実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る画像読取装置200の構成を概略的に示す図である。図1には、画像読取装置200の光学系の構成を概略的に示す斜視図(左側)と、画像信号処理系の構成を概略的に示すブロック図(右側)とが含まれている。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を用いる。画像の読取りにおける主走査方向DXにX軸を置き、主走査方向DXに直交する副走査方向DYにY軸を置き、主走査方向DX及び副走査方向DYの両方に直交する深度方向DZにZ軸を置く。したがって、主走査方向DXは「X軸方向」とも言い、副走査方向DYは「Y軸方向」とも言い、深度方向DZは「Z軸方向」とも言う。また、以下の説明において、Z軸方向は、画像読取装置の厚み方向である。
図1に示されるように、実施の形態1に係る画像読取装置200は、結像光学系201と、照明光源202と、天板203と、基板204上に配置された複数の撮像素子部241,242,…,248と、メモリ205と、画像処理部206とを有する。
天板203は、被撮像物(被写体)の一例である原稿(図1には示さず)が載置される透明な原稿載置部材、例えば、ガラス板である。天板203は、原稿の深度方向DZの位置(すなわち、結像光学系201から原稿の被撮像領域までの距離)を決めることができる位置決め部として機能する。天板203は、原稿を、天板203の上面203aの位置又はこの上面203aから深度方向DZにずれた位置に載置される。実施の形態1においては、天板203の上面203aを合焦位置(「ジャストフォーカス位置」とも言う。)としており、原稿の読取り位置に存在する被撮像領域31,32,…,38が合焦位置にあるときには、原稿の被撮像領域31,32,…,38から結像光学系201を通して撮像素子部241,242,…,248に結像する画像は、ぼやけのない画像(「合焦画像」とも言う。)となる。
なお、天板203は、被撮像物の位置決め部として機能し、原稿の被撮像領域31,32,…,38を撮像可能にできる構成であれば、ガラス板に限定されず、原稿を位置決めできる他の手段であってもよい。また、被撮像物には、文章、書画、写真などを表示した原稿の他に、紙幣、人間の指などのように、画像を読取る対象となり得るすべてのものが含まれる。また、画像読取装置200は、例えば、コピー機、プリンタ、紙幣の真贋の判定機、原稿を電子ファイルに変換するためのイメージスキャナ、及びファクシミリなどに適用可能である。
照明光源202は、例えば、蛍光灯又はLEDなどから構成される。照明光源202は、例えば、天板203の下方であって原稿の被撮像領域31,32,…,38の読取りに支障が生じない位置に配置される。照明光源202は、原稿の被撮像領域31,32,…,38に光を照射する。なお、照明光源202の形状は、図1に示されるような長尺形状に限定されず、他の形状であってもよい。また、図1には、照明光源202が、結像光学系201の副走査方向DYの一方の側にのみ配置されている場合を示したが、照明光源を結像光学系201の副走査方向DYの両側に配置してもよい。さらにまた、外部からの光などによって、原稿の被撮像領域31,32,…,38が十分に明るく照明できる場合には、照明光源202を点灯させないことも可能であり、また、照明光源202を持たない構成も可能である。
結像光学系201は、複数の撮像素子部241,242,…,248に対応する複数の結像光学部211,212,…,218を含む。結像光学部211,212,…,218のそれぞれは、機能的に独立した光学手段である。実施の形態1において、複数の結像光学部211,212,…,218は、XY面に平行な面上で千鳥状に配置されている円柱状の光学セルによって構成される。また、実施の形態1において、複数の結像光学部211,212,…,218のうちの、主走査方向DXに並ぶ奇数番目の1列の結像光学部211,213,…,217を、第1グループ(第1列)G21に属する結像光学部(第1の結像光学部)と言い、主走査方向DXに並ぶ偶数番目の1列の結像光学部212,214,…,218を、第2グループ(第2列)G22に属する結像光学部(第2の結像光学部)と言う。第1グループG21に属する第1の結像光学部211,213,…,217は、原稿の被撮像領域31,33,…,37から第1の結像光学部211,213,…,217に向かう第1の光の主光線が互いに平行になるように構成されている。すなわち、第1グループG21に属する第1の結像光学部211,213,…,217は、それらの光軸211a,213a,…,217aが互いに平行になるように構成されている。また、第2グループG12に属する第2の結像光学部212,214,…,218は、原稿の被撮像領域32,34,…,38から第2の結像光学部212,214,…,218に向かう第2の光の主光線が互いに平行になるように構成されている。すなわち、第2グループG22に属する第2の結像光学部212,214,…,218は、それらの光軸212a,214a,…,218aが互いに平行になるように構成されている。ただし、本発明は、第1グループG21に属する第1の結像光学部211,213,…,217の光軸211a,213a,…,217aが互いに平行でない場合、又は、第2グループG22に属する第2の結像光学部212,214,…,218の光軸212a,214a,…,218aが互いに平行でない場合にも、適用可能である。例えば、各結像光学部の光軸の方向が既知であれば、第1グループG21に属する第1の結像光学部211,213,…,217の光軸211a,213a,…,217aが平行である必要なく、第2グループG22に属する第2の結像光学部212,214,…,218の光軸212a,214a,…,218aは平行である必要はない。
撮像素子部241,242,…,248は、結像光学部211,212,…,218に対応するように基板204上に配置される。撮像素子部241,243,…,247は、第1グループG21に属する第1の結像光学部211,213,…,217に対応するように配置され、撮像素子部242,244,…,248は、第2グループG22に属する第2の結像光学部212,214,…,218に対応するように配置される。各撮像素子部241,242,…,248は、例えば、CCDなどからなる受光素子を主走査方向DX及び副走査方向DYに複列配列して構成される。各撮像素子部241,242,…,248には、原稿70から結像光学系201の各結像光学部211,212,…,218を通過した光が入射する。
なお、図1には、結像光学系201が、第1グループG21に属する第1の結像光学部211,213,…,217と第2グループG22に属する第2の結像光学部212,214,…,218からなる場合を説明したが、本発明はこのような態様に限定されず、結像光学系201が、副走査方向DYに3列以上配置されている装置にも適用可能である。
また、図1には、複数の結像光学部211,212,…,218が、XY面に平行な面上で千鳥状に配置された場合を示したが、本発明はこのような態様に限定されず、複数の結像光学部の配置は、隣接する被撮像領域が重複する領域を有する配置であれば、千鳥状以外の配置であってもよい。
さらに、図1には、結像光学系201が、4個の第1の結像光学部211,213,…,217と4個の第2の結像光学部212,214,…,218とを含む場合を説明したが、本発明はこのような態様に限定されず、結像光学系201が、主走査方向DXの位置及び副走査方向DYの位置が異なり、被撮像領域の一部が重なる少なくとも1個の第1の結像光学部と少なくとも1個の第2の結像光学部とを含む装置に適用可能である。また、撮像素子部の配置及び個数も、結像光学部の配置及び個数に応じて変更することができる。
第1の結像光学部211,213,…,217は、合焦位置に置かれた被撮像物の合焦画像を、対応する第1の撮像素子部241,243,…,247の撮像面上に結像させるように構成される。第2の結像光学部212,214,…,218は、合焦位置に置かれた被撮像物の合焦画像を、対応する第2の撮像素子部242,244,…,248の撮像面上に結像させるように構成される。
図1において、被撮像領域31,32,…,38は、原稿の天板203側の面であって、撮像素子部241,242,…,248によって読取られる領域(視野範囲)であり、主走査方向DXに並ぶ複数の領域である。画像読取装置200は、主走査方向DXに沿って天板203上の原稿の被撮像領域31,32,…,38の画像を読取り、主走査方向DXの読取りが完了する毎に、副走査方向DYに読取り位置を相対的に移動させる。この副走査方向DYの読取り位置の移動は、原稿の移動又は結像光学系201を含む光学系の移動のいずれかによって行うことができる。なお、図1には、被撮像領域31,32,…,38が、主走査方向DXに1列に並ぶ場合が示されているが、本発明はこのような態様に限定されず、隣接する被撮像領域31,32,…,38同士が主走査方向DXに重複する領域を含む態様であれば、隣接する被撮像領域間の副走査方向DYの位置がずれている態様のような他の態様にも適用可能である。また、被撮像領域31,32,…,38の数は、8個に限定されず、結像光学部211,212,…,218の個数及び撮像素子部241,242,…,248の個数に応じて変更可能である。
メモリ205は、第1の撮像素子部241,243,…,247及び第2の撮像素子部242,244,…,248によって取得された画像情報を一時的に記憶する記憶部である。画像処理部206は、例えば、ソフトウエアに従って動作する演算処理回路であり、メモリ205に記憶された画像情報を合成する(すなわち、各撮像素子部で撮像された画像を結合する)ことによって合成画像(「結合画像」とも言う。)を生成する。図1には、メモリ205と画像処理部206とを別個の構成として示しているが、これらは、例えば、同じ回路基板上の一体的な構成であってもよい。
画像処理部206は、各撮像素子部241,242,…,248で撮像された画像の結合位置を検出するための演算処理を行う結合位置検出手段206aと、撮像された画像の結合位置で各撮像素子部241,242,…,248で撮像された画像を結合(合成)するための演算処理を行う画像合成手段206bと、被撮像物側の合焦位置(天板203の上面203a)から原稿までの深度方向DZの距離を算出するための演算処理を行う距離算出手段206cと、算出された距離を用いて合成画像のぼやけを低減させるための演算処理を行う画像修正手段206dとを有する。なお、本出願において「…手段」とは、ある機能を電気回路によって実行する手段、又は、ある機能をソフトウエアによって実行する手段のいずれであってもよい。
結合位置検出手段206aは、複数の第1の撮像素子部211,213,…,217及び複数の第2の撮像素子部212,214,…,218のうちの、隣り合う第1の被撮像領域と第2の被撮像領域(例えば、第1の被撮像領域31と第2の被撮像領域32、第2の被撮像領域32と第1の被撮像領域33、及び、第1の被撮像領域33と第2の被撮像領域34など)をそれぞれ撮像する第1の撮像素子部と第2の撮像素子部の組(例えば、第1の撮像素子部241と第2の撮像素子部242の組、第2の撮像素子部242と第1の撮像素子部243の組、及び、第1の撮像素子部243と第2の撮像素子部244の組など)のそれぞれについて、結合位置を決定する。具体的には、結合位置検出手段206aは、メモリ205に格納されている第1の撮像素子部が撮像した第1の画像の中に第1の注目領域RA(後述する図4に示す)を設定し、同じくメモリ205に格納されている第2の撮像素子部が撮像した第2の画像の中に第2の注目領域RB(後述する図4に示す)を設定し、第1の注目領域RAの画像と第2の注目領域RBの画像とが一致する注目領域の設定位置と拡大縮小率を検出し、第1の画像における画像一致領域の位置及び拡大縮小率と第2の画像における前期画像一致領域の位置及び拡大縮小率とに基づいて第1の画像と第2の画像とを結合させる結合位置を決定する。
画像合成手段206bは、第1の画像と第2の画像とを結合位置検出手段206aで決定された結合位置で結合させて、合成画像を生成する。
距離算出手段206cは、第1の画像における画像一致領域の副走査方向DYの位置と第2の画像における画像一致領域の副走査方向DYの位置との差である画像ずれ量から、合焦位置(実施の形態1においては、天板203の上面203a)から第1の被撮像領域又は第2の被撮像領域までの深度方向DZの距離を算出する。
画像修正手段206dは、距離算出手段206cによって算出された距離を用いて画像合成手段206bによって合成された合成画像のぼやけを低減させる処理を行う。合成画像のぼやけを低減させる処理は、例えば、合成画像を先鋭化する処理である。合成画像のぼやけの修正を高精度に行いたい場合には、距離算出手段206cによる距離の算出を多くの点で行うことが望ましいが、画像処理部206による信号処理の負荷を軽減するために、距離算出手段206cによる距離の算出を少ない点で行ってもよい。また、距離算出手段206cは、隣り合う第1の被撮像領域と第2の被撮像領域の深度方向DZの位置が合焦位置に一致するときにおける画像ずれ量を画像ずれの基準値として保持する手段と、画像ずれ量と保持されている基準値との差に基づいて、距離ΔZを算出する手段とを有するように構成してもよい。さらにまた、距離算出手段206cが、画像ずれ量を一定量変化させたときの距離ΔZの変化量を予め記憶する手段と、画像ずれ量と保持されている基準値との差を、距離ΔZの変化量で除した値である距離換算係数を算出する手段とを有し、画像修正手段206dが、算出された距離換算係数を用いて合成画像のぼやけを低減する画像処理を行うように構成することも可能である。
図2(a)及び(b)は、実施の形態1に係る画像読取装置200の光学系を図1のS17a−S17a線方向に見る概略的な断面図及び図1のS17b−S17b線方向に見る概略的な断面図である。図2(a)及び(b)においては、主走査方向DX(X軸)を水平方向とし、深度方向DZ(Z軸)を垂直方向とし、副走査方向(Y軸)を紙面手前から紙面に垂直に向かう方向としている。図2(a)には、第1グループG21に属する第1の結像光学部211,213,…,217を通過する第1の光の主要な光路が示されている。また、図2(b)には、第2グループG22に属する第2の結像光学部212,214,216を通過する第2の光の主要な光路が示されている。
図3は、実施の形態1に係る画像読取装置200の光学系を図1のS18−S18線方向に見る概略的な断面図である。図3においては、副走査方向DY(Y軸)を水平方向とし、深度方向DZ(Z軸)を垂直方向とし、主走査方向(X軸)を紙面から手前に垂直に向かう方向としている。
図3には、被撮像物の一例としての原稿70が天板203の上面203a(実施の形態1における合焦位置)に密着しており、撮像素子部243及び244の撮像面上の点に合焦画像が収束する場合(合焦状態)の主要な光路が示されている。
図3に示されるように、第1の結像光学部213の光軸AX1は、天板203の上面203aの垂線203bに対して傾斜しており、天板203の上面203a上の位置Fa1を通っている。他の第1の結像光学部211,215,217は、第1の結像光学部213と同様に配置されている。また、図3に示されるように、第2の結像光学部214の光軸AX2は、垂線203bに対して、光軸AX1と反対側に傾斜しており、天板203の上面203a上の位置Fa2を通っている。他の第2の結像光学部212,216,218は、第2の結像光学部214と同様に配置されている。
図3に示すように、位置Fa1とFa2が一致するように結合光学部や撮像素子部を配置した場合、撮像素子部243と244は、天板203に密着した原稿70上の同じ位置を同時に読み取る。しかし、天板203からΔZ離れた原稿72を読み取ると、撮像素子部243と244の読み取りタイミングにはΔYのずれが生じる。
位置Fa1とFa2が一致しない場合においても同様に、原稿位置に応じて撮像素子の読み取りタイミングにずれが生じる。
実施の形態1においては、結像光学系201を構成する結像光学部211,212,…,218のそれぞれは、原稿70側にテレセントリックな光学系である。図2(a)及び(b)から理解できるように、各結像光学部211,212,…,218(結像光学部218は図2(b)に示さず)は、同じ構成を持つ。実施の形態1においては、結像光学部211,212,…,218のそれぞれは、第1光学素子としての第1レンズ252と、絞りとしてのアパーチャ253と、第2光学素子としての第2レンズ254と、これらを保持する保持部材255とを有し、独立した機能を持つ光学セルである。
各結像光学部211,212,…,218において、第1集光レンズ252は原稿70側の端部に配置され、第2集光レンズ254は撮像素子部241側の端部に配置され、アパーチャ(絞り)253は第1集光レンズ252と第2集光レンズ254との間で第1集光レンズ252の後ろ側(光の進行方向下流側)の焦点位置に配置されている。このような構成により、各結像光学部211,212,…,218を、原稿70側にテレセントリックな光学系とすることができる。
第1集光レンズ252と第2集光レンズ254は、結像光学部211,212,…,218の光軸AX1又はAX2(図3に示す)の方向において結像光学部211,212,…,218のほぼ中央部に配置される。第1集光レンズ252と第2集光レンズ254は、例えば、凸レンズによって構成される。アパーチャ253は、第1集光レンズ252の中央部分に対応する領域に開口部を有する。したがって、被撮像領域31,32,…,38からの光は、第1集光レンズ252に入射し、アパーチャ253の開口部を通過した後第2集光レンズ254から出射されて、撮像素子部241,242,…,248の撮像面上又はその近傍位置に収束する。
図2(a)及び(b)に示されるように、実施の形態1において、各結像光学部211,212,…,218を通過する原稿画像は、それぞれに対応する撮像素子部241,242,…,248上に反転像として結像する。このときの結像倍率は、1より大きくてもよく(すなわち、拡大)、1より小さくてもよく(すなわち、縮小)、1でもよい(すなわち、等倍)。倍率を等倍又はその近傍とすることにより、撮像素子部241,242,…,248として一般に流通している解像度の画像センサを用いることができる。
以下に、図2(a)及び(b)、図3を用いて、原稿70が本である場合の画像読取装置200の動作を説明する。図2(a)及び(b)には、天板203の上面203aから原稿70の被撮像領域までの距離が、主走査方向DXの位置に応じて変化している場合が示されている。例えば、図3に示されるように、第1の結像光学部213と第2の結像光学部214との読取り範囲(被撮像領域)が重複する領域における天板103の上面103aから原稿70までの距離がΔZであり、原稿70の位置を第2の原稿位置72とする。実施の形態1においては、天板203の上面203aが合焦位置となるように各結像光学部211,212,…,218を設計した場合について説明する。
画像演算部206による画像のぼやけの補正処理を行なわない場合には、画像読取装置
200の被写界深度は、結像光学部211,212,…,218の被写界深度でほぼ決定される。結像光学部211,212,…,218の被写界深度は、それらの内部の光学系の設計によって決定される。また、被写界深度は、光学系のF値でほぼ決定される。1つの結像光学部の視野を大きくする場合には、その結像光学部に含まれるレンズを非球面形状にしたり、複数のレンズを用いたりするなどして収差を十分に低減する必要がある。通常、600dpiの分解能が必要な場合に、F値が10のときに約±1mmの被写界深度が得られ、F値が20のときに約±2mmの被写界深度が得られる。なお、被写界深度とは、結像光学系によって結像された被撮像物の画像のピントが合っているように(すなわち、ぼやけが無いように)見える領域の広さ(深さ)のことである。また、厳密な意味で結像光学系によって結像された被撮像物の画像のピントが合う(すなわち、ぼやけが無い)位置は、合焦位置であるが、被写界深度の範囲内に被撮像物があるときには、結像画像のぼやけは許容範囲内になる。
なお、図2(a)及び(b)、並びに、図3では、原稿70が天板203の上面203aに位置するときに結像素子部に合焦画像が結像する場合を図示しているが、本発明は、このような態様に限定されない。例えば、F値が10の光学系では、天板203の上面203aからずれた所定位置、例えば、上面203aから1mmの上方位置、が合焦位置となるように天板203を配置することもできる。このように構成すれば、合焦位置を中心として深度方向DZに±1mmの被写界深度を有効に活用することができる。
以下に、結像光学部211,212,…,218のF値が10であり、結像光学部211,212,…,218が約±1mmの被写界深度を持ち、天板203の上面203a上に合焦位置がある場合について説明する。この場合、光学系のみによる被写界深度は、天板203の上面203a位置から深度方向DZに結像光学部211,212,…,218から遠い方向に1mmの位置までの範囲である。
図3に示されるように、天板203の上面203aが合焦位置である場合には、天板203の上面203aに密着している原稿70の被撮像領域(「原稿面」とも言う。)からの光は、撮像素子部243の撮像面上に集光され、画像のぼやけは生じない(すなわち、合焦画像が結像される)。しかし、原稿70の被撮像領域が天板203の上面203aから距離ΔZずれた第2の原稿位置72にあるときには、原稿70の被撮像領域から結像光学部213に入射した光は、撮像素子部243の光入射面に集光されず、画像のぼやけが生じる(すなわち、合焦画像が結像されない)。天板203の上面203aと第2の原稿位置72との深度方向DZにおける距離ΔZが1mm以内であれば、画像のぼやけは許容範囲内に収まる。ここで、許容範囲内に収まるとは、第2の原稿位置72からの点像の半径が許容錯乱円の半径以内になるという意味である。
一方、距離ΔZが1mmを超えると、点像の広がり(点像分布関数)が許容錯乱円の半径を超えてしまい、目標の解像度を達成できない。距離ΔZが1mmを超えた位置に置かれた原稿70の結像画像は、ぼやけた画像になるが、ぼやけた画像から画像処理によってぼやけのない画像(元の画像)を生成(復元)する、画像ぼやけ補正のための画像処理技術は、既知の技術である。画像ぼやけ補正の画像処理を実行するに際して、ぼやけの点像分布関数が予め分かっていれば、分からない場合よりも適切に画像ぼやけを低減することができる。
点像分布関数は、原稿70の深度方向DZの位置によって一意的に決まる。点像分布関数は、実測することができ、又は、光線追跡シミュレーションを用いて計算によって求めることができる。天板203の上面203aから原稿70までの距離ΔZ(すなわち、合焦位置から原稿までの距離)が分かれば、点像分布関数が分かり、画像ぼやけ補正処理が容易になる。画像ぼやけ補正処理によって画像処理後の画像の解像度が向上すれば、被撮像物が、光学系によって定まる1mmの被写界深度を超えた位置に配置された場合であっても、画像のぼやけが無い(正確に言えば、画像のぼやけが無いように感じられる)画像を得ることができる。換言すると、画像ぼやけ補正処理によって画像処理後の画像の解像度が向上すれば、画像読取装置200の実質的な被写界深度を大きくすることができる。
実施の形態1に係る画像読取装置200においては、第1グループG21に属する結像光学部と第2グループG22に属する結像光学部であって、互いに隣接する結像光学部、例えば、結像光学部211と結像光学部212とで得られた画像を復元する際、副走査方向DYにおける2枚の画像を合わせるときのシフト量から、天板203の上面203aから第2の原稿位置72までの深度方向DZの距離を算出することができる。
図5は、実施の形態1に係る画像読取装置200の天板203の近傍を拡大して示す図である。図5においては、副走査方向DY(Y軸)を水平方向とし、深度方向DZ(Z軸)を垂直方向とし、主走査方向(X軸)を紙面から手前に垂直に向かう方向としている。光軸AX1は、第1グループG21に属する第1の結像光学部213の光軸であり、光軸AX2は、第2グループG22に属する第2の結像光学部214の光軸である。図5に示されるように、2つの光軸AX1,AX2は、天板203の上面203aで交差している。ただし、2つの光軸AX1,AX2は、必ずしも天板203の上面203aで交差する必要はない。2つの光軸AX1,AX2が、天板203の上面203aから上方に予め決められた距離だけ離れた位置で交差するように、結像光学系201を構成してもよい。また、2つの光軸AX1,AX2が、天板203の上面203aよりも下方で交差するように、結像光学系201を構成してもよい。光軸AX1,AX2は、天板203の上面203aの垂線203bに対して、垂線203bを挟んで反対方向に傾斜しており、天板203の上面203aの垂線203bに対して所定の角度±θ傾斜している。ただし、光軸AX1,AX2の傾斜角度が既知であれば、光軸AX1の傾斜角度と光軸AX2の傾斜角度とを異なる角度にすることも可能である。
図5の場合には、天板203の上面203aでは、2つの光軸AX1,AX2の副走査方向DYにおける間隔はゼロであるが、深度方向DZに上面103aより距離ΔZ1だけ離れた第1の原稿位置71における2つの光軸AX1,AX2の副走査方向DYの間隔ΔY1は、次式によって算出できる。
ΔY1=2×ΔZ1×tanθ
天板203の上面203aに原稿70の被撮像領域が位置する場合には、撮像素子部243と撮像素子部244とで撮像される各画像の副走査方向DYの位置ずれはゼロであるが、原稿70の被撮像領域が第1の原稿位置71に存在する場合には、撮像素子部243と撮像素子部144とで撮像される各画像の副走査方向DYの位置ずれはΔY1は、ゼロより大きい値になる。また、原稿70が天板203の上面103aより深度方向DZに距離ΔZ2だけ離れた第2の原稿位置72における2つの光軸AX1,AX2の副走査方向DYの間隔ΔY2は、次式によって算出できる。
ΔY2=2×ΔZ2×tanθ
実施の形態1においては、画像処理部206は、画像復元の際に、画像ずれ量ΔY1(又は、ΔY2など)を算出し、さらに天板203の上面203aから第1の原稿位置71までの距離ΔZ1(又は、第2の原稿位置72までの距離ΔZ2など)を算出する。さらに、画像処理部206は、算出された距離ΔZ1(又は、ΔZ2など)を元に、画像のぼやけ補正処理を行なう。これにより、実施の形態1に係る画像読取装置200は、光学系が有する被写界深度(例えば、1mm)を超えて、実質的に大きな被写界深度を実現することができるという効果を有する。
図6は、実施の形態1に係る画像処理装置200の構成を簡素化して示す図である。図6には、第1グループG21に属する2個の第1の結像光学部C0,C2と、第2グループG22に属する2個の第2の結像光学部C1,C3を有する装置が示されている。なお、図6に示していないが、基板204上には、第1の結像光学部C0,C2に対応する位置に撮像素子部が備えられており、第2の結像光学部C1,C3に対応する位置に撮像素子部が備えられている。
また、図7は、実施の形態1に係る画像処理装置200による処理を示すフローチャートである。図7に示されるように、実施の形態1に係る画像処理装置200においては、結像光学部C0,…,C3を通して撮像素子部により主走査方向DXの画像の読取りと、結像光学部C0,…,C3及び撮像素子部の副走査方向DYの移動(スキャン)とが行われ、原稿70の画像が読取られる(ステップST1)。読取られた原稿画像は、図示しない処理回路によって黒補正、白補正などの処理を終えた後にメモリ(例えば、フレームメモリ)205に格納される(ステップST2)。画像処理部206は、結像光学部C0,…,C3を通して撮像素子部によって読み取られた各画像は反転像となっているので、画像処理部206は、読み取られた画像を、原稿70と同じ向きになるよう並べ替える処理を行う(ステップST3)。
次に、画像処理部206の結合位置検出手段206aは、隣接する結像光学部によって結像され、隣接する結像光学部に対応する撮像素子部によって読取られる各画像から、2つの画像が結像される位置である結合位置を検出するための処理を、一定ライン間隔毎に行い、結合位置を検出する(ステップST4)。次に、画像処理部206の画像合成手段206bは、検出された結合位置で画像を結合する(ステップST5)。その際、画像の結合位置(繋ぎ目)部分については、繋ぎ目が目立たないよう平滑化処理を行うことが望ましい。
次に、画像処理部206の距離算出手段206cは、検出された隣接する結像光学部によって結像され撮像素子部によって読取られる画像間の結合位置に関する情報から、合焦位置から原稿70の被撮像領域までの距離ΔZを算出する(ステップST6)。次に、画像処理部206の画像修正手段206dは、算出された距離ΔZに基づいて、結合によって得られた合成画像のぼやけを修正する処理を行う(ステップST7)。画像処理部206は、画像のぼやけが修正された合成画像を、読取り結果として出力する。
なお、上記説明では、画像処理部206が、メモリ205内に格納したデータに対して並べ替え処理(ステップST3)を行う場合を説明したが、メモリ205からデータを読み出す際のアドレスを変更することでデータの順序を変更することによって、並べ替え処理を行ってもよい。また、並べ替え処理(ステップST3)は、撮像素子部からのデータの読み出し時に1ライン分のデータをラインメモリに格納し、最後に格納したデータから順に1ライン遅延でデータを出力することにより、データの順序を入れ替える処理とすることもできる。このように、メモリ205内でデータの並べ替え処理を行わないことも可能である。さらに、並べ替え処理(ステップST3)は、並べ替え処理に最低限必要なライン数のメモリを用いて逐次復元画像を出力するようにしてもよい。したがって、メモリ205は、フレームメモリに限定されない。
図8は、実施の形態1に係る画像読取装置100において、原稿70の被撮像領域が合焦位置に存在したり離れたりする場合を示す図である。また、図9は、各結像光学部C0,…,C3を通し、対応する撮像素子部から得られる画像80,…,83及び合成画像84を示す図である。図8及び図9を用いて、画像の結合処理(図7のステップST4,ST5の処理)を説明する。
結像光学部C0,…,C3及びこれらに対応する撮像素子部は、それぞれの視野範囲(撮像素子部によって読取られる被撮像領域)が主走査方向DXに互いに一部重複するように配置されている。このため、各撮像素子部によって撮像された画像80,81,82,83のうちの隣接する撮像素子部によって取得した画像の端部には、同じ画像が重複して含まれる。
また、各結合光学部は原稿側にテレセントリックな光学系となっているため、被撮像領域までの距離が遠くても近くても画像の結像倍率は変わらないが、図8の原稿70cや原稿70dの部分のように原稿面が天板に対して斜めになっている時には、第1グループG21に属する第1の結像光学部を通して撮像素子部によって得られた画像と第2グループG22に属する第2の結像光学部を通して撮像素子部によって得られた画像とでは、副走査方向DYへの画像の縮み方が異なる。
例えば、原稿70の同一部分70eを読み取った画像を比較すると、第1グループG21に属する第1の結合光学部を通して撮像素子によって得られた画像70e1は、第2グループG22に属する第2の結像光学部を通して撮像素子によって得られた画像70e2よりも縮み方が大きくなる。これは、第1グループG21に属する第1の結像光学部と第2グループG22に属する第2の結像光学部の光軸の傾いている方向が異なることから、原稿面が斜めに傾くと、原稿面に対する光軸の傾きに差が生じるためで、原稿面に対する光軸の傾きが小さくなるほど画像が縮んでみえる。
画像80の領域80cと画像81の領域81cはいずれも原稿70の領域70cにあたるが、原稿面に対する第1グループG21に属する第1の結像光学部C0の光軸の傾きは、原稿面に対する第2グループG22に属する第2の結像光学部C1の光軸の傾きより小さいため、画像80の領域80cは画像81の領域81cより画像が縮んでいる。
このように、天板から原稿が離れたり近づいたりするたびに、隣接する撮像素子部によって取得した画像が異なる縮み方をする。
そこで画像処理部106は、この重複して読み取られた領域、例えば、領域80bと領域81a、領域81bと領域82a、領域82bと領域83a、領域83bと領域84a、の中から画像が一致する領域を検出する際に、一方の画像の倍率を変えて最も画像が一致する倍率を検出する。そして、この検出結果を元に、隣接する結像光学部によって結像される画像により取得した各画像を繋ぎ合せる時のそれぞれの倍率を決定し、決定した倍率で拡大縮小処理した画像80,81,82,83を結合して、合成画像84を生成(復元)する。画像が一致する倍率の決定や合成画像84の生成は、例えば、副走査方向DYに一定ライン間隔毎に行われる。
これにより、天板から原稿面までの距離が変化し、隣接する撮像素子部によって取得した画像の倍率が変化しても、画像を一致する領域を検出することが出来る。処理間隔を細かくするほど精度良く合成画像を生成することが出来る
図10は、実施の形態1に係る画像読取装置200において画像一致領域の求め方を説明するための図である。まず、図10に示されるように、画像処理部206は、結像光学部C0を通して撮像素子部によって得られた画像の中からラインL0の画素データを選択する。選択したラインL0上の画素(x0b,y0)を左上とする画素NA行×MA列の画素の領域を注目領域RAとする。画像処理部206は、この注目領域RAを副走査方向にG倍で補間する。補間は、例えば図11に示すように線形補間としてもよい。図11ではG=3の場合について図示している。また、より精度の高い一致領域の検出を行うために線形補間の代わりに高次の補間処理を用いても良い。
画像処理部206は、この注目領域RAをG倍で補間した画像の輝度値からベクトルデータA={a0,a1,…,an}を作成する。nはNA×MA×Gとなる。
同様に、画像処理部206は、結像光学部C0に隣接する結像光学部C1を通して撮像素子部によって得られた画像の中から任意の画素(x1a,y1)を選択する。画素(x1a,y1)を左上とするNB行×MB列の画素の領域を注目領域RBとする。画像処理部206は、注目領域RBも注目領域RAと同様に副走査方向にG倍で補間する。この注目領域RBをG倍で補間した画像の輝度値からベクトルデータB={b0,b1,…,bn}を作成する。ここでは、NB=NA、MB=MAとなるように注目領域RBを設定したので、ベクトルデータBの要素数nはベクトルデータAの要素数と等しい。
次に、画像処理部206は、作成された2つベクトルデータA,Bを用いて、注目領域RAと注目領域RBとがどの程度似ているか(又は、どの程度異なるか)を示す指標、例えば、不一致度d(x1a,y1)、を算出する。不一致度d(x1a,y1)は、例えば、2つのベクトルデータの各成分の値が近いほど(2つのベクトルデータが似ているほど)小さくなり、2つのベクトルデータの各成分の値が遠いほど(2つのベクトルデータが似ていないほど)大きくなる。すなわち、不一致度d(x1a,y1)が小さいほど、注目領域RAと注目領域RBの画像の一致度は高い。不一致度d(x1a,y1)は、例えば、次式1により求めることができる。
また、次式1.5に示すように、各ベクトルデータの平均値を差し引いた後に不一致度d(x1a,y1)を算出したり、不一致度d(x1a,y1)を他の演算処理によって算出したりしてもよい。
他の演算処理としては、例えば、次式2の演算処理があり、この場合には、演算処理量を減らすことができる。
また、注目領域RAと注目領域RBとがどの程度似ているかの指標に相互相関を用いても良い。この場合には、2つのベクトルデータの各成分の値が近いほど、指標値が大きくなる。
次に画像処理部206は、結像光学部C1の画像上で選択した注目領域RBの副走査方向DYの倍率を変えた場合についても不一致度dを算出する。
注目領域RBの倍率の変更方法を説明する。まず、注目領域RBの副走査方向DYのサイズNBをG分の1行刻みで変更する。その後、サイズを変更した注目領域RB内から副走査方向にNA×G個のデータをサンプリングする。注目領域RAより注目領域RBを広くすると、注目領域RBを縮小したことになる。逆に、注目領域RAより注目領域RBを狭くすると、注目領域RBを拡大したことになる。
図12に結像光学部C1の画像上で選択した注目領域RBをS1行拡大する場合を示す。S1はG分の1行の倍数とする。拡大処理は、まず、注目領域RBを注目領域RAよりS1行分狭く選択し、注目領域RB内をG倍で補間する。補間後の注目領域RBのライン数はNA×G−S1となる。その後、補間データからNA×G個のデータをサンプリングする。このときの補間データのサンプリング間隔STEPを式2.5に示す。
図13に注目領域RBをS1行縮小する場合を示す。縮小処理は、まず、注目領域RBを注目領域RAよりS1行分広く選択し、G倍で補間する。補間後の注目領域RBのライン数はNA×G+S1となる。その後、補間データからNA×G個のデータをサンプリングする。このときの補間データサンプリング間隔STEPを式2.6に示す。
注目領域RBを拡大縮小する範囲、つまりS1の最大値は、NA行あたり隣接画像に生じるズレ量の最大値に応じて設定すればよい。
また、ここでは拡大縮小量をS1とし、拡大する時にはS1を減算し、縮小する時にはS1を加算する演算としているが、以降では、拡大時はS1の値をマイナス、縮小時はS1の値をプラスで表現し、サンプリング間隔の算出式を式2.6に統一する。
このように、注目領域RBの倍率を変えて取得したNA×G個のデータからなるベクトルデータBを用いて同様に不一致度dを算出し、不一致度dが最小となる倍率を検出する。これにより、注目領域RAと最も一致する注目領域RBの倍率が検出できる。
また、不一致度dが最小となる注目領域RBのすぐ下の画素を(x1a_min,y1_min)とすると、結像光学部C0を通して撮像素子部によって撮像された画像の画素(x0b,y0+NA)と結像光学部C1を通して撮像素子部によって撮像された画像の画素(x1a_min,y1_min)が原稿70の同一部分を読み取っているということになる。つまり、結像光学部C0を通して撮像素子部によって撮像された画像と結像光学部C1を通して撮像素子部によって撮像された画像が一致する位置ということになる。
隣接画像は、画像が一致する位置において一致する倍率で拡大縮小して繋ぎ合わせるが、拡大縮小処理は重複して読み取られた領域80b、領域81a部分だけでなく、画像80、画像81の主走査方向に渡り、同様に拡大縮小する。
原稿が完全に平らな場合には、隣接画像のズレ量は常に一定なので、読取画像を順次繋ぎ合わせていけばよい。しかしほとんどの場合、原稿には凹凸がある。そのため、隣接する撮像素子部で撮像された画像の一致する領域を常に検出し続けなければならない。
よって、副走査方向に関しては、今回、原稿70の同一部分を読み取っている位置として検出した画素(x0b,y0+NA)と(x1a_min,y1_min)を、次の処理における注目領域RAと注目領域RBの左上画素として選択し直し、注目領域RBの倍率を変えながら不一致度dを算出し、最も画像が一致する位置と倍率を決定する処理を原稿の下端まで繰り返し行う。
なお、注目領域RAに特徴が無い場合には、注目領域RBの倍率を変えても不一致度dはほとんど変化しない。この場合には、注目領域RAと注目領域RBとが最も一致する倍率の検出を誤る可能性がある。このような事態を回避するために、初めに、注目領域RA又は注目領域RBに含まれる画像に特徴があるか否かを評価し、いずれか一方の注目領域に特徴が無い場合には、注目領域RAと注目領域RBとが一致する位置の検出は行わずに、注目領域の周辺の検出結果から結合位置を推定するようにしてもよい。注目領域RAに特徴があるか否かの評価には、例えば、ベクトルデータAに含まれる各成分の標準偏差、分散、最大値と最小値の差、エッジ成分などのいずれか一つ以上を用いることができる。これらの値が、一定値以上となる場合には注目領域RAに含まれる画像に何らかの特徴があると判断すればよい。
次に、主走査方向に画像を繋ぎ合わせる処理について図14を用いて説明する。
まず初めに、既に説明した手順により、結像光学部C0を通して撮像素子部に撮像されたラインL0と一致する結像光学部C1を通して撮像素子部に撮像されたラインL1を求める。
次に、結像光学部C1を通して撮像素子部に撮像されたラインL1と一致する結像光学部C2を通して撮像素子部に撮像されたラインL2を求める。このとき、結像光学部C1を通して撮像素子部に撮像された画像に設定する注目領域RAは、結像光学部C0とC1の処理で最も一致する倍率を検出した時の注目領域RBをそのまま用いる。そして、注目領域RAをG倍で補間する。補間した画像の輝度値からベクトルデータA={a0,a1,…,an}を作成する。nは結像光学部C0とC1の処理で検出した倍率により異なる。結像光学部C0とC1の処理で、注目領域RBをS1ライン拡大縮小した時に隣接画像が最も一致するという結果が得られた場合、n=(NA+S1)×MA×Gとなる。同様に、結像光学部C2を通して撮像素子部に撮像された画像に注目領域RBを設定しG倍で補間する。注目領域RBからベクトルデータB={b0,b1,…,bn}を作成する。このとき、副走査方向に関してはSTEP間隔のサンプリングにより値を取得する。サンプリング間隔STEPを式2.7に示す。
式2.7において、S2は注目領域RBの拡大縮小量を表す。S2をG行分の1ずつ増減しながらベクトルデータBを取得し、ベクトルデータAとの不一致度dを算出し、不一致度dが最小となるS2を検出する。不一致度dが最小となるときの注目領域RBの次のラインが結像光学部C1を通して撮像素子部に撮像されたラインL1と一致するラインL2となる。また、このときの注目領域RBが次の結像光学部C2とC3の処理における注目領域RAとなる。
以上の処理を繰り返すことにより、全ての結像光学部について最も一致する倍率と位置が決定する。この結果に基づいて各画像を拡大縮小して繋ぎ合わせる。
結像光学部CkとCk+1の処理におけるサンプリング間隔は、式2.8で表せる。
なお、式2.5と式2.6は、式2.8においてSk=0としたときに等しい。
次に、画像を繋ぎ合わせる際の繋ぎ目の処理について説明する。
図15は、実施の形態1に係る画像読取装置100における画像結合時の平滑化処理を説明するための図である。図15には、結像光学部C0を通して撮像素子部によって撮像された画像80のラインL0と結像光学部C1を通して撮像素子部によって撮像された画像81のラインL1を結合する場合の平滑化処理の一例を示す。ラインL0のラインデータとラインL1のラインデータとを繋ぎ合せる際には、注目領域RA及び注目領域RBの各々の中心画素を境にそれぞれの隣接する結像光学部によって結像される画像を繋ぎ合せる方式を採用することも可能である。例えば、図15におけるラインL0の画素データa38,…,a44に、ラインL1の画素データb4,…,a11を繋ぎ合わせる方式である。しかし、この場合には、繋ぎ目部分(ラインL0の画素データa44とラインL1の画素データb4との間)が目立つ可能性がある。このため、隣接する結像光学部によって結像される画像の対応する画素の輝度値に所定の重み付けをして加算する平滑化処理を行うことが望ましい。
図15では、結像光学部C0を通して撮像素子部によって撮像された画像80のラインL0上の画素a41,…,a49が、結像光学部C1を通して撮像素子部によって撮像された画像81のラインL1上の画素b0,…,b8にそれぞれ対応している。このとき、ラインL0の各画素値に重み係数K0を乗じた値とラインL1の各画素値に重み係数K1を乗じた値とを加算することにより、繋ぎ目部分が平滑化された結合結果を得ることができる。重み係数K0と重み係数K1は、上記重み付けを行うための係数であり、対応する画素位置の係数値を加算するとそれぞれ1.0になるように設定されている。重み係数K0は、結像光学部C1を通して撮像素子部によって撮像された画像81に近づくほど小さくなる係数(0〜1の範囲内の係数)であり、例えば、図15の左から右に向かう順に、1,4/5,3/5,2/5,1/5,0である。重み係数K1は、結像光学部C0を通して撮像素子部によって撮像された画像80に近づくほど小さくなる係数(0〜1の範囲内の係数)であり、例えば、図15の右から左に向かう順に、1,4/5,3/5,2/5,1/5,0である。
画像処理部106は、その画像合成手段106b内に平滑化処理手段を有し、この平滑化処理手段においては、結像光学部C0を通して撮像素子部によって撮像された画像80のラインL0の平滑化領域の画像の画素値は重み係数K0で重み付けされ、結像光学部C1を通して撮像素子部によって撮像された画像81のラインL1の平滑化領域の画像の画素値は重み係数K1で重み付けされ、画像80のラインL0の平滑化領域の画像の重み付けされた画素値と画像81のラインL1の平滑化領域の画像の重み付けされた画素値とをそれぞれ加算することによって、合成画像の平滑化領域における画素値が求められる。
次に、隣接する結像光学部によって結像される画像の結合位置の検出結果から算出した距離に基づいて行われる、画像のぼやけ補正(図7のステップST6,ST7の処理)について説明する。まず、距離情報算出の原理について説明する。図16に示した、第1グループG21と第2グループG22の各結像光学部の光軸が合焦位置で交差するように結像光学系を構成した場合、各結像光学部の合焦位置に原稿70の被撮像領域が存在するときに第1グループG21と第2グループG22との各結像光学部を通して対応する撮像素子部が原稿70の同じ位置をほぼ同じタイミングで読み取る。すなわち、ラインL0,L1,L2,L3(図17に示す)は、読取り画像の先頭(図17の画像80,…,83の上端)から数えてほぼ同じ行になる。
一方、図18に示されるように、原稿70の被撮像領域が合焦位置から距離ΔZ、例えば、1mm離れた位置にある場合には、第1グループG21に属する各結像光学部C0,C2を通して撮像素子部が原稿70を読み取る位置と、第2グループG22に属する各結像光学部C1,C3を通して撮像素子部が原稿70を読み取る位置にずれが生じる。例えば、結像光学系C0が副走査方向DYに移動しながら原稿70の位置70aを読み取る場合、まず第1グループG21に属する結像光学部を通して対応する撮像素子部が原稿70の位置70aを読取り、その後、ある時間が経過してから第2グループG22に属する結像光学部を通して対応する撮像素子部が原稿70の位置70aを読み取る。そのため図19に示されるように、第2グループG22に属する結像光学部を通して撮像素子部に撮像された画像は、第1グループG21に属する結像光学部を通して撮像素子部に撮像された画像に比べてずれる(図19において下側にずれる)。すなわち、隣接する結像光学部を通して撮像素子部によって撮像された隣接する画像の間で一致する画像が現れる副走査方向DYの位置の違いが、合焦位置から原稿面までの距離ΔZに対応する。なお、原稿面とは、原稿70の被撮像領域31,32,…が存在する部分である。
合焦位置から原稿面までの距離ΔZと隣接する結像光学部によって撮像素子部の撮像面に結像される画像の画像ずれ量との関係は、図5に示すように、合焦位置から原稿面までの距離をΔZ1、隣接する結像光学部によって結像される画像の画像ずれ量をΔYとすると、次式で求めることができる。
ΔY=2×ΔZ1×tanθ
したがって、合焦位置から原稿面までの距離ΔZ1は、次式で求めることができる。
ΔZ1=ΔY1÷2÷tanθ
ただし、各結像光学部や撮像素子部の取付け位置により、各結像光学部の読取り画像には、原稿面の位置とは無関係に生じる固定的なずれがある。この固定的なずれの量は、合焦位置に置いた斜め格子などのテストパターンを読み取った画像から得られる各結像光学部間の画像ずれ量に等しい。この画像ずれ量をオフセット値として予め取得し画像処理部206内の、図示しない記憶装置に記憶しておく。そして、このオフセット値を隣接する結像光学部によって結像される画像の画像ずれ量から差し引くことで、正確に合焦位置から原稿面までの距離ΔZを求めることができる。
図20は、点画像を撮像装置(カメラ)で撮影したときに得られるぼやけ画像と、ぼやけ画像から得られる点像分布関数を模式的に示す図である。ぼやけ補正処理においては、画像のぼやけの特性は、点を撮像したときに得られる像の広がり具合を表す点像分布関数により把握可能である。画像のぼやけ方がわかれば、画像がぼやける場合と逆の変換を、ぼやけ画像に対して行うことで、ぼやけ画像からぼやける前の画像を復元することが可能となる。例えば、画像Fが関数Hによりぼやけ画像Gとなる場合、すなわち、F×H=Gの場合には、式4に示す逆変換により、ぼやけ画像Gから元の画像Fを復元することが可能である。
F=G×H−1 ・・・・・・・・・・・・・ 式4
例えば、画像のぼやけは、ぼやける前の画像の周辺画素の輝度値が、ぼやける前の画像の輝度値に混じるために生じる。画像のぼやけを積分演算と考えると、その逆の演算である微分演算を行えば、ぼやけ画像から、ぼやける前の画像を得ることができる。点像分布関数は、画像のぼやけ方、すなわち、被写体が合焦位置からどの程度ずれた位置にあるかによって変化する。よって、予め、画像の取り込みに使用する光学結像光学部を用いて、合焦位置から原稿面までの距離に応じて変化する点像分布関数を測定しておき、合焦位置から原稿面までの距離(図7のステップST6で算出した距離)に応じて、適用する逆関数を選択すればよい。
合焦位置から原稿面までの距離は結合位置の検出処理の結果を用いて求めることができるので、副走査方向DYには1ラインごと、主走査方向DXには結像光学部の繋ぎ目ごとに合焦位置から原稿面までの距離に関する情報を得ることができる。実施の形態1に係る画像読取装置100によれば、このように細かく取得した距離情報から画像のぼやけ量を推定できるので、原稿面が平らでなく、起伏が連続しているような場合であっても、精度の高いぼやけの補正処理を行うことができる。
以上に説明したように、実施の形態1に係る画像読取装置200によれば、主走査方向DXには、結像光学部の境界ごとに、結像光学部の数に応じた細かいピッチで、天板103と原稿70の被撮像領域との間の距離を測定できる。よって、原稿70が、しわのある用紙である場合や本の綴じ目近傍である場合であっても、画像内の細かい領域ごとに焦点ずれによる画像のぼやけの補正が可能である。このように、実施の形態1に係る画像読取装置200によれば、画像が撮像素子部の焦点深度から外れた位置に結像する場合であっても、画像が焦点深度内にあるかのように、合焦した状態に近い画像を生成できる。このため、実施の形態1に係る画像読取装置200は、実質的に大きな被写界深度を有することができる。
また、実施の形態1に係る画像読取装置200によれば、主走査方向DXに複数の結像光学部を設けたことで、画像読取装置200の小型化を図ることができる。
また、画像読取装置200の結像光学部211,212,…,218は原稿70側にテレセントリックな光学系であるので、合焦位置(天板203の上面203a)から原稿70までの距離ΔZが変動しても、撮像素子部241,242,…,248に結像される画像の結像倍率はほとんど変化しない。さらに、結像光学部211,212,…,218の光軸が主走査方向DXに垂直になるように、結像光学部211,212,…,218を構成及び配置する場合には、合焦位置(天板203の上面203a)から原稿70までの距離ΔZが変動しても結像光学部211,212,…,218を通して撮像素子部で撮像される画像は、主走査方向DXの位置に関しては変動せず、副走査方向DYに移動するだけである。また、合焦位置(天板203の上面203a)から原稿70までの距離ΔZが変動しても結像倍率は変わらない。
よって、実施の形態1においては、主走査方向DXの画像処理は不要となり、画像合成に際して副走査方向DYに隣接する2つの画像の位置の画像ずれ量だけ、副走査方向DYに拡大縮小する補正を行えばよい。また、画素補間したデータにより画像が最も一致する倍率と位置を検出するため、1画素未満のずれがある場合でも正しく補正することが出来る。また、画像を拡大縮小し、画像が最も一致する倍率と位置で繋ぎ合わせるため、画像が一致する領域の検出処理と画像のずれの補正処理を一度に実施するため、高速かつ高精度な画像結合処理が行える。
実施の形態2.
図21は、本発明の実施の形態2に係る画像読取装置300の光学系の構成を概略的に示す図である。図21においては、Y軸(副走査方向DY)は水平方向に、Z軸(深度方向DZ)は垂直方向に、X軸(主走査方向DX)は図が描かれている紙面に垂直で紙面の手前に向かう方向に描かれている。
実施の形態2に係る画像読取装置300は、結像光学系301と、照明光源(図示せず)と、天板303と、基板304a上に配置された(第1グループG31に属する結像光学部に対応する)複数の第1の撮像素子部(例えば、撮像素子部343)と、基板304b上に配置された(第2グループG32に属する結像光学部に対応する)複数の第2の撮像素子部(例えば、撮像素子部344)と、メモリ(図示せず)と、画像処理部(図示せず)とを有する。結像光学系301は、第1グループG31に属する複数の結像光学部313と、第2グループG32に属する複数の結像光学部314とを有する。実施の形態2における照明光源(図示せず)、天板303、基板304a,304b上に配置された複数の撮像素子部(343,344など)、メモリ(図示せず)、及び画像処理部(図示せず)は、実施の形態1における照明光源202、天板203、基板204上に配置された複数の撮像素子部241,242,…,248、メモリ205、及び画像処理部206とそれぞれ同様の構成及び機能を有する。また、実施の形態2に係る画像読取装置300の第1グループG31に属する複数の結像光学部(例えば、結像光学部313など)に対応する複数の撮像素子部及び第2グループG32に属する複数の結像光学部(例えば、結像光学部314など)に対応する複数の撮像素子部は、実施の形態1に係る画像読取装置200の複数の撮像素子部211,213,…,217及び複数の撮像素子部212,214,…,218に対応する構成であり、同様の機能を有する。
実施の形態2に係る画像読取装置300は、結像光学系301の構成が、実施の形態1における結像光学系201の構成と相違する。実施の形態2における結像光学系301は、原稿70の第1の被撮像領域(例えば、図1の被撮像領域31,33,…,37)からの光の光路を天板303にほぼ平行な水平方向に折曲げる第1の折曲げミラー351aと、原稿70の第2の被撮像領域(例えば、図1の被撮像領域32,34,…,38)からの光の光路を、第1の折曲げミラー351aによる反射光とは反対側に折曲げる第2の折曲げミラー351bとを有する。また、実施の形態2の結像光学系301においては、第1グループG31に属する第1の結像光学部(例えば、結像光学部313)は、第1の折曲げミラー351aと、光学セル363とから構成され、第2グループG32に属する第2の結像光学部(例えば、結像光学部314)は、第2の折曲げミラー351bと、光学セル364とから構成される。実施の形態2においては、第1グループG31に属する第1の結像光学部(例えば、結像光学部313)及び第2グループG32に属する第2の結像光学部(例えば、結像光学部314)の各光軸は、天板303に平行な水平方向であるが、水平方向を基準に傾斜した方向であってもよい。また、第1の折曲げミラー351a及び第2の折曲げミラー351bのそれぞれは、長尺な1つのミラーであっても、各結像光学部に対応して複数に分割されたミラーであってもよい。さらに、第1の折曲げミラー351a及び第2の折曲げミラー351bは、光の方向を変える機能を有する手段であれば、ミラー以外の光学素子であってもよい。また、光学セル363,364の構造も、実施の形態1の光学セルの構造などのような他の構造であってもよい。
以上に説明したように、実施の形態2に係る画像読取装置300は、実施の形態1に係る画像読取装置200と同様の効果を奏することができる。
また、実施の形態2に係る画像読取装置300は、第1の折曲げミラー351a及び第2の折曲げミラー351bを設けて光路を折曲げているので、深度方向DZ(Z軸方向)の装置の厚みを薄くすることができ、装置を小型化することができる。
なお、実施の形態2において、上記以外の点は、上記実施の形態1の場合と同じである。
実施の形態3. 図22は、本発明の実施の形態3に係る画像読取装置400の構成を概略的に示す図である。図22には、画像読取装置400の光学系の構成を概略的に示す斜視図(上側)と、画像信号処理系の構成を概略的に示すブロック図(下側)とが含まれている。また、図23は、実施の形態3に係る画像読取装置400の1つの結像光学部411の構成を示す概略的な斜視図及び主要な光線を示す図である。また、図24は、実施の形態3に係る画像読取装置400の光学系を図22のS22−S22線方向に見る概略的な断面及び主要な光線を示す図である。図において、画像の読取りにおける主走査方向DXにX軸を置き、主走査方向DXに直交する副走査方向DYにY軸を置き、主走査方向DX及び副走査方向DYの両方に直交する深度方向DZにZ軸を置く。
図示されるように、実施の形態3に係る画像読取装置400は、結像光学系401と、照明光源(図示せず)と、天板403(図22には示さず)と、基板404上に配置された複数の撮像素子部441,442,…と、メモリ405と、画像処理部406とを有する。実施の形態3における、結像光学系401、照明光源(図示せず)、天板403、基板404上に配置された複数の撮像素子部441,442,…、メモリ405、及び画像処理部406は、上記実施の形態1における結像光学系201、照明光源202、天板203、基板204上に配置された複数の撮像素子部241,242,…、メモリ205、及び画像処理部206と同様の機能を有する。
実施の形態3に係る画像読取装置400は、結像光学系401の構成が、上記実施の形態1における結像光学系201の構成と相違する。実施の形態3の結像光学系401は、原稿70の被撮像領域からの光を折曲げるミラーを含む構成を採用している。実施の形態3の結像光学系401においては、第1グループG41に属する第1の結像光学部(例えば、結像光学部411)は、折曲げミラー451aと、反射型の集光素子(例えば、集光ミラー)である第1凹面鏡452aと、絞りとして機能するアパーチャ453aと、反射型の集光素子(例えば、集光ミラー)である第2凹面鏡454aと、折曲げミラー455aとから構成される。また、第2グループG42に属する第2の結像光学部(例えば、結像光学部412)は、折曲げミラー451bと、反射型の集光素子である第1凹面鏡452bと、絞りとして機能するアパーチャ453bと、反射型の集光素子である第2凹面鏡454bと、折曲げミラー455bとから構成される。
実施の形態3における第1凹面鏡452a,452bはそれぞれ、実施の形態1における第1集光レンズ252に対応する集光機能を有する。実施の形態3におけるアパーチャ453a,453bはそれぞれ、実施の形態1におけるアパーチャ253に対応する絞り機能を有する。実施の形態3における第2凹面鏡454a,454bはそれぞれ、実施の形態1における第2集光レンズ254に対応する集光機能を有する。したがって、実施の形態3における結像光学系401は、実施の形態1における結像光学系201と同様の機能を有する。このため、実施の形態3に係る画像読取装置400は、実施の形態1の画像読取装置200と同様の効果を奏することができる。
なお、上記説明においては、各結像光学部が、第1凹面鏡452a(又は452b)と、第2凹面鏡454a(又は454b)の2つの凹面鏡を有しているので、装置の厚み方向(Z軸方向)及び装置の幅方向(Y軸方向)において画像読取装置を小型化することができる。
なお、本発明は、上記態様に限定されず、第1凹面鏡452a,452b又は第2凹面鏡454a,454bを集光機能を持たない反射ミラーとすることも可能である。また、本発明においては、第1凹面鏡452a,452b又は第2凹面鏡454a,454bをレンズで構成することも可能である。さらに、各結像光学部が有する凹面鏡の数を3枚以上とすることも可能である。
次に、実施の形態3に係る画像読取装置400をより具体的に説明する。1つの結像光学部及びこれに対応する撮像素子部によって撮像される被撮像領域の主走査方向DXの長さは、例えば、10mmである。天板403の上面403aの垂線に対する結像光学部の光軸の副走査方向DYにおける傾斜角θは、例えば、5°である。すなわち、原稿70から副走査方向DYにおける傾斜角、すなわち、天板403の上面403aの垂線に対して5°の方向に進む主光線を持つ光は、折曲げミラー451a又は452aによって光路を曲げられる。折曲げミラー451a又は452aによって光路を曲げられた光は、その主光線の方向が副走査方向DY(Y軸)に対して8°の角度をなす緩やかな斜め下向きの方向に進み、第1凹面鏡452a又は452bに入射する。
第1凹面鏡452a及び452bの焦点距離f452は、例えば、20mmである。原稿70から第1凹面鏡452a又は452bまでの距離は、ほぼ20mmになるように設計されており、第1凹面鏡452a又は452bによって反射された光は、コリメートされる。アパーチャ453a又は453bは、光軸に沿って第1凹面鏡452a又は452bから、例えば、20mmの位置に設けられている。20mmの距離は、第1凹面鏡452a又は452bの焦点距離と等しいので、結像光学部(例えば、図22における結像光学部411及び412)は、原稿70側にテレセントリックな光学系である。
アパーチャ453a又は453bの開口径が、各結像光学部の明るさと被写界深度を決定する。ここでは、アパーチャ453a及び453bの開口直径φが1mmの場合を説明する。このときの、光学系のF値は20である。この結像光学部(例えば、図22における結像光学部411又は412)全体の光学部品の配置、及び、第1凹面鏡452a及び452b、第2凹面鏡454a及び454bを非球面形状などを用いて最適化設計すれば、合焦位置を基準として深度方向DZに少なくとも±2mm、すなわち、深度方向DZに4mmの被写界深度を得ることができる。
アパーチャ453a又は453bを通過した光は、第2凹面鏡454a又は454bによって集光され、折曲げミラー455a又は455bで折り曲げられた後、撮像素子部441,443,…又は442,444,…上に結像する。ここで、第2凹面鏡454a又は454bの焦点距離f454を20mmとすれば、結像倍率が1の反転像が結像される。複数の撮像素子部で撮像された反転像から合成画像を生成(復元)する処理は、例えば、実施の形態1で説明した画像処理部106による処理と同様である。
実施の形態3に係る画像読取装置400の一例は、アパーチャ453a又は453bから第2凹面鏡454a又は454bまでの光路長、及び、第2凹面鏡454a又は454bから撮像素子部441,443,…又は442,444,…までの距離を、ともに20mmに設定しているので、原稿70側のみならず像側にもテレセントリックな光学系となる。このように、像側にもテレセントリックな光学系を構成することで、撮像素子部441,443,…又は442,444,…の光路方向の設置位置(図3においては、Z軸方向)の設置位置によらず、結像倍率が一定になるという効果がある。
以上に説明したように、実施の形態3に係る画像読取装置400においては、集光手段として、第1凹面鏡452a及び452b並びに第2凹面鏡454a及び454bを使用しているので、色収差が発生しないという利点もある。特に、大きな被写界深度を持つ光学系では、色収差が顕著になりやすいが、実施の形態3に係る画像読取装置400においては、反射光学系を用いることで、色収差を回避することができる。
また、実施の形態3に係る画像読取装置400においては、光学素子を反射鏡で構成しているので、光路が折り返され、装置の厚み方向(Z軸方向)及び装置の幅方向(Y軸方向)において、光学系全体を小型化することができる利点もある。
また、上記説明においては、原稿70から撮像素子部441,443,…又は442,444,…までの光路長は80mmになる。したがって、仮に、第1及び第2の折曲げミラー451a及び452bを設けず、かつ、第1凹面鏡452a及び452b並びに第2凹面鏡454a及び454bと同様の機能のレンズを用いて同様の結像光学部を構成すると、その結像光学部のZ軸方向の厚みは、約80mmになる。これに対し、実施の形態3に係る画像読取装置400においては、折曲げミラー451a及び452b、第1凹面鏡452a及び452b、並びに、第2凹面鏡454a及び454bによって光路を折り返しているので、光学系のZ軸方向の厚みを約23mmに縮小することができる。
また、実施の形態3に係る画像読取装置400においては、結像光学部の結像倍率を1にすることができるので、撮像素子部として既存の撮像センサを使用することができ、装置の低価格化を図ることができるという利点がある。すなわち、仮に光学系が縮小系であった場合には、その縮小倍率に応じて撮像素子部の一画素単位を小さくしなければ、撮像素子部自体の解像度によって得られる像の解像度は劣化する。実施の形態3に係る画像読取装置400においては、結像光学部の結像倍率を1にすることができるので、既存の正立等倍像を撮像する密着型イメージセンサの解像度を600dpiとすることによって、600dpiの解像度を達成することができる。
また、実施の形態3に係る画像読取装置400においては、各結像光学部の結像倍率を1にする場合、各結像光学部の第1凹面鏡452a及び452b並びに第2凹面鏡454a及び454bを同一部材で構成することができる。特に、実施の形態3に係る画像読取装置400のように、原稿70側及び像側の両方でテレセントリックな光学系であれば、各結像光学部の第1凹面鏡452a及び452b並びに第2凹面鏡454a及び454bの形状を同一にしても、十分な解像度の結像条件を持った光学系を設計できる。このように、各凹面鏡に同一部材を使用することができるので、装置の低価格化を実現することができるという効果がある。
次に、複数の結像光学部を組み合わせた例について説明する。第1グループG41に属する結像光学部(光線を破線で示す)は、原稿70から天板403の上面403aの垂線に対して傾斜角5°の光軸を持つ。また、第2グループG42に属する結像光学部(光線を実線で示す)は、原稿70から天板403の上面403aの垂線に対して、第1グループに属する結像光学部の傾斜角とは副走査方向DYに反対側に傾斜角5°の光軸を持つ。
また、隣接する結像光学部(例えば、図22における結像光学部411と412)の間隔は9mmである。また、同一列(同一グループG41又はG42)内における結像光学部間の距離は18mmである。1つの結像光学部を通して撮像素子部によって撮像される被撮像領域の読取り幅(主走査方向DZの長さ)は10mmであるので、隣接する結像光学部間での被撮像領域(読取り領域)の重複領域の幅は1mmである。主走査方向DXに1mmの撮像画像には、600dpiの場合には、約24画素が含まれている。この画素数は、隣接する結像光学部を通して撮像素子部によって撮像された画像同士を結合するための、画像処理部による処理にとって、十分な大きさである。
図24に示されるように、第1グループG41に属する結像光学部(光線を破線で示す)、及び、第2グループG42に属する結像光学部(光線を実線で示す)における、原稿70からアパーチャ453a又は453bまでの光路は、交差しているが、主走査方向DXにずれた(交差しない)空間を進んでいる。すなわち、第1グループG41に属する結像光学部(光線を破線で示す)、及び、第2グループG42に属する結像光学部(光線を実線で示す)におけるそれぞれの光路は、3次元的には、干渉し合っていない、すなわち、重複していない。実施の形態3に係る画像読取装置400によれば、光路が干渉し合っていない光学系の小型化を図ることができる。
また、原稿70側の合焦位置を、実施の形態3に係る画像読取装置400では、天板403bの上面403aから1mmの第3の原稿位置73に設計し、さらに、第1グループG41に属する結像光学部(光線を破線で示す)を通して読み取られる被撮像領域のラインと、第2グループG42に属する結像光学部(光線を実線で示す)を通して読み取られる被撮像領域のラインとが、第3の原稿位置73で交わるように設計している。上述したように、光学系自体は、±2mmの被写界深度を持っているので、天板403の上面から3mmの第4の原稿位置75まで十分に良好な解像度を得ることができる。言い換えると、実施の形態3に係る画像読取装置400の被写界深度は、天板403の上面403aから3mmまでである。原稿70が被写界深度の範囲内に置かれれば、結像光学系によって結像され撮像素子部によって撮像された画像は良好な解像度を有するが、原稿70の被撮像領域は、できるだけ合焦位置に近い位置に置かれることが好ましい。したがって、撮像画像の品質を重視する場合には、合焦位置を天板403の上面403aに一致させる設計を採用することが望ましい。しかし、できるだけ画像のぼやけの発生を回避できるように、より大きな被写界深度を持つ装置とするために、天板403の上面403aから上方に、例えば、2mmの位置に合焦位置が存在するように、天板403の位置を下げる設計を採用することも可能である。この場合には、被写界深度を、天板403の上面403aから、その上方4mmの位置までの範囲と、大きくすることができる。
原稿70の位置が第3の原稿位置73(実施の形態3における合焦位置)から遠ざかるにつれて、第1グループG41に属する結像光学部(光線を破線で示す)を通して読み取られる被撮像領域のラインと、第2グループG42に属する結像光学部(光線を実線で示す)を通して読み取られるラインとは、副走査方向DYに離れる。これは以下の理由による。第1の理由は、実施の形態1で説明したように、光学系が原稿70側にテレセントリックであり、原稿70の位置が第3の原稿位置73(実施の形態3における合焦位置)から遠ざかっても、主走査方向DX及び副走査方向DYとも結像倍率が変化しないからである。第2の理由は、主走査方向DXに対して結像光学部の光軸が垂直であることから、第1グループG41に属する結像光学部(光線を破線で示す)を通して読み取られる被撮像領域のラインと、第2グループG42に属する結像光学部(光線を実線で示す)を通して読み取られるラインは、主走査方向DXには移動せず、副走査方向DYにのみ移動するからである。よって、実施の形態3に係る画像読取装置400においては、原稿70の深度方向DZの位置が、原稿の主走査方向DXの位置に応じて変動している場合であっても、第1グループG41に属する結像光学部を通して読み取られる被撮像領域のラインと第2グループG42に属する結像光学部を通して読み取られるラインとの副走査方向のずれを考慮に入れた画像の結合及び修正処理を、実施の形態1で説明した画像処理部による処理方法と同様の方法によって、行うことができる。
図25は、実施の形態3に係る画像読取装置400の遮光部材を含む構成を原稿70側から見た概略的な斜視図である。また、図26は、実施の形態3に係る画像読取装置400の遮光部材を含む構成を撮像素子部側から見た概略的な斜視図である。図25又は図26に示されるように、画像読取装置400は、遮光部材462及び463、スリット(孔)461a及び461bを備えた遮光スリット部材461とを有することが望ましい。実施の形態3に係る画像読取装置400は、被写界深度を大きくするためにF値を20とし、結像光学系401に取り込まれる光量が少なく、使用されない光が多い光学系である。このため、原稿70から散乱される光の多くが、結像光学系に入射しない不要な光となる。したがって、不要な光を適切に遮光する必要がある。
そのためには、図25に示される例においては、遮光スリット部材461はスリット(孔)461a及び461bを、結像光学部の配列に対応する千鳥状に配列している。また、遮光部材462及び463は、アパーチャ453a及び453bよりも光の進む方向に下流の光路も外界から遮光することで、より一層迷光に対する耐性が強くなる。さらに、折曲げミラー455a及び455bよりも下流側の光路部分にも開口部470a及び470bを有する遮光スリット部材470を設置することで、より迷光に対する耐性を強くできる。開口部470a及び470bは、撮像素子部441,442,443,…に対応して設けられている。
また、図22に示されるように、アパーチャ453aを透過型とし、同一グループG41又はG42内において隣接する結像光学部間に遮光壁471を設け、アパーチャ453a及び453bよりも光の進行方向の下流における光学系を、迷光を侵入させ難い独立な構成としているので、撮像画像を迷光によって劣化させることがなく、撮像画像の品質を向上させることができる。また、遮光壁471、遮光部材462,463などの内壁面を黒色とすることで、アパーチャ453a及び453bの小さな開口部から侵入する迷光による撮像画像の劣化を軽減することができる。
また、結像光学系401を実現する方法として、以下の方法を採用することができる。例えば、図22から理解できるように、主走査方向DXに複数個並ぶ同様の光学要素(例えば、主走査方向DXに複数個並ぶ第1凹面鏡、主走査方向DXに複数個並ぶ第2凹面鏡、又は、主走査方向DXに複数個並ぶアパーチャ)を長尺な支持部材上に配列してもよい。例えば、結像光学系401を、支持部材上に複数個の第1凹面鏡を1列に18mm間隔で並べた第1凹面鏡アレイと、スリット(孔)を1列に18mm間隔で開けたアパーチャアレイと、支持部材上に複数個の第2凹面鏡を1列に18mm間隔で並べた第2凹面鏡アレイとを用いる構成することができる。また、折曲げミラー451a,451b及び折曲げミラー455a,455bは、1枚の細長い板にアルミなどの反射材料を蒸着することによって製造できる。また、折曲げミラー451a,451bは、隣接して配置されるので、例えば、断面形状が三角形(又はL字状)の部材の両斜面に反射材料を蒸着して作製してもよい。
以上に説明した構成において、実施の形態1で説明した、合焦位置から原稿面までの距離に基づく画像ぼやけ補正処理を行なえば、光学系によって定まる被写界深度(天板403の上面403aから3mmまでの範囲)をより一層大きくすることが可能になる。例えば、合焦位置から原稿面までの距離ΔZが3mm以下の場合には、画像処理部406による画像ぼやけの補正処理を行なわず、距離ΔZが3mmを超えた場合にのみ、画像ぼやけの補正処理を行なうようにしてもよい。なお、出願人は、光学系によって定まる被写界深度が天板103から3mmまでの範囲であっても、画像処理部406による画像ぼやけの補正処理を併用することによって、距離ΔZが6mmまで、十分に良好な解像度の画像を取得することができることを、確認している。
以上に説明したように、実施の形態3に係る画像読取装置400によれば、折曲げミラー451a,451b、第1凹面鏡452a,452b、第2凹面鏡453a,453b、折曲げミラー455a,455bを用いて光路を折り返しているので、光学系の構成の簡素化及び小型化を実現できる。また、画像処理部406の処理によって画像のぼやけを低減する画像処理を行っているので、実質的な被写界深度を大きくできる。
なお、上記説明においては、実施の形態3の結像光学系401は、上記実施の形態1における結像光学系201の第1集光レンズ252、アパーチャ253、第2集光レンズ254に対応する、第1凹面鏡452a,452b、アパーチャ453a,453b、第2凹面鏡454a,454bを有するが、実施の形態3の結像光学系401として他の構成を採用することも可能である。例えば、結像光学系401が、上記実施の形態1における結像光学系201の第1集光レンズ252、アパーチャ253(図2)に対応する、第1凹面鏡452a,452bとアパーチャ453a,453bとを有するように、結像光学系401を構成してもよい。
また、実施の形態3において、上記以外の点は、上記実施の形態1乃至2の場合と同じである。
実施の形態4.
図27は、本発明の実施の形態4に係る画像読取装置500の光学系の構成を概略的に示す斜視図である。また、図28は、実施の形態4に係る画像読取装置500の光学系を図27のS26−S26線方向に見る概略的な断面及び主要な光線(原稿が合焦位置にある場合)を示す図である。また、図29は、実施の形態4に係る画像読取装置500の光学系を図27のS26−S26線方向に見る概略的な断面及び主要な光線(原稿が合焦位置からずれた位置にある場合)を示す図である。さらに、図30は、実施の形態4に係る画像読取装置500の遮光部材を含む構成を概略的に示す斜視図である。
実施の形態4に係る画像読取装置500は、結像光学系501と、照明光源(図示せず)と、天板503と、基板(図示せず)上に配置された複数の撮像素子部541,542,…と、メモリ(図示せず)と、画像処理部(図示せず)とを有する。実施の形態4における結像光学系501、照明光源(図示せず)、天板503、基板上に配置された複数の撮像素子部541,542,…、メモリ505、及び画像処理部506は、上記実施の形態3における結像光学系401、照明光源(図示せず)、天板403、基板404上に配置された複数の撮像素子部441,442,…、メモリ405、及び画像処理部406と同様の機能を有する。
実施の形態4における結像光学系501は、第1グループG51に属する複数の結像光学部と、第2グループG52に属する複数の結像光学部とを有する。図27乃至図30において、主要な光線を破線で示す結像光学部(例えば、結像光学部511)は、第1グループG51に属する結像光学部であり、主要な光線を実線で示す結像光学部(例えば、結像光学部512)は、第2グループG52に属する結像光学部である。
第1グループG51に属する結像光学部は、原稿70からの光を折曲げる折曲げミラー551aと、この折曲げられた光を反射する第1凹面鏡552aと、この第1凹面鏡552aで反射した光を反射する反射ミラー553aと、反射ミラー553aで反射した光を反射する第2凹面鏡554aと、折曲げミラー555aとを有する。折曲げミラー551aで反射された光は、第1凹面鏡552aでコリメートされて、反射ミラー553aに到達する。反射ミラー553aは、例えば、直径φが1mmの反射領域と、この反射領域の外側の光吸収用の黒色領域(図示せず)とから構成される。反射ミラー553aの反射領域で反射された光線は、第2凹面鏡554aに到達し、ここで集光されて、折曲げミラー555aに到達する。折曲げミラー555aで反射した光は、撮像素子部541,543,…上に結像する。
同様に、第2グループG52に属する結像光学部は、原稿70からの光を折曲げる折曲げミラー551bと、この折曲げられた光を反射する第1凹面鏡552bと、この第1凹面鏡552bで反射した光を反射する反射ミラー553bと、反射ミラー553bで反射した光を反射する第2凹面鏡554bと、折曲げミラー555bとを有している。折曲げミラー551bで反射された光は、第1凹面鏡552bでコリメートされて、反射ミラー553bに到達する。反射ミラー553bは、例えば、直径φが1mmの反射領域と、この反射領域の外側の光吸収用の黒色領域(図示せず)とから構成される。反射ミラー553bの反射領域で反射された光は、第2凹面鏡554bに到達し、ここで集光されて、折曲げミラー555bに到達する。折曲げミラー555bで反射した光は、撮像素子部542,544,…上に結像する。
光学系全体は、外部からの迷光を遮断するために、図30に示されるように、複数のスリット(孔)561a,561bを備えた遮光スリット部材561と、遮光部材562を有する。
実施の形態4に係る画像読取装置500は、実施の形態3に係る画像読取装置400におけるアパーチャ453a及び453b(透過型の開口部)に代えて、光束径よりも小径の反射ミラー553a及び553bを用いている。反射ミラー553a及び553bは、実施の形態3の画像読取装置400におけるアパーチャ453a及び453bと同様の絞り機能を有する。
実施の形態4に係る画像読取装置500においても、以下に説明する相違点を除き、実施の形態3に係る画像読取装置400と同様の構成を有する。また、画像読取装置500は、画像読取装置400と同様の構成を有することから、基本的に、画像読取装置500は、画像読取装置400と同様の効果を奏することができる。
また、実施の形態4に係る画像読取装置500によれば、絞り機能をアパーチャによって実現する代わりに、反射ミラー553a,553bで実現しているので、画像読取装置500の副走査方向DY(Y軸方向)の結像光学系のサイズを小型化することができる。具体的に言えば、実施の形態3においては、副走査方向DYにおける対向する第1凹面鏡と第2凹面鏡との距離は約60mmであるが、実施の形態4においては、副走査方向DYにおける対向する第1凹面鏡と第2凹面鏡との距離は約20mmであり、約3分の1にすることができる。
さらに、実施の形態4に係る画像読取装置500の結像光学系の結像倍率を1とすることができるので、図28に示されるように、第1グループG51に属する結像光学部に含まれる第1凹面鏡552a及び第2凹面鏡554aと、第2グループG52に属する結像光学部に含まれる反射ミラー553bとを、同一平面(XZ面に平行な面)上に設置可能である。同様に、第2グループG52における光学系に含まれる第1凹面鏡552b、第2凹面鏡554bと、第2グループG52に属する結像光学部に含まれる反射ミラー553aを同一平面(XZ面に平行な面)上に設置可能である。
実施の形態4に係る画像読取装置500の結像光学系501は、複数の第1凹面鏡552a及び複数の第2凹面鏡554aを同一の支持部材上に配列した凹面鏡アレイを用いて製造することが可能である。このような複数の第1凹面鏡552a及び複数の第2凹面鏡554aを2次元的に備えた凹面鏡アレイは、例えば、樹脂成型によって形成することができるので、実施の形態4に係る画像読取装置500によれば、光学系の組み立てを、精度良く簡単に行うことができるという効果が得られる。
また、実施の形態4に係る画像読取装置500は、複数の開口部に鏡面仕上げした反射部材を取付け、複数の開口部以外の部分を黒色部材にて作製して、複数の反射ミラー553aをアレイ状に配列した反射ミラーアレイを用いて製造することが可能である。このような反射ミラーアレイを用いれば、光学系の組み立てを、精度良く簡単に行うことができるという効果が得られる。
なお、実施の形態4において、上記以外の点は、上記実施の形態1乃至3の場合と同じである。
なお、本発明に係る画像読取装置は、上記実施の形態1乃至4から選択された2つ以上の実施の形態の構成を適宜組み合わせた構成を採用することも可能である。