JP4938705B2 - 電子機器筐体 - Google Patents
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Description
この発明は、筐体に設けた通風用の開口の形状を長方形にすることにより、筐体内部に侵入する電界方向を特定の方向(EzとEy)に制御できるという新事実に基づき、長方形状の開口に対して特定の位置関係にある面に磁気的損失層を設けることにより良好な電磁波シールド性能を有する電磁波防護筐体を得るものであり、さらに加えて、筐体内に収納される電子機器を、前記特定の方向に制御された電界方向を考慮して配置することにより、所期の目的を達成するものである。
この発明の実施の形態1による電子機器筐体を説明するに際し、まず全ての実施の形態に共通して適用される電子機器の回路基板の詳細構造と電磁波によるノイズ耐性について述べ、次に実施の形態1の筐体構造に関して述べる。
図2は回路基板10の断面模式図である。図2において、回路基板10にIC11が実装されている。回路基板10は、電源層13と信号層14、15とグランド層16からなる。電源層13には、回路基板10内を平面状に広がった電源用のパターン(電源ベタパターン)が形成される。信号層14,15には細長い線路パターンが形成される。グランド層16には、回路基板10内を平面状に広がったグランド用のパターン(グランドベタパターン)が形成される。電源ベタパターン13はIC11の電源ピン17と、グランドベタパターン16はIC11のグランドピン18と接続されている。筐体に侵入した電磁波によって回路基板10にノイズ電圧が発生し、IC11などで構成された回路が誤動作を起こす。電源ベタパターン13やグランドベタパターン16に誘導されるノイズ電圧の方が、信号線14,15に誘導されるノイズ電圧より大きい。電源ベタパターン13やグランドベタパターン16に誘起されたノイズ電圧は、IC11の電源ピン17やグランドピン18からIC11内に侵入し、IC11の誤動作を引き起こす。このため、IC11の誤動作は、電源パターン13やグランドパターン16に誘起されるノイズ電圧によって決まる。また、電源ベタパターン13とグランドベタパターン16間に誘導されるノイズ電圧は、回路基板10に垂直な電界成分20によって決まる。
筐体50は6個の金属性板材1〜6によって直方体を形成している。前記直方体の前面に位置する第1の板材1には長方形状の開口9が設けられている。正面に位置する第1の板材1に対向して前記直方体の後面に位置する第2の板材2が設けられ、これら第1,第2の板材1,2の内側面には磁気的損失層7が設けられている。第1,第2の板材1,2を繋いで、長方形状開口9の長辺と平行な面をなす板材として、図3では上面、下面に位置する第3,第4の板材3,4が設けられている。さらに図3では左側面に位置する第5、右側面に位置する第6の板材5,6が設けられ、これら第3〜第6の板材3〜6で長手方向をなす直方体の筐体50を形成する。
図4は開口9を有する面に垂直な面に沿った筐体50の断面図である。
実施の形態1では開口9の大きさは、145×5mmとスリット形状に近い長方形であった。筐体50内の収納される電子機器100の発熱量が増大化した場合には、筐体50内部の発熱を外部より効果的に逃がすためには、所定の風量を得るために筐体50の最大辺の長さに応じて開口の大きさが決められる。一般的に筐体50の最大辺の長さが200mmから1000mmでは、開口の大きさは1辺が150mm以下となる。開口9から異物が侵入するのを防止するために、一辺が他辺より短い扁平な長方形が開口9として用いられ、正方形に近い開口が用いられることはない。通常用いられる開口9は長辺と短辺の比が2:1以上とした扁平な長方形である。
図8は、長方形の開口9を持つ筐体のシールド量と開口9の長辺と短辺の比(長辺/短辺)との関係について示したグラフである。長辺/短辺が大きくなり、開口9の扁平度が増すほど、シールド量は良くなる。従って、通風による開口9を前提条件とした場合、長辺/短辺=2にてシールド量が小さくなり、装置設計上厳しい条件となる。実施の形態1では、長辺/短辺が29のものについて計算したが、シールド量に関する条件が一番厳しくなる長辺/短辺=2の場合について、以下、詳細に説明する。
この実施の形態2の効果を検証するために、図10に示すモデルにて、筐体50のシールド量を解析した。筐体50の大きさは450×200×400mm、開口9を長方形としてその大きさを145×75mmとした。筐体50に設ける通風口の大きさは、大きいものでも長辺と短辺の比が2:1であるので、図10に示した開口9の寸法を代表例として計算した。実施の形態1と同様に筐体50内部の電界強度をEx、Ey、Ezの各方向成分に分けて計算し、筐体無しのときの電界強度を0dBとすることにより各方向成分のシールド量を算出した。
このように、通風口などの比較的大きな長方形の開口9を有する筐体50において、開口9がある板材1とその対向面の板材2面だけに磁気的損失層7を設けることにより、十分なシールド効果を得ることができるようになるので、磁気的損失層7の領域を削減することができ、筐体50内部の電子機器を実装する領域を広く取ることができるという効果を有する。また、使用する磁気的損失層7の量を削減できるため、筐体50の低コスト化を図ることができるという効果を有する。
図13は、前述した図11(c)のグラフを具体化した実施の形態3による筐体50の斜視図である。図13において、筐体50には、第1〜第4の板材1〜4、つまり筐体50の前後、上下面をなす合計4面に磁気的損失層7が設けられている。このような構成にすることにより、前述した実施の形態2の図11(c)に示したように良好なシールド特性を得ることができると共に、空洞共振によるシールド量の激しい変動を防止することができ、安定したシールド特性を得ることができる。
磁気的損失層7としては、Mn−ZnフェライトやNi−Znのフェライトやその他磁性材料の粉末を樹脂に含有させた磁性シートや磁性体薄膜などが用いることができる。透磁率の実部と虚部の比を示すtanδが照射される電磁波の周波数帯域にて1以上であれば、どのような材料でも良い。tanδが1以上の材料を用いた場合、磁気的損失層7の厚さは非常に薄くても、良好で安定したシールド効果を得ることができる。
また、磁気的損失層のほかに誘電体損失層を用いても同様の効果が得られる。誘電率の実部と虚部の比を示すtanδが照射される電磁波の周波数帯域にて1以上であれば、どのような材料でも良い。tanδが1以上の材料を用いた場合、磁気的損失層の厚さは非常に薄くても、良好で安定したシールド効果を得ることができる。
このように、開口9を有する筐体50において、tanδが1以上の磁気的損失層7や誘電体損失層7を設けることにより、0.1mm以下の非常に薄い材料を用いても、良好なシールド特性を安定して得ることができるという効果を有する。
図14(b)は、実施の形態5による筐体50の電磁波のシールド量の周波数特性の実測結果を示すグラフであり、誘電体損失層を用いて図5に示した筐体50のシールド特性を測定した。図14(a)、図14(c)は、図14(b)との比較を示すための例である。3GHzでの誘電率の実部が2.2、虚部が2.4、tanδが1.1の誘電体材料を用いて検討した。図14(a)は、筐体に誘電体損失層を設けないときの電界Eyのシールド量の実測結果である。シールド量は、2.4GHz付近にて最悪値+15.9dBとなる。実施の形態5である図14(b)は、開口9を有する面とその対向面である前後2面に誘電体損失層7を設けたときのシールド量の実測結果である。シールド量は、2.4GHz付近にて最悪値−6.3dBとなる。図14(c)は、筐体50内の6面全てに誘電体損失層7を設けたときのシールド量の実測結果である。シールド量は、2GHz付近にて最悪値−11.9dBとなる。
図15は、前記図14(a)〜図14(c)で示した筐体のシールド量の最悪値を比較整理したグラフである。前後2面に誘電体損失層7を設けることにより、磁気的損失層7を設けない場合に比べて、シールド量最悪値を20dB程度低減できることがわかる。さらに図14(c)のように誘電体損失層7を6面に増やしてもシールド量最悪値はあまり変わらないことがわかる。以上のことより、開口9がある面とその対向面に誘電体損失層7を設けることにより、シールド特性の良い筐体を得ることができることがわかる。
図16は、筐体50の最大辺の長さとシールド量の関係を示す特性図である。実施の形態1の図5に示した筐体50内の板材1,2の2面に磁気的損失層7を設けた場合について、筐体50の最大辺である450mmの寸法を変化させて検討した結果である。電磁波の周波数は2GHzである。曲線aは、磁気的損失層を設けない場合の結果であり、曲線bは、磁気的損失層7を設けた時の結果である。曲線cは、曲線aとbの差であり、磁気的損失層7を設けることによるシールド量の改善効果を示す。筐体50の最大辺の長さが0.3m以上にて、磁気的損失層7を設けることによるシールド量の改善効果が著しくなる。これは、2GHzの電磁波の波長0.15mに対して、筐体50の最大辺の長さが2倍以上になると多数の共振モードが発生するため、磁気的損失層を設けない時のシールド量が著しく劣化するためである。このように、筐体50最大辺の長さが、照射される電磁波の波長の2倍以上の筐体50では、磁気的損失層7によるシールド量改善効果が著しくなるという効果を有する。
実施の形態3で示した図13の筐体50内の4面に磁気的損失層7を設けた場合についても、筐体50最大辺の寸法が照射される電磁波の波長の2倍以上になると、磁気的損失層によるシールド量の改善効果が著しく大きくなる。
以上の実施の形態1〜実施の形態3、実施の形態5,6は、外部から照射される電磁波に対する筐体50のシールド特性について説明した。この実施の形態7を含む以降の実施の形態は、筐体50内に収納される電子機器100の配置を筐体50内部の電界方向が特定の方向に制御可能とする前記実施の形態1〜実施の形態3、実施の形態5,6と組み合わせることにより、さらに電子機器100の耐ノイズ特性が向上することを説明する。
図17は、実施の形態7による内部に電子機器100の回路基板10を設けた筐体50の斜視図である。図17において、筐体50は前述した実施の形態1の図5と同様の筐体であり、第1〜第4の板材1〜板材4でなす前後、上下の合計4面に磁気的損失層7が設けられている。また、磁気的損失層7を設けた4面全てに垂直に回路基板面10を設けている。
次に動作について説明する。図18は、この筐体50のシールド量の解析結果である。曲線aはx方向の電界Exのシールド量であり、曲線bはy方向の電界Eyのシールド量であり、曲線cはz方向の電界Ezのシールド量である。電界Exに対するシールド量は、EyやEzに対するシールド量より30dB程度良い。従って筐体50の内部の電界強度は、開口9の長手方向に垂直な電界成分Eyと、開口9と垂直な方向の電界成分Ezが、開口9の長手方向に平行な電界成分Exより大きいことがわかる。以上のことより、特定の向きに電子機器100つまり回路基板面10を配置することにより、回路基板10に誘起される電圧を小さくすることができ、電磁波による回路の誤動作を容易に防止することができるようになる。
このように、長方形の開口9を有する筐体50において、開口9を有する第1の板材1と、とその対向する第2の板材2および長方形状の開口9の長辺に平行な2つの板材3、4からなる4つの面に磁気的損失層7を設けると共に、磁気的損失層7を設けた4つの面と垂直に回路基板面10を設けることにより、外部から照射された電磁波によるIC11の誤動作に対して強い電子機器筐体を得ることができるという効果を有する。
実施の形態7では、筐体50内の4面に磁気的損失層7がある場合についての回路基板面10の配置について述べたが、この実施の形態8による筐体50内の2面に磁気的損失層7がある場合に適用しても同様の効果が得られる。この場合は、図19に示すように、開口9がある板材1、対向する板材面2に垂直に回路基板面10を配置することによって、回路基板11に誘起されるノイズ電圧を低減することができる。
実施の形態7では、筐体50内の4面に磁気的損失層7を設け回路基板10が1枚の場合について述べたが、回路基板10の枚数が少なくとも2枚以上の複数の場合に適用してもよい。また風量を増加させるために図20(a)に示すように、複数の開口9を設けてもよい。この場合、図20(b)に示すように、開口9が設けられている板材1とその対向面の板材2に板材1と同形状で同数または異数の開口9を設ける。なお、磁気的損失層7を設けた4つの面に垂直に回路基板面10を配置する。
このような構成にすることにより、多くの回路基板10を実装したときでも良好な冷却特性と外部電界に対する良好な耐性を得ることができるという効果を有する。
実施の形態8では、筐体50内の第1、第2の板材1、2の2面に磁気的損失層7を設け、回路基板10が1枚の場合について述べたが、回路基板10の枚数が少なくとも2枚以上の複数の場合に適用しても良い。また前記実施の形態9と同様に風量を増加させるために図21(a)(b)に示すように複数の開口9を設けてもよい。この場合、図21(a)(b)に示すように、磁気的損失層7を設けた2面に垂直に回路基板面10を設ける。
このような構成にすることにより、多くの回路基板10を実装したときでも良好な冷却特性と外部電界に対する良好な耐性を得ることができるという効果を有する。
7 磁気的損失層、9 開口、10 回路基板、50 筐体、100 電子機器。
Claims (9)
- 回路基板を具備した電子機器を収納し、金属性板材で形成された直方体の電子機器筐体において、前記直方体を形成する第1の板材には長方形状の開口が設けられているとともに、この第1の板材の前記開口以外の筐体内側面および、この第1の板材に対向する第2の板材の筐体内側面には、前記電子機器筐体外部からの電磁波をシールドするよう電磁波の磁気的損失層が設けられており、前記回路基板面が前記第1,第2の板材面に対して、垂直となるよう配置されていることを特徴とする電子機器筐体。
- 回路基板を具備した電子機器を収納し、金属性板材で形成された直方体の電子機器筐体において、前記直方体を形成する第1の板材には長方形状の開口が設けられているとともに、この第1の板材の前記開口以外の筐体内側面および、この第1の板材に対向する第2の板材の筐体内側面ならびに前記第1,第2の板材をつなぎ前記長方形状開口の長辺と平行に、互いに対向して設けられた第3,第4の板材の筐体内側面には、前記電子機器筐体外部からの電磁波をシールドするよう電磁波の磁気的損失層が設けられており、前記回路基板面が前記第1〜第4の板材面に対して、垂直となるように配置されていることを特徴とする電子機器筐体。
- 前記長方形状の開口の長辺と短辺の比が2:1以上であることを特徴とする請求項1,請求項2のいずれか1項に記載の電子機器筐体。
- 前記回路基板が少なくとも2枚以上配置されていることを特徴とする請求項1,請求項2のいずれか1項に記載の電子機器筐体。
- 前記第1の板材に設けられた開口と同形状の開口が、前記第2の板材に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の電子機器筐体。
- 前記第1の板材には複数の開口が設けられているとともに、前記第2の板材にも同数または異数の開口が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の電子機器筐体。
- 前記磁気的損失層は、透磁率の実部と虚部の比を示すtanδが、電磁波の周波数帯域にて1以上のものとすることを特徴とする請求項1,請求項2のいずれか1項に記載の電子機器筐体。
- 前記電磁波の磁気的損失層に代わり、誘電体損失層が設けられていることを特徴とする請求項1,請求項2のいずれか1項に記載の電子機器筐体。
- 前記誘電体損失層は、誘電率の実部と虚部の比を示すtanδが、電磁波の周波数帯域にて1以上のものとすることを特徴とする請求項8に記載の電子機器筐体。
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