JP4949011B2 - 全頭用かつらとその製造方法 - Google Patents
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Description
全頭用かつらは頭部全体を覆うために、部分かつらよりも被り心地、いわゆるフィット感が重視されるが、従来の全頭用かつらに用いられてきたかつらベースでは構造や素材などに欠点が多く、満足のいくフィット感を得ることはできなかった。
そこで、かつらベースに伸縮性のネットを用い、このネットを頭部の形状に合わせることでフィット感を向上する技術が提案されている(特許文献1)。
また、全頭用のかつらベースを、左側頭部から左後頭部、右側頭部から右後頭部、及びこれらの間に位置する後頭部の3枚に分けたネットを接合することによって、フィット感を向上する技術が提案されている(特許文献2)。
さらに、後頭部を伸縮性ネットで覆い、後頭部以外の領域をネットで覆う全頭用のかつらベースや、頭部前側を2枚のネットで接合し、左右側頭部とその間の後頭部を3枚のネットで接合した全頭用かつらベースが知られている(特許文献3)。
この対策として、公知の伸縮性ネットを用いることが考えられるが、図33及び図34に示すように、左側頭部片1aと右側頭部片1bと後頭部片1cとに3分割された伸縮性ネット1の縫製ライン2a,2bが、襟足部3の中心3a付近から頭頂部4に向けてV字状となる。
仮に、このネットに伸縮性があるとした場合に、伸縮性ネットが覆う領域が広範囲に及んでいるために歪みや皺が生じ易いものとなり、所望のヘアスタイルを作ることができないので適当でない。また、後頭部片以外を覆うネットが非伸縮性である場合には、頭部の形状は保持できるが、左右側頭部片の領域に伸縮性を発揮することができず、充分なフィット感を得ることができないものとなる。
仮に、頭部前側に非伸縮性ネットを使用し、左右側頭部と後頭部に伸縮性ネットを使用したとしても、前記の図33,図34を用いて述べた理由により、かつら装着時に歪みが発生し易くなり、頭部の動きに追従できないために、満足のいくフィット感を得ることができないものとなる。
また、非伸縮性ネットと伸縮性ネットとの接合部を、イヤ・トゥ・イヤ線よりも頭部前側に位置させた場合は、非伸縮性ネットの面積が減少し、伸縮性ネットの面積が増加することになるが、伸縮性ネットを非伸縮性ネットと比較すると、非伸縮性ネットよりも伸縮性が大きいことから形状保持が困難である。
そこで、ゴールデンポイント付近を伸縮性ネットで覆い、且つ頭部後側の傾斜形状にフィットさせるために、非伸縮性ネットと伸縮性ネットとの接合部を、イヤ・トゥ・イヤ線とゴールデンポイントを通る線との内側に設定することが好ましい。
これにより、左右側頭部片と後頭部片の襟足部側に伸縮できる充分な面積が確保され、高い伸縮性を発揮できる。
非伸縮性ネットの糸径が80μ以下の場合には、糸径が細いことから網目の強度に懸念があり、植設時に網目が破断したり、毛髪を網目にしっかりと結着できずに、毛髪の結び玉がかつら装着側(頭皮側)へ裏返って毛髪の方向が定まらず、所望のヘアスタイルを作れなくなる虞がある。
一方、非伸縮性ネットの糸径が200μ以上になると、植設した毛髪の結び玉を作ることが困難となり、かつらの使用中に毛髪の結び玉が緩むので、毛髪が抜けてしまったり、所望のヘアスタイルが作れなくなる虞がある。
したがって、非伸縮性ネットには前述した通り、糸径80μ〜200μで、10メッシュ〜80メッシュの網目を持つ合成樹脂製の単繊維素材等が好ましい。
一方、伸縮性ネットの伸長率が100%以上となると、かつらを装着したときに伸縮性ネットが伸びすぎてしまうことから装着者の頭部形状にフィットせず、また、伸縮性ネットが伸びすぎることで毛髪の結び玉が露見してしまう虞がある。
さらに、伸長率が「1」:「1」で縦方向と横方向とに均等に伸縮する伸縮性ネットの場合、かつらを装着して伸縮性ネットが伸びたときに、頭頂部方向と襟足方向,左側頭部方向、右側頭部方向の四方向に対して均等に伸びてしまうことで、30メッシュ以下と同じ現象が起こり、毛髪を植設した網目が伸びてかつらベースが外部から視認されてしまい、好ましくない。
したがって、伸縮性ネットで形成される左右側頭部片,後頭部片は、前述の通り、糸径180μ〜400μで、30メッシュ〜60メッシュ程度、縦及び横方向の伸長率がそれぞれ30%〜100%程度のものが好ましく、さらに横方向と縦方向の伸長率が、縦方向を「1」とした場合に、横方向が「1.2」〜「3」程度の比率がより好ましい。
同様に、左右側頭部片と後頭部片の3つすべての高伸縮性方向を、左右のみつえりを結ぶ線と平行な方向に一致させた場合にも、頭部後側において頭部左右方向には適当な伸縮性が得られるものの、左右のみつえりを結ぶ線と直交方向、すなわち頭部後側において頭部前後方向に対しては充分な伸縮性を得られない。
伸縮性ネットは、全面に合成樹脂溶液を塗布してもよい。非伸縮性ネットの前頭部側縁及び/または伸縮性ネットの襟足部側縁に、めくれ防止部材または縫糸を設けてもよい。左側頭部片と右側頭部片の少なくともいずれか一方に、かつらの大きさを調整するアジャスタを取り付けるとよい。
さらに本発明は、かつらベースの揉み上げ部及び/または襟足部に、形状保持部材を取り付けることもできる。
左側頭部片と後頭部片との接合部、または右側頭部片と後頭部片との接合部の幅は、伸縮性や縫着部分の強度あるいは美感を考慮した場合に、およそ5mm程度とすることが望ましい。これらの接合部幅を5mmとした場合に、並縫いの線と千鳥縫いの線とが重ならないようにすることが必要である。千鳥縫いの幅は3mm程度とすることが好ましい。なお、接合部の幅に応じて、並縫いと千鳥縫いの位置も適宜変更可能である。
なお、この伸長率の測定は、JIS L 1096にある6.14.1伸長率(2)B法(定荷重法)を一部変更し、試験片を0.5cm×15cmに切断採取し、1.13gの初荷重を加えたこと以外は、JIS規格に則って行った。
また、千鳥縫いを用いずに2本の並縫いで縫着した場合には、伸長率が充分でなく、高い伸縮性が確保できないために適当でない。
なお、接合部の接合手段としては、接着剤を用いた接着もできるが、伸縮性と強度を確保することがより好ましいことを考慮すると、縫着による接合が好適である。
合成樹脂溶液には、水溶性のポリウレタン樹脂が約50%と、水が約50%とからなる水溶性ポリウレタン樹脂溶液等が好ましく、例えば、溶剤系のポリウレタン樹脂溶液の場合には、溶液に使用している有機溶剤により、伸縮性ネット素材の合成樹脂が劣化して、硬化することで伸縮性が失われる虞がある。
また、伸縮性ネットは、その伸縮によって使用者の頭部に対応が可能であるが、左側頭部片と右側頭部片の少なくともいずれか一方にアジャスタを設けることにより、伸縮性ネットでは対応できないさらなる大きさの調整が可能である。
図1〜図9は本発明の一実施例を示すもので、図1は全頭用かつらの装着状態の側面図、図2は全頭用かつらの背面図、図3はかつらベースに毛髪を植設する状態を示す概略図、図4,図5,図6,図7はそれぞれ伸縮性ネットの伸縮方向を説明するための全頭用かつらの背面図、図8は伸縮性ネットの接合を説明する概略図、図9はアジャスタ周辺の詳細を示す拡大図である。
図1〜図3に示す全頭用かつら10は、使用者の頭部全体に被着されるかつらベース11と、該かつらベース11に植設される毛髪hrとを備えており、頭部前側の生え際12aから左右の耳介E1の上部(右側は図示せず)を経て、後頭部分の襟足12bに至る頭部全体をカバーする形状に形成されている。
左側頭部片15aと後頭部片15cの接合部17aと、右側頭部片15bと後頭部片15cとの接合部17bのそれぞれは、後頭部付近で最も動きの激しい部位で首左右の窪み部分、いわゆるみつえりM1,M2を結ぶ線L3に対して直交する方向へ帯状に設けられており、また後頭部片15cと襟足片15dとの接合部17cは、みつえりM1,M2を結ぶ線L3上に帯状に設けられている。
頭部前側の非伸縮性ネット14には、例えば合成樹脂製の単繊維素材からなり、糸径80μ〜200μで、10メッシュ〜80メッシュの網目を持つネットを用いるとよい。
また、襟足片15dは、全頭用かつら10が装着中にずれることを防止するためのポリウレタン樹脂溶液を塗布するとよい。
図4,図5では、後頭部片15cの高伸長率側の網目を、左右のみつえりM1,M2を結ぶ線L3と直交する方向に配置し、さらに、左側頭部片15aと右側頭部片15bの高伸長率側の網目を、後頭部片15cの高伸長率の網目方向に対して、これと直交する左右のみつえりM1,M2を結ぶ線L3と平行な方向を含む80度〜140度の範囲で配置しており、後頭部片15cとその両側の左右側頭部片15a,15bとの高伸縮方向を交差させたものとなっている。
図6,図7では、後頭部片15cの高伸長率側の網目を、左右のみつえりM1,M2を結ぶ線L3と平行に配置し、さらに、左側頭部片15aと右側頭部片15bの高伸長率側の網目を、後頭部片15cの高伸長率の網目方向に対して、これと直交する方向、つまり左右のみつえりM1,M2を結ぶ線L3と直交する方向に80度〜140度の範囲で配置しており、後頭部片15cとその両側の左右側頭部片15a,15bとの高伸縮方向を交差させたものとなっている。
これらのめくれ防止部材20,21は、非伸縮性ネット14や襟足片15dの装着面(頭皮側面)に合成樹脂溶液を人工皮膚としてシート状に塗布したもので、全頭用かつら10の装着時に、装着者の生え際12aや襟足12bとその近傍において、めくれ防止部材20,21が頭皮や頭髪と接することで全頭用かつら10のめくれを防止するとともに、滑り止めの役割をも兼ねている。
図8は、一方の接合部17aにおいて、この並縫いと千鳥縫いとを用いた縫着の手順を示しており、まず図8(a)で、後頭部片15cと左側頭部片15aの縫い代部分を合わせて並縫い22で縫着したのちに、その縫い合わせた縫い代を左側頭部片15a側へ帯状に折り返し、図8(b)でこの折り返し片15eの中心近傍を千鳥縫い23で縫着している。
接合部17a,17bの横幅をそれぞれ5mmとした場合に、並縫い線22と千鳥縫い線23とが重ならないようにすることが必要であり、千鳥縫い線23の振り幅は3mm程度とすることが好ましい。なお、接合部17a,17bの幅に応じて、並縫い線22と千鳥縫い線23の位置も適宜変更できる。
また、伸縮性ネットでも2種類の伸長率の異なるポリマーに生じさせている縮れの隙間に水溶性ポリウレタン溶液が浸透することにより、形状保持が持続することができるので、伸縮性ネットの歪みや皺などを未然に防ぐことができ、所望のヘアスタイルを容易に作ることが可能となる。
襟足12bの下縁付近には、フック27を固定するための調整用帯状布28が、フック縫着線29で仕切られるように縫着されており、弾性ゴム26の弾性力を用いてフック27を調整用帯状布28のいずれかに選択的に引っ掛けることにより、全頭用かつら10のサイズを調整するようにしている。
特に、かつら受注時に装着者の頭部形状を模した型を元にかつらを製作するが、その製作期間中に装着者の髪型がかつら受注時と変わることで全頭用かつら10がフィットしない問題等があったが、アジャスタ24a,24bを用いることでこの問題を解消することができる。
全頭用かつら10の製造工程は、第1工程で製作ラインの記入、第2工程で頭部前側の製作(第1のベースの製作)、第3工程で側頭部分の製作、第4工程で後頭部片15cの製作、第5工程で襟足部の製作、第6工程で側頭部分と後頭部片15cの縫着(第2のベースの製作)、第7工程で頭部前側と側頭部及び後頭部片15cの縫着(かつらベース11の製作)、第8工程でアジャスタゴムの取り付け、第9工程で襟足部とかつらベース11の縫着、第10工程で金具取り付け、第11工程で襟足部周囲の補強縫着、第12工程で頭部前側周囲の補強縫着、第13工程で植設、第14工程で毛止め処理、第15工程でアジャスタフック掛け部の製作、第16工程で再成形処理、を行う全16工程からなっている。
なお、以下に説明する本実施形態に基づく方法では、上記の通り全16工程に細分化しているが、本発明の全頭用かつらの製造方法は、請求項11に示す通り、少なくとも6つの工程を備えるものである。
第1工程の第1段階として、かつら装着者のかつらの外縁ライン41を記入する。第2段階として、のちの非伸縮性ネット14と伸縮性ネット15との接合部16となる頭頂付近接合ライン42を記入する。
上記頭頂付近接合ライン42は、イヤ・トゥ・イヤ線ELと、あご先C1から左右の耳介E1,E2の上部E1a,E2aを通って、正中線L1上のゴールデンポイントGPに至る線L2とに挟まれた範囲Aに位置させる。
先ず、外縁ライン41の襟足部を襟足部外縁ライン43とし、その襟足部外縁ライン43から頭頂部に向かって内側2cmの位置に、後頭部片15cと襟足片15dとの接合部17cとなる襟足部後頭部ライン44を襟足部外縁ライン43と略平行に記入する。襟足部後頭部ライン44は、みつえりM1,M2を結んだ線とほぼ一致する。
第1工程の第4段階として、左右側頭部片15a,15bと後頭部片15cとの3枚ネットの接合部17a,17bとなる後部付近接合ライン45a,45bを、左右みつえりM1,M2から頭頂付近接合ライン42の方向へ垂直に記入する。
第2工程の第1段階として、かつら装着者の頭部形状の雄型である石膏型40の上にナイロン製のストッキングを張り、さらにその上に、非伸縮性ネット14を製作ラインにある頭部前側及び頭頂部を約5cm大きめに覆い、非伸縮性ネット14を固定したのち、プライマー溶液を塗布し、100℃で1時間乾燥する。
第2工程の第2段階として、非伸縮性ネット14に熱硬化性ポリウレタン樹脂溶液を全体に行き渡るように塗布し、100℃で8時間以上乾燥することにより、非伸縮性ネット14を、かつら装着者の頭部形状に即した形状に成形をする。
図14に示すように、第2工程の第4段階として、7mm幅の外周縁露見防止用ネット47を第1のベース46に頭部前側の生え際12aから外側に約2mmはみだすように、左揉み上げ部12cから右揉み上げ部12dまで取り付け、生え際12aから頭頂部側に5mmの幅部分にポリウレタン溶液を塗布し、60℃で1時間乾燥して固着する。
図15は、かつら装着者の頭部形状に即した左右側頭部片15a,15b用の左側頭部用ネット51aと右側頭部用ネット51bを製作する様子を示しており、第3工程の第1段階として、上記実施例で示した糸径350μで50メッシュの伸縮性ネットを製作ライン50に記入されている左右側頭部片15a,15bの大きさよりも約10cm大きめに切断し、その切断した右側頭部用ネット15aと右側頭部用ネット15bを水溶性ポリウレタン溶液に浸したのち、石膏型40の所定の位置に張って60℃で4時間以上乾燥する。
第3工程の第2段階として、かつらの耳上部分に位置する大きさ調整用のアジャスタ24a,24bの取り付け位置に土台53を製作するために、左側頭部用ネット51aと右側頭部用ネット51bをアジャスタ24a,24bの製作ライン50に相当する部分を後頭部片15cとの接合部17a,17bの下側付近まで切れ込みを入れて折り返し、その折り返し部分を縫着したのち、不要な部分のネットを切除する。
かつら装着者の頭部形状に即した後頭部片15c用の後頭部片用ネット51cを製作するために、左右側頭部片15a,15bで使用している同様の伸縮性ネットを製作ラインにある後頭部片15cの大きさよりも約5cm大きめに切断し、その切断したのち伸縮性ネットを水溶性ポリウレタン溶液に浸したのち、石膏型40の所定の位置に張って60℃で4時間以上乾燥する。
第5工程の第1段階として、かつら装着者の襟足12bの形状に合わせるために、糸径180μで30メッシュの伸縮性ネットを製作ライン50に記入されている襟足12bの大きさよりも約5cm大きめに切断し、頭部形状などがついていない平らな石膏型に固定する。その切断した伸縮性ネットに熱硬化性ポリウレタン樹脂溶液を塗布したのち、100℃で8時間以上乾燥する。
第5工程の第2段階として、全頭用かつら10が装着中にずれることを防止し、また全頭用かつら10の襟足付近の形状を保持するために、ポリウレタン溶液を第1段階で成形した襟足片用の伸縮性ネットに塗布し、60℃で4時間以上乾燥することにより、襟足ベース52を製作する。
図16と図17に示すように、第6工程の第1段階として、後頭部片用ネット51cのマーカーペンで記入されている製作ライン50上を表面(毛髪植設側)に折り返して左右側頭部用ネット51a,51bと重ね合わせし、その折り返し部55の根元付近を並縫い22で縫着する。
次に、図18に示すように、第6工程の第2段階として、折り返し部55を左右側頭部用ネット51a,51b側に倒して、折り返し部55を表面(毛髪植設側)から千鳥縫い23で第6工程の第1段階で並縫いした縫糸に沿って縫着する。
第6工程の第3段階として、上述のように縫着をしたのち、折り返し部55の千鳥縫い線23の外側にある不要な部分のネットを切除して第2のベース54を得る。
図19に示すように、第7工程の第1段階として、第1のベース46の接合部分に第2のベース54が上になるように重ね合わせて、所定の位置を縫着する。
第7工程の第2段階として、図20(a)で、第2のベース54の側端部を縫着ラインから第2のベース54の上に折り返し、所定の位置を縫着する。
第7工程の第3段階として、図20(b)で、表面(毛髪植設側)にある不要な部分のネットを切除することにより、図21に示すかつらベース11を得る。
図22に示すように、第8工程の第1段階として、アジャスタ24a,24bのサイズに合わせた弾性ゴム26の端部に合成樹脂製のフック27を取り付ける。
次に、図23に示すように、第8工程の第2段階として、フック27を取り付けた弾性ゴム26を左側頭部片15aの取り付け位置に合わせ、その周辺の伸縮性ネットをかつら外縁線に合わせて折り返して弾性ゴム26を挟み込む。
図24に示すように、第8工程の第3段階として、折り返した伸縮性ネットの上からフック27の反対側端部を縫着して弾性ゴム26を固定したのち、長手方向の両端を弾性ゴム26にかからないように縫着する。なお、右側頭部片15b側においても左側頭部片15aと同様にして取り付けられる。
図25に示すように、第9工程の第1段階として、製作ライン50が記入してある石膏型40に襟足ベース52を両面テープ等で貼り付けてから、所定の位置にかつらベース11を被せて仮留めをする。
第9工程の第2段階として、仮留めした襟足ベース52とかつらベース11を石膏型40から取り外し、図26に示すように、襟足ベース52の後頭部側周縁52aから1mm内側の位置を上部襟足縫着線58aとして、左側のアジャスタ24aの襟足側の端部56aから右側のアジャスタ24bの襟足側の端部56bまで縫着し、さらに、上部襟足縫着線58aから1cm外側(襟足側)の位置を下部襟足縫着線58bとして縫着する。
第9工程の第3段階として、毛髪植設側にあるかつらベース11の不要部分15eや装着側にある襟足ベース52の不要部分を切除して、襟足ベース52を襟足片15dとなし、図27に示す形状のかつらベース11を得る。この際、弾性ゴム26の端部にあるフック27は、襟足ベース52の裏面(頭皮側)に位置する。
第10工程の第1段階として、横幅が0.3mmのステンレス合金板を袋状のレーステープに入れ、両端部5mmほど折り返して縫製する。
図28,図29に示すように、第10工程の第2段階として、揉み上げ部14a,14bと襟足片15dの所定の位置に袋入りのステンレス合金板を配置し、ステンレス合金板にかからないように上記袋状レーステープの周囲を縫着して、形状保持部材30a,30b,31を取り付ける。
図28に示すように、第11工程の第1段階として、襟足片15dの外縁部1mm程度内側を、前述の端部56a,56bに亘って縫着する。
第11工程の第2段階として、襟足片15dの外側にある不要な部分のベースをかつらベース11の形状に沿って切除する。
図29に示すように、第12工程の第1段階として、左右揉み上げ部14a,14bと頭部前側の生え際12aとの外周縁から1mm内側の位置を縫着する。
第12工程の第2段階として、頭部前側の外周縁よりも外側にある不要ベースをかつらベース11の形状に沿って切除する。
図30に示すように、かつら装着者の頭部形状雄型57にかつらベース11を固定し、毛髪hrを植設する。つぎに、図31に示すごとく、非伸縮性ネット14と伸縮性ネット15に、それぞれに毛髪hrを1本ずつ折り返して、毛髪hrの根元付近となる折り返し部分をひばり結び及び巻き結び等で結びつけることにより植設する。
第14工程の第1段階として、図30に示すように、かつらベース11を裏側(かつら装着側)が上になるように裏返して頭部形状雄型57に固定する。
第14工程の第2段階として、非伸縮性ネット14の頭部前側の生え際から左右揉み上げ14a,14bに亘って設けられためくれ防止部材20と、襟足片15dに設けられためくれ防止部材21とにポリウレタン溶液を塗布し、50℃で5時間以上乾燥する。
第15工程の第1段階として、襟足部の大きさに合わせて、ナイロン製の帯状テープを切断して両端約5mmを折り返し、調整用帯状布28とする。
図32に示すように、第15工程の第2段階として、この調整用帯状布28をかつらベース11の裏側(かつら装着側)にある左右のアジャスタ24a,24bの端部にあるフック27の延長方向に外縁部線に沿って、1cm間隔で縫着する。
かつらベース11の毛髪植設側を表側にして頭部形状雄型57に固定し、乾燥を行ない、製作時のネットの歪みや皺などを修正して所望の全頭用かつら10を得る。
11…かつらベース
12a…頭部前側の生え際
12b…頭部後側の襟足
14…頭部前側を覆う非伸縮性ネット
15…頭部後側を覆う伸縮性ネット
16…接合部
hr…毛髪
E1…耳介
E1a…耳界のE1の上部
P1…頭頂部
EL…イヤ・トゥ・イヤ線
C1…あご先
GP…ゴールデンポイント
A…イヤ・トゥ・イヤ線ELと線L2とに挟まれた範囲
L1…正中線
L2…あご先C1とゴールデンポイントGPとを結ぶ線
L3…みつえりM1,M2を結ぶ線
M1,M2…みつえり
15a…伸縮性ネット15の左側頭部片
15b…伸縮性ネット15の右側頭部片
15c…伸縮性ネット15の後頭部片
15d…伸縮性ネット15の襟足片
17a,17b,17c…接合部
20,21…めくれ防止部材(本発明の合成樹脂溶液)
22…並縫い線
23…千鳥縫い線
24a,24b…アジャスタ
25…帯状布
26…弾性ゴム
27…フック
28…調整用帯状布
30a,30b,31…形状保持部材
40…石膏型
41…外縁ライン
42…頭頂付近接合ライン(のちの接合部16)
43…襟足部外縁ライン
44…襟足部後頭部ライン
45a,45b…後部付近接合ライン
46…第1のベース
47…外周縁露見防止用ネット
50…製作ライン
52…襟足ベース
52a…後頭部側周縁
53…土台
54…第2のベース
55…折り返し部
56a…アジャスタ24aの襟足ベース側の端部
56b…アジャスタ24bの襟足ベース側の端部
57…頭部形状雄型
58a…上部襟足縫着線
58b…下部襟足縫着線
Claims (10)
- 頭部形状に成形されたかつらベースと、該かつらベースに植設される毛髪とを備えた全頭用かつらであって、
該かつらベースが、頭部前側を覆う非伸縮性ネットと、頭部後側を覆う伸縮性ネットとを接合してなり、
該伸縮性ネットと前記非伸縮性ネットとの接合部を、左右の耳片の上部から頭頂部に至るイヤ・トゥ・イヤ線と、あご先から左右の耳片の上部を通ってゴールデンポイントに至る線とに挟まれた範囲に位置させるとともに、
前記伸縮性ネットは、左側頭部片及び右側頭部片と、これら左右側頭部片の間に位置する後頭部片との3枚に分割され、
これら後頭部片と左右側頭部片との接合部が、左右のみつえりを結ぶ線と直交する方向に設けられている
ことを特徴とする全頭用かつら。 - 前記後頭部片は、左右のみつえりを結ぶ線と直交する方向に高伸縮性を有し、
前記左側頭部片と右側頭部片のそれぞれは、前記左右のみつえりを結ぶ線と平行な方向に高伸縮性を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の全頭用かつら。 - 前記後頭部片は、左右のみつえりを結ぶ線と平行な方向に高伸縮性を有し、
前記左側頭部片と右側頭部片のそれぞれは、左右のみつえりを結ぶ線と直交する方向に高伸縮性を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の全頭用かつら。 - 前記左側頭部片と右側頭部片と後頭部片との接合が、縫着または接着である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の全頭用かつら。 - 前記左側頭部片と右側頭部片と後頭部片との縫着が、並縫いと千鳥縫いとの併用である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の全頭用かつら。 - 前記伸縮性ネットに、合成樹脂溶液が塗布されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の全頭用かつら。 - 前記非伸縮性ネットの前頭部側縁及び/または前記伸縮性ネットの襟足部側縁に、めくれ防止部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の全頭用かつら。 - 前記非伸縮性ネットの前頭部側縁及び/または前記伸縮性ネットの襟足部側縁に、縫糸が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の全頭用かつら。 - 前記左側頭部片と右側頭部片の少なくともいずれか一方に、かつらの大きさを調整するアジャスタが取り付けられている
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の全頭用かつら。 - 前記かつらベースの揉み上げ部及び/または襟足部に、形状保持部材が取り付けられている
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の全頭用かつら。
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