JP4956270B2 - 樹脂成形方法及び樹脂成形装置 - Google Patents

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂から樹脂成形品を得る樹脂成形方法及び樹脂成形装置に関する。
熱可塑性樹脂は、種々の成形方法によって、所定形状の成形品に成形している。結晶性、非晶性、あるいは溶融粘度の高低に応じて、更に成形品の形状に応じて射出成形、ブロー成形、押し出し成形、プレス成形等種々の成形方法が実用化されている。
ところで、熱可塑性樹脂の種類、成形品の形状によっては、成形中に熱可塑性樹脂の温度が低下することにより溶融粘度が高くなり、目的とする成形品を得ることが困難となることがある。これを改良するため、成形品を成形する成形型(金型)をヒーター等によって加熱する方法が知られている。
また、例えば、特許文献1の樹脂成形方法においては、溶融した熱可塑性樹脂をシリコーンゴムで作製した成形型のキャビティ内に射出し、次いで、この熱可塑性樹脂を冷却して射出成形品を得る方法が開示されている。そして、表面精度、表面光沢が良好な樹脂成形品を簡便に作製することを目的として、シリコーンゴム製の成形型の組成に工夫を行っている。
しかしながら、上記従来の樹脂成形方法においては、特に熱可塑性樹脂を充填するためのキャビティの端部等においては、熱可塑性樹脂の温度が下がり、その粘度が上昇する場合がある。この場合には、成形型のキャビティ内において、熱可塑性樹脂の充填不良が生ずるおそれがある。
また、特許文献1においては、シリコーンゴムの耐熱温度は、例えば200℃程度であり、樹脂の温度の低下を防ぐためにヒーター等の加熱温度を上げると、シリコーンゴム製の成形型が劣化し、この成形型により成形する成形品の表面外観が低下するおそれがある。
また、例えば、特許文献2の樹脂成形品の製造方法及びその装置においては、型枠に粒状あるいは粉状の金属骨材と熱可塑性樹脂とを投入して成形製品を得るに際し、金属骨材をスポット的に加熱することができる金属加熱手段を用いている。この製造方法においては、金属加熱手段から、マイクロ波あるいは電磁波等を型枠内の金属骨材に照射してこの金属骨材を発熱させ、この金属骨材の発熱を利用して型枠内の熱可塑性樹脂を軟化あるいは溶解させたのち、樹脂成形品を加圧成形している。
しかしながら、特許文献2の技術は、金属骨材を選択的に加熱する技術であり、熱可塑性樹脂自体を加熱することができる技術ではない。また、金属加熱手段によって、金属骨材の加熱を行う際には、型枠も同時に加熱されてしまう。そのため、型枠をあまり加熱することなく、熱可塑性樹脂を選択的に加熱することはできない。
なお、例えば、特許文献3には、真空注型法により、熱可塑性樹脂の充填成形を行う方法が開示されている。
特開平7−178754号公報 特開平10−193370号公報 特開2002−59468号公報
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、複数の型部の型締めを簡単に行うことができると共に、ゴム製の成形型に対してキャビティ内の熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができる樹脂成形方法及び樹脂成形装置を提供しようとするものである。
第1の発明は、ゴム製の成形型における複数の型部を組み合わせ、該型部同士の間の型合わせ面に形成したキャビティ内に熱可塑性樹脂を充填し、該熱可塑性樹脂を冷却して樹脂成形品を得る樹脂成形方法であって、
上記型合わせ面において上記キャビティの周辺に型締め用空間を形成し、上記成形型を圧力容器内に収容しておき、
該圧力容器内を減圧して上記キャビティ内及び上記型締め用空間内を真空状態にする真空工程と、上記真空状態のキャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する充填工程と、上記キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却して樹脂成形品を得る冷却工程とを行うに際し、
上記充填工程の前後又は上記充填工程中に上記圧力容器内を真空状態から増圧して、該圧力容器内の圧力を上記型締め用空間内の圧力よりも高くすることによって、上記複数の型部の型開きを防止し、
また、上記充填工程中には、上記成形型を介して上記熱可塑性樹脂に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射し、該熱可塑性樹脂を加熱することを特徴とする樹脂成形方法にある(請求項1)。
本発明の樹脂成形方法は、複数の型部を備えたゴム製の成形型を用いて、熱可塑性樹脂からなる樹脂成形品を成形するに当たり、成形型に対して、熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができる方法である。また、本発明の樹脂成形方法においては、圧力容器内と、複数の型部における型締め用空間内との間に生じる圧力差を利用して、複数の型部の型締め(型開きの防止)を行うことができる。
より具体的には、本発明の樹脂成形方法においては、まず、真空工程として、圧力容器内を減圧して、複数の型部の型合わせ面に形成したキャビティ内及び型締め用空間内を真空状態にする。
次いで、充填工程として、真空状態のキャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する。そして、充填工程を行う前後又は充填工程を行っているときに圧力容器内を真空状態から増圧して、圧力容器内の圧力を型締め用空間内の圧力よりも高くする。このとき、圧力容器内の圧力と型締め用空間内の圧力との差により、複数の型部には、型合わせ面が開かないようにする型締め力が作用する。これにより、型締め用空間を利用して複数の型部の型締め(型開きの防止)を簡単に行うことができ、この型締め状態を充填工程及び冷却工程を行っている間維持することができる。
また、充填工程を行っているときには、成形型を介して熱可塑性樹脂に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射する。このとき、成形型を構成するゴムと熱可塑性樹脂との物性の違いにより、成形型に比べて、熱可塑性樹脂を大きく加熱することができる。これにより、キャビティ内への熱可塑性樹脂の充填が完了するまでの間において、成形型の温度よりも、キャビティ内における熱可塑性樹脂の温度を高く維持することができる。また、真空状態のキャビティ内に熱可塑性樹脂を充填することにより、熱可塑性樹脂をキャビティの全体に十分に行き渡らせることができる。
その後、冷却工程として、キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却したときには、充填不良がほとんどない良好な樹脂成形品を得ることができる。
それ故、本発明の樹脂成形方法によれば、複数の型部の型締めを簡単に行うことができると共に、ゴム製の成形型に対してキャビティ内の熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができ、充填不良がほとんどない良好な樹脂成形品を得ることができる。
また、上記0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波により、ゴム製の成形型に比べて、熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができる理由としては、以下のように考える。
すなわち、ゴム製の成形型の表面に照射された0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波は、成形型に吸収される割合に比べて、成形型を透過して熱可塑性樹脂に吸収される割合が多いと考える。そのため、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波による光のエネルギーが熱可塑性樹脂に優先的に吸収されて、熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができると考える。
第2の発明は、熱可塑性樹脂を充填するためのキャビティを、複数の型部同士の間の型合わせ面に形成してなるゴム製の成形型と、
0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を出射する電磁波発生手段と、
上記成形型を収容するための圧力容器と、
該圧力容器内を真空にするための真空手段とを有しており、
上記複数の型部の上記型合わせ面における上記キャビティの周辺には、型締め用空間が形成してあり、
上記真空手段によって上記圧力容器内を減圧して上記キャビティ内及び上記型締め用空間内を真空状態にする真空動作と、上記真空状態のキャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する充填動作とを行うよう構成してあり、
上記充填動作の前後又は上記充填動作中に上記圧力容器内を真空状態から増圧して、該圧力容器内の圧力を上記型締め用空間内の圧力よりも高くすることによって、上記複数の型部の型開きを防止し、
また、上記充填動作中には、上記成形型を介して上記熱可塑性樹脂に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射し、該熱可塑性樹脂を加熱するよう構成したことを特徴とする樹脂成形装置にある(請求項12)。
本発明の樹脂成形装置も、第1の発明と同様に、複数の型部を備えたゴム製の成形型を用いて、熱可塑性樹脂からなる樹脂成形品を成形するに当たり、成形型に対して、熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができるものである。また、本発明の樹脂成形装置においても、第1の発明と同様に、圧力容器内と、複数の型部における型締め用空間内との間に生じる圧力差を利用して、複数の型部の型締め(型開きの防止)を行うことができる。
そして、本発明においても、第1の発明における真空工程及び充填工程と同様に、上記真空動作及び充填動作を行い、その後、キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却して、充填不良がほとんどない良好な樹脂成形品を得ることができる。
それ故、本発明の樹脂成形装置によれば、複数の型部の型締めを簡単に行うことができると共に、ゴム製の成形型に対してキャビティ内の熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができ、充填不良がほとんどない良好な樹脂成形品を得ることができる。
なお、上記0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波により、上記ゴム製の成形型に比べて、上記熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができる理由は、上記第1の発明と同様である。
上述した第1、第2の発明における好ましい実施の形態につき説明する。
第1、第2の発明において、上記真空状態とは、絶対真空状態のみを意味するのではなく、通常は、1Torr(1.33×102Pa)以下の中真空状態であればよく、好ましくは10-3Torr(1.33×10-1Pa)以下、さらに好ましくは10-4Torr(1.33×10-2Pa)以下とすることができる。
また、上記複数の型部の型開きの防止は、上記圧力容器内と上記型締め用空間内との圧力差によって行うと共に、複数の型部を挟持して型開きを防止する構成も兼用することができる。例えば、ピン、ボルト、平板等を用いて、複数の型部の型開きを防止した状態で上記真空工程を行い、上記充填工程前(真空工程後)、充填工程中又は充填工程後に、上記圧力容器内と上記型締め用空間内との圧力差によって、より確実に型開きを防止することができる。
また、ピン、ボルト、平板等を用いた複数の型部の型開きの防止は、上記冷却工程を行う際に、保圧力として複数の型部に作用させておくことができる。また、上記圧力容器内と上記型締め用空間内との圧力差による複数の型部の型開きの防止は、上記冷却工程中も継続することができる。
また、上記複数の型部は、上記成形型を2つに分割して形成することができる。この場合には、一対の型部同士の間に、上記キャビティ及び上記型締め用空間を形成することができる。
また、複数の型部は、成形型を3つ以上に分割して形成することもできる。この場合は、特に、上記キャビティの形状により、成形後の樹脂成形品を取り出すことが困難な場合に有効である。また、この場合においては、各型部同士の間に、キャビティ及び型締め用空間を形成することができる。
また、複数の型部は、成形型を、その一部が繋がった状態で分割して(成形型を完全に分割せず、その一部が繋がっている状態に切り開いて)形成することもできる。この場合には、複数の型部としての分割した部分同士の間に、キャビティ及び型締め用空間を形成することができる。
上記真空工程(動作)後に上記圧力容器内を真空状態から増圧するタイミングは、上記充填工程(動作)前とすることができる。また、この圧力容器内を真空状態から増圧するタイミングは、例えば、キャビティ内への熱可塑性樹脂の充填が9割以上進行したときとすることもできる。この場合には、種々の部材によって複数の型部が不意に開かないように維持しておき、キャビティ内に熱可塑性樹脂が満たされることにより複数の型部に熱可塑性樹脂の充填圧力とほぼ同じ大きさの圧力が加わる寸前に、上記型締め(型開きの防止)を開始することができる。
また、上記圧力容器内を真空状態から増圧するタイミングは、上記充填工程(動作)後とすることもでき、この場合には、上記複数の型部を挟持して型開きを防止する構成を兼用することによって、充填工程中における複数の型部の型開きを防止することができる。
なお、上記真空工程(動作)においては、上記圧力容器内の全体を真空状態にせず、圧力容器内の一部、又は上記キャビティ及び型締め用空間のみを真空状態にすることによって、上記第1、第2の発明の作用効果を得ることができる場合もある。
また、上記充填工程中又は充填工程後において、上記型締め用空間内を水等の冷却媒体で満たし、上記キャビティ内に成形する樹脂成形品の冷却効率を向上させることも可能である。
また、上記成形型を介して上記熱可塑性樹脂に照射する電磁波としては、波長が0.78〜2μmの領域の電磁波だけでなく、これ以外の領域の電磁波も含まれていてもよい。この場合において、成形型を介して熱可塑性樹脂に照射する電磁波又は透過電磁波は、波長が0.78〜2μmの領域の電磁波を、これ以外の領域の電磁波よりも多く含むことが好ましい。
また、上記熱可塑性樹脂の加熱に、波長が0.78〜2μmの領域の電磁波を用いる理由は、この波長の領域の電磁波は、ゴム製の成形型を透過し易い性質を有する一方、熱可塑性樹脂に吸収され易い性質を有するためである。
また、上記電磁波発生手段等の電磁波発生源は、1個だけではなく、複数個用いることができる。また、上記成形型には、一方向からだけではなく、多方向から電磁波を照射することができる。
第1の発明において、上記充填工程においては、0.78〜4μmの波長領域を含む電磁波を出射する電磁波発生手段と、2μmを超える波長領域の電磁波の透過量を減少させるフィルターとを用い、上記電磁波発生手段から出射させた上記電磁波を上記フィルターを透過させ、該フィルターを透過させた後の透過電磁波を、上記成形型を介して上記熱可塑性樹脂に照射して、該熱可塑性樹脂を加熱することが好ましい(請求項2)。
また、第2の発明において、上記電磁波発生手段は、0.78〜4μmの波長領域を含む電磁波を出射するものであり、上記電磁波発生手段と上記成形型との間には、2μmを超える波長領域の電磁波の透過量を減少させるフィルターが配置してあり、上記電磁波発生手段から出射させた上記電磁波を上記フィルターを透過させ、該フィルターを透過させた後の透過電磁波を、上記成形型を介して上記熱可塑性樹脂に照射して、該熱可塑性樹脂を加熱するよう構成することが好ましい(請求項13)。
これらの場合には、ゴム製の成形型のキャビティ内に熱可塑性樹脂を充填する際に、電磁波発生手段から0.78〜4μmの波長領域を含む電磁波を出射し、フィルターを透過させた後の透過電磁波を、成形型を介して熱可塑性樹脂に照射する。そして、上記電磁波発生手段から出射された電磁波の中には、2μmを超える波長領域の電磁波も含まれているが、フィルターを用いたことにより、2μmを超える波長領域の電磁波は、成形型にできるだけ照射させないようにすることができる。これにより、成形型のキャビティ内に充填された熱可塑性樹脂には、2μm以下の波長領域の電磁波を効果的に照射させることができる。そのため、2μm以下の波長領域の電磁波により、成形型をあまり加熱することなく、熱可塑性樹脂を効果的に加熱することができる。
第1、第2の発明において、上記型締め用空間は、上記型合わせ面において、上記キャビティを囲むよう該キャビティの周囲の少なくとも3辺に形成することが好ましい(請求項3、14)。
この場合には、圧力容器内と、複数の型部における型締め用空間内との間に、より確実に型締め力を作用させることができる。
また、上記型締め用空間は、上記キャビティに連通して形成し、上記充填工程(動作)においては、上記熱可塑性樹脂を、上記キャビティを経由して上記型締め用空間の一部まで充填することが好ましい(請求項4、15)。
この場合には、充填工程(動作)において、キャビティ内に熱可塑性樹脂を充填する際には、真空状態にある型締め用空間からキャビティに対して、熱可塑性樹脂を吸入する力(充填させる力)を作用させることができる。これにより、キャビティへの熱可塑性樹脂の充填時間の短縮、充填不良の減少等、充填性能を向上させることができる。
また、キャビティを経由して型締め用空間の一部まで充填された熱可塑性樹脂の部分は、樹脂成形品の成形後に切除することができる。
なお、上記型締め用空間は、上記キャビティから独立して、上記型合わせ面に形成することもできる。
また、上記型締め用空間は、上記キャビティ内へ上記熱可塑性樹脂を注入するための注入口の形成部位とは反対側の部位において上記キャビティに連通していることが好ましい(請求項5、16)。
この場合には、充填工程(動作)において、キャビティ内に熱可塑性樹脂を充填する際に、型締め用空間内へ流入する熱可塑性樹脂の量をできるだけ少なくすることができ、真空状態にある型締め用空間からキャビティに対して、より効果的に熱可塑性樹脂を吸入する力を作用させることができる。
また、上記キャビティ及び上記型締め用空間は、上記型合わせ面において、上記複数の型部に跨って形成することが好ましい(請求項6、17)。
この場合には、種々の形状のキャビティを容易に形成することができる。また、複数の型部に跨って形成した型締め用空間により、複数の型部の両側からできるだけ均等に上記型締め力を作用させることができると考える。
また、上記充填工程(動作)中又は上記充填工程(動作)後には、上記圧力容器内を真空状態から増圧して、該圧力容器内の圧力を大気圧以上の圧力状態にすることが好ましい(請求項7、18)。
この場合には、複数の型部に作用させる上記型締め力を容易に大きくすることができる。
また、上記電磁波は、0.78〜2μmの波長領域に強度のピークを有していることが好ましい(請求項8、19)。
この場合には、電磁波発生手段等の電磁波発生源として、出射する電磁波の波長に所定の分布特性を有するハロゲンヒータ、赤外線ランプ等を用いることができる。
また、上記複数の型部には、該複数の型部を連続して貫通する連通貫通穴を複数形成し、該複数の連通貫通穴内に上記複数の型部に跨ってピンを嵌入しておくことにより、上記真空工程、上記充填工程及び上記冷却工程において(上記真空動作及び上記充填動作において)、上記複数の型部を組み合わせた状態を維持することが好ましい(請求項9、20)。
この場合には、上記真空工程(動作)等の上記型締め力を作用させる前の状態において、複数のピンによって複数の型部が不意に開いてしまわないようにすることができる。また、充填工程(動作)を行う際には、より強い型締め力を複数の型部に作用させることができる。
また、上記連通貫通穴は、複数の型部が組み合わさる方向に平行に形成することができ、複数の型部が組み合わさる方向に傾斜して形成することもできる。特に、複数の連通貫通穴を複数の型部が組み合わさる方向に傾斜して形成したときには、複数の連通貫通穴に嵌入した複数のピンを抜かない限り、複数の型部が開かないようにすることができる。
上記充填工程(動作)においては、上記キャビティ内へ該キャビティの容積を満たす量の上記熱可塑性樹脂を注入した後、該熱可塑性樹脂の充填圧力を減少させた状態で、上記0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波の照射を継続することが好ましい(請求項10、21)。
この場合には、上記熱可塑性樹脂を注入する際に生じたゴム製の成形型の弾性変形が回復するまで、上記0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波の照射を継続する。このとき、成形型に比べて熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができるため、成形型の弾性変形をできるだけ短時間で回復させることができる。その後、冷却後の樹脂成形品を複数の型部から取り出したときには、より寸法精度に優れた樹脂成形品を得ることができる。
また、上記成形型は、透明又は半透明のシリコーンゴムからなり、上記熱可塑性樹脂は、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン樹脂)、ASA樹脂(アクリレート・スチレン・アクリロニトリル樹脂)等のABS系樹脂であることが好ましい(請求項11、22)。
この場合には、成形型の作製が容易であると共に、上記電磁波により、成形型をほとんど加熱することなく上記ABS系樹脂を選択的に加熱することができる。
また、シリコーンゴムの硬度は、JIS−A規格測定において25〜80であることが好ましい。
また、シリコーンゴムのキャビティの表面に、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類の有機溶剤を塗布することによって、上記電磁波による熱可塑性樹脂の加熱を行う際に、キャビティの表面温度が上昇しやすくなり、好ましい場合もある。
また、上記熱可塑性樹脂は、非晶性熱可塑性樹脂であることが好ましい。
ところで、熱可塑性樹脂の冷却速度は比較的遅くすることが多い。そのため、冷却中に熱可塑性樹脂の結晶性が高くなることがあり、これによって、樹脂成形品の寸法精度が低下したり、樹脂成形品の耐衝撃性が低下したりすることがある。これに対し、熱可塑性樹脂を非晶性熱可塑性樹脂にしたことにより、上記樹脂成形品の寸法精度の低下及び耐衝撃性の低下等を防止することができる。
非晶性熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のスチレン系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン樹脂)、ASA樹脂(アクリレート・スチレン・アクリロニトリル樹脂)、HIPS樹脂(ハイインパクトポリスチレン樹脂、特にブタジエンを含有するもの)、変性ポリフェニレンエーテル等のゴム変性熱可塑性樹脂、又はポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート樹脂(PC)、PC/ゴム変性熱可塑性樹脂アロイ等を用いることができる。その中でも、特にゴム変性熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
また、上記熱可塑性樹脂は、ゴム変性熱可塑性樹脂とすることができ、ゴム変性熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ゴム質重合体の存在下にビニル系単量体をグラフト重合させた重合体を1種又は2種以上含むものが好ましい。
上記ゴム質重合体としては、特に限定されないが、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・ブテン−1・非共役ジエン共重合体、アクリルゴム、シリコーンゴム等が挙げられ、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記ゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、アクリルゴムを用いることが好ましく、上記ゴム変性熱可塑性樹脂としては、例えば、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂等のABS系樹脂を用いることがさらに好ましい。
以下に、本発明の樹脂成形方法及び樹脂成形装置にかかる実施例につき、図面と共に説明する。
本例の樹脂成形方法及び樹脂成形装置1は、ゴム製の成形型2における一対の型部2Aを組み合わせ、この型部2A同士の間の型合わせ面(型割り面)20に形成したキャビティ21内に熱可塑性樹脂3を充填し、この熱可塑性樹脂3を冷却して樹脂成形品を得るものである。
本例の樹脂成形装置1は、図1〜図3に示すごとく、一対の型部2Aを備えたゴム製の成形型2と、0.78〜4μmの波長領域を含む電磁波を出射する電磁波発生手段4と、成形型2を収容するための圧力容器61と、この圧力容器61内を真空にするための真空ポンプ(真空手段)62とを有している。
一対の型部2Aの型合わせ面20におけるキャビティ21の周辺には、このキャビティ21の一部と連通する型締め用空間22が形成してある。また、キャビティ21及び型締め用空間22は、一対の型部2Aの型合わせ面20において、一対の型部2Aに跨って形成してある。
樹脂成形装置1は、真空ポンプ62によって圧力容器61内を減圧してキャビティ21内及び型締め用空間22内を真空状態にする真空動作と、真空状態のキャビティ21内に溶融状態の熱可塑性樹脂3を充填する充填動作とを行うよう構成してある。この真空動作及び充填動作は、シーケンサ、プログラマブルコントローラ等の制御コンピュータを用いて行うことができる。
そして、樹脂成形装置1は、充填動作中に圧力容器61内を真空状態から増圧して、圧力容器61内の圧力を型締め用空間22内の圧力よりも高くすることによって、充填動作中及びその後の冷却中において一対の型部2Aの型開きを防止するよう構成してある。また、樹脂成形装置1は、充填動作を行っているときには、成形型2を介して溶融状態の熱可塑性樹脂3に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射し、この溶融状態の熱可塑性樹脂3を加熱するよう構成してある。なお、図1、図2において、電磁波を矢印Xによって示す。
以下に、本例の樹脂成形方法及び樹脂成形装置1につき、図1〜図9と共に詳説する。
本例においては、熱可塑性樹脂3として、非晶性熱可塑性樹脂3であると共にゴム変性熱可塑性樹脂3であるABS樹脂を用いる。
また、本例の成形型2は、シリコーンゴムからなる。この成形型2は、成形する樹脂成形品のマスターモデル(手作りの現物等)を液状のシリコーンゴム内に配置し、このシリコーンゴムを硬化させ、硬化後のシリコーンゴムを切り開いて、このシリコーンゴムからマスターモデルを取り出すことによって作製することができる。
また、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波(光)に対する吸光度(特定の波長の光に対する吸収強度を示す尺度)は、熱可塑性樹脂3として用いるABS樹脂の方が、ゴム製の成形型2として用いるシリコーンゴムよりも大きくなっている。なお、吸光度は、例えば、島津製作所製UV3100を用いて測定することができる。
また、本例においては、溶融した状態の熱可塑性樹脂3を成形型2のキャビティ21内に注入し、成形型2に上記電磁波を照射することにより、上記溶融した状態の熱可塑性樹脂3の粘度が5000Poise以上になることを防止して、樹脂成形品を得る。
図1、図2に示すごとく、本例の樹脂成形装置1は、2μmを超える波長領域の電磁波の透過量を減少させるガラス製フィルター52と、このガラス製フィルター52を透過した電磁波のうち、成形型2に吸収される波長領域であって少なくともこの波長領域のピークの電磁波を吸収するゴム製フィルター51とを有している。
また、ガラス製フィルター52は、電磁波発生手段4と成形型2との間に配置してあり、ゴム製フィルター51は、ガラス製フィルター52と成形型2との間において、成形型2の外面に対して、スペーサ511によって所定の間隙210を形成して配置してある。
そして、樹脂成形装置1は、キャビティ21内に溶融状態の熱可塑性樹脂3を充填する際には、電磁波発生手段4から出射させた電磁波をガラス製フィルター52及びゴム製フィルター51を透過させ、ガラス製フィルター52及びゴム製フィルター51を透過させた後の透過電磁波を、成形型2を介して熱可塑性樹脂3に照射するよう構成してある。そして、本例の樹脂成形装置1によれば、成形型2よりも高い温度に熱可塑性樹脂3を加熱することができる。
図1、図2に示すごとく、本例の電磁波発生手段4は、電磁波(光)の発生源41と、この発生源41による電磁波を成形型2の方向へ導くリフレクタ(反射板)42とを有している。リフレクタ42は、電磁波の発生源41の後方(成形型2の配設方向とは反対側の方向)に配設してあり、曲面状の反射面421を有している。本例の電磁波発生手段4は、リフレクタ42により、電磁波の発生源41から出射された電磁波のほとんどを、成形型2の方向へ導くよう構成してある。
本例の電磁波発生手段4としては、近赤外線領域内の約1.2μmの付近に光強度のピークを有する近赤外線ハロゲンヒータを用いる。
また、本例の電磁波発生手段4は、圧力容器61の外部に配設してあり、本例のガラス製フィルター52は、圧力容器61の上壁の一部を構成する透明窓部として設けてある。なお、電磁波発生手段4は、圧力容器61内に配設することも可能である。
また、圧力容器61内は、真空ポンプ62によって真空状態にすることが可能であると共に、圧力容器61に設けた空気導入口611等を大気開放することによって、真空状態から大気圧状態に戻すことが可能である。
図1〜図3に示すごとく、本例の型締め用空間22は、一対の型部2A同士の間の型合わせ面20において、キャビティ21を囲むようこのキャビティ21の周囲の3辺に形成してある。また、型締め用空間22は、キャビティ21内へ熱可塑性樹脂3を注入するための注入口23の形成部位とは反対側の部位においてキャビティ21に連通している。
図4に示すごとく、本例の型締め用空間22は、注入口23を形成した辺とは反対側の辺においてキャビティ21に繋がるゲート部221と、このゲート部221に連通し注入口23を形成した辺とは反対側の辺に平行に形成した第1空間部222と、この第1空間部222の両端にそれぞれ連通しキャビティ21の両側に形成した一対の第2空間部223とを有している。また、第2空間部223は、この第2空間部223に対向するキャビティ21の全体の長さよりも長く形成してある。本例の成形型2(一対の型部2A)は、平面四角形状を有しており、キャビティ21は、3方向(3辺の方向)から型締め用空間22によって囲まれている。
なお、型締め用空間22は、注入口23を形成した辺においても、第2空間部223から注入口23に対して左右に位置する部分まで形成することもできる。
また、図3、図4に示すごとく、本例の一対の型部2Aには、この一対の型部2Aを連続して貫通する連通貫通穴24が複数形成してある。そして、複数の連通貫通穴24内に一対の型部2Aに跨ってピン25を嵌入することにより、一対の型部2Aを組み合わせた状態を維持し、一対の型部2Aが不意に開かないようにすることができる。本例の複数の連通貫通穴24は、一対の型部2Aが組み合わさる方向に傾斜して形成してあり、複数の連通貫通穴24に嵌入した各ピン25を抜かない限り、一対の型部2Aを開けることができなくなっている。
次に、上記樹脂成形装置1を用いて、樹脂成形品を成形する方法及び本例における作用効果につき詳説する。
本例においては、以下の準備工程、真空工程、充填工程及び冷却工程を行って樹脂成形品を得る。
本例の樹脂成形方法においては、まず、準備工程として、一対の型部2Aを型合わせ面20において互いに組み合わせ、一対の型部2Aにおける複数の連通貫通穴24にそれぞれピン25を嵌入して、一対の型部2Aを一体化する。そして、この一体化した一対の型部2Aを、圧力容器61内に収容する。
次いで、図4に示すごとく、真空工程として、真空ポンプ62によって圧力容器61内を減圧して、一対の型部2Aの型合わせ面20に形成したキャビティ21内及び型締め用空間22内を真空状態にする。このとき、キャビティ21内及び型締め用空間22内は、真空ポンプ62によって圧力容器61内を真空状態にすることにより、注入口23を経由して真空状態にすることができる。
次いで、図1、図3に示すごとく、充填工程として、熱可塑性樹脂3の注入ノズル31を成形型2の注入口23にセットし、この注入ノズル31から真空状態のキャビティ21内に溶融状態の熱可塑性樹脂3を充填する。このとき、熱可塑性樹脂3は、キャビティ21に連通する型締め用空間22の一部(本例ではゲート部221の一部)まで充填する。これにより、キャビティ21内に熱可塑性樹脂3を充填する際には、真空状態にある型締め用空間22からキャビティ21に対して、熱可塑性樹脂3を吸入する力(充填させる力)を作用させることができる。これにより、キャビティ21への熱可塑性樹脂3の充填時間の短縮、充填不良の減少等、充填性能を向上させることができる。
そして、充填工程を行っているときには、圧力容器61内を真空状態から大気圧状態に増圧して、圧力容器61内の圧力を型締め用空間22内の圧力よりも高くする。このとき、圧力容器61内の圧力と型締め用空間22内の圧力との差により、一対の型部2Aには、型合わせ面20が開かないようにする型締め力が作用する。これにより、型締め用空間22を利用して一対の型部2Aの型締め(型開きの防止)を簡単に行うことができ、この型締め状態を充填工程及び冷却工程を行っている間維持することができる。
また、充填工程を行う際には、電磁波発生手段4から波長が約1.2μmの付近に光強度のピークを有する電磁波(近赤外線)を出射し、ガラス製フィルター52及びゴム製フィルター51を透過させた後の透過電磁波を、成形型2を介して熱可塑性樹脂3に照射する。このとき、成形型2を構成するゴムと熱可塑性樹脂3との物性の違いにより、ゴム製の成形型2に比べて、熱可塑性樹脂3を大きく加熱することができる。これにより、キャビティ21内への熱可塑性樹脂3の充填が完了するまでの間において、成形型2の温度よりも、キャビティ21内における熱可塑性樹脂3の温度を高く維持することができる。
そのため、キャビティ21内に熱可塑性樹脂3の充填不良が生じることを防止して、良好な樹脂成形品を得ることができる。
なお、上記電磁波の照射により、キャビティ21への熱可塑性樹脂3の充填圧力を軽減することもできる。
ところで、電磁波発生手段4から出射した波長が約1.2μmの付近に光強度のピークを有する電磁波(近赤外線)の中には、成形型2を構成するゴムに吸収される波長領域の電磁波も含まれている。そして、仮に、電磁波発生手段4から電磁波が成形型2に直接照射されると、成形型2においては、表面201側(電磁波が照射される側)から電磁波が吸収されることにより、キャビティ21を形成する内部202側に比べて、電磁波が直接照射される表面201側が多く加熱され、内部202側に比べて表面201側の温度が高くなってしまう(図1参照)。これにより、成形型2が変形してしまうおそれがある。
これに対し、図1、図2に示したように、本例においては、成形型2を構成するゴムと同じ材質のゴム製フィルター51を、電磁波発生手段4と成形型2との間において、成形型2に対して所定の間隙210を形成して配置している。そして、電磁波発生手段4から出射され、上記ガラス製フィルター52を透過した後の電磁波のうち、成形型2を構成するゴムに吸収される波長領域のほとんどの電磁波を、ゴム製フィルター51によって吸収することができる。
これにより、本例においては、ゴム製フィルター51が加熱される一方で、成形型2が加熱される割合を減少させることができる。また、ゴム製フィルター51と成形型2との間に所定の間隙210があることにより、ゴム製フィルター51に生じた熱が、成形型2の表面201側(透過電磁波が照射される側)へ伝達されてしまうことを抑制することができる。
そして、成形型2の表面201側の温度上昇を抑制することができると共に、成形型2の表面201側と内部202側(キャビティ21を形成する側)との温度差を小さくすることができる。
そのため、成形型2に変形が生ずることを抑制することができ、この変形に伴って、成形する樹脂成形品の寸法精度が低下してしまうことを抑制することができる。また、成形型2の耐久性を向上させることができる。
さらに、本例においては、電磁波発生手段4と成形型2との間に、上記ガラス製フィルター52を配置することにより、熱可塑性樹脂3をより効果的に加熱することができる。すなわち、電磁波発生手段4から出射された電磁波の中には、波長が2μmを超える電磁波も含まれているが、ガラス製フィルター52を用いることにより、波長が2μmを超える電磁波は、成形型2にできるだけ照射させないようにすることができる。これにより、成形型2のキャビティ21内に充填された熱可塑性樹脂3には、波長が2μm以下の電磁波を効果的に照射させることができる。そのため、熱可塑性樹脂3をより効果的に加熱することができる。
また、本例においては、ガラス製フィルター52を透過した後の電磁波が、ゴム製フィルター51に照射される。これにより、波長が2μmを超える電磁波がゴム製フィルター51にできるだけ照射されないようにすることができ、ゴム製フィルター51の加熱量を低減させることができる。そのため、ゴム製フィルター51に変形が生ずることを抑制することができ、ゴム製フィルター51の耐久性を向上させることができる。
また、本例の充填工程においては、キャビティ21内へこのキャビティ21の容積を満たす量の熱可塑性樹脂3を注入した後、この熱可塑性樹脂3の充填圧力を減少させた状態で、熱可塑性樹脂3を注入する際に生じたゴム製の成形型2の弾性変形が回復するまで、上記波長が約1.2μmの付近に光強度のピークを有する電磁波(近赤外線)の照射を継続する。このとき、成形型2に比べて熱可塑性樹脂3を選択的に加熱することができるため、成形型2の弾性変形をできるだけ短時間で回復させることができる。
その後、冷却工程として、キャビティ21内の熱可塑性樹脂3を冷却したときには、充填不良がほとんどなく寸法精度に優れた樹脂成形品を得ることができる。
また、成形後の樹脂成形品は、一対の型部2Aを開けて取り出すことができる。このとき、一対の型部2Aは、ゴム製であるため、型部2Aを弾性変形させながら樹脂成形品を取り出すことも可能である。また、成形後の樹脂成形品からは、キャビティ21を経由して型締め用空間22の一部まで充填された熱可塑性樹脂3の部分301を切除する。
また、本例においては、成形した樹脂成形品は、成形型2のキャビティ21内において空冷することにより冷却した後、このキャビティ21内から取り出す。このとき、上記のごとく熱可塑性樹脂3を選択的に加熱できることにより、成形型2の温度は、熱可塑性樹脂3の温度よりも低く維持することができる。そのため、樹脂成形品を冷却するために要する冷却時間を短縮することができる。
また、本例においては、成形型2の温度を低く維持することができることにより、成形型2の劣化を抑制することができ、成形型2の耐久性をより向上させることができる。
それ故、本例の樹脂成形装置1及び樹脂成形方法によれば、一対の型部2Aの型締めを簡単に行うことができると共に、ゴム製の成形型2に対してキャビティ21内の熱可塑性樹脂3を選択的に加熱することができる。また、充填不良がほとんどなく寸法精度に優れた樹脂成形品を得ることができ、成形型2及びゴム製フィルター51の耐久性を向上させることができる。
なお、本例においては、熱可塑性樹脂3としてABS樹脂を用いた。熱可塑性樹脂3としては、これ以外にも、上記成形型2の表面に上記電磁波(近赤外線)を照射したときに、成形型2内に吸収されずに透過した電磁波(近赤外線)を吸収することができる熱可塑性樹脂3を用いることができる。
図5は、透明のシリコーンゴムと半透明のシリコーンゴムについて、横軸に波長(nm)をとり、縦軸に光の透過率(%)をとって、各シリコーンゴムにおける光の透過率を示すグラフである。同図において、各シリコーンゴムは、200〜2200(nm)の間の波長の光を透過させることがわかる。そのため、この波長の領域である近赤外線をシリコーンゴム製の成形型2の表面に照射すると、当該近赤外線の多くを、成形型2を透過させて熱可塑性樹脂3に吸収させることができる。
また、同図において、シリコーンゴムを透過しない光は、シリコーンゴムに吸収されることを意味している。特に、波長が1700(nm)付近等の電磁波は、シリコーンゴムに多く吸収されることがわかる。そこで、本例においては、シリコーンゴムからなるゴム製フィルター51を透過させた後の透過電磁波を成形型2に照射することにより、特に、波長が1700(nm)付近等の電磁波を、ゴム製フィルター51に吸収させることができる。これにより、成形型2の発熱を極力抑えることができ、成形型2が熱劣化してしまうことを極力抑えることができる。
また、上記複数の連通貫通穴24及びピン25を用いる以外に、以下の構成によっても、一対の型部2Aの型締めを行うことができる。なお、以下の構成の型締めは、冷却工程を行う際の保圧力として作用させることができる。
例えば、図6、図7に示すごとく、一対の型部2Aの両側を、スチール板、硝子板等の平板26によって挟持することにより、一対の型部2Aの型締めを行うことができる。この場合において、ボルト、ピン等の軸部材27を用いて、一対の型部2Aを挟持する一対の平板26同士を接近させることにより、一対の型部2Aを挟持する力を付与することができる。なお、スチール板26Aを用いる場合には、図6に示すごとく、一対の型部2Aを複数箇所において部分的に挟持することができ、硝子板26Bを用いる場合には、図7に示すごとく、一対の型部2Aの全体を挟持することができる。
また、図8に示すごとく、一対の型部2Aの両側の複数箇所に座板28を設け、この複数箇所の座板28にボルト等の軸部材27を通し、ボルト、ナット等を締め込むことによって、両側の座板28を介して一対の型部2Aを挟持することもできる。
また、図9に示すごとく、成形型2を、この成形型2の一部29Aが繋がった状態で切り開いて、複数の型部2Aを形成することもできる。この場合には、切り開いた状態の型部2Aにキャビティ21及び型締め用空間22を形成し、この切り開いた状態の型部2A同士を型締めすることができる。
また、ゴム製の成形型2に比べてキャビティ21内に充填する熱可塑性樹脂3を選択的に加熱する工夫として、以下のような工夫を行うことも可能である。
すなわち、成形型2のキャビティ21の表面には、上記0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を吸収することができる離型剤又は塗料の被膜を形成することができる。より具体的には、離型剤又は塗料を成形型2のキャビティ21の表面に塗布し、上記電磁波発生手段4による電磁波を照射して揮発成分を排出し、不揮発成分からなる被膜とする。そして、上記0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波により、成形型2を介してキャビティ21内の熱可塑性樹脂3を加熱する際には、上記被膜が選択的に加熱されて、熱可塑性樹脂3を一層効果的に加熱することができる。なお、上記キャビティ21の表面に塗料の被膜を形成した場合には、この被膜が成形後の樹脂成形品の表面に付着して、塗装された樹脂成形品を得ることができる。
実施例における、熱可塑性樹脂をキャビティ内に充填している状態の樹脂成形装置を、上方から見た状態で示す説明図。 実施例における、熱可塑性樹脂をキャビティ内に充填している状態の樹脂成形装置を、図1におけるA―A線の方向から見た状態で示す説明図。 実施例における、熱可塑性樹脂をキャビティ内に充填している状態の樹脂成形装置を、図1におけるB―B線の方向から見た状態で示す説明図。 実施例における、圧力容器内を真空引きしている状態の樹脂成形装置を、上方から見た状態で示す説明図。 実施例において、横軸に波長(nm)をとり、縦軸に光の透過率(%)をとって、透明のシリコーンゴムと半透明のシリコーンゴムについての光の透過率を示すグラフ。 実施例における、一対の型部の型締めを行うための他の構成を示す斜視説明図。 実施例における、一対の型部の型締めを行うための他の構成を示す斜視説明図。 実施例における、一対の型部の型締めを行うための他の構成を示す斜視説明図。 実施例における、一対の型部の型締めを行うための他の構成を示す斜視説明図。
符号の説明
1 樹脂成形装置
2 成形型
2A 型部
20 型合わせ面
21 キャビティ
22 型締め用空間
23 注入口
3 熱可塑性樹脂
4 電磁波発生手段
51 ゴム製フィルター
52 ガラス製フィルター
61 圧力容器
62 真空ポンプ

Claims (22)

  1. ゴム製の成形型における複数の型部を組み合わせ、該型部同士の間の型合わせ面に形成したキャビティ内に熱可塑性樹脂を充填し、該熱可塑性樹脂を冷却して樹脂成形品を得る樹脂成形方法であって、
    上記型合わせ面において上記キャビティの周辺に型締め用空間を形成し、上記成形型を圧力容器内に収容しておき、
    該圧力容器内を減圧して上記キャビティ内及び上記型締め用空間内を真空状態にする真空工程と、上記真空状態のキャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する充填工程と、上記キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却して樹脂成形品を得る冷却工程とを行うに際し、
    上記充填工程の前後又は上記充填工程中に上記圧力容器内を真空状態から増圧して、該圧力容器内の圧力を上記型締め用空間内の圧力よりも高くすることによって、上記複数の型部の型開きを防止し、
    また、上記充填工程中には、上記成形型を介して上記熱可塑性樹脂に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射し、該熱可塑性樹脂を加熱することを特徴とする樹脂成形方法。
  2. 請求項1において、上記充填工程においては、0.78〜4μmの波長領域を含む電磁波を出射する電磁波発生手段と、2μmを超える波長領域の電磁波の透過量を減少させるフィルターとを用い、上記電磁波発生手段から出射させた上記電磁波を上記フィルターを透過させ、該フィルターを透過させた後の透過電磁波を、上記成形型を介して上記熱可塑性樹脂に照射して、該熱可塑性樹脂を加熱することを特徴とする樹脂成形方法。
  3. 請求項1又は2において、上記型締め用空間は、上記型合わせ面において、上記キャビティを囲むよう該キャビティの周囲の少なくとも3辺に形成してあることを特徴とする樹脂成形方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項において、上記型締め用空間は、上記キャビティに連通して形成しておき、
    上記充填工程においては、上記熱可塑性樹脂を、上記キャビティを経由して上記型締め用空間の一部まで充填することを特徴とする樹脂成形方法。
  5. 請求項4において、上記型締め用空間は、上記キャビティ内へ上記熱可塑性樹脂を注入するための注入口の形成部位とは反対側の部位において上記キャビティに連通していることを特徴とする樹脂成形方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項において、上記キャビティ及び上記型締め用空間は、上記型合わせ面において、上記複数の型部に跨って形成してあることを特徴とする樹脂成形方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項において、上記充填工程中又は上記充填工程後に、上記圧力容器内を真空状態から増圧して、該圧力容器内の圧力を大気圧以上の圧力状態にすることを特徴とする樹脂成形方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項において、上記電磁波は、0.78〜2μmの波長領域に強度のピークを有していることを特徴とする樹脂成形方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項において、上記複数の型部には、該複数の型部を連続して貫通する連通貫通穴を複数形成し、該複数の連通貫通穴内に上記複数の型部に跨ってピンを嵌入しておくことにより、上記真空工程、上記充填工程及び上記冷却工程において、上記複数の型部を組み合わせた状態を維持することを特徴とする樹脂成形方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項において、上記充填工程においては、上記キャビティ内へ該キャビティの容積を満たす量の上記熱可塑性樹脂を注入した後、該熱可塑性樹脂の充填圧力を減少させた状態で、上記0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波の照射を継続することを特徴とする樹脂成形方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項において、上記成形型は、透明又は半透明のシリコーンゴムからなり、上記熱可塑性樹脂は、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン樹脂)、ASA樹脂(アクリレート・スチレン・アクリロニトリル樹脂)等のABS系樹脂であることを特徴とする樹脂成形方法。
  12. 熱可塑性樹脂を充填するためのキャビティを、複数の型部同士の間の型合わせ面に形成してなるゴム製の成形型と、
    0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を出射する電磁波発生手段と、
    上記成形型を収容するための圧力容器と、
    該圧力容器内を真空にするための真空手段とを有しており、
    上記複数の型部の上記型合わせ面における上記キャビティの周辺には、型締め用空間が形成してあり、
    上記真空手段によって上記圧力容器内を減圧して上記キャビティ内及び上記型締め用空間内を真空状態にする真空動作と、上記真空状態のキャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する充填動作とを行うよう構成してあり、
    上記充填動作の前後又は上記充填動作中に上記圧力容器内を真空状態から増圧して、該圧力容器内の圧力を上記型締め用空間内の圧力よりも高くすることによって、上記複数の型部の型開きを防止し、
    また、上記充填動作中には、上記成形型を介して上記熱可塑性樹脂に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射し、該熱可塑性樹脂を加熱するよう構成したことを特徴とする樹脂成形装置。
  13. 請求項12において、上記電磁波発生手段は、0.78〜4μmの波長領域を含む電磁波を出射するものであり、
    上記電磁波発生手段と上記成形型との間には、2μmを超える波長領域の電磁波の透過量を減少させるフィルターが配置してあり、
    上記電磁波発生手段から出射させた上記電磁波を上記フィルターを透過させ、該フィルターを透過させた後の透過電磁波を、上記成形型を介して上記熱可塑性樹脂に照射して、該熱可塑性樹脂を加熱するよう構成したことを特徴とする樹脂成形装置。
  14. 請求項12又は13において、上記型締め用空間は、上記型合わせ面において、上記キャビティを囲むよう該キャビティの周囲の少なくとも3辺に形成してあることを特徴とする樹脂成形装置。
  15. 請求項12〜14のいずれか一項において、上記型締め用空間は、上記キャビティに連通して形成してあり、
    上記充填動作においては、上記熱可塑性樹脂を、上記キャビティを経由して上記型締め用空間の一部まで充填するよう構成したことを特徴とする樹脂成形装置。
  16. 請求項15において、上記型締め用空間は、上記キャビティ内へ上記熱可塑性樹脂を注入するための注入口の形成部位とは反対側の部位において上記キャビティに連通していることを特徴とする樹脂成形装置。
  17. 請求項12〜16のいずれか一項において、上記キャビティ及び上記型締め用空間は、上記型合わせ面において、上記複数の型部に跨って形成してあることを特徴とする樹脂成形装置。
  18. 請求項12〜17のいずれか一項において、上記充填動作中又は上記充填動作後に、上記圧力容器内を真空状態から増圧して、該圧力容器内の圧力を大気圧以上の圧力状態にするよう構成したことを特徴とする樹脂成形装置。
  19. 請求項12〜18のいずれか一項において、上記電磁波は、0.78〜2μmの波長領域に強度のピークを有していることを特徴とする樹脂成形装置。
  20. 請求項12〜19のいずれか一項において、上記複数の型部には、該複数の型部を連続して貫通する連通貫通穴が複数形成してあり、
    該複数の連通貫通穴内に上記複数の型部に跨ってピンを嵌入しておくことにより、上記真空動作及び上記充填動作において、上記複数の型部を組み合わせた状態を維持するよう構成したことを特徴とする樹脂成形装置。
  21. 請求項12〜20のいずれか一項において、上記充填動作においては、上記キャビティ内へ該キャビティの容積を満たす量の上記熱可塑性樹脂を注入した後、該熱可塑性樹脂の充填圧力を減少させた状態で、上記0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波の照射を継続することを特徴とする樹脂成形装置。
  22. 請求項12〜21のいずれか一項において、上記成形型は、透明又は半透明のシリコーンゴムからなり、上記熱可塑性樹脂は、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン樹脂)、ASA樹脂(アクリレート・スチレン・アクリロニトリル樹脂)等のABS系樹脂であることを特徴とする樹脂成形装置。
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