JP4951225B2 - ノルボルネン系化合物重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
このノルボルネン系化合物のビニル重合において、近年、遷移金属錯体を触媒として用いる製造方法が特に注目されている。例えば、非特許文献1および2には、アリルシクロペンタジエニルパラジウムとトリチル・テトラキス(ペンタフルオルフェニル)ボレートから成る触媒系が、ノルボルネンの単独重合およびノルボルネンとノルボルネンカルボン酸メチルの共重合に有効であることが記されている。
そこで、本発明は、着色の程度が小さく、透明度の高いフィルム用素材としうるノルボルネン系化合物重合体の製造方法の提供を目的とする。さらには、そのような優れた重合体を収率よく得るための触媒およびそれを用いたノルボルネン系化合物重合体の製造方法の提供を目的とする。
(1)下記一般式(I)で表されるノルボルネン系化合物の少なくとも一種を重合させるにあたり、下記化合物(a)および化合物(b)を混合させて生成した有機金属錯体触媒の存在下で重合反応させることを特徴とするノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
(a)パラジウム原子との配位結合に関与する炭素原子の数が少なくとも3つである有機配位子を2つ有する中性有機パラジウム錯体
(b)三置換アンモニウム・テトラキス(アリール)ボレート
(2)前記一般式(I)で表されるノルボルネン系化合物の少なくとも一種と、下記一般式(II)で表されるノルボルネン系化合物の少なくとも一種とを共重合させるにあたり、前記化合物(a)および化合物(b)を混合させて生成した有機金属錯体触媒の存在下で重合反応させることを特徴とする(1)記載のノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
(3)三置換アンモニウムが、ジアルキルアリールアンモニウムであることを特徴とする(1)または(2)記載のノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
(4)前記中性有機パラジウム錯体の2つの有機配位子のうち、一方は3つの炭素原子が配位結合に関与する有機配位子であり、他方は5つの炭素原子が配位結合に関与する有機配位子であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
(5)前記中性有機パラジウム錯体が下記一般式(III)で表されることを特徴とする、(4)記載のノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
(6)前記中性有機パラジウム錯体が下記一般式(IV)で表されることを特徴とする、(4)記載のノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
(7)前記中性有機パラジウム錯体が下記一般式(V)で表されることを特徴とする、(4)記載のノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
(8)前記中性有機パラジウム錯体が下記一般式(VI)で表されることを特徴とする、(4)記載のノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
本発明のノルボルネン系化合物重合体の製造方法においては、以下の一般式(I)で表されるノルボルネン系化合物が原料として用いられる。
極性基として好ましいものは、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、シリルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、およびアリールオキシカルボニルアミノ基であり、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、およびアルコキシカルボニルアミノ基がより好ましい。
本発明のノルボルネン系化合物重合体の製造方法においては、下記の化合物(a)および化合物(b)を混合することによって有機金属錯体触媒を生成させて重合反応を行う。以下、化合物(a)、化合物(b)、および有機金属錯体触媒について説明する。
本発明のノルボルネン系化合物重合体の製造方法において、主触媒として用いられる化合物(a)は、中性有機パラジウム錯体であり、(i)パラジウムと、(ii)パラジウムとの結合に関与する炭素原子の数が少なくとも3つである有機配位子を2つとを有し、中性である。このとき2つの有機配位子はともに1価のカルボアニオンであることが好ましく、パラジウムは2価のパラジウムであることが好ましい。2つの有機配位子がともに1価のカルボアニオンであり、パラジウムが2価のパラジウムであると、有機パラジウム錯体全体の電荷は0となり中性となる。2つの有機配位子はパラジウムと配位結合しており、2つの有機配位子ともに少なくとも3つの炭素原子がその配位結合に関与している。
アルキル基(炭素原子数1〜20が好ましく、1〜10のアルキル基がより好ましい。例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(炭素原子数1〜20が好ましく、1〜10のアルケニル基がより好ましい。例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(炭素原子数1〜20が好ましく、1〜10のアルキニル基がより好ましい。例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(炭素原子数6〜20が好ましく、6〜15のアリール基がより好ましい。例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ピレニルなどが挙げられる。)、アミノ基(炭素原子数0〜20が好ましく、0〜10のアミノ基がより好ましい。例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(炭素原子数1〜20が好ましく、1〜10のアルコキシ基がより好ましい。例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(炭素原子数6〜20が好ましく、6〜15のアリールオキシ基がより好ましい。例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(炭素原子数1〜20が好ましく、1〜10のヘテロ環オキシ基がより好ましい。例えばピリジルオキシ、ピリミジニルオキシ、ピリダジニルオキシ、ベンズイミダゾリルオキシなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(炭素原子数3〜20が好ましく、3〜10のシリルオキシ基がより好ましい。例えばトリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(炭素原子数1〜20が好ましく、1〜10のアシル基がより好ましい。例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(炭素原子数2〜20が好ましく、2〜10のアルコキシカルボニル基がより好ましい。例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(炭素原子数7〜20が好ましく、7〜15のアリールオキシカルボニル基がより好ましい。例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(炭素原子数1〜20が好ましく、1〜10のアシルオキシ基がより好ましい。例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(炭素原子数1〜20が好ましく、1〜10のアシルアミノ基がより好ましい。例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(炭素原子数2〜20が好ましく、2〜10のアルコキシカルボニルアミノ基がより好ましい。例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(炭素原子数7〜20が好ましく、7〜15のアリールオキシカルボニルアミノ基がより好ましい。例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基(炭素原子数1〜20が好ましく、1〜10のアルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基がより好ましい。例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(炭素原子数0〜20が好ましく、0〜10のスルファモイル基がより好ましい。例えばスルファモイル、N−メチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(炭素原子数1〜20が好ましく、1〜10のカルバモイル基がより好ましい。例えばカルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(炭素原子数1〜20が好ましく、1〜10のアルキルチオ基がより好ましい。例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(炭素原子数6〜20が好ましく、6〜15のアリールチオ基がより好ましい。例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(炭素原子数1〜20が好ましく、1〜10のヘテロ環チオ基がより好ましい。例えばピリジニルチオ、ピリミジニルチオ、ピリダジニルチオ、ベンズイミダゾリルチオ、チアジアゾリルチオなどが挙げられる。)、アルキルもしくはアリールスルホニル基(炭素原子数1〜20が好ましく、1〜10のアルキルもしくはアリールスルホニル基がより好ましい。例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、アルキルもしくはアリールスルフィニル基(炭素原子数1〜20が好ましく、1〜10のアルキルもしくはアリールスルホニル基がより好ましい。例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(炭素原子数1〜20が好ましく、1〜10のヘテロ環基がより好ましい。例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニルなどが挙げられる。)、シリル基(炭素原子数3〜20が好ましく、3〜10のシリル基がより好ましい。例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの有機基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
本発明のノルボルネン系化合物重合体の製造方法において、助触媒として用いられる三置換アンモニウム・テトラキス(アリール)ボレートは、カチオンとしての三置換アンモニウムとアニオンとしてのテトラキス(アリール)ボレートから成る塩である。
このような有機金属触媒の生成を、ノルボルネン系化合物を重合させる反応系内で行えば、上述した触媒生成機構で効率よく有機金属錯体触媒を重合反応系内に生成させることができる。したがって、その場で有機金属錯体触媒上にノルボルネン系化合物の配位、挿入を繰り返させ、重合反応をすみやかに進行させることができる。
三置換アンモニウムの置換基として、アルキル基については炭素原子数1〜18のものが好ましく、1〜6のものがより好ましく、1〜3のものがさらに好ましく、アリール基については炭素原子数6〜18のものが好ましく、6〜12のものがより好ましく、それらの組み合わせとしては、少なくとも1つがアリール基であることが好ましく、ジアルキルアリールアンモニウムであることがより好ましい。
テトラキス(アリール)ボレートは、ホウ素が非共有電子対を有さないことに加え、4つのかさ高いアリール基に囲まれているため、カチオン性パラジウム錯体に配位しない。この結果、カチオン性パラジウム錯体は触媒活性種として機能する。
この機能をさらに向上させるため、カチオン性パラジウム錯体のカチオン電荷密度を高くすることがよい。そのためには、テトラキス(アリール)ボレートのアニオン電荷密度を向上させればよい。具体的には、アリール基に電子吸引性の置換基を導入することがあげられる。例えばフッ素などを導入することが好ましい。
本発明のノルボルネン系化合物重合体の製造方法では、前記の化合物(a)および化合物(b)を混合させて有機金属錯体触媒を生成させ、ノルボルネン系化合物を重合させる。化合物(a)と化合物(b)は反応して、カチオン性パラジウム錯体である触媒活性種を与えるが、このカチオン錯体の電荷は一価もしくは二価となる。そのため化合物(b)の量は、化合物(a)に対して、0.1〜10当量が好ましく、0.5〜5当量がより好ましく、1〜5当量が特に好ましい。
一方、化合物(a)、化合物(b)を溶媒中に溶解してから混合する場合、溶媒がパラジウムに配位し、触媒の活性を落とすことがあるため、溶媒は無極性もしくは低極性であることが好ましく、例えばトルエンなどに溶解して用いることができる。ただし化合物(b)は塩であるため、無極性もしくは低極性に溶解しないことがあるが、この場合、塩化メチレンなどのハロゲン系の低極性溶媒に溶かして用いることができる。
重合に用いるノルボルネン系化合物が2種類以上で、これらの重合速度が大きく異なる場合、分子量分布{重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)}が4以上となり、フィルム用として適当でなくなる場合がある。このような場合、重合速度の早いノルボルネン系化合物を重合反応進行中のときに、添加することで分子量分布を小さくすることができる。
本発明のノルボルネン系化合物重合体の製造方法においては、ノルボルネン系化合物の二重結合のビニル重合により目的の重合体を得る。一般式(I)で表されるノルボルネン系化合物は重合性が高いため、分子量が高くなりすぎて、溶媒に不溶となる成分が生じることがある。このような場合、αオレフィンを共存させると、分子量を下げることができる。
本発明の製造方法により得られるノルボルネン系化合物重合体の分子量は10000〜10000000であることが好ましく、10000〜1000000であることがより好ましく、30000〜1000000であることが特に好ましい(本発明において、分子量とは、特に断らない限り、数平均分子量をいう。)。
本発明のノルボルネン系化合物重合体の製造方法において、ノルボルネン系化合物の他に、オレフィンや一酸化炭素と共重合させることもできる。オレフィンの場合β水素脱離しないものを用い、一酸化炭素の場合はノルボルネン系化合物との交互共重合を形成して共重合させることができる。
本発明のノルボルネン系化合物重合体の製造方法では、空気もしくは水の存在によって、触媒が不活性化され、重合性が低下もしくは重合が進行しないことがある。したがって、高純度の不活性ガス雰囲気下で取り扱うことが好ましい。
ノルボルネン系化合物が液体であり、化合物(a)および化合物(b)を溶解させることが可能であるならば、前述のとおりこれらを無溶媒で混合させ、ニートで反応させることもできる。しかし、反応の進行とともに、粘度が上昇し、攪拌困難となることがあるため、溶媒を用いてノルボルネン系化合物を溶解させておくことが好ましい。ノルボルネン系化合物を溶解する溶媒は、触媒として生成させた有機金属触媒の活性を落とさないものが好ましく、触媒中のパラジウム原子に配位しにくい低極性溶媒がより好ましい。さらに溶媒は、得られた重合体を溶解させることのできるものが好ましい。このような溶媒の例として、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、p−シメン、メシチレンのような芳香族炭化水素類があげられ、好ましくはトルエン、キシレンであり、より好ましくはトルエンである。
一方、溶媒の極性が低すぎると、ノルボルネン系化合物もしくはノルボルネン系化合物重合体が溶解しなくなる場合がある。そのため、溶媒は用いるノルボルネン系化合物によって、適当な極性を有するものであることが好ましく、また上記の低極性溶媒に適量の極性溶媒を添加した混合溶媒としてもよい。このような極性溶媒として、塩化メチレン、ジクロロエタン等が挙げられる。
ノルボルネン系化合物を重合するときに用いる溶媒の量は(化合物(a)、(b)を溶解させてから添加混合する場合はこの溶媒を含めた量は)、ノルボルネン系化合物に対し0〜50質量部であることが好ましく、0.3〜20質量部であることがより好ましく、0.5〜5質量部であることが特に好ましい。
本発明のノルボルネン系化合物重合体の製造方法において、重合反応は、室温以下の反応でも進行するが、加熱をすることで反応を促進できる。しかし、加熱しすぎると触媒活性種が分解してしまう。したがって、反応の温度は、室温〜150℃が好ましく、50〜130℃がより好ましく、70〜120℃が特に好ましい。
本発明のノルボルネン系化合物重合体の製造方法において、重合反応の反応時間は、反応温度と溶媒の量、極性基含有ノルボルネンの種類などに依存するが、数十分から十数時間で終了させることができる。反応の終了は、反応液がパラジウムブラックが生じるところで判定できるが、反応時間が長くなることがあるので、適宜終了させることが好ましい。
反応液の加熱を停止したあと、反応液をそのままもしくは適当な溶媒で希釈した後、貧溶媒(例えば、メタノールなどのアルコール系溶媒)と混合させると、白色〜黄白色の固体が得られる。これをろ過し、真空乾燥することで極性基含有ノルボルネン重合体が得られる。なお、適当な還元剤を用いると残存の2価パラジウムをパラジウムブラックとすることができ、これをろ過して取り除けば、さらに黄色味を除去した白色の重合体を得ることができる。
(合成例)
(化合物M−I−11の合成)
ジシクロペンタジエン(和光純薬社製)158.2g、1−オクテン(和光純薬社製)313.3gとIRGANOX1010(チバスペシャルティケミカルズ社製)2.5gを1Lオートクレーブに仕込み、空隙を窒素置換した。密閉系で内温200℃で4時間攪拌した(回転速度=300rpm)。反応混合物をろ過し、揮発成分をエバポレーションした。残存物を精密蒸留(理論段数5段、還流の開閉時間の比=5/1、圧力=7mmHg、トップ温度=89〜90℃)に付して、無色透明な液体111.0gを得た。得られた無色透明な液体をガスクロマトグラフィーにかけて、そのピーク純度を測定したところ、純度99%以上、endo/exo比率79/21のノルボルネン系化合物であった。
ジシクロペンタジエン(和光純薬社製)264.4g、メチルアクリレート(和光純薬社製)516.5gとIRGANOX1010(チバスペシャルティケミカルズ社製)5.0gを2Lオートクレーブに仕込み、空隙を窒素置換した。密閉系で内温200℃で4時間攪拌した(回転速度=300rpm)。揮発成分をエバポレーションした。残存物を精密蒸留(理論段数40段、還流の開閉時間の比=30/1〜1/1、圧力=12mmHg、トップ温度=80〜82℃)に付して、無色透明な液体482.2gを得た。得られた無色透明な液体をガスクロマトグラフィーにかけて、そのピーク純度を測定したところ、純度99%以上、endo/exo比率49/51のノルボルネン系化合物であった。
上記2−メチルアリルパラジウムクロライドダイマー1.08gより、パラジウム錯体1の合成処方と同様の操作で、パラジウム錯体2の赤色結晶を895mg得た。1HNMRのデータは、文献値(ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・ダルトン・トランザクション(Journal of Chemical Society Dalton Transaction)、1973年2390ページ)と一致した。
高純度アルゴンで置換したガラス製フラスコ内で、メタノール20mL中に上記で得られたノルボルナジエンジクロロパラジウム1.40gを添加し、ドライアイス浴で内部温度−40℃とした。これに28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液(和光純薬(株)社製)1.5mLを滴下した。1時間反応させ、室温に戻した。生じた黄色の固体を吸引ろ過、メタノール洗浄し、メトキシノルボルネンパラジウムクロライドダイマー1.22gを得た。
上記メトキシノルボルネンパラジウムクロライドダイマー1.20gより、パラジウム錯体1の合成処方と同様の操作で、パラジウム錯体4の赤色結晶を1020mg得た。
上記ジシクロペンタジエンジクロロパラジウム4.50gより、パラジウム錯体4の合成処方と同様の操作で、パラジウム錯体5の赤色結晶を3.10g得た。1HNMRのデータは、文献値(ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティー(Journal of the American Chemical Society)、1966年88巻5135ページ)と一致した。
上記1、5−シクロオクタジエンジエンジクロロパラジウム3.50gより、パラジウム錯体4の合成処方と同様の操作で、パラジウム錯体6の赤色結晶を1.23g得た。1HNMRのデータは、文献値(ジャーナル・オブ・ザ・ケミカル・ソサイアティー(Journal of the Chemical Society)、1964年5002ページ)と一致した。
実施例、比較例で得られた試料における、重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定した。
実施例、比較例で得られた重合体を目視で、黄色味の有無を判定した。
高純度アルゴンで置換したガラス容器に、ノルボルネン系化合物としてM−I−1(アルドリッチ社製)24.6gとトルエン50mLを仕込み、攪拌はねで攪拌した。これに、化合物(a)として有機パラジウム錯体1(合成方法は上記の合成例を参照。)の13.6mgをトルエン0.5mLに溶かした溶液、化合物(b)としてN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート:(CH3)2(H)NC6H5・B(C6F5)4(ストレム社製)54mgを塩化メチレン1mLに溶かした溶液を加えた。この混合溶液を加熱したところ、50℃付近で白色に固化し、攪拌できなくなった。このようにしてノルボルネン系化合物重合体の白色固体を得た。ただし得られた白色固体は溶媒に不溶であったため分子量の分析等は行わなかった。黄色味測定の結果については表1に示した。
高純度アルゴンで置換したガラス容器に、ノルボルネン系化合物としてM−I−11の15.7g、分子量調整剤として1−オクテン(和光純薬社製)4.2gとトルエン40mLを仕込み、攪拌はねで攪拌した。これに、化合物(a)として有機パラジウム錯体1(合成方法は上記の合成例を参照。)の0.6mgをトルエン0.5mLに溶かした溶液、化合物(b)としてN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート:(CH3)2(H)NC6H5・B(C6F5)4 (ストレム社製)8mgを塩化メチレン0.5mLに溶かした溶液を加えた。この混合溶液を内部温度90℃になるように加熱し、90℃を維持したまま3時間反応させた。反応途中、溶液の粘度が上昇したため、トルエンを計40mL加えた。反応終了後、トルエン200mLで希釈し、反応液をメタノール300mL中に添加した。白色固体を吸引ろ過し、100℃で真空乾燥を6時間行った。このようにしてノルボルネン系化合物重合体の白色固体14.7gを得た。その黄色味測定、分子量測定、収率測定の結果を表1に示した。
化合物(a)の中性有機パラジウム錯体、化合物(b)、原料となるノルボルネン系化合物を、下記の表1のように変えた以外、実施例2と同様にしてノルボルネン系化合物重合体を得た。その黄色味測定、分子量測定、収率測定の結果を表1に示した。
原料として用いるノルボルネン系化合物を、M−I−1(アルドリッチ社製)とM-II-1(合成方法は上記の合成例を参照。)とし、そのモル比を90/10とした以外は、実施例2と同様にしてノルボルネン系化合物重合体を得た。その黄色味測定、分子量測定、収率測定の結果を表1に示した。
化合物(a)、化合物(b)、原料となるノルボルネン系化合物を、下記の表1のように変えた以外、実施例1と同様にしてノルボルネン系化合物の重合を行なった。なお比較例3に関しては共重合比率を実施例8と同様にした。得られたものの黄色味測定、分子量測定、収率測定の結果を表1に示した。
ただし比較例1で得られたものはフラスコ内で固化し、内容物を一部取り出せなかったため収率の算出を行わなかった。またその重合体は、溶媒に不溶であったため、分子量分析を行わなかった。
Claims (8)
- 三置換アンモニウムが、ジアルキルアリールアンモニウムであることを特徴とする請求項1または2記載のノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
- 前記中性有機パラジウム錯体の2つの有機配位子のうち、一方は3つの炭素原子が配位結合に関与する有機配位子であり、他方は5つの炭素原子が配位結合に関与する有機配位子であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
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