957230
    (式(2)中、B,B,BおよびBのうちいずれか1つは炭素数が5〜12のアルキル基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子およびメチル基のいずれかである。qは0〜5の整数である。)。
  2. 構造単位(1)および構造単位(2)のモル比(構造単位(1)/構造単位(2))が、10/90〜90/10であり、構造単位(1)および構造単位(2)を、全構造単位中に合計80〜100mol%の量で含有する請求項1に記載の位相差フィルム。
  3. 下記式(3)で表される構造単位(3)を、全構造単位中に20モル%以内の量で含有する請求項1または2に記載の位相差フィルム;
    Figure 0004957230
    (式(3)中、C、C、CおよびCは、それぞれ独立に、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、酸無水物基、オキセ
    タニル基および加水分解性シリル基よりなる群から選ばれる官能基、水素原子、メチル基ならびにハロゲン原子よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表す。rは0〜5の整数
    である。)。
  4. 延伸温度が、Tg〜(Tg−70)℃(ただし、Tgは、環状オレフィン系付加共重合体のガラス転移温度を表す。)を満たし、延伸倍率が1.1〜3.0倍の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の位相差フィルム。
  5. フィルムの位相差値(Re)、厚みおよび延伸倍率が下記式を満たす請求項1〜4のいずれかに記載の位相差フィルム。
    [(Re(nm)/フィルム厚み(nm))/延伸倍率 ]>0.001
  6. 環状オレフィン系付加共重合体を延伸してなるフィルムの厚みが0.1〜150μmである請求項1〜3いずれかに記載の位相差フィルム。
  7. 環状オレフィン系付加共重合体のガラス転移温度(Tg)が120〜250℃であり、数平均分子量が20,000〜200,000の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の位相差フィルム。
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