本発明の皮革様シート状物は、少なくとも生分解性を有する脂肪族ポリエステルの極細繊維を含む不織布から構成されているものであり、これにより生分解性と天然皮革のような風合いや表面感を有する皮革様シートを得ることが可能となる。
ここでいう生分解性とは、例えばウールや毛髪、セルロース繊維などの天然繊維のように、自然環境下で微生物などにより分解が可能であることをいう。ポリ乳酸繊維なども加水分解後に微生物などによって分解されるため、生分解性を有するものである。
本発明で用いる極細繊維不織布(A)は、少なくとも生分解性を有する脂肪族ポリエステル繊維を含み、かつ単繊維繊度が0.0001〜0.5デシテックスである繊維からなるものである。
単繊維繊度は、好ましくは0.001〜0.3デシテックス、より好ましくは0.005〜0.15デシテックスである。0.0001デシテックス未満であると、強度が低下するため好ましくない。また0.5デシテックスを越えると風合いが堅くなり、また、絡合が不十分になって表面品位が低下したり、耐摩耗性が低下したりする等の問題も発生するため好ましくない。なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記の範囲を越える単繊維繊度の繊維が含まれていてもよい。
生分解性を有する脂肪族ポリエステルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネートなどを用いることができる。また、単繊維繊度が上記範囲内であれば、本発明の効果を損なわない範囲で他の繊維を併用することができる。
また、繊維長としては特に限定されるものではないが、極細繊維不織布(A)は皮革様シートの表面に使用されるものであるため、短繊維を用いる場合は主として繊維長が1〜10cmであることが好ましく、1.5〜8cmであることがより好ましく、2〜6cmであることがさらに好ましい。10cmを越える繊維が含まれると、表面品位が低下するため好ましくない。また、繊維長が1cm未満であると、繊維の絡合が外れやすく、シートの強力や耐久性が低下するため好ましくない。なお、本発明の効果が損なわれない範囲で、この範囲外の繊維長の繊維が含まれていてもよい。
一方、後述するように極細繊維不織布(A)/織物または編物(B)/短繊維不織布(C)の3層以上を重ねる場合、裏面に使用する短繊維不織布(C)は柔軟性の阻害が少ない点で0.1〜1cmの繊維長とすることが好ましい。
単繊維繊度が上述の範囲にある、いわゆる極細繊維の製造方法は特に限定されず、通常のフィラメント紡糸法の他、スパンボンド法、メルトブロー法、エレクトロスピニング法、フラッシュ紡糸法等の、不織布として製造する方式であってもよい。また、極細繊維を得る手段として、直接極細繊維を紡糸する方法、通常繊度の繊維であって極細繊維を発生することができる繊維(以下、極細繊維発生型繊維という)を紡糸し、次いで、極細繊維を発生させる方法でも良い。
本発明では、これらの極細繊維を相互に絡合させることで、耐摩耗性を向上させることができる。極細繊維からなる従来の皮革様シート状物の大半は極細繊維束が絡合した構造を有しているが、本発明においては、極細繊維束の絡合では期待する耐摩耗性の効果が得られない。すなわち、極細繊維が相互に絡合した構造とすることにより、耐摩耗性を向上させることができるのである。なお、本発明の効果が損なわれない範囲で極細繊維束が含まれていてもよい。
また、一般に合成皮革や人工皮革と称される皮革様シート状物は、不織布または不織布と織物を一体化した繊維素材にポリウレタンなどの高分子弾性体を付与したものである。ポリエチレンプロピルアルコール、ポリプロピレンアジペートグリコールを用いたポリウレタンとポリエステルジオールを用いたポリウレタンとポリブチレンとポリブチレンテレフタレートとポリカプロラクトンジオールとからなるポリエステルエラストマーなどは土壌中やコンポストでの分解性を有するものであるが、上記ポリウレタンからなる高分子弾性体は加水分解により強度低下が起こりやすく、耐久性の低下や表面品位が低下しやすい。
本発明においては、加水分解による耐久性や表面品位の低下を防止するため、実質的に繊維素材からなることが好ましい。ここでいう「実質的に繊維素材からなる」とは、SEMやマイクロスコープなどで表面や断面の観察を行った際に、実質的に高分子弾性体が観察されないことをいう。
なお、例えば微粒子、染料、柔軟剤、柔軟剤、風合い調整剤、ピリング防止剤、抗菌剤、消臭剤、撥水剤、耐光剤、耐侯剤などの機能性薬剤は、本発明の効果を損なわない範囲で含まれていてもよい。 また、本発明における構成要素である、極細繊維不織布(A)と織物または編物(B)を絡合させることは、引っ張り強力や引き裂き強力などの向上や、ドレープ性を付与することなどができるため好ましい。織物または編物(B)とは、織物または編物それぞれが単独であってもよいし、織物と編物の両方であってもよい。織物または編物(B)の組織は特に限定されるものではなく、目的に応じて様々な組織を用いることができる。引っ張り強力や引き裂き強力の向上を目的とする場合は、織物を用いることが好ましく、織組織としては例えば、平織、綾織などが挙げられる。また、ドレープ性向上を目的とする場合は、編物を用いることが好ましく、編組織としては例えば丸編、横編などが挙げられる。一方、取り扱いの点でダブル編であることがより好ましい。また、生産性や取り扱いやすさの点では経編であることが好ましく、例えばトリコットが挙げられる。
また、上記の織物または編物(B)は生分解性を有する繊維を含むことが好ましい。生分解性を有する繊維としては、特に限定されるものではなく、例えば、脂肪族ポリエステルや綿などのセルロース繊維や、ウールなどの獣毛を用いることができる。これら生分解性を有する繊維の中でも、任意の繊度を得やすいことから、脂肪族ポリエステル繊維を用いることが好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、生分解性繊維以外の繊維を併用することができる。
織物または編物(B)に用いる繊維の繊度は100デシテックス以下が好ましく、85デシテックス以下がより好ましく、50デシテックス以下がさらに好ましい。100デシテックスを越えると、編物にした場合にドレープ性が悪化するため好ましくない。下限は特に限定されず、より細いほどドレープ性に優れたものとなるが、取り扱い性が優れる点で10デシテックス以上が好ましい。なお単繊維繊度は、0.1〜3デシテックスであることが好ましい。3デシテックスを越えるとドレープ性が低下するため好ましくない。また下限は特に限定されないが、0.1デシテックス未満であると繊維強度が低下するため単糸切れしやすく、また、ドレープ性が悪化する傾向があるため好ましくない。
織物または編物(B)の目付は皮革様シート状物の目付に合わせ適宜調整することができるが、衣料用途の場合は30〜150g/m2であることが好ましく、40〜100g/m2であることがより好ましい。30g/m2未満であると形態が不安定であり、取り扱い性が悪く、また極細繊維不織との絡合よる強力の向上やドレープ性の付加が得られにくくなる。また、150g/m2を越えると柔軟性が低下する傾向があるため好ましくない。また、織密度や編密度も特に限定されるものではないが、単繊維不織布との絡合性や強力、ドレープ性の付加を考慮して、通常、織物にはタテ糸密度50〜180本/インチ、ヨコ糸密度30〜130本/インチ、編物には20〜60ゲージのものを採用することができる。
また、製品面と裏面が存在する場合であって、裏面にも品位が要求される場合は、主として繊維長0.1〜1.1cmの少なくとも生分解性を有する脂肪族ポリエステルを含む短繊維不織布(C)をさらに絡合し、表面を極細繊維不織布(A)、中間層を織物または編物(B)とし、裏面に短繊維不織布(C)とした3層構造とすることが好ましい。全体の目付を必要以上に増加させないためには、短繊維不織布(C)は低目付であることが好ましく、低目付化が容易である抄造法で製造されたものであることが好ましい。
また、裏面の品位と柔軟性を両立するためには、短繊維不織布(C)の単繊維繊度は、0.001〜0.5デシテックスであることが好ましく、0.01〜0.3デシテックスであることがより好ましい。単繊維繊度が0.001デシデックス未満であると、抄造法により均一な目付の不織布を得ることが難しく、また、0.5デシテックスを越えると裏面の品位が低下し、高級感が得られにくくなる。
極細繊維不織布(A)と織物または編物(B)、または、極細繊維不織布(A)、織物または編物(B)、短繊維不織布(C)からなる皮革様シート状物の全重量において、極細繊維不織布(A)は40〜80重量%であることが好ましく、60〜80重量%であることがより好ましい。極細繊維不織布(A)が40重量%未満であると風合いが起毛織物または編物に近くなり、皮革様シート状物としての高級感が得にくく、80重量%を越えると、織物または編物(B)を絡合することによる強力の向上やドレープ性の付加する効果を十分に得にくくなってしまう。
また、皮革様シート状物に生分解性を付与するためには、極細繊維不織布(A)、織物もしくは編物(B)、または短繊維不織布(C)の構成比において、生分解性を有する繊維を40重量%以上含むことにより、生分解性繊維の分解後は物理的な作用により容易に形状が崩壊するため好ましい。さらに、構成比において生分解性繊維が60重量%以上含むことはより好ましく、80重量%以上であることはさらに好ましい。100重量%であってもよい。また、皮革様シート状物に含まれる極細繊維不織布(A)、織物もしくは編物(B)、または短繊維不織布(C)のそれぞれの構成比において、生分解性を有する繊維を40重量%以上含むことが好ましく、それぞれが60重量%以上含むことがより好ましく、それぞれが80重量%以上含むことがさらに好ましく、それぞれが100重量%であることが最も好ましい。生分解性繊維の構成比が40重量%未満であると、生分解性繊維の分解後も崩壊しにくく、元の形状を保持してしまうため好ましくない。
本発明の皮革様シート状物を構成する生分解性を有する脂肪族ポリエステルとしては、融点が120℃以上であることが好ましい。融点が120℃未満であると、染着性を上げるために染色温度を120℃以上にすると繊維同士が融着し、風合いが硬くなったり、表面の立毛品位が低下してしまうため好ましくない。
脂肪族ポリエステルの中でもポリ乳酸は、融点が170℃と高く、原料が天然物由来であるため好ましい。ここで融点とは、示差走査熱量測定(DSC測定)によって得られた融点ピーク温度のことである。
また、ポリ乳酸は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とすることがさらに好ましい。ポリ乳酸の分子量は、好ましくは5万以上、より好ましくは10万以上、さらに好ましくは20万以上がよい。分子量5万未満では、曳糸性の低下の他、強度などの繊維物性や製品物性の低下などの問題が生じるので好ましくない。
また、ポリ乳酸のカルボキシル末端基をカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、ジオール化合物、長鎖アルコール化合物などの末端封鎖剤によって封鎖することにより、耐加水分解性を向上させることができるため、好ましい。
本発明の皮革様シート状物の目付は、好ましくは100〜350g/m2であり、より好ましくは120〜300g/m2、さらに好ましくは140〜250g/m2である。100g/m2未満であると、強力が低下し、表面に織物または編物(B)が見えやすくなり、品位が低下するため好ましくない。350g/m2を越える場合は、極細繊維を相互に絡合させるこが困難になり、耐久性が低下するため好ましくない。また、繊維見掛け密度は、好ましくは0.27〜0.50g/cm3であり、より好ましくは0.28〜0.45g/cm3、さらに好ましくは0.29〜0.40g/cm3である。0.27g/cm3未満であると、特に耐摩耗性や耐久性が低下するため好ましくない。また、0.50g/cm3を越えると柔軟性が低下するため好ましくない。
また、本発明の皮革様シート状物は、天然皮革のような優れた表面外観を得るため、少なくとも一方の面を立毛させ、スエード、ヌバック調の滑らかなタッチと優れたライティングエフェクトを付与することが好ましい。
しかし、立毛を有した皮革様シート状物は、特にその耐摩耗性が低下しやすい傾向を示すことから、耐摩耗性を向上させる目的で、本発明の皮革様シート状物は微粒子を含むことが好ましい。微粒子の材質は水に不溶であれば特に限定されるものではなく、例えばシリカやコロイダルシリカ、酸化チタン、アルミニウム、マイカなどの無機物質や、メラミン樹脂などの有機物質を例示することができる。
これら微粒子の平均粒子径は好ましくは0.001〜30μmであり、より好ましくは0.01〜20μm、さらに好ましくは0.05〜10μmである。0.001μm未満であると、期待する効果が得られにくくなり、また30μmを越えると脱落によって洗濯耐久性が低下する。なお平均粒子径は個々の材質やサイズに応じて適した測定方法、例えばBET法やレーザー法、コールター法を採用する。
これらの微粒子は、本発明の効果が発揮できる範囲で適宜使用量を調整することができるが、好ましくは0.01〜8重量%であり、より好ましくは0.02〜5重量%、さらに好ましくは0.05〜2重量%である。0.01重量%以上であれば、耐摩耗性の向上効果が顕著に発揮でき、量を増加させる程、その効果は大きくなる傾向がある。ただし、8%を越えると風合いが硬くなってくるため好ましくない。
なお、平均粒子径の異なる微粒子を混合して用いることにより、繊維に対する微粒子の充填密度が増し、耐摩耗性がより向上するためさらに好ましい。
また、柔軟な風合いとなめらかな表面タッチを得るために、本発明の皮革様シート状物は柔軟剤を含むことが好ましい。柔軟剤としては特に限定されず、織物や編物などに一般的に使用されているものを繊維種に応じて適宜選択する。例えば染色ノート第23版(発行所 株式会社色染社、2002年8月31日発行)においては、風合い加工剤、柔軟仕上げ剤の名称で記されているものを適宜選択することができ、その中でも柔軟性の効果が優れる点でシリコーン系エマルジョンが好ましく、アミノ変成やエポキシ変成されたシリコーン系エマルジョンがより好ましい。これらの柔軟剤が含まれると耐摩耗性は低下する傾向があるため、この柔軟剤の量と上記の微粒子の量は目標とする風合いと耐摩耗性のバランスをとりながら、適宜調整することが好ましい。したがって、その量は特に限定されるものではないが、少なすぎると効果が発揮できず、多すぎるとべたつき感があるため、通常0.01〜10重量%の範囲となる。
次に本発明の皮革様シート状物の製造方法の一例を述べる。
最初に本発明の皮革様シート状物における極細繊維不織布(A)の製造方法を述べる。極細繊維不織布(A)を構成する単繊維繊度が0.0001〜0.5デシテックスの範囲にある極細繊維の製造方法は特に限定されず、例えば極細繊維を直接紡糸する方法、通常繊度の繊維であって極細繊維を発生することができる繊維(極細繊維発生型繊維)を紡糸し、次いで極細繊維を発生させる方法がある。そして極細繊維発生型繊維を用いる方法としては、例えば海島型繊維を紡糸してから海成分を除去する方法、分割型繊維を紡糸してから分割して極細化する方法などの手段を例示することができる。これらの中で、本発明においては極細繊維を容易に安定して得ることができ、さらに後述する本発明の好ましい製造方法によって、本発明の皮革様シート状物の構造を容易に達成できる点で、海島型繊維または分割型繊維によって製造することが好ましく、さらには皮革様シート状物とした場合、同種の染料で染色できる同種ポリマーからなる極細繊維を容易に得ることができる点で、海島型繊維によって製造することがより好ましい。
ここでいう海島型繊維とは、2成分以上の成分を任意の段階で複合、混合して海島状態とした繊維をいい、この繊維を得る方法としては、特に限定されず、例えば(1)2成分以上のポリマーをチップ状態でブレンドして紡糸する方法、(2)予め2成分以上のポリマーを混練してチップ化した後、紡糸する方法、(3)溶融状態の2成分以上のポリマーを紡糸機のパック内で静止混練器などを用い混合する方法、(4)特公昭44−18369号公報、特開昭54−116417号公報などの口金を用いて製造する方法、などが挙げられる。本発明においてはいずれの方法でも良好に製造することができるが、ポリマーの選択が容易である点で上記(4)の方法が好ましく採用される。
かかる(4)の方法において、海島型繊維および海成分を除去して得られる島繊維の断面形状は特に限定されず、例えば丸、多角、Y、H、X、W、C、π型などが挙げられる。また用いるポリマー種の数も特に限定されるものではないが、紡糸安定性を考慮すると2〜3成分であることが好ましく、特に海1成分、島1成分の2成分で構成されることが好ましい。またこのときの成分比は、島繊維の海島型繊維に対する重量比で0.3〜0.99であることが好ましく、0.4〜0.97がより好ましく、0.5〜0.8がさらに好ましい。0.3未満であると、海成分の除去率が多くなるためコスト的に好ましくない。また0.99を越えると、島成分同士の合流が生じやすくなり、紡糸安定性の点で好ましくない。
海島型繊維で極細繊維を得る場合、その島成分が目的とする極細繊維になる。島成分に用いる生分解性を有する脂肪族ポリエステルのポリマーは特に限定されず、繊維化が可能なものを適宜選択して使用することができるが、本発明で好ましく用いられるのは上述した、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸などである。また、海成分として用いるポリマーは、島成分と相溶しないものであれば特に限定されるものではないが、海成分のポリマーよりも使用する溶剤や薬剤に対し溶解性、分解性の高い化学的性質を有するものであることが好ましい。島成分を構成するポリマーの選択にもよるが、例えばポリエチレンやポリスチレンなどのポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールもしくはその共重合体、特開昭61−29120号公報、特開昭63−165516号公報、特開昭63−159520号公報、特開平1−272820号公報などに記載されている熱水可溶性ポリエステルなどの熱水可溶性ポリマー、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ビスフェノールA化合物、イソフタル酸、アジピン酸、ドデカジオン酸、シクロヘキシルカルボン酸などを共重合したポリエステルなどを用いることができる。紡糸安定性の点ではポリスチレンが好ましいが、有機溶剤を使用せずに容易に除去できる点で熱水可溶性ポリマーやスルホン基を有する共重合ポリエステルが好ましい。かかる共重合比率としては、処理速度、安定性の点から5モル%以上、重合や紡糸、延伸のしやすさから20モル%以下であることが好ましい。本発明において好ましい組み合わせとしては、島成分にL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸、海成分にポリスチレンまたはスルホン基を有する共重合ポリエステルを用いることである。これらのポリマーには、隠蔽性を向上させるためにポリマー中に酸化チタン粒子などの無機粒子を添加してもよいし、その他、潤滑剤、顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱材、抗菌剤など、種々目的に応じて添加することもできる。
このようにして紡出したポリマーは、延伸、結晶化することができ、例えば未延伸糸を引き取った後、湿熱または乾熱、あるいはその両者によって1〜3段延伸することができる。なお、分割型繊維を用いる場合は、主に口金内で2成分以上を複合し、上述の海島型繊維の製造方法に準じて行うことができる。
次いで、得られた短繊維を不織布化するが、その方法としては、ウェブをカードやクロスラッパー、ランダムウエバーを用いて得る乾式法や、抄紙法などによる湿式法を採用することができる。本発明では、本発明の皮革様シート状物の構造を容易に達成できる点でニードルパンチ法と高速流体処理の2種の絡合方法を組み合わせた乾式法が好ましい。この不織布化する際の繊維の使用量や絡合する織物または編物(B)の目付によって、皮革様シート状物の目付を適宜調整することができる。
次に本発明で好ましく採用する乾式法にて製造する方法を説明するが、これに限定されるものではない。まず、カード、クロスラッパーなどを用いて得られるウェブを、ニードルパンチ処理によって、繊維見掛け密度が好ましくは0.12〜0.30g/cm3、より好ましくは0.15〜0.25g/cm3とする。0.12g/cm3未満であると、絡合が不十分であり、引張強力や引裂強力、耐摩耗性などの目的の物性が得られにくくなる。また上限は特に規定されないが、0.30g/cm3を越えると、ニードル針の折れや、針穴が残留するなどの問題が生じるため、好ましくない。
また、ニードルパンチを行う際には、極細繊維発生型繊維の単繊維繊度が1〜10デシテックスであることが好ましく、2〜8デシテックスがより好ましく、2〜6デシテックスがさらに好ましい。単繊維繊度が1デシテックス未満である場合や10デシテックスを越える場合は、ニードルパンチによる絡合が不十分となり、良好な物性の極細短繊維不織布を得ることが困難になる。
本発明におけるニードルパンチは、単なる工程通過性を得るための仮止めとしての役割ではなく、繊維を十分に絡合させることが好ましい。したがって、好ましくは、100本/cm2以上の打ち込み密度がよく、より好ましくは500本/cm2以上、さらに好ましくは1000本/cm2以上がよい。
このようにして得られた不織布は、乾熱または湿熱、あるいはその両者によって収縮させ、さらに高密度化することが好ましい。
次いで、極細化処理をした後もしくは極細化処理と同時に、または極細化処理と同時さらにその後に、高速流体処理を行って、極細繊維同士の絡合を行うことが好ましい。高速流体処理を極細化処理と兼ねることは可能であるが、少なくとも極細化処理が大部分終了した後にも高速流体処理を行うことが、より極細繊維同士の絡合を進める上で好ましく、さらに、極細化処理を行った後に高速流体処理を行うことが好ましい。
極細化処理の方法としては、特に限定されるものではないが、例えば機械的方法、化学的方法が挙げられる。機械的方法とは、物理的な刺激を付与することによって極細化する方法であり、例えば上記のニードルパンチ法やウォータージェットパンチ法などの衝撃を与える方法の他に、ローラー間で加圧する方法、超音波処理を行う方法などが挙げられる。
また、化学的方法とは、例えば、海島型繊維を構成する少なくとも1成分に対し、熱水や薬剤によって膨潤、分解、溶解などの変化を与える方法などが挙げられる。
また、溶剤を使用せず作業環境上好ましいことから、島成分に熱水可溶性ポリマーを用いることが本発明の好ましい態様の一つである。
なお、極細化処理と高速流体処理を同時に行う方法としては、例えば剥離分割型複合繊維を用いて、ウォータージェットパンチによって分割と絡合を行う方法、水可溶性の海成分からなる海島型繊維を用い、ウォータージェットパンチによって除去と絡合を行う方法、アルカリ分解速度の異なる2成分以上の海島型繊維を用い、アルカリ処理液を通して易溶解成分を分解処理した後に、ウォータージェットパンチによって最終除去および絡合処理を行う方法、などが挙げられる。
このようにして織物または編物(B)と絡合させるための極細繊維不織布(A)を製造することができる。
高速流体処理としては、作業環境の点で水流を使用するウォータージェットパンチ処理を行うことが好ましい。この時、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。柱状流は、通常、直径0.06〜1.0mmのノズルから圧力1〜60MPaで噴出させることで得られる。かかる処理は、効率的な絡合性と良好な表面品位を得るために、ノズルの直径は0.06〜0.15mm、間隔は5mm以下であることが好ましく、直径0.06〜0.12mm、間隔は1mm以下がより好ましい。これらのノズルスペックは、複数回処理する場合、すべて同じ条件にする必要はなく、例えば大孔径と小孔径のノズルを併用することも可能であるが、少なくとも1回は上記構成のノズルを使用することが好ましい。特に直径が0.15mmを越えると極細繊維同士の絡合性が低下し、表面がモモケやすくなるとともに、表面平滑性も低下するため好ましくない。したがって、ノズル孔径は小さい方が好ましいが、0.06mm未満となるとノズル詰まりが発生しやすくなるため、水を高度に濾過する必要性からコストが高くなる問題があり好ましくない。
また、厚さ方向に均一な交絡を達成する目的、および/または不織布表面の平滑性を向上させる目的で、好ましくは多数回繰り返して処理する。その水流圧力は処理する不織布の目付によって適宜選択し、高目付のもの程高圧力とすることが好ましい。さらに、極細繊維同士を高度に絡合させ、目的の引張強力や引裂強力、耐摩耗性などの物性を得るため、少なくとも1回は10MPa以上の圧力で処理することが重要であり、15MPa以上であることが好ましい。また上限は特に限定されないが、圧力が上昇する程コストが高くなり、また、低目付不織布の場合は不織布が不均一になりやすく、繊維の切断により毛羽が発生する場合もあるため、好ましくは40MPa以下であり、より好ましくは30MPa以下である。こうすることによって、例えば極細繊維発生型繊維から得た極細繊維の場合、極細繊維が集束した極細繊維束が絡合しているものが一般的であるが、極細繊維束による絡合がほとんど観察されない程度にまで極細繊維同士が絡合した極細短繊維不織布を得ることができ、またこれにより耐摩耗性などの表面特性を向上させることもできる。なお、ウォータージェットパンチ処理を行う前に、水浸漬処理を行ってもよい。さらに表面の品位を向上させるために、ノズルヘッドと不織布を相対的に移動させる方法や、交絡後に不織布とノズルの間に金網などを挿入して散水処理するなどの方法を行うこともできる。また、高速流体処理を行う前には、厚み方向に対して垂直に2枚以上にスプリット処理を行うことが好ましい。
また、織物または編物(B)の製造方法は特に限定されるものではなく、必要とする組織に応じてそれに適した織機や編機を使用することができる。織機としては、例えばエアージェット織機やウォータージェット織機、フライシャトル織機などがあげられる。
また、編機としては、例えば横編機、丸編機、トリコット機、ラッセル機などがあげられる。これにより得た織物または編物(B)と不織布を絡合させる方法は、これらニードルパンチや高速流体処理などの手段を用いた絡合による方法や、接着による方法の他、種々の方法を適宜単独または組み合わせて採用することができる。これらの内、ドレープ性に優れる点で絡合による方法が好ましく、織物または編物(B)を損傷させずに絡合できる点で高速流体処理を用いることがより好ましい。
さらに、もう一つの短繊維不織布(C)を絡合する場合、この不織布の製造方法は特に限定されず種々の用途に応じて適宜使い分けることができる。例えば、上述した極細繊維不織布(A)を重ねて絡合することで、両面共に優れた耐摩耗性を得ることが可能となる。また低目付かつ柔軟性を重視するため、抄造法により製造してもよい。
なお、極細繊維不織布(A)は積層する手段によって適宜その絡合度を調整することが好ましい。すなわち、絡合により極細繊維不織布(A)と織物または編物(B)を積層する場合、極細繊維不織布(A)自体の絡合度は低めにしておき、織物または編物(B)と重ねてから絡合を行うことが剥離強力や耐摩耗性を向上させる点で好ましい。例えば、極細繊維不織布(A)が主として極細繊維束が絡合した状態、すなわち上述の方法であればニードルパンチ処理後に極細化した不織布であることが好ましく、これに織物または編物(B)を重ねてウォータージェットパンチにより絡合した状態とする。一方、接着により極細繊維不織布(A)と織物または編物(B)を重ねる場合、極細繊維不織布(A)自体の絡合強度は高めにしておくことが、耐摩耗性の点で好ましい。例えば、極細繊維不織布(A)が主として極細繊維同士が相互に絡合した状態としてから接着する。高速流体を用いて極細繊維不織布(A)と織物または編物(B)を絡合させる場合、極細繊維不織布(A)と織物または編物(B)を重ねた後、極細繊維不織布(A)側から処理することが好ましい。
また、短繊維不織布(C)を抄造法で製造する場合、あらかじめ準備した抄造法により製造されたウェブ(以下抄造ウェブと記す)と織物または編物(B)を重ねて絡合する方法、織物または編物(B)上に抄造ウェブを一挙に形成させる方法などを採用することができ、可能であれば、一挙に積層シートを形成する方法がコスト的に好ましい。特に抄造ウェブを絡合する場合、極細繊維不織布(A)と織物または編物(B)を絡合した後に行うと密度上昇によって均一に絡合させることが困難になるので、先に抄造ウェブと織物または編物(B)を絡合した後、極細繊維不織布(A)を絡合することが好ましい。これらを絡合させることによって、強力の向上やドレープ性の付加、裏面品位の向上が期待できる。その後に高速流体処理を行う。
抄造ウェブの製造方法は特に限定されないが、例えばL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸などの生分解性を有する脂肪族ポリエステルからなる繊維長0.1〜1cmの繊維を、水溶性樹脂などを含む水中で叩解し、0.0001〜0.1%程度の濃度で分散させた分散液を金網などに抄造して製造することができる。織物または編物(B)上に抄造ウェブを一挙に形成させる場合は、金網上に織物または編物(B)を置き、その上から抄造する方法によって製造することができる。
スエード調やヌバック調の立毛を有した皮革様シート状物を得る場合は、サンドペーパーやブラシなどによる立毛処理を行うことが好ましい。かかる立毛処理は後述する染色の前または後、あるいは染色前および染色後に行うことができるが、染色後に行うとサンドペーパーやブラシに着色が生じるため、染色前に行うことが好ましい。また、後述する微粒子の付与後に行うこともできるが、立毛が出にくい傾向を示すことから、微粒子付与後に行うことが好ましい。
このようにして得られた積層シートは、次いで染色する。その方法は特に限定されるものではなく、用いる染色機としても、液流染色機の他、サーモゾル染色機、高圧ジッガー染色機などいずれでもよいが、得られる皮革様シート状物の風合いが優れる点で液流染色機を用いて染色することが好ましい。
染色に際してはポリエチレンテレフタレート繊維と同様に分散染料を用いることができる。また、例えばL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸を用いる場合、高温で染色することにより、加水分解により強力の低下が起こるため、染色温度は110℃から120℃で行うことが好ましい。110℃未満では染色性が悪く、130℃以上では加水分解による強力低下が著しいため好ましくない。
また、主として繊維素材からなる皮革様シート状物において、表面の平滑性を向上させる、および/または半銀面調の表面を得る目的で、染色した後、0.1〜0.8倍に圧縮することもできる。
本発明においては、微粒子を付与することは耐摩耗性を向上できるため好ましい。微粒子を付与することによって、ドライ感やきしみ感などの風合いを与える効果を得ることもできる。この微粒子を付与する手段としては特に限定されるものではなく、パッド法の他、液流染色機やジッガー染色機を用いる方法、スプレーで噴射する方法など、適宜選択することができる。また柔軟剤を付与する場合も同様であり、コストの点からは微粒子と同時に付与することが好ましい。
なお、微粒子や柔軟剤は、好ましくは染色後に付与する。染色前に付与すると、染色時の脱落により効果が減少する場合や、染色ムラが発生する場合があるため好ましくない。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
(1)単繊維繊度
複合繊維繊度をJIS L1013−8.3.1A法(2001)に従って測定し、島数と重量比から計算した値を単繊維繊度とした。
(2)繊維長
JIS L1015−8.4.1C法(2001)に従って測定した。
(3)目付
JIS L1096−8.4.1(2001)に従って測定した。
(4)見掛け密度
JIS L1096−8.10.1(2001)に従って測定した。
(5)生分解性試験
タテ30cm×ヨコ30cmの試料を準備し、60℃のコンポスト中で深さ10cmの位置に埋設し、形状の変化を調べた。形状が崩れていれば、生分解性を有するものと判断した。
実施例1
海成分としてポリスチレン(旭化成:スタイロン)、島成分として融点168℃、重量平均分子量12万、L体比率が98モル%であるポリ乳酸を用い、島数36の海島型複合紡糸口金を用いて、海/島比率=55/45重量%の未延伸糸を巻き取った。紡糸温度は260℃、引取速度は1200m/分とした。
次いで該未延伸糸を通常のホットロール−ホットロール系延伸機を用いて、延伸温度80℃、熱セット温度120℃で延伸した。延伸倍率は、延伸糸の伸度が35%となるように調整した。この延伸糸を集束したものを、クリンパーにより約15山/2.54cmの捲縮を与えた後、長さ51mmにカットし、複合繊維の単繊維繊度が3デシテックスである、ポリスチレン/ポリ乳酸の海島型複合繊維のステープルを得た。
該ステープルをカード、クロスラッパーを通してウェブを作製した。次いで1バーブ型のニードルパンチにて2000本/cm2の打ち込み密度で処理し、繊維見掛け密度0.22g/cm3の複合短繊維不織布を得た。
次に約95℃に加温した重合度500、ケン化度88%のポリビニルアルコール(PVA)12%の水溶液に固形分換算で不織布重量に対し25%の付着量になるように浸漬し、PVAの含浸と同時に2分間収縮処理を行い、100℃にて乾燥して水分を除去した。得られたシートを約30℃のトリクレンでポリスチレンを完全に除去するまで処理し、単繊維繊度約0.046デシテックスの極細繊維を得た。次いで、室田製作所(株)製の標準型漉割機を用いて、厚み方向に対して垂直に2枚にスプリット処理して極細繊維不織布(A)を得た。
また、融点168℃、重量平均分子量12万、L体比率が98モル%であるポリL乳酸を用い、紡糸温度220℃とした溶融紡糸パックへ導入し、3000m/分で引き取って未延伸糸を得た。次いで、該未延伸糸をホットロール−ホットロール系延伸機を用いて、延伸温度90℃、熱セット温度120℃で1.2倍に延伸し、56デシテックス、12フィラメントからなる延伸糸とし、該延伸糸を用いて、織密度がタテ136本/インチ、ヨコ96本/インチ、目付けが77g/m2の平織物(B)を作製した。
また、融点168℃、重量平均分子量12万、L体比率が98モル%であるポリ乳酸を用い、直接紡糸法により、単繊維0.2デシテックス、繊維長が0.5cmのポリ乳酸極細繊維を用い、抄造法により20g/m2の短繊維不織布(C)を作製した。
次いで、平織物(B)と短繊維不織布(C)を重ねて、短繊維不織布(C)の面から0.1mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドからなるウォータージェットパンチにて、7m/分の処理速度で7MPaの圧力で処理し、織物(B)と短繊維不織布(C)の積層物を得た。次いで、該積層物と極細繊維不織布(A)を重ねて、極細繊維不織布(A)側から0.1mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドからなるウォータージェットパンチにて、7m/分の処理速度で17MPaで3回処理し、次いで短繊維不織布(C)側から17MPaで3回処理してPVAの除去とともに絡合を行った。
次いでサンドペーパーにて極細繊維不織布(A)の立毛処理をし、液流染色機にて“Sumikaron Blue S−BBL200”(住化ケムテックス(株)製)を用い20%owfの濃度で、120℃、45分で染色した。得られた不織布を、柔軟剤(アミノ変性シリコーンエマルジョン“シリコーランAN980SF”一方社株式会社製)と微粒子(コロイダルシリカ“スノーテックス20L”日産化学工業株式会社製、平均粒径0.04〜0.05μm:BET法)を含む水溶液に浸積し、コロイダルシリカが2.0%となるように絞った後、ブラッシングしながら100℃で乾燥させ、極細繊維不織布(A)と平織物(B)からなる皮革様シート状物を得た。
このようにして得られた皮革様シート状物は、極細繊維が相互に絡合し、かつ極細繊維と織物が絡合した緻密な構造であり、スエード調の外観を有するものであった。また、この皮革様シート状物の全重量における極細繊維不織布(A)の構成比は50重量%であった。また、生分解性繊維の構成比は極細繊維不織布(A)、平織物(B)、短繊維不織布(C)とも100重量%であった。
この皮革様シート状物は織物を絡合させたことにより使用上十分な耐久性有し、その生分解性を評価したところ、形状が崩れており優れた生分解性を有するものであった。評価結果は表1に示した。
実施例2
海成分としてポリスチレン(旭化成:スタイロン)、島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、島数36、海/島比率=55/45重量%、複合繊維の単繊維繊度3デシテックス、捲縮数15山/2.54cm、長さ51mmのポリスチレン/ポリエチレンテレフタレートの海島型複合繊維のステープルを得た。
該ステープルと実施例1と同様のポリスチレン/ポリ乳酸のステープルを混合比率=50/50重量%で混綿したステープルを用いた以外は実施例1と同様の方法で不織布を作製し、極細繊維不織布(A’)を得た。
次いで、実施例1の平織物(B)のヨコ糸を56デシテックス、12フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維に変えた以外は、同様の織密度で平織物を作成し、織密度がタテ136本/インチ、ヨコ96本/インチ、目付けが79g/m2の平織物(B’)を作製した。
次いで、極細繊維不織布(A’)と平織物(B’)を重ねて、極細繊維不織布(A)側から0.1mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドからなるウォータージェットパンチにて、7m/分の処理速度で17MPaで3回処理し、次いで平織物(B)側から17MPaで3回処理してPVAの除去とともに絡合を行った。
次いで、実施例1と同様に立毛、染色、柔軟剤・微粒子の付与を行い、ブラッシングしながら100℃で乾燥させ、皮革様シート状物を得た。
このようにして得られた皮革様シート状物は、極細繊維が相互に絡合し、かつ極細繊維と織物が絡合した緻密な構造であり、スエード調の外観を有するものであった。また、この皮革様シート状物の全重量における極細繊維不織布(A’)の構成比は58重量%であり、生分解性を有する繊維の構成比は極細繊維不織布(A’)が50重量%、平織物(B’)が59重量%であった。
この皮革様シート状物は織物を絡合させたことにより使用上十分な耐久性有するものであった。また、生分解性を評価したところ、実施例1に比べて生分解性は劣るものの、形状が崩れており、十分な生分解性を有するものであった。評価結果は表1に示した。
実施例3
第1成分として融点168℃、重量平均分子量12万、L体比率が98モル%であるポリ乳酸、第2成分としてナイロン6を用い、単繊維繊度2.4デシテックス、捲縮数15山/2.54cm、長さ51mmの図1に示す断面形状に類似した、複合比1:1の24分割の剥離分割型複合繊維のステープルを得た。
該ステープルをカード、クロスラッパーを通してウェブを作製した。次いで1バーブ型のニードルパンチにて2000本/cm2の打ち込み密度で処理し、繊維見掛け密度0.24g/cm3の複合短繊維不織布を得た。
次に約95℃に加温した重合度500、ケン化度88%のポリビニルアルコール(PVA)12%の水溶液に固形分換算で不織布重量に対し25%の付着量になるように浸漬し、PVAの含浸と同時に2分間収縮処理を行い、100℃にて乾燥して水分を除去した。
得られたシートを室田製作所(株)製の標準型漉割機を用いて、厚み方向に対して垂直に2枚にスプリット処理して複合短繊維不織布を得た。
次いで、該複合短繊維不織布と実施例1と同様の平織物(B)を重ねて、複合長繊維不織布側から0.1mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドからなるウォータージェットパンチにて、2m/分の処理速度で20MPaで3回処理し、PVAの除去とともに複合繊維の分割を行い、単繊維繊度約0.1デシテックスのポリ乳酸とナイロン6からなる、ほぼ全ての複合繊維が分割され、かつ相互に絡合された極細繊維不織布(A’’)とした。
次いで、さらに極細繊維不織布(A’’)側から20Mpaで3回処理した後、平織物(B)側から20MPaで3回処理して絡合を行った。
次いでサンドペーパーにて極細繊維不織布(A’’)の立毛処理をし、液流染色機にて“LANACRON Navy S−G KWL150%”(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を用い20%owfの濃度で、100℃、60分で染色した。得られた不織布を、柔軟剤(アミノ変性シリコーンエマルジョン“シリコーランAN980SF”一方社株式会社製)と微粒子(コロイダルシリカ“スノーテックス20L”日産化学工業株式会社製、平均粒径0.04〜0.05μm:BET法)を含む水溶液に浸漬し、コロイダルシリカが2.0%となるように絞った後、ブラッシングしながら100℃で乾燥させ、皮革様シート状物を得た。
このようにして得られた皮革様シート状物は、極細繊維が相互に絡合し、かつ極細繊維と織物が絡合した緻密な構造であり、スエード調の外観を有するものであった。また、この皮革様シート状物の全重量における極細繊維不織布(A’’)の構成比は59重量%であり、生分解性を有する繊維の構成比は極細繊維不織布(A’’)が50重量%、平織物(B)が100重量%であった。
この皮革様シート状物は織物を絡合させたことにより使用上十分な耐久性有するものであった。また、生分解性を評価したところ、実施例1に比べて生分解性は劣るものの、形状が崩れており、十分な生分解性を有するものであった。評価結果は表1に示した。
比較例1
実施例2と同様のポリスチレン/ポリエチレンテレフタレートのステープルを用いて、カード、クロスラッパーを通してウェブを作製した。次いで1バーブ型のニードルパンチにて2000本/cm2の打ち込み密度で処理し、繊維見掛け密度0.22g/cm3の複合短繊維不織布を得た。次に約95℃に加温した重合度500、ケン化度88%のポリビニルアルコール(PVA)12%の水溶液に固形分換算で不織布重量に対し25%の付着量になるように浸漬し、PVAの含浸と同時に2分間収縮処理を行い、100℃にて乾燥して水分を除去した。得られたシートを約30℃のトリクレンでポリスチレンを完全に除去するまで処理し、単繊維繊度約0.046デシテックスの極細繊維を得た。
次いで、室田製作所(株)製の標準型漉割機を用いて、厚み方向に対して垂直に2枚にスプリット処理して極細繊維不織布(A’’’)を得た。
次いで、56デシテックス12フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維からなる織密度がタテ136本/インチ、ヨコ96本/インチ、目付けが80g/m2の平織物(B’’)に極細繊維不織布(A’’’)を重ねて、単繊維不織布(A’’’)側から0.1mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドからなるウォータージェットパンチにて、5m/分の処理速度で17MPで3回処理し、ついで平織物(B’’)側から17MPaで3回処理してPVAの除去とともに絡合を行った。
次いで実施例1と同様に立毛、染色、柔軟剤と微粒子付与を行ない、ブラッシングしながら100℃で乾燥させ、皮革様シート状物を得た。
このようにして得られた皮革様シート状物は、極細繊維が相互に絡合し、かつ極細繊維と織物が絡合した緻密な構造であり、スエード調の外観を有するものであった。また、この皮革様シート状物の全重量における極細繊維不織布(A’’’)の構成比は60重量%であり、生分解性を有する繊維の構成比は極細繊維不織布(A’’’)、平織物(B’’)共に0%であった。
この皮革様シートは生分解性を有するものではなかった。評価結果は表1に示した。