JP3984359B2 - 重合性化合物、それを用いた高分子固体電解質及びその用途 - Google Patents

重合性化合物、それを用いた高分子固体電解質及びその用途 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電気化学素子に有用な、ポリまたはオリゴカーボネート基を主成分とする高分子化合物と電解質塩とを含む高イオン伝導性の高分子固体電解質及びその製造方法、該高分子固体電解質を用いた電池及びその製造方法、並びに該高分子固体電解質を用いた電気二重層コンデンサ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アイオニクス分野でのダウンサイジング、全固体化という流れの中で、従来の電解質溶液に代わる新しいイオン伝導体として、固体電解質を用いた全固体一次電池や二次電池及び電気二重層コンデンサ等の電気化学素子への応用が盛んに試みられている。
すなわち、従来の電解質溶液を用いた電気化学素子では、部品外部への液漏れあるいは電極活物質の溶出などが発生しやすいために長期信頼性に問題があるのに対して、固体電解質を用いた製品はそのような問題がなく、また薄型化することも容易である。さらに固体電解質は耐熱性にも優れており、電池などの製品の作製工程においても有利である。
特に高分子化合物を主成分とした高分子固体電解質を使用したものは、無機物に比較して、電池の柔軟性が増し、種々の形状に加工できるというメリットがある。しかしながら、これまで検討されてきているものでは、高分子固体電解質のイオン伝導度が低いため、取り出し電流が小さいという問題を残していた。
【0003】
最近、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、MoS2等の金属酸化物や、金属硫化物を正極に用い、リチウム、リチウム合金、リチウムイオンを吸蔵放出できる炭素材料や無機化合物あるいは高分子化合物を負極に用いたリチウム二次電池が多く研究されている。例えば、ジャーナル・オブ・エレクトロケミカル・ソサイエティ(J. Electrochem. Soc.),第138巻(第3号),665頁(1991年)には、MnO2あるいはNiO2を正極とする電池が報告されている。これらは、重量当りもしくは体積当りの容量が高く、注目されている。
【0004】
さらに、近年、メモリーバックアップ電源用などに、活性炭、カーボンブラックなど比表面積の大きい炭素材料を分極性電極とし、その間にイオン伝導性溶液を配置する電気二重層コンデンサが多用されてきている。例えば、機能材料,1989年2月号33頁には、炭素系分極性電極と有機電解液を用いたコンデンサが記載され、第13回エレクトロケミカルソサエティ・ミーティング・アトランタ・ジョージア,1988年5月号(第18号)には、硫酸水溶液を用いた電気二重層コンデンサが記載されている。
また、特開昭63-244570号公報には、高電気伝導性を有するRb2Cu33Cl7を無機系固体電解質として用いるコンデンサが開示されている。
【0005】
しかしながら、現在の電解質溶液を用いた電池や電気二重層コンデンサでは、長期間の使用や高電圧が印加される場合などの異常時には、電池やコンデンサの外部への液漏れなどが発生し易いために長期使用や信頼性に問題がある。一方、従来の無機系イオン伝導性物質を用いた電池や電気二重層コンデンサは、イオン伝導性物質の分解電圧が低く、出力電圧が低いという問題や、電解質と電極との界面形成が難しく、製造加工等の問題があった。
【0006】
さらに、特開平4-253771号には、ポリホスファゼン系高分子化合物を電池や電気二重層コンデンサのイオン伝導性物質として用いることが提示されており、このような高分子化合物を主成分とした固体イオン伝導性物質を使用したものは、無機系イオン伝導性物質に比較して出力電圧が高く、種々の形状に加工でき、封止も簡単であるというメリットがある。しかしながら、この場合では、高分子固体電解質のイオン伝導度が10-4〜10-6S/cm程度と充分なものではなく、取り出し電流が小さいという欠点があった。また、固体電解質を分極性電極と共にコンデンサに組み立てる場合には、固体同士の混合であることから、比表面積の大きい炭素材料に均一に複合するのが難しいという問題もあった。
【0007】
一般的に検討されている高分子固体電解質のイオン伝導度は、室温における値で10-4〜10-5S/cm位まで改善されているものの、液体系イオン伝導性物質に比較するとなお2桁以上低いレベルにとどまっている。また、0℃以下の低温になると、一般に極端にイオン伝導性が低下する。さらに、これらの固体電解質を電池や電気二重層コンデンサ等の素子の電極と複合して組み込む場合や、これらの固体電解質を薄膜にして電池や電気二重層コンデンサ等の素子に組み込む場合、電極との複合化や接触性確保等の加工技術が難しく製造法でも問題点があった。
これら高分子固体電解質の例として、ブリティッシュ・ポリマー・ジャーナル(Br. Polym. J.),第319巻,137頁(1975年)には、ポリエチレンオキ サイドと無機アルカリ金属塩との複合物がイオン伝導性を示すことが記載されているが、その室温でのイオン伝導度は10-7S/cmと低い。
【0008】
最近、オリゴオキシエチレンを側鎖に導入した櫛型高分子化合物が、イオン伝導性を担っているオキシエチレン鎖の熱運動性を高め、イオン伝導性が改良されることが多数報告されている。
例えば、ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリイ(J. Phys. Chem.),第89巻,987頁(1984年)には、ポリメタクリル酸の側鎖にオリゴオキシエチレンを付加したものにアルカリ金属塩を複合化した例が記載されている。さらに、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J. Am. Chem. Soc.),第106巻,6854頁(1984年)には、オリゴオキシエチレン側鎖を有するポリホスファゼンにアルカリ金属塩を複合化した例が記載されているが、イオン伝導度は10-5S/cm程度とまだ不十分であった。
【0009】
米国特許4357401号にはヘテロ原子を含有する架橋ポリマーとイオン化可能な 塩からなる高分子固体電解質が結晶性が低下し、ガラス転移点が低く、イオン伝導度が改善されることを報告しているが、10-5S/cm程度とまだ不十分であった。
【0010】
ジャーナル・オブ・アプライド・エレクトロケミストリィ(J. Appl. Electrochem.),第5巻,63〜69頁(1975年)に記載されているように、ポリアク リロニトリルやポリフッ化ビニリデンゲル等の架橋高分子化合物に溶媒及び電解質を加えた、いわゆる高分子ゲル電解質は高イオン伝導度となることが報告されている。また、特公昭58-36828号にはポリメタクリル酸アルキルエステルに溶媒及び電解質を加えた同様の高分子化合物ゲル電解質は高イオン伝導度となることが報告されている。
しかしながら、これら高分子ゲル電解質は高イオン伝導度であるが、流動性を付与することとなるため、完全な固体としては取り扱えず、膜強度や成膜性に劣り、電気二重層コンデンサや電池に応用すると短絡が起こり易いうえ、液体系イオン伝導性物質同様に封止上の問題が発生する。
【0011】
一方、米国特許4792504号にはポリ酸化エチレンの連続ネットワーク中に金属 塩及び非プロトン性溶剤からなる電解液が含浸された架橋系高分子固体電解質を用いることにより、イオン伝導度が改善されることが提案されている。しかしながら、イオン伝導度は10-4S/cmとまだ不十分であり、溶剤が添加されたため、膜強度が低下するという問題が生じた。
【0012】
特公平3-73081号、米国特許4908283号には、ポリエチレングリコールジアクリレート等のアクリロイル変性ポリアルキレンオキシド/電解質塩/有機溶媒からなる組成物に紫外線等の活性光線を照射することにより、高分子固体電解質を形成する方法が開示され、重合時間を短縮する試みがなされている。
【0013】
また、米国特許4830939号、特開平5ー109310号にも架橋性のポリエチレン性不 飽和化合物/電解質塩/活性光線不活性溶媒からなる組成物に紫外線や電子線等の放射線を照射することにより、電解液を含んだ高分子固体電解質を形成する同様の方法が開示されている。これらの系では高分子固体電解質中の電解液を増量したため、イオン伝導度は向上したが、まだ不十分であり、また膜強度は悪化する傾向にある。
米国特許5609974号には電解質塩の解離能力を高くする目的で、モノカーボネ ート側鎖を導入した架橋高分子化合物を用いた高分子固体電解質が開示されているが、カーボネートの導入量が少なく、イオン伝導度、電流特性等、十分な性能が得られない。
特開平1-311573号には、活性水素原子を有さない側鎖を結合した高分子を高分子固体電解質の成分として用いた電気化学装置が記載されており、当該高分子としてメタクリレート末端キャップ−ポリ(エチレンエーテルカーボネート)が例示されている。しかし、これらの高分子はイオン伝導度が不十分で、またメタクリレートの重合性が低く、多量の溶媒を含んだ状態では重合できず、高分子固体電解質ゲルとしての加工性に問題があった。
【0014】
特開平9-147912号には、特開平1-311573号と同様のメタクリレート末端キャップ−ポリ(アルキレン(エーテル)カーボネート)とメタクリレート末端キャップ−ポリエーテルとの共重合体を用いることにより柔軟性と剛直性を併せ持ち、アルカリ金属電極との密着性及び界面抵抗を改善した高分子固体電解質が記載されている。しかしながらこれらは、ポリエーテル鎖の耐久性に問題がある。また、二種類以上のメタクリレートを使用するため重合が不均一に進行し、また、メタクリレート自身の重合性が充分ではないため残存二重結合が多いという問題があり、この点でも耐久性に問題があった。
特開平8-295715号には、ポリエーテルあるいはポリエステル単位を含む特異な構造のウレタンアクリレートを用いることにより、イオン伝導度及び成膜性が改善され、重合収縮が少ない高分子固体電解質が提案されている。しかしながら、これらの化合物は、両末端に水酸基を有する化合物とジイソシアネートとの反応により合成されており、反応副生成物が多く含まれる。このため、イオン伝導度及び電気化学特性の安定性に問題がある。また、ポリエーテルやポリエステルを含むため耐久性にも問題を残している。ポリエーテル等に代えてポリカーボネートを導入した構造にも言及があるが、ポリカーボネートとジイソシアネートの双方に芳香環を有する構造が含まれるなど、電極との密着性その他の特性について十分な考慮がなされていない上、ポリカーボネート鎖を含有する高分子を用いた固体電解質については具体的な製造例及び特性の検討はなされていない。
【0015】
ソリッド・ステート・アイオニクス,1982年,第7号,75頁には高分子固体電解質であるLiClO4/ポリエチレンオキサイド複合体にさらにアルミナ粒 子を複合させることにより、イオン伝導度が低下することなく高分子固体電解質の強度改善が達成できることが報告されている。また、特開平6ー140052号には、ポリアルキレンオキサイド/イソシアネート架橋体/無機酸化物複合体に非水電解液を含浸させた固体電解質が提案されており、電解液含有高分子固体電解質の強度改善が図られている。しかしながら、これら複合高分子固体電解質では高分子化合物自身の特性が不十分であり、イオン伝導度、加工性、安定性の点で実用化にはまだ問題が残っていた。
【0016】
特開昭62-272161号には、シアノエチル化セルロースのような高分子化合物を 用いた高分子固体電解質を活性炭電極と組み合わせた電気二重層コンデンサが開示されている。しかしながら、用いる高分子固体電解質のイオン伝導度が不十分であり、また、活性炭電極との複合が難しく、満足できる性能の電気二重層コンデンサは得られていない。
【0017】
そこで、これらの問題を解決するために、本発明者らはウレタン結合を有し、オキシアルキレン基を含有する(メタ)アクリレートプレポリマーから得られる重合体及び電解質塩からなる複合体を用いたイオン伝導性の高分子固体電解質を提案した(特開平6-187822号)。この高分子固体電解質のイオン伝導度は、溶媒未添加で10-4S/cm(室温)の高レベルであり、さらに溶媒を添加すると、室温またはそれより低温であっても10-3S/cm以上となり、また膜質も良好で自立膜として得られる程度に改善された。また、このプレポリマーは重合性が良好で、電池に応用する場合、プレポリマー状態で電池に組込んだ後に重合し、固体化できるという加工上のメリットもあった。
【0018】
しかしながら、これらの系も電池等のセパレータとして使用するには膜強度が不十分で、工業的に取扱いにくいという問題があった。また、水分、電解質塩の分解物、電極材料不純物等の電池系内の微量の不純物で高分子、特に高温でポリオキシアルキレン(ポリエーテル)部位が劣化しやすく、電池寿命に影響するという問題点もあった。
また、電池や電気二重層コンデンサに応用すると大電流放電時の容量低下が大きいという問題点を有していた。これは高分子化合物の誘電率がまだ不十分で、高分子固体電解質中での電解質塩の解離や移動度が不十分であるためと考えられる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、数十μm程度の薄膜とした場合にも強度が良好で、室温、低温でのイオン伝導度が高く、加工性、高温特性、大電流特性に優れた、各種電気化学素子に有用な高分子固体電解質及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記高分子固体電解質を使用することにより、薄膜化が容易であり、高容量、大電流で作動でき、加工性、信頼性に優れた一次電池及び二次電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、前記高分子固体電解質を使用することにより、出力電圧が高く、取り出し電流が大きく、加工性、信頼性に優れた電気二重層コンデンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリまたはオリゴカーボネート基及び特異なウレタンアクリレート基を有する高分子化合物及び電解質塩を含む高分子固体電解質が、膜強度が良好で、イオン伝導度が高く、加工性に優れ、さらに従来のオリゴオキシアルキレン系に比較して大電流特性、低温特性、高温特性に優れた高分子固体電解質となることを見出した。
また、上記高分子固体電解質を使用することにより、薄膜化が容易であり、高容量、大電流で作動でき、信頼性、安定性に優れた一次電池及び二次電池とすることができることを見出した。
さらに、上記の高分子固体電解質を用いることによって、出力電圧が高く、取り出し電流が大きく、加工性、信頼性、安定性に優れた電気二重層コンデンサが得られることを見出した。
【0021】
以上の知見に基づいて本発明者らは、以下の(1)高分子固体電解質及びその製 造方法、(2)その高分子固体電解質を用いた電池、電気二重層コンデンサ、及び それらの製造方法、並びに(3)その高分子固体電解質用の高分子化合物の原料と して有用な重合性化合物を提供する。
【0022】
1)一般式(1)
【化16】
Figure 0003984359
[式中、R1 は炭素数が1〜10の鎖状、分岐状及び/または環状の、ヘテロ原子を含んでいてもよい2価の基を表わし、mは1または2であり、nは2〜1000の整数である。但し、同一分子中に複数存在するR1 、m及びnは、それぞれ同一でもよいし異なってもよい。]で示されるポリまたはオリゴカーボネート基と、下記一般式(2)
【化17】
Figure 0003984359
[式中、R2 は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表わし、R3 は炭素数1〜10の鎖状、分岐状及び/または環状の、ヘテロ原子を含んでいてもよい2価の基を表わし、xは0または1〜10の整数である。但し、同一分子中に複数存在するR2 、R3 及びxは、それぞれ同一でもよいし異なってもよい。]で示される重合性官能基とを有する少なくとも一種の熱及び/または活性光線重合性化合物の重合体及び少なくとも一種の電解質塩を含む高分子固体電解質。
2)高分子化合物及び少なくとも一種の電解質塩を含む高分子固体電解質において、高分子化合物が前記一般式(2)で示される重合性官能基による重合反応を利用して得られる化合物を含む、前記一般式(1)で示されるポリまたはオリゴカーボネート基を有することを特徴とする前記1)に記載の高分子固体電解質。
3)前記一般式(2)で示される重合性官能基を有する少なくとも一種の化合物と、該化合物と反応する官能基と前記一般式(1)で示されるポリまたはオリゴカーボネート基とを有する少なくとも一種の化合物との反応により得られる高分子化合物、及び少なくとも一種の電解質塩を含む前記1)に記載の高分子固体電解質。
【0023】
4)重合性官能基及び前記一般式(1)で示されるポリまたはオリゴカーボネート基を有する少なくとも一種の化合物の重合体と前記一般式(2)で示される重合性官能基を有する少なくとも一種の化合物の重合体との混合物、及び少なくとも一種の電解質塩を含む前記1)に記載の高分子固体電解質。
5)少なくとも一種の有機溶媒を含む前記1乃至4のいずれかに記載の高分子固体電解質。
6)少なくとも一種の無機酸化物を含む前記1乃至5のいずれかに記載の高分子固体電解質。
7)電解質塩が、アルカリ金属塩、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩から選ばれる前記1乃至6のいずれかに記載の高分子固体電解質。
8)有機溶媒がカーボネート系化合物である前記5に記載の高分子固体電解質。
9)前記1乃至8のいずれかに記載の高分子固体電解質を用いることを特徴とする電池。
10)電池の負極として、リチウム、リチウム合金またはリチウムイオンを吸蔵放出できる炭素材料、リチウムイオンを吸蔵放出できる無機酸化物、リチウムイオンを吸蔵放出できる無機カルコゲナイド、リチウムイオンを吸蔵放出できる電導性高分子化合物から選ばれる少なくとも一つの材料を用いることを特徴とする前記9に記載のリチウム電池。
11)イオン伝導性物質を介して分極性電極を配置した電気二重層コンデンサにおいて、イオン伝導性物質が、前記1乃至8のいずれかに記載の高分子固体電解質であることを特徴とする電気二重層コンデンサ。
【0024】
12)一般式(1)
【化18】
Figure 0003984359
[式中の記号は前記1の記載と同じ意味を表わす。]
で示されるポリまたはオリゴカーボネート基と、一般式(2)
【化19】
Figure 0003984359
[式中の記号は前記1の記載と同じ意味を表わす。]
で示される重合性官能基とを有する少なくとも一種の熱及び/または活性光線重合性化合物、及び少なくとも一種の電解質塩を含有する重合性組成物、あるいはさらに少なくとも一種の有機溶媒及び/または少なくとも一種の無機酸化物を含有する重合性組成物を支持体上に配置した後、重合性組成物を重合することを特徴とする高分子固体電解質の製造方法。
【0025】
13)一般式(1)
【化20】
Figure 0003984359
[式中の記号は前記1の記載と同じ意味を表わす。]
で示されるポリまたはオリゴカーボネート基と、一般式(2)
【化21】
Figure 0003984359
[式中の記号は前記1の記載と同じ意味を表わす。]
で示される重合性官能基とを有する少なくとも一種の熱及び/または活性光線重合性化合物、及び少なくとも一種の有機溶媒を含有する重合性組成物、あるいはさらに少なくとも一種の無機酸化物を含有する重合性組成物を支持体上に配置した後、重合性組成物を重合し、得られた重合物を電解液と接触させることにより電解質塩を含浸させることを特徴とする高分子固体電解質の製造方法。
【0026】
14)一般式(1)
【化22】
Figure 0003984359
[式中の記号は前記1の記載と同じ意味を表わす。]
で示されるポリまたはオリゴカーボネート基と、一般式(2)
【化23】
Figure 0003984359
[式中の記号は前記1の記載と同じ意味を表わす。]
で示される重合性官能基とを有する少なくとも一種の熱及び/または活性光線重合性化合物、及び少なくとも一種の電解質塩を含有する重合性組成物、あるいはさらに少なくとも一種の有機溶媒及び/または少なくとも一種の無機酸化物を含有する重合性組成物を電池構成用構造体内に入れ、または支持体上に配置した後、重合性組成物を重合することを特徴とする電池の製造方法。
【0027】
15)一般式(1)
【化24】
Figure 0003984359
[式中の記号は前記1の記載と同じ意味を表わす。]
で示されるポリまたはオリゴカーボネート基と、一般式(2)
【化25】
Figure 0003984359
[式中の記号は前記1の記載と同じ意味を表わす。]
で示される重合性官能基とを有する少なくとも一種の熱及び/または活性光線重合性化合物、及び少なくとも一種の有機溶媒を含有する重合性組成物、あるいはさらに少なくとも一種の無機酸化物を含有する重合性組成物を電池構成用構造体内に入れ、または支持体上に配置した後、重合性組成物を重合し、得られた重合物を電解液と接触させることにより電解質塩を含浸させることを特徴とする電池の製造方法。
【0028】
16)一般式(1)
【化26】
Figure 0003984359
[式中の記号は前記1の記載と同じ意味を表わす。]
で示されるポリまたはオリゴカーボネート基と、一般式(2)
【化27】
Figure 0003984359
[式中の記号は前記1の記載と同じ意味を表わす。]
で示される重合性官能基とを有する少なくとも一種の熱及び/または活性光線重合性化合物、及び少なくとも一種の電解質塩を含有する重合性組成物、あるいはさらに少なくとも一種の有機溶媒及び/または少なくとも一種の無機酸化物を含有する重合性組成物を電気二重層コンデンサ構成用構造体内に入れ、または支持体上に配置した後、重合性組成物を重合することを特徴とする電気二重層コンデンサの製造方法。
【0029】
17)一般式(1)
【化28】
Figure 0003984359
[式中の記号は前記1の記載と同じ意味を表わす。]
で示されるポリまたはオリゴカーボネート基と、一般式(2)
【化29】
Figure 0003984359
[式中の記号は前記1の記載と同じ意味を表わす。]
で示される重合性官能基とを有する少なくとも一種の熱及び/または活性光線重合性化合物、及び少なくとも一種の有機溶媒を含有する重合性組成物、あるいはさらに少なくとも一種の無機酸化物を含有する重合性組成物を電気二重層コンデンサ構成用構造体内に入れ、または支持体上に配置した後、重合性組成物を重合し、得られた重合物を電解液と接触させることにより電解質塩を含浸させることを特徴とする電気二重層コンデンサの製造方法。
18)一般式(3)
【化30】
Figure 0003984359
[式中、R1及びR3は、炭素数が1〜10の鎖状、分岐状及び/または環状の、ヘテロ原子を含んでいてもよい2価の基を表わし、R2は水素原子または炭素数 1〜6のアルキル基を表わし、R4は炭素数1〜20の鎖状、分岐状及び/また は環状の、ヘテロ原子を含んでいてもよい有機基を表わし、mは1または2であり、nは2〜1000の整数であり、xは0または1〜10の整数である。但し、同一分子中に複数存在するR1、R2、R3、m、n及びxは、それぞれ同一でもよいし異なってもよい。]で示される重合性化合物。
【0030】
【発明の実施の態様】
以下に本発明を詳細に説明する。
[高分子固体電解質]
本発明の高分子固体電解質は、基本的には主要構成成分である(a)高分子化合 物、及び(b)電解質塩を含んでなる。さらに、(c)有機溶媒、(d)無機酸化物を含 んでもよい。以下、各成分について詳述する。
【0031】
(a)高分子化合物
本発明の高分子固体電解質の主要構成成分である高分子化合物は非電子伝導性で各種有機極性溶媒を吸液、保持できるものであり、下記一般式(1)で示されるポリまたはオリゴカーボネート構造を有する架橋及び/または側鎖基が含まれる。
【化31】
Figure 0003984359
【0032】
式中、R1は炭素数が1〜10の鎖状、分岐状及び/または環状の、ヘテロ原 子を含んでいてもよい2価の基を表わし、mは1〜10の整数であり、nは2〜1000の整数である。
上記一般式でのR1の炭素数が多すぎると、高分子化合物中のカーボネート基の相対的な割合が少なくなり、誘電率が低下し、電解質塩が解離しにくくなり好ましくない。また、高分子化合物の疎水性が増加し、各種極性溶媒との相溶性が低下し、好ましくない。好ましいR1の炭素数は1〜4である。
また、上記一般式(1)におけるmの値が、高分子固体電解質の特性に大きな影響を及ぼすことが判明した。すなわち、mの値が1または2では、一般的には側鎖及び/または架橋鎖中のカーボネート基の割合が過剰となるため、高分子の柔軟性が大きく低下してガラス転移点も高くなり、イオン伝導度が低下する。また、mが10を越えると、高分子化合物中でのポリエーテル基に対するカーボネート基の割合が少なくなり、誘電率が低下し、電解質塩が解離しにくくなり好ましくない。また、ポリエーテル鎖の耐久性が問題となる。従って、一般的にはmの値は3〜10の整数が好ましく、より好ましくは3〜5であるが、本発明に従い上記(2)で示されるウレタン基とアクリレート基が直接またはオキシアルキレンを介して結合した重合性官能基を含有させた場合は、mの値が1または2でも良好な特性が得られることが見出された。
【0033】
本発明の高分子固体電解質に用いられる高分子中の一般式(1)で示されるポリまたはオリゴカーボネート基の繰り返し数nは2〜1000の範囲であり、3〜100の範囲が好ましく、5〜50が特に好ましい。
【0034】
本発明の高分子固体電解質に用いられる高分子としては、(A)一般式(1)で示されるポリまたはオリゴカーボネート基を有し、さらにかつ下記一般式(2)で示される重合性官能基
【化32】
Figure 0003984359
[式中、R2は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表わし、R3は炭素数1〜10の鎖状、分岐状及び/または環状の、ヘテロ原子を含んでいてもよい2価の基を表わし、xは0または1〜10の整数である。但し、同一分子中に複数存在するR2、R3及びxは、それぞれ同一でもよいし異なって もよい。]を有する少なくとも一種の熱及び/または活性光線重合性化合物(以下、単に「重合性化合物」と略す。)を重合することによって得られる化合物が好ましいが、(B)前記一般式(2)で示される重合性官能基を有する少なくとも一種の化合物と、該化合物と反応する官能基と前記一般式(1)で示されるポリまたはオリゴカーボネート基とを有する少なくとも一種の化合物との反応により得られる高分子化合物、あるいは、(C)重合性官能基及び前記一般式(1)で示されるポリまたはオリゴカーボネート基を有する少なくとも一種の化合物の重合体と前記一般式(2)で示される重合性官能基を有する少なくとも一種の化合物の重合体との混合物を用いることができる。
【0035】
前記(A)に属する具体的な重合性化合物としては、例えば以下の一般式(3)で示される化合物が挙げられる。
【化33】
Figure 0003984359
[式中、R4は炭素数1〜20の鎖状、分岐状及び/または環状の、ヘテロ原子 を含んでいてもよい基を表わし、その他の記号は前記と同じ意味を表わす。]
【0036】
一般式(1)で示される基と一般式(2)で示される基とを有する重合性化合物を合成する方法に特に制限はないが、例えば、
【化34】
Figure 0003984359
で示されるイソシアネート化合物と末端にヒドロキシル基を有するポリまたはオリゴカーボネートオールとを反応させることにより容易に得ることができる。
【0037】
具体的方法として、一般式(2)で示される官能基を一つ有する化合物は、例えば、メタクリロイルイソシアナート系化合物(以下、MI類と略記する。)あるいはアクリロイルイソシアナート系化合物(以下、AI類と略記する。)とモノアルキルポリまたはオリゴカーボネートオールとを、以下の反応の様に1:1のモル比で反応させることにより容易に得ることができる。
【0038】
【化35】
Figure 0003984359
式中、R5は炭素数1〜10の有機基を表わし、R1、m、n、R2、R3及びxは前記と同じ意味を表わす。
【0039】
また、一般式(2)で示される官能基を二つ有する化合物は、例えば、MI類あるいはAI類とポリまたはオリゴカーボネートジオールとを以下のように2:1のモル比で反応させることにより容易に得られる。
【0040】
【化36】
Figure 0003984359
式中、R1、m、n、R2、R3及びxは前記と同じ意味を表わす。
【0041】
また一般式(2)で示される官能基を三つ有する化合物は、例えば、MI類あるいはAI類とポリまたはオリゴカーボネートトリオールとを3:1のモル比で反応させることにより容易に得られる。
【0042】
ここで一般式(2)で示される官能基を1つしか有さない化合物を重合してできる高分子は、架橋構造を有しておらず、膜強度不足のため、薄膜にすると短絡する場合があり得る。従って、一般式(2)で示される官能基を2つ以上有する重合性化合物と共重合し、架橋させるか、一般式(2)で示される官能基を2つ以上有する重合性化合物から得られる高分子と併用することが好ましい。
これら高分子を薄膜として使用する場合、その強度から考慮して、1分子中に含まれる一般式(2)で示される官能基の数は、3つ以上がより好ましい。
【0043】
また前記一般式(2)で示される重合性官能基を有する化合物を重合して得られる高分子化合物は、ウレタン基を含んでおり、誘電率が高くなり、高分子固体電解質とした場合のイオン伝導度が高くなるため好ましい。さらに一般式(2)で示される重合性官能基を有する化合物は重合性が良好で、薄膜にしたときの膜強度も大きく電解液の包含量が多くなり好ましい。
【0044】
本発明の高分子固体電解質の構成成分として好ましい高分子化合物は、前記重合性化合物の単独重合体であっても、同一カテゴリーに属する2種以上の共重合体であっても、あるいは前記重合性化合物の少なくとも一種と他の重合性化合物との共重合体であってもよい。
【0045】
前記重合性化合物と共重合可能な他の重合性化合物としては、特に制限はないが、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、各種ウレタン(メタ)アクリレート、オキシアルキレン及び/またはオキシフルオロカーボン鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル及び/またはウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸フッ素化アルキルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、炭酸ビニレン、(メタ)アクリロイルカーボネート、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系化合物、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系化合物、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルアミド系化合物、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルを挙げることができる。
【0046】
これらの中で、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル、ウレタン(メタ)アクリレート、またはオキシアルキレン及び/またはオキシフルオロカーボン鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル及び/またはウレタン(メタ)アクリレート、またはカーボネート鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルが用いられる。これらの中で、ウレタン(メタ)アクリレートが重合性という観点で特に好ましい。
【0047】
前記(B)に属する高分子化合物は、例えば、(b-1)前記一般式(2)で示される重合性官能基を有する少なくとも一種の化合物と(b-2)該重合性官能基と反応する官能基と前記一般式(1)で示されるポリまたはオリゴカーボネート基とを有する少なくとも一種の化合物との反応により得られる高分子化合物である。(b-2)の重合性官能基と反応する官能基の例としては、ビニル基等の不飽和結合、エポキシ基等が挙げられる。化合物(b-1)と(b-2)との反応は、化合物(b-1)に含まれる前記重合性官能基以外の官能基と(b-2)との反応によるものでもよい。また、前記(C)として述べたように、本発明で用いる高分子化合物は、前記一般式(1)で示されるポリまたはオリゴエーテル/カーボネート構造を有する少なくとも一種の化合物の重合体と一般式(2)で示される重合性官能基を有する少なくとも一種の化合物の重合体との混合物でもよい。
また、本発明の高分子固体電解質に用いる高分子化合物としては、前記重合性化合物の少なくとも一種から得られる重合体及び/または前記重合性化合物を共重合成分とする共重合体と、他の高分子化合物との混合物であってもよい。混合する他の高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリメタクリル(またはアクリル)酸エステル類、ポリスチレン、ポリホスファゼン類、ポリシロキサンあるいはポリシラン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のポリマーが挙げられる。
【0048】
前記一般式(1)で示されるポリまたはオリゴカーボネート基を有する高分子由来の構造単位の量は、前記重合性化合物を単独重合するか、その他の共重合成分と共重合するか、さらに他の高分子化合物を混合するかにより、あるいはそれらの種類により異なるため、一概にはいえないが、高分子固体電解質に用いたときのイオン伝導度及び膜強度、耐熱性、電流特性を考慮すると、高分子成分全量に対し50重量%以上含有することが好ましく、さらには70重量%以上含有することが好ましい。
【0049】
前記重合性化合物の重合は、官能基であるアクリロイル基もしくはメタクリロイル基の重合性を利用した一般的な方法により行なうことができる。すなわち、前記重合性化合物単独、あるいは重合性化合物と他の前記共重合可能な重合性化合物の混合物に、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等のラジカル重合触媒、CF3COOH等のプロトン酸、BF3、AlCl3等のルイ ス酸等のカチオン重合触媒、あるいはブチルリチウム、ナトリウムナフタレン、リチウムアルコキシド等のアニオン重合触媒を用いて、ラジカル重合、カチオン重合あるいはアニオン重合させることができる。また、重合性化合物または重合性混合物は膜状等の形に成形後、重合させることも可能である。
【0050】
(b)電解質塩
本発明で用いる電解質塩の種類は特に限定されるものではなく、電荷でキャリアーとしたいイオンを含んだ電解質塩を用いればよいが、高分子固体電解質中での解離定数が大きいことが望ましく、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiPF6、LiClO4、LiI、LiBF4、LiSCN、LiAsF6、NaCF3SO3、NaPF6、NaClO4、NaI、NaBF4、NaAsF6、KCF3SO3、KPF6、KI等のアルカリ金属塩、(CH3)4NBF4等の4級アンモニウム塩、(CH3)4PBF4等の4級ホスホニウム塩、AgClO4等の遷移金属塩、あるいは塩酸、過塩素酸、ホウフッ化水素酸等のプロトン酸が好ましい。
本発明の高分子固体電解質中の電解質塩は複合して用いることができ、その複合比は、高分子の重量に対し、0.1〜50重量%が好ましく、1〜30重量%が 特に好ましい。複合に用いる電解質塩が50重量%以上の比率で存在すると、イオンの移動が大きく阻害され、逆に0.1重量%以下の比率では、イオンの絶対量 が不足となってイオン伝導度が小さくなる。
【0051】
(c)有機溶媒
本発明の高分子固体電解質中に有機溶媒を添加すると、高分子固体電解質のイオン伝導度がさらに向上するので好ましい。使用できる有機溶媒としては、本発明の高分子固体電解質に用いる一般式(1)で示される有機基を有する化合物との相溶性が良好で、誘電率が大きく、沸点が60℃以上であり、電気化学的安定範囲が広い化合物が適している。
そのような溶媒としては、1,2−ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、クラウンエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類、ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、スルホラン等の硫黄化合物、リン酸エステル類等が挙げられる。これらの中で、エーテル類及びカーボネート類が好ましく、カーボネート類が特に好ましい。
有機溶媒の添加量は、多いほど高分子固体電解質のイオン伝導度が向上する。このため、一般的にはその添加量を増やすことが望ましいが、反面、添加量が多過ぎると高分子固体電解質の機械的強度が低下する。好ましい添加量としては、本発明の高分子固体電解質に用いる高分子重量の2倍から15倍量で、3倍から10倍量以下が特に好ましい。
【0052】
(d)無機酸化物
本発明の高分子固体電解質には各種無機酸化物を添加することが好ましい。無機酸化物の添加により、強度、膜厚均一性が改善するばかりでなく、無機酸化物と高分子間に微細な空孔が生じることになり、電解液中に浸漬した場合には空孔を通じて高分子固体電解質内にフリーの電解液が分散し、強度の改善効果を損ねることなく、イオン伝導度、イオン移動度を増加させることもできる。また、無機酸化物を添加することにより、重合性組成物の粘度が上昇し、高分子と溶媒の相溶性が不十分な場合にもその分離を抑える効果も現われる。
使用する無機酸化物としては非電子伝導性であり、かつ電気化学的に安定なものが選ばれる。また、イオン伝導性であればさらに好ましい。具体的にはα、β、γ−アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ハイドロタルサイト等のイオン伝導性または非電導性セラミックス微粒子が挙げられる。
高分子固体電解質中の電解液の保有量を多くし、イオン伝導性、移動度を増加させるという目的では、無機酸化物の比表面積はできるだけ大きいことが好ましく、BET法で10m2 /g以上、さらには50m2 /g以上が好ましい。
このような無機酸化物の結晶粒子径としては、重合性組成物と混合できれば特に限定はないが、平均結晶粒径(平均二次粒子径)としては0.001μm〜10μmが好ましく、0.01μm〜 1μmが特に好ましい。
また、形状としては球形、卵形、立方体状、直方体状、円筒ないし棒状等の種々の形状のものを用いることができる。
無機酸化物の添加量は多すぎると逆に高分子固体電解質の強度やイオン伝導性を低下させたり、成膜がしにくくなるという問題を生じる。好ましい添加量としては、高分子固体電解質に対して50重量%以下であり、0.1から30重量%の範囲が特に好ましい。
【0053】
[高分子固体電解質の製造方法]
本発明の高分子固体電解質は、前記重合性化合物の少なくとも一種から得られる重合体、あるいは前記重合性化合物を共重合成分とする共重合体を、例えばフィルム状に形成した後重合し、有機溶媒に溶解した電解質塩と接触させることにより製造するか、または前記重合性化合物とその他の成分とからなる重合性組成物を調製し、例えばフィルム状に成形した後、重合することにより製造することができる。
後者の方法を具体的に示せば、前記重合性化合物の少なくとも一種とアルカリ金属塩、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩または遷移金属塩のごとき少なくとも一種の電解質塩とを混合し、所望により、他の重合性化合物、可塑剤、有機溶媒及び/または無機酸化物を添加混合した重合性組成物を調製した後、フィルム状等に成形して、前記触媒の存在下あるいは非存在下に、加熱及び/または活性光線の照射により重合させ、本発明の高分子固体電解質を得る。この方法によれば、加工面での自由度が広がり、応用上の大きなメリットとなる。
【0054】
重合時に溶媒を用いる場合には、重合性化合物の種類や重合触媒の有無にもよるが、重合を阻害しない溶媒であればいかなる溶媒でも良く、例えば、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、トルエン等を用いることができる。
重合させる温度としては、前記重合性化合物の種類によるが、重合が起こる温度であれば良く、通常は、0℃から200℃の範囲で行なえばよい。
活性光線照射により重合させる場合には、前記重合性化合物の種類によるが、例えば、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン等の開始剤を使用して、数mW以上の紫外光またはγ線、電子線等を照射して重合させることができる。
【0055】
また、本発明の高分子固体電解質を薄膜フィルムとして使用する場合、フィルム強度を向上させるために、他の多孔性フィルムとの複合フィルムとすることもできる。ただし、複合するフィルムの種類あるいは量によってはイオン伝導度の低下や安定性の悪化を招くので、適したものを選ぶ必要がある。使用するフィルムとしては、ポリプロピレン製不織布やポリエチレン製ネットのような網状ポリオレフィンシート等の多孔性ポリオレフィンシート、セルガード(商品名)等のポリオレフィン製マイクロポーラスフィルム、ナイロン不織布等が挙げられ、中でも多孔性ポリオレフィンフィルムが好ましい。また、その空孔率としては、10〜95%程度あればよいが、強度の許す限りできるだけ空孔率の大きいものが良く、好ましい空孔率は40〜95%の範囲である。
複合方法には特に制限がないが、例えば、前記重合性化合物の少なくとも一種、またはこれに少なくとも一種の電解質塩、場合によっては、さらに他の成分を添加混合してなる重合性組成物を多孔性ポリマーフィルムに含浸後、(メタ)アクリロイル系化合物を重合する方法に付すことにより、均一に複合でき、膜厚の制御も簡便である。
【0056】
[電池及びその製造方法]
本発明の電池として、薄膜固体二次電池の一例の概略断面図を図1に示す。図中、1は正極、2は高分子固体電解質、3は負極、4は集電体、5は絶縁性樹脂封止剤である。
本発明の電池の構成において、正極1に金属酸化物、金属硫化物、導電性高分子あるいは炭素材料のような高酸化還元電位の電極活物質(正極活物質)を用いることにより、高電圧、高容量の電池が得られるので好ましい。このような電極活物質の中では、充填密度が高く体積容量密度が高くなるという点で、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化モリブデン等の金属酸化物、硫化モリブデン、硫化チタン、硫化バナジウム等の金属硫化物が好ましく、特に酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト等が高容量、高電圧という点から好ましい。
【0057】
この場合の金属酸化物や金属硫化物を製造する方法は特に限定されず、例えば、電気化学,第22巻,574頁(1954年)に記載されているような、一般的な電解法や加熱法によって製造される。また、これらを電極活物質としてリチウム電池に使用する場合、電池の製造時に、例えば、LixCoO2やLixMnO2等の形でリチウム元素を金属酸化物あるいは金属硫化物に挿入(複合)した状態で用いることが好ましい。リチウム元素を挿入する方法は特に限定されず、例えば、電気化学的にリチウムイオンを挿入する方法や、米国特許第4357215号に記載 されているように、Li2CO3の塩と金属酸化物を混合、加熱処理することによって実施できる。
【0058】
また柔軟で、薄膜化しやすいという点では、導電性高分子が好ましい。導電性高分子の例としては、ポリアニリン、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリチエニレン及びその誘導体、ポリピリジンジイル及びその誘導体、ポリイソチアナフテニレン及びその誘導体、ポリフリレン及びその誘導体、ポリセレノフェン及びその誘導体、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフリレンビニレン、ポリナフテニレンビニレン、ポリセレノフェンビニレン、ポリピリジンジイルビニレン等のポリアリーレンビニレン及びそれらの誘導体等が挙げられる。中でも有機溶媒に可溶性のアニリン誘導体の重合体が特に好ましい。これらの電池あるいは電極において電極活物質として用いられる導電性高分子は、後述のような化学的あるいは電気化学的方法、あるいはその他の公知の方法に従って製造される。
【0059】
また、炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、気相法黒鉛、石油コークス、石炭コークス、フッ化黒鉛、ピッチ系炭素、ポリアセン等が挙げられる。
【0060】
本発明の電池の負極3に用いる負極活物質としては、アルカリ金属、アルカリ金属合金、炭素材料、金属酸化物や導電性高分子化合物のようなアルカリ金属イオンをキャリアーとする低酸化還元電位のものを用いることにより、高電圧、高容量の電池が得られるので好ましい。このような負極活物質の中では、リチウム金属あるいはリチウム/アルミニウム合金、リチウム/鉛合金、リチウム/アンチモン合金等のリチウム合金類が最も酸化還元電位が低く、かつ薄膜化が可能である点から特に好ましい。また炭素材料もリチウムイオンを吸蔵した場合、低酸化還元電位となり、しかも安定、安全であるという点で特に好ましい。リチウムイオンを吸蔵放出できる材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、気相法黒鉛、石油コークス、石炭コークス、ピッチ系炭素、ポリアセン、C60、C70等のフラーレン類等が挙げられられる。
【0061】
上記負極活物質を用い、アルカリ金属イオンをキャリアーとする電池に用いる場合、高分子固体電解質中の電解質塩としてはアルカリ金属塩を使用する。アルカリ金属塩としては例えば、LiCF3SO3、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiSCN、LiAsF6、LiN(CF3SO22、LiN(CF3CF2SO22、NaCF3SO3、LiI、NaPF6、NaClO4、NaI、NaBF4、NaAsF6、KCF3SO3、KPF6、KI等を挙げることができる。
【0062】
本発明の電極及び電池の製造方法の一例について説明する。
正負極をお互いに接触しないように電池構成用構造体内に入れ、または支持体上に配置する。例えば、電極の端に適当な厚みのスペーサーまたは予め調製しておいた高分子固体電解質フィルムを介して正極と負極をはり合せて、前記構造体内に入れ、次に、正極と負極の間に、重合性化合物の少なくとも一種、またはこれに少なくとも一種の電解質塩、場合によっては、さらに他の重合性化合物及び/または可塑剤及び/または溶媒及び/または無機酸化物を添加混合した重合性組成物を注入した後、例えば、加熱及び/または活性光線照射により重合することにより、あるいは、さらに、重合後必要に応じてポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂で封止することにより、電極と電解質が良好に接触した電池が得られる。
また、これ以外にも、重合性化合物の少なくとも一種及び溶媒、またはこれに他の重合性化合物及び/または可塑剤及び/または無機酸化物を添加混合した重合性組成物を重合して得られた重合物を介して正極と負極を貼り合わせて、予め電極に含浸させておいた電解液から電解質塩の一部を重合物に移行させることにより電池を製造することも可能である。
【0063】
なお、前記電池構成用構造体あるいは前記支持体はSUS等の金属、ポリプロピレン、ポリイミド等の樹脂、あるいは導電性あるいは絶縁性ガラス等のセラミックス材料であればよいが、特にこれらの材料からなるものに限定されない。また、その形状は筒状、箱状、シート状その他いかなる形状でもよい。
捲回型電池を製造する場合は、予め調製しておいた高分子固体電解質フィルムを介して、上記正極及び負極をはりあわせ、捲回し、電池構成用構造体内に挿入後に更に前記重合性組成物を注入し、重合させるという方法も可能である。
【0064】
[電気二重層コンデンサ及びその製造方法]
次に本発明の電気二重層コンデンサについて説明する。
本発明によれば、前記高分子固体電解質を用いることにより、出力電圧が高く、取り出し電流が大きく、あるいは加工性、信頼性に優れた電気二重層コンデンサが提供される。
本発明の電気二重層コンデンサの一例の概略断面図を図2に示す。この例は、大きさ1cm×1cm、厚み約0.5mmの薄型セルで、7は集電体であり、集電 体の内側には一対の分極性電極6が配置されており、その間に高分子固体電解質膜8が配置されている。9は絶縁性樹脂封止剤、10はリード線である。
【0065】
集電体7は電子伝導性で電気化学的に耐食性があり、できるだけ比表面積の大きい材料を用いることが好ましい。例えば、各種金属及びその焼結体、電子伝導性高分子、カーボンシート等を挙げることができる。
分極性電極6は、通常電気二重層コンデンサに用いられる炭素材料等の分極性材料からなる電極であればよい。分極性材料としての炭素材料としては、比表面積が大きければ特に制限はないが、比表面積の大きいほど電気二重層の容量が大きくなり好ましい。例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック(アセチレンブラックを含む)、チャンネルブラック等のカーボンブラック類や、椰子がら炭等の活性炭、天然黒鉛、人造黒鉛、気相法で製造したいわゆる熱分解黒鉛、ポリアセン及びC60、C70を挙げることができる。
【0066】
本発明の電気二重層コンデンサの場合に複合に用いる電解質塩の種類は特に限定されるものではなく、電荷キャリアーとしたいイオンを含んだ化合物を用いればよいが、高分子固体電解質中での解離定数が大きく、分極性電極と電気二重層を形成しやすいイオンを含むことが望ましい。このような化合物としては、(CH34NBF4、(CH3CH24NClO4等の4級アンモニウム塩、ピリジニ ウム塩、AgClO4等の遷移金属塩、(CH34PBF4等の4級ホスホニウム塩、LiCF3SO3、LiPF6、LiClO4、LiI、LiBF4、LiSC N、LiAsF6、LiN(CF3SO22、LiN(CF3CF2SO22、NaCF3SO3、NaPF6、NaClO4、NaI、NaBF4、NaAsF6、KCF3SO3、KPF6、KI等のアルカリ金属塩、パラトルエンスルホン酸等の有機酸及びその塩、塩酸、硫酸等の無機酸等が挙げられる。これらの中で、出力電圧が高く取れ、解離定数が大きいという点から、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、4級ホスホニウム塩、アルカリ金属塩が好ましい。4級アンモニウム塩の中では、(CH3CH2)(CH3CH2CH2CH23NBF4のような、アンモニウムイオンの窒素上の置換基が異なっているものが、高分子固体電解質への溶解性あるいは解離定数が大きいという点から好ましい。
【0067】
次に本発明の電気二重層コンデンサの製造方法の一例について説明する。
分極性電極2枚をお互いに接触しないようにコンデンサ構成用構造体内に入れ、または支持体上に配置する。例えば、電極の端に適当な厚みのスペーサーまたは予め調製しておいた高分子固体電解質フィルムを介して分極性電極をはり合せて、前記構造体内に入れ、前記重合性化合物の少なくとも一種、またはこれに少なくとも一種の電解質塩、場合によっては、さらに他の重合性化合物及び/または可塑剤及び/または溶媒及び/または無機酸化物を添加混合した重合性組成物を注入した後、重合することにより、あるいは、さらに、重合後必要に応じてポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂で封止することにより、電極と電解質が良好に接触した電気二重層コンデンサが得られる。本法により、特に薄型電気二重層コンデンサを製造することができる。
また、これ以外にも、重合性化合物の少なくとも一種及び溶媒、またはこれに他の重合性化合物及び/または可塑剤及び/または無機酸化物を添加混合した重合性組成物を重合して得られた重合物を介して2枚の分極性電極を貼り合わせて、予め分極性電極に含浸させておいた電解液から電解質塩の一部を重合物に移行させることにより電気二重層コンデンサを製造することも可能である。
【0068】
なお、前記コンデンサ構成用構造体あるいは前記支持体は、SUS等の金属、ポリプロピレン、ポリイミド等の樹脂、あるいは導電性あるいは絶縁性ガラス等のセラミックス材料であればよいが、特にこれらの材料からなるものに限定されるものではなく、また、その形状は、筒状、箱状、シート状その他いかなる形状でもよい。
【0069】
電気二重層コンデンサの形状としては、図2のようなシート型のほかに、コイン型、あるいは分極性電極及び高分子固体電解質のシート状積層体を円筒状に捲回し、円筒管状のコンデンサ構成用構造体に入れ、封止して製造された円筒型等であっても良い。
捲回型コンデンサを製造する場合は、あらかじめ調製しておいた高分子固体電解質フィルムを介して、上記分極性電極をはりあわせ、捲回し、コンデンサ構成用構造体内に挿入後に更に前記重合性組成物を注入し、重合させるという方法も可能である。
【0070】
【実施例】
以下に本発明について代表的な例を示しさらに具体的に説明する。なお、これらは説明のための単なる例示であって、本発明はこれらに何等制限されるものではない。
【0071】
実施例1:化合物1、2及び3の合成
【化37】
Figure 0003984359
【0072】
上式(a)(b)(c)に従い、常法で各種アルキレングリコールに窒素下、10℃以下で過剰のホスゲンガスを吹き込み、約5時間反応させ、各種アルキレングリコールのビスクロロホルメート体、化合物1、化合物2、化合物3を合成した。これらの同定はGC−MSで行なった。
【0073】
実施例2:化合物1、2、3のオリゴマー化(化合物4、5、6の合成)
【化38】
Figure 0003984359
【0074】
上式(d)(e)(f)に従い、常法で実施例1で合成した各種アルキレングリコールビスクロロホルメート体(化合物1、2、3)と各種アルキレングリコールとを、ピリジン存在下、25℃以下、ジクロロメタン中で約6時間反応させた後、過剰の水を加え、残クロロホルメート末端を水酸基化し、両末端に水酸基を有するオリゴカーボネート(化合物4、化合物5、化合物6)を合成した。
GPC分析により求めた、各オリゴカーボネートの重量平均分子量(Mw)、平均繰り返し数x、y、zは以下の通りであった。
化合物4 Mw 〜約 800、x:〜約8、
化合物5 Mw 〜約1500、y:〜約10、
化合物6 Mw 〜約1200、z:〜約10。
【0075】
実施例3:化合物7の合成
【化39】
Figure 0003984359
【0076】
常法により、上式(g)に従い実施例2で合成したカーボネートオリゴマー(化合物4)の無水THF溶液中に当モルのエチルクロロホルメートを、ピリジン存在下、25℃以下、徐々に滴下後、約6時間反応させることにより、片末端を水酸基化したオリゴカーボネート(化合物7)を合成した。
【0077】
実施例4:重合性化合物8の合成
【化40】
Figure 0003984359
【0078】
化合物4(平均分子量800)(40.0g)及びMOI(メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)(15.5g)を窒素雰囲気中でよく精製したTHF(200ml)に溶解した後、ジブチルチンジラウレート(0.44g)を添加した。その後、25℃で約15時間反応させることにより、無色生成物を得た。その1H−N MR、IR及び元素分析の結果から、化合物4とMOIは1対2で反応し、MOIのイソシアナート基が消失し、ウレタン結合が生成しており、化合物8が生成していることがわかった。
【0079】
実施例5:重合性化合物9の合成
【化41】
Figure 0003984359
【0080】
化合物5(平均分子量1500)(75.0g)及びMOI(15.5g)を窒素雰囲気中でよく精製したTHF(200ml)に溶解した後、ジブチルチンジラウレート(0.44g)を添加した。その後、25℃で約15時間反応させることにより、無色生成物を得た。その1H−NMR、IR及び元素分析の結果から、化合物5と MOIは1対2で反応し、MOIのイソシアナート基が消失し、ウレタン結合が生成しており、化合物9が生成していることがわかった。
【0081】
実施例6:重合性化合物10の合成
【化42】
Figure 0003984359
【0082】
化合物6(平均分子量1200)(60.0g)及びMOI(15.5g)を窒素雰囲気中でよく精製したTHF(200ml)に溶解した後、ジブチルチンジラウレート(0.44g)を添加した。その後、25℃で約15時間反応させることにより、無色生成物を得た。その1H−NMR、IR及び元素分析の結果から、化合物6と MOIは1対2で反応し、MOIのイソシアナート基が消失し、ウレタン結合が生成しており、化合物10が生成していることがわかった。
【0083】
実施例7:重合性化合物11の合成
【化43】
Figure 0003984359
【0084】
化合物7(平均分子量900)(90.0g)及びMOI(15.5g)を窒素雰囲気中でよく精製したTHF(200ml)に溶解した後、ジブチルチンジラウレート(0.44g)を添加した。その後、25℃で約15時間反応させることにより、無色生成物を得た。その1H−NMR、IR及び元素分析の結果から、化合物7 とMOIは1対1で反応し、MOIのイソシアナート基が消失し、ウレタン結合が生成しており、化合物11が生成していることがわかった。
【0085】
実施例8:高分子固体電解質膜の製造(化合物8)
化合物8(2.0g)、エチレンカーボネート(EC)(1.8g)、エチルメチルカーボネート(EMC)(4.2g)、LiPF6(橋本化成製電池グレード)(0.60g)、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(商品名,ルシリンTPO、BASF社製)(0.010g)をアルゴン雰囲気中 でよく混合し、光重合性組成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー)は30ppmであった。この光重合性組成物をアルゴン雰囲気下、PETフィルム上に塗布後、ケミカル蛍光ランプ(三共電気社製,FL20S.BL)を10分照射したところ、EC/EMC系電解液を含浸した重合体(化合物8)フィルムが約30μmの自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、2.5×10-3、0.6×10-3S/cmであった。
【0086】
実施例9:高分子固体電解質膜の製造(化合物9)
化合物8の代わりに、化合物9(2.0g)を用いた以外は実施例8と同様にし て、EC/EMC系電解液を含浸した重合体(化合物9)フィルムを約30μmの自立フィルムとして得た。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、2.2×10-3、0.5×10-3S/cmであった。
【0087】
実施例10:高分子固体電解質膜の製造(化合物10)
化合物8の代わりに、化合物10(2.0g)を用いた以外は実施例8と同様に して、EC/EMC系電解液を含浸した重合体(化合物10)フィルムを約30μmの自立フィルムとして得た。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、1.8×10-3、0.5×10-3S/cmであった。
【0088】
実施例11:高分子固体電解質膜の製造(化合物9+化合物11)
化合物8の代わりに、化合物9(1.0g)と化合物11(1.0g)との混合物を用いた以外は実施例8と同様にして、EC/EMC系電解液を含浸した共重合体(化合物9+化合物11)フィルムを約30μmの自立フィルムとして得た。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、2.8×10-3、0.9×10-3S/cmであった。
【0089】
実施例12:高分子固体電解質複合膜の製造(化合物8+化合物10)
化合物8(0.5g)、化合物10(0.5g)、1000℃熱処理したアルミニウムオキサイドC(日本エアロジル製 結晶粒子径0.013μm、平均二次粒子径約0.1μm(SEM観察)、BET比表面積100m2/g)(0.33g)、EC(1.8g)、EMC(4.2g)、LiPF6(橋本化成製電池グレード)(0.60g)、及びルシリンTPO(BASF社製)(0.005g)をアルゴン雰囲気中でよく混合し、 光重合性組成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー法)は35ppmであった。
この光重合性組成物をアルゴン雰囲気下、PETフィルム上に塗布後、ケミカル蛍光ランプ(三共電気社製 FL20S.BL)を10分照射したところ、EC/EMC電解液を含浸した共重合体(化合物8+化合物10)/アルミニウムオキサイドC複合フィルムが約30μmの自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、6.0×10-3、1.5×10-3S/cmであった。
【0090】
実施例13:高分子固体電解質膜の製造(化合物8+化合物10)
開始剤としてルシリンTPO(0.005g)の代りに、パーオクタND(日本油 脂製)(0.01g)を添加し、アルミニウムオキサイドCを用いない以外は実施例12と同様にして、熱重合性組成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー法)は35ppmであった。
この熱重合性組成物をアルゴン雰囲気下、PETフィルム上に塗布後、PPフィルムを被覆して、ホットプレート上で60℃、1時間加熱したところ、EC/EMC電解液を含浸した共重合体(化合物8+化合物10)フィルムが約30μmの自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、5.0×10-3、1.2×10-3S/cmであった。
【0091】
実施例14:高分子固体電解質複合膜の製造(化合物9)
化合物8、10の代わりに、化合物9(1.0g)を用いた以外は実施例12と 同様にして、EC/EMC系電解液を含浸した重合体(化合物9)/アルミニウムオキサイドC複合フィルムを約30μmの自立フィルムとして得た。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、5.5×10-3、1.2×10-3S/cmであった。
【0092】
実施例15:高分子固体電解質複合膜の製造(化合物8+化合物10)
LiPF6に代えて橋本化成製電池グレードLiBF4(0.50g)を用いた以外は実施例12と同様にして、光重合性組成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー法)は50ppmであった。
この光重合性組成物を実施例12と同様にPETフィルム上に塗布及び光照射し、EC/EMC電解液を含浸した共重合体(化合物8+化合物10)/アルミニウムオキサイドC複合フィルムを約30μmの自立フィルムとして得た。この固体電解質の25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、4.3×10-3、0.8×10-3S/cmであった。
【0093】
実施例16:高分子固体電解質複合膜の製造(化合物8+化合物10)
EC/EMCの代わりに、EC(1.5g)、EMC(3.0g)、ジエチルカーボネート(DEC)(1.5g)を用いた以外は、実施例12と同様にして光重合性 組成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー)は35ppmであった。
この光重合性組成物をアルゴン雰囲気下、PETフィルム上に塗布後、ケミカル蛍光ランプを10分照射したところ、EC/EMC/DEC系電解液を含浸した共重合体(化合物8+化合物10)/アルミニウムオキサイドC複合フィルムが約30μmの自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、5.0×10-3 、0.7×10-3S/cmであった。
【0094】
実施例17:高分子固体電解質複合膜の製造(化合物8+化合物10)
アルミニウムオキサイドCの代わりに、500℃熱処理したハイドロタルサイト(KW2200、協和化学製、平均粒子径約0.1μm(SEM観察)、BET 比表面積100m2/g)(0.33g)を用いた以外は、実施例12と同様にして 光重合性組成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー)は50ppmであった。
この光重合性組成物をアルゴン雰囲気下、PETフィルム上に塗布後、ケミカル蛍光ランプを10分照射したところ、EC/EMC系電解液を含浸した共重合体(化合物8+化合物10)/KW2200複合フィルムが約30μmの自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、5.5×10-3、1.2×10-3S/cmであった。
【0095】
実施例18:高分子固体電解質複合膜の製造(化合物8+化合物10)
LiPF6に代えて橋本化成製高純度テトラエチルアンモニウムテトラフルオ ロボレート(TEAB)(1.00g)、溶媒としてEC/EMCに代えてプロピレンカーボネート(6.0g)を用いた以外は実施例12と同様にして、光重合性組 成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー法)は100ppmであった。
この光重合性組成物を実施例12と同様に塗布及び光照射し、PC系電解液を含浸した共重合体(化合物8+化合物10)/アルミニウムオキサイドC複合フィルムを約30μmの自立フィルムとして得た。この固体電解質の25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、9.5×10-3、1.6×10-3S/cmであった。
【0096】
実施例19:高分子固体電解質膜の製造(化合物8+化合物10)
開始剤としてルシリンTPO(0.005g)の代りに、ベンゾイルパーオキサイド(0.02g)を添加し、アルミニウムオキサイドCを用いない以外は実施例18と同様にして、熱重合性組成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー法)は120ppmであった。
この熱重合性組成物をアルゴン雰囲気下、PETフィルム上に塗布後、PPフィルムを被覆して、ホットプレート上で80℃、1時間加熱したところ、PC系電解液を含浸した共重合体(化合物8+化合物10)フィルムが約30μmの自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、9.0×10-3、1.5×10-3S/cmであった。
【0097】
実施例20:高分子固体電解質複合膜の製造(化合物8+化合物10)
LiPF6を使用しない以外は実施例12と同様にして、塩未添加光重合性組 成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー法)は10ppmであった。
この光重合性組成物を実施例12と同様に塗布及び光照射し、EC+EMC系溶媒を含浸した塩未添加の共重合体(化合物8+化合物10)/アルミニウムオキサイドC複合フィルムを約30μmの自立フィルムとして得た。このフィルムを1.2M LiPF6/EC+EMC(重量比3:7)電解液中に約1時間浸漬することにより、フィルム中にLiPF6塩を後添加した。この塩後添加高分子固体 電解質フィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、6.3×10-3、2.0×10-3S/cmであった。
【0098】
実施例21:コバルト酸リチウム正極の製造
11gのLi2CO3と24gのCo34を良く混合し、酸素雰囲気下、800℃で24時間加熱後、粉砕することによりLiCoO2粉末を得た。このLiC oO2粉末とアセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを重量比8:1:1で 混合し、さらに過剰のN−メチルピロリドン溶液を加え、ゲル状組成物を得た。この組成物を約25μmのアルミ箔上に10mm×10mm、約180μmの厚さに塗布成型した。さらに、約100℃で24時間加熱真空乾燥することにより、コバルト酸リチウム正極(75mg)を得た。
【0099】
実施例22:黒鉛負極の製造
MCMB黒鉛(大阪ガス製)、気相法黒鉛繊維(昭和電工(株)製:平均繊維径、0.3μm、平均繊維長、2.0μm、2700℃熱処理品)、ポリフッ化ビニリデンの重量比8.6:0.4:1.0の混合物に過剰のN−メチルピロリドン溶液を加え、ゲ ル状組成物を得た。この組成物を約15μmの銅箔上に10mm×10mm、約250μmの厚さに塗布成型した。さらに、約100℃で24時間加熱真空乾燥することにより、黒鉛負極(35mg)を得た。
【0100】
実施例23:Liイオン二次電池の製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例22で製造した黒鉛負極(10mm×10mm)に電解液(1.2M LiPF6/EC+EMC(3:7))を含浸させたものに、実施例20で調製した塩未添加共重合体(化合物8+化合物10)/アルミニウムオキサイドC複合フィルム(12mm×12mm)を貼り合わせ、さらに実施例21で製造したコバルト酸リチウム正極(10mm×10mm)に電解液(1.2M LiPF6/EC+EMC(3:7))を含浸させたものを貼り合わせ、電池端部をエポキシ樹脂で封印し、図1に示される構造の黒鉛/酸化コバルト系Liイオン二次電池を得た。
この電池を、60℃、25℃で作動電圧2.75〜4.1V、電流0.5mAで充放電を行なったところ、最大放電容量は各々7.2mAh、7.2mAhであった。
また、25℃、作動電圧2.75〜4.1V、充電0.5mA、放電3.0mAで充放電を 繰返したところ、最大放電容量は7.0mAhで、容量が50%に減少するまでの サイクル寿命は480回であった。
【0101】
実施例24:Liイオン二次電池の製造
塩未添加共重合体(化合物8+化合物10)/アルミニウムオキサイドC複合フィルムの代りに、実施例17で製造した高分子固体電解質(化合物8+化合物10)/KW2200複合フィルムを用いた以外は実施例23と同様にして、図1に示される構造のLiイオン二次電池を製造した。
この電池を、60℃、25℃で作動電圧2.75〜4.1V、電流0.5mAで充放電を行なったところ、最大放電容量は各々7.2mAh、7.2mAhであった。
また、25℃、作動電圧2.75〜4.1V、充電0.5mA、放電3.0mAで充放電を 繰返したところ、最大放電容量は6.6mAhで、容量が50%に減少するまでの サイクル寿命は510回であった。
【0102】
実施例25:Liイオン二次電池の製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例22で製造した黒鉛負極(10mm×10mm)に電解液(1M LiPF6/EC+EMC(3:7))を含浸させた上に、実施例12で調製した(化合物8+化合物10)/アルミニウムオキサイドC系光重合性組成物を厚み30μmとなるように塗布し、アルゴン雰囲気下、ケミカル蛍光ランプを10分照射したところ、電解液を含浸した高分子固体電解質(化合物8+化合物10)/アルミニウムオキサイドC複合フィルムを黒鉛負極上に直接形成した。さらに実施例21で製造したコバルト酸リチウム正極(10mm×10mm)に電解液(1M LiPF6/EC+EMC(3:7))を含浸させたものを貼り合わせ、電池端部をエポキシ樹脂で封印し、図1に示される構造の黒鉛/酸化コバルト系Liイオン二次電池を得た。
この電池を、60℃、25℃で作動電圧2.75〜4.1V、電流0.5mAで充放電を行なったところ、最大放電容量は各々7.2mAh、7.2mAhであった。
また、25℃、作動電圧2.75〜4.1V、充電0.5mA、放電3.0mAで充放電を 繰返したところ、最大放電容量は6.8mAhで、容量が50%に減少するまでの サイクル寿命は430回であった。
【0103】
実施例26:Liイオン二次電池の製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例22で製造した黒鉛負極(10mm×10mm)に実施例13で調製した熱重合性組成物を含浸させたものに、実施例17で調製した高分子固体電解質(化合物8+化合物10)/KW2200複合フィルム(12mm×12mm)を貼り合わせ、さらに実施例21で製造したコバルト酸リチウム正極(10mm×10mm)に実施例13で調製した熱重合性組成物を含浸させたものを貼り合わせ、電池端部をエポキシ樹脂で封印した。これを60℃で1時間加熱し、熱重合性組成物を硬化させ、図1に示される構造の黒鉛/酸化コバルト系Liイオン二次電池を得た。。
この電池を、60℃、25℃で作動電圧2.75〜4.1V、電流0.5mAで充放電を行なったところ、最大放電容量は各々7.2mAh、7.0mAhであった。
また、25℃、作動電圧2.75〜4.1V、充電0.5mA、放電3.0mAで充放電を 繰返したところ、最大放電容量は5.0mAhで、容量が50%に減少するまでの サイクル寿命は280回であった。
【0104】
実施例27:活性炭電極の製造
椰子がら活性炭とポリフッ化ビニリデンの重量比9.0:1.0の混合物に過剰のN−メチルピロリドン溶液を加え、ゲル状組成物を得た。この組成物をステンレス箔上に10mm×10mmの大きさで約150μmの厚さに塗布した。約100℃で10時間真空乾燥し、活性炭電極(14.0mg)を得た。
【0105】
実施例28:電気二重層コンデンサの製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例27で製造した活性炭電極(14mg)10mm×10mmに、電解液(1M TEAB/PC+EC(3:1))を含浸させた電極を二個用意した。次に、実施例18で製造した共重合体(化合物8+化合物10)/アルミニウムオキサイドC複合フィルム(12mm×12mm)を一方の電極に貼り合わせ、さらにもう一枚の電極をはり合わせ、コンデンサ端部をエポキシ樹脂で封止することにより、図2に示される構造の電気二重層コンデンサを製造した。
このコンデンサを、60℃、25℃で作動電圧0〜2.5V、電流0.3mAで充放電を行なったところ、最大容量は470mF、470mFであった。また、25℃、2.5mAでの最大容量は420mFで、充放電を50回繰り返してもほとん ど容量に変化はなかった。
【0106】
実施例29:電気二重層コンデンサの製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例27で製造した活性炭電極(14mg)10mm×10mmに、実施例19で調製した熱重合性組成物を含浸させた電極を二個用意した。次に、実施例18で製造した共重合体(化合物8+化合物10)/アルミニウムオキサイドC複合フィルム(12mm×12mm)を一方の電極に貼り合わせ、さらにもう一枚の電極をはり合わせ、コンデンサ端部をエポキシ樹脂で封止し、熱重合性組成物を80℃で1時間加熱重合させることにより、図2に示される構造の電気二重層コンデンサを製造した。
このコンデンサを、60℃、25℃で作動電圧0〜2.5V、電流0.3mAで充放電を行なったところ、最大容量は460mF、430mFであった。また、25℃、2.5mAでの最大容量は250mFで、充放電を50回繰り返してもほとん ど容量に変化はなかった。
【0107】
実施例30:化合物12及び13の合成
【化44】
Figure 0003984359
【0108】
上式(a′)、(b′)に従い、常法でトリエチレングリコール、テトラエチレングリコールに窒素下、10℃以下で過剰のホスゲンガスを吹き込み、約5時間反応させ、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールのビスクロロホルメート体、化合物12及び化合物13を合成した。これらの同定はGC−MSで行なった。
【0109】
実施例31:化合物12、13のオリゴマー化(化合物14、15の合成)
【化45】
Figure 0003984359
【0110】
上式(c′)、(d′)に従い、常法で実施例30で合成したトリエチレングリコール、テトラエチレングリコールビスクロロホルメート体(化合物12、13)とトリエチレングリコール、テトラエチレングリコールとを、ピリジン存在下、25℃以下、ジクロロメタン中で約6時間反応させた後、過剰の水を加え、残クロロホルメート末端を水酸基化し、両末端に水酸基を有するオリゴエーテル/カーボネート(化合物14、化合物15)を合成した。
GPC分析により求めた、各オリゴエーテル/カーボネートの重量平均分子量(Mw)、平均繰り返し数x、yは以下の通りであった。
化合物14 Mw 〜約1200、x:〜約5、
化合物15 Mw 〜約1500、y:〜約5、
【0111】
実施例32:化合物16の合成
【化46】
Figure 0003984359
【0112】
常法により、上式(e′)に従い実施例31で合成したエーテル/カーボネートオリゴマー(化合物14)の無水THF溶液中に当モルのエチルクロロホルメートを、ピリジン存在下、25℃以下、徐々に滴下後、約6時間反応させることにより、片末端を水酸基化したオリゴエーテル/カーボネート(化合物16)を合成した。
【0113】
実施例33:重合性化合物17の合成
【化47】
Figure 0003984359
【0114】
化合物14(平均分子量1200)(60.0g)及びMOI(メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)(15.5g)を窒素雰囲気中でよく精製したTHF(200ml)に溶解した後、(0.44g)のジブチルチンジラウレートを添加した。その後、25℃で約15時間反応させることにより、無色生成物を得た。その1H−NMR、IR及び元素分析の結果から、化合物14とMOIは1対2で反応し、MOIのイソシアナート基が消失し、ウレタン結合が生成しており、化合物17が生成していることがわかった。
【0115】
実施例34:重合性化合物18の合成
【化48】
Figure 0003984359
【0116】
化合物15(平均分子量1500)(75.0g)及びMOI(15.5g)を窒素雰囲気中でよく精製したTHF(200ml)に溶解した後、ジブチルチンジラウレート(0.44g)を添加した。その後、25℃で約15時間反応させることにより、無色生成物を得た。その1H−NMR、IR及び元素分析の結果から、化合物15と MOIは1対2で反応し、MOIのイソシアナート基が消失し、ウレタン結合が生成しており、化合物18が生成していることがわかった。
【0117】
実施例35:重合性化合物19の合成
【化49】
Figure 0003984359
【0118】
化合物16(平均分子量1300)(130.0g)及びMOI(15.5g)を窒素雰囲気中でよく精製したTHF(200ml)に溶解した後、ジブチルチンジラウレート(0.44g)を添加した。その後、25℃で約15時間反応させることにより、無色生成物を得た。その1H−NMR、IR及び元素分析の結果から、化合物16とMOIは1対1で反応し、MOIのイソシアナート基が消失し、ウレタン結合が生成しており、化合物19が生成していることがわかった。
【0119】
実施例36:高分子固体電解質膜の製造(化合物17)
化合物17(2.0g)、エチレンカーボネート(EC)(1.8g)、エチルメチルカーボネート(EMC)(4.2g)、LiPF6(橋本化成製電池グレード)(0.60g)、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(商品名,ルシリンTPO、BASF社製)(0.010g)をアルゴン雰囲気中 でよく混合し、光重合性組成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー)は30ppmであった。この光重合性組成物をアルゴン雰囲気下、PETフィルム上に塗布後、ケミカル蛍光ランプ(三共電気社製,FL20S.BL)を10分照射したところ、EC/EMC系電解液を含浸した重合体(化合物17)フィルムが約30μmの自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、4.0×10-3、0.8×10-3S/cmであった。
【0120】
実施例37:高分子固体電解質膜の製造(化合物18)
化合物17の代わりに、化合物18(2.0g)を用いた以外は実施例36と同様にして、EC/EMC系電解液を含浸した重合体(化合物18)フィルムを約30μmの自立フィルムとして得た。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、4.2×10-3、0.8×10-3S/cmであった。
【0121】
実施例38:高分子固体電解質膜の製造(化合物18+化合物19)
化合物17の代わりに、化合物18(1.0g)と化合物19(1.0g)との混合物を用いた以外は実施例36と同様にして、EC/EMC系電解液を含浸した共重合体(化合物18+化合物19)フィルムを約30μmの自立フィルムとして得た。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、4.5×10-3、0.9×10-3S/cmであった。
【0122】
実施例39:高分子固体電解質複合膜の製造(化合物17+化合物18)
化合物17(0.5g)、化合物18(0.5g)、1000℃熱処理したアルミニウムオキサイドC(日本エアロジル製 結晶粒子径0.013μm、平均二次粒子径約0.1μm(SEM観察)、BET比表面積100m2/g)(0.33g)、EC(1.8g)、EMC(4.2g)、LiPF6(橋本化成製電池グレード)(0.60g)、及びルシリンTPO(BASF社製)(0.005g)をアルゴン雰囲気中でよく混合し、 光重合性組成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー法)は35ppmであった。
この光重合性組成物をアルゴン雰囲気下、PETフィルム上に塗布後、ケミカル蛍光ランプ(三共電気社製 FL20S.BL)を10分照射したところ、EC/EMC電解液を含浸した共重合体(化合物17+化合物18)/アルミニウムオキサイドC複合フィルムが約30μmの自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、6.6×10-3、1.8×10-3S/cmであった。
【0123】
実施例40:高分子固体電解質膜の製造(化合物17+化合物18)
開始剤としてルシリンTPO(0.005g)の代りに、パーオクタND(日本油 脂製)(0.01g)を添加し、アルミニウムオキサイドCを用いない以外は実施例39と同様にして、熱重合性組成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー法)は40ppmであった。
この熱重合性組成物をアルゴン雰囲気下、PETフィルム上に塗布後、PPフィルムを被覆して、ホットプレート上で60℃、1時間加熱したところ、EC/EMC電解液を含浸した共重合体(化合物17+化合物18)フィルムが約30μmの自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、6.0×10-3、1.5×10-3S/cmであった。
【0124】
実施例41:高分子固体電解質複合膜の製造(化合物17+化合物18)
LiPF6に代えて橋本化成製電池グレードLiBF4(0.50g)を用いた以外は実施例39と同様にして、光重合性組成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー法)は50ppmであった。
この光重合性組成物を実施例39と同様にPETフィルム上に塗布及び光照射し、EC/EMC電解液を含浸した共重合体(化合物17+化合物18)/アルミニウムオキサイドC複合フィルムを約30μmの自立フィルムとして得た。この固体電解質の25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、5.0×10-3、0.9×10-3S/cmであった。
【0125】
実施例42:高分子固体電解質複合膜の製造(化合物17+化合物18)
EC/EMCの代わりに、EC(1.5g)、EMC(3.0g)、ジエチルカーボネート(DEC)(1.5g)を用いた以外は、実施例39と同様にして光重合性 組成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー)は35ppmであった。
この光重合性組成物をアルゴン雰囲気下、PETフィルム上に塗布後、ケミカル蛍光ランプを10分照射したところ、EC/EMC/DEC系電解液を含浸した共重合体(化合物17+化合物18)/アルミニウムオキサイドC複合フィルムが約30μmの自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、5.8×10-3 、1.0×10-3S/cmであった。
【0126】
実施例43:高分子固体電解質複合膜の製造(化合物17+化合物18)
アルミニウムオキサイドCの代わりに、500℃熱処理したハイドロタルサイト(KW2200、協和化学製、平均粒子径約0.1μm(SEM観察)、BET 比表面積100m2/g)(0.33g)を用いた以外は、実施例39と同様にして 光重合性組成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー)は45ppmであった。
この光重合性組成物をアルゴン雰囲気下、PETフィルム上に塗布後、ケミカル蛍光ランプを10分照射したところ、EC/EMC系電解液を含浸した共重合体(化合物17+化合物18)/KW2200複合フィルムが約30μmの自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、6.0×10-3、1.4×10-3S/cmであった。
【0127】
実施例44:高分子固体電解質複合膜の製造(化合物17+化合物18)
LiPF6に代えて橋本化成製高純度テトラエチルアンモニウムテトラフルオ ロボレート(TEAB)(1.00g)、溶媒としてEC/EMCに代えてプロピレンカーボネート(6.0g)を用いた以外は実施例39と同様にして、光重合性組 成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー法)は110ppmであった。
この光重合性組成物を実施例39と同様に塗布及び光照射し、PC系電解液を含浸した共重合体(化合物17+化合物18)/アルミニウムオキサイドC複合フィルムを約30μmの自立フィルムとして得た。この固体電解質の25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ10.5×10-3、1.8×10-3S/cmであった。
【0128】
実施例45:高分子固体電解質膜の製造(化合物17+化合物18)
開始剤としてルシリンTPO(0.005g)の代りに、ベンゾイルパーオキサイド(0.02g)を添加し、アルミニウムオキサイドCを用いない以外は実施例44と同様にして、熱重合性組成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー法)は120ppmであった。
この熱重合性組成物をアルゴン雰囲気下、PETフィルム上に塗布後、PPフィルムを被覆して、ホットプレート上で80℃、1時間加熱したところ、PC系電解液を含浸した共重合体(化合物17+化合物18)フィルムが約30μmの自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、11.0×10-3、2.0×10-3S/cmであった。
【0129】
実施例46:高分子固体電解質複合膜の製造(化合物17+化合物18)
LiPF6を使用しない以外は実施例39と同様にして、塩未添加光重合性組 成物を得た。この組成物の含水量(カールフィッシャー法)は10ppmであった。
この光重合性組成物を実施例39と同様に塗布及び光照射し、EC+EMC系溶媒を含浸した塩未添加の共重合体(化合物17+化合物18)/アルミニウムオキサイドC複合フィルムを約30μmの自立フィルムとして得た。このフィルムを1.2M LiPF6/EC+EMC(重量比3:7)電解液中に約1時間浸漬することにより、フィルム中にLiPF6塩を後添加した。この塩後添加高分子固体電解質フィルムの25℃、−20℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、7.0×10-3、2.0×10-3S/cmであった。
【0130】
実施例47:Liイオン二次電池の製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例22で製造した黒鉛負極(10mm×10mm)に電解液(1.2M LiPF6/EC+EMC(3:7))を含浸させたものに、実施例46で調製した塩未添加共重合体(化合物17+化合物18)/アルミニウムオキサイドC複合フィルム(12mm×12mm)を貼り合わせ、さらに実施例21で製造したコバルト酸リチウム正極(10mm×10mm)に電解液(1.2M LiPF6/EC+EMC(3:7))を含浸させたものを貼り合わせ、電池端部をエポキシ樹脂で封印し、図1に示される構造の黒鉛/酸化コバルト系Liイオン二次電池を得た。。
この電池を、60℃、25℃で作動電圧2.75〜4.1V、電流0.5mAで充放電を行なったところ、最大放電容量は各々7.2mAh、7.2mAhであった。
また、25℃、作動電圧2.75〜4.1V、充電0.5mA、放電3.5mAで充放電を 繰返したところ、最大放電容量は7.0mAhで、容量が50%に減少するまでの サイクル寿命は530回であった。
【0131】
実施例48:Liイオン二次電池の製造
塩未添加共重合体(化合物17+化合物18)/アルミニウムオキサイドC複合フィルムの代りに、実施例43で製造した高分子固体電解質(化合物17+化合物18)/KW2200複合フィルムを用いた以外は実施例47と同様にして、図1に示される構造のLiイオン二次電池を製造した。
この電池を、60℃、25℃で作動電圧2.75〜4.1V、電流0.5mAで充放電を行なったところ、最大放電容量は各々7.2mAh、7.2mAhであった。
また、25℃、作動電圧2.75〜4.1V、充電0.5mA、放電3.5mAで充放電を 繰返したところ、最大放電容量は6.8mAhで、容量が50%に減少するまでの サイクル寿命は560回であった。
【0132】
実施例49:Liイオン二次電池の製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例22で製造した黒鉛負極(10mm×10mm)に電解液(1M LiPF6/EC+EMC(3:7))を含浸させた上に、実施例41で調製した(化合物17+化合物18)/アルミニウムオキサイドC系光重合性組成物を厚み30μmとなるように塗布し、アルゴン雰囲気下、ケミカル蛍光ランプを10分照射したところ、電解液を含浸した高分子固体電解質(化合物17+化合物18)/アルミニウムオキサイドC複合フィルムを黒鉛負極上に直接形成した。さらに実施例21で製造したコバルト酸リチウム正極(10mm×10mm)に電解液(1M LiPF6/EC+EMC(3:7))を含浸させたものを貼り合わせ、電池端部をエポキシ樹脂で封印し、図1に示される構造の黒鉛/酸化コバルト系Liイオン二次電池を得た。
この電池を、60℃、25℃で作動電圧2.75〜4.1V、電流0.5mAで充放電を行なったところ、最大放電容量は各々7.2mAh、7.2mAhであった。
また、25℃、作動電圧2.75〜4.1V、充電0.5mA、放電3.5mAで充放電を 繰返したところ、最大放電容量は6.8mAhで、容量が50%に減少するまでの サイクル寿命は475回であった。
【0133】
実施例50:Liイオン二次電池の製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例22で製造した黒鉛負極(10mm×10mm)に実施例40で調製した(化合物17+化合物18)系熱重合性組成物を含浸させたものに、実施例43で調製した高分子固体電解質(化合物17+化合物18)/KW2200複合フィルム(12mm×12mm)を貼り合わせ、さらに実施例21で製造したコバルト酸リチウム正極(10mm×10mm)に実施例40で調製した熱重合性組成物を含浸させたものを貼り合わせ、電池端部をエポキシ樹脂で封印した。これを60℃で1時間加熱し、熱重合性組成物を硬化させ、図1に示される構造の黒鉛/酸化コバルト系Liイオン二次電池を得た。
この電池を、60℃、25℃で作動電圧2.75〜4.1V、電流0.5mAで充放電を行なったところ、最大放電容量は各々7.2mAh、7.2mAhであった。
また、25℃、作動電圧2.75〜4.1V、充電0.5mA、放電3.5mAで充放電を 繰返したところ、最大放電容量は5.8mAhで、容量が50%に減少するまでの サイクル寿命は360回であった。
【0134】
実施例51:電気二重層コンデンサの製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例27で製造した活性炭電極(14mg)10mm×10mmに、電解液(1M TEAB/PC+EC(3:1))を含浸させた電極を二個用意した。次に、実施例44で製造した共重合体(化合物17+化合物18)/アルミニウムオキサイドC複合フィルム(12mm×12mm)を一方の電極に貼り合わせ、さらにもう一枚の電極をはり合わせ、コンデンサ端部をエポキシ樹脂で封止することにより、図2に示される構造の電気二重層コンデンサを製造した。
このコンデンサを、60℃、25℃で作動電圧0〜2.5V、電流0.3mAで充放電を行なったところ、最大容量は470mF、470mFであった。また、25℃、2.5mAでの最大容量は445mFで、充放電を50回繰り返してもほとん ど容量に変化はなかった。
【0135】
実施例52:電気二重層コンデンサの製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例27で製造した活性炭電極(14mg)10mm×10mmに、実施例45で調製した(化合物17+化合物18)系熱重合性組成物を含浸させた電極を二個用意した。次に、実施例44で製造した共重合体(化合物17+化合物18)/アルミニウムオキサイドC複合フィルム(12mm×12mm)を一方の電極に貼り合わせ、さらにもう一枚の電極をはり合わせ、コンデンサ端部をエポキシ樹脂で封止し、熱重合性組成物を80℃で1時間加熱重合させることにより、図2に示される構造の電気二重層コンデンサを製造した。
このコンデンサを、60℃、25℃で作動電圧0〜2.5V、電流0.3mAで充放電を行なったところ、最大容量は460mF、450mFであった。また、25℃、2.5mAでの最大容量は300mFで、充放電を50回繰り返してもほとん ど容量に変化はなかった。
【0136】
【発明の効果】
本発明のポリまたはオリゴカーボネート基を主成分とする架橋及び/または側鎖基を有する高分子と電解質塩とを含む高イオン伝導性の高分子固体電解質は、膜強度が良好で、低温から高温までのイオン伝導度が高く、加工性に優れ、さらに従来のオリゴオキシアルキレン系架橋及び/または側鎖基を有する高分子固体電解質に比較して大電流特性、高温耐久性に優れている。
本発明の高分子固体電解質を用いた電池及び電気二重層コンデンサはイオン伝導性物質が固体であるため液漏れの危険はなく長期間安定して使用できるものであり、また、この固体電解質を用いることにより薄型の電池やコンデンサを製造することができる。
【0137】
また、本発明の高分子固体電解質を使用することにより、薄膜化が容易であり、高容量で作動でき、長寿命で、大電流特性、高温耐久性、信頼性、安定性、加工性に優れた二次電池が得られる。この二次電池は、全固体型としては高容量、高電流で作動でき、あるいはサイクル性が良好で、安全性、信頼性に優れた電池であり、ポータブル機器用主電源、バックアップ電源をはじめとする電気製品用電源、電気自動車用、ロードレベリング用大型電源として使用可能である。薄膜化が容易に行なえるため、身分証明書用カード等のペーパー電池としても使用できる。
【0138】
さらに、本発明の高分子固体電解質を用いることによって、出力電圧が高く、取り出し電流が大きく、長寿命で、高温耐久性、加工性、信頼性、安定性に優れた電気二重層コンデンサが得られる。本発明の電気二重層コンデンサは、従来のコンデンサと比較しても、高電圧、高容量、高電流で作動でき、あるいはサイクル性が良好で、安全性、信頼性に優れており、このためバックアップ電源だけでなく、小型電池との併用で、各種電気製品用電源として使用可能である。また、薄膜化等の加工性に優れているため、従来の電気二重層コンデンサの用途以外の用途も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による電池の一例である薄型電池の実施例の概略断面図。
【図2】 本発明による電気二重層コンデンサの実施例の概略断面図。
【符号の説明】
1 正極
2 高分子固体電解質
3 負極
4 集電体
5 絶縁性樹脂封止剤
6 分極性電極
7 集電体
8 高分子固体電解質
9 絶縁性樹脂封止剤
10 リード線

Claims (18)

  1. 一般式(1)
    Figure 0003984359
    [式中、R1は炭素数が1〜10の鎖状、分岐状及び/または環状の、ヘテロ原 子を含んでいてもよい2価の基を表わし、mは1または2であり、nは2〜1000の整数である。但し、同一分子中に複数存在するR1、m及びnは、それぞれ同一でもよいし異なってもよい。]
    で示されるポリまたはオリゴカーボネート基と、下記一般式(2)
    Figure 0003984359
    [式中、R2は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表わし、R3は炭素数1〜10の鎖状、分岐状及び/または環状の、ヘテロ原子を含んでいてもよい2価の基を表わし、xは0または1〜10の整数である。但し、同一分子中に複数存在するR2、R3及びxは、それぞれ同一でもよいし異なってもよい。]
    で示される重合性官能基とを有する少なくとも一種の熱及び/または活性光線重合性化合物の重合体及び少なくとも一種の電解質塩を含む高分子固体電解質。
  2. 高分子化合物及び少なくとも一種の電解質塩を含む高分子固体電解質において、高分子化合物が前記一般式(2)で示される重合性官能基による重合反応を利用して得られる化合物を含む、前記一般式(1)で示されるポリまたはオリゴカーボネート基を有することを特徴とする請求項1に記載の高分子固体電解質。
  3. 前記一般式(2)で示される重合性官能基を有する少なくとも一種の化合物と、該化合物と反応する官能基と前記一般式(1)で示されるポリまたはオリゴカーボネート基とを有する少なくとも一種の化合物との反応により得られる高分子化合物、及び少なくとも一種の電解質塩を含む請求項1に記載の高分子固体電解質。
  4. 重合性官能基及び前記一般式(1)で示されるポリまたはオリゴカーボネート基を有する少なくとも一種の化合物の重合体と前記一般式(2)で示される重合性官能基を有する少なくとも一種の化合物の重合体との混合物、及び少なくとも一種の電解質塩を含む請求項1に記載の高分子固体電解質。
  5. 少なくとも一種の有機溶媒を含む請求項1乃至4のいずれかに記載の高分子固体電解質。
  6. 少なくとも一種の無機酸化物を含む請求項1乃至5のいずれかに記載の高分子固体電解質。
  7. 電解質塩が、アルカリ金属塩、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩から選ばれる請求項1乃至6のいずれかに記載の高分子固体電解質。
  8. 有機溶媒がカーボネート系化合物である請求項5に記載の高分子固体電解質。
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載の高分子固体電解質を用いることを特徴とする電池。
  10. 電池の負極として、リチウム、リチウム合金またはリチウムイオンを吸蔵放出できる炭素材料、リチウムイオンを吸蔵放出できる無機酸化物、リチウムイオンを吸蔵放出できる無機カルコゲナイド、リチウムイオンを吸蔵放出できる電導性高分子化合物から選ばれる少なくとも一つの材料を用いることを特徴とする請求項9に記載のリチウム電池。
  11. イオン伝導性物質を介して分極性電極を配置した電気二重層コンデンサにおいて、イオン伝導性物質が、請求項1乃至8のいずれかに記載の高分子固体電解質であることを特徴とする電気二重層コンデンサ。
  12. 一般式(1)
    Figure 0003984359
    [式中の記号は請求項1の記載と同じ意味を表わす。]
    で示されるポリまたはオリゴカーボネート基と、一般式(2)
    Figure 0003984359
    [式中の記号は請求項1の記載と同じ意味を表わす。]
    で示される重合性官能基とを有する少なくとも一種の熱及び/または活性光線重合性化合物、及び少なくとも一種の電解質塩を含有する重合性組成物、あるいはさらに少なくとも一種の有機溶媒及び/または少なくとも一種の無機酸化物を含有する重合性組成物を支持体上に配置した後、重合性組成物を重合することを特徴とする高分子固体電解質の製造方法。
  13. 一般式(1)
    Figure 0003984359
    [式中の記号は請求項1の記載と同じ意味を表わす。]
    で示されるポリまたはオリゴカーボネート基と、一般式(2)
    Figure 0003984359
    [式中の記号は請求項1の記載と同じ意味を表わす。]
    で示される重合性官能基とを有する少なくとも一種の熱及び/または活性光線重合性化合物、及び少なくとも一種の有機溶媒を含有する重合性組成物、あるいはさらに少なくとも一種の無機酸化物を含有する重合性組成物を支持体上に配置した後、重合性組成物を重合し、得られた重合物を電解液と接触させることにより電解質塩を含浸させることを特徴とする高分子固体電解質の製造方法。
  14. 一般式(1)
    Figure 0003984359
    [式中の記号は請求項1の記載と同じ意味を表わす。]
    で示されるポリまたはオリゴカーボネート基と、一般式(2)
    Figure 0003984359
    [式中の記号は請求項1の記載と同じ意味を表わす。]
    で示される重合性官能基とを有する少なくとも一種の熱及び/または活性光線重合性化合物、及び少なくとも一種の電解質塩を含有する重合性組成物、あるいはさらに少なくとも一種の有機溶媒及び/または少なくとも一種の無機酸化物を含有する重合性組成物を電池構成用構造体内に入れ、または支持体上に配置した後、重合性組成物を重合することを特徴とする電池の製造方法。
  15. 一般式(1)
    Figure 0003984359
    [式中の記号は請求項1の記載と同じ意味を表わす。]
    で示されるポリまたはオリゴカーボネート基と、一般式(2)
    Figure 0003984359
    [式中の記号は請求項1の記載と同じ意味を表わす。]
    で示される重合性官能基とを有する少なくとも一種の熱及び/または活性光線重合性化合物、及び少なくとも一種の有機溶媒を含有する重合性組成物、あるいはさらに少なくとも一種の無機酸化物を含有する重合性組成物を電池構成用構造体内に入れ、または支持体上に配置した後、重合性組成物を重合し、得られた重合物を電解液と接触させることにより電解質塩を含浸させることを特徴とする電池の製造方法。
  16. 一般式(1)
    Figure 0003984359
    [式中の記号は請求項1の記載と同じ意味を表わす。]
    で示されるポリまたはオリゴカーボネート基と、一般式(2)
    Figure 0003984359
    [式中の記号は請求項1の記載と同じ意味を表わす。]
    で示される重合性官能基とを有する少なくとも一種の熱及び/または活性光線重合性化合物、及び少なくとも一種の電解質塩を含有する重合性組成物、あるいはさらに少なくとも一種の有機溶媒及び/または少なくとも一種の無機酸化物を含有する重合性組成物を電気二重層コンデンサ構成用構造体内に入れ、または支持体上に配置した後、重合性組成物を重合することを特徴とする電気二重層コンデンサの製造方法。
  17. 一般式(1)
    Figure 0003984359
    [式中の記号は請求項1の記載と同じ意味を表わす。]
    で示されるポリまたはオリゴカーボネート基と、一般式(2)
    Figure 0003984359
    [式中の記号は請求項1の記載と同じ意味を表わす。]
    で示される重合性官能基とを有する少なくとも一種の熱及び/または活性光線重合性化合物、及び少なくとも一種の有機溶媒を含有する重合性組成物、あるいはさらに少なくとも一種の無機酸化物を含有する重合性組成物を電気二重層コンデンサ構成用構造体内に入れ、または支持体上に配置した後、重合性組成物を重合し、得られた重合物を電解液と接触させることにより電解質塩を含浸させることを特徴とする電気二重層コンデンサの製造方法。
  18. 一般式(3)
    Figure 0003984359
    [式中、R1及びR3は、炭素数が1〜10の鎖状、分岐状及び/または環状の、ヘテロ原子を含んでいてもよい2価の基を表わし、R2は水素原子または炭素数 1〜6のアルキル基を表わし、R4は炭素数1〜20の鎖状、分岐状及び/また は環状の、ヘテロ原子を含んでいてもよい有機基を表わし、mは1または2であり、nは2〜1000の整数であり、xは0または1〜10の整数である。但し、同一分子中に複数存在するR1、R2、R3、m、n及びxは、それぞれ同一でもよいし異なってもよい。]で示される重合性化合物。
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