JP4947832B2 - エンジンストール防止制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のエンジンストールを防止する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料の燃焼によって動力を発生するエンジンと回転機とを走行用駆動源として備えており、それ等のエンジンおよび回転機のトルクを合成して駆動輪側へ出力するとともに回転機のトルクの反力がエンジンの回転速度を低下させる方向に作用するトルク合成モードを有する車両が知られている。特開平10−23604号公報に記載されている装置はその一例で、トルク合成モードを機械的に達成するものであり、(a) エンジンに連結された第1回転要素と、回転機に連結された第2回転要素と、駆動輪側へ出力する第3回転要素と、を有する歯車式の合成分配装置を備えており、(b) 前記第1回転要素、第2回転要素、および第3回転要素が相対回転可能な状態で前記エンジンおよび前記回転機を共に作動させ、第1回転要素および第2回転要素にトルクを加えて第3回転要素を回転させることにより、前記トルク合成モードが成立させられるようになっている。具体的には、第1クラッチCE1 を係合させるとともに第2クラッチCE2 を解放し、エンジン12を作動させるとともにモータジェネレータ14を回生制御するエンジン発進モードが、トルク合成モードに相当する。
【0003】
また、図1は未だ公知ではないが、合成分配装置としてダブルピニオン型の遊星歯車装置18が用いられている場合で、第1回転要素としてのサンギヤ18sにエンジン14が連結され、第2回転要素としてのキャリア18cにモータジェネレータ16が連結され、第3回転要素としてのリングギヤ18rが第2クラッチC2を介して変速機12に連結されて駆動輪に出力するようになっている。そして、第1クラッチC1および第1ブレーキB1が解放されるとともに第2クラッチC2が係合させられたETCモード(トルク合成モードに相当)では、例えば図5の(a) に示すようにエンジン14を作動させてサンギヤ18s「S」に正方向のトルクを加えるとともに、モータジェネレータ16が逆回転する状態で回生制御してキャリア18c「C」に回生制動トルクを加えることにより、リングギヤ18r「R」を正方向へ回転させて走行することができる。
【0004】
ところで、このような車両用駆動制御装置においては、例えば上記図5(a) のETCモードで走行中に障害物を乗り越えたり急ブレーキなどで大きな負荷が作用し、車速更にはリングギヤ18r「R」の回転速度が急激に低下すると、図17に破線で示すようにエンジン回転速度(サンギヤ18s「S」の回転速度)が低下し、エンジンストール、すなわちエンジンが失速して失火し、爆発による自力回転が不能になってトルクを発生できなくなる、可能性がある。特に、モータジェネレータ16を逆回転させて回生制御するために、モータ回転速度が所定値(例えば−1000rpm)になるように回転速度制御している場合には、車速の低下がエンジン回転速度の低下で吸収される可能性が高く、エンジンストールの可能性が高くなる。また、前記図1のハイブリッド駆動制御装置のように、例えば第1クラッチC1を係合させてモータジェネレータ16により走行するなど、エンジン14の作動が適宜停止させられる場合には、運転者がエンジンストールを判断し難いため、エンジンストールの発生を防止することが強く望まれる。
【0005】
なお、エンジンストールの原因としては、例えば図17において、リングギヤ18r「R」の回転速度が低下する代わりに、モータジェネレータ16の回生制動トルクが急激に増加してキャリア18c「C」の回転速度が変化(0に近くなる)した場合も、サンギヤ18s「S」の回転速度が低下してストールする可能性があるなど、エンジンやモータジェネレータの連結状態に応じて種々の形態が考えられる。
【0006】
これに対し、前記特開平10−23604号公報に記載の装置では、エンジンストールの可能性を判断して、エンジンストールの可能性がある場合には、電動モータによってエンジンの負荷を軽減することにより、エンジンストールを防止することが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のエンジンストール防止方法は、エンジンストールを一時的に回避するだけであるため、以後の走行でもエンジンストールが発生する可能性があり、電動モータによるエンジンストールの防止制御を頻繁に行わなければならない場合も考えられる。このような制御時には、一時的に駆動力変動などを生じることが避けられないため、運転者に違和感を生じさせることがあり、好ましくない。
【0008】
一方、エンジン回転速度を予め高く設定しておけば、エンジンストールの可能性が低くなるが、燃費や排ガスが悪化する。また、各種部品のばらつきなどの個体差によりエンジンストールの可能性は車両毎に異なるため、エンジン回転速度を予め最適値に設定することは困難であるとともに、各部の経時変化などでエンジンストールのし易さも経時的に変化する可能性がある。
【0009】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、エンジン回転速度を必要以上に高くすることなく、エンジンストールが発生する可能性を低下させることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、(a)燃料の燃焼によって動力を発生するエンジンと回転機とを走行用駆動源として備えており、(b)それ等のエンジンおよび回転機のトルクを合成して駆動輪側へ出力するとともに該回転機のトルクの反力が該エンジンの回転速度を低下させる方向に作用するトルク合成モードを有する車両において、(c)前記エンジンがストールすることを防止するエンジンストール防止制御装置であって、(d)予め定められたストール予想判断基準に従ってエンジンストールを予想し、その予想回数の増加に伴って前記回転機のトルク変化速度が小さくなるように該回転機のトルク変化速度をなますなまし制御要素の制御量を該予想回数に基づいて学習補正し、以後のエンジン作動時にエンジンストールが発生し難くなるようにするストール防止手段を有することを特徴とする。
上記回転機は、電気エネルギーで回転駆動される電動モータ、または回転駆動されることによって発電するとともに制動トルクを発生する発電機、或いはその両方として機能するモータジェネレータである。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明のエンジンストール防止制御装置において、(a)前記車両は、前記エンジンに連結された第1回転要素と、前記回転機に連結された第2回転要素と、駆動輪側へ出力する第3回転要素と、を有する歯車式の合成分配装置を備えており、(b)前記第1回転要素、第2回転要素、および第3回転要素が相対回転可能な状態で前記エンジンおよび前記回転機を共に作動させ、その第1回転要素および第2回転要素にトルクを加えて第3回転要素を回転させることにより、前記トルク合成モードが成立させられることを特徴とする。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明のエンジンストール防止制御装置において、(a)前記車両は、前記エンジンおよび前記回転機とは別に駆動輪を回転駆動する第3の駆動源を備えており、(b)前記ストール防止手段による前記回転機のトルク変化速度の低下に伴う駆動力不足を補うように前記第3の駆動源による駆動力を増加させる補助駆動手段を有することを特徴とする。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明のエンジンストール防止制御装置において、前記エンジンおよび前記回転機は、車両の前輪および後輪の何れか一方を回転駆動するもので、前記第3の駆動源は、それ等の前輪および後輪の他方を回転駆動するものであることを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4に係る発明の何れかのエンジンストール防止制御装置において、前記ストール防止手段は、(a)前記エンジンの回転速度に関する所定の物理量が予め定められたストール予想判定値以下か否かによって前記エンジンストールを予想するストール予想手段と、(b)そのストール予想手段により前記エンジンの回転速度に関する所定の物理量が前記ストール予想判定値以下と判断された場合に、前記なまし制御要素の制御量を学習補正するとともに、次回以降のその制御量の設定に際してその補正状態を反映させる補正手段と、を有するものであることを特徴とする。
上記エンジンの回転速度に関する所定の物理量が予め定められたストール予想判定値を越えることが請求項1のストール予想判断基準に相当する。
【0019】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明のエンジンストール防止制御装置において、前記ストール予想手段は、前記エンジンの回転速度が予め定められた一定の下限値以下になったか否かによって前記エンジンストールを予想するものであることを特徴とする。
上記エンジンの回転速度は第5発明の所定の物理量に相当し、一定の下限値は請求項5のストール予想判定値に相当する。
【0022】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6に係る発明の何れかのエンジンストール防止制御装置において、予め定められた所定の回復条件を満足する場合には、前記ストール防止手段による前記なまし制御要素の制御量の学習補正を戻す回復手段を有することを特徴とする。
【0024】
【発明の効果】
請求項1に係る発明のエンジンストール防止制御装置においては、予め定められたストール予想判断基準に従ってエンジンストールを予想し、その予想回数の増加に伴って回転機のトルク変化が小さくなるようにその回転機のトルクをなますなまし制御要素の制御量を学習補正するため、エンジン回転速度を必要以上に高くすることなく、エンジンストールが発生し難くなるようにすることができる。また、実際の運転状態の中でエンジンストールを予想し、必要に応じて回転機のトルク指令値のなまし制御要素の制御量を学習補正するため、運転環境や運転者の運転嗜好の相違、各種部品のばらつきなどによる車両毎の個体差、などに拘らず、エンジン回転速度を必要以上に高くすることなくエンジンストールの可能性を低減できるとともに、経時変化によってエンジンストールし易くなった場合にも対応できる。
【0028】
請求項3に係る発明では、ストール防止手段による回転機のトルク変化速度の低下に伴う駆動力不足を補うように、補助駆動手段によって第3の駆動源による駆動力が増加させられるため、エンジンストールを防止しつつ運転者の出力要求に対応する十分なレスポンスを確保できる。
【0029】
請求項4に係る発明では、エンジンおよび回転機によって回転駆動される駆動輪と、第3の駆動源によって回転駆動される駆動輪とが異なるため、車両全体の駆動系統の構築が容易である。
【0030】
請求項5に係る発明〜請求項7に係る発明では、エンジン回転速度に関する所定の物理量に基づいてエンジンストールが予想されるため、エンジンストールの可能性を高い精度で予想できる。
【0031】
エンジン回転速度が予め定められた一定の下限値以下になったか否かによってエンジンストールを予想する請求項6に係る発明では、エンジンストールに密接に関係するため、エンジンストールの可能性をより高い精度で予想でき、ストール防止手段によって必要以上になまし制御要素の制御量が学習補正されることが回避される。
【0033】
請求項7に係る発明では、予め定められた所定の回復条件を満足する場合に、ストール防止手段によるなまし制御要素の制御量の学習補正を戻す回復手段を備えているため、特殊な運転状態などで過度に補正された場合や構成部品の経時変化などでエンジンストールの可能性が低下した場合などには、目標エンジン回転速度やエンジン負荷、回転機のトルク変化速度などのなまし制御要素の制御量の学習補正が戻され、学習補正に起因する燃費や走行性能の低下などが防止されて常に適切な状態に保持される。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明のストール防止手段は、ストール予想手段によりエンジンの回転速度に関する所定の物理量がストール予想判定値以下と判断された場合に、以後のエンジン作動時にエンジンストールを発生し難くするもので、エンジンストールの可能性がある時に瞬時にそのエンジンストールを防止するものではないが、前記特開平10−23604号公報や本願出願人が先に出願した特願2000−302419に記載のように、エンジンストールそのものの発生を防止する手段を併せて設けることもできる。
【0036】
請求項1に係る発明のトルク合成モードは、請求項2に係る発明のように歯車式の合成分配装置によって成立するものでも、複数の回転機を用いるなどして電気的に成立するものでも良い。
【0037】
歯車式の合成分配装置としては、ダブルピニオン型或いはシングルピニオン型の遊星歯車装置が好適に用いられるが、傘歯車式の差動歯車装置を用いることも可能である。その合成分配装置に対するエンジンおよび回転機の接続形態は種々の態様が可能である。
【0038】
上記合成分配装置は、例えば第2回転要素の回転速度が略一定の状態で第3回転要素の回転速度が低下すると第1回転要素の回転速度も低下するように構成され、その場合は、障害物やブレーキ操作などで車速が急激に低下した時にエンジンストールを生じる可能性がある。また、第3回転要素の回転速度が略一定の状態で回転機のトルク増加に伴う第2回転要素の回転速度変化に起因して第1回転要素の回転速度が低下するように構成され、その場合は、回転機トルクが急激に増加した時にエンジンストールを生じる可能性がある。
【0039】
具体的には、合成分配装置がダブルピニオン型の遊星歯車装置の場合、例えば(a) サンギヤにエンジンが連結されるとともにキャリアに回転機が連結される一方、(b) その遊星歯車装置のリングギヤをケースに連結する第1ブレーキと、(c) 前記キャリアを変速機に連結する第1クラッチと、(d) 前記リングギヤを前記変速機に連結する第2クラッチと、を有して構成され、第1クラッチおよび第1ブレーキが解放されるとともに第2クラッチが係合される走行モードでの走行時に本発明は適用される。この場合は、障害物やブレーキ操作などで車速が急激に低下した時にエンジンストールを生じる可能性があるし、回転機トルク(逆回転の場合は回生制動トルク、正回転の場合は力行トルク)が急激に増加した時にもエンジンストールを生じる可能性がある。
【0040】
ストール予想判断基準は、実際にエンジンストールが発生する前に制御要素の補正が行われるように設定することが望ましい。なお、このようなエンジンストールの予想とは別に、実際にエンジンストールが発生したか否かを判断して、直ちに上記制御要素の補正などを行う手段を設けることも可能である。
【0044】
本発明はエンジンストールの発生を未然に防止することを目的としているが、万が一エンジンストールした場合、自動で始動できる時には直ちにエンジンを再始動するように構成することが望ましい。また、自動で始動することができない場合は、直ちに運転者に再始動の必要性やその方法を知らせるように構成することが望ましい。
【0045】
請求項2に係る発明では、特にトルク合成モードでの走行中にエンジンストールが発生する可能性が高いため、少なくともそのトルク合成モードでの走行中に本発明を適用することが望ましいが、車両停止中や走行モードの切換過渡時、或いはその他の走行モードにおいてもエンジンストールの可能性はあるため、エンジン作動中の総ての状態で本発明を適用することが適当である。
【0048】
請求項3に係る発明で補助駆動手段により第3の駆動源による駆動力を増加させる増加量は、ストール防止手段による回転機のトルク変化速度の低下に伴う駆動力の低下量と略一致させることが望ましいが、予め定められた一定量だけ増加させるなど、種々の態様が可能である。第3の駆動源は、制御が容易で応答性に優れた電動モータが適当で、発電機としても使用できるモータジェネレータを採用することもできる。
【0050】
請求項7に係る発明の所定の回復条件は、例えばストール予想判断基準に従って行われるエンジンストールの予想が途絶えた状態が、車両の始動スイッチ(イグニッションスイッチなど)のON操作回数が所定回数(例えば100〜200回程度)に達するまで継続した場合、エンジンの始動回数が所定回数に達するまで継続した場合、或いは車両の走行距離が所定距離に達するまで継続した場合など、適宜定められる。
【0051】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例であるエンジンストール防止制御装置を備えている車両用駆動制御装置としてのハイブリッド駆動制御装置10を説明する概略構成図で、図2は変速機12を含む骨子図であり、このハイブリッド駆動制御装置10は、燃料の燃焼で動力を発生する内燃機関等のエンジン14、電動モータおよび発電機として用いられるモータジェネレータ16、およびダブルピニオン型の遊星歯車装置18を備えて構成されており、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両などに横置きに搭載されて使用される。遊星歯車装置18のサンギヤ18sにはエンジン14が連結され、キャリア18cにはモータジェネレータ16が連結され、リングギヤ18rは第1ブレーキB1を介してケース20に連結されるようになっている。また、キャリア18cは第1クラッチC1を介して変速機12の入力軸22に連結され、リングギヤ18rは第2クラッチC2を介して入力軸22に連結されるようになっている。上記モータジェネレータ16は回転機に相当し、遊星歯車装置18は歯車式の合成分配装置に相当し、サンギヤ18sは第1回転要素、キャリア18cは第2回転要素、リングギヤ18rは第3回転要素に相当する。また、エンジン14およびモータジェネレータ16は走行用駆動源である。
【0052】
上記クラッチC1、C2および第1ブレーキB1は、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる湿式多板式の油圧式摩擦係合装置で、油圧制御回路24から供給される作動油によって摩擦係合させられるようになっている。図3は、油圧制御回路24の要部を示す図で、電動ポンプを含む電動式油圧発生装置26で発生させられた元圧PCが、マニュアルバルブ28を介してシフトレバー30(図1参照)のシフトポジションに応じて各クラッチC1、C2、ブレーキB1へ供給されるようになっている。シフトレバー30は、運転者によって操作されるシフト操作部材で、本実施例では「B」、「D」、「N」、「R」、「P」の5つのシフトポジションに選択操作されるようになっており、マニュアルバルブ28はケーブルやリンク等を介してシフトレバー30に連結され、そのシフトレバー30の操作に従って機械的に切り換えられるようになっている。
【0053】
「B」ポジションは、前進走行時に変速機12のダウンシフトなどにより比較的大きな動力源ブレーキが発生させられるシフトポジションで、「D」ポジションは前進走行するシフトポジションであり、これ等のシフトポジションでは出力ポート28aからクラッチC1およびC2へ元圧PCが供給される。第1クラッチC1へは、シャトル弁31を介して元圧PCが供給されるようになっている。「N」ポジションは動力源からの動力伝達を遮断するシフトポジションで、「R」ポジションは後進走行するシフトポジションで、「P」ポジションは動力源からの動力伝達を遮断するとともに図示しないパーキングロック装置により機械的に駆動輪の回転を阻止するシフトポジションであり、これ等のシフトポジションでは出力ポート28bから第1ブレーキB1へ元圧PCが供給される。出力ポート28bから出力された元圧PCは戻しポート28cへも入力され、上記「R」ポジションでは、その戻しポート28cから出力ポート28dを経てシャトル弁31から第1クラッチC1へ元圧PCが供給されるようになっている。
【0054】
クラッチC1、C2、およびブレーキB1には、それぞれコントロール弁32、34、36が設けられ、それ等の油圧PC1、PC2、PB1が制御されるようになっている。クラッチC1の油圧PC1についてはON−OFF弁38によって調圧され、クラッチC2およびブレーキB1についてはリニアソレノイド弁40によって調圧されるようになっている。
【0055】
そして、上記クラッチC1、C2、およびブレーキB1の作動状態に応じて、図4に示す各走行モードが成立させられる。すなわち、「B」ポジションまたは「D」ポジションでは、「ETCモード」、「直結モード」、「モータ走行モード(前進)」の何れかが成立させられ、「ETCモード」では、第2クラッチC2を係合するとともに第1クラッチC1および第1ブレーキB1を開放した状態、言い換えればサンギヤ18s、キャリア18c、およびリングギヤ18rが相対回転可能な状態で、エンジン14およびモータジェネレータ16を共に作動させてサンギヤ18sおよびキャリア18cにトルクを加え、リングギヤ18rを回転させて車両を前進走行させる。「直結モード」では、クラッチC1、C2を係合するとともに第1ブレーキB1を開放した状態で、エンジン14を作動させて車両を前進走行させる。また、「モータ走行モード(前進)」では、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2および第1ブレーキB1を開放した状態で、モータジェネレータ16を作動させて車両を前進走行させる。「モータ走行モード(前進)」ではまた、アクセルOFF時などにモータジェネレータ16を回生制御することにより、車両の運動エネルギーで発電してバッテリ42(図1参照)を充電するとともに車両に制動力を発生させることができる。
【0056】
図5は、上記前進モードにおける遊星歯車装置18の作動状態を示す共線図で、「S」はサンギヤ18s、「R」はリングギヤ18r、「C」はキャリア18cを表しているとともに、それ等の間隔はギヤ比ρ(=サンギヤ18sの歯数/リングギヤ18rの歯数)によって定まる。具体的には、「S」と「C」の間隔を1とすると、「R」と「C」の間隔がρになり、本実施例ではρが0.6程度である。また、(a) のETCモードにおけるトルク比は、エンジントルクTe:CVT入力軸トルクTin:モータトルクTm=ρ:1:1−ρであり、モータトルクTmはエンジントルクTeより小さくて済むとともに、定常状態ではそれ等のモータトルクTmおよびエンジントルクTeを加算したトルクがCVT入力軸トルクTinになる。この「ETCモード」は、エンジン14およびモータジェネレータ16のトルクを合成して駆動輪52側へ出力するとともに、走行抵抗によるモータジェネレータ16のトルクの反力がエンジン14の回転速度を低下させる方向に作用するトルク合成モードに相当する。上記CVTは無段変速機の意味であり、本実施例では変速機12としてベルト式無段変速機が設けられている。
【0057】
図4に戻って、「N」ポジションまたは「P」ポジションでは、「ニュートラル」または「充電・Eng始動モード」の何れかが成立させられ、「ニュートラル」ではクラッチC1、C2および第1ブレーキB1の何れも開放する。「充電・Eng始動モード」では、クラッチC1、C2を開放するとともに第1ブレーキB1を係合し、モータジェネレータ16を逆回転させてエンジン14を始動したり、エンジン14により遊星歯車装置18を介してモータジェネレータ16を回転駆動するとともにモータジェネレータ16を回生制御して発電し、バッテリ42(図1参照)を充電したりする。
【0058】
「R」ポジションでは、「モータ走行モード(後進)」または「フリクション走行モード」が成立させられ、「モータ走行モード(後進)」では、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2および第1ブレーキB1を開放した状態で、モータジェネレータ16を逆方向へ回転駆動してキャリア18c更には入力軸22を逆回転させることにより車両を後進走行させる。「フリクション走行モード」は、上記「モータ走行モード(後進)」での後進走行時にアシスト要求が出た場合に実行されるもので、エンジン14を始動してサンギヤ18sを正方向へ回転させるとともに、そのサンギヤ18sの回転に伴ってリングギヤ18rが正方向へ回転させられている状態で、第1ブレーキB1をスリップ係合させてそのリングギヤ18rの回転を制限することにより、キャリア18cに逆方向の回転力を作用させて後進走行をアシストするものである。
【0059】
前記変速機12はベルト式無段変速機で、その出力軸44からカウンタ歯車46を経て差動装置48のリングギヤ50に動力が伝達され、その差動装置48により左右の駆動輪(本実施例では前輪)52に動力が分配される。
【0060】
本実施例のハイブリッド駆動制御装置10は、図1に示すHVECU60によって走行モードが切り換えられるようになっている。HVECU60は、CPU、RAM、ROM等を備えていて、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を実行することにより、電子スロットルECU62、エンジンECU64、M/GECU66、T/MECU68、前記油圧制御回路24のON−OFF弁38、リニアソレノイド弁40、エンジン14のスタータ70などを制御する。電子スロットルECU62はエンジン14の電子スロットル弁72を開閉制御するもので、エンジンECU64はエンジン14の燃料噴射量や可変バルブタイミング機構、点火時期などによりエンジン出力を制御するもので、M/GECU66はインバータ74を介してモータジェネレータ16の力行トルクや回生制動トルク等を制御するもので、T/MECU68は変速機12の変速比γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout )やベルト張力などを制御するものである。前記油圧制御回路24は、変速機12の変速比γやベルト張力を制御するための回路を備えている。スタータ70はモータジェネレータで、エンジン14の始動時にクランキングするだけでなく、エンジン14によって回転駆動される際に回生制御(発電制御)されることにより電気エネルギーを発生し、エアコン等の補機類の電力源やバッテリ42の充電などに用いられる。
【0061】
上記HVECU60には、アクセル操作量センサ76からアクセル操作部材としてのアクセルペダル78の操作量θacを表す信号が供給されるとともに、シフトポジションセンサ80からシフトレバー30の操作ポジション(シフトポジション)を表す信号が供給される。また、エンジン回転速度センサ82、モータ回転速度センサ84、入力軸回転速度センサ86、出力軸回転速度センサ88から、それぞれエンジン回転速度(回転数)Ne、モータ回転速度(回転数)Nm、入力軸回転速度(入力軸22の回転速度)Nin、出力軸回転速度(出力軸44の回転速度)Nout を表す信号がそれぞれ供給される。出力軸回転速度Nout は車速Vに対応する。この他、バッテリ42の蓄電量SOCなど、運転状態を表す種々の信号が供給されるようになっている。蓄電量SOCは単にバッテリ電圧であっても良いが、充放電量を逐次積算して求めるようにしても良い。上記アクセル操作量θacは運転者の出力要求量を表している。
【0062】
図6は、シフトレバー30が「D」ポジションまたは「B」ポジションへ操作されている前進走行時に、運転状態に応じて前記「ETCモード」、「直結モード」、「モータ走行モード(前進)」を適宜切り換える際の作動を説明するフローチャートで、HVECU60の信号処理によって実行される。
【0063】
図6のステップS1では、シフトレバー30のシフトポジションが「D」または「B」か否かを判断し、「D」または「B」の場合はステップS2で車速Vが判定車速V1以下か否かを判断する。判定車速V1は、モータジェネレータ16およびエンジン14の出力特性やエネルギー消費量等に基づいて例えば15km/h程度等の一定値が定められており、V>V1であればステップS7で「直結モード」を選択し、V≦V1の場合は、ステップS3で運転者の出力要求量SPが判定値SP1以下か否かを判断する。出力要求量SPは、アクセル操作量θacや車速Vなどに基づいて予め定められた演算式やマップなどから求められ、判定値SP1は、例えばモータジェネレータ16だけでは必要な駆動力が得られないような出力値で、変速比γなどをパラメータとして設定される。そして、SP>SP1であれば、ステップS6で「ETCモード」を選択し、SP≦SP1の場合は、ステップS4で蓄電量SOCが判定値SOC1以上が否かを判断する。判定値SOC1は、充放電効率などに基づいて予め定められた下限値で、SOC≧SOC1であればステップS5で「モータ走行モード(前進)」を選択するが、SOC<SOC1の場合は前記ステップS6で「ETCモード」を選択する。
【0064】
図7は、「ETCモード」による走行時におけるエンジン制御およびモータ制御の一例を説明するフローチャートで、エンジンECU64、M/GECU66などの信号処理によって実行される。
【0065】
図7のステップSS1では、アクセルONか否か、すなわちアクセルペダル78が踏込み操作されているか否かを、アクセル操作量θacに基づいて判断し、アクセルONの場合は、ステップSS2でモータジェネレータ16の回転速度Nmが目標モータ回転速度Nm* になるように、モータジェネレータ16を回転速度制御する。目標モータ回転速度Nm* は、基本的にはモータジェネレータ16を回生制御して発電することによりバッテリ42を充電するために、逆回転方向の所定の回転速度、例えば−1000rpm程度等の一定値、或いは車速Vなどをパメラータとして設定される。また、回転速度制御は、モータ回転速度Nmが目標モータ回転速度Nm* と略一致するように、モータジェネレータ16の回生制動トルクをフィードバック制御するもので、この時発生した電気エネルギーでバッテリ42を充電する。
【0066】
次のステップSS3では、アクセル操作量θacに応じてエンジン14の出力制御を行う。具体的には、本実施例ではモータジェネレータ16の目標モータ回転速度Nm* から車速Vおよび変速機12の変速比γに応じて求められる目標エンジン回転速度Ne* になるように、アクセル操作量θacに応じて電子スロットル弁72のスロットル弁開度等を制御する。
【0067】
一方、ステップSS1の判断がNOの場合、すなわちアクセルOFFのコースト走行時の場合は、ステップSS4でエンジン回転速度Neが予め定められたアイドル回転速度Neidl になるようにエンジン14の出力制御を行うとともに、ステップSS5では、モータジェネレータ16の回転速度制御を中止して、モータジェネレータ16の定トルク制御に移行する。アイドル回転速度Neidl は、例えば1000〜1500rpm程度の回転速度である。
【0068】
ここで、このようなハイブリッド駆動制御装置10においては、種々の条件下でエンジンストールを生じる可能性がある。例えば、前記ステップSS2ではモータジェネレータ16が回転速度制御されることから、障害物の乗り越えや急ブレーキなどで車両に過大な走行負荷が作用した場合に、図17に破線で示すように遊星歯車装置18のリングギヤ18r「R」の回転速度が低下するとともに、サンギヤ18s「S」の回転速度すなわちエンジン回転速度Neが低下して、エンジンストールを生じる可能性がある。「ETCモード」でのコースト走行時(アクセルOFF)においても、急ブレーキなどで車速Vが急に低下すると、エンジン回転速度Neが低下してエンジンストールを生じる可能性がある。「ETCモード」での走行中にアクセルOFFからONへ変化し、モータジェネレータ16を定トルク制御から回転速度制御へ移行する場合など、モータジェネレータ16の回生制動トルクが急に大きくなり、キャリア18c「C」の回転速度が急に変化する(0に近くなる)と、その反力でサンギヤ18s「S」の回転速度すなわちがエンジン回転速度Neが低下してエンジンストールする可能性がある。「ETCモード」から「直結モード」への移行時には、モータ回転速度Nmが上昇させられるが、この時のモータジェネレータ16のトルク変化速度が大き過ぎると、同じくその反力でエンジン回転速度Neが低下してエンジンストールを生じる可能性がある。「直結モード」での走行中においても、障害物の乗り越えや急ブレーキなどで車速Vが急に低下した時に、モード切換えが遅れるなどしてエンジン回転速度Neが低下し、エンジンストールを生じる可能性がある。Rポジションでの「フリクション走行モード」での走行中においても、障害物の乗り越えや急ブレーキなどで車速Vが急に低下した時に、モード切換えが遅れるなどしてエンジン回転速度Neが低下し、エンジンストールを生じる可能性がある。
【0069】
一方、本実施例のハイブリッド駆動制御装置10は、上記エンジンストールを防止するためのエンジンストール防止制御を、図8のフローチャートに従って実行するようになっている。この図8のフローチャートはHVECU60およびエンジンECU64の信号処理により、所定のサイクルタイムで繰り返し実行されるもので、第1発明〜第4発明、第9発明、第10発明、第13発明の一実施例に相当するものであり、ステップR1−3〜R1−7を実行する部分はストール防止手段として機能しており、その内のステップR1−3はストール予想手段に相当し、ステップR1−4〜R1−7は補正手段に相当する。また、ステップR1−8およびR1−9を実行する部分は、第13発明の回復手段として機能している。
【0070】
図8のステップR1−1では、予め定められた所定の実行条件を満足するか否かを判断し、満足する場合はステップR1−2以下を実行するが、満足しない場合は直ちにステップR1−8以下を実行する。実行条件は、エンジンストールを生じる可能性がある運転状態であることで、例えば前記「ETCモード」または「フリクション走行モード」か否か、エンジン14を動力源とする走行モードか否か、或いは単純にエンジン14が作動状態か否か、などで判断すれば良い。ステップR1−2では、実際にエンジンストールが発生したか否かをエンジン回転速度Neなどで判断し、エンジンストールした場合は直ちにステップR1−6以下を実行するが、エンジンストールでなければステップR1−3を実行する。
【0071】
ステップR1−3では、エンジン回転速度Neが予め定められた下限値NESTP以下になったか否かを判断する。下限値NESTPは、回転速度Neの低下でエンジンストールが発生する可能性があることを予想するためのもので、過大な走行負荷などによりエンジン回転速度Neが低下した場合に生じる値であり、エンジン14のアイドル回転速度Neidl より低いとともに、エンジン14が失火する回転速度よりも高い一定値、例えば800rpm程度の値である。Ne>NESTPであればステップR1−8以下を実行するが、Ne≦NESTPになった場合にはステップR1−4を実行し、カウンタcnestpに1を加算するとともに、ステップR1−5で、そのカウンタcnestpの値が予め定められた判定値CNESTP1以上か否かを判断する。判定値CNESTP1は、実際にエンジンストールが発生する可能性が高いか否かを判断するためのもので、上記下限値NESTPの値によっても異なるが、例えば「3」程度の値が設定され、cnestp≧CNESTP1になるとステップR1−6、R1−7を実行する。ステップR1−3の判断、すなわちNe≦NESTPであることが、ストール予想判断基準で、下限値NESTPはストール予想判定値で、カウンタcnestpの値はエンジンストールの予想回数である。
【0072】
ステップR1−6では、カウンタcnestpをリセットして0にし、ステップR1−7では、目標エンジン回転速度netagに予め定められた補正量neupを加算してエンジン出力制御、すなわちスロットル制御などを行うように学習補正する。すなわち、前記ステップR1−3の判断がYESになるエンジンストールの予想回数(カウンタcnestp)が、判定値CNESTP1に達する毎に、目標エンジン回転速度netagを補正量neupずつ上昇させるのである。目標エンジン回転速度netagは、具体的には前記図7のステップSS3における目標エンジン回転速度Ne* 、ステップSS4におけるアイドル回転速度Neidl などで、補正量neupは、エンジンストールが少しずつ発生し難くなるように例えば50rpm程度の値が設定される。エンジンECU64による一連の信号処理のうち、目標エンジン回転速度Ne* 、アイドル回転速度Neidl になるようにエンジン14を出力制御するステップSS3、SS4を実行する部分は、エンジン回転速度制御手段として機能している。また、目標エンジン回転速度netag(Ne* 、Neidl )は、エンジンストールが発生し難くなるように補正される所定の制御要素に相当し、補正量neupは第4発明の所定量である。
【0073】
なお、実際にエンジンストールが発生し、ステップR1−2に続いてステップR1−6、R1−7が実行される場合は、それ等のステップの前または後で、自動で始動できる時には直ちにエンジン14を再始動する一方、自動で始動することができない場合は、運転席の表示パネルや音声などで運転者に再始動の必要性やその方法を知らせるようになっている。
【0074】
ステップR1−8では、予め定められた所定の回復条件を満足するか否かを判断し、満足する場合は、次のステップR1−9で目標エンジン回転速度netagの補正を前記補正量neupずつ元へ戻す。所定の回復条件は、例えばストール予想判断基準に従って行われるエンジンストールの予想が途絶えた状態、具体的にはステップR1−3の判断がNO(否定)の状態が、車両の始動スイッチ(イグニッションスイッチなど)のON操作回数が所定回数(例えば100〜200回程度)に達するまで継続した場合、エンジン14の始動回数が所定回数に達するまで継続した場合、或いは車両の走行距離が所定距離に達するまで継続した場合などで、この回復についても、1回の回復毎に積算回数や距離などをリセットして繰り返し回復処理が行われるようになっている。
【0075】
このような本実施例のハイブリッド駆動制御装置10においては、ステップR1−3で予め定められたストール予想判断基準に従ってエンジンストールを予想し、その予想回数(カウンタsnestp)が判定値CNESTP1に達した場合には、以後のエンジン作動時にエンジンストールが発生し難くなるように目標エンジン回転速度netagを補正量neupだけ上昇させるため、エンジン回転速度Neを必要以上に高くすることなく、エンジンストールが発生する可能性を低くすることができる。
【0076】
また、実際の運転状態の中でエンジンストールを予想し、必要に応じて目標エンジン回転速度netagを補正するため、運転環境や運転者の運転嗜好の相違、各種部品のばらつきなどによる車両毎の個体差、などに拘らず、エンジン回転速度Neを必要以上に高くすることなくエンジンストールの可能性を低減できるとともに、経時変化によってエンジンストールし易くなった場合にも対応できる。
【0077】
また、本実施例では目標エンジン回転速度netagを一定の補正量neupだけ上昇させるため、エンジン14に作用する負荷が急に増大してエンジン回転速度Neが多少低下しても、エンジンストールを生じる回転速度まで低下することが抑制され、簡単な構成でエンジンストールを防止できる。
【0078】
また、本実施例では、エンジン回転速度Neが予め定められた一定の下限値NESTP以下になったか否かによってエンジンストールを予想するようになっているが、エンジン回転速度Neはエンジンストールに密接に関係するため、エンジンストールの可能性を高い精度で予想でき、目標エンジン回転速度netagが必要以上に補正されることが回避される。
【0079】
また、本実施例では、予め定められた所定の回復条件を満足する場合(ステップR1−8の判断がYES)に、上記補正された目標エンジン回転速度netagを補正量neupずつ元に戻すようになっているため、特殊な運転状態などで過度に補正された場合や構成部品の経時変化などでエンジンストールの可能性が低下した場合などには、目標エンジン回転速度netagの補正が戻され、補正に起因する燃費や走行性能の低下などが防止されて常に適切な状態に保持される。
【0080】
次に、本発明の他の実施例を説明する。
図9は、前記図8に対応するフローチャートで、ステップR2−1〜R2−8は前記ステップR1−1〜R1−8と同じであり、ステップR2−9のみが相違する。これは第14発明の一実施例に相当するもので、ステップR2−9では、エンジンストールの予想回数を表すカウンタcnestpの値を1だけ減算し、これにより目標エンジン回転速度netagの補正を抑制する。ステップR2−8およびR2−9を実行する部分は回数低減手段として機能しており、ステップR2−8の回復条件は、前記ステップR1−8の回復条件と同じであっても良いが、比較的緩い条件を設定するようにしても良い。
【0081】
本実施例では、予め定められた所定の回復条件を満足する場合(ステップR2−8の判断がYES)にカウンタcnestpの値が1だけ減算されるため、特殊な運転状態などで過度にカウンタcnestpが積算された場合や構成部品の経時変化などでエンジンストールの可能性が低下した場合などには、カウンタcnestpが値が減らされ、目標エンジン回転速度netagの補正が必要以上に行われて燃費や走行性能などが悪化することが防止される。
【0082】
図10は、前記図8に対応するフローチャートで、ステップR3−1〜R3−6、R3−8は前記ステップR1−1〜R1−6、R1−8と同じであり、ステップR3−7およびR3−9が相違する。これは第5発明の一実施例に相当するもので、ステップR3−7では、車両走行用の駆動トルクとは別にエンジン14に作用する負荷、例えばエンジン14によって駆動されるエアコンなどの補機類やスタータ70の発電などによる負荷、を所定量ずつ低減する一方、ステップR3−9では、その低減した負荷を所定量ずつ増やして元に戻す。この場合も、ステップR3−3〜R3−7を実行する部分はストール防止手段として機能しており、ステップR3−8およびR3−9を実行する部分は回復手段として機能している。また、補機類やスタータ70の発電による負荷は、エンジンストールが発生し難くなるように補正される所定の制御要素に相当する。なお、ステップR3−9の代わりに図9のステップR2−9と同様のステップを設けて、カウンタcnestpの値を1ずつ減算するようにしても良い。
【0083】
本実施例でも、ステップR3−7で補機類やスタータ70の発電など、走行用の駆動トルクとは別にエンジン14に作用する負荷が低減されるため、エンジン回転速度Neを必要以上に高くすることなくエンジンストールの発生が抑制されるとともに、簡単な構成でエンジンストールを防止できるなど、第1実施例と同様の効果が得られる。
【0084】
図11は、前記図8の代わりに実行されるフローチャートで、第1発明〜第3発明、第6発明、第9発明、第10発明、第13発明の一実施例に相当するものであり、ステップQ1−4、Q1−5、Q1−8を実行する部分はストール防止手段として機能しており、その内のステップQ1−4はストール予想手段に相当し、ステップQ1−5、Q1−8は補正手段に相当する。また、ステップQ1−6、Q1−7、Q1−8を実行する部分は、第13発明の回復手段として機能している。なお、ステップQ1−1、Q1−2、Q1−4、Q1−6は、それぞれ前記ステップR1−1、R1−2、R1−3、R1−8と実質的に同じである。
【0085】
図11において、実際にエンジンストールが発生してステップQ1−2に続いて実行するステップQ1−3では、カウンタcnestpの値に2を加算し、ステップQ1−8では、そのカウンタcnestpの値に応じてモータトルクのなまし定数stcを算出・記憶する。モータトルクのなまし定数stcは、モータジェネレータ16のトルク変化速度をなますためのもので、例えば図12に示すようにカウンタcnestpの値が大きくなるに従って大きくなるように予め設定されたマップや演算式などから求められる一方、モータジェネレータ16のトルク指令値stmは、なまし定数stcおよび前回のトルク指令値stmoldを用いて次式(1) に従ってなまし処理され、そのなまし処理されたトルク指令値stmに応じてモータジェネレータ16のトルク(モータ電流)が制御される。このトルク指令値stmの算出や、そのトルク指令値stmに基づくモータジェネレータ16のトルク制御は、前記M/GECU66によって行われる。
stm=stmold+{(stm−stmold)/stc}・・・(1)
【0086】
ここで、カウンタcnestpの値が加算される程なまし定数stcは大きくなり、それに伴ってトルク指令値stmの変化速度は小さくなるため、例えば前記「ETCモード」などモータジェネレータ16のトルク反力がエンジン14に作用する運転モードでは、モータトルクの変化に起因してエンジン14に作用する負荷の変動が緩和され、エンジンストールの発生が抑制される。なまし定数stcは、走行モードや加減速などの運転状態に応じて複数設定されており、そのなまし定数stcを求めるためのマップ(演算式)やカウンタcnestpは、運転状態に応じて複数設けられている。なお、本実施例においても、前記第1実施例と同様にしてエンジン14が速やかに再始動させられるようになっている。
【0087】
ストール予想手段として機能するステップQ1−4の判断がYESの場合、すなわちエンジン回転速度Neが下限値NESTP以下になった場合に実行するステップQ1−5では、エンジンストールの予想回数を表すカウンタcnestpの値に1を加算し、ステップQ1−8では、そのカウンタcnestpの値に応じてなまし定数stcを算出・記憶する。すなわち、本実施例ではエンジンストールの発生が予想される毎に、カウンタcnestpの値が1ずつ加算されるとともに、そのカウンタcnstpの値に応じてなまし定数stcが大きくなってトルク指令値stmの変化速度が小さくなり、モータトルクの急な変化に起因するエンジンストールの発生が抑制されるのである。なまし定数stcは、エンジンストールが発生し難くなるように補正される所定の制御要素に相当する。
【0088】
ステップQ1−6の判断がYESの場合、すなわち所定の回復条件を満足する場合に実行するステップQ1−7では、前記カウンタcnestpの値を1だけ減算し、ステップQ1−8では、そのカウンタcnestpの値に応じてなまし定数stcを算出・記憶する。このようにカウンタcnestpの値が減算されることにより、なまし定数stcが小さくなってトルク指令値stmの変化速度が大きくなる。なお、ステップQ1−6では、運転状態に拘らず前記第1実施例と同様にして回復条件を判断するようになっており、ステップQ1−7では、運転状態に応じて設けられた複数のカウンタcnestpの値をそれぞれ1ずつ減らすようになっている。
【0089】
本実施例では、ステップQ1−4で予め定められたストール予想判断基準に従ってエンジンストールを予想するとともに、1回予想する毎にカウンタcnestpの値が1ずつ加算されてなまし定数stcが大きくなり、トルク指令値stmの変化速度が小さくされるため、エンジン回転速度Neを必要以上に高くすることなくモータトルクの急な変化に起因するエンジンストールの発生が抑制される。
【0090】
また、本実施例では、エンジンストールの予想回数であるカウンタcnestpの値が1変化するだけで、直ちになまし定数stcが変更されるため、エンジンストールの発生を防止しつつなまし定数stcを極め細かく制御することが可能で、モータトルクの変化速度を適切に制御できる。
【0091】
なお、前記各実施例においても、エンジンストールの予想回数であるカウンタcnestpの値が1変化する毎に、目標エンジン回転速度netagやエンジン14に作用する負荷を極め細かく切り換えるようにしても良い。
【0092】
一方、実際の運転状態の中でエンジンストールを予想してなまし定数stcを補正するため、運転環境や運転者の運転嗜好の相違、各種部品のばらつきなどによる車両毎の個体差、などに拘らず、エンジン回転速度Neを必要以上に高くすることなくエンジンストールの可能性を低減できるとともに、経時変化によってエンジンストールし易くなった場合にも対応できる。また、予め定められた所定の回復条件を満足する場合(ステップQ1−6の判断がYES)には、カウンタcnestpの値を1ずつ減らしてなまし定数stcを元に戻すようになっているため、特殊な運転状態などで過度に補正された場合や構成部品の経時変化などでエンジンストールの可能性が低下した場合などには、なまし定数stcの補正が戻され、補正に起因する燃費や走行性能の低下などが防止されて常に適切な状態に保持されるなど、前記実施例と同様の効果が得られる。
【0093】
図13の車両用駆動制御装置は、前記ハイブリッド駆動制御装置10の他に第3の駆動源としてリヤ側モータジェネレータ90を備えており、インバータ92を介して前記バッテリ42に電気的に接続され、力行制御および回生制御されるようになっている。また、差動装置94を介して左右の後輪96に機械的に連結され、力行制御されることにより後輪96を回転駆動するとともに、回生制御により後輪96に回生制動力を作用させる。このような車両用駆動制御装置においても、フロント側のハイブリッド駆動制御装置10については基本的に前記各実施例と同様な制御を行うことができるが、前記図11のフローチャートに従ってモータトルクのなまし定数stcを補正する場合には、そのなまし定数stcの補正で運転者の加速要求に対するレスポンス(応答性)が損なわれるため、例えば図14のフローチャートに示すようにリヤ側モータジェネレータ90を用いてアシスト制御することが望ましい。
【0094】
すなわち、ステップQQ1では、なまし定数stcに応じて前記(1) 式に従って求められるモータジェネレータ16のトルク指令値stmを読み込み、ステップQQ2では、カウンタcnestp=0の時のなまし定数stcに基づいて同じく(1) 式に従って基準トルク指令値stm0 を求める。そして、次のステップQQ3では、その基準トルク指令値stm0 と実際のトルク指令値stmとの差や、前記変速機12の変速比γ、遊星歯車装置18のギヤ比ρなどに基づいて不足量tm* を算出し、ステップQQ4では、通常のリヤ側駆動トルク(0の場合を含む)に不足量tm* 分のトルクを付加してリヤ側モータジェネレータ90のトルク制御を行う。リヤ側モータジェネレータ90に接続されたインバータ92は前記M/GECU66によって制御されるようになっており、図14のフローチャートはそのM/GECU66によって実行されるとともに、その図14の各ステップQQ1〜QQ4を実行する部分は、第7発明の補助駆動手段として機能している。
【0095】
本実施例は、第7発明、第8発明の実施例に相当するもので、ストール防止手段によるモータジェネレータ16のトルク変化速度の低下、すなわちなまし定数stcの増加、によるフロント側の駆動力不足を補うように、リヤ側モータジェネレータ90による駆動力が増加させられるため、エンジンストールを防止しつつ運転者の出力要求に対応する十分なレスポンスを確保できる。特に、本実施例では不足量tm* だけリヤ側モータジェネレータ90で補うようになっているため、なまし定数stcの変化に起因して車両全体の駆動トルクが変動することがなく、常にアクセル操作量θacなどに応じて所望の駆動トルクが得られる。その場合に、本実施例では第3の駆動源としてモータジェネレータ90が用いられているため、優れた応答性が得られ、車両全体の駆動トルクが高い精度で制御される。
【0096】
また、エンジン14およびモータジェネレータ16によって回転駆動される駆動輪(前輪)52と、第3の駆動源であるリヤ側モータジェネレータ90によって回転駆動される駆動輪(後輪)96とが異なるため、車両全体の駆動系統の構築が容易である。
【0097】
図15は、前記図11に対応するフローチャートで、ステップQ2−1〜Q2−3、Q2−5〜Q2−8は前記ステップQ1−1〜Q1−3、Q1−5〜Q1−8と同じであり、ステップQ2−4のみが相違する。これは第11発明の一実施例に相当するもので、ステップQ2−4では、前記ステップSS3で求められる目標エンジン回転速度Ne* などの目標エンジン回転速度netagから実際のエンジン回転速度Neを引き算した偏差(netag−Ne)が予め定められた所定値α以上か否かを判断する。所定値αは、エンジン回転速度Neの低下でエンジンストールが発生することを予想するためのもので、モータトルクの急な変化による反力などでエンジン回転速度Neが急激に低下した場合に発生する比較的大きな値であり、予め一定値が定められても良いが、車速V或いはエンジン回転速度Neなどをパラメータとして、例えば車速Vやエンジン回転速度Neが低い程小さい値が設定されるようにしても良い。このステップQ2−4は、エンジン14の回転速度に関する所定の物理量すなわち偏差(netag−Ne)に基づいてエンジンストールを予想するストール予想手段として機能しており、(netag−Ne)≧αであることがストール予想判断基準で、所定値αはストール予想判定値である。
【0098】
そして、上記偏差(netag−Ne)が所定値α以上の場合は、エンジンストールする可能性があると予想してステップQ2−5以下を実行し、カウンタcnestpに1を加算するとともに、そのカウンタcnestpの値に応じてなまし定数stcを算出・記憶する。ステップQ2−8でカウンタcnestpの値からなまし定数stcを求めるためのマップや演算式は、必ずしも前記実施例と同じである必要はなく、ステップQ2−4のストール予想判断基準の相違に応じて異なる特性で設定しても良い。
【0099】
本実施例においても、ステップQ2−4で予め定められたストール予想判断基準に従ってエンジンストールを予想するとともに、1回予想する毎にカウンタcnestpの値が1ずつ加算されてなまし定数stcが大きくなり、トルク指令値stmの変化速度が小さくされるため、エンジン回転速度Neを必要以上に高くすることなくモータトルクの急な変化に起因するエンジンストールの発生が抑制されるなど、前記図11の実施例と同様の効果が得られる。
【0100】
また、ステップQ2−4では偏差(netag−Ne)に基づいてエンジンストールを予想するため、エンジンストールに至る前のエンジン回転速度Neが比較的高い段階でエンジンストールを予想でき、前記実施例のようにエンジン回転速度Neが下限値NESTP以下になったか否かによって予想する場合に比較して、実際にエンジンストールが発生する可能性が低い段階でなまし定数stcを補正することが可能で、エンジンストールの発生をより確実に防止することができる。
【0101】
図16は、前記図11に対応するフローチャートで、ステップQ3−1〜Q3−3、Q3−5〜Q3−8は前記ステップQ1−1〜Q1−3、Q1−5〜Q1−8と同じであり、ステップQ3−4のみが相違する。これは第12発明の一実施例に相当するもので、ステップQ3−4では、一定時間(例えば図16のフローチャートの1サイクル)当りのエンジン回転速度Neの低下量ΔNeが予め定められた所定値β以上か否かを判断する。所定値βは、エンジン回転速度Neの低下でエンジンストールが発生することを予想するためのもので、モータトルクの急な変化による反力などでエンジン回転速度Neが急激に低下した場合に生じる比較的大きな値であり、予め一定値が定められても良いが、車速V或いはエンジン回転速度Neなどをパラメータとして、例えば車速Vやエンジン回転速度Neが低い程小さい値が設定されるようにしても良い。このステップQ3−4は、エンジン14の回転速度に関する所定の物理量すなわち低下量ΔNeに基づいてエンジンストールを予想するストール予想手段として機能しており、ΔNe≧βであることがストール予想判断基準で、所定値βはストール予想判定値であり、低下量ΔNeは低下速度に相当する。
【0102】
そして、上記低下量ΔNeが所定値β以上の場合は、エンジンストールする可能性があると予想してステップQ3−5以下を実行し、カウンタcnestpに1を加算するとともに、そのカウンタcnestpの値に応じてなまし定数stcを算出・記憶する。ステップQ3−8でカウンタcnestpの値からなまし定数stcを求めるためのマップや演算式は、必ずしも前記実施例と同じである必要はなく、ステップQ3−4のストール予想判断基準の相違に応じて異なる特性で設定しても良い。
【0103】
本実施例においても、ステップQ3−4で予め定められたストール予想判断基準に従ってエンジンストールを予想するとともに、1回予想する毎にカウンタcnestpの値が1ずつ加算されてなまし定数stcが大きくなり、トルク指令値stmの変化速度が小さくされるため、エンジン回転速度Neを必要以上に高くすることなくモータトルクの変化に起因するエンジンストールの発生が抑制されるなど、前記図11の実施例と同様の効果が得られる。
【0104】
また、ステップQ3−4では低下量ΔNeに基づいてエンジンストールを予想するため、エンジンストールに至る前のエンジン回転速度Neが比較的高い段階でエンジンストールを予想でき、エンジン回転速度Neが下限値NESTP以下になったか否かによって予想する場合に比較して、実際にエンジンストールが発生する可能性が低い段階でなまし定数stcを補正することが可能であり、エンジンストールの発生をより確実に防止することができる。
【0105】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたハイブリッド駆動制御装置を説明する概略構成図である。
【図2】図1のハイブリッド駆動制御装置の動力伝達系を示す骨子図である。
【図3】図1の油圧制御回路の一部を示す回路図である。
【図4】図1のハイブリッド駆動制御装置において成立させられる幾つかの走行モードと、クラッチおよびブレーキの作動状態との関係を説明する図である。
【図5】図4のETCモード、直結モード、およびモータ走行モード(前進)における遊星歯車装置の各回転要素の回転速度の関係を示す共線図である。
【図6】図1のハイブリッド駆動制御装置において、前進走行時に運転状態に応じて「モータ走行モード」、「ETCモード」、或いは「直結モード」に切り換える作動の一例を説明するフローチャートである。
【図7】図1のハイブリッド駆動制御装置においてETCモードで走行する際の作動を説明するフローチャートである。
【図8】図1のハイブリッド駆動制御装置で実施されるエンジンストール防止制御の具体的内容を説明するフローチャートで、実際のエンジン回転速度Neに基づいてエンジンストールを予想するとともに、目標エンジン回転速度を上昇させてエンジンストールを防止する場合である。
【図9】実際のエンジン回転速度Neに基づいてエンジンストールを予想してエンジンストールを防止する別の例を説明するフローチャートである。
【図10】実際のエンジン回転速度Neに基づいてエンジンストールを予想してエンジンストールを防止する更に別の例を説明するフローチャートで、エンジン負荷を低減してエンジンストールを防止する場合である。
【図11】実際のエンジン回転速度Neに基づいてエンジンストールを予想してエンジンストールを防止する更に別の例を説明するフローチャートで、モータジェネレータのトルクのなまし定数を変更してエンジンストールを防止する場合である。
【図12】図11のステップQ1−8で求められるなまし定数stcとカウンタcnestpとの関係を説明する図である。
【図13】本発明が適用された車両用駆動制御装置の別の例を説明する概略構成図である。
【図14】図13の車両用駆動制御装置において、リヤ側モータジェネレータを用いてアシスト制御を実施する際の作動を説明するフローチャートである。
【図15】モータジェネレータのトルクのなまし定数を変更してエンジンストールを防止する別の例を説明するフローチャートで、目標エンジン回転速度と実際のエンジン回転速度との偏差(netag−NE)に基づいてエンジンストールを予想する場合である。
【図16】モータジェネレータのトルクのなまし定数を変更してエンジンストールを防止する更に別の例を説明するフローチャートで、実際のエンジン回転速度の低下速度ΔNeに基づいてエンジンストールを予想する場合である。
【図17】図1のハイブリッド駆動制御装置において、ETCモードでの走行時に過大な走行負荷が作用した場合の遊星歯車装置の各回転要素の回転速度変化を説明する共線図である。
【符号の説明】
10:ハイブリッド駆動制御装置 14:エンジン(走行用駆動源) 16:モータジェネレータ(回転機、走行用駆動源) 18:遊星歯車装置(合成分配装置) 18s:サンギヤ(第1回転要素) 18c:キャリア(第2回転要素) 18r:リングギヤ(第3回転要素) 52:駆動輪 60:HVECU 64:エンジンECU 66:M/GECU 90:リヤ側モータジェネレータ(第3の駆動源) 96:後輪 cnestp:カウンタ(予想回数) netag:目標エンジン回転速度(制御要素) stc:なまし定数(制御要素) netag−Ne:偏差 ΔNe:エンジン回転速度の低下量
ステップR1−3〜R1−7:ストール防止手段
ステップR1−3:ストール予想手段
ステップR1−4〜R1−7:補正手段
ステップR1−8、R1−9:回復手段
ステップR2−3〜R2−7:ストール防止手段
ステップR2−3:ストール予想手段
ステップR2−4〜R2−7:補正手段
ステップR2−8、R2−9:回数低減手段
ステップR3−3〜R3−7:ストール防止手段
ステップR3−3:ストール予想手段
ステップR3−4〜R3−7:補正手段
ステップR3−8、R3−9:回復手段
ステップQ1−4、Q1−5、Q1−8:ストール防止手段
ステップQ1−4:ストール予想手段
ステップQ1−5、Q1−8:補正手段
ステップQ1−6、Q1−7、Q1−8:回復手段
ステップQQ1〜QQ4:補助駆動手段
ステップQ2−4、Q2−5、Q2−8:ストール防止手段
ステップQ2−4:ストール予想手段
ステップQ2−5、Q2−8:補正手段
ステップQ2−6、Q2−7、Q2−8:回復手段
ステップQ3−4、Q3−5、Q3−8:ストール防止手段
ステップQ3−4:ストール予想手段
ステップQ3−5、Q3−8:補正手段
ステップQ3−6、Q3−7、Q3−8:回復手段
Claims (7)
- 燃料の燃焼によって動力を発生するエンジンと回転機とを走行用駆動源として備えており、それ等のエンジンおよび回転機のトルクを合成して駆動輪側へ出力するとともに該回転機のトルクの反力が該エンジンの回転速度を低下させる方向に作用するトルク合成モードを有する車両において、前記エンジンがストールすることを防止するエンジンストール防止制御装置であって、
予め定められたストール予想判断基準に従ってエンジンストールを予想し、その予想回数の増加に伴って前記回転機のトルク変化速度が小さくなるように該回転機のトルク変化速度をなますなまし制御要素の制御量を該予想回数に基づいて学習補正し、以後のエンジン作動時にエンジンストールが発生し難くなるようにするストール防止手段を有する
ことを特徴とするエンジンストール防止制御装置。 - 請求項1に記載のエンジンストール防止制御装置において、
前記車両は、前記エンジンに連結された第1回転要素と、前記回転機に連結された第2回転要素と、駆動輪側へ出力する第3回転要素と、を有する歯車式の合成分配装置を備えており、
前記第1回転要素、第2回転要素、および第3回転要素が相対回転可能な状態で前記エンジンおよび前記回転機を共に作動させ、該第1回転要素および該第2回転要素にトルクを加えて該第3回転要素を回転させることにより、前記トルク合成モードが成立させられる
ことを特徴とするエンジンストール防止制御装置。 - 請求項1または2に記載のエンジンストール防止制御装置において、
前記車両は、前記エンジンおよび前記回転機とは別に駆動輪を回転駆動する第3の駆動源を備えており、
前記ストール防止手段による前記回転機のトルク変化速度の低下に伴う駆動力不足を補うように前記第3の駆動源による駆動力を増加させる補助駆動手段を有する
ことを特徴とするエンジンストール防止制御装置。 - 請求項3に記載のエンジンストール防止制御装置において、
前記エンジンおよび前記回転機は、車両の前輪および後輪の何れか一方を回転駆動するもので、前記第3の駆動源は、該前輪および後輪の他方を回転駆動するものである
ことを特徴とするエンジンストール防止制御装置。 - 請求項1〜4の何れか1項に記載のエンジンストール防止制御装置において、
前記ストール防止手段は、
前記エンジンの回転速度に関する所定の物理量が予め定められたストール予想判定値以下か否かによって前記エンジンストールを予想するストール予想手段と、
該ストール予想手段により前記エンジンの回転速度に関する所定の物理量が前記ストール予想判定値以下と判断された場合に、前記なまし制御要素の制御量を学習補正するとともに次回以降の該制御量の設定に際してその補正状態を反映させる補正手段と、
を有するものである
ことを特徴とするエンジンストール防止制御装置。 - 請求項5に記載のエンジンストール防止制御装置において、
前記ストール予想手段は、前記エンジンの回転速度が予め定められた一定の下限値以下になったか否かによって前記エンジンストールを予想するものである
ことを特徴とするエンジンストール防止制御装置。 - 請求項1〜6の何れか1項に記載のエンジンストール防止制御装置において、
予め定められた所定の回復条件を満足する場合には、前記ストール防止手段による前記なまし制御要素の制御量の学習補正を戻す回復手段を有する
ことを特徴とするエンジンストール防止制御装置。
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