JP4954103B2 - 包装用フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、熱をかけずに収縮包装できる包装用フィルムに関し、チーズや生鮮食料品のように、加熱できない食品の収縮密着包装に好適な包装用フィルムに関する。
食品の包装では、ガス、特に酸素バリアー性が求められる。また異物混入防止の観点から、密封密着包装が好ましく行なわれている。
密着包装という点においては、熱収縮フィルムによる熱収縮包装が一般的である。熱収縮包装は、一般に延伸固定により熱収縮性を付与したフィルムを用いて、予め被包装物よりも大きめの包装体を作成し、この包装体に被包装物を収納した状態で加熱し、包装体を収縮させることにより行なわれる。このような熱収縮包装は、不定形、異形の被包装物であっても密着包装することができることから、多用されている。
しかしながら、チーズや肉類等の生鮮食料品の包装には、被包装物を収納した状態で高温に加熱することはできないため、熱収縮包装を適用することは一般に困難である。このため、常温で収縮性を有する包装用フィルムが一般に用いられている。
例えば、PVDCフィルムや塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体フィルムは、収縮温度が低く、常温でも収縮性を示すことができる。これらの塩素系フィルムは、ガスバリヤー性、防湿性も有しているので、常温での密着包装用フィルムとして汎用されている。
しかしながら、近年、含塩素材料は、焼却時にダイオキシン発生の原因になる等の理由から、非塩素系のポリマーフィルムへの代替えが検討されている。特に、食品包装用フィルムでは、塩素系モノマーの残存の問題から、非塩素系材料のフィルムが好まれる傾向にある。
ガスバリヤー性という点においては、PVA、EVOH等のビニルアルコール系フィルムが優れていることが知られており、食品への包装材として有用である。
例えば、特開2001−88863には、ガスバリア性としてEVOH100質量部あたり熱可塑性ポリエステル1〜100質量部を配合してなる樹脂組成物層を用いた積層包装材が開示されている。ここに開示されている包装材は、ビニルアルコール系フィルムの吸湿による強度低下を防止するためにビニルアルコール系フィルムの両面に、接着剤層を介して、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを積層し、表層を上記ポリエチレンフィルムとした積層フィルムである。低温での屈曲疲労に優れ、主用途として、バッグインボックスなどのフレキシブル容器が挙げられているが、収縮包装用フィルムとしての適正は考慮されていない。
一般に、ガスバリアー性を確保するためにポリビニルアルコール系フィルムを用いた包装材では、防湿の観点から、ポリビニルアルコール系フィルムをポリエチレン、プリプロピレン等のポリオレフィンフィルムで挟持した積層フィルムが用いられる。しかし、このような積層フィルムは、表層を構成するポリオレフィンフィルムの収縮適正温度が高いため、熱収縮包装には利用できるが、熱を加えずに収縮させる常温での密着密封包装には不適である。
特開2001−88863号公報
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、常温で被包装物を密着包装することができる包装用フィルムを提供することにある。
本発明者らは、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)に特定のポリエステルを特定の比率で配合してなる樹脂組成物層が、常温で伸縮性を有することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の包装用フィルムは、10〜50℃で引張り力を付与することにより伸張状態として被包装物を包装した後、該引張り力の解除により該被包装物を密着包装するのに用いられる包装用フィルムであって、エチレン含有率40〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物100質量部あたり、芳香族ジカルボン酸10〜40モル%、飽和ジカルボン酸20〜50モル%、及び炭素数1〜10のジオール20〜60モル%で構成されるポリエステル3〜8質量部を含有する樹脂組成物層を有し、表層が、防湿層で構成されている積層フィルムであることを特徴とする。
上記構成を有する包装用フィルムは、前記樹脂組成物層が23℃において、15%伸張状態から、前記引張り力解除による復元率が83%以上であることが好ましく、また包装用フィルムとして、23℃において、15%伸張状態から、前記引張り力解除による復元率が83%以上であることが好ましい。
本発明の包装用フィルムは、特定の構成を有する樹脂組成物層の伸縮性に基づき、1〜20%程度の伸張状態から、引張り力を解除したときに元の状態に戻ることができる復元率が高く、収縮包装に用いることができる。
本発明の包装用フィルムは、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)と特定のポリエステルを、特定の比率で配合してなる樹脂組成物層を伸縮層として用い、表層に防湿層を積層したものである。
以下、本発明の包装用フィルムの構成について、詳述する。
〔常温伸縮層〕
はじめに、本発明の包装用フィルムに含まれる常温伸縮層の構成について説明する。
本発明の包装用フィルムにおける伸縮層は、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物(EVOH)と熱可塑性ポリエステルとを特定割合で混合してなる樹脂組成物で構成される。
本発明に用いられるEVOHは、エチレン含有率40〜60モル%(好ましくは40〜55モル%、より好ましくは40〜50モル%)のEVOHである。エチレン含有率が低すぎた場合では、高湿時のガスバリア性、溶融成形性、伸縮性が低下し、逆にエチレン含有率が高すぎた場合には、充分なガスバリア性が得られない傾向にあるからである。
該EVOHは、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することによって得られ、該エチレン−酢酸ビニル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造され、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。酢酸ビニル成分のケン化度は、通常、90モル%以上(好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上)であることが好ましい。ケン化度が低すぎると、ガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向にあるからである。
また、EVOHのメルトフローレート(MFR)は、0.5〜50g/10分(210℃、2160g荷重)が好ましく、更には1〜35g/10分(同上)が好ましい。かかるMFRが低すぎると、粘度が高くなり過ぎて溶融押出しが困難となることがあり、逆に高すぎると製膜性が不安定となることがあり好ましくない。
本発明では、本発明の効果を阻害しない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよく、かかる単量体としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。又、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化等、後変性されても差し支えない。
伸縮層用樹脂組成物に用いられるEVOHとしては、エチレン含有率、更には他の構成(共重合モノマー組成など)が異なる2種以上のEVOHを混合して用いてもよい。2種以上のEVOHをブレンドして用いる場合、エチレン含有率が5モル%以上異なり、及び/又はケン化度が1モル%以上異なり、及び/又はMFRの比が2以上であるEVOHのブレンド物を用いることにより、ガスバリア性や耐屈曲疲労性を保持したまま、更に柔軟性、熱成形性(高延伸時の延伸性、真空圧空成形や深絞り成形などの2次加工性)、製膜安定性等を向上させることができる。
伸縮層用樹脂組成物に用いられる熱可塑性ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸10〜40モル%(好ましくは15モル〜30モル%、より好ましくは20〜25モル%)、飽和ジカルボン酸20〜50モル%(好ましくは25〜45モル%、より好ましくは25〜30モル%)、及び炭素数1〜10のジオール20〜60モル%(好ましくは25〜55モル%、より好ましくは30〜50モル%)で構成されるポリエステルである。
芳香族ジカルボン酸としては、炭素数6〜15の芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸などが好ましく用いられ、これらのうち、特にテレフタル酸が好ましく用いられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数1〜10の飽和カルボン酸、例えば、アジピン酸、セバシン酸などが好ましく用いられ、これらのうち、特にアジピン酸が好ましく用いられる。
炭素数1〜10のジオールとしては、脂肪族ジオールが好ましく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられ、これらのうち、1,4−ブタンジオールが好ましく用いられる。
以上のような組成を有するポリエステルのうち、本発明では、示差走査型熱量計(昇温速度10℃/分)により測定されたガラス転移温度(Tg)が、通常−150〜0℃であり、好ましくは−100〜0℃のものが用いられ、また、示差走査型熱量計(昇温速度20℃/分)により測定される結晶融解熱(△Hu)は、通常30J/g以下であり、好ましくは25J/g以下のものが用いられる。
ガラス転移温度(Tg)及び結晶融解熱(△Hu)は、ポリエステルの構成成分組成を適宜選択することにより所望の値とすることができる。具体的には、ガラス転移温度(Tg)は、芳香族酸と脂肪族酸の配合比によりコントロールすることができ、脂肪族酸の比率を上げるとガラス転移温度は低下する。また、結晶融解熱(△Hu)は、フタル酸等の結晶性を崩す原料を増量することにより低下し、固有粘度については、重合触媒の添加量や重合時間によりコントロールすることができる。
本発明で用いられる伸縮層用樹脂組成物においては、熱可塑性ポリエステルとして、ガラス転移温度(Tg)及び/又は結晶融解熱(△Hu)及び/又は固有粘度が異なる2種以上の熱可塑性ポリエステルをブレンドして用いることもできる。
以上のような構成を有する熱可塑性ポリエステルの弾性率は高く、所定範囲の引張り力が作用しても、該引張り力の解除による復元率が高い。
伸縮層用樹脂組成物においては、EVOH100質量部あたり、上記熱可塑性ポリエステル3〜8質量部、好ましくは4〜7質量部、より好ましくは4〜6質量部配合されている。理由は明らかではないが、かかる割合で熱可塑性ポリエステルが配合される場合に限り、好適な海島構造が形成され、調製される樹脂組成物からなるフィルムは高い伸縮性を示し、具体的には塩化ビニリデンに匹敵する常温伸縮性を示すことができる。より具体的には、23℃において、15%伸張状態から、前記引張り力解除による復元率83%以上、好ましくは84%以上とすることが可能となる。
尚、本発明で用いられる伸縮用樹脂組成物には、EVOH、熱可塑性ポリエステルの他、必要に応じて、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の脂肪酸の金属塩、ホウ酸、リン酸等の酸類やそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属塩、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪族アミドなどを添加してもよい。
更に、本発明においては、かかる樹脂組成物に本発明の目的を阻害しない範囲(例えば樹脂組成物全体の10質量%以下)において、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10,000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン等)などの滑剤、無機塩(例えばハイドロタルサイト等)、可塑剤(例えばエチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコールなど)、酸素吸収剤(例えば無機系酸素吸収剤として、還元鉄粉類、更にこれに吸水性物質や電解質等を加えたもの、アルミニウム粉、亜硫酸カリウム、光触媒酸化チタン等;有機化合物系酸素吸収剤として、アスコルビン酸、更にその脂肪酸エステルや金属塩等、ハイドロキノン、没食子酸、水酸基含有フェノールアルデヒド樹脂等の多価フェノール類、ビス−サリチルアルデヒド−イミンコバルト、テトラエチレンペンタミンコバルト、コバルト−シッフ塩基錯体、ポルフィリン類、大環状ポリアミン錯体、ポリエチレンイミン−コバルト錯体等の含窒素化合物と遷移金属との配位結合体、テルペン化合物、アミノ酸類とヒドロキシル基含有還元性物質の反応物、トリフェニルメチル化合物等;高分子系酸素吸収剤として、窒素含有樹脂と遷移金属との配位結合体(例:MXDナイロンとコバルトの組合せ)、三級水素含有樹脂と遷移金属とのブレンド物(例:ポリプロピレンとコバルトの組合せ)、炭素−炭素不飽和結合含有樹脂と遷移金属とのブレンド物(例:ポリブタジエンとコバルトの組合せ)、光酸化崩壊性樹脂(例:ポリケトン)、アントラキノン重合体(例:ポリビニルアントラキノン)等や、更にこれらの配合物に光開始剤(ベンゾフェノン等)や過酸化物補足剤(市販の酸化防止剤等)や消臭剤(活性炭等)を添加したものなど)、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤(例えばタルク微粒子等)、スリップ剤(例えば無定形シリカ等)、充填材(例えば無機フィラー等)、他樹脂(例えばポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル等)などが配合されていても良い。
以上のような成分を所定量づつ配合した後、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、プラストミルなどの公知の溶融混練装置を用いて溶融混練する。通常は150〜300℃(更には180〜280℃)で、1分〜20分間程度溶融混練することが好ましい。
伸縮層の厚みは、特に限定しないが、常温伸縮性の観点から、通常1〜50μmが好ましく、より好ましくは1〜25μm、さらに好ましくは5〜10μmである。薄すぎた場合には、表層の防湿層の収縮性の影響を受けやすくなって、本発明で要求するような十分な常温収縮性を発揮できない傾向にある。一方、熱すぎた場合では、剛性が高くなり、やはり常温収縮性が不十分となる傾向にある。
〔防湿層〕
本発明の包装用フィルムは、上記伸縮層の吸湿による強度低下、伸縮性の低下を防止するために、表層が防湿層で構成されている。
防湿層は、耐湿性に優れ、上記伸縮層の常温伸縮性を損なわないような追随性を有する非塩素系樹脂で構成されることが好ましい。具体的には、50〜250kg/cm程度の引張り力で破断しない破断強度を有し、当該引張り力による伸張状態から回復できる粘弾性を有する樹脂組成物で構成されることが好ましい。
このような特性を有し、防湿効果を付与できる防湿層用樹脂組成物としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、共重合ポリアミド、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等の組成物が挙げられ、これらのうち、ポリオレフィン系樹脂組成物が好ましく用いられる。
かかるポリオレフィン系樹脂としては、具体的に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものやこれらのブレンド物などの広義のポリオレフィン系樹脂を挙げることができ、これらのうち、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等のポリオレフィン樹脂が耐屈曲疲労性、耐振動疲労性等に優れる点から好ましく用いられる。
上記ポリオレフィン系樹脂の密度は0.86〜0.95g/cmであることが好ましい。尚、ここで言う密度とは、20℃においてJIS K6760によって測定される値である。
防湿層に用いられる樹脂組成物には、上記樹脂を主成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、フィラー、ブロッキング防止剤、酸化防止座、着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤など、公知の添加剤が適宜配合されていてもよい。
表層に用いられる2つの防湿層を構成する樹脂組成物は、同種類の樹脂組成物で構成してもよいし、異なる種類の樹脂組成物で構成してもよいが、伸縮性の観点からは、同種類であることが好ましい。
防湿層の厚みは、防湿性を付与できるように、ピンホール等がない範囲の厚みで且つ伸縮層の伸縮性を損なわない厚みであればよい。具体的には、通常5〜200μmであり、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは20〜50μmである。薄すぎた場合、防湿性が不十分となるおそれがあり、機械的強度が不足し破れやすくなる。厚すぎた場合、剛性が高くなり、収縮層の伸縮に追随しにくくなる。
〔接着剤層〕
本発明の包装用フィルムにおいて、上記常温伸縮層の両面を防湿層で直接挟持することによって構成してもよいが、接着剤層を介在させてもよい。接着剤層の介在により、防湿層の伸縮性が伸縮層の伸縮度に比べて小さくても、介在している接着剤層により伸縮の際に生じる両層のひずみを緩和し、防湿層の伸縮層への追随に寄与できるからである。
接着剤層に用いられる接着性樹脂としては、特に限定されず、種々のものを使用することができるが、一般的には、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体(上述の広義のポリオレフィン系樹脂)に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができ、不飽和カルボン酸又はその無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、中でも、無水マレイン酸が好適に用いられる。
具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等の無水マレイン酸変性EVAが好ましく用いられる。
なお、接着剤層に用いられる接着性樹脂としては、伸縮層の両面に用いる接着性樹脂が同一種類の接着性樹脂であっても異なる種類の接着性樹脂であってもよい。
接着剤層の厚みは、通常1〜50μmであり、好ましくは1〜25μm、より好ましくは5〜10μmである。薄すぎた場合、接着剤層としての役目が不十分となる場合があり、厚すぎた場合、柔軟性が低下して好ましくない。
本発明の包装用フィルムは、伸縮層を防湿層で挟持した構成(防湿層/伸縮層/防湿層)あるいは接着剤層を介在させた場合の構成(防湿層/接着剤層/伸縮層/接着剤層/防湿層)を構成単位とする。伸縮層が2層以上であったり、防湿層を2層以上で構成してもよい。また、防湿層/伸縮層(防湿層/接着剤層/伸縮層)を一単位として2単位以上積層したものであってもよい。要するに、表層が防湿層となっていればよい。
以上のような積層構造を有する本発明の包装用フィルムは、各層を形成する樹脂組成物を共押出し等によって、直接、積層フィルムを作製してもよいし、まずそれぞれの樹脂組成物からフィルムを作製してラミネートしてもよいし、いずれか一方のフィルムを作製し、そのフィルム上に他方の樹脂組成物を溶融押出することによりラミネートしてもよい。さらに、防湿層、接着剤層を形成する樹脂組成物層をコート法により形成できる場合には、伸縮層を構成するフィルム上に防湿層用樹脂組成物を塗工することによって形成してもよい。ラミネートは、ドライラミネート、ウエットラミネート、ホットメルトラミネートなど、公知の方法を適用できる。
以上のように構成される本発明の包装用フィルムは、10〜50℃で13%程度の伸縮性を有する。つまり、115%伸張させても、伸縮のための引張り力を解除することにより、元のサイズの102%程度まで戻ることができる(復元率84%)。
伸張方向は特に限定せず、1方向(フィルムの長手方向又は幅方向)、2方向、あるいは均等に全方方向に放射的に伸張してもよい。
フィルムの伸張には、チャック、プラグなどで直接フィルムを引張ることによって行なっても良いし、真空力、圧空力、ブローなどをの空気力を利用した、非接触で行なってもよい。
ここで、伸張(%)は、元のサイズ(a)に対して伸張後のサイズ(a)の伸び率((a/a)×100)をいい、復元率(%)は、引張り力を解除したときのサイズ(a)の元のサイズに対する割合で下記式により求められる。
復元率(%)=[(a−a)/(a−a)〕×100
以上のように、本発明の包装用フィルムは、10〜50℃で伸縮性を有するので、当該温度(室温程度)で伸張させた状態で被包装物を包装した後、伸張のための引張り力を解除すると、包装用フィルムの復元力で被包装物を密着包装することができる。このような仕様によれば、生鮮食料品やチーズ等の熱収縮包装が適さない被包装物に対しても、加熱することなく収縮包装、密着、密封包装することができる。
そして、本発明の包装用フィルムは、伸縮層のEVOHに基づいて、優れたガスバリアー性を有しおり、このガスバリアー性は、両面に積層された防湿層により保持されているので、従来、熱収縮できない食品などについて用いられていた塩化ビニリデンなどの塩素系包装フィルムの代替え包装材として有用である。
本発明の包装フィルムを用いた常温密着方法は特に限定しないが、引張りにより伸張させた状態で被包装物を包装した後、伸張のための引張り力を解除する方法が好ましい。
伸張時、伸張力解除時の温度は、被包装物の種類に応じて適宜設定すればよい。本発明の包装用フィルムは、10〜50℃といった実質的に非加熱の状態でも伸張、収縮させることが可能であるから、通常、室温で包装作業を行なえばよい。
包装にあたっての伸張の程度は、1〜18%程度とすることが好ましく、より好ましくは10%程度である。20%を越えると、伸縮層の弾性限界を超えてしまい、元のサイズに回復することが困難になる傾向がある。
伸張状態には、上述のように、チャック、プラグなどで直接フィルムを引張ることによって行なっても良いし、真空力、圧空力、ブローなどをの空気力を利用した、非接触で行なってもよい。
実施例1(包装用フィルムNo.1の作製)
(1)常温伸縮層用樹脂組成物
EVOH(エチレン含有率44モル%、ケン化度99.5モル%、MFR3.5g/10分(210℃、2160g荷重))100部に、熱可塑性ポリエステル(テレフタル酸22.5モル%、アジピン酸27.5モル%、1,4−ブタンジオール50モル%組成であり、ガラス転移温度Tg=−20℃、結晶融解熱(△Hu=16J/g))5部を配合し、径30mmの二軸延伸押出機(L/D=43)により、温度220℃で溶融混練を行ない、ストランド状に押出して、カッターで切断し、伸縮層用樹脂組成物のペレットを得た。
(2)防湿層用樹脂組成物
直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製「ノバテック C6−SF720」、MFR0.8g/10分(190℃)、密度0.928g/cm)を用いた。
(3)接着剤層用樹脂組成物
無水マレイン酸変性EVA(三菱化学社製「モディック−AP A543」、MFR1.5g/10分(190℃)、密度0.92g/cm)を用いた。
(4)フィルムの作製
上記常温伸縮層用樹脂組成物、防湿層用樹脂組成物、接着剤層用樹脂組成物を、防湿層/接着剤層/伸縮層/接着剤層/防湿層の順になるように、共押出多層インフレーション製膜装置を用いて共押出しをして、厚み35/5/5/5/35μmを有する5層共押出多層インフレーションフィルムを得た。
比較例1(包装用フィルムNo.2の作製)
常温伸縮用樹脂組成物の調製において、ポリエステル配合量を10部に変更した以外は同様にして、No.1と同様の層構成を有する5層共押出多層フィルムを作製した。
比較例2(包装用フィルムNo.3の作製)
EVOH樹脂組成物ペレットの調製において、熱可塑性ポリエステルを添加しなかった以外は同様にして、No.1と同様の層構成を有する5層共押出多層フィルムを作製した。
参考フィルム(包装用フィルムNo.4の作製)
常温伸縮層を塩化ビニリデンとした以外は、包装用フィルムNo.1と同様にして、No.1と同様の層構成を有する5層共押出多層フィルムを作製した。
〔評価方法〕
作製した包装用フィルムを、JIS K7113タイプ2に基づいて試験片を切り取り(TD方向)、試験片の長手方向の中央にあたる部分に、長手方向と直交する中心線を引き、当該中心線から左右に20mmづつ振り分けた標線を引いた(a=40mm、図1参照)。
オートグラフを用いて、引張り速度10mm/分(23℃、50%RH雰囲気下)にて、標線間距離が46mm(a=46mm)となるように、6mm分引張り、その後、チャックにより試験片をとりはずし、自動収縮後の標線間距離(a)を測定した。下記式により、復元率を求めた。
復元率(%)=(46−a)/6〕×100
Figure 0004954103
No.1〜3の比較から、伸縮層にポリエステルが含有されていない場合だけでなく、含有量が多くなっても、復元率は低かった。従って、伸縮性のある包装用フィルムとしては、No.1のように、伸縮層のポリエステル含有率を5質量%程度とする必要があることがわかる。
そして、ポリエステル含有量を特定範囲としたNo.1では、塩化ビニリデンフィルムに匹敵する復元率を有しており、塩化ビニリデンの代替えとしての包装用フィルムとして用いることができる。
本発明の包装用フィルムは、ガスバリヤー性を有し、しかも常温で伸縮性を有しているので、熱収縮包装を利用が困難な被包装物で、さらにガスバリヤー性が求められる密着包装を行なうための包装用フィルム、特に生鮮食料品やチーズなどの食品の包装に利用できる。
実施例で用いた測定方法を説明するための図である。

Claims (5)

  1. 10〜50℃で引張り力を付与することにより伸張状態として被包装物を包装した後、該引張り力の解除により該被包装物を密着包装するのに用いられる包装用フィルムであって、
    エチレン含有率40〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物100質量部あたり、芳香族ジカルボン酸10〜40モル%、飽和ジカルボン酸20〜50モル%、及び炭素数1〜10のジオール20〜60モル%で構成されるポリエステル3〜8質量部を含有する樹脂組成物層を有し、
    表層が、防湿層で構成されている積層フィルムであることを特徴とする包装用フィルム。
  2. 前記防湿層は、ポリオレフィン樹脂組成物で構成されている請求項1に記載の包装用フィルム。
  3. 前記樹脂組成物層と防湿層とは、接着剤層を介して積層されている請求項1又は2に記載の包装用フィルム。
  4. 前記樹脂組成物層は、23℃において、15%伸張状態から、前記引張り力解除による復元率が83%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の包装用フィルム。
  5. 23℃において、15%伸張状態から、前記引張り力解除による復元率が83%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の包装用フィルム。
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