JP4955141B2 - 高分子固体電解質及びそれを用いたリチウムポリマー電池 - Google Patents

高分子固体電解質及びそれを用いたリチウムポリマー電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子固体電解質用硬化性組成物およびそれを用いたリチウムポリマー電池に関するものである。本発明の高分子固体電解質用硬化性組成物は加工性に優れ、また、本発明の硬化性組成物より得られる高分子固体電解質は、イオン伝導度が高く、優れた充放電特性を有し、電気化学的酸化、還元に対しても良好な安定性を示す。
【0002】
【従来の技術】
高分子電解質をリチウムイオン電池や電気化学的デバイスに使用していくためには、低温から高温の広い温度範囲で高いイオン伝導度を有し、結晶性を示さないことなどが必要不可欠である。しかしながら、このような必要性能を総合的に満足するような高分子電解質はこれまで開発されていない。
【0003】
リチウムイオン電池などに使用する電解質には、例えば、従来はプロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの有機溶剤が幅広く使用されているが、これらは沸点と蒸気圧の関係で一般に70〜90℃が高温域での使用限界となっている。最近はこのような有機溶媒の安全性を改良する方法として、ポリエチレンオキサイド(以下、PEOと記載する)を中心とした高分子電解質の研究が行われている。PEOは周期表1族又は2族に属する金属塩、例えばLiCF3SO3、LiClO4、NaCF3SO3、LiIなどと錯体を形成し、室温以上の温度領域では比較的良好なイオン伝導性を示し、さらに保存安定性も良好である。しかしながら、PEOのイオン伝導性は温度依存性が大きく、60℃以上では良好なイオン伝導度を示すものの20℃以下の温度ではイオン伝導度は著しく低下する。従って低温で使用するような汎用性のある商品に組み込むことは困難であった。低分子量PEOを用いてイオン伝導度を向上させる方法としてビニル系ポリマーの側鎖に低分子量PEOを導入する方法が、D.J.Banistarらによって、Polymer,25,1600(1984)に報告されている。しかしながら、この高分子材料はLi塩と錯体を形成するものの、低温でのイオン伝導度が不十分であった。さらにポリシロキサンの側鎖に低分子量PEOを導入した材料が、Journal of Power Sourse,20,327(1987)や特開昭63−136409号、特開平2−265927に記載されているが、イオン伝導度が不十分あるいは非晶質でない、合成処方が容易ではない、液状で加工性・成形性に劣る、機械的強度は不十分などの理由で実用化はされていない。PEO側鎖とSiH基を有するポリシロキサンとポリエチレンオキサイドを主鎖に有するオレフィンとのヒドロシリル化架橋体化合物に関して特開平3−115359号に記載されているが、イオン伝導度が4.9×10-6S・cm-1程度とかなり低いものであり満足のいくものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高いイオン伝導度を示し、機械的強度にも優れた高分子固体電解質を与える硬化性組成物を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)〜(D)を必須成分とする高分子固体電解質用硬化性組成物に関するものである。
(A)SiH基を有するポリシロキサン
(B)ベンゼン環、シロキシ結合(Si−O−Siから構成される結合)、カルボニル基、アミド結合、及びアミノ基からなる群より選ばれる構造を有する2個以上のアルケニル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)電解質塩化合物
【0006】
【発明の実施の形態】
〔A成分について〕
本発明の(A)成分としては、SiH基を有するポリシロキサンであれば、従来公知のものを制限無く使用することが出来る。
【0007】
(A)成分であるポリシロキサンは、ケイ素原子上の置換基として、ポリエチレンオキサイド及び/又は、環状カーボネート構造及び/又は環状エーテル構造を有し、なおかつSiH基を2個以上有するものであることが好ましい。
【0008】
(A)成分であるポリシロキサンが、ケイ素原子上の置換基としてポリエチレンオキサイドを有するものである場合には、(A)成分であるポリシロキサン中のケイ素原子の10%〜95%が、オキシエチレン単位の重合度が1〜12であるポリエチレンオキサイドを置換基として有することが好ましく、ポリシロキサン中のケイ素原子の40%〜90%が、オキシエチレン単位の重合度が1〜12であるポリエチレンオキサイドを置換基として有することがさらに好ましい。
【0009】
(A)成分であるポリシロキサンが、ケイ素原子上の置換基としてポリエチレンオキサイドを有する場合、(A)成分は以下の構造で表されるものであることが好ましい。
【0010】
【化1】
Figure 0004955141
(式中、m、nはそれぞれ1以上の整数で、pは1〜12の整数である。Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、nが2以上の場合、Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。ただしRのうち少なくとも1つは水素原子である。なお、m個ある繰り返し単位とn個ある繰り返し単位の並び方は順不同である。)
なお、本発明の(A)成分は分子中にSiH基を1個以上有するものであるが、SiH基を2個以上有するものであること(すなわち上式中のRのうち少なくとも2つが水素原子であること)がより好ましい。
【0011】
また(A)成分が上式で表される場合には、以下に示すポリエチレンオキサイドの導入率(%、以下Gで表す)が10%〜95%であることが好ましく、40%〜90%であることがさらに好ましい。
G=〔m/(m+n+2)〕×100
(A)成分であるポリシロキサンが、ケイ素原子上の置換基としてポリエチレンオキサイドを有する場合、ポリシロキサンの側鎖にポリエチレンオキサイドを有していることから(A)成分の誘電率が高くなり、支持電解質を溶解、解離する能力に優れている。また主鎖にシロキサンを有していることからガラス転移温度が低く、イオンの移動を容易にしている。またこのような高分子化合物は高温における安定性も高い。従って従来の高分子電解質では達成できなかった高温での劣化防止、低温における高イオン伝導性の発現が本発明によって達成された。
【0012】
(A)成分であるポリシロキサンが、ケイ素原子上の置換基中に環状カーボネート構造を有する場合、(A)成分は以下の構造で表されるものであることが好ましい。
【0013】
【化2】
Figure 0004955141
(式中、m、nはそれぞれ1以上の整数である。Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、nが2以上の場合、Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。ただしRのうち少なくとも1つは水素原子である。なお、m個ある繰り返し単位とn個ある繰り返し単位の並び方は順不同である。)
なお、本発明の(A)成分は分子中にSiH基を1個以上有するものであるが、SiH基を2個以上有するものであること(すなわち上式中のRのうち少なくとも2つが水素原子であること)がより好ましい。
【0014】
(A)成分であるポリシロキサンが、ケイ素原子上の置換基中に環状エーテル構造を有する場合、(A)成分は以下の構造で表されるものであることが好ましい。
【0015】
【化3】
Figure 0004955141
(式中、m、nはそれぞれ1以上の整数である。Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、nが2以上の場合、Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。ただしRのうち少なくとも1つは水素原子である。なお、m個ある繰り返し単位とn個ある繰り返し単位の並び方は順不同である。)
なお、本発明の(A)成分は分子中にSiH基を1個以上有するものであるが、SiH基を2個以上有するものであること(すなわち上式中のRのうち少なくとも2つが水素原子であること)がより好ましい。
【0016】
(A)成分であるポリシロキサンが、ケイ素原子上の置換基中に環状カーボネート構造又は環状エーテル構造を有する場合も、(A)成分の誘電率が高くなり、支持電解質を溶解、解離する能力に優れている。また主鎖にシロキサンを有していることからガラス転移温度が低く、イオンの移動を容易にしている。またこのような高分子化合物は高温における安定性も高い。従って従来の高分子電解質では達成できなかった高温での劣化防止、低温における高イオン伝導性の発現が本発明によって達成された。
【0017】
本発明の(A)成分であるポリシロキサンの重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算)は600〜100000であることが好ましく、2000〜100000であることがさらに好ましい。
〔B成分について〕
本発明の(B)成分としては、ベンゼン環、シロキシ結合(Si−O−Siから構成される結合)、カルボニル基、アミド結合及びアミノ基からなる群より選ばれる構造を有する2個以上のアルケニル基を有する化合物であれば従来公知のものを制限無く使用することが出来る。
【0018】
(B)成分としてこのましい分子量は80〜1000の範囲である。
【0019】
(B)成分の具体例としては、ビスフェノールAジアリルエーテル、2,2’−ジアリルビスフェノールA、ジアリルアミン、ジビニルベンゼン、ジアリルマレート、1,3−ジアリルウレア、ジアリルスクシネート、ジアリルカーボネート、ジアリルジカーボネート、ジアリルフタレート、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、アリル末端アクリルポリマーなどが挙げられる。
〔C成分について〕
本発明の(C)成分としては、ヒドロシリル化触媒であれば従来公知のものを制限無く使用することが出来る。
【0020】
(C)成分としては、白金化合物あるいはルテニウム化合物あるいはロジウム化合物から選ばれるものが好ましく、白金化合物であることがさらに好ましい。
【0021】
(C)成分として好ましいものとして、例えば、白金ビニルシロキサン、塩化白金酸、Pt(COD)2などが挙げられる。
〔D成分について〕
本発明の(D)成分としては、電解質塩化合物であれば従来公知のものを制限無く使用することが出来る。
【0022】
(D)成分としては、金属陽イオン、アンモニウムイオン、アミジニウムイオン、及びグアニジウムイオンからなる群より選ばれる陽イオンと、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF6 -、PF6―、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、R1SO3 -、(R1SO2)(R2SO2)N-、及び(R1SO2)(R2SO2)(R3SO2)C-〔R1、R2、R3は電子吸引性基を示す。〕からなる群より選ばれる陰イオンとからなる化合物であることが好ましい。
【0023】
また、R1SO3 -、(R1SO2)(R2SO2)N-、及び(R1SO2)(R2SO2)(R3SO2)C-、中のR1、R2、R3は各々独立して炭素数が1から6までのパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアリール基であることが好ましい。
【0024】
(D)成分の金属陽イオンは、周期表1族又は2族に属する金属、遷移金属、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn及びAg金属から選ばれた金属の陽イオンであることが好ましく、Liのイオンであることが特に好ましい。
【0025】
(D)成分としては、具体的には、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、又はLi(C25SO22が特に好ましい。
本発明の高分子固体電解質用硬化性組成物において、(A)成分と(B)成分のモル比は0.01〜5.0であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜3.0である。(C)成分であるヒドロシリル化触媒は(B)成分の二重結合1モルに対して、0.000001〜0.1モルであることが好ましく、さらに好ましくは0.00001〜0.01モルである。(D)成分である電解質塩化合物は、高分子固体電解質用硬化性組成物1g中に0.01ミリモル〜10ミリモル含有されることが好ましく、さらに好ましくは0.10ミリモル〜5.0ミリモルの範囲である。
【0026】
本発明の高分子固体電解質用硬化性組成物は、十分なイオン伝導度を有するが、さらに高いイオン伝導度が必要な場合などには、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド及びポリエチレングリコールジメチルエーテルなどの有機電解液を添加させても良い。また更に高分子化合物、他の両親媒性化合物などを添加しても良い。イオン伝導度と強度との両立の点から該有機電解液の量は(A)成分に対して10〜90%が好ましく、30〜70%がさらに好ましい。
【0027】
本発明の高分子固体電解質用硬化性組成物は、ヒドロシリル化反応により架橋して、3次元網目構造を有するものである。従って従来の高分子電解質で問題であった流動性の防止、機械的強度の向上、加工性・成形性の向上を達成することが可能である。
〔固体電解質製造法〕
本発明の(A)成分であるSiH基を有するポリシロキサンは、例えば以下に示す方法で合成されるが、この方法に限定されるものではない。
【0028】
ポリオルガノハイドロジェンシロキサンに対し、溶媒中、ヒドロシリル化触媒、末端オレフィンを有するポリエチレンオキサイドを滴下してヒドロシリル化させ、十分攪拌した後に、溶媒を減圧除去することにより、ポリエチレンオキサイドを置換基に有するポリシロキサンを得る。ここで使用するポリシロキサンの重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算)は、2000〜100000であることが好ましい。ここで使用する溶媒は特に限定されるものではないが、好ましいものとしては、例えばトルエンなどが挙げられる。反応温度は特に限定されるものではないが、室温〜100℃で実施されるのが好ましい。また添加する末端オレフィンを有するポリエチレンオキサイドとポリシロキサン中のSiH基の比率(オレフィン基/SiH基のモル比)は0.10〜0.95の範囲にあるのが好ましい。さらには0.40〜0.90の範囲にあるのが好ましい。特に好ましいのは0.50〜0.85の範囲である。ヒドロシリル化触媒は特に限定されるものではないが、白金化合物、ロジウム化合物、ルテニウム化合物が好ましい。例としては、白金ビニルシロキサン、塩化白金酸などが挙げられる。
【0029】
本発明の方法は、バッチ法、セミバッチ法又は連続式で実施しうる。この反応容器は、例えば連続的攪拌タンク反応容器でありうる。この方法はバッチ式あるいは連続式でおこなうのが好ましい。
【0030】
このようにして得られた(A)SiH基を有するポリシロキサンに対し、(B)ベンゼン環、シロキシ結合、カルボニル基、アミド結合、及びアミノ基からなる群より選ばれる構造を有する2個以上のアルケニル基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)電解質塩化合物を混合してから、加熱することにより高分子固体電解質用のフィルムを得ることができる。硬化反応の温度は特に限定されるものではないが、室温〜150℃の範囲が好ましく、室温〜120℃の範囲がさらに好ましい。特に好ましくは70℃から100℃の範囲が好ましい。
【0031】
本発明における高分子固体電解質用硬化性組成物の製造方法には特に制約はない。また反応容器の種類は重要でない。しかしながら副反応を防ぐため、非反応性材料で形成された反応容器中でおこなうのが好ましい。
〔電池作製〕
本発明で示された高分子固体電解質用硬化性組成物を用いると、高分子の利点である可とう性を有して大面積薄膜形状の固体電解質が容易に得られる。本発明で示されたの固体電解質を用いたリチウムポリマー電池の作製が可能である。この場合、正極材料として好ましいものとしては、例えばリチウム−マンガン複合酸化物、コバルト酸リチウム、五酸化バナジウム、ポリアセン、ポリピレン、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリピロール、ポリフラン、ポリアズレン、その他硫黄化合物などが挙げられる。負極材料として好ましいものとしては、例えばリチウム金属、リチウムがグラファイトあるいはカーボンの層間に吸蔵された層間化合物、リチウム−鉛合金などが挙げられる。また、本発明の固体電解質の高い電気伝導性を利用して、アルカリ金属イオン、Cuイオン、Caイオン、及びMgイオンなどの陽イオンのイオン電極の隔膜として利用することも考えられる。
【0032】
【実施例】
次に本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
反応容器に、ポリメチルハイドロジェンシロキサン4g、トルエン約10g及び白金ビニルシロキサン1.2×10-3mmolを加え、反応温度80℃で攪拌した。この混合物中に末端にアリル基を有する平均分子量約400のポリエチレンオキサイド24g(58mmol)を滴下した。滴下終了から3時間後反応を終了させトルエンを減圧除去した。その結果、ポリエチレンオキサイドの導入率(ポリシロキサンの全ケイ素原子中での、ポリエチレンオキサイドを置換基として有するケイ素原子の割合)が74%のポリシロキサンが得られた。得られたポリエチレンオキサイド変性のポリシロキサン3.0gに、ビスフェノールAジアリルエーテル73mg(0.24mmol)、白金ビニルシロキサン7.2×10-4mmol及びLiClO4108mg(1.0mmol)をTHF約1mlに溶解させたものを混合し、プレス機を使用して80℃で4時間加熱した。その結果無色透明の薄膜状物質を得た。この得られた薄膜状物質のイオン伝導度を、白金を電極とし、電圧0.5V、周波数範囲42Hz〜5MHzの交流法を用い、複素インピーダンス法により算出した。その結果、25℃におけるイオン伝導度は1.5×10-4S/cmであった。
(実施例2)
実施例1と同様の方法で得られたポリエチレンオキサイド変性のポリシロキサン(変性率:50%)3.0gにアセトニトリル約1mlに溶解させたものにLi(CF3SO22N947mg(Li/EO=0.08)を溶解した。この溶液にビスフェノールAジアリルエーテル131mg(0.43mmol)、白金ビニルシロキサン20×10-4mmolを混合し脱法した。補強材としてポリプロピレン不織布に上記溶液を含浸し、90℃、6時間空気中で硬化した。上記手順で厚さ130μmの電解質膜を得た。
(実施例3)
[LiCoO2正極の試作]
以下のポリマー電解質含浸用LiCoO2正極を作製した。
・電極組成:LiCoO2:黒鉛:アセチレンブラック:PVdF=87:9:1:3
・電極密度:2.68g/cc(気孔率38%)
・電極厚み:51μm
・電極伝導度:1.2×10-2S/cm
含浸用LiCoO2正極に実施例2記載の未架橋ポリマー溶液に浸し、減圧 下1時間真空含浸した。90℃、6時間空気中で硬化させることにより、密 度:3.12g/cc、電極伝導度:8.8×10-3S/cmの正極が得ら れた。
(実施例4)
[電池の試作]
・正極:実施例3で作製したLiCoO2電極 1.0×1.0cm2
・負極:リチウム金属、面積 1.2×1.2cm2
・電解質膜:実施例2で作製した電解質膜 厚さ 130μm
の構成でリチウムポリマー電池を作製した。
[初期交流インピーダンス特性]
上記で作製した電池について、周波数:20000〜0.1Hz、ΔV:10mV、温度:25℃、60℃において初期交流インピーダンス特性を評価した。結果を表1、図1、図2に示した。
【0033】
【表1】
Figure 0004955141
電解質に起因するバルク抵抗は25℃で81Ω・cm2(イオン伝導度:1.6×10-4S/cm)、60℃で8Ω・cm2(イオン伝導度:1.6×10-3S/cm)であった。また、リチウム界面に起因すると考えられる界面抵抗も25℃で355Ω・cm2(イオン伝導度:1.3×10-4S/cm)、60℃で53Ω・cm2と良好な値を示した。
[初期充放電特性]
上記で作製した電池について以下の条件で初期充放電特性を評価した。
Figure 0004955141
初期充放電曲線を図3に示した。初期容量は127mAh/g、初期効率は 84.5%であり、充放電可能であった。1サイクル終了後のインピーダン ス特性を図4に示した。充放電により、187Ωの正極界面に起因する抵抗 が生じた。
[保存特性]
上記で作製した電池について、60℃、充電状態で保存特性を評価した。200時間、500時間後のインピーダンス測定結果を図5、図6、表2に示した。
【0034】
【表2】
Figure 0004955141
500時間保存後において、バルク抵抗の変化は認められなかった。また、界面抵抗についてはリチウム側(還元側)に起因すると考えられる抵抗成分については、68Ωから95Ωと1.4倍、正極側(酸化側)に起因すると考えられる抵抗成分については187Ωから235Ωと1.3倍に増加したものの、電気化学的酸化・還元に対して基本的安定性を有していた。また、保存後の充放電特性についても初期と同様であり、大きな劣化は認められなかった。
【0035】
【発明の効果】
本発明の高分子固体電解質用硬化性組成物は加工性に優れ、また、本発明の高分子固体電解質用硬化性組成物より得られる高分子固体電解質は、イオン伝導度が高く、その温度依存性が小さく、さらに十分な機械強度を有するものである。
また、該高分子固体電解質を用いて作製したリチウムポリマー電池は優れた電気化学的特性を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高分子固体電解質を用いたリチウムポリマー電池の25℃におけるCole−Coleプロットを示す図である。
【図2】本発明の高分子固体電解質を用いたリチウムポリマー電池の60℃におけるCole−Coleプロットを示す図である。
【図3】本発明の高分子固体電解質を用いたリチウムポリマー電池の酸化還元反応特性を示す図である。
【図4】本発明の高分子固体電解質を用いたリチウムポリマー電池1サイクル充放電後の60℃におけるCole−Coleプロットを示す図である。
【図5】本発明の高分子固体電解質を用いたリチウムポリマー電池の60℃/200時間保存後の60℃におけるCole−Coleプロットを示す図である。
【図6】本発明の高分子固体電解質を用いたリチウムポリマー電池の60℃/500時間保存後の60℃におけるCole−Coleプロットを示す図である。
【図7】本発明の高分子固体電解質を用いたリチウムポリマー電池の60℃/500時間保存後の酸化還元反応特性を示す図である。

Claims (17)

  1. (A)〜(D)を必須成分とする高分子固体電解質用硬化性組成物。
    (A)ケイ素原子上の置換基としてポリエチレンオキサイドを有するとともに、SiH基を2個以上有するポリシロキサン
    (B)ベンゼン環、シロキシ結合(Si−O−Siから構成される結合)、カルボニル基、アミド結合、及びアミノ基からなる群より選ばれる構造を有する2個のアルケニル基を有する化合物
    (C)ヒドロシリル化触媒
    (D)電解質塩化合物
  2. (A)成分であるポリシロキサンが、ケイ素原子上の置換基中に環状カーボネート構造を有するとともに、SiH基を2個以上有することを特徴とする請求項1記載の高分子固体電解質用硬化性組成物。
  3. (A)成分であるポリシロキサン中のケイ素原子の10%〜95%が、オキシエチレン単位の重合度が1〜12であるポリエチレンオキサイドを置換基として有することを特徴とする請求項に記載の高分子固体電解質用硬化性組成物。
  4. (A)成分であるポリシロキサン中のケイ素原子の40%〜90%が、オキシエチレン単位の重合度が1〜12であるポリエチレンオキサイドを置換基として有することを特徴とする請求項に記載の高分子固体電解質用硬化性組成物。
  5. (B)成分が、ビスフェノールAジアリルエーテル、2,2’−ジアリルビスフェノールA、ジアリルアミン、ジビニルベンゼン、ジアリルマレート、1,3−ジアリルウレア、ジアリルスクシネート、ジアリルカーボネート、ジアリルジカーボネート、ジアリルフタレート、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、及びアリル末端アクリルポリマーからなる群より選択されるものである請求項1〜のいずれかに記載の高分子固体電解質用硬化性組成物。
  6. (C)成分であるヒドロシリル化触媒が、白金化合物、ルテニウム化合物、ロジウム化合物からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の高分子固体電解質用硬化性組成物。
  7. (D)成分である電解質塩化合物が、金属陽イオン、アンモニウムイオン、アミジニウムイオン、及びグアニジウムイオンからなる群より選ばれる陽イオンと、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF 、PF 、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、RSO 、(RSO)(RSO)N、及び(RSO)(RSO)(RSO)C〔R、R、Rは電子吸引性基を示す。〕からなる群より選ばれる陰イオンとからなる化合物であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の高分子固体電解質用硬化性組成物。
  8. 、R、Rが、炭素数が1から6までのパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアリール基であることを特徴とする請求項記載の高分子固体電解質用硬化性組成物。
  9. 金属陽イオンが周期表1族又は2族に属する金属から選ばれる金属の陽イオンであることを特徴とする請求項又は記載の高分子固体電解質用硬化性組成物。
  10. 金属陽イオンがLiである請求項又は記載の高分子固体電解質用硬化性組成物。
  11. (D)成分である電解質化合物塩が、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、又はLi(CSOからなる群より選ばれるものであることを特徴とする請求項記載の高分子固体電解質用硬化性組成物。
  12. 金属陽イオンが遷移金属の陽イオンであることを特徴とする請求項又は記載の高分子固体電解質用硬化性組成物。
  13. 金属陽イオンがMn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn及びAg金属からなる群より選ばれる金属の陽イオンである請求項又は記載の高分子固体電解質用硬化性組成物。
  14. (D)成分である電解質塩化合物が、高分子固体電解質用硬化性組成物1g中に0.10ミリモル〜5.0ミリモル含有されることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の高分子固体電解質用硬化性組成物。
  15. 負極と正極の間に請求項1〜14のいずれかに記載の高分子固体電解質用硬化性組成物を硬化することによって得られた硬化物を電解質として配したリチウムポリマー電池。
  16. 負極が、金属リチウム、リチウム合金、リチウムを吸蔵した無機材料およびリチウムを吸蔵した炭素材から成る群から選ばれた少なくとも1つである請求項15記載のリチウムポリマー電池。
  17. 請求項1〜14記載の高分子固体電解質用硬化性組成物に、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド及びポリエチレングリコールジメチルエーテルよりなる群から選択された少なくとも1つの有機電解液を添加し、該組成物を硬化することによって得られた硬化物を電解質として負極と正極の間に配したゲル状リチウムポリマー電池。
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