図1は、本発明の実施例1に係るリアプロジェクタ10の概略構成を示す。リアプロジェクタ10は、スクリーン16の一方の面に光を投写し、スクリーン16の他方の面から出射する光を観察することで画像を鑑賞するプロジェクタである。投写レンズ12、第1ミラー13、第2ミラー14、及び第3ミラー15は、投写光学系を構成する光学要素である。投写光学系は、画像信号に応じて変調された光を投写させる。
図2は、光学エンジン部11の構成を説明するものである。光学エンジン部11は、画像信号に応じて変調された光を供給する。超高圧水銀ランプ20は、赤色(R)光、緑色(G)光、及び青色(B)光を含む光を供給する。第1インテグレータレンズ21及び第2インテグレータレンズ22は、アレイ状に配列された複数のレンズ素子を有する。第1インテグレータレンズ21は、超高圧水銀ランプ20からの光束を複数に分割する。第1インテグレータレンズ21の各レンズ素子は、超高圧水銀ランプ20からの光束を第2インテグレータレンズ22のレンズ素子近傍にて集光させる。第2インテグレータレンズ22のレンズ素子は、第1インテグレータレンズ21のレンズ素子の像を空間光変調装置上に形成する。
2つのインテグレータレンズ21、22を経た光は、偏光変換素子23にて特定の振動方向を有する偏光光、例えばs偏光光に変換される。重畳レンズ24は、第1インテグレータレンズ21の各レンズ素子の像を空間光変調装置上で重畳させる。第1インテグレータレンズ21、第2インテグレータレンズ22及び重畳レンズ24は、超高圧水銀ランプ20からの光の強度分布を空間光変調装置上にて均一化させる。
重畳レンズ24からの光は、第1ダイクロイックミラー25に入射する。第1ダイクロイックミラー25は、R光を反射させ、G光及びB光を透過させる。第1ダイクロイックミラー25で反射したR光は、第1ダイクロイックミラー25、反射ミラー26でそれぞれ光路を略90度折り曲げられ、R光用フィールドレンズ29Rへ入射する。R光用フィールドレンズ29Rは、反射ミラー26からのR光を平行化し、R光用空間光変調装置30Rへ入射させる。
R光用空間光変調装置30Rは、R光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶表示装置である。R光用空間光変調装置30Rに設けられた不図示の液晶パネルは、2つの透明基板の間に、画像表示のための液晶層を封入している。液晶パネルに入射したs偏光光は、画像信号に応じた変調によりp偏光光に変換される。R光用空間光変調装置30Rは、変調によりp偏光光に変換されたR光を出射する。R光用空間光変調装置30Rで変調されたR光は、色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム31へ入射する。
第1ダイクロイックミラー25を透過したG光及びB光は、第2ダイクロイックミラー27へ入射する。第2ダイクロイックミラー27は、G光を反射させ、B光を透過させる。第2ダイクロイックミラー27で反射されたG光は、第2ダイクロイックミラー27で光路を略90度折り曲げられ、G光用フィールドレンズ29Gへ入射する。G光用フィールドレンズ29Gは、第2ダイクロイックミラー27からのG光を平行化し、G光用空間光変調装置30Gへ入射させる。G光用空間光変調装置30Gは、G光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶表示装置である。G光用空間光変調装置30Gに入射したs偏光光は、液晶パネルでの変調によりp偏光光に変換される。G光用空間光変調装置30Gは、変調によりp偏光光に変換されたG光を出射する。G光用空間光変調装置30Gで変調されたG光は、R光とは異なる側からクロスダイクロイックプリズム31へ入射する。
第2ダイクロイックミラー27を透過したB光は、2枚のリレーレンズ28及び2枚の反射ミラー26を経由して、B光用フィールドレンズ29Bへ入射する。B光の光路は、R光の光路及びG光の光路よりも長い。空間光変調装置における照明倍率を他の色光と等しくするために、B光の光路には、リレーレンズ28を用いるリレー光学系が採用されている。B光用フィールドレンズ29Bは、反射ミラー26からのB光を平行化し、B光用空間光変調装置30Bへ入射させる。B光用空間光変調装置30Bは、B光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶表示装置である。B光用空間光変調装置30Bに入射したs偏光光は、液晶パネルでの変調によりp偏光光に変換される。B光用空間光変調装置30Bは、変調によりp偏光光に変換されたB光を出射する。B光用空間光変調装置30Bで変調されたB光は、R光及びG光とは異なる側からクロスダイクロイックプリズム31へ入射する。なお、各空間光変調装置30R、30G、30Bは、変調によりs偏光光をp偏光光に変換するほか、p偏光光をs偏光光に変換することとしても良い。
クロスダイクロイックプリズム31は、互いに略直交するように配置された2つのダイクロイック膜31a、31bを有する。第1ダイクロイック膜31aは、R光を反射させ、G光及びB光を透過させる。第2ダイクロイック膜31bは、B光を反射させ、R光及びG光を透過させる。クロスダイクロイックプリズム31は、それぞれ異なる側から入射したR光、G光及びB光を合成し、投写レンズ12の方向へ出射させる。
図1に戻って、投写光学系の光学要素である投写レンズ12、第1ミラー13、第2ミラー14、及び第3ミラー15は、いずれも投写光の光路に配置されている。投写レンズ12は、第1ミラー13へ向けて投写光を出射させる。第1ミラー13は、投写レンズ12及び第2ミラー14に対向する位置に設けられている。第1ミラー13は、投写レンズ12からの投写光を反射させることにより、第2ミラー14の方向へ折り曲げる。第1ミラー13は、略平坦な平面形状を有する。第1ミラー13は、平行平板上に反射膜を形成することにより構成できる。反射膜としては、高反射性の部材の層、例えばアルミニウム等の金属部材の層や誘電体多層膜等を用いることができる。また、反射膜の上には、透明部材を有する保護膜を形成することとしても良い。
第2ミラー14は、筐体17の背面近傍に設けられている。第2ミラー14は、非球面形状の曲面を有する。非球面形状の曲面は、中心軸に対して略回転対称な形状の曲面、例えば放物面や楕円面等、及び非回転対称な形状の自由曲面のいずれであっても良い。第2ミラー14は、第1ミラー13からの投写光を反射させることで、観察者から見て主に左右方向について投写光を広角化させるとともに、投写光を筐体17の天井面の方向へ折り曲げる。第2ミラー14は、非球面形状を有する基材上に反射膜を形成することにより構成できる。投写レンズ12のみならず第2ミラー14を用いて投写光を広角化させることで、投写レンズ12のみにより投写光を広角化させる場合より投写レンズ12を小型にすることができる。
第3ミラー15は、筐体17の天井面に設けられている。第3ミラー15は、第2ミラー14からの投写光をスクリーン16の方向へ反射させる。第3ミラー15は、第1ミラー13と同様に、略平坦な平面形状を有する。なお、第3ミラー15は、筐体17の天井面に略平行に配置する他、天井面に対して傾けて配置しても良い。リアプロジェクタ10は、第1ミラー13から見て筐体17の底面側に光学エンジン部11を配置する構成に限られない。光学エンジン部11は、第1ミラー13から見て図1の紙面手前にある筐体17の側面側、又は紙面奥側にある筐体17の側面側に配置することとしても良い。スクリーン16は、投写レンズ12、及び各ミラー13、14、15を経た光を透過させる透過型スクリーンである。
図3は、スクリーン16の要部断面構成を示す。スクリーン16は、画像信号に応じて変調された光を入射させる側に設けられたフレネルレンズ35を有する。フレネルレンズ35は、第3ミラー15からの光を角度変換する。フレネルレンズ35は、凸レンズの凸面を切り出した形状のプリズム部34を平面上に並べて構成されている。複数のプリズム部34は、略同心円状に配置されている。
第3ミラー15からの光は、第1面32からプリズム部34へ入射する。プリズム部34へ入射した光は、第2面33で全反射した後、観察者の方向へ進行する。フレネルレンズ35は、このようにして第3ミラー15から斜めに入射する光を観察者の方向へ角度変換する。スクリーン16は、フレネルレンズ35以外の他の構成、例えば、フレネルレンズ35からの光を拡散させるレンチキュラーレンズアレイやマイクロレンズアレイ、拡散材を分散させた拡散板等を設けることとしても良い。
図4は、投写光学系の構成について説明するものである。光学エンジン部11、投写レンズ12、第2ミラー14及びスクリーン16は、いずれも共通の光軸AXを持つ、いわゆる共軸光学系を構成している。また、光学エンジン部11、投写レンズ12、第2ミラー14及びスクリーン16は、光学エンジン部11からの光を光軸AXから特定の側へシフトさせて進行させる、いわゆるシフト光学系を構成している。かかる構成により、第2ミラー14から第3ミラー15、及び第3ミラー15からスクリーン16において、スクリーン16面に沿う方向へ投写光を進行させる(図1参照)。
スクリーン16面に沿う方向へ投写光を進行させることにより、光学エンジン部11から第3ミラー15までの各部をスクリーン16に近い位置に配置できる。よって、リアプロジェクタ10は、薄型な構成とすることができる。なお、図4では、光軸AXを一直線として表すために、第1ミラー13及び第3ミラー15における投写光の折り曲げについての図示を省略している。
光学エンジン部11からスクリーン16までの光路中の各部は、三次元空間において互いに位置決めされて配置されている。第3ミラー15及びスクリーン16は、筐体17を基準として位置決めすることができる。図5に示すように、投写レンズ12は、投写レンズ固定部42を介して台座41及び不図示の光学エンジン部11に固定されている。投写レンズ12は、投写レンズ固定部42に固定することで、予め光学エンジン部11との正確な軸合わせが可能である。
第1ミラー13及び第2ミラー14は、投写レンズ12からの投写光の光路中であって、光軸AXから離れた位置に配置されている。第1ミラー13は、不図示の第1ミラー支持部により支持されている。第2ミラー14は、第2ミラー支持部44により支持されている。第1ミラー支持部及び第2ミラー支持部44は、それぞれ不図示の連結部により台座41に連結されている。光学エンジン部11から第2ミラー14までの光路中の各部は、台座41に集約させて配置することにより、互いの位置関係を決定できる。また、筐体17内に台座41を固定することにより、台座41に集約させた各部と第3ミラー15、スクリーン16との位置関係を決定できる。
図6及び図7は、投写光学系の調整について説明するものである。投写光学系の調整に先立ち、通常の機械精度により、光学エンジン部11からスクリーン16までの各部を配置する。リアプロジェクタ10の投写光学系は、調整軸を使用する調整がなされる。調整軸は、投写光の光路外に設定される。本実施例では、調整軸として光軸AXを用いる。投写光学系の調整の際、図6に示すように、投写レンズ固定部42には、投写レンズ12に代えて調整用ビーム供給部51が設置される。調整用ビーム供給部51は、投写レンズ固定部42に設置されることで光軸AX上に配置される。図7に示すように、調整用ビーム供給部51は、光軸AX上の出射部52から、光軸AXに沿って調整用ビームを出射させる。
調整用ビーム供給部51としては、例えば、633nmのレーザ光を供給する半導体レーザを用いることができる。高い指向性を特徴とするレーザ光を調整用ビームとして用いることにより、投写光学系の調整を正確に行うことが可能となる。また、調整用ビームとして、可視光であるレーザ光を用いることで、調整用ビームのスポットを目視することにより投写光学系の調整を行うことができる。
図6に戻って、折り曲げ用反射部53は、第1ミラー13の延長面と光軸AXとが交わる位置に配置されている。折り曲げ用反射部53は、反射により調整用ビームを折り曲げる。折り曲げ用反射部53は、第1ミラー13と略平行に配置されている。折り曲げ用反射部53は、調整用ビーム供給部51からの調整用ビームを反射し、光軸AXに沿うように進行させる。また、折り曲げ用反射部53は、調整用反射部54で反射した調整用ビームを調整用ビーム供給部51の方向へ反射させる。折り曲げ用反射部53は、第1ミラー13とは別に設ける他、第1ミラー13と一体として設けることとしても良い。第1ミラー13の一部を折り曲げ用反射部53として機能させることとしても良い。光学要素間で投写光を折り返す投写光学系に対して、折り曲げ用反射部53で調整用ビームを折り曲げることにより、良好な光学性能を得るための調整を行うことができる。なお、図7では、光軸AXを一直線として表すために、折り曲げ用反射部53における調整用ビームの折り曲げについての図示を省略している。
第2ミラー支持部44には、第2ミラー14の他、調整用反射部54が設けられている。第2ミラー14及び調整用反射部54は、第2ミラー支持部44により一体として配置されている。調整用反射部54は、投写光の光路以外の位置に設けられている。第2ミラー14及び調整用反射部54は、光軸AXに対する投写光のシフト量に対応する間隔で、第2ミラー支持部44上に予め配置することができる。
図8は、第2ミラー14の位置調整、及び傾き調整について説明するものである。第2ミラー支持部44は、光軸AXに直交するxy面に沿って配置されている。第2ミラー支持部44は、光軸AXに直交する二次元方向であるx方向(x−shift)、及びy方向(y−shift)について平行移動可能に設けられている。また、第2ミラー支持部44は、x軸を中心として回転(yz−tilt)可能、かつy軸を中心として回転(xz−tilt)可能に設けられている。x軸及びy軸は、光軸AXに直交する二次元方向において互いに直交する。第2ミラー支持部44の移動及び回転に連動して、第2ミラー支持部44に固定されている調整用反射部54及び第2ミラー14も、移動及び回転する。
図9は、調整用反射部54の断面構成を示す。調整用反射部54は、調整用ビームの入射側に設けられた板部56を有する。板部56は、調整用ビームを通過させる開口部55を備える。開口部55は、調整用反射部54の中央部に設けられている。ミラー部57は、板部56のうち調整用ビームの入射側とは反対側であって、開口部55に対応する位置に設けられている。ミラー部57は、開口部55を通過した調整用ビームを反射させる。
図10〜図12は、調整用反射部54の移動及び回転について説明するものである。開口部55が光軸AX上にあるとき、調整用ビーム供給部51からの調整用ビームは、開口部55を通過した後、ミラー部57へ入射する。調整用ビームがミラー部57へ入射する場合、図10に示すように、開口部55内に調整用ビームのスポットspが形成される。これに対して、開口部55が光軸AXからずれた位置にあるとき、調整用ビームは、開口部55以外の位置、例えば板部56上に入射する。板部56へ調整用ビームが入射する場合、図11に示すように、スポットspは、板部56上に形成される。また、調整用反射部54が光軸AXからずれた位置にある場合、調整用ビームは、調整用反射部54以外の位置へ入射する。第2ミラー14の位置のずれは、調整用反射部54へ入射する調整用ビームのずれによって明確に認識することができる。
調整用ビームが開口部55以外の位置へ入射することを確認した場合、開口部55内にスポットspが形成されるように、第2ミラー支持部44ごと調整用反射部54を平行移動させる。第2ミラー14は、第2ミラー支持部44と共に平行移動されることにより、光軸AXに直交する二次元方向についての位置が調整される。
ミラー部57に対して調整用ビームが垂直に入射する場合、ミラー部57で反射した調整用ビームは、光軸AX上を進行する。ミラー部57から光軸AXに沿って調整用ビームが進行する場合、図10に示すように、調整用ビームは、調整用ビーム供給部51の出射部52へ入射する。これに対して、ミラー部57に対して調整用ビームが垂直方向以外の方向から入射した場合、ミラー部57で反射した調整用ビームは、光軸AXからずれて進行する。ミラー部57から光軸AXと離れて調整用ビームが進行する場合、調整用ビームは、出射部52以外の位置、例えば調整用ビーム供給部51のうち出射部52の周辺部に入射する。
出射部52の周辺部へ調整用ビームが入射する場合、図12に示すように、スポットsp’は、出射部52の周辺部に形成される。また、調整用反射部54が光軸AXからずれた位置にある場合、調整用ビームは、光軸AXから大きく離れて進行することにより、調整用ビーム供給部51以外の位置へ入射する場合もある。さらに、調整用反射部54の傾きが大きい場合、調整用ビームは、開口部55の壁面にて遮られる場合もある。第2ミラー14の傾きのずれは、調整用ビーム供給部51へ入射する調整用ビームのずれによって明確に認識することができる。
調整用ビームが出射部52以外の位置へ入射することを確認した場合、調整用反射部54からの調整用ビームを出射部52へ入射させるように、第2ミラー支持部44ごと調整用反射部54を回転させる。出射部52は、調整用反射部54からの調整用ビームを入射させる目標位置である。第2ミラー14は、x軸及びy軸(図8参照)を中心として回転させることにより、傾きが調整される。
このように、調整用反射部54は、調整用ビームを反射して出射部52へ入射させるように移動及び回転させることができる。第2ミラー14は、調整用反射部54の移動に連動して移動させることによる位置調整、及び調整用反射部54の回転に連動して回転させることによる傾き調整がなされる。開口部55が光軸AX上にあって、かつ調整用反射部54からの調整用ビームが光軸AX上の出射部52へ入射するとき、第2ミラー14は、正しい位置、及び正しい傾きとなる。第2ミラー14の位置ずれ、傾きずれの調整は、スポットspを目標位置である出射部52へ追い込むことにより的確に行うことができる。
以上により、第2ミラー14の位置調整及び傾き調整を容易かつ迅速に行うことができる。なお、第2ミラー14の光軸AX方向の位置ずれについては、通常の光学調整、例えば投写レンズ12のフォーカス調整等により対処できる。また、光軸AXを中心とする回転による第2ミラー14の傾きずれについては、例えば、投写光を反射させるための反射領域を通常より広く確保するように第2ミラー14を形成することで微調整を不要とすることができる。
各光学要素は、互いに連結し一体として構成することで、相対位置や傾きを決定することができる。この場合、各光学要素を一体とするために連結される部材が多くなるほど、投写光学系の高精度な調整は困難となる。また、各光学要素の間隔が大きくなるほど、各光学要素の位置調整について、高精度を課すことが困難となる。本実施例の場合、第2ミラー支持部44のみを介して第2ミラー14に連結された調整用反射部54を用いて、第2ミラー14の位置調整及び傾き調整を行う。よって、多くの部材により連結された光学要素同士の位置調整を行う場合と比較して、投写光学系は、高精度な調整を可能とし、かつ調整誤差を容易に低減できる。
また、光軸AXから離れた位置に光学要素が配置される場合、投写光学系は、通常の機械精度による組立てのみによって十分な光学性能を確保することが困難である。特に、第2ミラー14のように、投写光を広角化させる光学要素の位置ずれや傾きずれは、スクリーン16に投写される画像の品質へ大きく影響を及ぼす。本実施例の場合、投写レンズ固定部42(図6参照)に配置された調整用ビーム供給部51からの調整用ビームを用いることで、投写レンズ12に対する第2ミラー14の相対位置及び傾きを正確に調整できる。
投写レンズ12は、予め光学エンジン部11との正確な軸合わせが可能である。投写レンズ12を基準とする第2ミラー14の高精度な位置調整及び傾き調整を可能とすることで、投写光学系全体として良好な光学特性を確保することができる。調整用ビームを用いることにより、投写レンズ12と第2ミラー14との間に第1ミラー13が介在する構成に対しても、投写光学系の調整は容易かつ正確に行うことが可能である。よって、従来技術を用いる場合と比較して、投写光学系の調整に必要な時間及びコストを低減でき、かつ良好な光学特性を確保することができる。
このようにして、投写光を光軸AXからシフトさせるシフト光学系において、容易な調整によって良好な光学性能を得ることができる。これにより、薄型化を実現するための構成において高品質な画像を得るための調整を容易に行うことができるという効果を奏する。リアプロジェクタ10は、薄型な構成とし、かつ容易な調整により高品質な画像を表示することができる。
図13は、調整用反射部54を用いた調整の精度について説明するものである。調整用ビームのビーム径が1mmであるとすると、開口部55の直径は、例えば1.5mmと設定することができる。また、板部56の厚みは、例えば2mmと設定することができる。調整用ビームのビーム径を小さくし、開口部55の直径rを小さくするほど、第2ミラー14の位置調整の精度を高めることが可能となる。また、ミラー部57で反射した後調整用ビーム供給部51へ戻った調整用ビームの位置と出射部52との間隔dは、以下の式で表される。
d=L×tanθ
θは、ミラー部57へ入射する調整用ビームの光線と、ミラー部57で反射した調整用ビームの光線とがなす角度である。Lは、出射部52からミラー部57までの距離である。調整用ビーム供給部51へ戻った調整用ビームと出射部52とのずれを肉眼により確実に認識できる間隔dを0.5mm、距離Lを100mmとすると、θ=0.28度となる。よって、本発明によると、第2ミラー14の0.28度程度までの傾きずれを肉眼によって十分認識できる。第2ミラー14の傾き調整については、調整用ビームのビーム径、及び開口部55の直径rを小さくする他、板部56を厚くするほど、さらに精度を高めることが可能となる。
調整用反射部は、光吸収部材を用いる構成としても良い。図14に示す調整用反射部60は、光吸収部材を備える板部61を有する。板部61は、調整用ビームを吸収する。板部61は、全体を光吸収部材で構成する他、調整用ビームを入射させる側の面及び開口部55の壁面に光吸収部材を成膜することとしても良い。板部61により遮蔽された調整用ビームは、光吸収部材に吸収される。板部61で遮蔽された調整用ビームの反射を確実に無くすことにより、光学要素の位置調整及び傾き調整の精度を高めることができる。
第2ミラー支持部44は、光軸AXに直交する二次元方向であるx方向(x−shift)、及びy方向(y−shift)について平行移動可能である他、図15に示すように、光軸AXに平行なz方向(z−shift)について平行移動可能としても良い。これにより、光軸AXに直交する二次元方向のみならず光軸AX方向についての光学要素の位置ずれを修正し、良好な光学特性を得られる。また、第2ミラー支持部44は、x軸を中心として回転(yz−tilt)、y軸を中心として回転(xz−tilt)が可能である他、光軸AXに平行なz軸を中心として回転(xy−tilt)を中心として回転可能としても良い。これにより、x軸回り、y軸回りの回転による傾きずれのみならず、z軸回りの回転による傾きずれを修正し、良好な光学特性を得られる。
投写光学系は、図16に示すように、調整用反射部54に設けられた板部56と同様の板部66を調整用ビーム供給部51の出射側に設ける構成としても良い。調整用ビーム供給部51の出射側に設けられた板部66は、調整用ビームを通過させる開口部65を備える。開口部65は、板部66の中央部であって、出射部52に対応する位置に設けられている。調整用ビーム供給部51からの調整用ビームは、開口部65を通過した後、調整用反射部54の方向へ進行する。
ミラー部57で反射した後光軸AXに沿って進行した調整用ビームは、開口部65を通過した後出射部52へ入射する。光軸AXから離れて進行した調整用ビームは、板部66で遮られる。光軸AXから離れて進行する調整用ビームを板部66で遮蔽することで、第2ミラー14の傾き調整の精度を高めることができる。開口部を備える板部は、さらに、折り曲げ用反射部53(図6参照)の入射側に設けても良い。この場合も、第2ミラー14の傾き調整の精度を高めることができる。
投写光学系は、図17に示すように、光分岐部70を用いて調整を行うこととしても良い。光分岐部70は、光軸AX上であって、調整用ビーム供給部51と調整用反射部54との間に配置されている。光分岐部70は、半透過膜71を有する。半透過膜71は、調整用ビームの一部を反射させ、他の一部を透過させる。光分岐部70は、調整用ビーム供給部51と一体として配置されることが望ましい。これにより、調整用ビーム供給部51の設置とともに光分岐部70を光軸AX上に配置することができる。
調整用ビーム供給部51から光分岐部70へ入射し、半透過膜71を透過した調整用ビームは、調整用反射部54へ入射する。ミラー部57で反射した後光軸AXに沿って進行した調整用ビームは、光分岐部70へ入射する。光分岐部70へ入射した後半透過膜71で反射した調整用ビームは、約90度光路を折り曲げられ、調整用ビーム入射部72の方向へ進行する。半透過膜71を透過した調整用ビームは、そのまま調整用ビーム供給部51の方向へ進行する。光分岐部70は、半透過膜71を用いることで、調整用反射部54で反射された調整用ビームの一部を分岐させる。
図18の平面構成に示すように、調整用ビーム入射部72上には、アライメントマーク73が形成されている。アライメントマーク73は、互いに略直交する2つの線分からなる十字形状をなしている。2つの線分が交差する部分は、アライメントマーク73の中心位置である。アライメントマーク73の中心位置は、半透過膜71を中心として光軸AXを対称移動させた軸AX’(図17参照)上の目標位置である。調整用反射部54から光軸AX上を進行した後光分岐部70で分岐された調整用ビームは、軸AX’上を進行し、アライメントマーク73の中心位置へ入射する。この場合、スポットspがアライメントマーク73の中心位置にあるか否かにより、第2ミラー14の傾きずれの有無を容易に認識することができる。アライメントマーク73は十字形状である場合に限られず、中心位置を識別可能であれば他の形状であっても良い。
このように、光分岐部70を用いることにより、調整用ビームの出射部52以外の位置に設定された目標位置にて調整用ビームのずれを確認することができる。これにより、目標位置における調整用ビームのずれを明確に確認可能とし、光学要素の位置調整及び傾き調整を正確に行うことができる。なお、調整用ビーム入射部72の入射側に、開口部を備える板部を設けることとしても良い。板部を設けることで、第2ミラー14の位置調整及び傾き調整をさらに高い精度で行うことができる。
図19は、光学エンジン部11(不図示)の内部に調整用ビーム供給部51を取り付ける場合の構成例を説明するものである。図19に示す構成では、図17に示す構成と同様に、光分岐部70が設けられている。調整用ビーム供給部51及び光分岐部70は、例えば、光学エンジン部11のうち空間光変調装置30R、30G、30B及びクロスダイクロイックプリズム31(図2参照)を支持するためのホルダ(不図示)に取り付けることができる。光学エンジン部11の内部に調整用ビーム供給部51を取り付けることにより、投写レンズ12(図5参照)を取り外すこと無く、投写光学系の調整を行うことができる。
調整用ビーム供給部51からの調整用ビームは、光分岐部70、及び不図示の投写レンズ12を通過した後、調整用反射部54へ入射する。調整用反射部54からの調整用ビームは、投写レンズ12を通過した後、光分岐部70へ入射する。光分岐部70へ入射した後半透過膜71で反射した調整用ビームは、検出部75へ入射する。調整用ビームは、投写レンズ12にて広げられた状態で検出部75へ入射する。
検出部75は、軸AX’上の目標位置を含む面のうち、目標位置及びその近傍において調整用ビームを検出する。調整用ビームの光量が最大となる位置は、調整用ビームが広げられた領域のうちの中心位置である。調整用反射部54は、目標位置へ入射する調整用ビームの光量が最大となるように移動及び回転させる。調整用ビームの光量が最大である位置が目標位置と一致するとき、第2ミラー14は、正しい位置、及び正しい傾きとなる。検出部75により検出される調整用ビームの光量が目標位置において最大であるか否かにより、第2ミラー14の位置ずれ及び傾きずれの有無を容易に認識することができる。調整用ビームの光量が最大であるか否かは、光量の積分値により判断することとしても良い。このように、光学エンジン部11に調整用ビーム供給部51を設置する場合、検出部75を用いることにより、光学要素の位置調整及び傾き調整を正確に行うことができる。検出部75としては、例えば、CCDやCMOSセンサを用いることができる。
調整用ビームの光量が目標位置において最大となるか否かは、目視により確認することとしても良い。この場合、検出部75に代えて、上記の調整用ビーム入射部72を用いることができる。なお、投写レンズ12に代えて調整用ビーム供給部51を配置する場合においても、検出部75を用いても良い。検出部75は、図17に示す構成において、調整用ビーム入射部72に代えて配置できる。検出部75は、目標位置において調整用ビームを検出可能であれば良い。この場合、目標位置における調整用ビームの検出の有無により、第2ミラー14の位置ずれ及び傾きずれの有無を容易に認識することができる。
投写光学系は、第2ミラー14の位置調整及び傾き調整により調整を行う場合に限られない。各光学要素の相対位置を調整可能であれば良く、位置調整及び傾き調整を行う光学素子はいずれであっても良い。また、投写光学系は、投写レンズ12及び各ミラー13、14、15を備える構成に限られず、シフト光学系であれば他の構成としても良い。本発明は、レンズと非球面ミラーとの間に投写光を折り返すミラーが設けられた投写光学系の場合、特に効果的である。
図20は、本実施例の変形例1に係る投写光学系について説明するものである。本変形例の投写光学系は、第1ミラー13の傾き調整、及び第2ミラー14の位置調整により調整が行われることを特徴とする。第2ミラー支持部44には、調整用反射部78が設けられている。調整用反射部78は、上記の調整用反射部54(図6参照)と同様の構成を有する。第2ミラー支持部44は、光軸AXに直交するx方向及びy方向について平行移動可能に設けられている。第2ミラー14は、調整用反射部78の移動に連動して移動させることによる位置調整がなされる。
図21は、第1ミラー13の傾き調整について説明するものである。第1ミラー13の近傍には、折り曲げ用反射部77が設けられている。折り曲げ用反射部77は、上記の折り曲げ用反射部53(図6参照)と同様の構成を有する。折り曲げ用反射部77は、x軸を中心として回転(yz−tilt)可能、かつy軸を中心として回転(xz−tilt)可能に設けられている。第1ミラー13は、折り曲げ用反射部77の回転に連動して回転させることによる傾き調整がなされる。投写レンズ12を基準として第1ミラー13の傾き及び第2ミラー14の位置を調整することにより、投写光学系は、第2ミラー14を移動及び回転させる上記の場合と同様な調整を行うことができる。
本変形例の投写光学系は、第1ミラー13については傾き調整のための機構、第2ミラー14については位置調整のための機構をそれぞれ設ければ良い。傾き調整のための機構と位置調整のための機構とを別々に設置することで、それぞれの機構を簡易な構成とすることが可能となる。これにより、簡易な調整機構を用いることができる。なお、折り曲げ用反射部77の入射側に、開口部を備える板部を設けても良い。この場合、第1ミラー13の傾き調整の精度を高めることができる。投写光学系は、第1ミラー13の傾き調整及び第2ミラー14の位置調整により調整を行う構成とする場合に限られない。x方向の平行移動、y方向の平行移動、x軸を中心とする回転、y軸を中心とする回転による各調整を、2以上の光学要素で分担するものであれば良い。
図22は、本実施例の変形例2に係る投写光学系について説明するものである。本変形例の投写光学系は、偏心光学系である。偏心光学系は、共通の光軸を持たない光学要素により構成される。本変形例の投写光学系は、いずれも非球面形状の曲面を有する3つの非球面ミラー82、83、84を有する。空間光変調装置の像81は、不図示の光学エンジン部で形成される。投写光は、各非球面ミラー82、83、84で反射した後、スクリーン16へ入射する。投写光学系が偏心光学系である場合、通常の機械精度による組立てのみによって十分な光学性能を確保することが非常に困難である。
各非球面ミラー82、83、84は、予め設定された基準軸Sとの相対位置に基づいて位置決めされている。基準軸Sは、投写光の光路外に設定された調整軸である。調整用ビーム供給部51は、基準軸Sに沿って調整用ビームを進行させる。スクリーン16の方向へ投写光を反射させる1の非球面ミラー84には、調整用反射部87が連結されている。他の2つの非球面ミラー82、83には、それぞれ折り曲げ用反射部85、86が連結されている。ここで、調整軸が「投写光の光路外に設定」されるとは、2つの非球面ミラーにより規定される区間ごとに、調整軸が投写光の光路外にあることをいうものとする。例えば、調整軸のうち折り曲げ用反射部85、86間の部分は、折り曲げ用反射部85、86に対応する2つの非球面ミラー82、83間における投写光の光路外に設定される。
投写光学系は、1の非球面ミラー84について位置調整、及び傾き調整を行うことにより、上記の投写光学系と同様に良好な光学性能を得ることができる。このように、光軸を持たない偏心光学系においても、容易な調整によって良好な光学性能を得ることができる。なお、投写光学系は、スクリーン16の方向へ投写光を反射させる1の非球面ミラー84の位置調整及び傾き調整を行う場合に限られない。光学要素のうちの少なくとも1つについて位置調整又は傾き調整が可能な構成であれば良い。また、投写光学系は、3つの非球面ミラー82、83、84を用いる構成に限らず、偏心光学系であれば他の構成としても良い。上記の共軸系の投写光学系(図7参照)においても、光軸AXとは別に設定された調整軸を用いて調整を行うこととしても良い。
10 リアプロジェクタ、11 光学エンジン部、12 投写レンズ、13 第1ミラー、14 第2ミラー、15 第3ミラー、16 スクリーン、17 筐体、20 超高圧水銀ランプ、21 第1インテグレータレンズ、22 第2インテグレータレンズ、23 偏光変換素子、24 重畳レンズ、25 第1ダイクロイックミラー、26 反射ミラー、27 第2ダイクロイックミラー、28 リレーレンズ、29R R光用フィールドレンズ、29G G光用フィールドレンズ、29B B光用フィールドレンズ、30R R光用空間光変調装置、30G G光用空間光変調装置、30B B光用空間光変調装置、31 クロスダイクロイックプリズム、31a 第1ダイクロイック膜、31b 第2ダイクロイック膜、32 第1面、33 第2面、34 プリズム部、35 フレネルレンズ、AX 光軸、41 台座、42 投写レンズ固定部、44 第2ミラー支持部、51 調整用ビーム供給部、52 出射部、53 折り曲げ用反射部、54 調整用反射部、55 開口部、56 板部、57 ミラー部、60 調整用反射部、61 板部、65 開口部、66 板部、70 光分岐部、71 半透過膜、72 調整用ビーム入射部、AX’ 軸、73 アライメントマーク、75 検出部、77 折り曲げ用反射部、78 調整用反射部、81 像、82〜84 非球面ミラー、85、86 折り曲げ用反射部、87 調整用反射部、S 基準軸、90 プロジェクタ、91 透過部、92 筐体、93 スクリーン