JP4937542B2 - 皮革様シート状物およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、耐摩耗性に優れた皮革様シート状物およびその製造方法に関する。
極細繊維と高分子弾性体からなる皮革様シート状物は、天然皮革にない優れた特徴を有しており、種々の用途に広く使用されている。かかる皮革様シート状物を製造するにあたっては、繊維シート状物にポリウレタン等の高分子弾性体溶液を含浸せしめた後、その繊維シート状物を水または有機溶剤水溶液中に浸漬して高分子弾性体を湿式凝固せしめる方法が一般に採用されている。
しかし、強度や寸法安定性等を得るために多量のポリウレタンが使用されていることから、ポリウレタンの原料コストや製造プロセスの煩雑化等によって、皮革様シート状物は高価なものになっている。また、かかるポリウレタンを含浸するために、N,N’−ジメチルホルムアミド等の水混和性有機溶剤が一般に用いられているが、これらの有機溶剤は一般に作業環境の点から好ましくない。
さらに、高分子弾性体が多くなるとゴムライクな風合いになりやすく、天然皮革に似た充実感が得られにくくなることも指摘されている。加えて、高分子弾性体を含むことは、これらの風合い面での課題のみならず、近年の環境や資源の保護等の目的から重視されているリサイクル性に対しても好ましくない。例えばポリエステルの分解回収方法(例えば、特許文献1)やポリウレタンの分解方法(例えば、特許文献2)が検討されている。しかし、これらの方法はいずれも主として単一成分のものに適用され、上記のように繊維とポリウレタン等の高分子弾性体が不離一体化した複合素材においては、その分解方法が異なるため適用することが困難にある。そこで、それぞれの成分に分離する必要があるが、一般に非常にコストがかかり、また完全に分離することも困難である。
その他、ポリウレタン等はNOxガス等による黄変も指摘されており、白色のスエード調シート状物を得ることが困難である等、種々の課題がある。
これらの観点から、ポリウレタン等の高分子弾性体を低減させた、若しくは実質的に含まない皮革様シート状物が望まれている。
しかし、本発明者らは実質的に繊維素材からなる皮革様シート状物について種々検討した結果、繊維が脱落しやすい傾向があることから、特に耐摩耗性が問題になることが判った。但し、実質的に繊維素材からなる皮革様シート状物はこれまでほとんど検討された例はなく、従ってこの耐摩耗性を向上させる適当な手段はないのが現状である。
しかしながら、高分子弾性体と極細繊維からなる皮革様シート状物の耐摩耗性を向上させる手段としては、これまでにも種々のアプローチで検討されている。その特徴的な例としては、高分子弾性体と繊維の接着性を高める手段であるが(例えば特許文献3)、これは実質的に繊維素材からなる皮革様シート状物に適用することができない。その他の手段としては、例えば、極細繊維束と弾性重合体からなる基体にブリネル硬さが8以上で平均粒径が10μm以下の微粉末を表面に付与して、耐摩耗性を向上させる方法や(例えば特許文献4)、繊維絡合体と高分子弾性体からなるシート状物に無機物を主体とする微粒子と柔軟剤を付与する方法(例えば特許文献5)が開示されている。しかし、本発明者らの検討によると、高分子弾性体を含まない極細繊維束の基体に該微粒子を付与しても、目的の耐摩耗性を得ることができないことが判った。
WO01/30729号公報 特開2001−348457号公報 特開平6−330473号公報 特開平9−250063号公報 特開昭59−100772号公報
本発明は、ポリウレタン等の高分子弾性体を実質的に含まないでも、十分な耐摩耗性を有し、またリサイクル性、耐黄変性等に優れる皮革様シート状物およびその製造方法を提供するものである。
本発明は上記課題を解決するために、以下の構成を有するものである。
すなわち、本発明の皮革様シート状物は、単繊維繊度0.0001〜0.5デシテックスの極細繊維が極細化処理時もしくは極細化処理後、または極細化処理時および極細化処理後に施した高速流体流処理により相互に絡合した不織布で構成され、繊維素材からなり、かつ繊維の表面に存在する微粒子を含むことを特徴とするものである。
また、本発明の皮革様シート状物の製造方法は、本発明の皮革様シート状物を製造する方法であって、単繊維繊度0.0001〜0.5デシテックスの極細繊維が発生可能な単繊維繊度1〜10デシテックスの短繊維をニードルパンチにより絡合させた後に、極細繊維を発生させて極細短繊維不織布とし、次いで少なくとも10MPaの圧力で高速流体処理を行って再度絡合させ、その後に染色し、微粒子を付与することを特徴とするものである。
本発明によれば、ポリウレタン付与量を大きく低減でき、又は全く使用することなく高品位で耐摩耗性が良好な皮革様シート状物を提供できる。
さらに、本発明によれば、靴、鞄、家具、カーシート、衣料等に用いることができる充実感に優れた皮革様シート状物を得ることができる。
本発明の皮革様シート状物を構成する不織布は、単繊維繊度0.0001〜0.5デシテックスの極細繊維が相互に絡合してなるものである。単繊維繊度は、好ましくは0.001〜0.3デシテックス、より好ましくは0.005〜0.15デシテックスである。0.0001デシテックス未満であると、強度が低下するため好ましくない。0.5デシテックスを越えると風合いが堅くなり、また、絡合が不十分になって表面品位が低下したり、耐摩耗性が低下したりする等の問題も発生するため好ましくない。本発明の効果を損なわない範囲で、上記の範囲を越える繊度の繊維が含まれていてもよく、また極細繊維束が含まれていてもよい。
本発明では、これらの極細繊維が相互に絡合していることが耐摩耗性を向上させるために重要であり、さらに微粒子が含まれることによって顕著な耐摩耗性を得ることができる。いずれの要素が欠けても、期待する効果を得ることが困難になる。例えば、極細繊維が相互に絡合することにより、繊維が拘束され、繊維の脱落が抑制され形態安定性が向上するが、これによっても摩耗によって毛玉は発生する場合がある。しかし、微粒子が不織布に含まれることにより、繊維の切断等の効果によって毛玉の発生を大きく抑制することが可能となる。一方、極細繊維が相互に絡合していない不織布の場合、微粒子が含まれてもこの効果はほとんど観察できない。
本発明でいう微粒子の材質は水に不溶であれば特に限定されるものではなく、例えばシリカやコロイダルシリカ、酸化チタン、アルミニウム、マイカ等の無機物質や、メラミン樹脂等の有機物質を例示することができる。
これらの微粒子は少なくとも不織布を構成する繊維の表面に存在する必要があり、単に繊維内に含まれるのみでは目的の効果が得られない。
また本発明でいう微粒子の直径(D)は、平均粒子径をいい、その下限は好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上である。また上限は好ましくは30μm未満であり、より好ましくは10μm未満、さらに好ましくは1μm未満である。0.001μm未満であると、期待する効果が得られにくくなり、また30μm以上であると繊維からの脱落によって洗濯耐久性が低下する。なお平均粒子径は個々の材質やサイズに応じて適した測定方法、例えばBET法やレーザー法、動的散乱法、コールター法などによって測定することができる。得られる平均粒子径(個数(頻度)平均粒子径または体積(質量)平均粒子径)において、測定方法によって得られる平均粒子径が異なる場合、少なくとも1の測定方法によって得られる値が本発明の範囲に属した場合、本発明の範囲とする。本発明においては、特にBET法によって得られる体積(質量)平均粒子径を採用することが好ましい。
さらに、該微粒子の直径(D)と不織布を構成する極細繊維の平均直径(d)の関係式(1)において、kが0.001〜1.500であることが好ましく、0.001〜0.500であることがより好ましく、0.001〜0.100であることがさらに好ましく、0.002〜0.050であることが特に好ましい。
D(μm)=k×d(μm) (1)
ここで、kの値が0.001以上であれば耐摩耗性向上効果が顕著になる。また1.500を超えると耐摩耗性向上効果はあるものの、洗濯等により脱落しやすくなり、耐久性が低下するため好ましくない。
なお、ここでいう極細繊維の平均直径(d)は、試料から3箇所無作為にサンプリングし、各箇所の不織布部分の横断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した後、各箇所で無作為に抽出した単繊維繊度0.001〜0.5デシテックスの範囲にある50本の繊維直径(合計150本)を測定し、得られた150本の値の平均値を使用する。なお単繊維繊度0.0001〜0.5デシテックスの範囲外の繊維が抽出された場合は、その本数分を抽出しなおし、当該範囲内の繊維が50本となるまで続けるものとする。また、異形断面(非円形断面)の場合、その断面積から換算される円の面積を求めた後、その円の直径を平均直系とする。
これらの微粒子は、本発明の効果が発揮できる範囲で適宜使用量を調整することができるが、好ましくは0.01〜10%であり、より好ましくは0.02〜5%、さらに好ましくは0.05〜1%である。0.01%以上であれば、耐摩耗性の向上効果が顕著に発揮でき、量を増加させる程、その効果は大きくなる傾向がある。ただし、10%を越えると風合いが硬くなり、好ましくない。なお、微粒子の脱落を防ぎ、耐久性を向上させるためには、少量の樹脂を併用することが好ましい。
また、柔軟な風合いとなめらかな表面タッチを得るために、本発明の皮革様シート状物は柔軟剤を含むことが好ましい。柔軟剤としては特に限定されず、織編物に一般的に使用されているものを繊維種に応じて適宜選択する。例えば染色ノート第23版(発行所 株式会社色染社、2002年8月31日発行)においては、風合い加工剤、柔軟仕上げ剤の名称で記されているものを適宜選択することができ、その中でも柔軟性の効果が優れる点でシリコーン系エマルジョンが好ましく、アミノ変成やエポキシ変成されたシリコーン系エマルジョンがより好ましい。これらの柔軟剤が含まれると耐摩耗性は低下する傾向があるため、この柔軟剤の量と上記の微粒子の量は目標とする風合いと耐摩耗性のバランスを取りながら、適宜調整することが好ましい。従って、その量は特に限定されるものではないが、少なすぎると効果が発揮できず、多すぎるとべたつき感があるため、通常0.01〜10%の範囲となる。
目付は好ましくは100〜550g/mであり、より好ましくは120〜450g/m、さらに好ましくは140〜350g/mである。100g/m未満であると、物性が低下し、織物および/または編物を積層している場合は、表面に織物および/または編物の外観が見えやすくなり、品位が低下するため好ましくない。また550g/mを越える場合は、耐摩耗性が低下する傾向があるため好ましくない。また、繊維見掛け密度は、好ましくは0.230〜0.700g/cmであり、より好ましくは0.250〜0.650g/cm、さらに好ましくは0.300〜0.500g/cmである。0.230g/cm未満であると、特に耐摩耗性が低下するため好ましくない。また0.700g/cmを越えると風合いが堅くなり好ましくない。
本発明の皮革様シート状物のタテおよびヨコ方向のいずれの引き裂き強力も好ましくは3〜50Nの範囲であり、より好ましくは5〜30N、さらに好ましくは10〜25Nである。3N未満であると、破れやすくなる他、工程通過性も低下し、安定した生産が困難になる。また50Nを越えると、一般に柔軟化しすぎる傾向があり、風合いとのバランスが取りにくくなるため好ましくない。
さらに、タテおよびヨコ方向のいずれの引張強力も以下の式を満足することが好ましい。
引張強力(N/cm)≧0.45×目付(g/m)−40
引張強力がこの式を満足しない範囲であると、特に実質的に高分子弾性体を含まない皮革様シート状物においては、やぶれ等の問題が発生する可能性があるため好ましくない。また上限は特に限定されるものではないが、通常250N/cm以下となる。
また、タテおよびヨコ方向のいずれの引張強力も、以下の式(2)を満足することがより好ましい。
引張強力(N/cm)≧0.5×目付(g/m)−40 (2)
さらにまた、タテおよびヨコ方向のいずれの引張強力も、以下の式(3)を満足することがさらに好ましい。
引張強力(N/cm)≧0.6×目付(g/m)−40 (3)
本発明の皮革様シート状物は、JIS L 1096(1999)8.17.5 E法(マーチンデール法)家具用荷重(12kPa)に準じて測定される耐摩耗試験において、20000回の回数を摩耗した後の試験布の摩耗減量が20mg以下、好ましくは15mg以下、より好ましくは10mg以下であり、かつ毛玉が5個以下存在することが好ましく、3個以下であることがより好ましく、1個以下であることがさらに好ましい。摩耗減量が20mgを越える場合、実使用において毛羽が服等に付着する傾向があるため好ましくない。一方、下限は特に限定されず、本発明の皮革様シートであればほとんど摩耗減量がないものも得ることができる。また発生する毛玉については、5個を越えると、使用した時の外観変化によって品位が低下するため好ましくない。
本発明の皮革様シート状物は、天然皮革のような優れた表面外観を有してなるものであり、好ましくは一方の面に立毛を有し、スエード、ヌバック調の滑らかなタッチと優れたライティングエフェクトを有するものである。立毛を有した皮革様シート状物は、特にその耐摩耗性が低下しやすい傾向を示すことから、本発明の効果が顕著であるため、好ましい態様である。
一般に合成皮革や人工皮革と称される皮革様シート状物はポリウレタン等の高分子弾性体と繊維材料から構成される。本発明の皮革様シート状物においても本発明の効果を逸脱しない範囲で、ウレタン等の高分子弾性体が含まれたものとすることも可能である。かかる高分子弾性体としては、適宜目的とする風合い、物性、品位が得られるものを種々選択して使用することができ、例えばポリウレタン、アクリル、スチレン−ブタジエン等が挙げられる。この中で柔軟性、強度、品位等の点でポリウレタンであることが好ましい。しかしながら、本発明の皮革様シート状物の特徴がより明確であり、微粒子による耐摩耗性向上効果が顕著になり、従来と比較してより優れる点で、実質的に高分子弾性体を含まず、主として繊維素材からなることが好ましい。さらに、繊維素材についても実質的に非弾性ポリマーの繊維からなることが好ましく、例えば、ポリエーテルエステル系繊維やいわゆるスパンデックス等のポリウレタン系繊維などのゴム状弾性に優れる繊維を除くポリマーであることが好ましい。具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなる繊維が挙げられる。実質的に非弾性ポリマーの繊維素材からなることにより、ゴム感がなく充実感のある風合いを達成することができる。また、さらには、易リサイクル性、高発色性、高耐光性、耐黄変性等種々の効果が達成できる。特にケミカルリサイクルを行うためには、繊維素材が単一成分であることが好ましく、例えばポリエステルやポリアミドからなるものが好ましい。
ポリエステルとしては、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーであって、繊維化が可能なものであれば特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。中でも最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレートまたは主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体が好適に使用される。
また、ポリアミドとしては、たとえばナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、等のアミド結合を有するポリマーを挙げることができる。
これらのポリマーには、隠蔽性を向上させるためにポリマー中に酸化チタン粒子等の無機粒子を添加してもよいし、その他、潤滑剤、顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱材、抗菌剤等、種々目的に応じて添加することもできる。
また、例えば染料、柔軟剤、風合い調整剤、ピリング防止剤、抗菌剤、消臭剤、撥水剤、耐光剤、耐侯剤等の機能性薬剤も、本発明の効果を損なわない範囲で含まれていてもよい。
本発明の皮革様シート状物は、少なくとも不織布で構成されている必要があり、これにより天然皮革のような風合いや表面感を得ることが可能となる。なお、不織布を含むものであれば、織編物を積層してもよいが、織編物のみからなるものであると、良好な風合いや表面感を得ることが困難になる。
また品位や風合いが優れる点で、不織布が主として短繊維で構成されていることが好ましく、またその繊維長は主として0.1〜10cmであることが好ましく、1〜7cmであることがより好ましく、2〜6cmであることがさらに好ましい。10cmを超える繊維が主体として含まれると、表面品位が低下するため好ましくない。下限は特に限定されず、不織布の製造方法によって適宜設定できるが、0.1cm未満であると脱落が多くなり、また強度や摩耗等の特性が低下する傾向があるため、好ましくない。主として1cm以上であると飛躍的に耐摩耗性は向上する。なお、本発明の効果が損なわれない範囲で、この範囲外の繊維長の繊維が含まれていてもよい。
また、強度等の物性、品位等を考慮した場合、繊維長が均一でない方が好ましい。すなわち0.1〜10cmの繊維長の範囲内において、短い繊維と長い繊維が混在することが好ましい。例えば0.1〜1cm、好ましくは0.1〜0.5cmの短い繊維と、1〜10cm、好ましくは2〜7cmの長い繊維が混在する不織布を例示することができる。ここで例えば短い繊維は表面品位の向上や緻密化等のために、また長い繊維は高い物性を得るため等の役割がある。
次に本発明の皮革様シート状物の好ましい製造方法を述べる。
単繊維繊度が0.0001〜0.5デシテックスの範囲にある、いわゆる極細繊維の製造方法は特に限定されず、例えば直接極細繊維を紡糸する方法、通常繊度の繊維であって極細繊維を発生する事ができる繊維(極細繊維発生型繊維)を紡糸し、次いで極細繊維を発生させる方法がある。そして極細繊維発生型繊維を用いて製造する方法としては、例えば海島型繊維を紡糸してから海成分を除去する方法、分割型繊維を紡糸してから分割して極細化する方法等の手段を例示することができる。これらの中で、本発明においては極細繊維を容易に安定して得ることができ、さらに後述する本発明の好ましい製造方法によって、本発明の皮革様シート状物の構造を容易に達成できる点で、海島型繊維または分割型繊維によって製造することが好ましく、さらには皮革様シート状物とした場合、同種の染料で染色できる同種ポリマーからなる極細繊維を容易に得ることができる点で、海島型繊維によって製造することがより好ましい。
本発明でいう海島型繊維とは、2成分以上の成分を任意の段階で複合、混合して海島状態とした繊維をいい、この繊維を得る方法としては、特に限定されず、例えば(1)2成分以上のポリマーをチップ状態でブレンドして紡糸する方法、(2)予め2成分以上のポリマーを混練してチップ化した後、紡糸する方法、(3)溶融状態の2成分以上のポリマーを紡糸機のパック内で静止混練器等を用い混合する方法、(4)特公昭44−18369号公報、特開昭54−116417号公報等の口金を用いて製造する方法、等が挙げられる。本発明においてはいずれの方法でも良好に製造することができるが、ポリマーの選択が容易である点で上記(4)の方法が好ましく採用される。
かかる(4)の方法において、海島型繊維および海成分を除去して得られる島繊維の断面形状は特に限定されず、例えば丸、多角、Y、H、X、W、C、π型等が挙げられる。また用いるポリマー種の数も特に限定されるものではないが、紡糸安定性や染色性を考慮すると2〜3成分であることが好ましく、特に海1成分、島1成分の2成分で構成されることが好ましい。またこのときの成分比は、島繊維の海島型繊維に対する重量比で0.3〜0.99であることが好ましく、0.4〜0.97がより好ましく、0.5〜0.8がさらに好ましい。0.3未満であると、海成分の除去率が多くなるためコスト的に好ましくない。また0.99を越えると、島成分同士の合流が生じやすくなり、紡糸安定性の点で好ましくない。
海島型繊維で極細繊維を得る場合、その島成分が目的とする極細繊維になる。用いるポリマーは特に限定されず、繊維化が可能なものを適宜選択して使用することができるが、本発明で好ましく用いられるのは上述したポリエステルやポリアミドである。また、海成分として用いるポリマーは、島成分と相溶しないものであれば特に限定されるものではないが、海成分のポリマーよりも使用する溶剤や薬剤に対し溶解性、分解性の高い化学的性質を有するものであることが好ましい。島成分を構成するポリマーの選択にもよるが、例えばポリエチレンやポリスチレン等のポリオレフィン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ポリエチレングリコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ビスフェノールA化合物、イソフタル酸、アジピン酸、ドデカジオン酸、シクロヘキシルカルボン酸等を共重合したポリエステル等を用いることができる。紡糸安定性の点ではポリスチレンが好ましいが、有機溶剤を使用せずに容易に除去できる点でスルホン基を有する共重合ポリエステルが好ましい。かかる共重合比率としては、処理速度、安定性の点から5モル%以上、重合や紡糸、延伸のしやすさから20モル%以下であることが好ましい。本発明において好ましい組み合わせとしては、島成分にポリエステルまたはポリアミド、あるいはその両者を用い、海成分にポリスチレンまたはスルホン基を有する共重合ポリエステルである。これらのポリマーには、隠蔽性を向上させるためにポリマー中に酸化チタン粒子等の無機粒子を添加してもよいし、その他、潤滑剤、顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱材、抗菌剤等、種々目的に応じて添加することもできる。
このようにして紡出したポリマーは、延伸、結晶化することができ、例えば未延伸糸を引き取った後、湿熱または乾熱、あるいはその両者によって1〜3段延伸することができる。なお、分割型繊維を用いる場合は、主に口金内で2成分以上を複合し、上述の海島型繊維の製造方法に準じて行うことができる。
次いで、得られた短繊維を不織布化するが、その方法としては、ウェブをカードやクロスラッパー、ランダムウエバーを用いて得る乾式法や、抄紙法等による湿式法を採用することができる。極細繊維を抄紙法によって不織布化することによって、容易に極細繊維同士が絡合した不織布を製造することができる。しかし、本発明では、高い耐摩耗性と高品位な表面品位が得られ、かつ本発明の皮革様シート状物の構造を容易に達成できる点で、ニードルパンチ法と高速流体流処理を組み合わせた乾式法による製造が好ましい。絡合処理の際に、適度な伸び又は伸び止まりを付与するため、または得られる不織布の強度等の物性を向上させるために他の織物、編物、不織布と一体化させることもできる。この不織布化する際の繊維の使用量や積層する織編物等の目付によって、皮革様シート状物の目付を適宜調整することができる。
次に本発明で好ましく採用する乾式法にて製造する方法を説明するが、これに限定されるものではない。まず、カード、クロスラッパー等を用いて得られるウェブを、ニードルパンチ処理によって、繊維見掛け密度が好ましくは0.120〜0.300g/cm、より好ましくは0.150〜0.250g/cmとする。0.120g/cm未満であると、絡合が不十分であり、引張強力や引裂強力、耐摩耗性等の目的の物性が得られにくくなる。また上限は特に規定されないが、0.300g/cmを越えると、ニードル針の折れや、針穴が残留するなどの問題が生じるため、好ましくない。
また、ニードルパンチを行う際には、極細繊維発生型繊維の単繊維繊度が1〜10デシテックスであることが好ましく、2〜8デシテックスがより好ましく、2〜6デシテックスがさらに好ましい。単繊維繊度が1デシテックス未満である場合や10デシテックスを越える場合は、ニードルパンチによる絡合が不十分となり、良好な物性の極細短繊維不織布を得ることが困難になる。
本発明におけるニードルパンチは、単なる工程通過性を得るための仮止めとしての役割ではなく、繊維を十分に絡合させることが好ましい。従って好ましくは、100本/cm以上の打ち込み密度がよく、より好ましくは500本/cm以上、さらに好ましくは1000本/cm以上がよい。
このようにして得られた不織布は、乾熱または湿熱、あるいはその両者によって収縮させ、さらに高密度化することが好ましい。
次いで、極細化処理をした後または極細化処理と同時に、あるいは極細化処理と同時かつその後に、高速流体流処理を行って、極細繊維同士の絡合を行うことが好ましい。高速流体流処理を極細化処理と兼ねる事は可能であるが、少なくとも極細化処理が大部分終了した後にも高速流体流処理を行うことが、より極細繊維同士の絡合を進める上で好ましく、さらに、極細化処理を行った後に高速流体流処理を行うことが好ましい。
極細化処理の方法としては、特に限定されるものではないが、例えば機械的方法、化学的方法が挙げられる。機械的方法とは、物理的な刺激を付与することによって極細化する方法であり、例えば上記のニードルパンチ法やウォータージェットパンチ法等の衝撃を与える方法の他に、ローラー間で加圧する方法、超音波処理を行う方法等が挙げられる。また化学的方法とは、例えば、海島型繊維を構成する少なくとも1成分に対し、薬剤によって膨潤、分解、溶解等の変化を与える方法が挙げられる。特にアルカリ易分解性海成分を用いて成る極細繊維発生型繊維で短繊維不織布を作製し、次いで中性〜アルカリ性の水溶液で処理して極細化する方法は、溶剤を使用せず作業環境上好ましいことから、本発明の好ましい態様の一つである。ここでいう中性〜アルカリ性の水溶液とは、pH6〜14を示す水溶液であり、使用する薬剤等は特に限定されるものではない。例えば有機または無機塩類を含む水溶液で上記範囲のpHを示すものであればよく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、必要によりトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等のアミンや減量促進剤、キャリアー等を併用することもできる。中でも水酸化ナトリウムが価格や取り扱いの容易さ等の点で好ましい。さらにシートに上述の中性〜アルカリ性の水溶液処理を施した後、必要に応じて中和、洗浄して残留する薬剤や分解物等を除去してから乾燥を施すことが好ましい。
これらの極細化処理と高速流体流処理を同時に行う方法としては、例えば水可溶性の海成分からなる海島型繊維を用い、ウォータージェットパンチによって除去と絡合を行う方法、アルカリ分解速度の異なる2成分以上の海島型繊維を用い、アルカリ処理液を通して易溶解成分を分解処理した後に、ウォータージェットパンチによって最終除去および絡合処理を行う方法、等が挙げられる。
高速流体流処理としては、作業環境の点で水流を使用するウォータージェットパンチ処理を行うことが好ましい。この時、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。柱状流は、通常、直径0.06〜1.0mmのノズルから圧力1〜60MPaで噴出させることで得られる。かかる処理は、効率的な絡合性と良好な表面品位を得るために、ノズルの直径は0.06〜0.15mm、間隔は5mm以下であることが好ましく、直径0.06〜0.12mm、間隔は1mm以下がより好ましい。これらのノズルスペックは、複数回処理する場合、すべて同じ条件にする必要はなく、例えば大孔径と小孔径のノズルを併用することも可能であるが、少なくとも1回は上記構成のノズルを使用することが好ましい。特に直径が0.15mmを超えると極細繊維同士の絡合性が低下し、表面がモモケやすくなるとともに、表面平滑性も低下するため好ましくない。従ってノズル孔径は小さい方が好ましいが、0.06mm未満となるとノズル詰まりが発生しやすくなるため、水を高度に濾過する必要性からコストが高くなる問題があり好ましくない。また、厚さ方向に均一な交絡を達成する目的、および/または不織布表面の平滑性を向上させる目的で、好ましくは多数回繰り返して処理する。その水流圧力は処理する不織布の目付によって適宜選択し、高目付のもの程高圧力とすることが好ましい。さらに、極細繊維同士を高度に絡合させ、目的の引張強力や引裂強力、耐摩耗性等の物性を得るため、少なくとも1回は10MPa以上の圧力で処理することが好ましく、15MPa以上がより好ましい。また上限は特に限定されないが、圧力が上昇する程コストが高くなり、また低目付不織布の場合は不織布が不均一になりやすく、繊維の切断により毛羽が発生する場合もあるため、好ましくは40MPa以下であり、より好ましくは30MPa以下である。こうすることによって、例えば極細繊維を極細繊維発生型繊維から得る場合、複合繊維から発生した極細繊維が集束した極細繊維束が絡合しているものが一般的であるが、この極細繊維束による絡合がほとんど観察されない程度にまで極細繊維同士が絡合した極細短繊維不織布を得ることができ、またこれにより耐摩耗性等の表面特性を向上させることもできる。なお、ウォータージェットパンチ処理を行う前に、水浸漬処理を行ってもよい。さらに表面の品位を向上させるために、ノズルヘッドと不織布を相対的に移動させる方法や、交絡後に不織布とノズルの間に金網等を挿入して散水処理する等の方法を行うこともできる。また、高速流体流処理を行う前には、厚み方向に対して垂直に2枚以上にスプリット処理を行うことが好ましい。
本発明は、ニードルパンチにより絡合のしやすい繊維と高速流体流処理により絡合のしやすい繊維の相違に着目し、特に上記のようなプロセスにより製造することで、容易に本発明の皮革用シート状物が得られることを見出したものである。すなわち、1〜10デシテックスの繊維が太い状態ではニードルパンチによる絡合が優れ、0.0001〜0.5デシテックスの極細領域では高速流体流処理による絡合が優れる傾向があることを利用したものである。従って例えば、1〜10デシテックスの状態で高速流体流処理を行う方法や、0.0001〜0.5デシテックスの状態でニードルパンチを行う方法は、使用するニードル針や高速流体流の圧力、不織布の繊維長や目付等にもよるが、一般に本発明の皮革用シート状物を得ることが困難になる。
なお、織編物や他の不織布と積層する場合は、これらニードルパンチや高速流体流処理等の手段を用いた絡合による方法や、接着による方法の他、種々の方法を適宜単独または組み合わせて採用することができる。これらの内、柔軟性に優れる点で絡合による方法が好ましく、種々の物を損傷させずに絡合できる点で高速流体流処理を用いることがより好ましい。これらの積層によって、単独では発現しにくいストレッチ性やドレープ性等の機能の付加や、引張強力や引裂強力等の物性の向上が期待できる。
スエード調やヌバック調の立毛を有した皮革様シート状物を得る場合は、サンドペーパーやブラシ等による起毛処理を行うことが好ましい。かかる起毛処理は後述する染色の前または後、あるいは染色前および染色後に行うことができるが、染色後に行うとサンドペーパーやブラシに着色が生じるため、染色前に行うことが好ましい。また、後述する微粒子の付与後に行うこともできるが、立毛が出にくい傾向を示すことから、微粒子付与後に行うことが好ましい。
この極細短繊維不織布は、染色することが好ましい。その方法は特に限定されるものではなく、用いる染色機としても、液流染色機の他、サーモゾル染色機、高圧ジッガー染色機等いずれでもよいが、得られる皮革様シート状物の風合いが優れる点で液流染色機を用いて染色することが好ましい。
また、主として繊維素材からなる皮革様シート状物において、表面の平滑性を向上させる、および/または半銀面調の表面を得る目的で、染色した後、0.1〜0.8倍に圧縮することもできる。
本発明においては、耐摩耗性を向上させる目的で微粒子を付与する必要がある。微粒子を付与することによって、ドライ感やきしみ感等の風合いを与える効果を得ることもできる。この微粒子を付与する手段としては特に限定されるものではなく、パッド法の他、液流染色機やジッガー染色機を用いる方法、スプレーで噴射する方法等、適宜選択することができる。また柔軟剤を付与する場合も同様であり、コストの点からは微粒子と同時に付与することが好ましい。
なお、微粒子や柔軟剤は、好ましくは染色後に付与する。染色前に付与すると、染色時の脱落により効果が減少する場合や、染色ムラが発生する場合があるため好ましくない。また、微粒子を含む不織布は起毛されにくい傾向があるため、起毛した後に微粒子を付与することが好ましい。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
(1)目付、繊維見掛け密度
目付はJIS L 1096 8.4.2(1999)の方法で測定した。また、厚みをダイヤルシックネスゲージ((株)尾崎製作所製、商品名“ピーコックH”)により測定し、目付の値から計算によって繊維見掛け密度を求めた。
(2)引張強力
JIS L 1096 8.12.1(1999)により、幅5cm、長さ20cmのサンプルを採取し、つかみ間隔10cmで定速伸長型引張試験器にて、引張速度10cm/分にて伸長させた。得られた値を幅1cm当たりに換算して引張強力とした。
(3)引き裂き強力
JIS L 1096 8.15.1(1999)D法(ペンジュラム法)に基づいて測定した。
(4)マーチンデール摩耗試験
JIS L 1096(1999)8.17.5 E法(マーチンデール法)家具用荷重(12kPa)に準じて測定される耐摩耗試験において、20000回の回数を摩耗した後の試験布の重量減を評価すると共に外観から毛玉の数を数えた。
(5)洗濯耐久性
JIS L 1096(1999)8.23.1 A法(ライン乾燥)に準じて洗濯を5回行った後、(4)に規定する摩耗試験を行った。
(6)断面観察
ウォータージェットパンチ後の不織布シートを厚み方向に裁断し、厚み方向に対して中央部分の断面をSEMで観察した。
(7)繊維直径
不織布を3箇所サンプリングし、その横断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、各箇所それぞれ、無作為に単繊維繊度0.001〜0.5デシテックスの範囲にある50本の繊維(合計150本)を抽出して測定した。150本の測定で得られた値の平均値を直径とした。
実施例1
海成分としてポリスチレン45部、島成分としてポリエチレンテレフタレート55部からなる単繊維繊度3デシテックス、36島、繊維長51mmの海島型複合短繊維を用い、カード、クロスラッパーを通してウェブを作製した。次いで1バーブ型のニードルパンチにて1500本/cmの打ち込み密度で処理し、繊維見掛け密度0.21g/cmの複合短繊維不織布を得た。次に約95℃に加温した重合度500、ケン化度88%のポリビニルアルコール(PVA)12%の水溶液に固形分換算で不織布重量に対し25%の付着量になるように浸積し、PVAの含浸と同時に2分間収縮処理を行い、100℃にて乾燥して水分を除去した。得られたシートを約30℃のトリクレンでポリスチレンを完全に除去するまで処理し、単繊維繊度約0.046デシテックスの極細繊維(直径2.8μm)を得た。次いで、室田製作所(株)製の標準型漉割機を用いて、厚み方向に対して垂直に2枚にスプリット処理した後、0.1mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドからなるウォータージェットパンチにて、1m/分の処理速度で表裏ともに10MPaと20MPaで処理し、PVAの除去とともに絡合を行った。この断面をSEMにて観察した結果、極細繊維が相互に絡合した構造を有していた。この写真を図1に示した。
次いでサンドペーパーにて起毛処理をし、液流染色機にて“Sumikaron Blue S−BBL200”(住化ケムテックス(株)製)を用い20%owfの濃度で、120℃、45分で染色した。得られた不織布を、柔軟剤(アミノ変性シリコーンエマルジョン“シリコーランAN−2200”一方社株式会社製)と微粒子(コロイダルシリカ“スノーテックス20L”日産化学工業株式会社製、平均粒子径0.04μm:BET法、k=0.014)を含む水溶液に浸積し、コロイダルシリカが0.1%となるように絞った後、ブラッシングしながら100℃で乾燥させた。得られた皮革様シート状物は、極細繊維が相互に絡合した緻密な構造であり、非常に充実感のある風合いであった。また物性も表1に示すように優れていた。
実施例2
微粒子として“スノーテックスS”(日産化学工業株式会社製、平均粒子径0.008μm:BET法、k=0.003)を用いた以外は実施例1と同様に処理した。得られた皮革様シート状物は、実施例1と同様に極細繊維が相互に絡合した緻密な構造であり、非常に充実感のある風合であった。また物性も表1に示すように優れていた。
実施例3
微粒子として“サイリシア420”(富士シリシア化学株式会社製、平均粒子径3.1μm:レーザー法、k=1.107)を用いた以外は実施例1と同様に処理した。得られた皮革様シート状物は、実施例1と同様に極細繊維が相互に絡合した緻密な構造であり、充実感に優れ、実施例1や2と比較してややきしみ感がなく柔軟な風合いであった。また物性も表1に示すように優れていた。
実施例4
微粒子として“サイリシア470”(富士シリシア化学株式会社製、平均粒子径14.1μm:レーザー法、k=5.036)を用いた以外は実施例1と同様に処理した。得られた皮革様シート状物は、実施例1と同様に極細繊維が相互に絡合した緻密な構造であり、充実感に優れ、実施例3と比較してさらにきしみ感がなく柔軟な風合いであった。また物性も表1に示すように優れていた。但し、洗濯により耐摩耗性が低下する傾向があった。
比較例1
海成分としてポリスチレン45部、島成分としてポリエチレンテレフタレート55部からなる単繊維繊度3デシテックス、36島、繊維長51mmの海島型複合繊維を用い、カード、クロスラッパーを通してウェブを作製した。次いで1バーブ型のニードルパンチにて1500本/cmの打ち込み密度で処理し、繊維見掛け密度0.21g/cmの複合短繊維不織布を得た。次いで極細化することなく0.1mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドからなるウォータージェットパンチにて、1m/分の処理速度で両面ともに10MPa、20MPaで処理し、絡合を行った。次に約95℃に加温したPVAの12%水溶液に固形分換算で不織布重量に対し25%の付着量になるように浸積し、PVAの含浸と同時に2分収縮処理を行い、100℃にて乾燥して水分を除去した。得られたシートを約30℃のトリクレンでポリスチレンを完全に除去するまで処理し、次いでPVAを除去して、単繊維繊度約0.046デシテックスの極細繊維を得た。この断面をSEMにて観察した結果、極細繊維束が多く存在し、極細繊維束が絡合した構造を有していた。この写真を図2に示した。
次いでサンドペーパーにて起毛処理をした。実施例1と同様に液流染色機にて染色した結果、破れが生じ、不織布形状をとどめることができなかったので、染色を行わずに柔軟剤(アミノ変性シリコーンエマルジョン“シリコーランAN−2200”一方社株式会社製)と微粒子(コロイダルシリカ“スノーテックス20L”日産化学工業株式会社製、平均粒子径0.04μm:BET法、k=0.014)を含む水溶液に浸積し、コロイダルシリカが0.1%となるように絞った後、ブラッシングしながら100℃で乾燥させた。このようにして得られたシート状物は極細繊維束が絡合した構造であり、また染色加工を行っていないため、皮革様シートと呼べるような外観を呈さず、ペーパーライクな不織布状態であった。さらに、染色加工で破れたように、もみ操作によって容易に変形するほど形態保持性に劣るものであった。また洗濯すると表面の絡合がほどけて形態が崩れ、耐摩耗性を評価することができなかった。この物性を評価した結果を表1に示した。
比較例2
比較例1において、実施例3と同様の微粒子を用いて作製した。このようにして得られたシートは極細繊維束が絡合した構造であり、皮革様シートと呼べるような外観を呈さず、ペーパーライクな不織布状態であった。さらに、染色加工で破れたように、もみ操作によって容易に変形するほど形態保持性に劣るものであった。また比較例1と同様に洗濯後の評価を行うことができなかった。この物性を評価した結果を表1に示した。
実施例1で得られた皮革様シート状物の断面写真である。 比較例1で得られたシートの断面写真である。
本発明により、実質的に高分子弾性体を含まず、主として繊維素材からなる不織布構造体であっても、耐摩耗性に優れ、皮革様シート状物として十分な物性と品位を得ることが可能となる。本発明の皮革様シート状物は、リサイクル性やイージーケア性、耐黄変性等に優れる特徴を有することから、衣料、家具、カーシート、雑貨、研磨布、ワイパー、フィルター等の用途は勿論のこと、その中でもリサイクル性や特徴ある風合いを活かして特にカーシートや衣料に好ましく使用することができる。

Claims (8)

  1. 単繊維繊度0.0001〜0.5デシテックスの極細繊維が極細化処理時もしくは極細化処理後、または極細化処理時および極細化処理後に施した高速流体流処理により相互に絡合した不織布で構成され、繊維素材からなり、かつ繊維の表面に存在する微粒子を含むことを特徴とする皮革様シート状物。
  2. 目付が100〜550g/m、繊維見掛け密度が0.230〜0.700g/cm、引き裂き強力が3〜50Nであり、かつ下式(2)を満足することを特徴とする請求項1に記載の皮革様シート状物。
    引張強力(N/cm)≧0.45×目付(g/m)−40 (2)
  3. マーチンデール法における摩耗試験において、20000回摩耗した時の摩耗減量が20mg以下であり、かつ毛玉の数が5個以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の皮革様シート状物。
  4. 少なくとも一方の面が立毛を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の皮革様シート状物。
  5. 柔軟剤が含まれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の皮革様シート状物。
  6. 該極細繊維が繊維長0.1〜10cmの短繊維であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の皮革様シート状物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の皮革様シート状物を製造する方法であって、単繊維繊度0.0001〜0.5デシテックスの極細繊維が発生可能な単繊維繊度1〜10デシテックスの短繊維をニードルパンチにより絡合させた後に、極細繊維を発生させて極細短繊維不織布とし、次いで少なくとも10MPaの圧力で高速流体処理を行って再度絡合させ、その後に染色し、微粒子を付与することを特徴とする皮革様シート状物の製造方法。
  8. 微粒子を付与する前に起毛処理を行うことを特徴とする請求項7に記載の皮革様シート状物の製造方法。
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