JP2007106907A - 有機パラジウム錯体含有組成物、ノルボルネン系化合物重合用触媒、それらを用いたノルボルネン系化合物重合体の製造方法、およびノルボルネン系化合物重合用触媒の製造方法 - Google Patents

有機パラジウム錯体含有組成物、ノルボルネン系化合物重合用触媒、それらを用いたノルボルネン系化合物重合体の製造方法、およびノルボルネン系化合物重合用触媒の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】新規な有機パラジウム錯体含有組成物を提供し、また得られる重合体の黄色味などを改善しうる、前記錯体組成物を用いた高活性のノルボルネン系化合物重合用触媒、およびその製造方法を提供する。さらに、合成や入手が容易な中性パラジウム錯体から生成させた有機パラジウム錯体含有組成物、ノルボルネン系化合物重合用触媒、その製造方法、およびその存在下で重合させるノルボルネン系化合物重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも下記化合物(a)、(b)、および(c)を混合し、生成させた有機パラジウム錯体含有組成物。
(a)配位子としてハロゲン原子もしくはアセテートを少なくとも1つ有する中性有機パラジウム錯体
(b)不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物
(c)中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンとからなる塩
【選択図】なし

Description

本発明は、有機パラジウム錯体含有組成物、ノルボルネン系化合物重合用触媒、それらを用いたノルボルネン系化合物重合体の製造方法、およびノルボルネン系化合物重合用触媒の製造方法に関する。
ノルボルネン系化合物を主鎖に有する重合体のフィルムは、高い耐熱性、低複屈折、湿度に対する安定性を有することから、光学フィルムとして有望である。そのようなノルボルネン系化合物の重合において、カチオン性アルキルパラジウム錯体が触媒活性種として有効であることが従来知られている。しかし、このカチオン性アルキルパラジウム錯体は酸素や水分に不安定であるため、取り扱いの容易な中性アルキルパラジウム錯体(主触媒)とアニオン性配位子引き抜き剤(助触媒)を反応系で混合させる手法が一般的である。
上記のような主触媒と助触媒を用いた例として、アリルパラジウムクロライドダイマーとテトラフルオロボレート銀の触媒系が知られている(非特許文献1)。この触媒系では、強力なハロゲン引き抜き剤であるテトラフルオロボレート銀を用いることで、アリルパラジウムクロライドダイマーからクロライドを脱離させ、触媒活性種であるカチオン性アリルパラジウム錯体を発生させる。しかしながら、副生する銀クロライドは不溶性であるため、重合物を例えばフィルムとするには、この副生物をろ過操作で除去する工程が必要である。また、この触媒系では、ノルボルネン系化合物に対しパラジウムの必要量が50分の1から550分の1当量と多いことから、得られる重合体は黄色く着色する。
一方、(アリル)(トリシクロヘキシルホスフィン)(トリフルオロアセテート)パラジウムとリチウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの触媒系が知られている(非特許文献2)。この触媒系では、リチウム塩で配位力が弱いトリフルオロアセテートを引き抜き、カチオン性(アリル)(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム錯体を発生させている。副生するリチウムトリフルオロアセテートは可溶性でかつ反応に不活性であるため、ろ過等の除去操作が不要であり、触媒、助触媒、重合モノマー、溶媒などすべてを反応容器中で混合し、重合反応を完結できる。また、ノルボルネン系化合物に対してパラジウムの必要量が10000分の1当量以下であり、得られる重合体の黄色味は小さい。
しかしながら、非特許文献2の手法の(アリル)(トリシクロヘキシルホスフィン)(トリフルオロアセテート)パラジウムは、アリルパラジウムクロライドダイマーにトリシクロヘキシルホスフィンを付加させ、クロロをトリフルオロアセテートに置換しなければならない。すなわち、触媒原料となるパラジウム錯体の合成が煩雑である。
Joice P.Mathew外、マクロモレキュールス(Macromolecules)、1996年、29巻、2755−2763ページ John Lipian外、マクロモレキュールス(Macromolecules)、2002年、35巻、8969−8977ページ
本発明は、新規な有機パラジウム錯体含有組成物の提供を目的とし、また得られる重合体の黄色味などを改善しうる、前記錯体組成物を用いた高活性のノルボルネン系化合物重合用触媒、およびその製造方法の提供を目的とする。さらに、合成や入手が容易な中性パラジウム錯体から生成させた有機パラジウム錯体含有組成物、ノルボルネン系化合物重合用触媒、その製造方法、およびその存在下で重合させるノルボルネン系化合物重合体の製造方法の提供を目的とする。
(1)少なくとも下記化合物(a)、(b)、および(c)を混合し、生成させた有機パラジウム錯体含有組成物。
(a)配位子としてハロゲン原子もしくはアセテートを少なくとも1つ有する中性有機パラジウム錯体
(b)不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物
(c)中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンとからなる塩
(2)少なくとも前記化合物(a)、(b)、(c)、およびリン原子を1つ有する有機リン化合物(d)を混合して生成させた(1)記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
(3)前記中性有機パラジウム錯体が下記一般式(I)で表される錯体であることを特徴とする(1)または(2)記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
Figure 2007106907
(Xはハロゲン原子もしくはアセテートを表し、Lは配位子を表す。k、l、およびmはそれぞれ1もしくは2の整数を表す。)
(4)一般式(I)で表される中性有機パラジウム錯体のXがハロゲン原子であり、Lがパラジウム原子との結合に関与する炭素原子数が3である有機配位子であり、kが1であり、lが1であり、mが2であることを特徴とする(3)記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
(5)パラジウム原子との結合に関与する炭素原子数が3である前記有機配位子が、アリル配位子であることを特徴とする(4)記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
(6)一般式(I)で表される中性有機パラジウム錯体のXがハロゲン原子であり、Lが中性の有機配位子であり、kが2であり、lが2であり、mが1であることを特徴とする(3)記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
(7)前記中性の有機配位子が、ベンゾニトリルまたはアセトニトリルであることを特徴とする(6)記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
(8)前記有機典型金属化合物が、下記一般式(II)で表されることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
Figure 2007106907
(Mはマグネシウム原子、亜鉛原子、ホウ素原子、アルミニウム原子、ジルコニウム原子、ケイ素原子、またはスズ原子を表し、R、R、R、R、およびRはそれぞれ水素原子もしくは有機基を表し、Rは有機基、極性基、もしくはハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を表す。)
(9)一般式(II)で表される有機典型金属化合物のMがスズ原子であり、Rがブチル基であり、nが3であることを特徴とする(8)記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
(10)中心原子に非共有電子対をもたない前記アニオンが、テトラキス(アリール)ボレートであることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
(11)前記カウンターカチオンが、三置換アンモニウムであることを特徴とする(10)記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
(12)前記三置換アンモニウムが、ジアルキルアリールアンモニウムであることを特徴とする(11)記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
(13)リン原子を1つ有する前記有機リン化合物が、トリシクロヘキシルホスフィンであることを特徴とする(2)〜(12)記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
(14)(1)〜(13)記載の有機パラジウム錯体含有組成物が、少なくとも一種の下記一般式(III)で表されるノルボルネン系化合物を重合させる触媒であることを特徴とするノルボルネン系化合物重合用触媒。
Figure 2007106907
(式中、R、R、R、及びRはそれぞれ炭素原子と水素原子とからなる一価の有機基、極性基、または水素原子を表し、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。)
(15)(14)記載のノルボルネン系化合物重合用触媒の存在下で、ノルボルネン系化合物を重合させることを特徴とするノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
(16)少なくとも下記化合物(a)、(b)、および(c)を混合するノルボルネン系化合物重合用触媒の製造方法。
(a)配位子としてハロゲン原子もしくはアセテートを少なくとも1つ有する中性有機パラジウム錯体
(b)不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物
(c)中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンとからなる塩
(17)請求項16記載の方法により製造されたノルボルネン系化合物重合用触媒の存在下で、ノルボルネン系化合物を重合させることを特徴とするノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物は、そこに含まれる有機パラジウム錯体の合成が簡易であり複雑な工程を要さず、また重合反応に用いた場合にはその触媒活性が高いため、効率よく、高収率で、黄色味を抑えたノルボルネン系化合物重合体を得ることができる。
本発明者は、中性パラジウムハライドもしくはアセテート錯体から、複雑な合成工程を要さずに、有機パラジウム錯体を生成させ、新規な有機パラジウム含有組成物を得ることを目指した。そのためには、パラジウム錯体からパラジウムハライドもしくはアセテートの引き抜きが鍵であると考えた。引き抜き剤について研究を進めた結果、予想外にも不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物を用いることによって、ハライドもしくはアセテートがパラジウムより速やかに脱離することを見出した。さらに、予想外なことに、中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンからなる塩を組み合わせることにより、カチオン性アルキルパラジウム錯体を生成させることができることを見出した。
また、それはノルボルネン系化合物の重合触媒として有効であり、この触媒系は活性が高く、得られる重合体の黄色味がきわめて小さいなど、従来の問題点を克服しうるものである。さらに、前記有機パラジウム錯体にさらに有機リン配位子を添加することにより、極性基含有ノルボルネンの重合に特に有効であることを見出した。以下、本発明について詳細に説明する。
(ノルボルネン系化合物)
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物を重合触媒としたとき、好ましく用いられる反応原料モノマーは下記一般式(III)で表されるノルボルネン系化合物である。
Figure 2007106907
式中、Ra、Rb、Rc、およびRdはそれぞれ炭素と水素とからなる一価の有機基、極性基、または水素原子を表し、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。
炭素と水素からなる一価の有機基として、具体的には例えば、アルキル基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜12のものがより好ましく、炭素原子数1〜8のものが特に好ましく、例えばメチル基、エチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜12のものがより好ましく、炭素原子数2〜8のものが特に好ましく、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜12のものがより好ましく、炭素原子数2〜8のものが特に好ましく、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(炭素原子数6〜30のものが好ましく、炭素原子数6〜20のものがより好ましく、炭素原子数6〜12のものが特に好ましく、例えばフェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などが挙げられる。)などが挙げられる。
極性基は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子などの電気陰性度の高い原子を有し、それによって分極が生じている基であり、有機極性基を含む。具体的には例えば、アミノ基(炭素原子数0〜20のものが好ましく、0〜10のものがより好ましく、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(炭素原子数6〜20のものが好ましく、炭素原子数6〜15のものがより好ましく、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばピリジニルオキシ基、ピリミジニルオキシ基、ピリダジニルオキシ基、ベンズイミダゾリルオキシ基などが挙げられる。)、シリルオキシ基(炭素原子数3〜20のものが好ましく、炭素原子数3〜10のものがより好ましく、例えばトリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜10のものがより好ましく、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(炭素原子数7〜20のものが好ましく、炭素原子数7〜15のものがより好ましく、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜10のものがより好ましく、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(炭素原子数7〜20のものが好ましく、炭素原子数7〜15のものがより好ましく、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(炭素原子数0〜20のものが好ましく、炭素原子数0〜10のものがより好ましく、例えばスルファモイル基、N−メチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばカルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、ウレイド基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基などが挙げられる。これらの置換基は、ノルボルネン環に直接連結していてもよく、アルキレン基などで連結されていてもよく、更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。極性基として好ましいものは、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、シリルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、およびアリールオキシカルボニルアミノ基であり、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基およびアルコキシカルボニルアミノ基がより好ましい。
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物を重合触媒としたときに、原料モノマーとして好ましく用いられる一般式(III)で表されるノルボルネン系化合物の具体例として、以下の化合物が挙げられるが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
Figure 2007106907
Figure 2007106907
一般式(III)で表されるノルボルネン系化合物は通常の方法で合成することができるが、例えばシクロペンタジエンもしくはジシクロペンタジエンと、目的とするノルボルネン系化合物が得られる構造を有するオレフィンとの反応により合成することができる。
(有機パラジウム錯体含有組成物)
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物は、下記の化合物(a)、(b)、および(c)を混合することによって、または(a)、(b)、(c)、および(d)を混合し、生成させた有機パラジウム錯体含有組成物であり、必要に応じてその他の化合物を含有するものであってもよい。
(a)配位子としてハロゲンもしくはアセテートを少なくとも1つ有する中性有機パラジウム錯体
(b)不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物
(c)中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンとからなる塩
(d)リン原子を1つ有する有機リン化合物
中性有機パラジウム錯体(a)と有機典型金属化合物(b)とを混合すると、トランスメタル化が進行する。その結果、X(ハロゲン原子またはアセテート)がパラジウムより脱離し、有機典型金属化合物(b)の不飽和結合を有する有機配位子がパラジウムに配位する。有機配位子中に不飽和結合を有する有機典型金属化合物(b)のトランスメタル化は、有機配位子が飽和結合のみからなる有機典型金属化合物より、速やかに進行する。すなわち、Xの脱離と不飽和結合を有する有機配位子の配位速度は速い。
ノルボルネン系化合物の重合触媒としての機能を効果的に発揮させるためには、中性有機パラジウム錯体(a)中のハロゲン原子もしくはアセテートの当量以上に有機典型金属化合物(b)を反応させることが好ましい(詳細な混合量等は後述する。)。
中性有機パラジウム錯体(a)は以下の一般式(I)で表されるものであることが好ましい。
Figure 2007106907
ここで、Xはハロゲン原子もしくはアセテートを表し、Lは配位子を表す。k、l、およびmはそれぞれ1もしくは2の整数を表す(これらの詳細については後述する。)。
このとき、一般式(I)で表される中性パラジウム錯体中のパラジウム原子に対し1当量以上の有機典型金属化合物(b)を反応させることが好ましく、k=2である場合は、パラジウム原子に対し2当量以上の有機典型金属化合物(b)を反応させることが好ましい。
このようにしてアニオン性有機配位子を2つ有するパラジウム2価錯体を形成することができる。一般に、アニオン性有機配位子を2つ有するパラジウム2価錯体が形成されると、還元的脱離が進行し、パラジウム0価を与える場合がある。したがって、ここで発生させたパラジウム2価錯体は、還元的脱離をおこしにくい錯体とすることが好ましい。具体的には、(πアリル)(アルキル)パラジウム錯体などとすることであり、さらにビス(πアリル)パラジウム錯体などとすることが好ましい。したがって、不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物(b)は下記一般式(II)のようなアリル骨格を有するものであることが好ましい。
Figure 2007106907
一般式(II)中、Mはマグネシウム原子(Mg)、亜鉛原子(Zn)、ホウ素原子(B)、アルミニウム原子(Al)、ジルコニウム原子(Zr)、ケイ素原子(Si)、またはスズ原子(Sn)を表し、R、R、R、R、およびRはそれぞれ水素原子もしくは有機基を表し、Rは有機基もしくはハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を表す(これらの詳細については後述する。)。
さらに、発生したアニオン性有機配位子を2つ有するパラジウム2価錯体と、中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンからなる塩(c)を反応させると、カウンターカチオンがアニオン性有機配位子の一つを求電子攻撃し、このアニオン性有機配位子の一つは脱離する。この脱離反応は、不可逆であることが好ましい。カウンターカチオンが有機カチオンもしくはブレンステッド酸であると、脱離したアニオン性有機配位子は炭化水素となるので好ましい。特にブレンステッド酸が三置換アンモニウムであると、そのプロトンがアニオン性有機配位子の一つを求電子攻撃し、炭化水素と中性の三置換アミンを与える。生成した炭化水素はPkaが十分に高いので、発生した三置換アミンと反応しない。すなわち、この求電子反応の逆反応は進行しない。
上記の反応により、有機パラジウム錯体(以下、これを原料となる中性有機パラジウム錯体と区別して、第2有機パラジウム錯体ということもある。)としてカチオン性有機パラジウム2価錯体を生成させることができる。この第2有機パラジウム錯体に関しては、原料として加えた中性有機パラジウム錯体(以下、第1有機パラジウム錯体ともいう。)のパラジウム原子のモル当量に対して、その50%以上が第2有機パラジウム錯体に変換されていることが好ましく、70%以上が変換されていることがより好ましく、90%以上が変換されていることが特に好ましい。
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物中で、有機パラジウム錯体として生成させた、カチオン性有機パラジウム2価錯体に対するカウンターアニオンは、中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンからなる塩(c)のアニオンであり、中心原子に非共有電子対をもたないため、パラジウム原子に配位しないもしくはごく弱くしか配位しない。この配位の程度は小さければ小さいほど、カチオン性有機パラジウム2価錯体のカチオン性が増し、重合反応の触媒活性が高くなる。そのためカウンターアニオンは、立体的にかさ高く、電荷が分子全体に分散していることが好ましい。例えば、かさ高い芳香環を有するボレートが好ましく、この芳香環にフッ素などの電子吸引性基が含有されていることが好ましく、このようなボレートとして、テトラキス(アリール)ボレートが挙げられる。
このようにして発生したカチオン性パラジウム2価錯体に、ノルボルネン系化合物が配位、挿入を繰り返しながら、重合反応を進行させることができるため優れた重合用触媒とすることができる。
次に本発明の好ましい態様として、化合物(a)〜(c)を混合するに際し、リン原子を1つ有する有機リン化合物(d)をさらに添加したものについて説明する。
ノルボルネン系化合物が特定のものの場合、例えば極性基を含有するノルボルネン(極性基含有ノルボルネン)である場合、カチオン性パラジウム2価錯体がノルボルネン二重結合と極性基とに同時に分子内で結合を形成し、安定な錯体を形成してしまう。その結果、重合は進行しにくくなる。このような場合でも、リン原子を1つ有する有機リン化合物(d)を添加することで、有機リン化合物(d)がカチオン性パラジウム2価錯体に配位し、目的としない錯体形成の安定化を妨げることができる。その結果、極性ノルボルネン化合物であっても、その重合反応をスムーズに進行させることができる。
したがって、1つのリン原子を有する有機リン化合物(d)は、そのかさ高さが低すぎると、上述した錯体安定化抑制効果が不十分となり重合が進行しなくなる。一方で、かさ高すぎると、ノルボルネン系化合物がカチオン性パラジウム2価錯体に配位、挿入しづらくなり、やはり重合が進行しなくなる。したがって、1つのリン原子を有する有機リン化合物(d)には、用いられるノルボルネン系化合物に対し適当なかさ高さとすることが好ましい。
なお、中性パラジウム錯体(a)に対して、1つのリン原子を有する有機リン化合物(d)を、好ましくは質量比で1:0.9〜1:1.1で混合すると、安定な錯体を形成することができる。たとえば、アリルパラジウムクロライドダイマーにトリシクロヘキシルホスフィンを、質量比で1:1で混合すると、安定な(アリル)(トリシクロヘキシル)(クロロ)パラジウムが得られる。このような中性パラジウム−有機リンの1:1錯体を、前述の(a)と(d)の代替に用いることもできる。以下に、化合物(a)、(b)、(c)、および(d)について、さらに詳細に説明する。
(a)中性有機パラジウム錯体
上述のとおり本発明の有機パラジウム錯体含有組成物において、用いられる中性有機パラジウム錯体は、配位子としてハロゲン原子もしくはアセテートを少なくとも1つ有しており、好ましくは前記一般式(I)で表されるものである。
一般式(I)中、Xはハロゲン原子もしくはアセテートを表し、ハロゲン原子が好ましく、塩素原子もしくは臭素原子がより好ましく、塩素原子が特に好ましい。
Lは配位子を表し、その配位子の中でも中性配位子もしくはアニオン性配位子が好ましく、パラジウムと結合に関与する原子が窒素原子である中性配位子もしくはパラジウムと結合に関与する原子が炭素原子であるアニオン性配位子がより好ましく、ニトリル系配位子もしくはパラジウムと結合に関与する炭素原子の数が3つであるアニオン性配位子がさらに好ましく、ベンゾニトリルおよびアセトニトリルもしくはアリル配位子が特に好ましい。
k、l、およびmはそれぞれ1もしくは2の整数を表し、Lがアニオン性配位子である場合、kとlはともに1であり、mは2であることが好ましい(すなわち、二量体であることが好ましい。)。Lが中性配位子である場合、kとlはともに2であり、このときmは1であることが好ましい(すなわち、単量体であることが好ましい。)。
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物において、用いられる中性有機パラジウム錯体の例として、以下のものがあげられるが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
Figure 2007106907
本発明の中性パラジウム錯体は、市販のものを用いてもよく、通常の方法で合成することができ、例えばハロゲン化パラジウムから後述の合成例で示すようにして1〜2工程で簡易に合成することができる。
(b)有機典型金属化合物
本発明の有機金属錯体において、用いられる有機典型金属化合物は、不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する。
不飽和結合を有する有機配位子とは、金属に結合している有機基のことをいうが、具体的には例えば、アルケニル基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜12のものがより好ましく、炭素原子数2〜8のものが特に好ましく、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜12のものがより好ましく、炭素原子数2〜8のものが特に好ましく、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(炭素原子数6〜30のものが好ましく、炭素原子数6〜20のものがより好ましく、炭素原子数6〜12のものが特に好ましく、例えばフェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などが挙げられる。)などが挙げられる。
これらの中でも、アルケニル基が好ましく、アリル基およびその置換体がより好ましく、前記一般式(II)で表されるものが特に好ましい。
一般式(II)中、Mはパラジウムとトランスメタル化する金属であり、マグネシウム原子(Mg)、亜鉛原子(Zn)、ホウ素原子(B)、アルミニウム原子(Al)、ジルコニウム原子(Zr)(ジルコニウムは典型元素ではないが、本発明においては、有機典型金属化合物の構成元素として含まれるものとする)、ケイ素原子(Si)、またはスズ原子(Sn)を表し、典型金属が好ましく、その中でも、トランスメタル化しやすいマグネシウム原子(Mg)、ホウ素原子(B)、ケイ素原子(Si)、スズ原子(Sn)などが好ましく、副生成物の処理が簡便であることからスズ原子(Sn)がより好ましい。
トランスメタル化に関しては、その進行をしやすくするため、促進剤を添加してもよい。たとえば、Mがケイ素原子(Si)である場合、テトラブチルアンモニウムフルオライドなどを添加すると、トランスメタル化の進行を促進できる。
、R、R、R、およびRはそれぞれ水素原子もしくは有機基を表すが、立体障害によりトランスメタル化が進行しにくくなることがあるため、R、R、R、R、Rは水素であることが好ましい。
Rは有機基もしくはハロゲン原子を表し、nは2〜3の整数を表すが、その好ましい範囲はMによって異なる。Mがマグネシウム原子(Mg)もしくは亜鉛原子(Zn)である場合、nは1であり、Rはハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。Mがホウ素原子(B)である場合は、nは2であり、Rは水酸基もしくはアルコキシ基が好ましく、水酸基が好ましい。Mがアルミニウム原子(Al)である場合は、nは2であり、Rはアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基が特に好ましい。Mがジルコニウム原子(Zr)である場合、nは3であり、Rはアルキル基とハロゲン原子が好ましく、シクロペンタジエニル基と塩素原子がより好ましい。Mがケイ素原子(Si)もしくはスズ原子(Sn)である場合、nは3であり、Rはアルキル基、アリル基などが好ましく、ブチル基がより好ましい。
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物において、用いられる有機典型金属化合物(b)の具体例として、以下のものがあげられるが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
Figure 2007106907
(c)中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンからなる塩
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物において、用いられる塩は、中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとそのカウンターカチオンからなる。
中心原子に非共有電子対をもたないアニオンの例として、ホウ素やアルミニウムのような13族元素に4つの有機基が配位したものが挙げられる。前述のとおり、4つの有機基は、アリール基などのようにかさ高いことが好ましく、さらにこの中にはフッ素のような電子吸引性基が含有されていることが好ましい。具体的には、テトラキス(アリール)ボレートやテトラキス(アリール)アルミネートが挙げられ、扱いやすさの点からテトラキス(アリール)ボレートが好ましい。
テトラキス(アリール)ボレートとして、テトラキス(フェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、テトラキス(2−フルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3−フルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−フルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリス(パーフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−トリ−i−プロピルシリルテトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−ジメチル−t−ブチルシリルテトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[3,5−ビス[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル]ボレート、テトラキス[3−[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、テトラキス[3−[2,2,2−トリフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1−(トリフルオロメチル)エチル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
これらの中でも、アニオン電荷密度の高いテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−トリ−i−プロピルシリルテトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−ジメチル−t−ブチルシリルテトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[3,5−ビス[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル]ボレート、テトラキス[3−[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、テトラキス[3−[2,2,2−トリフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1−(トリフルオロメチル)エチル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートが好ましく、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートがより好ましく、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが特に好ましい。
カウンターカチオンは、前述のとおり、有機カチオンもしくはブレンステッド酸であることが好ましい。有機カチオンとして、トリチルカチオンがあげられる。ブレンステッド酸として、アンモニウムやホスホニウムが挙げられる。これらは、前述した反応機構で、プロトンを放出して、配位性の化合物となる。したがって、これらのアンモニウムやホスホニウムは、立体的なかさ高さがあることが好ましい。扱いやすさの点では、アンモニウムのほうが好ましい。
ホスホニウムとしては、ホスホニウムの三つの水素が、アルキル基もしくはアリール基もしくはこれらの両方で置換された三置換ホスホニウムが好ましい。具体的には、トリシクロヘキシルホスホニウムなどが好ましい。なお、ホスホニウムを用いる場合、ホスフィンが副生されるため、これをリン原子を1つ有する有機リン化合物(d)として、代用することもできる。
アンモニウムとしては、アンモニウムの三つの水素が、アルキル基もしくはアリール基もしくはこれらの両方で置換された三置換アンモニウムが好ましい。三置換アミンの中でも、立体的にかさ高いジアルキルアリールアンモニウムなどが好ましく、ジメチルアニリニウムアンモニウムなどがより好ましい。
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物において、用いられる中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンからなる塩の具体例として、以下のものがあげられるが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
Figure 2007106907
(d)1つのリン原子を有する有機リン化合物
本発明の有機パラジウム錯体含有組成物において、用いられる1つのリン原子を有する有機リン化合物は、好ましくは3つの有機基を有する3価の有機リン化合物である。具体的には、ホスフィン化合物もしくはホスファイト化合物であり、好ましくは三級ホスフィン化合物もしくはホスファイト化合物であり、より好ましくは、ジアルキルアリールホスフィン、ジアリールアルキルホスフィン、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイトであり、特に好ましくはトリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィンである。
ホスフィン化合物を以下に例示するが、本発明はこれらにより限定されない。好ましいホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジオクチルフェニルホスフィン、トリデカニルホスフィン、トリノニルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリヘプチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリメチルホスフィン、ジメチルオクチルホスフィン、ジオクチルメチルホスフィン、ジメチルヘプチルホスフィン、ジヘプチルメチルホスフィン、ジメチルヘキシルホスフィン、ジヘキシルメチルホスフィン、ジメチルブチルホスフィン、ジブチルメチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリヘプチルホスフィン、トリベンジルホスフィン、ジメチルシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルメチルホスフィンが挙げられる。
これらの中でも、合成の容易さと扱いやすさの点から、トリアリールホスフィン系化合物とトリアルキルホスフィン系化合物が好ましく、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンがより好ましく、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンが特に好ましい。
(ノルボルネン系化合物重合用触媒)
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒は、化合物(a)、(b)、および(c)を混合して、または化合物(a)、(b)、(c)、および(d)を混合して得た有機パラジウム錯体含有組成物であり、前述のようにカチオン性パラジウム2価錯体を触媒活性種として生成させたものを含む組成物である。したがって、化合物(a)、(b)、および(c)の混合比率、または化合物(a)、(b)、(c)、および(d)の混合比率は、この触媒活性種が効果的に活かされるような比率が好ましい。すなわち、化合物(b)の混合量は、化合物(a)中のパラジウム原子に対し0.5〜10当量が好ましく、0.5〜5当量がより好ましく、1〜3当量が特に好ましい。化合物(c)の混合量は、化合物(a)中のパラジウム原子に対し0.5〜10当量が好ましく、1〜5当量がより好ましく、2〜4当量が特に好ましい。化合物(d)は必ずしも必要ではないが、添加する場合、化合物(d)の混合量は、化合物(a)中のパラジウム原子に対し0.1〜1.5当量が好ましく、0.7〜1.3当量がより好ましく、0.9〜1.1当量が特に好ましい。
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒は、均一溶液系で触媒活性種として用いることができる。有機パラジウム錯体含有組成物を重合反応系に調製しそれをノルボルネン系化合物と接触させる手順は適宜定めることができるが、(手順1)ノルボルネン系化合物が液体であり、上記有機金属錯体触媒を溶解させることが可能であるならば、ノルボルネン系化合物中で化合物(a)〜(d)を混合してもよく、(手順2)ノルボルネン系化合物を溶媒に溶解してから、そこに化合物(a)〜(d)を添加して混合してもよく、(手順3)化合物(a)〜(d)のすべてまたは一部ずつを、それぞれあらかじめ溶媒中に溶解しておき、それらを同時にまたは順次にノルボルネン系化合物またはその溶液に添加してもよく、(手順4)逆に、化合物(a)〜(d)のすべてまたはその一部を溶媒中で混合し触媒系を調製したのちに、そこへノルボルネン系化合物またはその溶液を添加してもよく、なかでも上記(手順3)の態様が好ましい。なお、化合物(d)は前述のとおり任意的に添加、混合すればよい。
化合物(a)および/または(b)を溶媒に溶解してから混合する場合、溶媒がパラジウムに配位し、触媒の活性を落とすことがある。したがって、溶媒は無極性もしくは低極性であることが好ましく、例えばトルエンなどが挙げられる。
化合物(c)については、塩であるため、無極性もしくは低極性溶媒に溶解しないことがあるが、この場合、塩化メチレンなどのハロゲン系の低極性溶媒に溶かして、混合すればよい。
化合物(d)については、溶媒は無極性もしくは低極性であることが好ましく、例えばトルエンなどの溶媒が好ましい。
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒においては、その触媒量が多すぎると重合体の黄色味が強くなり、触媒量が少なすぎると反応に時間がかかるもしくは収率が落ちる。したがって、ノルボルネン系化合物1当量に対し触媒中のパラジウムの量が10000000分の1当量〜1000分の1当量となるようにすることが好ましく、1000000分の1当量〜1000分の1当量となるようにすることがより好ましく、1000000分の1当量〜2000分の1当量となるようにすることが特に好ましい。
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒は、空気、水、ノルボルネン系化合物中の不純物などにより、触媒活性が低下することがあるので、重合用のノルボルネン系化合物は、使用前に蒸留もしくは再結晶で精製することが好ましい。ノルボルネン系化合物の純度は、好ましくは95〜100%、より好ましくは98〜100%、特に好ましくは99〜100%である。
(重合反応とその諸条件)
・重合反応
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒においては、一般式(III)で表されるノルボルネン系化合物の二重結合のビニル重合により目的の重合体を得る。そして本発明の触媒は単独重合のみならず2種類以上用いた共重合にも適用できる。重合に用いるノルボルネン系化合物が、2種類以上で、これらの重合速度が大きく異なる場合、分子量分布が4以上となり、フィルム用として適当でなくなる場合がある。このような場合、重合速度の早いノルボルネン系化合物を重合反応進行中のときに、添加することで分子量分布を小さくすることができる。また、ノルボルネン系化合物の重合性が高い場合、分子量が高くなりすぎて、溶媒に不溶となる成分が生じることがある。このような場合、αオレフィンを共存させると、分子量を下げることができる。さらに、ノルボルネン系化合物の他に、オレフィンや一酸化炭素との共重合もできる。オレフィンの場合、β水素脱離しないことが条件となり、一酸化炭素の場合、ノルボルネン系化合物との交互共重合を形成することができる。
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒は、空気もしくは水によって、触媒が不活性化され、重合性が低下もしくは重合が進行しないことがある。したがって、高純度の不活性ガス雰囲気下で取り扱うことが好ましい。
・重合反応の溶媒
ノルボルネン系化合物が液体であり、本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒を溶解させることが可能であるならば、上述の(手順1)のようにこれらを無溶媒で混合させ、ニートで反応させることもできる。しかし、反応の進行とともに、粘度が上昇し、攪拌が困難となることがあるため、ノルボルネン系化合物を溶媒に溶解しておくことが好ましい。
そのときの溶媒は、触媒に対し、配位しにくい低極性溶媒が好ましい。さらに、反応により生じたノルボルネン系化合物重合体を溶解状態にさせておくことのできるものが好ましい。このような溶媒の例として、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、p−シメン、メシチレンのような芳香族炭化水素類があげられ、好ましくはトルエン、キシレンであり、さらに好ましくはトルエンである。
一方、溶媒の極性が低すぎると、ノルボルネン系化合物もしくはノルボルネン系化合物重合体が溶解しにくくなる。したがって、溶媒は用いるノルボルネン系化合物によって、適当なものを用いる必要がある。このような場合、上記の低極性溶媒に適量の極性溶媒を添加することができる。このような極性溶媒として、塩化メチレン、ジクロロエタン等が挙げられる。
ノルボルネン系化合物を溶解する溶媒の量は(化合物(a)〜(d)の溶解に溶媒を用いた場合はそれを含めた総量は)、ノルボルネン系化合物に対し0〜50質量部が好ましく、0.3〜20質量部がより好ましく、0.5〜5質量部が特に好ましい。
溶媒に、空気もしくは水が混入していると、触媒が不活性化され、重合性が低下もしくは重合が進行しないことがある。したがって、溶媒を用いる場合、使用前に脱水蒸留および脱気することが好ましい。
・重合反応の温度
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒において、重合反応は、室温以下の反応でも進行するが、加熱をすることで反応を促進できる。しかし、加熱しすぎると触媒活性種が分解してしまう。したがって、反応の温度は、室温〜150℃が好ましく、50〜130℃がより好ましく、50〜120℃が特に好ましい。
・重合反応の反応時間
本発明のノルボルネン系化合物重合用触媒において、その重合反応の反応時間は、反応温度と溶媒の量、ノルボルネン系化合物の種類などに依存するが、数十分から十数時間で終了させることができる。反応の終了は、反応液がパラジウムブラックが生じるところで判定できるが、反応時間が長くなることがあるので、適宜終了させることが好ましい。
・重合反応の後処理
反応液の加熱を停止したあと、反応液をそのままもしくは適当な溶媒で希釈した後、貧溶媒(例えば、メタノールなどのアルコール系溶媒)と混合させると、白色〜黄白色の固体が得られる。これをろ取、真空乾燥することでノルボルネン系化合物重合体が得られる。なお、重合体の黄色味が強い場合、適当な還元剤を用いると残存の2価パラジウムをパラジウムブラックとすることができ、これをろ過して取り除けば、白色の重合体が得られる。
以下に本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
(合成例1) 化合物M−I−11の合成
ジシクロペンタジエン(和光純薬社製)158.2g、1−オクテン(和光純薬社製)313.3gとIRGANOX1010(チバスペシャルティケミカルズ社製)2.5gを1Lオートクレーブに仕込み、空隙を窒素置換した。密閉系で内温200℃で4時間攪拌した(回転速度=300rpm)。反応混合物をろ過し、揮発成分をエバポレーションした。残存物を精密蒸留(理論段数5段、還流の開閉時間の比=5/1、圧力=7mmHg、トップ温度=89〜90℃)に付して、無色透明な液体111.0gを得た。得られた無色透明な液体をガスクロマトグラフィーにかけて、そのピーク純度を測定したところ、純度99.8%、endo/exo比率79/21であった。
(合成例2) 化合物M−II−1の合成
ジシクロペンタジエン(和光純薬社製)264.4g、メチルアクリレート(和光純薬社製)516.5gとIRGANOX1010(チバスペシャルティケミカルズ社製)5.0gを2Lオートクレーブに仕込み、空隙を窒素置換した。密閉系で内温200℃で4時間攪拌した(回転速度=300rpm)。揮発成分をエバポレーションした。残存物を精密蒸留(理論段数40段、還流の開閉時間の比=30/1〜1/1、圧力=12mmHg、トップ温度=80〜82℃)に付して、無色透明な液体482.2gを得た。得られた無色透明な液体をガスクロマトグラフィーにかけて、そのピーク純度を測定したところ、純度99.9%、endo/exo比率49/51であった。
(合成例3) 中性パラジウム錯体A−1の合成
高純度アルゴンで置換したガラス製フラスコ内に塩化パラジウム(和光純薬(株)社製)3.0g、塩化リチウム(和光純薬(株)社製)2.1gおよびメタノール40mLを加え、4時間攪拌した。得られた均一溶液に塩化アリル(和光純薬(株)製)3.9gを加え、これに一酸化炭素を4時間バブリングした。得られた黄色溶液を低温でエバポレーションした。黄色の残存物を塩化メチレンで抽出し、ろ過した。エバポレーションで濃縮し、ヘキサンを加えると黄色のA−1の結晶2.4gを得た。
(合成例4) 中性パラジウム錯体A−5の合成
塩化パラジウム(和光純薬(株)社製)3.0gと塩化リチウム(和光純薬(株)社製)2.1gおよびメタノール40mLを高純度アルゴンで置換したガラス製フラスコ内に仕込み、4時間攪拌した。得られた均一溶液にノルボルナジエン(アルドリッチ社製)2.1gを加え、12時間攪拌した。得られた黄色の固体を吸引ろ過、真空乾燥し、ノルボルナジエンジクロロパラジウム3.6gを得た。
高純度アルゴンで置換したガラス製フラスコ内で、メタノール20mL中に上記で得られたノルボルナジエンジクロロパラジウム1.4gを添加し、ドライアイス浴で内部温度−40℃とした。これに28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液(和光純薬(株)製)1.5mLを滴下した。1時間反応させ、室温に戻した。生じた黄色の固体を吸引ろ過、メタノール洗浄、真空乾燥し、A−5の結晶1.2gを得た。
(合成例5) 中性パラジウム錯体A−8の合成
塩化パラジウム(和光純薬(株)社製)2.0gとベンゾニトリル(和光純薬(株)社製)70mLをガラス製フラスコ内に仕込み、100℃で1時間攪拌した。得られた均一溶液を熱時ろ過し、これをヘキサン300mL中に添加した。得られた黄色の固体を吸引ろ過、真空乾燥し、A−8の結晶3.5gを得た。
(実施例1)
高純度アルゴンで置換したガラス容器に、ノルボルネン系化合物としてM−I−1(アルドリッチ社製)16.4gとトルエン40mLを仕込み、攪拌はねで攪拌した。これに、化合物(a)としてA−1:3.6mgと、化合物(b)としてB−9(アルドリッチ社製)6.5mgとをトルエン10mLに溶かした溶液を調製し、この1mLを上記反応容器に添加した。さらに化合物(c)としてC−1(ストレム社製)11.0mgの塩化メチレン1mL溶液を、上記反応容器に加えて、本発明の有機パラジウム錯体含有組成物を得た。
この組成物液を加熱したところ、60℃付近で白色に固化し、攪拌できなくなった。ガラス容器を割り、内容物をメタノールで洗浄し、100℃で真空乾燥を3時間行った。白色固体は、12.3gであった(収率75%)。なお、この白色固体は、溶媒に不溶であるため、分子量の分析はできなかった。
(比較例1)
実施例1において、化合物(c)のC−1を添加せずに、90℃で1時間攪拌した。反応液をメタノール中に滴下したが、沈殿物は得られなかった(収率0%)。
(比較例2)
高純度アルゴンで置換したガラス容器に、ノルボルネン系化合物としてM−I−1(アルドリッチ社製)19.3gとトルエン50mLを仕込み、攪拌はねで攪拌した。これに、化合物(a)としてA−1:6.0mgをトルエン10mLに溶かした溶液を調製し、この1mLを上記反応容器に添加した。さらに化合物(c)としてC−1(ストレム社製)12.5mgを塩化メチレン1mLに溶かした溶液を、上記反応容器に加え、90℃で1時間攪拌した。反応液をメタノール中に滴下したところ、0.9gの白色沈殿を得た(収率5%)。
上記のように、化合物(a)、(b)、および(c)の混合により生成させた有機金属錯体触媒が、ノルボルネン系化合物の重合に有効であることが分かる。
(実施例2)
実施例1において、化合物(b)のB−9のかわりに同じモル量のB−11(アヅマックス社製)とした以外、実施例1と同様に反応容器に各化合物を加えて、本発明の有機パラジウム錯体含有組成物を得た。
これを90℃で1時間攪拌した。反応液をメタノール中に滴下したところ、2.3gの白色沈殿を得た(収率14%)。なお、この白色固体は、溶媒に不溶であるため、分子量の分析はできなかった。
(実施例3)
実施例1において、化合物(b)のB−9のかわりにB−1の1mol/Lテトラヒドロフラン溶液(和光純薬社製)0.03mLとした以外、実施例1と同様に反応容器に各化合物を加えて、本発明の有機パラジウム錯体含有組成物を得た。
この組成物液を加熱したところ、60℃付近で白色に固化し、攪拌できなくなった。ガラス容器を割り、内容物をメタノールで洗浄し、100℃で真空乾燥を3時間行った。白色固体を収率68%で得た。なお、この白色固体は、溶媒に不溶であるため、分子量の分析はできなかった。
(実施例4)
実施例1において、化合物(a)のA−1のかわりに同じモル量のA−5とした以外、実施例1と同様に反応容器に各化合物を加えて、本発明の有機パラジウム錯体含有組成物を得た。
この組成物液を加熱したところ、60℃付近で白色に固化し、攪拌できなくなった。ガラス容器を割り、内容物をメタノールで洗浄し、100℃で真空乾燥を3時間行った。白色固体を収率62%で得た。なお、この白色固体は、溶媒に不溶であるため、分子量の分析はできなかった。
(実施例5)
高純度アルゴンで置換したガラス容器に、ノルボルネン系化合物としてM−I−1(アルドリッチ社製)16.3gとトルエン40mLを仕込み、攪拌はねで攪拌した。これに、化合物(a)としてA−8:8.0mgと、化合物(b)としてB−9(アルドリッチ社製)14.1mgとをトルエン10mLに溶かした溶液を調製し、この1mLを上記反応容器に添加した。さらに化合物(c)としてC−1(ストレム社製)11.4mgの塩化メチレン1mL溶液を、上記反応容器に加えて、本発明の有機パラジウム錯体含有組成物を得た。
この組成物液を加熱したところ、60℃付近で白色に固化し、攪拌できなくなった。ガラス容器を割り、内容物をメタノールで洗浄し、100℃で真空乾燥を3時間行った。白色固体を収率61%で得た。なお、この白色固体は、溶媒に不溶であるため、分子量の分析はできなかった。
(実施例6)
実施例1において、化合物(c)のC−1のかわりに同じモル量のC−5(アルドリッチ社製)とした以外、実施例1と同様に反応容器に各化合物を加えて、本発明の有機パラジウム錯体含有組成物を得た。
この組成物液を加熱したところ、60℃付近で白色に固化し、攪拌できなくなった。ガラス容器を割り、内容物をメタノールで洗浄し、100℃で真空乾燥を3時間行った。白色固体を収率82%で得た。なお、この白色固体は、溶媒に不溶であるため、分子量の分析はできなかった。
(実施例7)
高純度アルゴンで置換したガラス容器に、ノルボルネン系化合物としてM−I−11:15.7gと分子量調整剤1−オクテン(和光純薬社製)4.2gとトルエン40mLを仕込み、攪拌はねで攪拌した。これに、化合物(a)としてA−1:3.6mgと、化合物(b)としてB−9(アルドリッチ社製)6.5mgをトルエン10mLに溶かした溶液を調製し、この1mLを上記反応容器に添加した。化合物(d)としてのトリシクロヘキシルホスフィン:P(C13(ストレム社製)5.5mgのトルエン10mL溶液の1mLと化合物(c)としてのC−1(ストレム社製)10.0mgの塩化メチレン2mL溶液を添加して、本発明の有機パラジウム錯体含有組成物を得た。
この組成物液を、90℃で3時間攪拌した。反応途中でトルエンを計80mL追加した。反応液をメタノール中に滴下したところ、白色沈殿を得た。これを吸引ろ過で採取し、100℃で真空乾燥を3時間行った。白色固体は、14.2gであった(収率90%)。
(実施例8)
高純度アルゴンで置換したガラス容器に、ノルボルネン系化合物としてM−II−1:20.1gを仕込み、攪拌はねで攪拌した。化合物(a)としてのA−1:5.6mgのトルエン5mL溶液、化合物(b)としてのB−9(アルドリッチ社製)11.3mgのトルエン5mL溶液、化合物(d)としてのトリシクロヘキシルホスフィン:P(C13(ストレム社製)8.3mgのトルエン10mL溶液、化合物(c)としてのC−1(ストレム社製)89.0mgの塩化メチレン2mL溶液を、上記反応容器に添加して、本発明の有機パラジウム錯体含有組成物を得た。
この組成物液を、90℃で6時間攪拌した。途中、溶液の粘性が高まるにつれて、トルエンを計40mL添加した。反応液を大量のメタノール中に滴下し、白色の沈殿物を得て、吸引ろ過で採取した。これを110℃で真空乾燥を3時間行った。収量は16.2g(収率81%)であった。
(実施例9)
高純度アルゴンで置換したガラス容器に、ノルボルネン系化合物としてM−II−1(本文中に合成例)69.5gとM−I−1(アルドリッチ社製)7.6gとトルエン150mLを仕込み、攪拌はねで攪拌した。化合物(a)としてのA−1:22.0mgのトルエン10mL溶液、化合物(b)としてのB−9(アルドリッチ社製)45.0mgのトルエン10mL溶液、化合物(d)としてのトリシクロヘキシルホスフィン:P(C13(ストレム社製)33.3mgのトルエン10mL溶液、化合物(c)としてのC−1(ストレム社製)270.3mgの塩化メチレン6mL溶液を、上記反応容器に添加して、本発明の有機パラジウム錯体含有組成物を得た。
この組成物液を、90℃で6時間攪拌した。途中、溶液の粘性が高まるにつれて、トルエンを計150mL添加した。反応液を大量のメタノール中に滴下し、白色の沈殿物を得て、吸引ろ過で採取した。これを110℃で真空乾燥を3時間行った。収量は53.2g(収率69%)であった。
実施例および比較例により得られた重合体の数平均分子量(Mw)と重量平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定した。さらに、得られた重合体を目視で、黄色味の有無を判定した。以上の結果を以下の表1にまとめる。
Figure 2007106907
上記表から明らかなように、合成の簡便な中性パラジウム錯体から得た有機パラジウム錯体含有組成物を用いて、効率(収率)よく、ノルボルネン系化合物の重合体が得られることがわかる。さらに、本発明のノルボルネン系化合物重合体の製造方法によって得られる重合体は黄色味が小さい。

Claims (17)

  1. 少なくとも下記化合物(a)、(b)、および(c)を混合し、生成させた有機パラジウム錯体含有組成物。
    (a)配位子としてハロゲン原子もしくはアセテートを少なくとも1つ有する中性有機パラジウム錯体
    (b)不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物
    (c)中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンとからなる塩
  2. 少なくとも前記化合物(a)、(b)、(c)、およびリン原子を1つ有する有機リン化合物(d)を混合して生成させた請求項1記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
  3. 前記中性有機パラジウム錯体が下記一般式(I)で表される錯体であることを特徴とする請求項1または2記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
    Figure 2007106907
    (Xはハロゲン原子もしくはアセテートを表し、Lは配位子を表す。k、l、およびmはそれぞれ1もしくは2の整数を表す。)
  4. 一般式(I)で表される中性有機パラジウム錯体のXがハロゲン原子であり、Lがパラジウム原子との結合に関与する炭素原子数が3である有機配位子であり、kが1であり、lが1であり、mが2であることを特徴とする請求項3記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
  5. パラジウム原子との結合に関与する炭素原子数が3である前記有機配位子が、アリル配位子であることを特徴とする請求項4記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
  6. 一般式(I)で表される中性有機パラジウム錯体のXがハロゲン原子であり、Lが中性の有機配位子であり、kが2であり、lが2であり、mが1であることを特徴とする請求項3記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
  7. 前記中性の有機配位子が、ベンゾニトリルまたはアセトニトリルであることを特徴とする請求項6記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
  8. 前記有機典型金属化合物が下記一般式(II)で表されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
    Figure 2007106907
    (Mはマグネシウム原子、亜鉛原子、ホウ素原子、アルミニウム原子、ジルコニウム原子、ケイ素原子、またはスズ原子を表し、R、R、R、R、およびRはそれぞれ水素原子もしくは有機基を表し、Rは有機基、極性基、もしくはハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を表す。)
  9. 一般式(II)で表される有機典型金属化合物のMがスズ原子であり、Rがブチル基であり、nが3であることを特徴とする請求項8記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
  10. 中心原子に非共有電子対をもたない前記アニオンが、テトラキス(アリール)ボレートであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
  11. 前記カウンターカチオンが、三置換アンモニウムであることを特徴とする請求項10記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
  12. 前記三置換アンモニウムが、ジアルキルアリールアンモニウムであることを特徴とする請求項11記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
  13. リン原子を1つ有する前記有機リン化合物が、トリシクロヘキシルホスフィンであることを特徴とする請求項2〜12記載の有機パラジウム錯体含有組成物。
  14. 請求項1〜13記載の有機パラジウム錯体含有組成物が、少なくとも一種の下記一般式(III)で表されるノルボルネン系化合物を重合させる触媒であることを特徴とするノルボルネン系化合物重合用触媒。
    Figure 2007106907
    (式中、R、R、R、及びRはそれぞれ炭素原子と水素原子とからなる一価の有機基、極性基、または水素原子を表し、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。)
  15. 請求項14記載のノルボルネン系化合物重合用触媒の存在下で、ノルボルネン系化合物を重合させることを特徴とするノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
  16. 少なくとも下記化合物(a)、(b)、および(c)を混合するノルボルネン系化合物重合用触媒の製造方法。
    (a)配位子としてハロゲン原子もしくはアセテートを少なくとも1つ有する中性有機パラジウム錯体
    (b)不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物
    (c)中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンとからなる塩
  17. 請求項16記載の方法により製造されたノルボルネン系化合物重合用触媒の存在下で、ノルボルネン系化合物を重合させることを特徴とするノルボルネン系化合物重合体の製造方法。
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