JP4951166B2 - レンズブランク及びレンズの製造方法 - Google Patents

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本発明は、ガラス製の光学レンズを製造するための母材となるレンズブランクの製造方法と、このようなレンズブランクを用いてレンズを製造するレンズの製造方法に関する。
ガラス製のレンズを製造する方法として、軟化状態のガラスを一対の金型を用いてプレス成形する方法が知られている。そして、ガラスのプレス成形法は、プレス成形でレンズブランクと呼ばれるレンズ形状に近似する形状のプレス成形品を作り、このプレス成形品を研削、研磨してレンズの光学機能面を仕上げる方法(以下、「プレス研磨法」という)と、プレス成形によってレンズの光学機能面を形成する方法(以下、「精密プレス成形法」という)に大別される。
これら2つの方法は、ガラスのプレス成形法という点で共通するが、光学機能面を研磨によって仕上げるか、プレス成形で形成するかによって様相が大きく異なる。
精密プレス成形法は、プリフォームと呼ばれるレンズ1個分のガラスからなるガラス塊を作り、このプリフォームを上記ガラスが10〜1012dPa・sの粘度になる温度まで加熱、昇温し、プレス成形型でプレスし、レンズ形状にした後、型閉めした状態(ガラスを離型しない状態)でガラス転移温度付近までガラスと型を一緒に冷却し、その後、型を開いてガラスを離型して成形品を取り出す。このように、型閉めした状態で冷却するのは、ヒケによってプレス成形した光学機能面の面精度が低下するのを防ぐためである。
一方、プレス研磨法は、光学機能面を研磨加工によって仕上げるため、精密プレス成形法のように、型から取り出す際に、時間をかけて成形品を冷却する必要はない。むしろ、プレス研磨法ではスループットやプレス成形装置をできるだけ簡便にして、製造コストを低減することが優先される。
例えば、プレス成形型を下型、上型、胴型によって構成する場合、複数のプレス成形型で上型1個を共用し、軟化状態のガラスゴブ(粘度が1〜10dPa・s程度の状態)を胴型内に嵌め込んだ下型上に配置し、上型が上方で待機する位置(以下、「プレス位置」という)に移送、停留させ、上型を下降して上下型でガラスゴブをプレスする。プレス時間は概ね数秒以内と極めて短時間であり、精密プレス成形のプレス時間(概ね数十秒)と対照的である。そして、ガラスゴブをレンズブランク形状に成形した後、上型、ガラス間で離型を行い、下型上でプレス成形品を冷却した後、プレス成形品をアニール炉に入れてアニールする。プレス成形品を取り出した下型には、再度、ガラスゴブを供給し、プレス位置へ移送してガラスのプレスを行う。このようにして、下型ごとに上記工程をシリアルに行い、レンズブランクを量産する。
プレス研磨法ならびに精密プレス成形法の概要は以上のとおりであるが、その一例が、特許文献1,2に記載されている。
特開平1−257140号公報 特開2003−34541号公報
ここで、精密プレス成形法は、プレス研磨法と比べて高粘度のガラスを高い圧力でプレスし、時間をかけて所望形状に成形する方法である。したがって、大型のレンズの成形にはあまり適していない。
これに対し、プレス研磨法は低粘度のガラスをプレスするため、プレス前後でのガラスの形状を大きく変化させることができ、大型のレンズに仕上げるためのレンズブランクを高い生産性のもとに製造することができる。
ところで、近年、大型のレンズブランクを作る際に、次のような問題が顕在化してきた。
すなわち、プレス成形後、一般には、レンズブランクをレア炉と呼ばれる連続式アニール炉に入れるが、アニール後のレンズブランクを検査すると、多数のものが所望の形状から外れてしまっている。そして、このようなレンズブランクを研磨しても目的のレンズ形状にすることができないか、又は、通常よりも大き目のレンズブランクを成形して、研削によってレンズブランクの形状を整えてから光学機能面を仕上げる加工を行わなくてはならず、プレス研磨法の持ち味が損なわれてしまう。
本発明は、上記問題を解決することを目的になされた発明であって、大型のレンズブランクであっても所望形状のレンズブランクを生産することができるレンズブランクの製造方法、及びこの方法で作製したレンズブランクから所望形状のレンズを生産することができるレンズの製造方法の提供を目的とする。
本発明者らは、前述のレンズブランクの形状が不良になる原因を調べるため、アニール後のレンズブランク(以下、「エンドサンプル」という)と、アニール前のレンズブランク(以下、「ホットサンプル」という)の形状を測定したところ、ホットサンプルは目的とするレンズブランクの形状どおりに成形されているが、エンドサンプルの形状が規格外になっていた。この結果から、アニール中にレンズブランクが変形して、上記不具合が発生していることが判明した。この結果に検討を加えたところ、次の結論にたどり着いた。
プレス成形後のレンズブランクをプレス成形型から取り出すとき、前記ブランクの内部、特に肉厚部の内部の温度はガラス転移温度よりも高いが、表面及び肉薄部は固化した状態になっている。このため、取り出しの際に外力を加えてもレンズブランクは変形しない。そして、このままレンズブランクを室温まで冷却すれば、形状もプレスによって成形した形状に保たれる。
一方、レンズブランクをプレス成形直後にアニール炉に入れると、レンズブランクを温めることになるため、ブランクの冷却スピードが鈍化する。また、レンズブランクの中心部が保有する熱がブランク表面から放熱しづらくなり、ブランク表面に熱が滞在して粘度が低下する。その結果、ブランクが軟化して変形しやすい状態になってしまう。
レンズブランクのアニールは、平面上にレンズブランクを置き、レンズブランク内部の歪を除去、低減したり、ガラスの屈折率を調整したりするため、長い時間をかけて徐々にレンズブランクの温度を下げていく。そのため、レンズブランク内部には、自重による前記平面との接点を中心としたトルクが発生するので、レンズブランクが徐々に変形し、アニール終了後には許容範囲を超えた変形になってしまう。
このような事態を回避するには、型に載せた状態でアニールすることも考えられるが、前述のように、プレス研磨法は限られた数の型でレンズブランクを量産できる点に特長があるので、その持ち味が損なわれることになる。
そこで、本発明者らは、そもそもレンズブランクの変形は、アニール開始時のレンズブランク内部と表面の温度差や、肉厚部と肉薄部の温度差が原因であるから、この温度差を低減してからアニールを開始すれば、レンズブランク変形の問題を解消できるのではないかと考えた。例えば、プレス成形後に、レンズブランクの肉厚部にガスを吹きかけるなどして冷却を促せば、肉厚部の冷却を選択的に促進できる。
しかし、この方法が使えるのはレンズブランクの離型した面だけであって、離型していない面にこの方法を適用することはできない。本発明者らは、さらに検討を重ねたとこと、離型前の状態でレンズブランクの冷却を促進するには、肉厚部と型の接触面における熱伝導を肉薄部と方の接触面における熱伝導より大きくすればよいと考えるに至った。
本発明は、このような着想に基づき完成した発明であり、発明の課題を解決するための手段として次の手段を提供する。
すなわち、本発明に係るレンズブランクの製造方法は、研磨を含む二次加工が施されてレンズに仕上げられるレンズブランクを、少なくともプレス成形型を用いて行うプレス成形工程と、アニール工程とを経て製造するにあたり、前記プレス成形工程において、連続して流出する熔融ガラス流から熔融ガラス塊を前記プレス成形型上に分離し、前記レンズブランクの主表面を成形する前記プレス成形型の成形面に凹部及び/又は凸部を設けた前記プレス成形型を用いて、前記プレス成形型よりも高温とされた粘度が1〜10 dPa・sであるガラスをプレス成形することにより、前記レンズブランクの主表面に前記成形面を転写するとともに、前記二次加工により除去される前記レンズブランクの主表面の取りしろ内に局在するように前記凹部及び/または凸部を転写し、前記レンズブランクが肉厚部と肉薄部とを有し、前記プレス成形型の成形面のうち、前記肉厚部に相当する部分を成形する部位に前記凹部及び/又は凸部を設け、当該部位と前記肉厚部に相当する部分との接触面積を増加させる方法としてある。
このような方法とした本発明に係るレンズブランクの製造方法によれば、成形面とレンズブランクとの接触面積を大きくして、プレス成形直後のレンズブランクから成形型への熱伝導を高めて、接触面におけるレンズブランクの冷却を促進することができ、これによって、アニールにより形状精度を低下させることなく、所望形状のレンズブランクを製造することが可能となる。
また、本発明に係るレンズブランクの製造方法は、前記レンズブランクが肉厚部と肉薄部とを有する場合、肉厚部内部の温度は、肉薄部内部の温度より下がりにくいため、前記プレス成形型の成形面のうち、前記肉厚部に相当する部分を成形する部位に前記凹部及び/又は凸部を設け、当該部位と前記肉厚部に相当する部分との接触面積を増加させる方法として、肉厚部の冷却を促進する
また、本発明に係るレンズブランクの製造方法は、直径が30mm以上のレンズブランクを作製する方法とすることができる。
直径が大きいほど、レンズブランクには大きな温度差が生じやすいが、本発明によれば、直径が30mm以上のレンズブランクを作製する場合であっても、温度差を低減し、アニール時の変形を防止、低減することができる。
また、本発明に係るレンズブランクの製造方法では、前記レンズブランクの主表面に転写される前記凹部及び/または凸部の大きさは、前記成形面に垂直な方向から見たときの溝幅が1mm以下であり、かつ、0.2mm以上であるのが好ましく、前記レンズブランクの主表面に転写される前記凹部の深さ、又は前記凸部の高さが、0.1〜1mmであるのが好ましく、前記成形面に設けられた前記凹部及び/又は凸部は、離型するまで前記ガラスと密着した状態を保つのが好ましい。
また、本発明に係るレンズの製造方法は、以上のようなレンズブランクの製造方法により作製されたレンズブランクに対し、研磨を含む二次加工を施してレンズに仕上げる方法としてある。
このような方法とした本発明に係るレンズの製造方法によれば、所望形状のレンズを効率よく製造することができる。
以上のように、本発明によれば、アニールにより形状精度を低下させることなく、所望形状のレンズブランクを製造することができ、さらに、このようにして製造されたレンズブランクから所望形状のレンズを効率よく製造することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
[レンズブランクの製造方法]
本発明に係るレンズブランクの製造方法は、レンズブランクの主表面を成形する成形面を有するプレス成形型を用いて、プレス成形型よりも高温とされた軟化状態にあるガラスをプレス成形するプレス成形工程と、成形後の残留応力を緩和して歪みを除去などするためのアニール工程とを少なくとも備え、以下に説明する第一実施形態と、第二実施形態とを包含する。
ここで、レンズブランクとは、研磨を含む二次加工が施されることにより、最終製品であるレンズに仕上げられるガラス成形体であって、最終製品としてのレンズの形状に近似する形状を有する中間製品をいうものとする。そして、このようなレンズブランクは、レンズに仕上げられる部分と、上記二次加工により除去される部分(以下、「取りしろ」という)とを有している。
[第一実施形態]
まず、本発明に係るレンズブランクの製造方法の第一実施形態について説明する。本実施形態では、プレス成形工程において、レンズブランクの主表面を成形する成形面に、凹部及び/又は凸部を設けたプレス成形型を用いて、プレス成形型よりも高温とされた、軟化状態にあるガラスゴブをプレス成形することにより、レンズブランクの主表面に、プレス成形型の成形面を転写するとともに、レンズブランクの主表面の取りしろ内に局在するように、成形面に設けられた凹部及び/または凸部を転写する。
軟化状態のガラスゴブは、例えば、流出する熔融ガラスから、レンズブランクの成形に必要な量の熔融ガラス塊を分離して得ることができる。また、レンズブランクの成形に必要な量の固化したガラス塊を、加熱、軟化することによっても得ることができる。
前者の方法で得た熔融ガラス塊の温度は急速に低下するが、軟化状態にあるうちにプレス成形する。この方法をダイレクトプレスと呼び、後者の方法で軟化したガラスゴブをプレス成形する方法をリヒートプレスと呼ぶ。
[ダイレクトプレス]
ダイレクトプレスでは、連続して流出する熔融ガラス流から、次々と熔融ガラス塊を分離してプレス成形する。そのため、複数の下型を、次々に熔融ガラス流の下方に移送、停留させて熔融ガラス流の先端を受け、次いで、熔融ガラス流をシアと呼ばれる切断刃で切断する。こうして、レンズブランク1個分の熔融ガラス塊を下型上に供給する。
なお、熔融ガラス塊が供給される下型停留位置をキャスト位置と呼ぶ。
熔融ガラス塊を載せた下型をキャスト位置から搬出し、上方で上型が待機するプレス位置と呼ぶ停留位置に移送、停留させる。この過程で熔融ガラス塊の温度が低下し、プレス成形に適した軟化状態のガラスゴブになる。
プレス位置では、上型を下降し、下型、上型でガラスゴブをプレス成形する。胴型を使用する場合は下型を胴型に嵌め込み、下型と胴型とを一緒に移送、停留させてもよいし、上型を胴型に嵌め込み、上型と胴型とを一緒に移送、停留させてもよい。
プレス成形型は、下型と上型により構成するが、胴型を使用する場合は、下型、上型、胴型により構成する。上下型でプレスされたガラスは、上下型の成形面で囲まれた空間(胴型を用いる場合は、上下型の成形面と胴型で囲まれた空間)に押し広げられ、レンズブランクに成形される。その後、上型を離型し、上方の待機位置に戻し、レンズブランクを載せた下型をプレス位置から搬出する。
なお、ダイレクトプレスでは、粘度が1〜10dPa・s程度の状態のガラスゴブをプレス成形する。プレス時間は、レンズブランクの大きさにもよるが概ね10秒未満である。
次いで、レンズブランクを変形しない温度まで冷却し、下型がレンズブランク取り出し位置に停留している間に下型から取り出してアニール炉に入れる。成形したレンズブランクは、一般には、レアと呼ばれる連続式アニール炉内を通ってアニールされ、歪が取り除かれたレンズブランクが出来上がる。
レンズブランクを取り出した後、下型は再びキャスト位置に移送されて、上記工程を繰り返す。各下型について順次、上記工程を繰り返すことにより、連続して流出する熔融ガラスからレンズブランクを次々に成形する。
同一仕様のレンズブランクを生産する上から、ガラスゴブの重量及び下型上の供給時の温度、ガラスゴブを下型上に供給してからプレス成形を開始するまでの時間、プレス成形に費やす時間などを一定にすることが望まれる。そのためには、熔融ガラスの流出スピードを一定に維持するとともに熔融ガラス塊を分離する周期を一定にし、各下型の移送、停留を同期して行うことが好ましい。
具体例としては、複数個、例えば6〜20個の下型をターンテーブルの回転軸を中心とする円周上に配置し、ターンテーブルをインデックス回転して各下型をキャスト位置、プレス位置、レンズブランク取り出し位置などに順次、移送、停留させる。
[リヒートプレス]
リヒートプレスでは、熔融ガラスを鋳型に鋳込んでガラスブロック、ガラス板、ガラス棒などに成形し、アニールした後、切断、又は、割断してカットピースと呼ばれるガラス片を作り、このカットピースをそのまま、又は、エッジを丸めたり、バレル研磨したり、研削、研磨したものをガラスゴブとして用い、加熱、軟化してプレス成形する。
リヒートプレスでも複数の下型を用い、下型上にガラスゴブを配置し、軟化炉と呼ばれる加熱炉内を通過させる。軟化炉内に配されたヒーターにより、ガラスゴブ及び下型は軟化炉内を通過する間に加熱され、ガラスゴブが軟化状態になる。
軟化したガラスゴブを載せた下型が、軟化炉を通過し、プレス位置に送り込まれ、プレス位置の上方で待機する上型を下降して、上下型によりガラスをプレスして、ガラスを上下型成形面の間の空間に押し広げレンズブランクに成形する。リヒートプレスでも、ダイレクトプレス同様に胴型を用いてもよい。
なお、リヒートプレスでは粘度が10dPa・s〜105.6dPa・s、好ましくは10dPa・s〜105.4dPa・sのガラスゴブをプレス成形する。プレス時間は概ねダイレクトプレスと同様である。
プレス成形後、上型は元に位置に待機し、下型上で成形したレンズブランクを冷却し、外力により変形しない温度になってから、下型から取り出し、アニール炉に入れてアニールする。レンズブランクを取り出して空になった下型には再度、ガラスゴブを供給して加熱、軟化し、プレス成形する。
以上の工程を複数の下型を用いて順次行うことで、レンズブランクを量産することができる。
以上のようなダイレクトプレス、リヒートプレスのいずれにおいても、プレス成形型の材料には、FCD450などの鋳鉄や、SUS303などのステンレスなど公知の耐熱性型材を使用することができる。
また、ダイレクトプレス、リヒートプレスのいずれにおいても、プレス成形直後のレンズブランクは、下型の上で、上型から離型した状態で冷却される。本実施形態にあっては、ダイレクトプレスによってレンズブランクを製造するものとし、プレス成形直後のレンズブランクは、下型の上で、上型から離型した状態でレンズブランクの肉厚部の冷却を促進する。
肉厚部の冷却を促進するには、上型から離型したレンズブランクの肉厚部表面に冷却ガスを吹きかけて行うこともできるが、冷却ガスの吹きかけだけで肉厚部の温度を十分低下させようとすると、冷却ガスを強く吹き付けなくてはならず、冷却ガスの風圧によってレンズブランク表面が窪んでしまう。
そこで、本実施形態では、レンズの光学機能面に加工されることになるレンズブランクの主表面をプレス成形する成形面、すなわち、下型成形面、及び/又は、上型成形面に、凹部及び/又は凸部を設けたプレス成形型を用いる。そして、プレス成形工程において、成形面に設けられた凹部及び/又は凸部をガラスゴブに転写する。
このようにすることで、成形面に設けられた凹部及び/又は凸部は、離型するまでレンズブランク(ガラスゴブ)と密着した状態を保つ。このため、レンズブランクの全体的な形状そのものに変化はないが、成形面とレンズブランクとの接触面積は、成形面に凹部や凸部を設けなかった場合に比べて大きくなる。
例えば、成形面の中心点を中心にして同心円状に複数本の溝を形成する場合、前記同心円の直径方向から見た溝の断面形状が、二辺を斜面とし、一辺を開口部とする正三角形であるとすると、このような溝を設けることにより、成形面とレンズブランク(ガラスゴブ)との接触面積を2倍にすることができる。
なお、上記のように溝を設ける場合、溝そのものを凹部と考えてもよいし、溝と溝の間の部分を凸部と考えてもよい。
本実施形態では、プレス成形型よりも高温の軟化状態にあるガラスゴブをプレス成形するから、プレス成形型の温度はプレス成形直後のレンズブランクの温度より低く保たれている。このため、上記接触面積を増加させることにより、レンズブランクから成形型への熱伝導を高めて、接触面におけるレンズブランクの冷却を促進することができる。これによって、後に行われるアニール工程により形状精度を低下させることなく、所望形状のレンズブランクを製造することが可能となる。
ここで、レンズブランクに転写される凹部や凸部は、最終製品のレンズにはないものであって、凹部や凸部がレンズの形状に反映されることはない。成形面に垂直な方向から見たときの凹部、凸部の平面視上の大きさ(以下、「平面視上の大きさ」といい、上記溝の例では溝の幅、すなわち、上記断面における開口部の長さとなる)は、成形面全体の大きさに比べて十分小さく、例えば、凹部、凸部の平面視上の大きさは、1mm以下とすることが好ましく、0.7mm以下とすることがより好ましい。また、凹部、凸部の平面視上の大きさが小さすぎると、凹部にガラスが進入しにくくなったり、上記冷却促進効果が薄れてしまったりするため、凹部、凸部の大きさは、それぞれ0.2mm以上とすることが好ましく、0.4mm以上とすることがより好ましい。
凹部の深さ、凸部の高さは、それぞれ0.1〜1mmとすることが好ましく、0.1〜0.5mmとすることがより好ましい。凹部と凸部が隣接する場合、凸部と凹部の高低差を凹部の深さ、又は、凸部の高さと見なす。前記高さ又は深さが大きすぎると、取りしろを必要以上に大きくしなければならず、研磨を含む加工の手間と時間が増大し、レンズにならずに廃棄する加工屑(スラッジ)も増大するので、コストや環境面から好ましくない。一方、前記高さ又は深さが小さすぎると、レンズブランクと成形面との接触面積を大幅に増加できないので好ましくない。
なお、取りしろの厚さは、0.2〜1.5mmとすることが好ましい。上記成形面の凹部、凸部をプレス成形によってガラスブランクに転写してできる部分を転写成形部と呼ぶが、取りしろの厚さは、転写成形部に転写される凹部の深さ、凸部の高さよりも大きくとる。
ダイレクトプレス、リヒートプレスとも、プレス成形直前のガラスゴブの表面は非常に高温になっている。そのため、高温で著しい揮発性を示すガラス成分(例えば、アルカリ金属、ホウ酸、フッ化物など)を含むガラスゴブ表面から、前記成分が揮発して表面付近に脈理と呼ばれる光学的に不均一な部分が生じる。脈理はレンズ性能を低下させる要因になるため除去する必要があるが、脈理は取りしろの範囲に限定され、上記加工により脈理は完全に除去されることになる。
なお、一様な深さに脈理が存在するガラスゴブを、凸部を有する成形面でプレスすると、凸部によりプレスした部分で脈理が深層まで入り込んでしまうように思えるが、実際にはプレス時に凸部がガラスゴブ表面層を押し分けるように進入するため、凸部でプレスした部分の脈理が深く入ることはない。
ところで、両凸レンズ、平凸レンズ、凸メニスカスレンズなどの正の屈折力を有するレンズは、レンズ中心部分(光軸とその周辺部)における厚みが、レンズ周辺部分の厚みよりも厚くなる。このようなレンズを作るためのレンズブランクもレンズ形状に近似した形状になっており、中心部分が周辺部分より肉厚になっている。つまり、正の屈折力を有するレンズを作るためのレンズブランクは、中心部分が肉厚部に、周辺部分が肉薄部になっている。
一方、両凹レンズ、平凹レンズ、凹メニスカスレンズなどの負の屈折力を有するレンズは、レンズ中心部分における厚みが、レンズ周辺部分の厚みよりも薄くなり、近似形状を有するレンズブランクも中心部分が周辺部分より肉薄になっている。つまり、負の屈折力を有するレンズを作るためのレンズブランクは、中心部分が肉厚部に、周辺部分が肉薄部になっている。
肉厚部内部の温度は、肉薄部内部の温度より下がりにくく、このことがアニール時のレンズブランク変形の要因になっている。そこで、肉厚部と肉薄部を有するレンズブランクの作製にあたり、成形面の肉厚部をプレスする部分に、前述の凹部及び/又は凸部を設け、肉厚部をプレスする部分と肉厚部との接触面積を増加させ、肉厚部の冷却を促進する。
なお、成形面の肉薄部をプレスする部分にも前述の凹部及び/又は凸部を設け、肉薄部の冷却を促進してもよいが、肉薄部が急冷による収縮により破損することがある。このような現象はカン割れと呼ばれ、膨張係数が大きいガラスの場合に顕著である。したがって、カン割れを防止する上からは、肉薄部をプレスする部分には前記凹部や凸部を設けないことが好ましい。
上下型のいずれの成形面に凹部及び/又は凸部を設けるかは、次のようにして決定すればよい。選択肢は、凹部及び/又は凸部を上型成形面のみに設ける場合(以下、「ケース1」という)、下型成形面のみに設ける場合(以下、「ケース2」という)、上型及び下型の成形面に設ける場合(以下、「ケース3」という)の3つである。
ケース1は、ダイレクトプレスの説明で述べたように、一個の上型を複数の下型で共有する場合に有効である。この方式は、一個の上型成形面に凹部及び/又は凸部を形成すれば、複数の下型成形面に凹部及び/又は凸部を形成する手間が省ける。また、プレス成形時にガラスが延びにくい場合にも、この方式は有効である。下型成形面に凹部及び/又は凸部はガラスの延びに対する抵抗となるからである。ケース2は、上型との離型を行った後、下型成形面上のレンズブランクを取り出す場合、ケース1よりもレンズブランクと凹部及び/又は凸部との接触時間を長くすることができ、ケース1よりも肉厚部の冷却効果を高めることができる。ケース3は、肉厚部の冷却効果を最も高めることができる方式である。
ケース1〜3の選択にあたっては、レンズブランクの形状、寸法、使用するガラスの性質、下型、上型の数などを考慮して決めればよい。
凹部や凸部を転写してできたレンズブランクの凸部や凹部は、レンズには不要であるばかりか、レンズの機能を損なうものなので、研磨を含む加工により除去される取りしろ内に局在して転写させて、前記加工により完全に除去する。
[レンズブランク]
次に、本発明を適用するのが、特に有効なレンズブランクについて説明する。
まず、寸法に関して言えば、30mm以上のレンズブランクの作製に好適であり、40mm以上のレンズブランクの作製により好適であり、50mm以上のレンズブランクの作製にさらに好適である。このように、直径が大きいレンズブランクでは、プレス成形直後に、肉厚部と肉薄部の間、又は、表面と内部の間に大きな温度差が生じやすい。このような温度差が、前述のアニール時のブランクの変形の原因となる。
本発明によれば、このように大きな温度差ができやすいレンズブランクでも、前記温度差を低減し、アニール時の変形を防止、低減することができる。
次に、レンズブランクを構成するガラスに関して言えば、フツリン酸ガラス、ホウ酸ランタン系ガラス(ガラス成分として、BとLaを含むガラス)、リン酸ガラスのいずれかからなるレンズブランクの作製に好ましく、フツリン酸ガラスまたはホウ酸ランタン系ガラス(ガラス成分として、BとLaを含むガラス)への適用がより好ましく、フツリン酸ガラスへの適用がさらに好ましい。
上記ガラスは、プレス成形直後のレンズブランクの温度から、ガラス転移温度までの温度領域における温度変化に対する粘度変化が小さいガラスである。こうしたガラスは、他のガラスに比べて一定温度だけ冷却しても粘度の増加量が小さく、固化しにくい。そのため、アニール時の加熱によってブランクが自重で変形しやすい。そこで、最も冷却が遅れるブランクの肉厚部、又は、内部の冷却を本発明の方法によって促進することにより、上記ガラスからなるレンズブランクでも、アニール時の変形を防止、低減することができる。
[アニール工程]
次に、レンズブランクのアニールについて説明する。プレス成形直後に、レンズブランクをアニール炉に入れて、レンズブランクを形成するガラスの転移温度でアニールを開始する。アニール時のレンズブランクの降温スピードは毎時10℃〜毎時50℃の範囲とすることが好ましい。レンズブランクの温度が、歪点より低い温度になってからレンズブランクをアニール炉から取り出し、アニールを終了する。
アニールは、レンズブランク内部の歪を低減、又は、除去して、後述する研磨を含む加工時のレンズブランクの破損を防止する役割を果たす他、屈折率を微調整する役割も果たす。アニール炉には公知の連続式アニール炉(レア炉)やバッチ式アニール炉などを用いればよい。
アニール後のレンズブランクは、公知の方法で研削、研磨してレンズに仕上げる。このとき、プレス成形時に成形面の凹部及び/又は凸部を転写して形成された転写成形部を除去する。特に、レンズの光学機能面に前記転写成形部が残るとレンズとしての機能が損なわれるため、光学機能面上の転写成形部は研磨を含む加工によって完全に除去することが好ましい。
こうして得たレンズ表面には、必要に応じて反射防止膜などをコーティングしてもよい。
[第二実施形態]
次に、本発明に係るレンズブランクの製造方法の第二実施形態について説明する。本実施形態では、肉厚部と肉薄部とを有するレンズブランクを製造するにあたり、プレス成形工程において、レンズブランクの主表面を成形する成形面を有するプレス成形型を用いて、プレス成形型よりも高温とされた、軟化状態にあるガラスゴブをプレス成形することにより、レンズブランクの主表面に、プレス成形型の成形面を転写した後に、レンズブランクの肉厚部に相当する部分と成形面との接触面における冷却が、レンズブランクの肉薄部に相当する部分と成形面との接触面における冷却よりも促進されるようにしてレンズブランクを冷却する。
前述した第一実施形態では、レンズブランクの肉厚部に相当する部分と成形面との接触面における冷却を促進するのに、成形面のうちレンズブランクの肉厚部に相当する部分を成形する部位に、凹部及び/又は凸部を設け、当該部位とレンズブランクの肉厚部に相当する部分との接触面積を増加させるようにした。
これに対して、本実施形態では、このような凹部や凸部を設けることと併用して、以下の冷却促進手段を採用する。
例えば、肉厚部をプレスする型材と、肉薄部をプレスする型材とを用いて下型を組立て、肉厚部を強制冷却(例えば、空冷、水冷、又はこれらの併用)するとともに、肉薄部を自然冷却(強制冷却をしない)するか、又は、肉厚部と肉薄部とをともに強制冷却しても、肉薄部の冷却能力を肉厚部に比べて小さく設定することができる。
さらに、肉厚部をプレスする成形面を形成する材料と、肉薄部をプレスする成形面を形成する材料とを異なる材質のものとし、肉厚部をプレスする成形面を形成する材料の熱伝導度が、肉薄部をプレスする成形面を形成する材料の熱伝導度よりも大きくなるようにすることもできる。これらの材料は、熔融ガラスの温度に対して十分耐熱性があればよく、このような条件の中から公知の材料を適宜選択すればよい。
本実施形態は、冷却促進手段において第一実施形態と異なるが、それ以外は第一実施形態と同様の方法とすることができるので、他の構成についての詳細な説明は省略する。
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明する。
図1は、平凸レンズを研削、研磨によって作製するためのレンズブランク1の断面形状(光軸Cを含む平面における断面)を示す説明図である。
図中R1で示す面は、凸面に仕上げられる第一面であり、曲率半径84.0mmの球面としてある。図中R2で示す面は、平面に仕上げられる第二面であり、曲率半径550.0mmの球面としてある。また、直径は90mm、コバ厚は5.3mmである。そして、このレンズブランク1の取りしろは、1.0mmである。さらに、このレンズブランク1は、光軸Cを中心にして半径35mm以内の範囲が肉厚部2、その外側が肉薄部3としてある。
このようなレンズブランク1を製造するにあたり、まず、鋳鉄(FCD450)からなる型材を加工して、上型10、下型21、胴型22を作製する。図2は、下型21を胴型22に嵌め込み、上型10と対向配置したときの垂直断面を示す説明図である。上型成形面10aは、レンズブランク1の第一面R1を反転した球面形状に、下型成形面21aは、同第二面R2を反転した球面形状に加工する。
なお、プレス成形型を構成する型材には、上記鋳鉄の他、ステンレス(例えば、SUS303)などを使用してもよい。
次いで、上型成形面10aの中心から半径35mmの円で囲まれた領域に、複数の溝が同心円状に形成されるように、NC旋盤で加工した。このとき、溝の断面形状は、V字型、溝の幅(開口幅)は0.6mm、深さは0.2mmとした。また、溝の数は全部で53本とした。これらの溝を同心円状溝群30と呼ぶことにする。
図3は、同心円状溝群30の一部断面を拡大したものであり、図2中鎖線で囲む部分に相当する。加工の都合上、中心部に溝は設けないが、同心円状溝群30が形成される範囲に比べれば、その面積は非常に小さいので、肉厚部2の冷却促進に支障はない。
本実施例では、ダイレクトプレスによりレンズブランク1を成形するが、プレス成形が終了した後、直ちに上型10側の面(第一面R1)を離型し、下型21側の面(第二面R2)は離型せずに、下型21上で取り出し時の外力に変形しない程度にまでレンズブランク1を冷却する。
上記冷却過程で、第一面R1の肉厚部2には同心円状溝群30が転写成形される。この同心円状溝群30により、第一面R1における肉厚部2と、上型成形面10aの接触面積は1.2〜1.5倍に増える。その結果、第一面R1側における肉厚部2から下型21への熱伝導を増加させ、冷却を大幅に促進することができる。
このとき、第二面R2側からは、冷却ガスを吹付けるなどして肉厚部2の冷却を促進してもよいが、高圧の冷却ガス吹付けにより第二面R2が変形しないようガス吹付け時の圧力を調整する。
本実施例では、胴型22内に下型21を嵌め込んだ十二組の金型20をターンテーブル上の同一円周上に等間隔に配置する。そして、各金型20が十二の停留位置に順次移送、停留するように、ターンテーブルをインデックス回転させる。このうち一つの停留位置をキャスト位置とし、上方に熔融ガラスの流出パイプを配するとともに、パイプから一定スピードで流出する熔融ガラス流を一定周期で切断するシアと呼ばれる切断刃を配置する。
パイプから流出した熔融ガラス流の下端は、キャスト位置に停留する金型の下型成形面の中央付近によって受け止められ、この状態でシアにより熔融ガラス流を途中から切断し、下型成形面21a上に所望量の熔融ガラスゴブを得る。次に、ターンテーブルをインデックス回転して、ガラスゴブを載せた金型20を上方で上型10が待機するプレス位置と呼ばれる停留位置に移送、停留させる。そして、金型20が停留しているときに、上型10を下降して、下型21とともにガラスゴブをプレスし、上型10、下型21、胴型22で囲まれた空間にガラスを満たしてレンズブランク1を成形する。プレス時間は、2〜3秒の範囲で最適化する。
次いで、上型10を上昇させて、レンズブランク1の上面(第一面R1)を上型10から離型し、前述のように下型21上でレンズブランク1を冷却し、金型20がキャスト位置に戻る前の停留位置で、バキュ−ムロボットを用いてレンズブランク1の第一面R1を吸引して下型成形面21aから取り出す。どの停留位置でレンズブランク1を取り出すかは、前述のように、取り出し時に加わる外力によりレンズブランク1が変形しない温度まで冷却されているかを目安に決めればよい。レンズブランク1が取り出された金型20は、再度、キャスト位置へ移送され、上記工程が繰り返し行われる。
このような工程を十二組の金型20を用いて繰り返し行うことで、連続して流出する熔融ガラス流からレンズブランクを量産することができる。
本実施例で使用したガラスは、屈折率ndが1.49700、アッベ数νdが81.61の光学特性を有し、ガラス転移温度が455℃のフツリン酸ガラスであり、下型成形面21aに供給する際(キャスト時)のガラスの温度及び粘度は、約900℃、30dPa・sとし、下型21、胴型22、上型10の温度は約400℃に設定した。
なお、本実施例では、キャスト時のガラスの温度がさほど高くないので、プレス成形型の強制冷却は行っていない。
下型21上から取り出したレンズブランク1の上下面を反転して、第一面R1を下にして連続式アニール炉に入れ、ガラス転移温度から徐々に低い温度に設定されたゾーンへと移動しながら毎時30℃のスピードで室温付近まで徐冷した。
こうして得られたアニール前のレンズブランク(ホットサンプル)1と、アニール後のレンズブランク(エンドサンプル)1の形状を評価した。
まず、曲率半径が84.0mmの凹状球面をもつアールゲージAを、ホットサンプル、エンドサンプルのそれぞれの第一面R1に当接させ、曲率半径が550.0mmの凹状球面をもつアールゲージBを、ホットサンプル、エンドサンプルのそれぞれの第二面R2に当接させた。
レンズブランク1の光軸Cに相当する部分を中心、コバ4に近い部分を周辺と呼び、レンズブランク1の中心とアールゲージA,Bが当接した状態で、ブランク1の周辺とアールゲージA,Bの間にできる隙間を外スキ、レンズブランク1の周辺とアールゲージA,Bが当接した状態で、レンズブランク1の中心とアールゲージの間にできる隙間を中スキと呼ぶ。
外スキがある場合、アールゲージA,Bに当接したレンズブランク1表面の曲率半径はアールゲージA,Bの曲率半径よりも小さく、中スキがある場合、アールゲージA,Bに当接したレンズブランク1表面の曲率半径はアールゲージの曲率半径よりも大きいことになる。
外スキや中スキがあっても、目安として、外スキの場合は、その隙間が取りしろの40〜50%以下、中スキの場合は、その隙間が取りしろの60〜70%以下であれば、研削、研磨で目的とする光学機能面に仕上げることができるが、隙間が大きすぎると、取りしろが足りず所望形状のレンズに仕上げることができない。
本実施例では、千個のレンズブランク1を試験的にプレス成形し、ランダムにホットサンプルとエンドサンプルをそれぞれ五十個採取して、アールゲージA,Bを使用した形状評価を行った。
その結果、ホットサンプル、エンドサンプルとも、全てのサンプルで第一面R1の外スキは0.3mm以下、中スキは0.4mm以下におさまっていた。これは、取りしろ1.0mmの研削、研磨で所要の形状のレンズに仕上げることが可能な形状精度である。
このようにして得たアニール済みレンズブランク1を研削、研磨して、図1に示した形状のブランクより深さ1.0mmの取りしろを取り去った形状のレンズを作製した。
なお、上記実施例では、上型成形面10aのみに同心円状溝群30を設けたが、下型成形面21aのみ、又は、上型成形面10aと下型成形面21aの両方に同心円状溝群30を設けてもよい。
[比較例]
成形面に同心円状溝群がない上型を用いた以外は、実施例と同様にして千個のレンズブランクをプレス成形し、各五十個のホットサンプルとエンドサンプルについて形状評価を行ったところ、ホットサンプルについては実施例の評価結果とほぼ同じ結果であったが、エンドサンプルでは第一面R1の中スキ、第二面R2の外スキとも0.8〜1.2mmと大きなってしまった。これは、第一面R1を下にしてブランクをアニールしたので、自重によりブランク周辺がだれてしまい、第一面R1の曲率半径が大きくなるとともに、第二面R2の曲率半径が小さくなったことによると考えられる。
このようなエンドサンプルを所望形状のレンズに仕上げるには、取りしろが1.0mmでは足りず、結局、これらレンズブランクは不良品となってしまった。
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
本発明によれば、アニールにより形状精度を低下させず、所望形状のレンズブランクを製造すること、ならびに、このレンズブランクからレンズを効率よく製造することができる。
レンズブランクの一例における断面形状を示す説明図である。 プレス成形型の一例における垂直断面を示す説明図である。 図2中鎖線で囲む部分の拡大図である。
符号の説明
1 レンズブランク
2 肉厚部
3 肉薄部
10 上型
10a 上型成形面
20 金型
21 下型
21a 下型成形面
30 同心円状溝群

Claims (6)

  1. 研磨を含む二次加工が施されてレンズに仕上げられるレンズブランクを、少なくともプレス成形型を用いて行うプレス成形工程と、アニール工程とを経て製造するにあたり、
    前記プレス成形工程において、
    連続して流出する熔融ガラス流から熔融ガラス塊を前記プレス成形型上に分離し、前記レンズブランクの主表面を成形する前記プレス成形型の成形面に凹部及び/又は凸部を設けた前記プレス成形型を用いて、前記プレス成形型よりも高温とされた粘度が1〜10 dPa・sであるガラスをプレス成形することにより、
    前記レンズブランクの主表面に前記成形面を転写するとともに、前記二次加工により除去される前記レンズブランクの主表面の取りしろ内に局在するように前記凹部及び/または凸部を転写し、
    前記レンズブランクが肉厚部と肉薄部とを有し、
    前記プレス成形型の成形面のうち、前記肉厚部に相当する部分を成形する部位に前記凹部及び/又は凸部を設け、当該部位と前記肉厚部に相当する部分との接触面積を増加させることを特徴とするレンズブランクの製造方法。
  2. 直径が30mm以上のレンズブランクを作製する請求項に記載のレンズブランクの製造方法。
  3. 前記レンズブランクの主表面に転写される前記凹部及び/または凸部の大きさは、前記成形面に垂直な方向から見たときの溝幅が1mm以下であり、かつ、0.2mm以上である請求項1〜2のいずれか1項に記載のレンズブランクの製造方法。
  4. 前記レンズブランクの主表面に転写される前記凹部の深さ、又は前記凸部の高さが、0.1〜1mmである請求項1〜3のいずれか1項に記載のレンズブランクの製造方法。
  5. 前記成形面に設けられた前記凹部及び/又は凸部は、離型するまで前記ガラスと密着した状態を保つ請求項1〜4のいずれか1項に記載のレンズブランクの製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載のレンズブランクの製造方法によりレンズブランクを作製し、作製されたレンズブランクに対し、研磨を含む二次加工を施してレンズに仕上げることを特徴とするレンズの製造方法。
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