JP2010024399A - 有機パラジウム錯体含有組成物、ノルボルネン系化合物重合用触媒及びこれを用いたノルボルネン系化合物重合体の製造方法 - Google Patents
有機パラジウム錯体含有組成物、ノルボルネン系化合物重合用触媒及びこれを用いたノルボルネン系化合物重合体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
本発明は、有機パラジウム錯体含有組成物、ノルボルネン系化合物重合用触媒、それらを用いたノルボルネン系化合物重合体の製造方法に関する。
ノルボルネン系化合物の付加重合体のフィルムは、高い耐熱性、低複屈折、湿度に対する安定性を有することから、光学フィルムとして有望である。そのようなノルボルネン系化合物の付加重合において、カチオン性アルキルパラジウム錯体が触媒活性種として有効であることが従来知られている。このカチオン性アルキルパラジウム錯体は、中性アルキルパラジウム錯体とアニオン性配位子引き抜き剤を混合させて、得る手法が一般的である。例えば、アリルパラジウムクロライドダイマーとテトラフルオロボレート銀の触媒系が知られている(非特許文献1)。
一方で、上記の錯体に中性配位子を配位させた錯体を用い、重合活性を向上させることが近年行われている。特に配位子にNヘテロ環カルベンが好適に用いられる。例えば、(アリル)(Nヘテロ環カルベン)(クロライド)パラジウムとテトラフルオロボレート銀もしくはヘキサフルオロアンチモンの触媒系(特許文献1、特許文献2、特許文献3、非特許文献2)や(アリル)(Nヘテロ環カルベン)(クロライド)パラジウムとナトリウムテトラフルオロボレートの触媒系が知られている(特許文献4)。
前記の従来技術では、触媒活性種を発生させた後に、副生する銀クロライドやナトリウムクロライドなどの無機物をろ過で除去しなければならないため、煩雑な作業が必要となる。触媒活性種を反応系中で発生させ、これをそのまま重合させると、最終的に重合体の中に無機物が残存することとなり、重合体のフィルム化等の加工を行う際に、除去が必要となる。さらに、前記の従来技術では、収率、触媒使用量、分子量等の重合活性が十分とは言えない状況にある。
本発明は、無機塩の発生がなく、重合活性が向上された有機パラジウム錯体含有組成物、ノルボルネン系化合物重合用触媒及びこれを用いたノルボルネン系化合物重合体の製造方法の提供を目的とする。
本発明者は、上記の課題に取り組んだところ、(a)一般式(I)で表される有機パラジウム錯体、(b)不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物及び(c)中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンとからなる塩を混合し生成させた組成物が、ノルボルネン系化合物の重合触媒として有効に作用し、これまでの触媒より良好な結果を与えることを見出し、本発明に至った。すなわち前記課題は以下の手段により解決された。
1. 下記化合物(a)、(b)及び(c)を含有する有機パラジウム錯体含有組成物。
(a)下記一般式(I)で表される有機パラジウム錯体
(a)下記一般式(I)で表される有機パラジウム錯体
(一般式(I)中、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基を表し、Xはハロゲン原子又は‐OCOCH3を表し、LはNヘテロ環カルベンを表す。)
(b)不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物
(c)中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンとからなる塩
2. 前記一般式(I)のLで表されるNヘテロ環カルベンが下記一般式(II)で表される、上記1に記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
(b)不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物
(c)中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンとからなる塩
2. 前記一般式(I)のLで表されるNヘテロ環カルベンが下記一般式(II)で表される、上記1に記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
なお、一般式(II)において*を付した炭素原子と前記一般式(I)におけるPdとが結合する。また、点線は一重結合または二重結合を表す。
3. 前記一般式(I)のXがClを表し、R1〜R5が水素原子を表す、上記1又は2に記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
4. 前記化合物(b)が下記一般式(III)で表される、上記1〜3のいずれかに記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
3. 前記一般式(I)のXがClを表し、R1〜R5が水素原子を表す、上記1又は2に記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
4. 前記化合物(b)が下記一般式(III)で表される、上記1〜3のいずれかに記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
(一般式(III)中、Mはマグネシウム原子、亜鉛原子、ホウ素原子、アルミニウム原子、ジルコニウム原子、ケイ素原子、又はスズ原子を表し、R11、R12、R13、R14及びR15はそれぞれ独立して、水素原子又は有機基を表し、Rは有機基、極性基又はハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を表す。)
5. 前記一般式(III)のMがスズ原子であり、Rがブチル基であり、nが3である、上記4に記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
6. 前記化合物(c)が、ジアルキルアリールアンモニウムテトラキス(アリール)ボレートである、上記1〜5のいずれかに記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
7. 少なくとも一種の下記一般式(IV)で表されるノルボルネン系化合物を重合させるために用いられる、上記1〜6のいずれかに記載の有機パラジウム錯体含有組成物を含むノルボルネン系化合物重合用触媒。
5. 前記一般式(III)のMがスズ原子であり、Rがブチル基であり、nが3である、上記4に記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
6. 前記化合物(c)が、ジアルキルアリールアンモニウムテトラキス(アリール)ボレートである、上記1〜5のいずれかに記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
7. 少なくとも一種の下記一般式(IV)で表されるノルボルネン系化合物を重合させるために用いられる、上記1〜6のいずれかに記載の有機パラジウム錯体含有組成物を含むノルボルネン系化合物重合用触媒。
(一般式(IV)中、Ra、Rb、Rc及びRdはそれぞれ独立して、炭素原子と水素原子とからなる一価の有機基、極性基、又は水素原子を表し、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。)
8. 上記7に記載のノルボルネン系化合物重合用触媒の存在下で、ノルボルネン系化合物を重合させるノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
8. 上記7に記載のノルボルネン系化合物重合用触媒の存在下で、ノルボルネン系化合物を重合させるノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
本発明によれば、無機塩の発生がなく、重合活性が向上された有機パラジウム錯体含有組成物、ノルボルネン系化合物重合用触媒及びこれを用いたノルボルネン系化合物重合体の製造方法が提供される。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
[有機パラジウム錯体含有組成物]
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物は、以下の化合物(a)、(b)、(c)を混合することで得ることができる。
(a)下記一般式(I)で表される有機パラジウム錯体
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物は、以下の化合物(a)、(b)、(c)を混合することで得ることができる。
(a)下記一般式(I)で表される有機パラジウム錯体
(一般式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基であり、Xはハロゲン又は‐OCOCH3であり、LはNヘテロ環カルベンである。)
(b)不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物
(c)中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンとからなる塩
(b)不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物
(c)中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンとからなる塩
(a)一般式(I)で表される有機パラジウム錯体
化合物(a)は、前記一般式(I)で表されるπアリルパラジウム錯体の形態をとる。
化合物(a)は、前記一般式(I)で表されるπアリルパラジウム錯体の形態をとる。
前記一般式(I)において、Xはハロゲン原子又は‐OCOCH3であり、好ましくはハロゲン原子であり、さらに好ましくは塩素原子又は臭素原子であり、最も好ましくは塩素原子である。
LはNヘテロ環カルベンを表す。Nヘテロ環カルベンとは、Nを含む複素環を有するカルベン化合物を意味する。カルベン化合物とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、式(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子を持つ化合物のことである。
一般的にカルベン化合物は、反応中に生じる不安定な中間体として存在するが、ヘテロ原子を有すると比較的安定なカルベン化合物として単離することができる。Nヘテロ環カルベンの具体例としては、下記一般式(1)に示す化合物を挙げることができる。
一般的にカルベン化合物は、反応中に生じる不安定な中間体として存在するが、ヘテロ原子を有すると比較的安定なカルベン化合物として単離することができる。Nヘテロ環カルベンの具体例としては、下記一般式(1)に示す化合物を挙げることができる。
一般式(1)中、Q1及びQ2は、それぞれ独立に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びリン原子から選ばれるヘテロ原子であり、R6〜R9はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びケイ素原子から選ばれる原子を含む官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。さらに、R6〜R9は、互いに結合して環を形成していても構わない。また、Q1及びQ2となるヘテロ原子の種類によっては、R6〜R9の一部は存在しなくても良い。
上記の中でも、Q1及びQ2が窒素原子で、かつR8とR9が互いに結合して環を形成している、下記一般式(2)で示されるNヘテロ環カルベンが安定で好ましい。
上記の中でも、Q1及びQ2が窒素原子で、かつR8とR9が互いに結合して環を形成している、下記一般式(2)で示されるNヘテロ環カルベンが安定で好ましい。
一般式(2)中、R6及びR7は前記一般式(1)におけるR6及びR7と同様である。Tは2個の窒素原子を結ぶ架橋基であり、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びケイ素原子から選ばれる原子を含む官能基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。さらに、R6、R7及びTは、互いに結合して環を形成していても構わない。
特に好ましいNヘテロ環カルベンとしては、下記一般式(3)で示されるN,N−ジ置換イミダゾリン−2−イリデン、下記一般式(4)で示されるN,N−ジ置換イミダゾリジン−2−イリデンを挙げることができる。
一般式(3)中、R6及びR7は前記一般式(1)におけるR6及びR7と同様である。R10及びR11はそれぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む官能基;又は、ハロゲン原子もしくは前記の官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。さらに、R6、R7、R10及びR11は、互いに結合して環を形成していても構わない。
一般式(4)中、R6及びR7は前記一般式(1)におけるR6及びR7と同様である。R12〜R15はそれぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む官能基;又は、ハロゲン原子もしくは前記の官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。さらに、R6、R7及びR12〜R15は、互いに結合して環を形成していても構わない。
これ以外にも、下記一般式(5)で示されるN,N−ジ置換トリアゾリン−2−イリデンを挙げることができる。
一般式(5)中、R6及びR7は一般式(1)におけるR6及びR7と同様である。R16は水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む官能基;ハロゲン原子もしくは前記の官能基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。さらに、R7とR16は、互いに結合して環を形成していても構わない。
好ましいカルベン化合物の具体例としては、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルフェニル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルナフチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−4,5−ジクロロ−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジアダマンチル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジフェニル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3,4,5−テトラメチル−4−イミダゾリン−2−イリデン、及び1,3,4,5−テトラフェニル−4−イミダゾリン−2−イリデンなどの一般式(3)で表される化合物;
1,3−ジイソプロピルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルナフチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジアダマンチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジフェニルイミダゾリジン−2−イリデン、及び1,3,4,5−テトラメチルイミダゾリジン−2−イリデンなどの一般式(4)で表される化合物;
1,3,4−トリフェニル−2−トリアゾリン−5−イリデンなどの一般式(5)で表される化合物;
さらに、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−4−チアゾリン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、及び1,3−ジメシチルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデンなどを挙げることができる。
1,3−ジイソプロピルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルナフチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジアダマンチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジフェニルイミダゾリジン−2−イリデン、及び1,3,4,5−テトラメチルイミダゾリジン−2−イリデンなどの一般式(4)で表される化合物;
1,3,4−トリフェニル−2−トリアゾリン−5−イリデンなどの一般式(5)で表される化合物;
さらに、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−4−チアゾリン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、及び1,3−ジメシチルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデンなどを挙げることができる。
中でもとくに、Nヘテロ環カルベンが下記一般式(II)で表されることが好ましい。
なお、一般式(II)において*を付した炭素原子と前記一般式(I)におけるPdとが結合する。また、点線は一重結合または二重結合を表す。
化合物(a)は、対応するパイアリルパラジウムハライドダイマーまたはパイアリルパラジウムアセテートダイマーを用いて、オルガノメタリックス2004年23巻1629ページに従い、Nヘテロ環カルベン配位子を導入することで得られる。
化合物(a)の具体例として、以下のものがあげられるが、これらに限定されるものではない。
(b)不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物
化合物(b)は、不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する。不飽和結合を有する有機配位子とは、金属に結合している有機基のことをいうが、具体的には例えば、アルケニル基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜12のものがより好ましく、炭素原子数2〜8のものが特に好ましく、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜12のものがより好ましく、炭素原子数2〜8のものが特に好ましく、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(炭素原子数6〜30のものが好ましく、炭素原子数6〜20のものがより好ましく、炭素原子数6〜12のものが特に好ましく、例えばフェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などが挙げられる。)などが挙げられる。これらの中でも、アルケニル基が好ましく、アリル基及びその置換体がより好ましい。
化合物(b)は下記一般式(III)で表されるものが特に好ましい。
化合物(b)は、不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する。不飽和結合を有する有機配位子とは、金属に結合している有機基のことをいうが、具体的には例えば、アルケニル基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜12のものがより好ましく、炭素原子数2〜8のものが特に好ましく、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜12のものがより好ましく、炭素原子数2〜8のものが特に好ましく、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(炭素原子数6〜30のものが好ましく、炭素原子数6〜20のものがより好ましく、炭素原子数6〜12のものが特に好ましく、例えばフェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などが挙げられる。)などが挙げられる。これらの中でも、アルケニル基が好ましく、アリル基及びその置換体がより好ましい。
化合物(b)は下記一般式(III)で表されるものが特に好ましい。
一般式(III)中、Mはマグネシウム原子、亜鉛原子、ホウ素原子、アルミニウム原子、ジルコニウム原子、ケイ素原子、又はスズ原子を表し、R11、R12、R13、R14、及びR15はそれぞれ独立して、水素原子又は有機基を表し、Rは有機基、極性基又はハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を表す。
Mはパラジウムとトランスメタル化する金属であり、マグネシウム原子(Mg)、亜鉛原子(Zn)、ホウ素原子(B)、アルミニウム原子(Al)、ジルコニウム原子(Zr)(ジルコニウムは典型元素ではないが、本発明においては、有機典型金属化合物の構成元素として含まれるものとする)、ケイ素原子(Si)、又はスズ原子(Sn)を表し、典型金属が好ましく、その中でも、トランスメタル化しやすいマグネシウム原子(Mg)、ホウ素原子(B)、ケイ素原子(Si)、スズ原子(Sn)などが好ましく、副生成物の処理が簡便であることからスズ原子(Sn)がより好ましい。トランスメタル化に関しては、その進行をしやすくするため、促進剤を添加してもよい。たとえば、Mがケイ素原子(Si)である場合、テトラブチルアンモニウムフルオライドなどを添加すると、トランスメタル化の進行を促進できる。
R11、R12、R13、R14、及びR15はそれぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、立体障害によりトランスメタル化が進行しにくくなることがあるため、R11、R12、R13、R14、及びR15は水素原子であることが好ましい。
Rは有機基、極性基又はハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を表すが、その好ましい範囲はMによって異なる。
Mがマグネシウム原子(Mg)又は亜鉛原子(Zn)である場合、nは1であり、Rはハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
Mがホウ素原子(B)である場合は、nは2であり、Rは水酸基またhはアルコキシ基が好ましく、水酸基がより好ましい。
Mがアルミニウム原子(Al)である場合は、nは2であり、Rはアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基が特に好ましい。
Mがジルコニウム原子(Zr)である場合、nは3であり、Rはアルキル基又はハロゲン原子が好ましく、シクロペンタジエニル基又は塩素原子がより好ましい。
Mがケイ素原子(Si)又はスズ原子(Sn)である場合、nは3であり、Rはアルキル基、アリル基などが好ましく、ブチル基がより好ましい。
Mがマグネシウム原子(Mg)又は亜鉛原子(Zn)である場合、nは1であり、Rはハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
Mがホウ素原子(B)である場合は、nは2であり、Rは水酸基またhはアルコキシ基が好ましく、水酸基がより好ましい。
Mがアルミニウム原子(Al)である場合は、nは2であり、Rはアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基が特に好ましい。
Mがジルコニウム原子(Zr)である場合、nは3であり、Rはアルキル基又はハロゲン原子が好ましく、シクロペンタジエニル基又は塩素原子がより好ましい。
Mがケイ素原子(Si)又はスズ原子(Sn)である場合、nは3であり、Rはアルキル基、アリル基などが好ましく、ブチル基がより好ましい。
化合物(b)は、市販されているし、種々の方法によって得ることができるが、例えばディクショナリーオブオルガノメタリックカンパウンド(チャップマン&ホール社刊)のそれぞれの元素の項に出ている参考文献を参考にして得ることもできる。
化合物(b)の具体例として、以下のものがあげられるが、これらに限定されるものではない。
(c)中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンからなる塩
化合物(c)は、中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとそのカウンターカチオンからなる。
中心原子に非共有電子対をもたないアニオンの例として、ホウ素やアルミニウムのような13族元素に4つの有機基が配位したものが挙げられる。4つの有機基は、アリール基などのようにかさ高いことが好ましく、さらにこの中にはフッ素のような電子吸引性基が含有されていることが好ましい。具体的には、テトラキス(アリール)ボレートやテトラキス(アリール)アルミネートが挙げられ、扱いやすさの点からテトラキス(アリール)ボレートが好ましい。
化合物(c)は、中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとそのカウンターカチオンからなる。
中心原子に非共有電子対をもたないアニオンの例として、ホウ素やアルミニウムのような13族元素に4つの有機基が配位したものが挙げられる。4つの有機基は、アリール基などのようにかさ高いことが好ましく、さらにこの中にはフッ素のような電子吸引性基が含有されていることが好ましい。具体的には、テトラキス(アリール)ボレートやテトラキス(アリール)アルミネートが挙げられ、扱いやすさの点からテトラキス(アリール)ボレートが好ましい。
テトラキス(アリール)ボレートとして、テトラキス(フェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、テトラキス(2−フルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3−フルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−フルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリス(パーフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−トリ−i−プロピルシリルテトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−ジメチル−t−ブチルシリルテトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[3,5−ビス[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル]ボレート、テトラキス[3−[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、テトラキス[3−[2,2,2−トリフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1−(トリフルオロメチル)エチル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
これらの中でも、アニオン電荷密度の高いテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−トリ−i−プロピルシリルテトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−ジメチル−t−ブチルシリルテトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[3,5−ビス[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル]ボレート、テトラキス[3−[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、テトラキス[3−[2,2,2−トリフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1−(トリフルオロメチル)エチル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートが好ましく、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートがより好ましく、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが特に好ましい。
カウンターカチオンは、有機カチオンもしくはブレンステッド酸であることが好ましい。有機カチオンとして、トリチルカチオンがあげられる。ブレンステッド酸として、アンモニウムやホスホニウムが挙げられる。これらのアンモニウムやホスホニウムは、立体的なかさ高さがあることが好ましい。扱いやすさの点では、アンモニウムのほうが好ましい。
ホスホニウムとしては、ホスホニウムの三つの水素が、アルキル基もしくはアリール基もしくはこれらの両方で置換された三置換ホスホニウムが好ましい。具体的には、トリシクロヘキシルホスホニウムなどが好ましい。
アンモニウムとしては、アンモニウムの三つの水素が、アルキル基もしくはアリール基もしくはこれらの両方で置換された三置換アンモニウムが好ましい。三置換アミンの中でも、立体的にかさ高いジアルキルアリールアンモニウムなどが好ましく、ジメチルアリールアンモニウムなどがより好ましい。
ホスホニウムとしては、ホスホニウムの三つの水素が、アルキル基もしくはアリール基もしくはこれらの両方で置換された三置換ホスホニウムが好ましい。具体的には、トリシクロヘキシルホスホニウムなどが好ましい。
アンモニウムとしては、アンモニウムの三つの水素が、アルキル基もしくはアリール基もしくはこれらの両方で置換された三置換アンモニウムが好ましい。三置換アミンの中でも、立体的にかさ高いジアルキルアリールアンモニウムなどが好ましく、ジメチルアリールアンモニウムなどがより好ましい。
化合物(c)の具体例として、以下のものがあげられるが、これらに限定されるものではない。
[ノルボルネン系化合物]
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物を重合触媒としたとき、好ましく用いられる反応原料モノマーは下記一般式(IV)で表されるノルボルネン系化合物である。
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物を重合触媒としたとき、好ましく用いられる反応原料モノマーは下記一般式(IV)で表されるノルボルネン系化合物である。
一般式(IV)中、Ra、Rb、Rc、及びRdはそれぞれ独立して、炭素原子と水素原子とからなる一価の有機基、極性基、又は水素原子を表し、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。
炭素原子と水素原子からなる一価の有機基として、具体的には例えば、アルキル基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜12のものがより好ましく、炭素原子数1〜8のものが特に好ましく、例えばメチル基、エチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜12のものがより好ましく、炭素原子数2〜8のものが特に好ましく、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜12のものがより好ましく、炭素原子数2〜8のものが特に好ましく、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(炭素原子数6〜30のものが好ましく、炭素原子数6〜20のものがより好ましく、炭素原子数6〜12のものが特に好ましく、例えばフェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などが挙げられる。)などが挙げられる。
極性基は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子などの電気陰性度の高い原子を有し、それによって分極が生じている基であり、有機極性基を含む。具体的には例えば、アミノ基(炭素原子数0〜20のものが好ましく、0〜10のものがより好ましく、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(炭素原子数6〜20のものが好ましく、炭素原子数6〜15のものがより好ましく、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばピリジニルオキシ基、ピリミジニルオキシ基、ピリダジニルオキシ基、ベンズイミダゾリルオキシ基などが挙げられる。)、シリルオキシ基(炭素原子数3〜20のものが好ましく、炭素原子数3〜10のものがより好ましく、例えばトリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜10のものがより好ましく、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(炭素原子数7〜20のものが好ましく、炭素原子数7〜15のものがより好ましく、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜10のものがより好ましく、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(炭素原子数7〜20のものが好ましく、炭素原子数7〜15のものがより好ましく、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(炭素原子数0〜20のものが好ましく、炭素原子数0〜10のものがより好ましく、例えばスルファモイル基、N−メチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばカルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、ウレイド基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基などが挙げられる。
これらの置換基は、ノルボルネン環に直接連結していてもよく、アルキレン基などで連結されていてもよく、更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
極性基として好ましいものは、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、シリルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、及びアリールオキシカルボニルアミノ基であり、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基及びアルコキシカルボニルアミノ基がより好ましい。
極性基として好ましいものは、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、シリルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、及びアリールオキシカルボニルアミノ基であり、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基及びアルコキシカルボニルアミノ基がより好ましい。
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物を重合触媒としたときに、原料モノマーとして好ましく用いられる一般式(IV)で表されるノルボルネン系化合物の具体例として、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一般式(IV)で表されるノルボルネン系化合物は通常の方法で合成することができるが、例えばシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンと、目的とするノルボルネン系化合物が得られる構造を有するオレフィンとの反応により合成することができる。
[ノルボルネン系化合物重合用触媒]
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物は、前記化合物(a)、(b)及び(c)を混合して得ることができ、該組成物は、ノルボルネン系化合物重合用触媒として有用である。化合物(a)、(b)、及び(c)の混合比率は、この触媒活性種が効果的に活かされるような比率が好ましい。すなわち、化合物(b)の混合量は、化合物(a)中のパラジウム原子に対し0.5〜10モル当量が好ましく、0.5〜5モル当量がより好ましく、1〜3モル当量が特に好ましい。化合物(c)の混合量は、化合物(a)中のパラジウム原子に対し0.5〜10モル当量が好ましく、1〜5モル当量がより好ましく、2〜4モル当量が特に好ましい。
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物は、前記化合物(a)、(b)及び(c)を混合して得ることができ、該組成物は、ノルボルネン系化合物重合用触媒として有用である。化合物(a)、(b)、及び(c)の混合比率は、この触媒活性種が効果的に活かされるような比率が好ましい。すなわち、化合物(b)の混合量は、化合物(a)中のパラジウム原子に対し0.5〜10モル当量が好ましく、0.5〜5モル当量がより好ましく、1〜3モル当量が特に好ましい。化合物(c)の混合量は、化合物(a)中のパラジウム原子に対し0.5〜10モル当量が好ましく、1〜5モル当量がより好ましく、2〜4モル当量が特に好ましい。
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒は、均一溶液系で触媒活性種として用いることができる。有機パラジウム錯体含有組成物を重合反応系に調製しそれをノルボルネン系化合物と接触させる手順は適宜定めることができるが、
(手順1)ノルボルネン系化合物が液体であり、上記有機パラジウム錯体含有組成物を溶解させることが可能であるならば、ノルボルネン系化合物中で化合物(a)〜(c)を混合してもよく、
(手順2)ノルボルネン系化合物を溶媒に溶解してから、そこに化合物(a)〜(c)を添加して混合してもよく、
(手順3)化合物(a)〜(c)のすべて又は一部ずつを、それぞれあらかじめ溶媒中に溶解しておき、それらを同時に又は順次にノルボルネン系化合物又はその溶液に添加してもよく、
(手順4)逆に、化合物(a)〜(c)のすべて又はその一部を溶媒中で混合し触媒系を調製したのちに、そこへノルボルネン系化合物又はその溶液を添加してもよい。
なかでも上記(手順3)の態様が好ましい。
(手順1)ノルボルネン系化合物が液体であり、上記有機パラジウム錯体含有組成物を溶解させることが可能であるならば、ノルボルネン系化合物中で化合物(a)〜(c)を混合してもよく、
(手順2)ノルボルネン系化合物を溶媒に溶解してから、そこに化合物(a)〜(c)を添加して混合してもよく、
(手順3)化合物(a)〜(c)のすべて又は一部ずつを、それぞれあらかじめ溶媒中に溶解しておき、それらを同時に又は順次にノルボルネン系化合物又はその溶液に添加してもよく、
(手順4)逆に、化合物(a)〜(c)のすべて又はその一部を溶媒中で混合し触媒系を調製したのちに、そこへノルボルネン系化合物又はその溶液を添加してもよい。
なかでも上記(手順3)の態様が好ましい。
化合物(a)及び/又は(b)を溶媒に溶解してから混合する場合、溶媒がパラジウムに配位し、触媒の活性を落とすことがある。したがって、溶媒は無極性もしくは低極性であることが好ましく、例えばトルエンなどが挙げられる。
化合物(c)については、塩であるため、無極性もしくは低極性溶媒に溶解しないことがあるが、この場合、塩化メチレンなどのハロゲン系の低極性溶媒に溶かして、混合すればよい。
化合物(c)については、塩であるため、無極性もしくは低極性溶媒に溶解しないことがあるが、この場合、塩化メチレンなどのハロゲン系の低極性溶媒に溶かして、混合すればよい。
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒においては、その触媒量が多すぎると重合体の黄色味が強くなり、触媒量が少なすぎると反応に時間がかかるもしくは収率が落ちる。したがって、ノルボルネン系化合物1モル当量に対し触媒中のパラジウムの量が10000000分の1モル当量〜1000分の1モル当量となるようにすることが好ましく、1000000分の1モル当量〜1000分の1モル当量となるようにすることがより好ましく、1000000分の1モル当量〜2000分の1モル当量となるようにすることが特に好ましい。
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒は、空気、水、ノルボルネン系化合物中の不純物などにより、触媒活性が低下することがあるので、重合用のノルボルネン系化合物は、使用前に蒸留もしくは再結晶で精製することが好ましい。ノルボルネン系化合物の純度は、好ましくは95〜100%、より好ましくは98〜100%、特に好ましくは99〜100%である。
(重合反応とその諸条件)
・重合反応
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒においては、一般式(IV)で表されるノルボルネン系化合物の二重結合のビニル重合により目的の重合体を得る。そして本発明の触媒は単独重合のみならず2種類以上用いた共重合にも適用できる。重合に用いるノルボルネン系化合物が、2種類以上で、これらの重合速度が大きく異なる場合、分子量分布が4以上となり、フィルム用として適当でなくなる場合がある。このような場合、重合速度の早いノルボルネン系化合物を重合反応進行中のときに、添加することで分子量分布を小さくすることができる。また、ノルボルネン系化合物の重合性が高い場合、分子量が高くなりすぎて、溶媒に不溶となる成分が生じることがある。このような場合、αオレフィンを共存させると、分子量を下げることができる。
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒は、空気もしくは水によって、触媒が不活性化され、重合性が低下もしくは重合が進行しないことがある。したがって、高純度の不活性ガス雰囲気下で取り扱うことが好ましい。
・重合反応
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒においては、一般式(IV)で表されるノルボルネン系化合物の二重結合のビニル重合により目的の重合体を得る。そして本発明の触媒は単独重合のみならず2種類以上用いた共重合にも適用できる。重合に用いるノルボルネン系化合物が、2種類以上で、これらの重合速度が大きく異なる場合、分子量分布が4以上となり、フィルム用として適当でなくなる場合がある。このような場合、重合速度の早いノルボルネン系化合物を重合反応進行中のときに、添加することで分子量分布を小さくすることができる。また、ノルボルネン系化合物の重合性が高い場合、分子量が高くなりすぎて、溶媒に不溶となる成分が生じることがある。このような場合、αオレフィンを共存させると、分子量を下げることができる。
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒は、空気もしくは水によって、触媒が不活性化され、重合性が低下もしくは重合が進行しないことがある。したがって、高純度の不活性ガス雰囲気下で取り扱うことが好ましい。
・重合反応の溶媒
ノルボルネン系化合物が液体であり、本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒を溶解させることが可能であるならば、上述の(手順1)のようにこれらを無溶媒で混合させ、ニートで反応させることもできる。しかし、反応の進行とともに、粘度が上昇し、攪拌が困難となることがあるため、ノルボルネン系化合物を溶媒に溶解しておくことが好ましい。
そのときの溶媒は、触媒に対し、配位しにくい低極性溶媒が好ましい。さらに、反応により生じたノルボルネン系化合物重合体を溶解状態にさせておくことのできるものが好ましい。このような溶媒の例として、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、p−シメン、メシチレンのような芳香族炭化水素類があげられ、好ましくはトルエン、キシレンであり、さらに好ましくはトルエンである。
一方、溶媒の極性が低すぎると、ノルボルネン系化合物もしくはノルボルネン系化合物重合体が溶解しにくくなる。したがって、溶媒は用いるノルボルネン系化合物によって、適当なものを用いる必要がある。このような場合、上記の低極性溶媒に適量の極性溶媒を添加することができる。このような極性溶媒として、塩化メチレン、ジクロロエタン等が挙げられる。
ノルボルネン系化合物が液体であり、本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒を溶解させることが可能であるならば、上述の(手順1)のようにこれらを無溶媒で混合させ、ニートで反応させることもできる。しかし、反応の進行とともに、粘度が上昇し、攪拌が困難となることがあるため、ノルボルネン系化合物を溶媒に溶解しておくことが好ましい。
そのときの溶媒は、触媒に対し、配位しにくい低極性溶媒が好ましい。さらに、反応により生じたノルボルネン系化合物重合体を溶解状態にさせておくことのできるものが好ましい。このような溶媒の例として、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、p−シメン、メシチレンのような芳香族炭化水素類があげられ、好ましくはトルエン、キシレンであり、さらに好ましくはトルエンである。
一方、溶媒の極性が低すぎると、ノルボルネン系化合物もしくはノルボルネン系化合物重合体が溶解しにくくなる。したがって、溶媒は用いるノルボルネン系化合物によって、適当なものを用いる必要がある。このような場合、上記の低極性溶媒に適量の極性溶媒を添加することができる。このような極性溶媒として、塩化メチレン、ジクロロエタン等が挙げられる。
ノルボルネン系化合物を溶解する溶媒の量は(化合物(a)〜(c)の溶解に溶媒を用いた場合はそれを含めた総量)は、ノルボルネン系化合物に対し0〜50質量部が好ましく、0.3〜20質量部がより好ましく、0.5〜5質量部が特に好ましい。
溶媒に、空気もしくは水が混入していると、触媒が不活性化され、重合性が低下もしくは重合が進行しないことがある。したがって、溶媒を用いる場合、使用前に脱水蒸留及び脱気することが好ましい。
溶媒に、空気もしくは水が混入していると、触媒が不活性化され、重合性が低下もしくは重合が進行しないことがある。したがって、溶媒を用いる場合、使用前に脱水蒸留及び脱気することが好ましい。
・重合反応の温度
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒において、重合反応は、室温以下の反応でも進行するが、加熱をすることで反応を促進できる。しかし、加熱しすぎると触媒活性種が分解してしまう。したがって、反応の温度は、室温〜150℃が好ましく、50〜130℃がより好ましく、50〜120℃が特に好ましい。
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒において、重合反応は、室温以下の反応でも進行するが、加熱をすることで反応を促進できる。しかし、加熱しすぎると触媒活性種が分解してしまう。したがって、反応の温度は、室温〜150℃が好ましく、50〜130℃がより好ましく、50〜120℃が特に好ましい。
・重合反応の反応時間
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒において、その重合反応の反応時間は、反応温度と溶媒の量、ノルボルネン系化合物の種類などに依存するが、数十分から十数時間で終了させることができる。反応の終了は、反応液がパラジウムブラックが生じるところで判定できるが、反応時間が長くなることがあるので、適宜終了させることが好ましい。
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒において、その重合反応の反応時間は、反応温度と溶媒の量、ノルボルネン系化合物の種類などに依存するが、数十分から十数時間で終了させることができる。反応の終了は、反応液がパラジウムブラックが生じるところで判定できるが、反応時間が長くなることがあるので、適宜終了させることが好ましい。
・重合反応の後処理
反応液の加熱を停止したあと、反応液をそのままもしくは適当な溶媒で希釈した後、貧溶媒(例えば、メタノールなどのアルコール系溶媒)と混合させると、白色〜黄白色の固体が得られる。これをろ取、真空乾燥することでノルボルネン系化合物重合体が得られる。なお、重合体の黄色味が強い場合、適当な還元剤を用いると残存の2価パラジウムをパラジウムブラックとすることができ、これをろ過して取り除けば、白色の重合体が得られる。
反応液の加熱を停止したあと、反応液をそのままもしくは適当な溶媒で希釈した後、貧溶媒(例えば、メタノールなどのアルコール系溶媒)と混合させると、白色〜黄白色の固体が得られる。これをろ取、真空乾燥することでノルボルネン系化合物重合体が得られる。なお、重合体の黄色味が強い場合、適当な還元剤を用いると残存の2価パラジウムをパラジウムブラックとすることができ、これをろ過して取り除けば、白色の重合体が得られる。
以下に本発明の実施例および比較例を例示して説明するが、本発明はこれらの例により限定されるものではない。
以下の実施例、比較例において、各種測定は以下のように行った。
(1)分子量および分子量分布:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー株式会社製、商品名:HLC−8020/カラム4本:東ソー株式会社製、商品名:TSKguardcolumn SuperHZ−H、TSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ2000)を用い、テトラヒドロフラン(THF)溶媒を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、Mnは数平均分子量を表す。カラム温度=40℃、サンプル濃度=0.1重量%、サンプル注入量=10mL、溶媒流量=20mLの条件で測定を行った。
下記パラジウム錯体A-1およびA-2は、ユニコアジャパン社製のものを使用した。
ノルボルネン系モノマーM-1は以下のように合成した。
(合成例1:M−1の合成)
ジシクロペンタジエン(和光純薬工業(株)製)624g、メチルアクリレート(和光純薬工業(株)製)812gとヒドロキノン(和光純薬工業(株)製)1gをオートクレーブに仕込み、空隙を窒素置換した。密閉系で内温210℃で2時間攪拌した(回転速度=300rpm)。反応混合物を単蒸留に付して、無色透明なM−1を得た。ガスクロマトグラフィーにかけて、そのピーク純度を測定したところ、純度97.8%、endo/exo比率45/55であった。
ジシクロペンタジエン(和光純薬工業(株)製)624g、メチルアクリレート(和光純薬工業(株)製)812gとヒドロキノン(和光純薬工業(株)製)1gをオートクレーブに仕込み、空隙を窒素置換した。密閉系で内温210℃で2時間攪拌した(回転速度=300rpm)。反応混合物を単蒸留に付して、無色透明なM−1を得た。ガスクロマトグラフィーにかけて、そのピーク純度を測定したところ、純度97.8%、endo/exo比率45/55であった。
(実施例1)
窒素雰囲気のガラス容器に、ノルボルネン系化合物M−1を55.0g仕込み、攪拌はねで攪拌した。これに、A−1 29.8mgとアリルトリブチルスズ(アルドリッチ社製)46μLをトルエン2mLに溶かした溶液を調整し、上記反応容器に添加した。さらにジメチルアリールアンモニウムテトラキスペンタフルオロボレート(ストレム社製)89.0mgの塩化メチレン1mL溶液を、上記反応容器に加えた。この混合溶液を加熱し、内温70℃で8時間反応させた。内容物を室温に戻し、メタノール0.5Lを加え、再沈殿させた。白色固体のポリマーP-1を得た。Mw=283600、Mn=56000であった。
窒素雰囲気のガラス容器に、ノルボルネン系化合物M−1を55.0g仕込み、攪拌はねで攪拌した。これに、A−1 29.8mgとアリルトリブチルスズ(アルドリッチ社製)46μLをトルエン2mLに溶かした溶液を調整し、上記反応容器に添加した。さらにジメチルアリールアンモニウムテトラキスペンタフルオロボレート(ストレム社製)89.0mgの塩化メチレン1mL溶液を、上記反応容器に加えた。この混合溶液を加熱し、内温70℃で8時間反応させた。内容物を室温に戻し、メタノール0.5Lを加え、再沈殿させた。白色固体のポリマーP-1を得た。Mw=283600、Mn=56000であった。
(実施例2)
実施例1においてA-1のかわりにA-2を用いる以外は、同様に操作し、白色固体のポリマーP-1を得た。Mw=493600、Mn=98400であった。
実施例1においてA-1のかわりにA-2を用いる以外は、同様に操作し、白色固体のポリマーP-1を得た。Mw=493600、Mn=98400であった。
(比較例1)
実施例1においてアリルトリブチルスズを添加せずに同様の操作を行ったが、重合体は得られなかった。
実施例1においてアリルトリブチルスズを添加せずに同様の操作を行ったが、重合体は得られなかった。
(比較例2)
実施例1においてジメチルアリールアンモニウムテトラキスペンタフルオロボレートを添加せずに同様の操作を行ったが、重合体は得られなかった。
実施例1においてジメチルアリールアンモニウムテトラキスペンタフルオロボレートを添加せずに同様の操作を行ったが、重合体は得られなかった。
上記結果から明らかなように、本発明の有機パラジウム錯体含有組成物を用いることで、効率よく重合体を得ることができる。
本発明により、光学フィルム等に有用なノルボルネン系化合物重合体を効率よく与えることができる。
Claims (8)
- 前記一般式(I)のXがClを表し、R1〜R5が水素原子を表す、請求項1又は2に記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
- 前記一般式(III)のMがスズ原子であり、Rがブチル基であり、nが3である、請求項4に記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
- 前記化合物(c)が、ジアルキルアリールアンモニウムテトラキス(アリール)ボレートである、請求項1〜5のいずれかに記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
- 請求項7に記載のノルボルネン系化合物重合用触媒の存在下で、ノルボルネン系化合物を重合させるノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
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2008
- 2008-07-23 JP JP2008189886A patent/JP2010024399A/ja active Pending
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