図1は、本発明の配線回路基板の製造方法の一実施形態を示す工程図を示し、図2は、後述する支持基板とベース絶縁層との接合を説明するための斜視図を示し、図3は、接合工程の長手方向に沿う断面図を示し、図4は、剥離工程の長手方向に沿う断面図を示す。
この配線回路基板1の製造方法では、以下で説明する各工程をロールトゥロール方式により実施する。
この方法では、図1(a)の下側図に示すように、まず、支持基板2を用意する。
支持基板2は、長手方向(ロールトゥロール方式における搬送方向、図2の矢印参照)に沿って延びる平帯シート状に形成されている。
支持基板2は、例えば、ステンレス、42アロイ、アルミニウム、銅−ベリリウム、りん青銅金属などの金属、例えば、ガラス、例えば、セラミックス、例えば、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどの耐熱性樹脂などから形成されている。支持基板2は、好ましくは、金属から金属基板として形成されている。支持基板2が金属基板として形成される場合には、接合工程(後述)において、レーザー光9による照射によっても、支持基板2の寸法変化などの変形を生じにくく、ベース絶縁層3を確実に支持することができる。
また、支持基板2の表面(上面)には、レーザー光9(図2参照)からの吸収性を向上させるべく、例えば、フタロシアニン系染料などの光吸収剤を塗布してもよい。光吸収剤の塗布方法としては、例えば、インクジェットプリンタ、ニードルチップディスペンサー、スタンプスプレー、スクリーン印刷などが用いられる。また、光吸収剤は、支持基板2の表面全面あるいは表面の一部に塗布される。
支持基板2の厚みは、例えば、1μm以上2mm以下、好ましくは、10μm以上200μm以下である。
また、この方法では、図1(a)の上側図に示すように、別途、絶縁層としてのベース絶縁層3を用意する。
ベース絶縁層3は、長手方向に沿って延び、支持基板2の外形形状に対応する平帯シート状に形成されている。
ベース絶縁層3は、例えば、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド、アクリル(ポリメタクリル酸メチル(PMMA)など)などの熱硬化性樹脂、例えば、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、トリアセチルセルロール(TAC)、ポリエチレン(PE)などの熱可塑性樹脂などの絶縁材料から形成されている。好ましくは、ポリイミドから形成されている。
ベース絶縁層3がポリイミドから形成されていれば、活性化処理工程(後述)においてベース絶縁層3の表面をより一層活性化することができる。
なお、ポリイミドは、吸湿して膨張し易いので、接合工程(後述)における吸湿によって配線回路基板1が撓むことを防止するために、接合工程前にベース絶縁層3を予め吸湿させることもできる。
また、ベース絶縁層3には、レーザー光9(図2参照)の光吸収性を制御する目的で、染料または顔料などを含ませることもできる。
さらに、ベース絶縁層3は、全芳香族ポリアミド不織布などから形成されていてもよい。
ベース絶縁層3の厚みは、例えば、1μm以上2mm以下、好ましくは、10μm以上200μm以下である。
次いで、この方法では、図1(a)の上側図の矢印で示すように、ベース絶縁層3の表面を予め活性化処理する(活性化処理工程)。具体的には、ベース絶縁層3における、支持基板2との接触面(支持基板2と接触する面)である下面(裏面)と、支持基板2との非接触面(支持基板2と接触しない面)である上面(表面)との両面を、次の積層工程の前に予め活性化処理する。
活性化処理としては、例えば、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理などが用いられる。
プラズマ処理では、例えば、常圧(大気圧)プラズマ処理装置や低圧(真空)プラズマ処理装置などの、公知のプラズマ処理装置が用いられる。好ましくは、装置(チャンバー)内を減圧する必要がなく、活性化処理工程をロールトゥロール方式により簡単に実施する観点から、常圧プラズマ処理装置が用いられる。
常圧プラズマ処理装置は、図示しないが、チャンバーと、そのチャンバー内において、交流電源に接続される平板状の放電電極と、放電電極と間隔を隔てて対向配置され、接地されている平板状の接地電極とを備えている。
処理ガスとしては、例えば、酸素、オゾン、水などの酸素系ガス、例えば、窒素、アンモニアなどの窒素系ガス、例えば、一酸化硫黄(SO)、二酸化硫黄(SO)などの硫黄系ガス、例えば、これらの混合ガスなどが用いられる。好ましくは、酸素、窒素、または、それらの混合ガスが用いられる。
交流電源が印加する電圧(交流電圧)は、例えば、パルス電圧であって、具体的には、方形波形のパルス電圧である。交流電圧は、その周波数が、例えば、0.5〜100kHz(1/ks)、パルス立ち上がり時間が、例えば、5〜100μs、パルス継続時間が、例えば、1〜1000μsである。また、最大電圧が、例えば、10V〜20kVである。
また、プラズマの出力密度は、例えば、0.1〜20W/cm2である。
常圧プラズマ処理装置は、一般に市販されているものを用いることができ、具体的には、AP−Tシリーズ(積水化学社製)などが用いられる。
プラズマ処理装置では、チャンバー内に処理ガスを常に供給しながら、交流電源から交流電圧を印加することにより、放電電極と接地電極との間にグロー放電プラズマを発生させる。
ベース絶縁層3の表面をプラズマ処理するには、プラズマ処理装置のチャンバー内において、グロー放電プラズマが発生している放電電極および接地電極間に、ベース絶縁層3を介在させながら通過させる。
コロナ処理では、例えば、公知のコロナ処理装置が用いられる。コロナ処理装置は、例えば、図示しないが、チャンバーと、そのチャンバー内において、直流電源に接続される針状の放電電極と、放電電極と間隔を隔てて対向配置される接地電極とを備えている。
放電電極および接地電極は、上記と同様の金属から形成されている。処理ガスとしては、例えば、上記と同様のガスが用いられる。また、直流電源が印加する電源(直流電圧)は、例えば、5〜25kVである。また、コロナの出力密度は、例えば、1〜500W/cm2である。
コロナ処理装置では、チャンバー内に処理ガスを常に供給しながら、直流電源から直流電圧を印加することにより、放電電極と接地電極との間に、コロナ放電を発生させる。
ベース絶縁層3の表面をコロナ処理するには、コロナ処理装置のチャンバー内において、グロー放電プラズマが発生している放電電極および接地電極間に、ベース絶縁層3を介在させながら通過させる。
紫外線照射処理では、例えば、図示しないが、公知の紫外線照射装置において、紫外線、具体的には、波長1〜400nm、好ましくは、1〜300nmの紫外線を、ベース絶縁層3の表面に照射する。紫外線照射装置は、ベース絶縁層3における線量が、10〜1000J/m2となるように、設定される。
これら活性化処理は、単独処理または併用処理することができる。
活性化処理として、好ましくは、プラズマ処理が用いられる。
次いで、この方法では、図1(b)に示すように、活性化処理されたベース絶縁層3を、支持基板2の上に積層する。
活性化処理されたベース絶縁層3を支持基板2の上に積層するには、図3が参照されるように、ベース絶縁層3および支持基板2がそれぞれ巻回された各送出ロール(図示せず)から第1ロール10に向けてそれぞれを送り出し、第1ロール10において、それらを厚み方向上側に向かって支持基板2およびベース絶縁層3の順序で重ね合わせる。これにより、ベース絶縁層3および支持基板2は、図2が参照されるように、それらの幅方向(長手方向に直交する方向)両端縁が、平面視(厚み方向にみたとき)において同一位置に配置される、2層シート19となる。
次に、図1(c)に示すように、活性化処理されたベース絶縁層3の下面と支持基板2の上面とをレーザー光9を用いて接合する。
詳しくは、図2および図3に示す接合装置30によって、活性化処理されたベース絶縁層3の下面および支持基板2の上面を接合する。
図3において、接合装置30は、搬送部6と、支持部7と、照射部8とを備えている。
搬送部6は、支持部7の搬送方向両側に設けられており、第1ロール10と第2ロール11とを備えている。
第1ロール10は、搬送部6の搬送方向上流側(以下、単に上流側と省略する。)に配置され、軸心が幅方向に沿って延びるように配置されている。また、第1ロール10は、接合工程前の2層シート19を支持部7に送り出すように回転される。
第2ロール11は、搬送部6の搬送方向下流側(以下、単に下流側と省略する。)に配置され、軸心が幅方向に沿って延びるように配置されている。また、第2ロール11は、接合工程後の2層シート19を支持部7から引き出すように回転される。
支持部7は、搬送方向において、第1ロール10と第2ロール11との間に配置されており、2層シート19を支持するために設けられている。また、支持部7は、図2に示すように、搬送方向に沿って延びるように配置されている。また、支持部7は、厚み方向において投影したとき、幅方向において2層シート19を含むように形成されている。支持部7は、ステージ12と加圧板13とを備えている。
ステージ12は、支持部7の下側に配置され、具体的には、図2および図3に示すように、その上面が、第1ロール10の上端部と、第2ロール11の上端部と略同一平面上となる、平面視略矩形平板形状に形成されている。
ステージ12は、例えば、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマーなどの耐熱性ポリマー、耐熱性不織布、ガラス、金属、セラミックスなどから形成されている。ステージ12は、レーザー光9の照射によって支持基板2に発生する熱が逃げることを防止すべく、好ましくは、断熱性の高い材料から形成される。このような材料は、その熱伝導率が、20W/m/K以下、好ましくは、10W/m/K以下、さらに好ましくは、1W/m/K以下、通常、0.005W/m/K以上である。
加圧板13は、レーザー光9を高い透過率で透過させる透明材料から形成され、例えば、PMMAから形成されている。
また、加圧板13は、支持部7の上側において、ステージ12と厚み方向において対向配置されており、具体的には、ステージ12の上面と上側に間隔を隔てて配置されている。また、加圧板13は、ステージ12とほぼ同じ大きさの平面視略矩形平板形状に形成されている。
また、加圧板13は、ステージ12の上側において、上下移動可能に設けられており、具体的には、接合工程前の2層シート19がステージ12の上面に搬送されているときには、図3の仮想線で示すように、2層シート19と上側に間隔を隔てた位置(上側位置)に位置する。また、加圧板13は、2層シート19の接合工程時には、図3の実線で示すように、2層シート19を下側に加圧(押圧)できる位置(下側位置)に位置する。さらに、加圧板13は、接合工程後の2層シート19がステージ12の上面から搬送されているときには、仮想線で示す上側位置に位置する。
照射部8は、レーザー光9を2層シート19に照射するために設けられており、支持部7の上側に間隔を隔てて対向配置されている。照射部8は、第1照射部14と第2照射部15とを備えている。
第1照射部14および第2照射部15は、図2に示すように、幅方向に互いに間隔を隔てて配置されており、第1照射部14および第2照射部15から照射されるレーザー光9が、2層シート19の幅方向両端部にそれぞれ照射されるように形成されている。
第1照射部14および第2照射部15は、ともに同一種類のレーザー発振器を備えており、このようなレーザー発振器は、可視光領域および赤外線領域に吸収波長を有するレーザー光9を照射でき、具体的には、例えば、半導体レーザー、例えば、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーなどの固体レーザー、例えば、炭酸ガス(CO2)レーザーなどの気体レーザー、例えば、ファイバーレーザーなどが用いられる。好ましくは、安価で均一なレーザー光(レーザービーム)9を容易に得る観点から、半導体レーザーやファイバーレーザーが用いられる。
また、レーザー光9のパルス幅をフェムト秒(10−15秒)やピコ秒(10−12秒)オーダーに設定して発振させる、フェムト秒レーザーやピコ秒レーザーを用いることもできる。また、レーザー光9としては、例えば、CWレーザー(連続波レーザー)やパルスレーザー(断続波レーザー)が用いられ、好ましくは、CWレーザーが用いられる。CWレーザーであれば、瞬間的に高いエネルギーが支持基板2やベース絶縁層3にかかることを防止して、支持基板2やベース絶縁層3の分解を防止しつつ、加熱による溶融を促進させることができる。
レーザー光9の波長は、支持基板2およびベース絶縁層3の光吸収率や光透過率などにより適宜設定され、例えば、ベース絶縁層3に対する光透過率が30%以上で、支持基板2に対する光吸収率が20%以上となるような波長、好ましくは、ベース絶縁層3に対する光透過率が50%以上で、支持基板2に対する光吸収率が40%以上となるような波長、さらに好ましくは、ベース絶縁層3に対する光透過率が70%以上で、支持基板2に対する光吸収率が60%以上となるような波長が選択される。具体的には、レーザー光9の波長は、例えば、100〜10600nm、好ましくは、400〜2500nm、さらに好ましくは、500〜1500nmである。
また、レーザー光9の出力は、例えば、5〜500W、好ましくは、10〜100W、さらに好ましくは、20〜70Wである。
また、レーザー光9のレーザービーム径は、例えば、0.1〜10mm、好ましくは、0.5〜5mmである。
そして、上記した接合装置30によって、活性化処理されたベース絶縁層3の下面および支持基板2の上面を接合するには、まず、図2および図3に示すように、接合装置30の第1ロール10において、2層シート19として積層された支持基板2およびベース絶縁層3を、ステージ12の上面に向けて搬送する。なお、このとき、加圧板13は、仮想線で示す上側位置に予め位置している。
次いで、加圧板13を、下側位置に移動させることにより、2層シート19を加圧板13とステージ12とにより厚み方向において挟み込み、これにより、2層シート19を厚み方向において加圧する。なお、この挟み込みにより、2層シート19は、搬送方向において搬送されることなく、接合工程の間、固定される。
加圧条件は、例えば、9.8〜9800kPa、好ましくは、98〜980kPaである。
なお、2層シート19の接合工程前に、2層シート19を予備的に加熱(予備加熱)すべく、ステージ12を、例えば、50〜350℃に加熱することができる。あるいは、接合時における支持基板2の熱による損傷(ダメージ)を抑制すべく、ステージ12を、例えば、−50〜20℃に冷却することもできる。
次に、照射部8によってレーザー光9を2層シート19に向けて照射する。具体的には、第1照射部14および第2照射部15からレーザー光9を、2層シート19の幅方向両端部に向けてそれぞれ照射する。レーザー光9の2層シート19への照射では、レーザー光9を搬送方向に沿ってステージ12の上流側端部から下流側端部まで走査させる。つまり、レーザー光9をステージ12、2層シート19および加圧板13に対して搬送方向に相対移動させる。
これにより、支持基板2とベース絶縁層3との界面において、レーザー光9が吸収される。とりわけ、支持基板2が、金属基板である場合には、ベース絶縁層3が、レーザー光9を、直接、あるいは、支持基板2で反射された反射光として吸収する。これにより、ベース絶縁層3(および支持基板2の上面)において、レーザー光9が吸収される部分が加熱されて溶融される。これと同時に、ベース絶縁層3が支持基板2に熱融着する。これにより、図1(c)に示すように、支持基板2の上面と活性化処理されたベース絶縁層3の下面とがそれらの幅方向両端部において接合される。なお、支持基板2とベース絶縁層3とが接合される部分が、接合部16とされる。
次いで、図3の仮想線で示すように、加圧板13を上側位置へ移動させることにより、2層シート19の挟み込み(加圧状態)を解除して、その後、搬送部6の搬送により、接合後の2層シート19を、第2ロール11で引き出し、接合工程前の2層シート19をステージ12と加圧板13との間に配置させる。その後、加圧板13を下側位置へ移動させ、上記と同様にレーザー光9を照射する。その後、加圧板13を再度上側位置へ移動させる。接合装置30では、このような動作が繰り返されて、2層シート19には、搬送方向に連続した接合部16が形成される。
そして、接合部16が形成された2層シート19は、続いて、図示しない巻取ロールに巻き取られる。
なお、接合工程後のベース絶縁層と支持基板との密着力は、例えば、0.01〜1N/mm、好ましくは、0.05〜0.5N/mmである。
次いで、この方法では、図1(d)に示すように、ベース絶縁層3の上に、導体パターン4を形成する。
導体パターン4は、例えば、長手方向に延びる複数(4本)の配線24と、各配線24における長手方向両端部に形成される端子部(図示せず)とを一体的に連続して備える配線回路パターンとして形成されている。配線24は、幅方向において互いに間隔を隔てて並列配置されている。
導体パターン4は、例えば、銅、ニッケル、金、またはこれらの合金などの導体材料から形成されている。好ましくは、銅から形成されている。導体パターン4の厚みは、例えば、3〜50μm、好ましくは、5〜20μmである。
導体パターン4は、例えば、アディティブ法やサブトラクティブ法などの公知のパターンニング法によって、形成する。好ましくは、アディティブ法により形成する。
次いで、この方法では、図1(e)に示すように、カバー絶縁層5を、ベース絶縁層3の上に、導体パターン4を被覆するように形成する。具体的には、カバー絶縁層5を、配線24を被覆し、端子部を露出するパターンで形成する。
カバー絶縁層5は、上記したベース絶縁層3と同様の絶縁材料から形成されている。カバー絶縁層5の厚みは、例えば、2〜50μm、好ましくは、5〜30μmである。
カバー絶縁層5の形成は、例えば、予め合成樹脂のシート(フィルム)として用意して、積層接着するか、あるいは、導体パターン4を含むベース絶縁層3の上に、感光性の合成樹脂のワニスを塗布し、乾燥後、露光後現像して上記したパターンに加工し、必要により硬化させる。
これにより、支持基板2の上に、ベース絶縁層3、導体パターン4およびカバー絶縁層5を備える配線回路基板1を形成する。つまり、配線回路基板1は、支持基板2に支持された多層シート20として形成される。
その後、図1(f)に示すように、支持基板2を、配線回路基板1から除去する。
支持基板2を配線回路基板1から除去するには、例えば、図4に示す剥離装置27を用いて、支持基板2を配線回路基板1から剥離する。
図4において、剥離装置27は、剥離部18と、照射部8とを備えている。
剥離部18は、剥離ロール28と、第3ロール29とを備えている。
剥離ロール28は、多層シート20が、剥離ロール28の表面に沿って張設されるように配置されている。
また、第3ロール29は、剥離ロール29の上流側において、剥離ロール28と間隔を隔てて配置されている。第3ロール29は、多層シート20が剥離ロール28において張設されるように配置されている。
これにより、第3ロール29は、多層シート20の一方側面(配線回路基板1の表面)と接触し、剥離ロール28は、多層シート20の他方側面(支持基板2の裏面)と接触する。つまり、多層シート20は、搬送方向において、第3ロール29と剥離ロール28とにわたって、断面略S字形状に掛け渡されている。
また、剥離ロール28の下流側には、剥離した支持基板2を回収するための回収ロール(図示せず)と、製品として得られる配線回路基板1を巻き取るための巻取ロール(図示せず)とが設けられている。回収ロールと、巻取ロールとは、レーザー光9が照射された多層シート20において、配線回路基板1から支持基板2を引き剥がすべく、互いに間隔を隔てて配置されている。
照射部8は、上記した接合装置30の照射部8と同様であって、詳しくは、レーザー光9を、剥離ロール28の表面に配置された多層シート20に照射できるように剥離ロール28に対向配置されている。
そして、剥離装置27では、剥離ロール28の表面に多層シート20が張設され、続いて、剥離ロール28の表面に配置された多層シート20の接合部16(図2および図3参照)に、照射部8からレーザー光9を照射する。これにより、接合部16が加熱され、接合部16が溶融する。その後、剥離ロール28の回転により、多層シート20の照射部分が剥離ロール28から離れると、回収ロールと巻取ロールとの引張力により、支持基板2が、配線回路基板1から引き剥がされながら、支持基板2が回収ロールに回収されるとともに、配線回路基板1が巻取ロールに巻き取られる。
なお、支持基板2の剥離における剥離強度は、例えば、0.01〜5N/mm、好ましくは、0.05〜2N/mmである。
その後、回収された支持基板2には、再度、新たに搬送されるベース絶縁層3が積層され、繰り返し使用(再利用)される。
これにより、配線回路基板1を得ることができる。
そして、この方法では、配線回路基板1を形成する工程は、支持基板2とベース絶縁層3とをレーザー光9を用いて接合する工程を備えている。そのため、これらを簡便に接合することができる。そして、支持基板2により支持されたベース絶縁層3の上に、導体パターン4を形成することができるので、導体パターン4の精密な配置を確保することができる。
しかも、レーザー光9を用いて、支持基板2とベース絶縁層3とを接合するので、配線回路基板1の形成後には、支持基板2をベース絶縁層3から容易に除去することができる。また、レーザー光9を用いるので、支持基板2およびベース絶縁層3の界面を選択的に発熱させることができ、2層シート19の熱による損傷を抑制することができる。
また、配線回路基板1の形成後には、支持基板2とベース絶縁層3との接合部16をレーザー光9を用いて加熱するので、接合部16を再溶融させて、接合部16の接合強度を低下させることができる。そのため、支持基板2をベース絶縁層3から容易に剥離して、支持基板2を簡便に回収することができる。
そのため、配線回路基板1の形成後には、支持基板2を、簡便かつ短時間で除去することができる。
また、支持基板2を再利用できるので、製造コストの低減を図ることもできる。
その結果、導体パターン4の精密な配置と、支持基板2の再利用とを同時に達成することができ、さらには、支持基板2を、簡便かつ短時間で除去して、製造コストの低減を図ることができる。
また、接合工程では、レーザー光9の照射により発生する熱によって、支持基板2およびベース絶縁層3が、寸法変化などの変形を生じる場合がある。とりわけ、支持基板2が金属基板として形成され、ベース絶縁層3がポリイミドがからなる場合には、ベース絶縁層3の変形を生じる場合がある。
しかし、この方法では、ベース絶縁層3の下面を予め活性化処理し、その後、接合工程を実施する。そのため、接合工程では、活性化されたベース絶縁層3の下面を、低い出力のレーザー光で、支持基板2と接合することができる。
そのため、レーザー光9により生じる熱の発生を低減させることができる。
その結果、ベース絶縁層3の変形を有効に防止することができる。
なお、上記した説明では、ベース絶縁層3の両面(上面および下面)を活性化処理したが、例えば、ベース絶縁層3の下面のみを活性化処理することもできる。
また、上記した説明では、剥離装置27に照射部8を設け、照射部8のレーザー光9を用いて、多層シート20の接合部16を加熱したが、例えば、図示しないが、照射部8を設けることなく、剥離ロール28を、ヒータなどの加熱手段により加熱し、加熱された剥離ロール28と接合部16との接触によって、接合部16を加熱することもできる。さらには、加熱手段を、剥離ロール28とは別途設け、これによって、接合部16の周囲を高温雰囲気下の環境とすることにより、接合部16を加熱することもできる。
好ましくは、レーザー光9を用いて接合部16を加熱する。レーザー光9であれば、簡便かつ確実に接合部16を加熱することができる。
また、剥離部18では、接合部16を加熱することにより、支持基板2を剥離したが、例えば、図示しないが、接合部16を加熱することなく、支持基板2を、配線回路基板1を物理的な引張力のみによって引き剥がすこともできる。好ましくは、剥離強度を低減させるべく、接合部16を加熱する。
また、上記した説明では、接合工程において、レーザー光9を走査させたが、レーザー光9を固定して、ステージ12、2層シート19および加圧板13を、レーザー光9に対して相対移動させることもできる。好ましくは、レーザー光9を走査させる。これにより、所望の位置に選択的かつ簡便に接合部16を形成することができる。
なお、上記した説明では、支持基板2を、1層から形成したが、例えば、材料の種類が異なる2層以上から形成することもできる。例えば、樹脂(ポリイミド)シートおよびその上に積層される金属基板の2層からなる2層基材として形成することもできる。この場合には、レーザー光9によって加熱された接合部16の熱が、金属基板の裏面側から逃げることを防止(断熱)することができる。さらに、接合装置30における第1ロール10および第2ロール11と、金属基板との間に、樹脂シートが介在されるので、金属基板と、第1ロール10および第2ロール11との接触による金属粉(異物)の発生を抑制することができる。
なお、上記した説明では、支持基板2を平坦状に形成したが、図示しないが、例えば、支持基板2が金属基板である場合において、表面に断面凹凸形状や断面逆L字形状など適宜の形状に形成することにより、支持基板2とベース絶縁層3とにおけるアンカー効果によって、それらをより強固に接合することができる。なお、支持基板2の表面における形状は、例えば、特開2006−341515号公報や特開2006−15405号公報などの記載に準拠して形成することができる。
図5〜図18は、本発明の配線回路基板の製造方法の他の実施形態を示し、接合工程の説明図である。なお、上記した各部に対応する部材については、以降の各図面において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
上記した図2の説明では、接合装置30の支持部7において、平板状のステージ12と平板状の加圧板13とにより、2層シート19を加圧したが、例えば、図5に示すように、これらを円柱形状のニップロール21により、2層シート19を加圧することもできる。
ニップロール21は、2層シート19を厚み方向に挟む第1ニップロール22および第2ニップロール23を備えている。
第1ニップロール22は、ニップロール21において、下側に形成され、軸心が幅方向に延びる円柱形状に形成されている。また、第1ニップロール22は、駆動力が入力されており、その上面に配置される2層シート19を下流側に搬送できるように、軸心を中心として自転可能に設けられている。第1ニップロール22を形成する材料は、ステージ12の材料と同様である。
第2ニップロール23は、第1ニップロール22と2層シート19を挟んで対向配置されて、軸心が第1ニップロール22の軸心に沿って延びる円柱形状に形成されている。また、第2ニップロール23は、その下面に配置される2層シート19を下流側に搬送できるように、軸心を中心として回転(従動)可能に設けられている。第2ニップロール23を形成する材料は、加圧板13の材料と同様である。
接合装置30では、第1ニップロール22に駆動力が入力されることにより、第1ニップロール22が自転して、これに従って、第2ニップロール23が従動する。これにより、2層シート19を加圧しながら、2層シート19を搬送する。また、図6が参照されるように、2層シート19における第1ニップロール22および第2ニップロール23により加圧される部分(ニップ部分)に、レーザー光9が第2ニップロール23を通過して、照射される。
この方法では、レーザー光9を走査させることなく、レーザー光9を第2ニップロール23を通して2層シート19に照射するので、接合部16を形成しながら、接合された2層シート19を連続的に搬送することができる。つまり、2層シート19を支持部7に対して固定することなく、接合できるので、リードタイムを短縮することができる。また、加圧と照射とを同時に実施することができる。
また、第1ニップロール22および第2ニップロール23により、搬送方向において、2層シート19の一部のみを加圧するので、2層シート19を効率的に加圧することができる。
また、図6に示すように、2層シート19を第1ニップロール22の表面に張設させることもできる。
図6において、第1ニップロール22および第2ニップロール23の下流側には、テンションロール26が、それらと間隔を隔てて設けられている。
これにより、第1ニップロール22は、2層シート19の他方側面(支持基板2の裏面)と接触し、テンションロール26は、2層シート19の一方側面(ベース絶縁層3の表面(非接触面))と接触する。つまり、2層シート19は、搬送方向において、第2ニップロール22とテンションロール26とにわたって、断面略S字形状に掛け渡されている。
また、図7に示すように、第2ニップロール23に代えて、2つの分離ロール33を用いることもできる。
図7において、各分離ロール33は、上記した第2ニップロール23の幅方向中央が除去されることにより、互いに独立(分離)して形成される。各分離ロール33は、2層シート19の幅方向両端部の上側に対向配置されている。
2つの分離ロール33により2層シート19を加圧すれば、搬送方向および幅方向において、2層シート19の一部のみを加圧できるので、2層シート19をより一層効率的に加圧することができる。
また、図8に示すように、2つの分離ロール33に代えて、2つのボール17を用いることもできる。
各ボール17は、その最下面が2層シート19のベース絶縁層3の上面に接触するように設けられている。また、ボール17の上側は、公知の支持手段により転動自在に支持されている。
2つのボール17により2層シート19を加圧すれば、各ボール17の球面に対応する2層シート19の一部のみを加圧するので、2層シート19をとりわけより一層効率的に加圧することができる。
また、上記した説明では、加圧板13(図2)、第2ニップロール23(図5)、分離ロール33(図7)、ボール17(図8)などを設けたが、例えば、図9に示すように、それらを設けることなく、テンションロール26を用いて、2層シート19を加圧することもできる。
図9において、テンションロール26は、第1テンションロール31と第2テンションロール32とを備えている。
第1テンションロール31は、図6に示す第1ニップロール22と同様である。
第2テンションロール32は、第1テンションロール31と下流側に間隔を隔てて設けられ、第1テンションロール31の表面に沿って張設される2層シート19を、第1テンションロール31(の径方向内方)側に向かって付勢するように設けられている。つまり、第2テンションロール32は、その表面に、2層シート19のベース絶縁層3が接触するように配置されている。
テンションロール26を用いることにより、簡易な構成で2層シート19を加圧することができる。
また、図10に示すように、ガス(アシストガス)35を用いて、2層シート19を加圧することもできる。
図10において、照射部8には、ガス35を噴射するためのガスノズル34が設けられている。
ガスノズル34は、第1照射部14および第2照射部15に対応して設けられており、ガスノズル34は、それらの照射口と同軸であって、第1照射部14および第2照射部15の照射口の外側において、断面リング形状に形成されている。
ガスノズル34から噴射されるガス35としては、例えば、空気(圧縮エア)、例えば、ヘリウム、ネオン、窒素などの不活性ガスが用いられる。
噴射圧は、例えば、0.01MPa以上5MPa以下であり、好ましくは、0.1MPa以上2MPa以下である。噴射圧が上記範囲に満たない場合には、2層シート19の接合強度を十分に向上させることができず、レーザー接合を確実に実施できない場合がある。噴射圧が上記範囲を超える場合には、2層シート19のばたつきにより位置ずれを生じ、レーザー接合を精度よく実施することができない場合がある。
ガス35の噴射により2層シート19を加圧すれば、非接触で2層シート19を加圧することができる。
なお、上記した説明では、ガスノズル34を、第1照射部14および第2照射部15の照射口と同軸で形成したが、例えば、それらの下流側あるいは上流側に形成し、ガスノズル34のノズル口がレーザー光9の照射位置に向かっていればよい。
また、上記した図6に示す説明では、照射部8の第1照射部14および第2照射部15を、第2ニップロール23の2層シート19に対する反対側に設けたが、例えば、図11に示すように、第2ニップロール23の内部(径方向内側)に設けることもできる。
また、上記した図6に示す説明では、レーザー光9を、2層シート19のニップ部分(第1ニップロール22の表面と第2ニップロール23の表面との接触部分)に照射したが、例えば、図12に示すように、ニップ部分の上流側に照射することもできる。
図12において、レーザー光9の照射位置は、ベース絶縁層3のニップ部分から上流側に向かって、レーザー光9の照射によって加熱された2層シート19の温度が下がらない程度の間隔を隔てた位置とされる。
これにより、レーザー光9の照射位置と加圧位置とを搬送方向において間隔を隔てることにより、レーザー光9の照射と加圧とのタイミングをずらすことができる。
また、上記した説明では、レーザー光9を、支持基板2の表面(上面)およびベース絶縁層3の表面(上面)から照射したが、例えば、図13に示すように、支持基板2の表面(上面)およびベース絶縁層3の裏面(下面)に照射することもできる。
図13において、第1ニップロール22および第2ニップロール23の対向方向において、支持基板2を第1ニップロール22側からステージ12(図3参照)に送り出し、ベース絶縁層3を第2ニップロール23側からステージ12に送り出す。そして、照射部8は、第1ニップロール22および第2ニップロール23に送り出される前の支持基板2とベース絶縁層3との間に、それらと互いに間隔を隔てて対向配置され、レーザー光9を、ニップ部分を含み、重ね合わされる直前の支持基板2とベース絶縁層3とに照射する。なお、この方法は、例えば、特開平4−249134号公報の記載に準拠して実施される。
この方法では、積層方向(厚み方向)における支持基板2とベース絶縁層3との積層順序にかかわらず、それらを均一に照射できる。
また、図14に示すように、接合工程において、ベース絶縁層3の表面に、耐熱性樹脂シート36を積層することもできる。
耐熱性樹脂シート36は、ベース絶縁層3と略同一形状であって、支持基板2およびベース絶縁層3の密着性を高めて、これにより、レーザー接合性を向上させるために設けられる。
耐熱性樹脂シート36は、そのガラス転移点(Tg)が、例えば、200℃以上、好ましくは、250℃以上、通常、500℃以下である。あるいは、ガラス転移点を有していない耐熱性樹脂から形成されていてもよい。具体的には、耐熱性樹脂シート36として、例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどが用いられる。
耐熱性樹脂シート36の厚みは、レーザー光9の照射時の熱応力を抑制する観点から、例えば、10μm以上、好ましくは、25μm以上であり、ロールトゥロールにおける搬送性の観点から、例えば、200μm以下、好ましくは、150μm以下である。
そして、耐熱性樹脂シート36は、第1テンションロール31において、ベース絶縁層3の表面に積層され、レーザー光9が照射された後、第2テンションロール32(剥離ロール28)において、ベース絶縁層3から剥離される。
また、図15に示すように、支持基板2およびベース絶縁層3の厚み方向における位置を反転させることもできる。
図15において、接合装置30において、ベース絶縁層3の表面(接触面)に支持基板2が積層される。そして、レーザー光9が支持基板2に直接照射される。
支持基板2が金属基板である場合には、支持基板2がレーザー光9を吸収して、その表面が発熱し、発生した熱が支持基板2からベース絶縁層3に伝導される。これによって、ベース絶縁層3の溶融を促進させることができる。
また、上記した説明では、レーザー光9を、2層シート19の幅方向両端部のみを照射したが、例えば、図示しないが、幅方向全体を照射することもできる。あるいは、図16に示すように、幅方向両端部および幅方向中央部(幅方向途中)を照射することもできる。
図16では、3本のレーザー光9によって、幅方向に間隔を隔てて配置された3本の接合部16が、長手方向に延びる筋状に形成される。
また、図17に示すように、幅方向途中に、複数の接合部16を、長手方向にわたって断続的に形成することもできる。図17において、ガルバノスキャナー37を備える照射部8によって、2層シート19の幅方向途中に、レーザー光9を照射する。これにより、1台のガルバノスキャナー37により、レーザー光9を高速で照射することができる。
また、図18に示すように、幅方向途中における複数の接合部16に対応する開口部41を備えるフォトマスク40を用いて、レーザー光9を一度でかつ無走査で照射することもできる。