JP4943016B2 - 超音波による焼入深さ測定方法および測定装置 - Google Patents
超音波による焼入深さ測定方法および測定装置 Download PDFInfo
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Description
(b)焼入れ層と母材層の超音波散乱確率の差を元に焼入れ深さの測定を行っている点。(c)超音波散乱確率の差を可視化し、焼入れ深さのパターンを描いている点。
(d)焼入れ深さの測定システムとして、超音波探傷機の信号をパソコンで処理し、計算で深さを求めている点。
(e)超音波で求めた焼入れ深さのデータと硬度による焼入れ深さのデータとの相関を評価している点。
(f)超音波の周波数として50MHz以上の高周波を利用している点。
また、上記非特許文献1では、超音波の確率分布のピーク位置を焼入れ深さとしているが、必ずしも最適な方法とは言えない。
さらに、上記各文献の技術では、円すいころ軸受形の車輪用軸受における外輪転走面端部などのように、超音波が乱れる部位の焼入れ深さの測定を行う例は示されておらず、したがって円すいころ軸受形の車輪用軸受外輪の転走面への適用はなされていない。
この発明の他の目的は、円すいころ軸受形の車輪用転がり軸受における外輪転走面の焼入れ深さを測定することができる焼入れ深さ測定方法を提供することである。
軌道輪を上記周面の中心回りに回転させながら、上記周面である軌道輪表面に対向させた超音波プローブにより所定サンプリング回転角度毎に超音波を発信させ、この超音波の反射波を受信する過程と、
受信された反射波における上記所定サンプリング回転角度毎の散乱波のピーク信号を超音波検出手段により検出し、このピーク信号が現れる軌道輪表面からの深さ位置であるピーク位置を、検出したピーク信号の発信から受信までの伝播時間による測定する過程と、 軌道輪の1回転毎に所定ピッチで軌道輪の軸方向に走査することで、上記ピーク位置の測定を、軸方向の所定範囲につき行う過程と、
この所定範囲の測定により得られたデータから、各軸方向走査位置毎に、軌道輪1回転における各回転角度のピーク位置の分布である超音波の散乱確率分布を求め、この散乱確率分布から所定の基準でその走査位置の超音波測定による深さ位置である超音波深さ位置を定める過程と、
この超音波深さ位置から所定の推定処理により、焼入れ硬化層の硬度により定められる軌道輪表面からの深さである有効硬化層深さを求める過程とを含む。
上記散乱確率分布から超音波深さを求める所定の基準は複数準備し、これらの準備された複数の基準のうちの一つを選択して前記超音波深さ位置を定める。
車輪用転がり軸受における軌道輪は、例えば炭素鋼製のものであり、またその測定する周面は、高周波焼入れ等の処理がなされたものである。
この発明方法は、この散乱波の散乱確率の差から、焼入れ深さの推定を行う。このための処理として、上記のように、受信された散乱波のピーク信号を検出し、このピーク信号が現れる転走面表面からの深さ位置であるピーク位置を、伝搬時間より算出する。
このようにして得られたピーク位置のデータから、超音波の散乱確率分布を求め、この散乱確率分布から所定の基準でその走査位置の超音波測定による深さ位置である超音波深さ位置を定める。このように所定の基準を定めておいて、超音波深さ位置を定めるため、測定者の個人差の影響を排除でき、また測定時間が短縮できる。
この場合に、前記基準として、測定対象となる軌道輪の種類や、測定箇所、焼入れ条件等によって、どのような基準で超音波を定めると、硬度による焼入れ深さとの相関が高いかが異なる。したがって、これらの検出基準を2つ以上準備しておいて、予備テスト等を行い、最も硬度による測定と相関が高く、かつ安定している検出基準を選択することで、焼入れ深さを精度良く求めることができる。
なお、散乱確率分布から所定の基準で超音波深さ位置を定める過程では、散乱確率分布のヒストグラムを作成すると、処理が容易である。
超音波深さは、硬度測定によって得られる焼入れ深さである有効硬化層深さとは一致しないが、予め両者の相関を調べて変換式を作成しておくことで、超音波深さから、硬度による焼入れ深さである有効硬化層深さの推定を行うことができる。
これらの検出基準を準備して選択的に用いれば、種々のワーク種類、その測定箇所、焼入れ硬化層深さ等に応じて、焼入れ深さを精度良く求めることができる。
このように、焼入れ深さを測定したい箇所の近傍のデータを用いて最小二乗法による近似を行うことで、ノイズの影響を軽減させることができる。
転走面端部は、超音波の乱れが発生するため、直接に超音波による測定を行うことができないが、近傍における焼入れ深さの測定値を元に推定をすることで、測定が可能になる。このように、この発明方法によると、超音波による焼き入れ深さ非破壊測定技術によって、円すいころ軸受形の車輪用転がり軸受における外輪転走面の焼入れ深さを測定することができる。
入力データとして、軌道輪周面全周の所定サンプリング回転角度毎における、超音波を対向発信させて受信された散乱波のピーク信号が現れる軌道輪表面からの深さ位置であるピーク位置のデータを、軌道輪の軸方向の所定範囲につき求めた測定データを読み込む測定データ読込手段(46)と、
この読み込まれた測定データから、各軸方向走査位置毎に、軌道輪1回転における各回転角度のピーク位置の分布である超音波の散乱確率分布を求め、この散乱確率分布から所定の基準でその走査位置の超音波測定による深さ位置である超音波深さ位置を定める超音波深さ位置算出手段(47)と、
この算出された超音波深さ位置から所定の推定処理により、焼入れ硬化層の硬度により定められる軌道輪表面からの深さである有効硬化層深さを求める有効硬化層深さ推定手段(48)とを含むものである。
前記超音波深さ位置算出手段(47)は、散乱確率分布から超音波深さを求める所定の基準として、散乱確率が設定レベルを超える位置を超音波深さとする検出基準、散乱確率分布の傾きが設定傾き角度を超える位置を超音波深さとする検出基準、散乱確率分布の傾きが最大の位置を超音波深さとする検出基準、および散乱確率分布の累積度数が設定値を超える位置を超音波深さとする検出基準のうちの少なくとも2つ以上の検出基準と、これらの検出基準を選択する手段(55)を有する。
前記有効硬化層深さ推定手段(48)は、有効硬化層深さを測定する転走面の軸方向の端部を含む目的測定位置の近傍における超音波深さの測定値を元に、最小二乗法による近似線を求め、この近似線から、その目的測定位置における超音波深さ位置を求め、この求めた超音波深さ位置から所定の推定式を用いてその目的測定位置の有効硬化層深さを求める手段を有する。
入力データとして、車輪用転がり軸受における軌道輪の周面全周の所定サンプリング回転角度毎における、超音波を対向発信させて受信された散乱波のピーク信号が現れる軌道輪表面からの深さ位置であるピーク位置のデータを、軌道輪の軸方向の所定範囲につき求めた測定データを読み込む手順(S1)と、
この読み込まれた測定データから、各軸方向走査位置毎に、軌道輪1回転における各回転角度のピーク位置の分布である超音波の散乱確率分布を求め、この散乱確率分布から所定の基準でその走査位置の超音波測定による深さ位置である超音波深さ位置を定める手順(S2)と、
この超音波深さ位置から所定の推定処理により、焼入れ硬化層の硬度により定められる軌道輪表面からの深さである有効硬化層深さを求める手順(S3)とを含む。
前記超音波深さ位置を定める手順(S2)は、散乱確率分布から超音波深さを求める所定の基準として、散乱確率が設定レベルを超える位置を超音波深さとする検出基準と、散乱確率分布の傾きが設定傾き角度を超える位置を超音波深さとする検出基準と、散乱確率分布の傾きが最大の位置を超音波深さとする検出基準と、散乱確率分布の累積度数が設定値を超える位置を超音波深さとする検出基準と、これらの基準を選択する手順(23)とを含む。
前記有効硬化層深さを求める手順(S3)は、有効硬化層深さを測定する転走面の軸方向の端部を含む目的測定位置の近傍における超音波深さの測定値を元に、最小二乗法による近似線を求め、この近似線から、その目的測定位置における超音波深さ位置を求め、この求めた超音波深さ位置から所定の推定式を用いてその目的測定位置の有効硬化層深さを求める手順を含む。
この発明における第2の発明の超音波による焼入深さ測定方法は、車輪用転がり軸受における軌道輪の周面に設けられた焼入れ硬化層の軌道輪表面からの深さを測定する方法であって、軌道輪を上記周面の中心回りに回転させながら、上記周面である軌道輪表面に対向させた超音波プローブにより所定サンプリング回転角度毎に超音波を発信させ、この超音波の反射波を受信する過程と、受信された反射波における上記所定サンプリング回転角度毎の散乱波のピーク信号を超音波検出手段により検出し、このピーク信号が現れる軌道輪表面からの深さ位置であるピーク位置を、検出したピーク信号の発信から受信までの伝播時間による測定する過程と、軌道輪の1回転毎に所定ピッチで軌道輪の軸方向に走査することで、上記ピーク位置の測定を、軸方向の所定範囲につき行う過程と、この所定範囲の測定により得られたデータから、各軸方向走査位置毎に、軌道輪1回転における各回転角度のピーク位置の分布である超音波の散乱確率分布を求め、この散乱確率分布から所定の基準でその走査位置の超音波測定による深さ位置である超音波深さ位置を定める過程と、この超音波深さ位置から所定の推定処理により、焼入れ硬化層の硬度により定められる軌道輪表面からの焼入れ深さである有効硬化層深さを求める過程とを含み、上記散乱確率分布から超音波深さを求める所定の基準を複数準備し、これらの準備された複数の基準のうちの一つを選択して前記超音波深さ位置を定め、散乱確率分布から超音波深さを求める複数の所定の基準として、散乱確率が設定レベルを超える位置を超音波深さとする検出基準、散乱確率分布の傾きが設定傾き角度を超える位置を超音波深さとする検出基準、散乱確率分布の傾きが最大の位置を超音波深さとする検出基準、および散乱確率分布の累積度数が設定値を超える位置を超音波深さとする検出基準の4つの検出基準を含み、超音波深さ位置から有効硬化層深さを求める所定の推定処理は、有効硬化層深さを測定する転走面の軸方向の端部を含む目的測定位置の近傍における超音波深さの測定値を元に、最小二乗法による近似線を求め、この近似線から、その目的測定位置における超音波深さ位置を求め、この求めた超音波深さ位置から所定の推定式を用いてその目的測定位置の有効硬化層深さを求める処理であるため、超音波による焼き入れ深さ非破壊測定技術によって、車輪用軸受における軌道輪の周面の焼入れ深さを測定することができ、その際に、軌道輪に適した処理方法が選択できて、軌道輪に応じた精度の良い焼入れ深さの測定が行え、かつ測定者の個人差の影響を排除でき、また測定時間を短縮することができる。
これら6点の測定箇所の測定を行うにつき、後述のように転走面2cの全体の測定を行い、その測定結果より上記6点の測定値を定める。
超音波プローブ11は、ワーク2の転走面2cに対して垂直となる姿勢で、走査機構21の走査台22に設置される。走査台22は、回転台10aに固定されたワーク2の軸方向Yおよび径方向Xに移動可能なものであり、両方向の合成動作によってテーパ面からなる転走面2cに対して、一定の距離を保った状態で軸方向に移動可能とされる。
一次データ測定装置40は、超音波探傷機12で得た測定データに所定の処理を施し、その処理後の測定データをデータファイルとして保存する手段である。
焼入深さ測定値処理装置41は、一次データ測定装置40で作成した測定データのファイルから、焼入れ深さを自動計算する装置である。
焼入れ深さを求める箇所は、上記6箇所(イ〜ヘ)(図3)の測定部であるが、焼入れパターンを得て上記6箇所の焼入れ深さを正確に推定するために、転走面2cの全域の測定を行う。このために、ワーク2が1回転する毎に、水距離3mmを保ちつつ、所定ピッチ(0.25mmのピッチ)でワーク2の軸方向に超音波プローブ11を走査することにより、転走面2cの全域の測定を行う。
一次データ測定装置40は、このようにした得た散乱波が最大となる表面からの深さ位置のデータを、各位置検出器29〜31により得られる回転方向位置、および軸方向,径方向位置と関連続けてデータファイルとして保存する。データファイルは、この例では、一つのワーク2における各転走面2c毎に作成する。したがって、一つのワーク2に対して、測定箇所イ〜ハを含む転走面2cのファイルと、測定箇所ニ〜ヘを含む転走面2cのファイルとが作成される。
・一次データ測定装置40で作成されたファイルを読み込み、転走面2cの両端と中央の3箇所の焼入れ深さ(推定硬化層深さである有効硬化層深さ)を自動計算し、結果を画面等に表示する。
・超音波散乱波の確率分布を濃淡画像として可視化する。この濃淡画像をオペレータが見て熱処理条件が著しく異なっているかの判断を行える場合がある。
・転走面2cの全長に渡るヒートパターンの概略を表示する。
・各段階の自動計算結果等の処理データを、他のソフトウェアに複写して貼り付けたり、テキストファイルの形式で書き出せるものとする。
超音波深さ位置定め手順S2には、散乱確率分布の計算・表示手順S21、有効測定範囲算出手順S22、ヒートパターン計算表示手順S23、超音波深さ算出手順S24を含む。
これらの手順の詳細は、後に焼入深さ測定方法と共に説明する。
超音波深さ位置算出手段47は、散乱確率分布計算手段50、散乱確率分布表示手段51、有効測定範囲算出手段52、範囲取得方式選択手段53、ヒートパターン計算手段54、検出基準選択手段55、ヒートパターン表示手段56、超音波深さフィッティング手段57、および超音波深さ表示手段58を有する。
有効硬化層深さ推定手段48は、推定計算手段59および推定結果表示手段50を有する。
ワーク設定手段49は、製品設定部61、測定範囲設定部62、および焼入れ深さ設定部63を有する。
上記各手段の機能については、以下に説明する。
ワーク設定手段49は、焼入れ深さの自動計算の前に、ワーク2に応じた種々の事項を設定する手段である。新規型番や焼入れ条件の変更時には、この焼入深さ測定装置41による計算を行わせるよりも前に、硬度による焼入れ深さの測定と超音波による焼入れ深さの測定を行い、両者の相関が最も良くなるように、ワーク2や推定式などについての設定を行う必要がある。
ワーク設定手段49は、上記製品設定部61、測定範囲設定部62、および焼入れ深さ設定部63により、それぞれ、図13(A)〜(C)に示す製品設定用の入力画面、測定範囲推定用の入力画面、および焼入れ深さに関する入力画面を画面表示装置44に表示させ、入力を行わせるようにしている。各入力画面は、画面中の「製品」,「測定範囲」,「焼き入れ深さ」と表示されたタブを選択することで、切換可能とされる。また、このワーク設定手段49による設定は、ワーク2の各転走面2c毎に設定可能とされている。
製品設定用の入力画面では、この他に推定式に関する入力を行わせるが、推定式については、後に関連する事項と共に説明する。
また、図13(B),(C)の各入力画面についても、後に関連する事項と共に説明する。
このヒストグラムは、超音波の表面からの深さ位置を横軸に取り、各深さ位置における散乱確率分布を縦軸に示したものである。
同図のヒストグラムは、ワーク2の転走面2cにおける1箇所の軸方向位置のものを例示しており、この散乱確率のヒストグラムの計算は、測定面となる転走面2cの軸方向に走査された各軸方向位置について作成される。
各分布フォーム表示部71〜73には、測定データを可視化した画像に、十字形の線(図では実線で示す)aで、測定箇所と超音波深さを示した画像である。この線aの交差部が、その測定箇所における超音波深さの位置を示す。また、上下に表示した2本の線bで、その間に挟まれた範囲が有効測定範囲であることを表している。
3か所の分布フォーム表示部71〜73は、図の左からワーク2の上端・中央・下端に対応している。図3の上側の転走面2cでは、イ部が上端、ロ部が中央、ハ部が下端であり、下側の転走面2cではヘ部が上端、ホ部が中央、ニ部が下端である。
3か所の分布フォーム表示部71〜73に表示された濃淡の可視化画像、および有効測定範囲を表す線bは、互いに同じであり、上記十字形の線aの位置がそれぞれ異なっている。
上記十字形の線aは、図5の超音波深さ表示手段58によって表示され、有効測定範囲を表す線bは、ワーク設定手段49の測定範囲設定部62により、その設定データに従って表示される。
この可視化パターンの塗りつぶされない部分と塗りつぶされた部分の境界位置を目視によって読取ることによって、表面からの深さを超音波深さとすることも可能であるが、この発明では超音波深さを自動計算する。この濃淡画像を表示するのは、熱処理異常品の判別などのために、分布フォーム表示部71〜73に上記のように濃淡画像を表示することが、信頼性向上のために好ましいからである。
なお、この分布フォーム画面70において、測定データの未入力の状態(すなわち初期状態)では、分布フォーム表示部71〜73は内部が空白とされ、数値表示部74〜76は、文字表示だけとされて数値の表示箇所が空白とされる。
有効測定範囲は、測定面となるワーク2の転走面2cのうち、ヒートパターン(図10)を計算する軸方向範囲のことである。転走面2cの両端では、超音波の乱れが生じるため、乱れを含まない範囲でヒートパターンを計算することが必要であるが、端部の焼入れ深さを求めるためには、できるだけ端の位置までの測定値を用いることが好ましい。転走面2cの端位置は、図13(B)の製品入力画面で設定するが、それだけでは適切とはならない場合がある。そのため、有効測定範囲の取得方式を複数準備し、その取得方式を選択させ、必要なパラメータを入力させるようにしている。
(A)散乱確率が設定レベルLを超える位置を超音波深さとする検出基準。
(B)散乱確率分布の傾きθが設定傾き角度(図示せず)を超える位置を超音波深さとする検出基準。
(C)散乱確率分布の傾きθが最大の位置(すなわち傾きのピーク位置)を超音波深さとする検出基準。
(D)散乱確率分布の累積度数が設定値を超える位置を超音波深さとする検出基準。
この手順S24では、超音波深さフィッティング算出手段57により、各測定箇所の超音波深さを、ヒートパターンからのフィッティングにより算出する。すなわち、目的の測定箇所の近傍における超音波深さの測定値を元に、最小二乗法による近似線を求め、この近似線から、その目的測定箇所における超音波深さ位置を求める。上記近似線を求めるために用いる目的の測定箇所の近傍の範囲、つまりフィッティングに使用するデータの長さF1,F2,F3(図11)については、図13(B)の測定範囲の入力画面における下部に示すように、各測定箇所(上端、中央、下端)毎に、入力する。
このデータ長さF1,F2,F3は、範囲が広いほどノイズの影響を受け難くなるが、分解能が低下する。このため、焼入れ深さの変化が大きい端部では小さめの値を、焼入れ深さの変化が小さい中央部では大きめの値を設定することが好ましい。
この手順S3では、各測定箇所の超音波深さから、推定式を用いて有効硬化層深さを推定し、測定結果を表示する処理を、有効硬化層深さ推定手段48により行う。このうち、推定の計算は推計計算手段59が、推定結果の表示は推定結果表示手段50がそれぞれ行う。
そこで、この超音波深さ位置から所定の推定処理により、焼入れ硬化層の硬度により定められるワーク表面からの焼入れ深さである有効硬化層深さを求める。
この推定処理は、例えば次の推定式、
(有効硬化層深さ)=(傾き)×(超音波深さ)×(切片)
によって計算処理とされる。
この推定式で用いる係数(傾き、切片)は、上端、中央、下端の3つの測定箇所毎にそれぞれ設定する。
これらの係数の入力は、図13(A)の製品入力画面において、「推定式」と表示された箇所に現れた入力ボックスに対して行う。
この場合に、前記所定の基準として、検出基準を2つ以上準備しておいて選択するようにしたため、測定対象となるワーク2の種類や、測定箇所、焼入れ条件等によって、どのような基準で超音波深さを定めると硬度による焼入れ深さとの相関が高いかを予備テスト等で求めておいて、最も硬度による測定と相関が高く、かつ安定している検出基準を選択することができる。そのため、焼入れ深さを精度良く求めることができる。
2…外輪
2a…フランジ
2c…転走面
10a…回転台
11…超音波プローブ
12…超音波探傷機(超音波測定手段)
41…焼入れ深さ測定値処理装置
43…焼入れ深さ測定プログラム
44…画面表示装置
46…測定データ読込手段
47…超音波深さ位置算出手段
48…有効硬化層深さ推定手段
49…ワーク設定手段
50…散乱確率分布計算手段
52…有効測定範囲算出手段
54…ヒートパターン計算手段
57…超音波深さフィッティング算出手段
Claims (5)
- 車輪用転がり軸受における軌道輪の周面に設けられた焼入れ硬化層の軌道輪表面からの深さを測定する方法であって、
軌道輪を上記周面の中心回りに回転させながら、上記周面である軌道輪表面に対向させた超音波プローブにより所定サンプリング回転角度毎に超音波を発信させ、この超音波の反射波を受信する過程と、
受信された反射波における上記所定サンプリング回転角度毎の散乱波のピーク信号を超音波検出手段により検出し、このピーク信号が現れる軌道輪表面からの深さ位置であるピーク位置を、検出したピーク信号の発信から受信までの伝播時間による測定する過程と、 軌道輪の1回転毎に所定ピッチで軌道輪の軸方向に走査することで、上記ピーク位置の測定を、軸方向の所定範囲につき行う過程と、
この所定範囲の測定により得られたデータから、各軸方向走査位置毎に、軌道輪1回転における各回転角度のピーク位置の分布である超音波の散乱確率分布を求め、この散乱確率分布から所定の基準でその走査位置の超音波測定による深さ位置である超音波深さ位置を定める過程と、
この超音波深さ位置から所定の推定処理により、焼入れ硬化層の硬度により定められる軌道輪表面からの焼入れ深さである有効硬化層深さを求める過程とを含み、
上記散乱確率分布から超音波深さを求める所定の基準を複数準備し、これらの準備された複数の基準のうちの一つを選択して前記超音波深さ位置を定め、
散乱確率分布から超音波深さを求める複数の所定の基準として、散乱確率が設定レベルを超える位置を超音波深さとする検出基準、散乱確率分布の傾きが設定傾き角度を超える位置を超音波深さとする検出基準、散乱確率分布の傾きが最大の位置を超音波深さとする検出基準、および散乱確率分布の累積度数が設定値を超える位置を超音波深さとする検出基準のうちのいずれか2つ以上の検出基準を含み、超音波深さ位置から有効硬化層深さを求める所定の推定処理は、有効硬化層深さを測定する転走面の軸方向の端部を含む目的測定位置の近傍における超音波深さの測定値を元に、最小二乗法による近似線を求め、この近似線から、その目的測定位置における超音波深さ位置を求め、この求めた超音波深さ位置から所定の推定式を用いてその目的測定位置の有効硬化層深さを求める処理である、
超音波による焼入深さ測定方法。 - 車輪用転がり軸受における軌道輪の周面に設けられた焼入れ硬化層の軌道輪表面からの深さを測定する方法であって、
軌道輪を上記周面の中心回りに回転させながら、上記周面である軌道輪表面に対向させた超音波プローブにより所定サンプリング回転角度毎に超音波を発信させ、この超音波の反射波を受信する過程と、
受信された反射波における上記所定サンプリング回転角度毎の散乱波のピーク信号を超音波検出手段により検出し、このピーク信号が現れる軌道輪表面からの深さ位置であるピーク位置を、検出したピーク信号の発信から受信までの伝播時間による測定する過程と、 軌道輪の1回転毎に所定ピッチで軌道輪の軸方向に走査することで、上記ピーク位置の測定を、軸方向の所定範囲につき行う過程と、
この所定範囲の測定により得られたデータから、各軸方向走査位置毎に、軌道輪1回転における各回転角度のピーク位置の分布である超音波の散乱確率分布を求め、この散乱確率分布から所定の基準でその走査位置の超音波測定による深さ位置である超音波深さ位置を定める過程と、
この超音波深さ位置から所定の推定処理により、焼入れ硬化層の硬度により定められる軌道輪表面からの焼入れ深さである有効硬化層深さを求める過程とを含み、
上記散乱確率分布から超音波深さを求める所定の基準を複数準備し、これらの準備された複数の基準のうちの一つを選択して前記超音波深さ位置を定め、
散乱確率分布から超音波深さを求める複数の所定の基準として、散乱確率が設定レベルを超える位置を超音波深さとする検出基準、散乱確率分布の傾きが設定傾き角度を超える位置を超音波深さとする検出基準、散乱確率分布の傾きが最大の位置を超音波深さとする検出基準、および散乱確率分布の累積度数が設定値を超える位置を超音波深さとする検出基準の4つの検出基準を含み、超音波深さ位置から有効硬化層深さを求める所定の推定処理は、有効硬化層深さを測定する転走面の軸方向の端部を含む目的測定位置の近傍における超音波深さの測定値を元に、最小二乗法による近似線を求め、この近似線から、その目的測定位置における超音波深さ位置を求め、この求めた超音波深さ位置から所定の推定式を用いてその目的測定位置の有効硬化層深さを求める処理である、
超音波による焼入深さ測定方法。 - 請求項1または請求項2において、前記軌道輪が円すいころ軸受形の車輪用転がり軸受における外輪であり、前記周面が、この外輪の転走面である超音波による焼入深さ測定方法。
- 車輪用転がり軸受における軌道輪の周面に設けられた焼入れ硬化層の軌道輪表面からの深さを測定する焼入れ深さ測定装置であって、
入力データとして、軌道輪周面全周の所定サンプリング回転角度毎における、超音波を対向発信させて受信された散乱波のピーク信号が現れる軌道輪表面からの深さ位置であるピーク位置のデータを、軌道輪の軸方向の所定範囲につき求めた測定データを読み込む測定データ読込手段と、
この読み込まれた測定データから、各軸方向走査位置毎に、軌道輪1回転における各回転角度のピーク位置の分布である超音波の散乱確率分布を求め、この散乱確率分布から所定の基準でその走査位置の超音波測定による深さ位置である超音波深さ位置を定める超音波深さ位置算出手段と、
この算出された超音波深さ位置から所定の推定処理により、焼入れ硬化層の硬度により定められる軌道輪表面からの深さである有効硬化層深さを求める有効硬化層深さ推定手段とを含み、
前記超音波深さ位置算出手段は、散乱確率分布から超音波深さを求める所定の基準として、散乱確率が設定レベルを超える位置を超音波深さとする検出基準、散乱確率分布の傾きが設定傾き角度を超える位置を超音波深さとする検出基準、散乱確率分布の傾きが最大の位置を超音波深さとする検出基準、および散乱確率分布の累積度数が設定値を超える位置を超音波深さとする検出基準のうちの少なくとも2つ以上の検出基準と、これらの検出基準を選択する手段を有し、
前記有効硬化層深さ推定手段は、有効硬化層深さを測定する転走面の軸方向の端部を含む目的測定位置の近傍における超音波深さの測定値を元に、最小二乗法による近似線を求め、この近似線から、その目的測定位置における超音波深さ位置を求め、この求めた超音波深さ位置から所定の推定式を用いてその目的測定位置の有効硬化層深さを求める手段を有する、
超音波による焼入深さ測定装置。 - コンピュータにより実行可能なプログラムであって、
入力データとして、車輪用転がり軸受における軌道輪の周面全周の所定サンプリング回転角度毎における、超音波を対向発信させて受信された散乱波のピーク信号が現れる軌道輪表面からの深さ位置であるピーク位置のデータを、軌道輪の軸方向の所定範囲につき求めた測定データを読み込む手順と、
この読み込まれた測定データから、各軸方向走査位置毎に、軌道輪1回転における各回転角度のピーク位置の分布である超音波の散乱確率分布を求め、この散乱確率分布から所定の基準でその走査位置の超音波測定による深さ位置である超音波深さ位置を定める手順と、
この超音波深さ位置から所定の推定処理により、焼入れ硬化層の軌道輪表面からの深さである有効硬化層深さを求める手順とを含み、
前記超音波深さ位置を定める手順は、散乱確率分布から超音波深さを求める所定の基準として、散乱確率が設定レベルを超える位置を超音波深さとする検出基準、散乱確率分布の傾きが設定傾き角度を超える位置を超音波深さとする検出基準、散乱確率分布の傾きが最大の位置を超音波深さとする検出基準、および散乱確率分布の累積度数が設定値を超える位置を超音波深さとする検出基準のうちの少なくとも2つ以上の検出基準と、これらの検出基準を選択する手順とを含み、
前記有効硬化層深さを求める手順は、有効硬化層深さを測定する転走面の軸方向の端部を含む目的測定位置の近傍における超音波深さの測定値を元に、最小二乗法による近似線を求め、この近似線から、その目的測定位置における超音波深さ位置を求め、この求めた超音波深さ位置から所定の推定式を用いてその目的測定位置の有効硬化層深さを求める手順を含む、
超音波による焼入深さ測定プログラム。
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