JP2007332256A - 環状オレフィン系付加共重合体の製造方法、環状オレフィン系付加共重合体ならびにその用途 - Google Patents

環状オレフィン系付加共重合体の製造方法、環状オレフィン系付加共重合体ならびにその用途 Download PDF

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健三 大喜多
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Abstract

【課題】環状オレフィン系付加共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】炭素数10〜12のアルキル基を有する5−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを10〜90モル%と、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを10〜90モル%含む単量体組成物を、特定のパラジウム化合物を含有する触媒触媒を用いて付加共重合する。
【効果】溶融成形加工性と透明性などに優れた環状オレフィン系付加共重合体を高い経済性と生産性で製造する方法、ならびに高い透明性、耐熱性、溶融成形加工性と、低吸水性、低誘電率、低含有金属を示す環状オレフィン系付加共重合体、および該環状オレフィン系付加共重合体を成形して得られるフィルム、シート、光学材料を提供することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、環状オレフィン系付加共重合体の製造方法、該方法によって得られる環状オレフィン系付加共重合体およびその用途に関する。詳しくは、本発明は、特定のアルキル基置換環状オレフィンとビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンとを、特定のパラジウム系多成分触媒の存在下に付加共重合することで高い生産性と経済性を示す環状オレフィン系付加共重合体の製造方法、ならびに該方法で得られ、優れた透明性、耐熱性、溶融成形加工性と、低吸水性、低誘電率、低含有金属を示す環状オレフィン系付加共重合体、および該環状オレフィン系付加共重合体を成形して得られるフィルム、シート、光学材料に関する。
レンズ、バックライト、導光板、光学フィルムなどの光学材料に用いられる樹脂には、透明性が求められる他、耐熱性、低吸水性、低誘電率などの特性が求められるようになってきている。光学材料用途に用いられる透明樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂などが知られている。しかし用途によっては、これらの樹脂では耐熱性、吸水性、複屈折、透明性などが不充分で、必ずしも最適な材料ではなかった。
透明性と耐熱性とに優れた樹脂としては、環状オレフィン系化合物の開環重合体の水素添加物、あるいは付加重合体が数多く提案されている。これらは主鎖が脂環族炭化水素によって構成されているため、芳香族系樹脂と比較して短波長領域での吸収が小さくことからも有用である。環状オレフィン系開環重合体およびその水素添加物は、レンズや光ディスクなどを製造するための光学材料として有用なものとして多数提案されており(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6)、これらに開示された環状オレフィン系開環(共)重合体およびその水素添加物は、耐熱性に優れ低吸水(湿)性であって透明性などの光学特性にも優れ、さらに射出成形などの成形性にも優れている。また、分子内に極性基を導入した環状オレフィン系単量体の開環重合体およびその水素添加物も提案されており(例えば特許文献7および特許文献8)、耐熱性や光学特性、成形性、他素材との親和性に優れ、接着などの後加工性にも優れたものであることが開示されている。しかしながら環状オレフィン系開環重合体は重合反応後の主鎖に二重結合が存在するため、耐熱劣化性を向上するには水素添加工程が必要である。また、たとえ水素添加後であってもなお二重結合が微量に残留することが多く、高温で着色しやすいことが問題となる。
一方、環状オレフィン化合物を付加重合することで、耐熱性と透明性に優れた樹脂が得られることが知られている。環状オレフィン化合物を付加重合して得られる樹脂には、重合反応後の主鎖に二重結合が存在しないため耐熱劣化性に優れ、水添工程不要であるという利点があり、例えば、環状オレフィン系化合物とα−オレフィンとの付加共重合体が数多く報告されている(例えば、特許文献9、特許文献10)。
しかし、それらの共重合体では、エチレンなどのα−オレフィンに由来する構造単位の連鎖が結晶化して透明性が低下する場合がある。また、環状オレフィンとα−オレフィンとは重合反応性の差が大きいため、共重合体の組成に分布が生じ、透明性が低下する場合がある。このため、環状オレフィン系化合物とα−オレフィンとの付加共重合体は、光学材料の用途に用いるには必ずしも十分な特性を有していなかった。
環状オレフィン系化合物に由来する構造単位のみから形成される環状オレフィン系付加重合体は、チタニウム触媒、ジルコニウム触媒、コバルト触媒、ニッケル触媒、パラジウム触媒などを用いて製造でき、非常に優れた耐熱性と透明性を示す樹脂として知られている。このような樹脂については、これまでに、用いる触媒の選択により生成する重合体の立体規則性(アタクティック/erythro−ジシンジオタクティック/erythro−ジアイソタクティックなど)や付加重合の様式(2,3位での付加および2,7位での付加)、分子量の制御性などが異なることが知られている。たとえばジルコニウム系メタロセン触媒を用いて重合されたノルボルネン重合体は不融で、一般的な溶媒に対し不溶であることが報告されている(非特許文献1)。また、ニッケル系触媒を用いて重合されたノルボルネンの付加重合体は、シクロヘキサンなどの炭化水素溶媒に対して良好な溶解性を示す(特許文献11)が、機械強度に劣り脆いことが報告されている(特許文献12)。
それに対し、パラジウム化合物を含む特定の触媒を用いることで、高い重合活性を示すとともに優れた透明性、耐熱性、機械的強度を有する環状オレフィン系付加重合体を製造できることが報告されている(特許文献12、特許文献13、特許文献14)。また、特許文献15には加水分解性シリル基含有環状オレフィンを有し、パラジウム化合物を含む触媒を用いて得られる環状オレフィン共重合体が優れた耐熱性と寸法安定性を示すことが開示されている。しかしながらこれらに記載の付加重合体は非常に高い耐熱性を示す反面、熱溶融成形が不可能であり、成形方法は溶液流延法(キャスト法)に限定される。キャスト法は多量の溶媒を用いる上、その溶媒の除去および回収工程が必要であるため設備が大型化し、生産性が低く高コストであるなどの工業的な問題がある。
環状オレフィン系付加重合体を溶融成形可能とすべく、ガラス転移温度を低下させる手法として、アルキル置換基を有する環状オレフィン化合物を単量体として用いることが提案されている。例えば、特許文献16には5−ヘキシル−2−ノルボルネンを用いた付加型共重合体が記載されている。また、特許文献11および非特許文献2には、長鎖アルキル基を有するノルボルネンを単量体として用い、その鎖長や割合によって付加共重合体のガラス転移温度をコントロールできることが記載されている。しかしこれらの先行技術には、得られる成形体の機械強度に対する重合触媒の影響は記載されていない。また、これらにおいて用いられている重合触媒は、その活性において満足のいくものではなく、反応後に残留する未反応単量体や触媒を除去する工程を必要とする。
さらには、長鎖アルキル基を有する環状オレフィンはノルボルネンと比較して重合反応性が低いため、両者の共重合の際に共重合体の組成に分布が生じるが、前記特許文献16、特許文献11、非特許文献2においては単量体の反応性の差や組成分布については言及していない。共重合における単量体の組成分布は、高い転化率を求めた場合において顕著となり、得られる成形体の透明性や強度が損なわれることがあるため、高転化率と高透明性の両立が課題となる。このため、経済性および生産性に優れ、良好な耐熱性と溶融成形加工性を示し、高い転化率における高透明性を獲得した環状オレフィン系付加共重合体の製造方法の出現が望まれるが、現在までには報告されていない。
特開昭63−21878号公報 特開平1−138257号公報 特開平1−168725号公報 特開平2−102221号公報 特開平2−133413号公報 特開平4−170425号公報 特開昭50−111200号公報 特開平1−132626号公報 特開昭61−292601号公報 米国特許第2,883,372号明細書 特表平9−508649 特開2006−52347 特開2005−162990 特開2005−213435 特開2005−48060 特開平8−198919 Makromol. Chem. Macromol. Symp., Vol.47, 831 (1991) Proc. Am. Chem. Soc. Div. Polym. Mater.: Sci. Eng. Vol. 75, 56 (1997)
本発明は、透明性に優れるとともに、溶融成形加工性などにも優れた環状オレフィン系付加共重合体を、高い経済性と生産性で製造する方法、ならびに高い透明性、耐熱性、溶融成形加工性と、低吸水性、低誘電率、低含有金属を示す環状オレフィン系付加共重合体、および該環状オレフィン系付加共重合体を成形して得られるフィルム、シート、光学材料を提供することを課題としている。
本発明の環状オレフィン系付加共重合体の製造方法は、炭素数10〜12のアルキル基を有する5−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを10〜90モル%と、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを10〜90モル%含む単量体組成物を、下記触媒成分(a)、(b)および(d)を用いて得られる触媒、あるいは下記触媒成分(c)および(d)を用いて得られる触媒の存在下に付加共重合することを特徴としている。
(a)パラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ−ジケトネート化合物、
(b)下記式(b)で表されるホスフィン化合物、
P(R1)2(R2) …(b)
(式(b)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基より選ば
れる置換基であり、R2は炭素数3〜10の炭化水素基を表す。)
(c)下記式(c)で表される2価パラジウムのホスフィン錯体、
Pd[P(R1)2(R2)]nX2 …(c)
(式(c)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基より選ば
れる置換基であり、R2は炭素数3〜10の炭化水素基を表し、Xは有機酸アニオンある
いはβ−ジケトネートアニオンであり、nは1または2を示す。)
(d)イオン性のホウ素化合物。
このような本発明の環状オレフィン系付加共重合体の製造方法では、触媒成分(b)が、トリシクロペンチルホスフィンまたはトリシクロヘキシルホスフィンであることが好ましい。
また、本発明の環状オレフィン系付加共重合体の製造方法では、触媒成分(c)が、パラジウムとトリシクロペンチルホスフィンとの錯体、あるいはパラジウムとトリシクロヘキシルホスフィンとの錯体であることが好ましい。
本発明の環状オレフィン系付加共重合体の製造方法では、触媒成分(d)が、カチオンがカルベニウムカチオンであり、アニオンがテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンまたはテトラキス(パーフルオロアルキルフェニル)ボレートアニオンである、イオン性のホウ素化合物であることが好ましい。
また本発明の環状オレフィン系付加共重合体の製造方法では、前記ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンのうちの20〜95重量%を使用して重合反応を開始する工程と、その重合反応中に前記ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの残余をさらに供給する工程とを含むことが好ましい。
本発明の環状オレフィン系付加共重合体は、前記本発明の環状オレフィン系付加共重合体の製造方法によって得られ、下記式(1)で表される構造単位(1)を10〜90モル%、および、下記式(2)で表される構造単位(2)を10〜90モル%有し、ガラス転移温度が110〜200℃であり、数平均分子量が20,000〜200,000の範囲であることを特徴としている。
Figure 2007332256
(式(1)中、Aは炭素数10〜12のアルキル基を示す。)
Figure 2007332256
このような本発明の環状オレフィン系付加共重合体は、前記構造単位(1)が20〜50モル%であり、前記構造単位(2)が50〜80モル%であることが好ましい。
本発明のフィルムまたはシートは、前記本発明の環状オレフィン系付加共重合体を成形して得られる。また本発明の光学材料は、前記本発明の環状オレフィン系付加共重合体を成形して得られる。
本発明によれば、溶融成形加工性と透明性などに優れた環状オレフィン系付加共重合体を高い経済性と生産性で製造する方法、ならびに高い透明性、耐熱性、溶融成形加工性と、低吸水性、低誘電率、低含有金属を示す環状オレフィン系付加共重合体、および該環状オレフィン系付加共重合体を成形して得られるフィルム、シート、光学材料を提供することができる。
以下、本発明について具体的に説明する。
環状オレフィン系付加共重合体の製造方法
<単量体>
本発明の環状オレフィン系付加重合体の製造方法において用いられる単量体組成物は、
炭素数10〜12のアルキル基を有する5−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを10〜90モル%と、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)を10〜90モル%含む。
本発明において単量体組成物を構成する前記5−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンは、炭素数10〜12の直鎖状または分岐状のアルキル基を有する。前記5−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの具体例としては、5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ウンデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ドデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンなどの直鎖アルキル基を有するものや、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5−イル)デセン、8−メチル−1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5−イル)ノナンなどの分岐アルキル基を有するものが挙げられる。中でも5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ドデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンは原料を工業的に入手しやすいため好ましい。ここで該アルキル基の炭素数が10より少ない場合には、溶融成形加工性が悪化したり、成形温度が高くなりすぎるために成形体が劣化および着色することがある。一方、炭素数が12を超えると5−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの沸点が高くなりすぎるため、工業生産時の精製が困難となる。
本発明では、前記単量体組成物中における5−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの割合によって、得られる付加共重合体のガラス転移温度、弾性率などを使用目的に応じてコントロールでき、その範囲は10〜90モル%、好ましくは15〜70モル%、さらに好ましくは20〜50モル%である。この割合が10モル%を下回るとガラス転移温度が高すぎ成形加工性が悪化するなどの問題が生じ、一方、90モル%を超えると成形体の強度および耐熱性が不充分な場合がある。また、単量体組成物中のビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの割合を高めた場合には、成形体の強度を向上でき、重合活性も高くなる反面、成形温度が高くなりすぎることがあるため、その範囲は10〜90モル%、好ましくは30〜85モル%、さらに好ましくは50〜80モル%である。ここで、単量体組成物中の両者の合計は、90モル%以上であることが好ましく、100モル%であることも好ましい。
前記単量体組成物には、成形体へ接着性付与や架橋基導入などの目的で、官能基を有する環状オレフィン化合物を10モル%以下の割合で含んでもよい。当該官能基としては、具体的には、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、酸無水物基、オキセタニル基、加水分解性シリル基から選ばれた基が挙げられる。官能基を有する環状オレフィン化合物の具体例としては、たとえば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸メチル、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸メチル、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸t−ブチル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸t−ブチル、酢酸(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル)、酢酸(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−メチル−2−イル)、酢酸(テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−イル)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2、3−無水カルボン酸、5−[(3−エチル−3−オキタセニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−[(3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸(3−エチル−3−オキセタニル)メチル、5−トリメトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等が挙げられる。これらの官能基を有する環状オレフィン化合物の割合が高いと、重合活性が低下
し生産性が悪化する場合があるため、その範囲は、単量体組成物中に10モル%以下、好ましくは7モル%以下、さらに好ましくは4モル%以下に設定されることが望ましい。
<共重合触媒>
本発明の環状オレフィン系付加共重合体の製造方法においては、下記触媒成分(a)、(b)および(d)を用いて得られる触媒、あるいは下記触媒成分(c)および(d)を用いて得られる触媒が用いられる。
(a)パラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ−ジケトネート化合物、
(b)下記式(b)で表されるホスフィン化合物、
P(R1)2(R2) …(b)
[式(b)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基より選ば
れる置換基であり、R2は炭素数3〜10の炭化水素基を表す。]
(c)下記式(c)で表される2価パラジウムのホスフィン錯体、
Pd[P(R1)2(R2)]22・・・・・(c)
[式(c)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基より選ばれ
る置換基であり、R2は炭素数3〜10の炭化水素基を表し、Xは有機酸アニオンあるい
はβ−ジケトネートアニオンであり、nは1または2を示す。]
(d)イオン性のホウ素化合物。
本発明では、上記触媒成分を含むパラジウム系触媒を用いることにより、機械的強度に優れた成形体を得ることができる。このような触媒は非常に高い重合活性を示すため、極端に少ないパラジウム化合物を用いるのみにて95%を超える高い転化率で付加共重合体を製造することができるとともに、得られる付加共重合体中に残留する単量体や金属成分量を充分に低く抑制できる。
・触媒成分(a)
触媒成分(a)は、パラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ−ジケトネート化合物である。
パラジウムの有機酸塩としては、例えば2価パラジウムのカルボン酸塩、スルホン酸塩が挙げられ、具体的には、
酢酸パラジウム、クロロ酢酸パラジウム、フルオロ酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸パラジウム、酪酸パラジウム、3−メチル酪酸パラジウム、ペンタン酸パラジウム、ヘキサン酸パラジウム、2−エチルヘキサン酸パラジウム、オクタン酸パラジウム、ドデカン酸パラジウム、2−メチルプロペン酸パラジウム、オクタデカ−9−エン酸パラジウム、シクロヘキサンカルボン酸パラジウム、安息香酸パラジウム、2−メチル安息香酸パラジウム、4−メチル安息香酸パラジウム、ナフタレンカルボン酸パラジウムなどの炭素数1〜15の有機モノカルボン酸塩;
メタンスルホン酸パラジウム、トリフルオロメタンスルホン酸パラジウム、p−トルエンスルホン酸パラジウム、ベンゼンスルホン酸パラジウム、ナフタレンスルホン酸パラジウム、ドデシルベンゼンスルホン酸パラジウムなどの炭素数1〜20の有機スルホン酸塩等が好ましく挙げられる。
また、パラジウムのβ−ジケトネート化合物としては、具体的には、パラジウムの2,4−ペンタジオン(アセチルアセトネート)、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ヘキサフルオロアセチルアセトンなどの炭素数5〜15のβ−ジケトネート化合物等が好ましく挙げられる。
これらの触媒成分(a)の中では、酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、2−エチルヘキサン酸パラジウム、パラジウムビス(アセチルアセトネート)が好ましく、酢酸
パラジウムが最も好ましい。
・触媒成分(b)
触媒成分(b)は、上記式(b)で表されるホスフィン化合物であり、具体的には、トリシクロペンチルホスフィン、ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン、ジシクロペンチル(3−メチルシクロヘキシル)ホスフィン、ジシクロペンチル(イソプロピル)ホスフィン、ジシクロペンチル(s−ブチル)ホスフィン、ジシクロペンチル(t−ブチル)ホスフィン、ジシクロペンチル(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン、ジシクロヘキシル(3−メチルシクロヘキシル)ホスフィン、ジシクロヘキシル(イソプロピル)ホスフィン、ジシクロヘキシル(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリイソプロピルホスフィンなどが挙げられる。これらの触媒成分(b)の中では、トリシクロペンチルホスフィンあるいはトリシクロヘキシルホスフィンが好ましく用いられる。
・触媒成分(c)
触媒成分(c)は、上記式(c)で表される2価パラジウムのホスフィン錯体である。このような触媒成分(c)は、触媒成分(a)として用いられるパラジウム化合物と比較して良好な炭化水素溶媒への溶解性を示すため、溶液重合プロセスにおいて有利である。また、活性種の生成効率が高く、誘導期間がほとんどみられないことなどにおいても有利であり好ましい。
触媒成分(c)としては、具体的には、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、
〔ビス(トリシクロペンチルホスフィン)〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロペンチル(t−ブチル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロペンチル(2−メチルフェニル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
〔ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン〕パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
〔ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン〕パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、
〔ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロヘキシル(t−ブチル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロヘキシル(2−メチルフェニル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
〔ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン〕パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
〔ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン〕パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、などを挙げることができるがこれらに限定されない。中でも
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)が好ましく挙げられる。これらの中では、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)が最も好ましい。触媒成分(c)として用いられるこれらのホスフィン錯体の合成には、公知の方法を適宜もちいてよく、精製あるいは単離して用いてもよいし、合成後に単離することなく用いてもよい。たとえば適切なパラジウム化合物と触媒成分(b)のホスフィン化合物とを、芳香族炭化水素溶媒またはハロゲン化炭化水素溶媒中で、0〜70℃の温度範囲で反応させることにより合成してもよい。
・触媒成分(d)
触媒成分(d)は、イオン性のホウ素化合物である。イオン性のホウ素化合物としては、カチオンとホウ素含有アニオンとから形成される化合物を用いることができ、触媒成分(d)が、カチオンがカルベニウムカチオンであり、アニオンがテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンまたはテトラキス(パーフルオロアルキルフェニル)ボレートアニオンである、イオン性のホウ素化合物が好ましく用いられる。
本発明では、触媒成分(d)として、下記式(d)で表される化合物が特に好適に用いられる。
〔R3+〔M(R44- …(d)
(式(d)中、R3はカルベニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、アンモニウムカ
チオンまたはアニリニウムカチオンから選ばれた炭素数4〜25の有機カチオンを示し、Mはホウ素原子あるいはアルミニウム原子を示し、R4はフッ素原子置換またはフッ化ア
ルキル置換のフェニル基を示す。)
このような触媒成分(d)としては、具体的には、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリ(p−トリル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレート、
トリ(p−トリル)カルベニウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(2,4,6−トリフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
などを挙げることができる。
これらの中でもカチオンがカルベニウムカチオンであり、アニオンがテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンまたはテトラキス(パーフルオロアルキルフェニル)ボレートアニオンであるイオン性ホウ素化合物が好ましく、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびトリフェニルカルベニウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレートが最も好ましい。
単量体組成物の付加共重合に際しては、上記触媒成分(a)のパラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ−ジケトネート化合物、あるいは触媒成分(c)の2価パラジウムのホスフィン錯体は、単量体1モル当たり、パラジウム原子として0.0005〜0.02ミリモル、好ましくは0.001〜0.01ミリモル、さらに好ましくは0.001〜0.005ミリモルの範囲で用いることができる。本発明に係る付加共重合においては、このような少量の触媒成分(a)あるいは(c)を用いるのみにて高い転化率を獲得できるため、高い経済性および生産性を示す。また、付加共重合体中に残留する金属成分を低く抑えられるため、着色が少なく透明性に優れた成形体を得ることが可能であり、脱灰工程の省略をできることもある。また、触媒成分(b)のホスフィン化合物は、触媒成分(a)に含まれるパラジウム原子1モルに対して、通常0.1〜5モル、好ましくは0.5〜2モルの範囲で使用することが、高重合活性のために最適である。
また、上記触媒成分(d)のイオン性のホウ素化合物は、触媒成分(a)または触媒成分(c)に含まれるパラジウム原子1モルに対して、通常0.5〜10モル、好ましくは0.7〜5.0モル、さらに好ましくは1.0〜2.0モルの範囲で用いられる。
本発明においては、上記触媒成分(a)〜(d)の添加順序等の調整法や使用法に特に制限はなく、本発明で重合反応に供される単量体と溶媒との混合物へ同時に、または逐次的に重合系内に添加することができる。
<重合方法>
本発明の製造方法においては、通常、上述した触媒成分(a)、(b)および(d)、あるいは触媒成分(c)および(d)と、炭素数10〜12のアルキル基を有する5−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンと、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンとからなる単量体組成物を仕込み、反応させ上記単量体を付加共重合させる。
ここで、5−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンは、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンと比較して重合反応性が低いため、単に単量体組成物を重合に供した場合には、重合前期においてはビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの含有割合の高い共重合体が生成し、重合後期においては5−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの含有割合が高くなる。その結果、生成する付加共重合体の組成に著しい分布が生じ、機械強度や透明性が損なわれることがあり、特に高い転化率にまで重合を進行
させた際に顕著となる。組成分布の生成は、重合反応工程をビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの20〜95重量%を使用して重合反応を開始する工程と、重合反応中に残余のビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを供給する工程とを含むものとすることで抑制できる。残余のビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンは1回で導入してもよく、2回以上に分割して、あるいは連続的に重合系に導入してもよい。最適な導入量および導入タイミングは単量体の反応性の比をFineman−Rossの方法などによって反応性比(r1,r2)として求め、その値を元に選択することもできる。重合系中での単量体の組成は、適宜サンプリングした重合反応溶液を分析し、未反応の各単量体の濃度、各単量体の転化率、共重合体の組成などを追跡することにより確認できる。係る方法をとることでさらに透明性や機械強度に優れた環状オレフィン系付加共重合体を得ることができる。
本発明において、付加共重合反応はバッチ式で行ってもよく、また、例えば適切な単量体の供給口を装備した管型連続反応器を使用する等の方法により連続式で行ってもよい。重合反応は、必要なら窒素またはアルゴン雰囲気下にて行なわれるが、空気中であってもよい。反応温度は0〜150℃、より好ましくは10〜100℃、より好ましくは20〜80℃の範囲にて行なわれる。用いられる溶媒は特に限定されないが、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエチレン、1,1−ジクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロべンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒を1種単独で、または2種以上を組み合わせることができる。これらのうちでも脂環式炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒が好ましい。これらの溶媒は、全単量体100重量部に対し、通常、0〜2,000重量部の範囲で用いられる。
本発明に係る付加共重合体の製造方法においては、分子量調節剤の存在下に付加共重合を行うことで、得られる共重合体の分子量を任意に制御することができ、その結果、溶融成形における流動特性などを制御できる。分子量調節剤としては、好ましくはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、トリメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシランなどのα−オレフィン化合物または置換α−オレフィン化合物、シクロペンテンなどの単環モノオレフィン化合物、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物などが用いられる。これらの分子量調節剤のうちでも、α−オレフィン化合物または単環モノオレフィン化合物を用いることが好ましく、中でもエチレンが最も好ましい。分子量調節剤の使用量は、環状オレフィン系付加共重合体の目標とする分子量、触媒成分の選択、重合温度条件の選択などによって変わるため一概には言えないが、全単量体に対しモル比で0.001〜0.5倍の量を用いることが好ましい。また、これらの分子量調節剤は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の環状オレフィン系付加共重合の製造方法で用いるパラジウム系重合触媒は、非常に高活性であるため少量の触媒を用いるのみで転化率を96%以上、好ましくは99%以上とすることができる。その結果、残留する単量体や金属成分の除去工程を必ずしも必要としない。必要に応じて単量体や金属成分の除去を行う場合は公知の方法を適宜用いてよく、例えば、重合反応溶液を乳酸、グリコール酸、オキシプロピオン酸、オキシ酪酸などのオキシカルボン酸やトリエタノールアミン、ジアルキルエタノールアミン、エチレンジアミンテトラ酢酸塩などの水溶液、メタノール溶液およびエタノール溶液から選ばれた溶液を用いて抽出・分離処理するか、珪藻土、シリカ、アルミナ、活性炭、セライトなどの吸着剤を用いて吸着およびフィルターでのろ過分離の処理にて金属成分を除去できる。あるいは、重合反応溶液を、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類やアセトン、メチルエチルケトンなどのケトンを用いて凝固することもできる。本発明に係る環状オレフィン系付加共重合体に含まれる金属成分は、Pd原子として好ましくは1
0ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下にすることができる。
重合反応溶液からはさらに脱溶工程を経て環状オレフィン系付加共重合体が得られる。その際に必要に応じて添加剤を配合してもよい。脱溶方法は特には限定されないが、例えば溶液を減圧下にて加熱濃縮したり、スチームを導入するなどしてよく、押出機などを用いて乾燥およびペレット化してもよい。また重合反応溶液をそのままキャストすることでフィルムに成形してもよい。
環状オレフィン系付加共重合体
本発明の環状オレフィン系付加共重合体は、前記の方法によって得られ、下記式(1)で表される構造単位(1)、および下記式(2)で表される構造単位(2)を有する。
Figure 2007332256
(式(1)中、Aは炭素数10〜12のアルキル基を示す。)
Figure 2007332256
ここで構造単位(1)は前記炭素数10〜12のアルキル基を有する5−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンに由来し、構造単位(2)はビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンに由来するものである。構造単位(1)のアルキル置換基としては、1−デシル基、1−ウンデシル基、1−ドデシル基、2−デシル基、8−メチル−1−ノニル基などの直鎖あるいは分岐アルキル基を有するものが挙げられ、中でも1−デシル基、1−ドデシル基が好ましい。
本発明に係る環状オレフィン系付加共重合体は、構造単位(1)の割合の増加に従い、得られるフィルムやシートなどの柔軟性が増し、ガラス転移温度は低下する。一方、構造単位(2)の割合の増加の従い、環状オレフィン系付加共重合体から得られるフィルムやシートなどの機械的特性および靭性が向上する。全構造単位中における構造単位(1)の割合は10〜90モル%、好ましくは15〜70モル%、さらに好ましくは20〜50モル%である。また、全構造単位中における構造単位(2)の割合は10〜90モル%、好ましくは30〜85モル%、さらに好ましくは50〜80モル%である。構造単位(1)の割合が10モル%を下回ると、ガラス転移温度が高すぎるために熱劣化を引き起こしたり、成形加工性が悪化するなどの問題が生じ、構造単位(2)の割合が10モル%を下回ると成形体の強度が悪化したり、重合活性の低下を招く場合がある。ここで両構造単位の合計は90モル%以上であることが好ましく、100モル%であることも好ましい。
本発明に係る環状オレフィン系付加共重合体は、成形体へ接着性付与や架橋部位の導入などの目的で、前述の官能基を有する環状オレフィン化合物に由来する構造単位を全構造単位中に10モル%以下、好ましくは7モル%以下、さらに好ましくは4モル%以下の割合で含んでもよい。当該構造単位の割合が10モル%を超えると、付加共重合体の吸水性や誘電率が増加することがある。なお、官能基を有する環状オレフィン化合物に由来する構造単位を有する共重合体を製造する場合においては、前記単量体組成物中に、官能基を有する環状オレフィン化合物を10モル%以下、好ましくは7モル%以下、さらに好ましくは4モル%以下の割合で含有させることができる。
本発明に係る環状オレフィン系系付加共重合体のガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性で測定される貯蔵弾性率(E’)および損失弾性率(E”)から導かれるTanδ=E”/E’の温度分散ピーク温度から求められ、110〜200℃、好ましくは120〜180℃である。このガラス転移温度が110℃未満の場合は耐熱性が要求される用途に適さなくなり、一方、200℃を超えると溶融成形が困難となる。
本発明に係る環状オレフィン系系付加共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が20,000〜200,000、好ましくは30,000〜100,000、さらに好ましくは30,000〜50,000である。数平均分子量が20,000未満では、成形したフィルムまたはシートの機械的強度が低下し、割れ易いものとなる場合がある。一方、その数平均分子量が200,000を超えると溶融粘度が高くなりすぎるため成形が困難になり、あるいは成形体の平坦性が損なわれることが多い。環状オレフィン系付加共重合体の分子量は、適切な分子量調節剤の存在下で重合を行うことによって調節することができる。
本発明の環状オレフィン系付加共重合体は、透明性に優れ、膜厚100μmのフィルムで測定される全光線透過率が通常85%以上、好ましくは88%以上であり、ヘイズ値は通常2.0%以下、好ましくは1.0%以下である。
<添加剤>
本発明の環状オレフィン系付加共重合体には、必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。例えば、酸化安定性を向上させ着色や劣化を防ぐため、フェノール系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびイオウ系酸化防止剤から選ばれた酸化防止剤を配合できる。該酸化防止剤は、該共重合体100重量部当たり0.001〜5重量部の割合で配合することができる。酸化防止剤の具体例としては、
1)2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−t−
ブチル−3−メチル−フェニル)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキ
サン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアレート、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネートなどのフェノール系酸化防止剤またはヒドロキノン系酸化防止剤、
2)ビス (2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホス
ファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)4,4'−ビフェニレンジホスホナイト、3
,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどのリン系2次酸化防止剤
3)ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾールなどのイオウ系2次酸化防止剤などを挙げることができる。
また本発明の環状オレフィン系付加共重合体には難燃剤を配合することもできる。難燃剤としては公知のものを使用することができ、例えばハロゲン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、金属水酸化物などを挙げることができる。これらの中でも少量の配合で効果を示し、吸水性、低誘電性、透明性の悪化を最小限にできるリン酸エステル系難燃剤が好ましく、1,3−ビス(フェニルホスホリル)ベンゼン、1,3−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン、1,3−ビス[ジ(アルキルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’,6'−ジメチルフェニル)ホスホリル]ベンゼ
ン、1,3−ビス[ジ(2’,6'−ジエチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,3
−ビス[ジ(2’,6’−ジイソプロピルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’,6’−ジブチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’−t−ブチルフェニル)ホスフホリル]ベンゼン、1,3−ビス[ジ(2’−イソプロピルフェニル)ホスホリル]ベンゼン1,3−ビス[ジ(2’−メチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス(ジフェニルホスホリル)ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’,6’−ジメチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’,6’−ジエチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’,6’−ジイソプロピルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’−t−ブチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’−イソプロピルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、1,4−ビス[ジ(2’−メチルフェニル)ホスホリル]ベンゼン、4,4’−ビス[ジ(2”,6”−ジメチルフェニル)ホスホリルフェニル]ジメチルメタンなどの縮合型リン酸エステル系難燃剤がさらに好ましい。配合量は難燃剤の選択や要求される難燃性の程度によって決まるが、環状オレフィン共重合体100重量部に対し0.5〜40重量部が好ましく、2〜30重量部がさらに好ましく、4〜20重量部が最も好ましい。0.5重量部より少ない場合には効果が不充分であり、一方、40重量部を超えて使用すると透明性が損なわれたり、誘電率などの電気特性が悪化したり、吸水率が増大したり、耐熱性が悪化する場合がある。
本発明の環状オレフィン系付加共重合体には、さらに必要に応じて公知の滑剤、紫外線吸収剤等、レベリング剤、染料などを配合することもできる。
<成形体>
本発明の環状オレフィン系付加共重合体は熱溶融成形に適したガラス転移温度を示し、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法などの方法で成形することができる。また、適当な溶媒に溶解し、キャストすることでフィルム、シートなどの形状に成形することもできる。特には熱溶融成形が溶媒を必要とせず、経済性、生産性に有利であるため好ましい。
また、本発明の環状オレフィン系付加共重合体の成形体には、必要に応じてITO、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの導電性膜、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムなどのバリアー膜、その他公知のハードコート層、反射防止層、防汚層、赤外線フィルター層、紫外線フィルター層、粘着剤層などを形成してもよい。これらの形成の手段としては塗布、貼合による方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法など挙げられる。
<用途>
本発明の環状オレフィン系付加共重合体は優れた透明性および耐熱性、低い吸水性と誘電率を有し、光学材料、電気・電子部品、医療用器材などに好適に用いることができる。
光学材料としては、液晶表示素子、有機EL素子、プラズマディスプレイおよび電子ペーパー、ディスプレイ用カラーフィルター基板、ナノインプリント基板、ITOや導電性樹脂層を積層した透明導電フィルムおよび透明導電膜、タッチパネル、導光板、保護フィルム、偏向フィルム、位相差フィルム、近赤外線カットフィルム、光拡散フィルム、反射防止フィルム、高反射フィルム、半透過半反射フィルム、NDフィルター、ダイクロイッ
クフィルター、電磁波シールドフィルム、ビームスプリッター、光通信用フィルター、カメラレンズ、ピックアップレンズ、F−θレンズなどの光学レンズおよびプリズム類、MD、CD、DVDなどの光学記録基板などに用いることができる。医療用器材としては薬品用パッケージ材料、滅菌容器、シリンジ、パイプ、チューブ、アンプルなどに用いられる。電子・電気部品としては容器、トレイ、キャリアテープ、セパレーションフィルム、絶縁フィルム、プリント基板用材料などに用いられる。
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、環状オレフィン系付加共重合体の分子量、ガラス転移温度、フィルムの透明性、強度などの各種性状は、下記の方法で求めた。
(1)分子量
ウォーターズ製150C型ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)装置で、東ソー製Hタイプカラムを用い、o−ジクロロベンゼンを溶媒として120℃で測定した。得られた分子量は標準ポリスチレン換算値である。
(2)ガラス転移温度
レオバイブロンDDV−01FP(オリエンテック製)を用い、測定周波数が10Hz、昇温速度が4℃/分、加振モードが単一波形、加振振幅が2.5μmの条件で測定される、貯蔵弾性率(E')および損失弾性率(E")から導かれるTanδ(=E"/E')のピーク温度を付加共重合体のガラス転移温度とした。
(3)共重合体組成
重合反応溶液の一部を採取し、過剰のイソプロパノールで重合体を凝固した上澄みをガスクロマトグラム(島津製作所製GC−14B)装置、キャピラリーカラム(膜厚1μm、内径0.25mm、長さ60m)にて分析し、残留する単量体を定量することで、組成を算出した。
(4)全光線透過率およびヘイズ
膜厚100μmのフィルムについて、Haze−Gard plus (BYK−Gardner製)を用いASTM−D1003に準じて全光線透過率を、JIS K7105に準じてヘイズ値を測定した。
(5)破断強度および伸び
JIS K7113に準じて試験片を引っ張り速度3mm/minで測定した。
(6)吸水率
23℃の水中にフィルムを24時間浸漬し、浸漬前後の重量変化より吸水率を求めた。[実施例1]
1Lのステンレス製反応器に窒素雰囲気下でトルエン400g、5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを63g(0.27mol)、75重量%のトルエン溶液としたビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを100g(0.80mol)仕込み、撹拌しながらエチレンを0.010MPaとなるまで導入した。容器内を40℃に昇温し、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)のトルエン溶液を2.7×10-3mmolおよびトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液を2.7×10-3mmol加えて重合を開始した。重合を計6時間行った結果、未反応の単量体の定量から転化率は98%、共重合体の5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は23.5モル%と計算された。トルエンで希釈した反応溶液を2Lのイソプロピルアルコールで凝固し、ついで真空下で加熱乾燥し133gの共重合体Aを得た。共重合体AのMnは58,000、Mwは242,000であった。
100重量部の共重合体Aへ、ペンタエリスリチルテトキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ1.0重量部を混合した。続いて真空プレス機
により290℃で100μm厚のフィルムAを得た。フィルムAのガラス転移温度は170℃であり、表1に示した評価結果のとおり、透明性、靭性に優れ、低吸水性を示した。[実施例2]
1Lのステンレス製反応器に窒素雰囲気下でトルエン400g、5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを63g(0.27mol)、75重量%のトルエン溶液としたビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを80g(0.64mol)仕込み、撹拌しながらエチレンを0.009MPaとなるまで導入した。容器内を40℃に昇温し、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)のトルエン溶液を2.7×10-3mmolおよびトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液を2.7×10-3mmol加えて重合を開始した。ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンのトルエン溶液を重合開始1時間後に15g、2時間後に5gそれぞれ添加し、重合を計6時間行い、99.7%の転化率で付加共重合体溶液を得た。未反応の単量体の定量から、共重合体の5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は25モル%と計算された。トルエンで希釈した反応溶液を2Lのイソプロピルアルコールで凝固し、ついで真空下で加熱乾燥し137gの共重合体Bを得た。共重合体BのMnは62,000、Mwは239,000であった。
実施例1と同様の操作により、共重合体Bから厚さ100μmのフィルムBを得た。フィルムBのガラス転移温度は175℃であり、表1に示した評価結果から透明性および靭性にさらに優れるものであることがわかった。
[実施例3]
1Lのステンレス製反応器に窒素雰囲気下でトルエン440g、5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを94g(0.40mol)、75重量%のトルエン溶液としたビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを63g(0.50mol)仕込み、撹拌しながらエチレンを0.007MPaとなるまで導入した。容器内を40℃に昇温し、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)のトルエン溶液を3.5×10-3mmolおよびトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液を3.5×10-3mmol加えて重合を開始した。ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンのトルエン溶液を重合開始1時間後に9g、2時間後に3gそれぞれ添加し、重合を計6時間行い、99.5%の転化率で付加共重合体溶液を得た。未反応の単量体の定量から、共重合体の5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は40モル%と計算された。トルエンで希釈した反応溶液を2Lのイソプロピルアルコールで凝固し、ついで真空下で加熱乾燥し160gの共重合体Cを得た。共重合体CのMnは65,000、Mwは250,000であった。
実施例1と同様の操作により、共重合体Cから厚さ100μmのフィルムCを得た。フィルムCのガラス転移温度は135℃であり、表1に示した評価結果から透明性に優れるものであることがわかった。
[比較例1]
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)に替えて酢酸パラジウムを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、重合は進行しなかった。
[比較例2]
1.5Lのステンレス製反応器に窒素雰囲気下でのトルエン650g、5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを78g(0.44mol)、75重量%のトルエン溶液としたビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを132g(1.05mol)仕込み、撹拌しながらエチレンを0.009MPaとなるまで導入した。容器内を40℃に昇温し、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)のトルエン溶液を3.9×10-3mmolおよびトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液を3.9×10-3mmol加えて重合を開始した。ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンのトルエン溶液を重合開始1時間後に25g、
2時間後に8.2gそれぞれ添加し、重合を計6時間行い、99.8%の転化率で付加共重合体溶液を得た。未反応の単量体の定量から、共重合体の5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は25モル%と計算された。トルエンで希釈した反応溶液を2Lのイソプロピルアルコールで凝固し、ついで真空下で加熱乾燥し200gの共重合体Dを得た。共重合体DのMnは62,000、Mwは236,000であった。
実施例1と同様の操作によりフィルム化を行なった。プレス機の温度が290℃ではフィルムは均一でなく表面の平坦性に劣るものであったため、成形温度を340℃としてフィルムDを得た。フィルムDはやや黄色に変色しており、表1に記載の結果が示すとおり
強度に劣るフィルムとなった。一方、トルエン溶液からのキャストにより得られたフィルムで測定されたガラス転移温度は235℃であった。
[比較例3]
1Lのステンレス製反応器に窒素雰囲気下でのニトロメタン400g、5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを63g(0.27mol)、75重量%のトルエン溶液としたビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを100g(0.80mol)仕込み、容器内を20℃に調節した。テトラキス(アセトニトリル)パラジウムテトラフルオロボレートのトルエン溶液を2.7×10-3mmol加えたところ重合は進行せず、さらに200倍のパラジウム触媒(5.4×10-1mmol)を追加したところ重合が開始した。転化率は開始後4時間で80%、12時間後で89%であった。未反応の単量体の定量から、共重合体の5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は22モル%と計算された。トルエンで希釈した反応溶液を2Lのイソプロピルアルコールで凝固し、ついで真空下で加熱乾燥し120gの共重合体Eを得た。共重合体EのMnは118,000、Mwは353,000であった。
実施例1と同様の操作により、共重合体Eから厚さ100μmのフィルムEを得た。フィルムEは茶色に着色しており、残留するパラジウムは原子吸光分析によって90ppmと定量された。フィルムEのガラス転移温度は170℃であり、表1に示した評価結果から透明性および靭性に劣るものであることがわかった。
[比較例4]
1Lのステンレス製反応器に窒素雰囲気下でトルエン400g、5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを63g(0.27mol)、75重量%のトルエン溶液としたビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを100g(0.80mol)、1−ヘキセンを0.60g(0.0071mol)仕込み、容器内を30℃に調節した。さらに触
媒としてヘキサフルオロアンチモン酸(HSbF6)で変性した2−エチルヘキサン酸ニ
ッケル(HSbF6/Ni=1(モル比))を0.22mmol、三フッ化ホウ素ジエチ
ルエーテル錯体2.0mmol、およびトリエチルアルミニウム2.2mmolを添加し、30℃で3時間重合を行った。単量体の転化率は94%であった。未反応の単量体の定量から、共重合体の5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は23モル%と計算された。トルエンで希釈した反応溶液へ乳酸4gを加えて撹拌し、精製水約500mlで2度洗浄した。次いで2Lのイソプロピルアルコールで凝固し、真空下で加熱乾燥し122gの共重合体Fを得た。共重合体FのMnは92,000、Mwは224,000であった。
実施例1と同様の操作により、共重合体Fから厚さ100μmのフィルムFを得た。フ
ィルムFのガラス転移温度は180℃であり、表1に示した評価結果から靭性に劣るものであることがわかった。
Figure 2007332256
本発明に係る環状オレフィン系付加共重合体は、光学材料、電気・電子部品、医療用器材などに好適に使用することができる。
光学材料としては、液晶表示素子、有機EL素子、プラズマディスプレイおよび電子ペーパー、ディスプレイ用カラーフィルター基板、ナノインプリント基板、ITOや導電性樹脂層を積層した透明導電フィルムおよび透明導電膜、タッチパネル、導光板、保護フィルム、偏向フィルム、位相差フィルム、近赤外線カットフィルム、光拡散フィルム、反射防止フィルム、高反射フィルム、半透過半反射フィルム、NDフィルター、ダイクロイックフィルター、電磁波シールドフィルム、ビームスプリッター、光通信用フィルター、カメラレンズ、ピックアップレンズ、F−θレンズなどの光学レンズおよびプリズム類、MD、CD、DVDなどの光学記録基板などに用いることができる。医療用器材としては薬品用パッケージ材料、滅菌容器、シリンジ、パイプ、チューブ、アンプルなどに用いられる。電子・電気部品としては容器、トレイ、キャリアテープ、セパレーションフィルム、OA機器の絶縁材料、フレキシブルプリント基板の絶縁層材料などに用いることができる。

Claims (9)

  1. 炭素数10〜12のアルキル基を有する5−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを10〜90モル%と、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを10〜90モル%含む単量体組成物を、下記触媒成分(a)、(b)および(d)を用いて得られる触媒、あるいは下記触媒成分(c)および(d)を用いて得られる触媒の存在下に付加共重合することを特徴とする環状オレフィン系付加共重合体の製造方法。
    (a)パラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ−ジケトネート化合物、
    (b)下記式(b)で表されるホスフィン化合物、
    P(R1)2(R2) …(b)
    (式(b)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基より選ば
    れる置換基であり、R2は炭素数3〜10の炭化水素基を表す。)
    (c)下記式(c)で表される2価パラジウムのホスフィン錯体、
    Pd[P(R1)2(R2)]nX2 …(c)
    (式(c)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基より選ば
    れる置換基であり、R2は炭素数3〜10の炭化水素基を表し、Xは有機酸アニオンある
    いはβ−ジケトネートアニオンであり、nは1または2を示す。)
    (d)イオン性のホウ素化合物。
  2. 触媒成分(b)が、トリシクロペンチルホスフィンまたはトリシクロヘキシルホスフィンであることを特徴とする請求項1に記載の環状オレフィン系付加共重合体の製造方法。
  3. 触媒成分(c)が、パラジウムとトリシクロペンチルホスフィンとの錯体、あるいはパラジウムとトリシクロヘキシルホスフィンとの錯体であることを特徴とする請求項1に記載の環状オレフィン系付加共重合体の製造方法。
  4. 触媒成分(d)が、カチオンがカルベニウムカチオンであり、アニオンがテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンまたはテトラキス(パーフルオロアルキルフェニル)ボレートアニオンである、イオン性のホウ素化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の環状オレフィン系付加共重合体の製造方法。
  5. 前記ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンのうちの20〜95重量%を使用して重合反応を開始する工程と、その重合反応中に前記ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの残余をさらに供給する工程とを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環状オレフィン系付加共重合体の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の方法によって得られ、下記式(1)で表される構造単位(1)を10〜90モル%、および、下記式(2)で表される構造単位(2)を10〜90モル%有し、ガラス転移温度が110〜200℃であり、数平均分子量が20,000〜200,000の範囲であることを特徴とする環状オレフィン系付加共重合体。
    Figure 2007332256
    (式(1)中、Aは炭素数10〜12のアルキル基を示す。)
    Figure 2007332256
  7. 前記構造単位(1)が20〜50モル%であり、前記構造単位(2)が50〜80モル%である、請求項6に記載の環状オレフィン系付加共重合体。
  8. 請求項6あるいは7に記載の環状オレフィン系付加共重合体を成形して得られるフィルムまたはシート。
  9. 請求項6あるいは7に記載の環状オレフィン系付加共重合体を成形して得られる光学材料。
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