JP4426740B2 - ガラス成形品の製造方法、光学部品の製造方法、プレス成形装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は溶融ガラスからプレス成形によって光学部品ブランクなどのガラス成形品を製造する方法並びにプレス成形装置、該ガラス成形品に研削、研磨加工を施して光学部品を作製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス原料を溶解して得られた溶融ガラスをガラスが軟化状態にある間に金型などでプレス成形し、ガラス成形品を製造する方法はダイレクトプレス法と呼ばれ、生産性の高い優れた方法として知られている。この方法によってガラス製光学部品など極めて高い形状精度を要求される部品を作る場合は、ダイレクトプレス法によって光学部品の形状に近似する成形品を作り、その成形品に研削、研磨加工を施して光学部品に仕上げる手法が採られている。ダイレクトプレス法では、流出パイプから流出する溶融ガラスを必要量、プレス成形用の下型上に受け、受けたガラスが軟化状態にあるうちに下型に対向する上型と前記下型によって加圧されプレス成形される。プレス後、上型を上方に待避し、得られたガラス成形品は下型上でガラス転移温度付近まで冷却された後、下型から取出される。このようにして得られた成形品は必要に応じてアニールされ、研削、研磨加工が施されてレンズなどの光学部品となる。
【0003】
ガラスをプレス成形して光学部品を作製する方法として、上記方法とは別に精密プレス成形あるいはモールドオプティクス成形と呼ばれる方法が知られている。この方法は、極めて高い形状精度のプレス成形品を作ることができる。したがって、成形品の研削、研磨工程を無くすことができるという長所がある反面、成形可能なガラスが低軟化点のガラスに限られる、プリフォームと呼ばれるガラス成形体を作らなければならない、溶融ガラスを室温まで冷却した後、再度加熱しなければならない、製造装置が複雑などの問題点もある。
したがって、これらの方法は必要に応じて使い分けられているというの現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ダイレクトプレス法でレンズなどの光学部品を作製する場合、上記のように成形品の研削、研磨加工が必要になる。そのため、どうしてもスラッジと呼ばれるガラスの研削、研磨くずが発生してしまう。このようなスラッジは産業廃棄物になるため、排出量の削減が強く求められている。スラッジを削減するためには、成形品の形状を最終製品の形状により近似させるとともに、内部は勿論、成形品表面の欠陥も極力低減し、欠陥除去による研削、研磨量の増大を防ぐ必要がある。
【0005】
近年の様々な技術開発により、このような要求は満たされつつあるが、成形品の形状によっては上記要求を満たすことが難しいものもあった。
例えば、凹レンズ、凹メニスカスレンズなどを成形しようとする場合、プレス下型の成形面を凸形状にしなければならないことがある。このような成形を従来のダイレクトプレス法で行おうとすると、溶融ガラスを凸形状の下型成形面の中央部に供給することになる。
【0006】
下型成形面の中央にキャストされた溶融ガラスは、流動し、下型外周部に達する。そこで、下型外周に取付けられた胴型に接して急冷され、粘度が急激に上昇する。通常、このような流動方向には偏りがあるため、下型外周部に達したガラスの粘度上昇には、場所によってバラツキが生じる。ガラスの粘度上昇が大きな部分では、プレス時にガラスが十分広がらず、ガラスの型転写精度が甘くなる。そのため、十分な球面精度を得るのが難しくなることがあった。また、下型成形面の中央では供給された溶融ガラスが外周方向に流動し、中央に溶融ガラスが溜まりにくい。このような場所に溶融ガラスが供給されるので、下型成形面の中央部付近のガラスに脈理が発生しやすいという問題もあった。
このような転写精度の低下、脈理などの欠陥の発生は、スラッジ低減を妨げる原因となるだけでなく、甚だしい場合には、不良品になってしまう。
【0007】
ダイレクトプレス法で凹レンズ、凹メニスカスレンズなどの光学部品を成形するさいに生じる上記問題を解決する手段として、例えば、特開平9-221330号公報には、溶融ガラスから溶融ガラス塊を形成するガラス塊受け型上の溶融ガラス塊を、上下反転させて成形型に供給し、プレス成形する方法が開示されている。溶融ガラス塊は、ガラス塊受け型の受け面に吸着させて上下面を反転させ、次いで受け型の受け面からガスを噴出させて、溶融ガラス塊を成形型の下型上に落下させる。この方法によれば、プレス下型の成形面を凸形状にしても、受け型の受け面は平坦状または凹状とすることができるため、上記のような問題が生じることはない。
【0008】
ところが、上記方法では、溶融ガラス塊の反転供給のために受け型の受け面に溶融ガラス塊を吸着させる。溶融ガラス塊を吸着させるための受け型の受け面は、ガスの噴出及び吸着を可能とするために多孔質材料からなっている。そのため、吸引時に溶融ガラス塊の一部が受け面から多孔質材料に吸い込まれ、目詰まりを起こす場合がある。特に、近年需要が増えている低粘性のガラスではこの問題が顕著になる。
また、溶融ガラス塊が大型化するとガラス塊の重みに吸引力が耐えきれなくなり、実質的に移送不能となってしまう。特開平9-221330号公報に記載の実施例では成形対象のガラス塊は2.5gである。ところが、30〜100g程度のガラス塊のプレス成形に対する需要もあり、このような大型のガラス塊を上記方法で反転移送することは事実上できなかった。
【0009】
そこで本発明は、低粘性のガラスや大型のガラス成形品であっても、形状の如何を問わずダイレクトプレス法により成形し得る、ガラス成形品の製造方法を提供すること、及びこのガラス成形品の製造方法に適したプレス成形装置を提供することを第1の目的とする。
さらに本発明は、上記方法によって作製されたガラス成形品から光学部品を生産する光学部品の製造方法を提供することを第2の目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(請求項1)
溶融ガラス流から溶融ガラスをガラス塊成形型に受けて、ガラス塊に成形する第1の工程、
少なくとも下型及び上型を含むプレス成形型の下型成形面上に上記ガラス塊を移送する工程であって、前記移送は、上記ガラス塊の上下面が反転するように行う第2の工程、及び
前記ガラス塊を前記プレス成形型の少なくとも下型及び上型でプレス成形してガラス成形品を得る第3の工程を含み、
第2の工程において、成形されたガラス塊を、該ガラス塊の下面がガラス塊成形型の上端面より高くなるように、ガラス塊成形型の下型で押し上げ、押し上げられたガラス塊を少なくとも側面においてチャックにより保持し、ガラス塊の上下面を反転させることを特徴とするガラス成形品の製造方法。
(請求項2)
プレス成形型への移送後、さらなる加熱をすることなしに、ガラス塊の平均粘度が102〜104ポアズの範囲にあるときにプレス成形を行う請求項1に記載の製造方法。
(請求項3)
プレス成形型への移送後、ガラス塊を上方から加熱して、ガラス塊の平均粘度が102〜104ポアズの範囲にあるときにプレス成形を行う請求項1に記載の製造方法。
(請求項4)
プレス成形型の下型成形面は凸状または凹状である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
(請求項5)
請求項1〜4のいずれかに記載の方法により製造されたガラス成形品を研削、研磨加工して光学部品を作製する光学部品の製造方法。
(請求項6)
溶融ガラスからガラス塊を成形するためのガラス塊成形型、前記ガラス塊成形型に溶融ガラスを供給するための溶融ガラス供給部、ガラス塊をプレス成形するための少なくとも上型および下型を備えたプレス成形型、及びガラス塊をガラス塊成形型からプレス成形型に移送するための移送手段を含むプレス成形装置であって、
前記ガラス塊成形型は胴型及び下型(但し、前記下型は、成形されたガラス塊を、該ガラス塊の下面がガラス塊成形型の上端面より高くなるように押し上げ可能なように上下動し得る)からなり、かつ
前記移送手段は、ガラス塊の少なくとも側面を保持するためのチャックを有し、かつチャックにより保持したガラス塊の上下面を反転させてプレス成形型の下型に移送し得る反転機構を有することを特徴とするプレス成形装置。
(請求項7)
プレス成形型の下型上のガラス塊上面を加熱するための加熱手段を有する請求項6に記載のプレス成形装置。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に発明の実施の形態について説明する。
本発明のガラス成形品の製造方法は、以下の第1〜第3の工程を含む。
第1の工程:溶融ガラス流から溶融ガラスをガラス塊成形型に受けて、ガラス塊に成形する。
第2の工程:少なくとも下型及び上型を含むプレス成形型の下型成形面上に上記ガラス塊を移送する工程であって、前記移送は、上記ガラス塊の上下面が反転するように行う。
第3の工程:前記ガラス塊を前記プレス成形型の少なくとも下型及び上型でプレス成形してガラス成形品を得る。
【0012】
上記第1〜第3の工程を、本発明のプレス成形装置の一例を示す図1に基づいて説明する。
本発明のプレス成形装置1は、溶融ガラスからガラス塊を成形するためのガラス塊成形型2、ガラス塊成形型2に溶融ガラスを供給するための溶融ガラス供給部(図示せず)、ガラス塊をプレス成形するための少なくとも上型および下型を備えたプレス成形型6、及びガラス塊をガラス塊成形型からプレス成形型に移送するための移送手段4を含む。
【0013】
[第1の工程]
プレス成形装置1では、溶融ガラス供給部は、位置Aにあり、溶融ガラスを一定スピードで連続的に流出する流出パイプと流出パイプから流出した溶融ガラス流を切断するシア機構を備えている。流出パイプの下方には、シア機構により切断された所定重量の溶融ガラスを受けるためガラス塊成形型2が逐次移送される。図1では6個のガラス塊成形型2がターンテーブル3上に等間隔に載置され、ターンテーブル3をインデックス駆動することにより、ガラス塊成形型2に次々と溶融ガラスを供給(以下、キャストという。)して行く。溶融ガラスは、溶融ガラス流から切断され分離された後にガラス塊成形型2に受けることもできるが、溶融ガラス流の先端がガラス塊成形型2に受けられた後に切断され分離されてもよい。流出パイプから流出するガラスの粘度(キャスト時の粘度)は10ポアズ以下、例えば、2〜8ポアズ、好ましくは4〜6ポアズになるように調整され、溶融ガラスを受けるガラス塊成形型の温度は、ガラスのガラス転移温度をTgしたとき、(Tg−50℃)〜(Tg−30℃)に調温されることが適当である。なお、ガラス塊成形型は鋳鉄製やステンレス鋼製などであることができる。
【0014】
図1の位置Aでキャストされた溶融ガラスのガラス塊成形型に接触した面から溶融ガラスのもつ熱量が急速に奪われる。溶融ガラスは位置Bに達するまでにガラス塊に成形される。このとき、ガラス塊成形型に接しているガラス塊下面の温度は、ガラス塊成形型への放熱のため、ガラス塊上面の温度よりも低くなる。しかし、ガラス塊の平均温度はガラスの軟化点よりも高く維持される。
【0015】
[第2の工程]
位置Bに達したガラス塊は、ガラス塊移送手段4により、上下面を反転し、ガラス塊成形型上において上面であった面が下面に、下面であった面が上面になるように、位置Cに停留しているプレス成形型6の下型6a上に移送される。
具体的には、図2に示すように、成形されたガラス塊10[図2(1)]を、該ガラス塊の下面がガラス塊成形型2(図2では胴型2b)の上端面より高くなるように、ガラス塊成形型2の下型2aで押し上げ[図2(2)]、押し上げられたガラス塊10を少なくとも側面においてチャック5により挟み込んで保持する[図2(3)〜(4)]。この状態は、図1の(1)の状態に対応する。次いで、ガラス塊移送手段4が有する反転機構を駆動させてチャック5を垂直方向に180°回転さて[図1の(1)→(2)→(3)]、ガラス塊10の上下面を反転させて、図1(3)の位置Cにあるガラス成形型6に載せる。
尚、ガラス塊10を取り出した後のガラス塊成形型2[図2(5)の状態]は、図2(6)に示すように、下型2aが元の位置に下降し、ターンテーブル3の回転に伴って、再び位置Aに順次移動する。
【0016】
ガラス塊の上下面反転時にはガラス塊に力が加わるので、ガラス塊の表面の粘度が低すぎるとガラスがダレて、プレス成形型6にうまく移せなかったり、ガラス塊10をチャックでうまくつかめなかったりする。したがって、位置AとBの間のセクション(位置A′)で、ガラス塊成形型上のガラス塊上面をガラス塊の温度よりも低温の型でプレスし、ガラス塊の形状を整えるとともに、ガラス塊上面を冷却することもできる。ガラス塊下面は既にガラス塊成形型への放熱により冷却されているので、この操作を行うことにより、ガラス塊上下面反転時にガラスのダレを防止できる。
第2の工程におけるガラス塊の押し上げは、ガラス塊の内部が軟化状態にあり、表面がチャッキング可能な状態にあるときに開始することが、ガラス塊上下面反転時にガラスのダレが生じるのを防止できるという観点から適当である。
【0017】
本発明のプレス成形装置1は、ガラス塊を上下面を反転しながら、ガラス塊成形型2からプレス成形型6の下型上へ移送するためのガラス塊移送手段4を有する。
ガラス塊移送手段4は、ガラス塊10の少なくとも側面を保持するためのチャック5を有し、かつチャック5により保持したガラス塊10の上下面を反転させてプレス成形型の下型に移送し得る反転機構を有する。
上記チャック5は、ガラス塊の対向する側面を挟んでガラス塊成形型2から取出すための挟持手段である。反転移動中にガラス塊を確実に保持できる限り、チャックの形状や機構等には特に限定はない。
上記反転機構は、チャックを水平軸のまわりに回転させる機構である。水平軸のまわりの回転により、チャックに挟持されたガラス塊の上下面が反転する。尚、チャックはガラス塊の移送が終了後、再度反転機構により、位置Cから位置Aに戻される。
【0018】
チャックに挟持されたガラス塊は、プレス成形型の下型上に反転移動した後、挟持を開放されてプレス成形型の下型上に載せられる。プレス成形型6は、図3に垂直断面を模式的に示すように、下型6aと胴型6bとからなり、プレス成形型6上にガラス塊を載せるとき、チャックがプレス成形型の胴型6bにぶつからないよう、図3(2)に示すように、下型6aを胴型6bよりも上に押し上げた状態(あるいは胴型6bを下型6aより下に下げた状態)でガラス塊を載せるようにすることが好ましい。
【0019】
プレス成形型6の下型6a及び胴型6bは、図1に示すように、他のプレス成形型6の下型6a及び胴型6bとともにターンテーブル7上に等間隔で載置され、ターンテーブル7のインデックス駆動により停留、移動を繰返し、プレス位置D、取出し位置Eへと順次運ばれる。
なお、ターンテーブル7の駆動はターンテーブル3の駆動に同期させ、両ターンテーブルの停留時にガラス塊の移送が行われるようにすることが好ましい。
【0020】
プレス成形型6の下型6a及び胴型6bの材質としては、例えばダクタイル鋳鉄、ステンレスなどを用いることができる。図3に示すように、プレス成形型6の下型6aの成形面は中央部が高く、外周部が低い凸形状になっており、例えばレンズの凹面に仕上げられる面を転写成形することができようにしてもよい。下型6aの外側には胴型6bが設けられ、その内面はガラス成形品の側面、あるいは直径を規定する。
【0021】
位置Cにおいてガラス塊が移送される際の下型成形面の温度は、概ね(Tg+30℃)〜(Tg+80℃)に調温されていることが適当である。移送されたガラス塊の下面は上面の温度よりも高く、プレスによって十分変形可能な温度となっている。従って、プレス成形型への移送後、ガラス塊は、さらなる加熱をすることなしに、ガラス塊の平均粘度が102〜104ポアズの範囲にあるときに、好ましくは103ポアズのオーダーにあるときにプレス成形を行うことができる。これに対し、ガラス塊成形型によって熱を奪われたガラス塊の上面は粘度が上昇し、プレス時に変形しにくくなることもある。このような場合には、プレス成形型への移送後、ガラス塊を上方から加熱して、ガラス塊の平均粘度が102〜104ポアズの範囲にあるときに、好ましくは103ポアズのオーダーにあるときにプレス成形を行うことができる。ガラス塊の粘度は中心部と表面で異なるので、ここではガラス塊の粘度を均一にならしたときの粘度を平均粘度とした。ガラス塊の加熱は、例えば、図1に示す加熱手段9によって行うことができる。
【0022】
加熱手段の例としては1000〜1100℃程度になった電気ヒーターを備え、位置Cから位置Dまでの下型移送経路上を覆うように配置してもよいし、位置Cから位置Dまでの間の停留位置において、停留中のガラス塊上面に前記ヒーターを接近させるようにしてもよい。このようにして、プレス直前までガラス塊上面が加熱されるようにする。プレス位置Dでは下型温度よりも低い温度(例えばTg付近)に調温された上型(図示せず)と、下型によりガラス塊がプレスされ、ガラスは上下型、胴型によって形成されたキャビティー内に充填され、光学部品ブランクなどの成形品がプレス成形される。上型の材料としては、下型と同様のものを用いることができる。
【0023】
平面視した時のガラス塊の径をプレス成形型の胴型内径の85〜95%の範囲、好ましくは約90%とすることが適当である。
ガラス塊を下型成形面上に置いたとき、ガラス塊外周が胴型によって支えられ、ガラス塊の中央が下型成形面の中央から大きくずれることがないため、凸状の成形面を有する下型を使用しても、成形品の偏肉を防ぎ、成形品の形状精度低下を防止することができるためである。下型が凸状成形面に加え、成形品の側面を成形する側壁状の成形面を有している場合も、側壁内径に対し、平面視した時のガラス塊の径を85〜95%の範囲、好ましくは約90%にすることによって上記の効果を得ることができる。
【0024】
プレス工程後、成形品の上面から上型を待避させ、下型に載った状態で成形品は位置Dから位置Eへと冷却(自然冷却でも強制冷却でもよい)されながら移送される。位置Eに達した成形品は停留中に下型から取出される(テイクアウト工程という)。テイクアウト時の成形品の温度は、ガラスのガラス転移温度Tgより低く、テイクアウト時に成形品に力が加わっても変形しないようにしている。テイクアウトされた成形品はアニール炉に入れられて、歪みが除去される。テイクアウト法としては、ガスを噴射させることによって、成形品を下型上から回収器へと吹き飛ばす方法や、吸引装置によって成形品を吸引して下型上から運び出す方法などがある。
【0025】
このようにして溶融ガラスからガラス成形品を作製することによって、下型成形面が凸状のプレス成形型を使用しても、球面精度などの形状精度が低下することもなく、また、脈理などの欠陥が発生することもない。これら一連の工程は、大気中で行うことができる。尚、プレス成形型の下型成形面は凹状であってもよい。
【0026】
本発明が適用できるガラスの種類としては特に限定されないが、流出時の溶融ガラスの粘度が30ポアズ以下の成形に好適であり、10ポアズ以下の成形にさらに好適である。本発明の製造方法によれば、溶融粘度が1ポアズ程度のガラスであっても良好にガラス成形品とすることができる。
【0027】
成形品(例えば、レンズブランク)は、アニールされ、レンズなどの光学部品にするため、研削、研磨加工を施される。これらの加工方法には、通常のガラス製光学部品を研削、研磨する方法を用いることができる。研削、研磨加工が施された光学部品には、必要に応じて反射防止膜、反射膜などの光学薄膜を設けることができる。本発明のガラス成形品の製造方法は、メニスカスレンズ、凹レンズなどの各種光学レンズのレンズブランク、凹面または凸面ミラーブランクなど各種光学部品ブランクの成形に好適である。また、本発明の光学部品の製造方法は、メニスカスレンズ、凹レンズなどの各種光学レンズ、凹面または凸面ミラーなど各種光学部品の製造に好適である。
【0028】
本発明の製造方法によって得られた成形品は、成形精度が高く、光学部品などの最終製品の形状に近似しているので、研削、研磨加工によって除去しなければならないガラスの量が削減できる。また、脈理などの欠陥も低減されるので、上記効果と合わせスラッジの量を低減することができる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1〜5
B2O3−La2O5系光学ガラス1〜4、SiO2−TiO2系光学ガラス1が得られる溶融ガラスを用いて、レンズブランクの成形を行った結果を表1〜3に実施例1〜5として示す。表1において、Tgは使用ガラスのガラス転移温度、成形品形状は、レンズブランクの形状で、目的とするレンズ形状に近似するものである。凹メニスカスと表示されているものは、研削、研磨加工により凹メニスカスレンズを作製するためのブランク、凸メニスカスと表示されているものは、研削、研磨加工により凸メニスカスレンズを作製するためのブランク、両凹と表示されているものは、研削、研磨加工により両凹レンズを作製するためのブランクである。重量とはガラス塊(ゴブ)の重量(プレス成形品の重量でもある。)を示す。
表2において、キャスト時の温度及び粘度、プレス成形時における粘度は、それぞれ、ガラス塊成形型に溶融ガラスを供給する際のガラスの温度および粘度、プレス成形時のガラスの平均粘度を示す。ガラス塊成形型の温度は、溶融ガラスを受ける直前の温度、プレス成形型下型の温度は、ガラス塊が搬入される直前の温度である。
表3において、形状精度(R)は、レンズブランクの一方の面の曲率半径をR1、他方の面の曲率半径をR2としたとき、R1の面の周辺部における理想形状からのズレをR1外スキ、R1の面の中心部における理想形状からのズレをR1中スキ、R2の面の周辺部における理想形状からのズレをR2外スキ、R2の面の中心部における理想形状からのズレをR2中スキとし、R規格は、各スキの許容範囲、R実測は各スキの実測値を示す。凸レンズにおける外スキ及び中スキの状態を図4の(1)及び(2)に示し、凹レンズにおける外スキ及び中スキの状態を図4の(3)及び(4)に示す。図中、Rゲージが理想形状である。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
表3が示すように、各実施例とも形状精度は許容範囲内に納まっていた。形状精度が許容範囲内にあるプレス成形品によって、これまで必要であった、一連の研削加工のうちの一工程を省略しても所望のレンズを加工することができる。また、従来の方法よりも研削、研磨による取り代を80%削減でき、加工時間を短縮化できるとともに、成形品1個あたりに用いるガラスの量も節約することができる。
【0034】
実施例1〜5で得られたブランクは、脈理、失透などの欠陥は認められず、光学素子ブランクとして、良好なものであった。なお、各ブランクの凹面は、プレス成形型の下型成形面によって転写成形されるようにした。
上記各実施例によって、連続成形されたブランクをプレス成形型から取出し、徐冷炉内で徐冷して歪みを除去した。
徐冷されたブランクは芯取り加工、レンズ表面加工などの研削加工を施した後、研磨加工されて、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凹レンズとなる。得られたレンズはいずれも良品であった。なお、各レンズには、必要に応じて反射防止膜などの光学薄膜を形成してもよい。
【0035】
さらに、上記成形機のプレス成形を行う部分を複数台用意しておき、それぞれのプレス成形機に異なるプレス成形型をセットしておき、プレス成形機の部分のみを交換することによって、同硝種、異形状のレンズブランク成形への切り替えが可能になるため、型替え調整を予め待機中のプレス成形機で行っておき、タイミングを見計らってプレス成形機の切り替えを行えば、従来のダイレクトプレス法のように型替え時に流出する溶融ガラスを無駄にすることを避ける事ができる。
【0036】
【発明の効果】
以上のように、本発明のガラス成形品の製造方法、並びにプレス成形装置によれば、ダイレクトプレス法の高生産性などの特長を活かしつつ、目的とする最終製品の形状に近似し、脈理などの欠陥が低減されたガラス成形品を生産でき、成形品の研削、研磨時に発生するスラッジの量が削減可能となる。
また、本発明の光学部品の製造方法によれば、上記研削、研磨加工の際に多量のスラッジを出すことなく高品質な光学部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のプレス成形装置(一例)の概略平面図。
【図2】 本発明のプレス成形装置が有するガラス塊成形型(下型及び胴型)の一例の垂直断面図。
【図3】 本発明のプレス成形型(下型及び胴型)の一例の垂直断面図。
【図4】 凸レンズ及び凹レンズにおける外スキ及び中スキの状態を示す図。
【符号の説明】
1 プレス成形装置
2 ガラス塊成形型
2a 下型
2b 胴型
3 ターンテーブル
4 ガラス塊移送手段
5 チャック
6 プレス成形型
6a 下型
6b 胴型
7 ターンテーブル
9 加熱手段
10 ガラス塊
Claims (7)
- 溶融ガラス流から溶融ガラスをガラス塊成形型に受けて、ガラス塊に成形する第1の工程、
少なくとも下型及び上型を含むプレス成形型の下型成形面上に上記ガラス塊を移送する工程であって、前記移送は、上記ガラス塊の上下面が反転するように行う第2の工程、及び
前記ガラス塊を前記プレス成形型の少なくとも下型及び上型でプレス成形してガラス成形品を得る第3の工程を含み、
第2の工程において、成形されたガラス塊を、該ガラス塊の下面がガラス塊成形型の上端面より高くなるように、ガラス塊成形型の下型で押し上げ、押し上げられたガラス塊を少なくとも側面においてチャックにより保持し、ガラス塊の上下面を反転させることを特徴とするガラス成形品の製造方法。 - プレス成形型への移送後、さらなる加熱をすることなしに、ガラス塊の平均粘度が102〜104ポアズの範囲にあるときにプレス成形を行う請求項1に記載の製造方法。
- プレス成形型への移送後、ガラス塊を上方から加熱して、ガラス塊の平均粘度が102〜104ポアズの範囲にあるときにプレス成形を行う請求項1に記載の製造方法。
- プレス成形型の下型成形面は凸状または凹状である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の方法により製造されたガラス成形品を研削、研磨加工して光学部品を作製する光学部品の製造方法。
- 溶融ガラスからガラス塊を成形するためのガラス塊成形型、前記ガラス塊成形型に溶融ガラスを供給するための溶融ガラス供給部、ガラス塊をプレス成形するための少なくとも上型および下型を備えたプレス成形型、及びガラス塊をガラス塊成形型からプレス成形型に移送するための移送手段を含むプレス成形装置であって、
前記ガラス塊成形型は胴型及び下型(但し、前記下型は、成形されたガラス塊を、該ガラス塊の下面がガラス塊成形型の上端面より高くなるように押し上げ可能なように上下動し得る)からなり、かつ
前記移送手段は、ガラス塊の少なくとも側面を保持するためのチャックを有し、かつチャックにより保持したガラス塊の上下面を反転させてプレス成形型の下型に移送し得る反転機構を有することを特徴とするプレス成形装置。 - プレス成形型の下型上のガラス塊上面を加熱するための加熱手段を有する請求項6に記載のプレス成形装置。
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