JP4936507B2 - カンカニクジュヨウの抽出物より得られる強壮剤又は強精剤、配糖体化合物及びそれらの用途 - Google Patents

カンカニクジュヨウの抽出物より得られる強壮剤又は強精剤、配糖体化合物及びそれらの用途 Download PDF

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Description

本発明は、ハマウツボ科寄生植物カンカニクジュヨウの肉質茎、又はそれを水もしくは低級脂肪族アルコール又はその含水物により抽出して得られる抽出液又は抽出エキスを有効成分として含有する強壮剤または強精剤に関する。本発明は、さらに、当該抽出液または抽出エキスに含有される配糖体化合物、及びこれらの用途に関するものである。
ハマウツボ科(Orobanchaceae)植物であるカンカニクジュヨウ(学名:Cistanche tubulosa (Shrenk) R. Wight)は、アフリカ北部、アラビア地域及び西アジアからパキスタンやインドにかけての地域に自生し、Salvadora又はCalotropis属植物の根部に寄生している寄生植物である。その煎草はパキスタンにおいて下痢や腫れ物の治療に用いられており、また、中国においてはその肉質茎を不妊症やアルツハイマー病の治療に供されており、例えば、非特許文献1や非特許文献2に開示されている。
一方、同様にニクジュヨウ属植物に分類されるニクジュヨウ(学名:Cistanche salsa)は、日本において専ら医薬品(昭和46年6月1日付薬発第476号通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」の別紙「医薬品の範囲に関する基準」において、専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リストに収載)として強壮剤あるいは強精剤原料として使用されており、含有成分や薬効などが数多く報告されている。
しかしながら、専ら医薬品原料ではなく、食品としても使用が可能であるカンカニクジュヨウ(上記通知の医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リストに収載)に関する研究はあまり実施されていなかった。
Kobayashi H.,et.al.,Chem. Pharm. Bull.,35,3309−3314(1987) 新彊中薬民族薬研究所編「新彊常用中草学栽培技術」新彊科学技術出版社、2004,pp.84−88.
本発明は、従来、上記のような症状の治療又は改善に用いられ、かつ日本において薬用のみならず食用としても使用が可能なCistanche tubulosaを起源植物とするカンカニクジュヨウの肉質茎より抽出された抽出液又は抽出エキスを用いた強壮剤又は強精剤を提供することを課題とする。本発明は、さらに、当該抽出液または抽出エキスに含有される配糖体化合物、及びこれらのヒト又は動物用の医薬又は食品としての用途を提供するものである。
本発明者は、当該抽出液または抽出エキスについて鋭意研究を行った結果、強壮剤又は強精剤としての活性評価の指標として実施した血管拡張作用試験において、これらが活性を有することを見いだした。さらに当該抽出物について、上記生物活性を指標とした活性成分の分離、精製を実施した結果、特定の化合物が有効成分であることを見いだした。
本発明者は、さらにまた、当該抽出物についての成分分離について鋭意研究を行った結果、当該抽出物にいくつかの新規な配糖体化合物が含まれていることを見いだした。本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
すなわち、本発明は、カンカニクジュヨウの肉質茎、又はそれを、水、低級脂肪族アルコールもしくはその含水物により抽出して得られる抽出液又は抽出エキスを有効成分として含むことを特徴とする強壮剤又は強精剤を提供するものである(請求項1)。
前記の抽出液又は抽出エキスには、下記の式(1)〜式(5)で表される配糖体化合物が含有されており、これらは強壮剤または強精剤としての活性を示す。そこで本発明は、前記の請求項1に記載の強壮剤又は強精剤であって、下記の式(1)〜式(5)で表される配糖体化合物から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有することを特徴とする強壮剤又は強精剤(請求項2)を提供する。
Figure 0004936507
さらに、本発明によれば、下記の式(3)〜式(11)のいずれかで表されることを特徴とする新規な配糖体化合物が提供される(請求項3)。
Figure 0004936507
本発明はさらにまた、カンカニクジュヨウの肉質茎、又はそれを、水、低級脂肪族アルコールもしくはその含水物により抽出して得られる抽出液又は抽出エキスを有効成分として含むことを特徴とする強壮剤又は強精剤、この中で、式(1)〜式(5)で表される配糖体化合物から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有することを特徴とする強壮剤又は強精剤、又は、式(3)〜式(11)のいずれかで表されることを特徴とする新規な配糖体化合物を含有することを特徴とするヒト又は動物用の医薬又は食品を提供するものである(請求項4)。
本発明の、カンカニクジュヨウの肉質茎又はその水あるいは低級脂肪族アルコール又はその含水物による抽出によって得られる抽出液または抽出エキスあるいは式(1)〜式(5)を有効成分として含有する強壮剤又は強精剤は、優れた強壮、強精効果を示す。従って、これらを含有するヒト又は動物用の医薬又は食品、及び、式(3)〜式(11)のいずれかで表されることを特徴とする新規な配糖体化合物を含有するヒト又は動物用の医薬又は食品も、優れた強壮、強精効果を示す。
本発明の強壮剤又は強精剤は、カンカニクジュヨウの肉質茎又はその水あるいは低級脂肪族アルコール又はその含水物による抽出によって得られる抽出液又は抽出エキス、又は当該抽出物中に含まれる式(1)〜式(5)で表される化合物を有効成分として含む。
本発明の強壮剤又は強精剤の製造には、カンカニクジュヨウの肉質茎をそのまま、または粉砕、破砕、切断、すりつぶしなどによる形状変化を行ったもの、あるいは乾燥などの調製を実施したものを用いることができる。
前記抽出液又は抽出エキスの調製には、カンカニクジュヨウの肉質茎の乾燥品で、粉砕、破砕、切断、すりつぶしなどによる形状変化を行ったもの(抽出材料)を用いると抽出効率の面で好ましい。
本発明の抽出液又は抽出エキスを得るために用いられるアルコールとしては、炭素数1〜4の低級アルコール類が挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、nブタノール、イソブタノール、t−ブタノールもしくはこれらの混液またはこれらの30容量%までの水を含有する含水アルコール等が挙げられる。なかでもメタノール又はエタノールが好ましい。これらの抽出溶媒は抽出材料に対して、1〜50倍(容量)程度、好ましくは10〜30倍程度用いられる。
抽出温度は、室温〜溶媒の沸点の間で任意に設定できるが、例えば50°C〜抽出溶媒の沸点の温度で、振盪下もしくは非振盪下または還流下に、上記の抽出材料を上記の抽出溶媒に浸漬することによって行うのが適当である。抽出材料を振盪下に浸漬する場合には、30分間〜10時間程度行うのが適当であり、非振盪下に浸漬する場合には、1時間〜20日間程度行うのが適当である。また、抽出溶媒の還流下に抽出するときは、30分間〜数時間加熱還流するのが好ましい。なお、50°Cより低い温度で浸漬して抽出することも可能であるが、その場合には、上記の時間よりも長時間浸漬するのが好ましい。抽出操作は、同一材料について1回だけ行ってもよいが、複数回、例えば2〜5回程度繰り返すのが好ましい。
上記の抽出工程により得られた抽出液にはカンカニクジュヨウの含有成分が溶出されている。本発明の強壮剤又は強精剤には、このようにして得られた抽出液をそのまま加えてもよい。また、上記抽出液を濃縮して抽出エキスにしてもよい。濃縮は、低温で減圧下に行うのが好ましい。この濃縮は乾固するまで行ってもよい。なお、濃縮する前にろ過して濾液を濃縮してもよい。また、抽出エキスは、濃縮したままの状態であってもよいし、粉末状又は凍結乾燥品等としてもよい。濃縮する方法、粉末状及び凍結乾燥品とする方法は、当該分野で公知の方法を用いることができる。
得られた抽出液は、濃縮する前後に、精製処理に付してもよい。精製処理は、クロマトグラフ法、イオン交換樹脂を使用する溶離法、溶媒による分配抽出等を単独又は組み合わせて採用することができる。例えば、クロマトグラフ法としては、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、遠心液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等のいずれか又はそれらを組み合わせで行う方法が挙げられる。この際の担体、溶出溶媒等の精製条件は、各種クロマトグラフィーに対応して適宣選択することができる。
前記の抽出物は、次に示す化合物の少なくとも1つを含有している。
Figure 0004936507
これらの化合物群のうち、化合物(3)〜(11)(それぞれ前記式(3)〜(11)で表される化合物を意味する。以下同様に、式の番号で各化合物を表す。)は、カンカノシド(kankanoside)F(3)、G(4)、H(5)、A(6)、B(7)、C(8)、D(9)、カンカノール(kankanol)(10)及びカンカノシド(kankanoside)E(11)と命名した新規化合物であるが、化合物(1)及び(2)は、それぞれエチナコシド(echinacoside)(1)及びイソアクテオシド(isoacteoside)(2)と命名されている既知化合物である(非特許文献1)。又、化合物(1)〜(5)は、強壮剤又は強精剤としての活性評価の指標として実施した血管拡張作用試験において活性が見いだされた。
したがって、化合物(1)〜(5)の各化合物ならびにこの各化合物を含むカンカニクジュヨウ及びその抽出物は、強壮剤又は強精剤として用いることができる。なお、本発明にて述べている強壮剤又は強精剤とは、医薬品のほか、健康食品などとしての適用をも含む。
上記のような抽出液又は抽出エキス及び式(1)〜式(5)の化合物は、それぞれそのままの状態又は適当な媒体で希釈して、医薬品等の製造分野において公知の方法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤又は液剤等の種々の医薬品の形態で使用することができる。
これらの形態においては、適当な媒体を添加してもよい。適当な媒体としては、医薬的に許容される賦形剤、例えば結合剤(例えばシロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガント又はポリビニルピロリドン)、充填剤(例えば乳糖、砂糖、トウモロコシ澱粉、リン酸カルシウム、ソルビトール又はグリシン)、錠剤用滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール又はシリカ)、崩壊剤(例えば馬鈴薯澱粉)又は湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)等が挙げられる。
錠剤は、通常の製薬の実際に周知の方法でコートしてもよい。液体製剤は、例えば水性又は油性の懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ又はエリキシルの形態であってもよく、使用前に水又は他の適切な賦形剤と混合する乾燥製品として提供してもよい。
このような液体製剤は、通常の添加剤、例えば懸濁化剤(例えばソルビトール、シロップ、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン水添加食用脂)、乳化剤(例えばレシチン、ソルビタンモノオレエート又はアラビアゴム:食用脂を含んでもよい)、非水性賦形剤(例えばアーモンド油、分画ココヤシ油又はグリセリン、プロピレングリコール又はエチレングリコールのような油性エステル)、保存剤(例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチル又はプロピル又はソルビン酸)、及び所望により着色剤又は香料等を含んでもよい。
又、上記の抽出物は単独で又は混合物として、また式(1)〜式(11)の化合物の各々又は混合物は、ヒト又は動物用の食品及び/又は健康食品に利用することができる。健康食品とは、通常の食品よりも積極的な意味で、保健、健康維持・増進等を目的とした食品を意味し、例えば、液体又は半固形、固形の製品、具体的には散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤又は液剤等のほか、クッキー、せんべい、ゼリー、ようかん、ヨーグルト、まんじゅう等の菓子類、清涼飲料、お茶類、栄養飲料、スープ等の形態が挙げられる。これらの食品の製造工程において、あるいは最終製品に、上記の抽出物及び/又は化合物等を混合又は塗布、噴霧などにより添加して、健康食品とすることができる。
上記抽出液もしくは抽出エキス、又は式(1)〜式(11)の化合物の使用量は、濃縮、精製の程度、活性の強さ等、使用目的、対象疾患や自覚症状の程度、使用者の体重、年齢等によって適宣調整することができ、例えば、成人1回につき抽出液又は抽出エキスでは精製度や水分含量等に応じて、1mg〜20g程度が挙げられ、化合物では1mg〜1g程度が挙げられる。
また、健康食品としての使用時には、食品の味が外観に悪影響を及ぼさない量、例えば、対象となる食品1kgに対して、上記の抽出液又は抽出エキス、式(1)〜式(11)の化合物を、1mg〜20g程度の範囲で添加することが適当である。
以下、本発明の抽出物、新規化合物及びそれらの作用について、実施例に基づきより具体的に説明するが、実施例は本発明の範囲を限定するものではない。なお、実施例では、特に記載がない限り、以下の各種溶媒、ろ紙、クロマトグラフィー用担体及びHPLCカラムを用いた。
メタノール:ナカライテスク社製、一級
クロロホルム:ナカライテスク社製、一級
HPLC用メタノール:関東化学社製、特級
HPLC用アセトニトリル:関東化学社製、特級
ろ紙:アドバンテック社製:No.2
順相シリカゲルカラムクロマトグラフ用担体:富士シリシア社製、BW−200、150〜300メッシュ
逆相ODSカラムクロマトグラフ用担体:富士シリシア社製、Chromatorex ODS1020T、100〜200メッシュ
HPLCカラム:YMC社製、YMC Pack−ODS−A、20mm(i.d.)×250 mm
実施例1
(1)カンカニクジュヨウメタノール抽出エキスの調製
乾燥したカンカニクジュヨウ(C.tubulosa)の肉質茎部5.0kgを粉砕し、これに約10倍量のメタノール(50L)を加え、加熱還流下3時間抽出した。抽出後、ひだ折りろ紙でろ過した後、抽出残渣に再度メタノール(50L)を加え、3時間加熱還流し、同様にろ過作業を行った。合計3回の抽出を行い、その抽出液をあわせ、ロータリーエバポレーターを用いて、減圧下に溶媒を留去して、カンカニクジュヨウのメタノール抽出エキス1340g(乾燥原料からの収率26.8%)を得た。
実施例2
(2)メタノール抽出エキスの分離及び精製
上記メタノール抽出エキス(160g)を順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(3.2kg,移動相:メタノール/クロロホルム/水(10/3/1(下層)→7/3/1,(下層)→6/4/1)→メタノール)で順次溶出し、溶出各分1(5.04g)、2(9.84g)、3(7.80g)、4(13.28g)、5(113.60g)、6(7.61g)を得た。
このうち、溶出各分1(5.00g)について、逆相ODSカラムクロマトグラフィー(150g,移動相:メタノール/水(40/60→60/40)→メタノール)及びHPLC(移動相:メタノール/水(2/98,10/90又は35/65))にて分離、精製し、カンカノール(kankanol)(10)(20mg,0.0034%)、アリゴール(arygol,18mg,0.0030%)、シスタニン(cistanin,24mg,0.0040%)、(3R)−3−ヒドロキシー2−ピロリジノン((3R)−3−hydoxy−2−pyrrolidinone,12mg,0.0020%)、(3R)−3−ヒドロキシー1−メチルー2−ピロリジノン((3R)−3−hydoxy−1−methyl−2−pyrrolidinone,38mg,0.0059%)、シスタンクロリン(cistanchlorin,21mg,0.0035%)、3−メチルブタノール β−D−グルコピラノシド(3−methylbutanol β−D−glucopyranoside,18mg,0.0030%)、(+)−ピノレシノール 4’−O−β−D−グルコピラノシド((+)−pinoresinol 4’−O−β−D−glucopyranoside,96mg,0.016%)及び(+)−シリンガレジノール 4’−O−β−D−グルコピラノシド((+)−syringaresinol 4’−O−β−D−glucopyranoside,96mg,0.016%)を得た。
溶出各分2(9.72g)について、逆相ODSカラムクロマトグラフィー(290g,移動相:メタノール/水(20/80→30/70→40/60→60/40)→メタノール)及びHPLC(移動相:メタノール/水(5/95,10/90,20/80,30/70及び45/55))にて分離、精製し、ウリジン(uridine,42mg,0.0069%)、アンテリド(antirrhide,15mg,0.0079%)、6−デオキシカタルポール(6−deoxycatalpol,214mg,0.11%)、サリドロシド(salidroside,166mg,0.044%)、グルロシド(gluroside,808mg,0.014%)、バルトシオシド(bartsioside,1205mg,0.021%)、カンカノシドA(kankanoside A)(6)(32mg,0.0054%)、カンカノシドD(kankanoside D)(9)(9mg,0.0015%)、カンカノシドE(kankanoside E)(11)(16mg,0.027%)、(2E,6R)−8−β−D−グルコピラノシルオキシ−2,6−ジメチル−2,6−オクタジエノン酸((2E,6R)−8−β−D−glucopyranyloxy−2,6−dimethyl−2,6−octadienoic acid,17mg,0.0028%)を得た。
溶出各分3(7.60g)について、逆相ODSカラムクロマトグラフィー(230g,移動相:メタノール/水(20/80→40/60→50/50→60/40)→メタノール)及びHPLC(移動相:メタノール/水(10/90及び40/60))にて分離、精製し、カンカノシドB(kankanoside B)(7)(105mg,0.018%),ゲニポシド酸(geniposidic acid,177mg,0.030%)、アユゴール(ajugol,66mg,0.011%)、アクテオシド(acteoside,1819mg,0.31%)、イソアクテオシド(isoacteoside)、(2.559mg,0.096%)、2’アセチルアクテオシド(2’−acetylacteoside,99mg,0.017%)、カンカノシドG(kankanoside G)(4)(17mg,0.0029%)及びツブロシドB(tubuloside B,21mg,0.0036%)を得た。
溶出各分4(13.10g)について、逆相ODSカラムクロマトグラフィー(390g,移動相:メタノール/水(10/90→20/80→30/70→40/60→50/50)→メタノール)にて分離し、溶出各分4−1(6114mg)、4−2(430mg)、4−3(1058mg)、4−4(170mg)、4−5(=エチナコシド(echinacoside)(1.2595mg,0.44%))、4−6(1635mg)、4−7(1064mg)を得た。このうち、溶出各分4−2(430mg)について、更にHPLC(移動相:メタノール/水(5/95))にて分離、精製し、カンカノシドB(kankanoside B)(7)(70mg,0.012%)及びカンカノシドC(kankanoside C)(8)(16mg,0.0027%)を得た。また、溶出各分4−6(1058mg)について、更にHPLC(移動相:メタノール/水(15/85))にて分離、精製し、ムッサエンドノシド酸(mussaendonosidic acid,116mg,0.020%)、8−エピロガニン酸(8−epiloganic acid,193mg,0.033%)及びアクテオシド(acteoside,254mg,0.065%)を得た。
溶出各分5(15.15g)について、逆相ODSカラムクロマトグラフィー(455g,移動相:水→メタノール/水(10/90→20/80→40/60→50/50)→メタノール)にて分離し、溶出各分5−1(9311mg)、5−2(1114mg)、5−3(306mg)、5−4(347mg)、5−5(=エチナコシド(echinacoside)(1)(1620mg,2.03%))、5−6(1453mg)、5−7(1106mg)を得た。このうち、溶出各分5−1(9311mg)について、メタノールで再結晶したところ、D−マンニトール(D−mannitol,3337mg,4.19%)を得た。また、溶出各分5−2(1114mg)について、更にHPLC(移動相:メタノール/水(10/90))にて分離、精製し、カンカノシドG(kankanoside G)(4)(24mg,0.030%)を得た。また、溶出各分5−3(306mg)について、更にHPLC(移動相:メタノール/水(15/85))にて分離、精製し、カンカノシドF(kankanoside F)(3)(13mg,0.016%)を得た。また、溶出各分5−4(347mg)について、更にHPLC(移動相:メタノール/水(10/90))にて分離、精製し、カンカノシドH(kankanoside H)(5)(30mg,0.038%)及びシスタノシドF(cistanoside F,20mg,0.025%)を得た。また、溶出各分5−6(530mg)について、更にHPLC(移動相:メタノール/水(35/65))にて分離、精製し、エチナコシド(echinacoside)(1)(185mg,0.62%)、アクテオシド(acteoside,91mg,0.30%)及びツブロシドA(tubuloside A,16mg,0.052%)を得た。
(3)新規化合物の構造及び物性
上記で得られた新規化合物、カンカノシドF(3)、G(4)、H(5)、A(6)、B(7)、C(8)、D(9)、カンカノール(10)及びカンカノシドH(11)の構造式を以下に示す。なお、以下のH−NMR及び13C−NMRによる構造解析に用いたナンバリングは、次式に基づいている。
Figure 0004936507
次に、上記で得られた新規化合物の物性値等を以下に示す。
カンカノシドF(kankanoside F)(3)の物性値
性状:白色粉末
旋光度:[α] 28 44.8° (c=0.50,MeOH)
高分解能質量分析(High−resolution positive−ion FAB−MS):
理論値 C264017Na (M+Na):647.2163
実測値 :647.2160
紫外吸収スペクトル(MeOH,nm (logε)):224 (3.83),283 (3.37)
赤外吸収スペクトル(KBr,cm):3432,2940,1560,1508,1458,1075,1044
質量分析
positive−ion FAB−MS: m/z 647 (M+Na)
negative−ion FAB−MS: m/z 623 (M−H),477 (M−C11,461 (M−C11,315 (M−C1221
核磁気共鳴スペクトル:
H−NMR(500 MHz,メタノール−d):δ (表1に示す)。
13C−NMR(125 MHz,メタノール−d):δ (表1に示す)。
カンカノシドG(kankanoside G)(4)の物性値
性状:白色粉末
旋光度:[α] 26 35.0° (c=0.80,MeOH)
高分解能質量分析(High−resolution positive−ion FAB−MS):
理論値 C293614Na (M+Na)+:631.2003
実測値 :631.1996
紫外吸収スペクトル(MeOH,nm (logε)):329 (4.10)
赤外吸収スペクトル(KBr,cm):3432,2924,1709,1638,1518,1447,1264,1040
質量分析
positive−ion FAB−MS: m/z 631 (M+Na)
negative−ion FAB−MS: m/z 607 (M−H),461 (M−C11
核磁気共鳴スペクトル:
H−NMR(500 MHz,メタノール−d):δ (表1に示す)。
13C−NMR(125 MHz,メタノール−d):δ (表1に示す)。
Figure 0004936507
カンカノシドH(kankanoside H)(5)の物性値
性状:白色粉末
旋光度:[α] 27 35.3° (c=0.50,MeOH)
高分解能質量分析(High−resolution positive−ion FAB−MS):
理論値 C273818Na (M+Na):673.1956
実測値 :673.1959
紫外吸収スペクトル(MeOH,nm (logε)):219 (4.10),247 (3.96),333 (4.21)
赤外吸収スペクトル(KBr,cm):3430,2962,1702,1639,1611,1458,1264,1071
質量分析
positive−ion FAB−MS: m/z 673 (M+Na)
negative−ion FAB−MS: m/z 649 (M−H),487 (M−C,325 (M−C1518
核磁気共鳴スペクトル:
H−NMR(500 MHz,メタノール−d):δ (表2に示す)。
13C−NMR(125 MHz,メタノール−d):δ (表2に示す)。
Figure 0004936507
カンカノシドA(kankanoside A)(6)の物性値
性状:無定形粉末
旋光度:[α] 25 107.4° (c=1.50,MeOH)
高分解能質量分析(High−resolution positive−ion FAB−MS):
理論値 C1626Na (M+Na):369.1525
実測値 :369.1555
赤外吸収スペクトル(KBr,cm):3410,2940,1647,1076
質量分析
positive−ion FAB−MS: m/z 369 (M+Na)
negative−ion FAB−MS: m/z 345 (M−H)
核磁気共鳴スペクトル:
H−NMR(500 MHz,メタノール−d):δ (表3に示す)。
13C−NMR(125 MHz,メタノール−d):δ (表4に示す)。
カンカノシドB(kankanoside B)(7)の物性値
性状:無定形粉末
旋光度:[α] 26 118.7° (c=0.10,MeOH)
高分解能質量分析(High−resolution positive−ion FAB−MS):
理論値 C152410Na (M+Na):387.1267
実測値 :387.1261
赤外吸収スペクトル(KBr,cm):3410,2940,1647,1085
質量分析
positive−ion FAB−MS: m/z 387 (M+Na)
negative−ion FAB−MS: m/z 363 (M−H)
核磁気共鳴スペクトル:
H−NMR(500 MHz,メタノール−d):δ (表3に示す)。
13C−NMR(125 MHz,メタノール−d):δ (表4に示す)。
カンカノシドC(kankanoside C)(8)の物性値
性状:無定形粉末
旋光度:[α] 26 34.0° (c=1.00,MeOH)
高分解能質量分析(High−resolution negative−ion FAB−MS):
理論値 C1524ClO10 (M−H):399.1058
実測値 :399.1077
赤外吸収スペクトル(KBr,cm):3410,2964,1159,1078,1048,949
質量分析
negative−ion FAB−MS: m/z 399,401 (M−H)
核磁気共鳴スペクトル:
H−NMR(500 MHz,メタノール−d):δ (表3に示す)。
13C−NMR(125 MHz,メタノール−d):δ (表4に示す)。
カンカノシドD(kankanoside D)(9)の物性値
性状:無定形粉末
旋光度:[α] 25 30.6° (c=0.50,MeOH)
高分解能質量分析(High−resolution positive−ion FAB−MS):
理論値 C1526Na (M+Na):341.1204
実測値 :341.1210
赤外吸収スペクトル(KBr,cm):3410,2940,1655,1078,1040
質量分析
positive−ion FAB−MS: m/z 341 (M+Na)
negative−ion FAB−MS: m/z 317 (M−H)
核磁気共鳴スペクトル:
H−NMR(500 MHz,メタノール−d):δ (表5に示す)。
13C−NMR(125 MHz,メタノール−d):δ (表6に示す)。
カンカノール(kankanol)(10)の物性値
性状:無定形粉末
旋光度:[α] 25 +11.1° (c=1.40,MeOH)
高分解能質量分析(High−resolution positive−ion CI−MS):
理論値 C14ClONa (M+H):221.0580
実測値 :221.0582
赤外吸収スペクトル(KBr,cm):3399,3004,1165,1096,1059,1048,955
質量分析
positive−ion CI−MS m/z(%):221 (M+H)(5),223 (M+H)(2),203 (M−HO)(5),205 (M−HO)(2),185(88),167(100),149(71),57(49)
核磁気共鳴スペクトル:
H−NMR(500 MHz,メタノール−d):δ (表3に示す)。
13C−NMR(125 MHz,メタノール−d):δ (表4に示す)。
カンカノシドE(kankanoside E)(11)の物性値
性状:無定形粉末
旋光度:[α] 25 20.0° (c=2.00,MeOH)
高分解能質量分析(High−resolution positive−ion FAB−MS):
理論値 C1628Na (M+Na):371.1682
実測値 :371.1690
紫外吸収スペクトル(MeOH,nm (logε)):215 (4.16)
赤外吸収スペクトル(KBr,cm):3410,2940,1647,1085,1043
質量分析
positive−ion FAB−MS: m/z 371 (M+Na)
negative−ion FAB−MS: m/z 347 (M−H)
核磁気共鳴スペクトル:
H−NMR(500 MHz,メタノール−d):δ (表5に示す)。
13C−NMR(125 MHz,メタノール−d):δ (表6に示す)。
Figure 0004936507
Figure 0004936507
Figure 0004936507
Figure 0004936507
実施例3
(4)ラット胸部大動脈を用いたマグヌス法によるノルアドレナリン誘発血管収縮抑制作用
カンカニクジュヨウ抽出液又は抽出エキス及び式(1)〜式(5)で表される化合物の強壮、強精作用の指標として、ラット胸部大動脈を用いたマグヌス法によるノルアドレナリン誘発血管収縮に対する弛緩作用(血管拡張作用)について試験を実施した。試験方法を以下に示す。
ラット胸部大動脈の摘出および組織切片の調製
Wistar系雄性ラット(体重250〜400g)の後頭部を強打後、頸動脈から放血致死され、大動脈弓から横隔膜に至る胸部大動脈を摘出した。血管に付着した脂肪及び結合組織を除去し、幅約2mm、長さ約15mmの螺旋状片を作製した。これを37°Cに保温し、95%O−5%CO混合ガスを通気させたKrebes−Henseleit溶液で満たしたマグヌス管(容量6mL)に装着し、約1時間安定させた。
Krebes−Henseleit溶液の組成
NaCl 118.0 mM
KCl 4.7 mM
CaCl 2.5 mM
KHPO 1.2 mM
NaHCO 25.0 mM
MgSO 1.2 mM
glucose 10.0 mM
血管拡張作用試験
dl−ノルアドレナリン(dl−ノルアドレナリンの終濃度1μM)を添加して、血管を収縮させた後、栄養液で洗浄した。再びこの操作を繰り返し、収縮が安定していることを確認した。次に、被験物質のDMSO溶液(終濃度:0.1%)を加え、被験物質添加直後の収縮力を100(%)とし、被験物質添加の60分後まで経時的に収縮力の変化を測定した。比較対照物質としてはα1受容体拮抗薬プラゾシン(prazosin)を用いた。
抽出エキスについての試験結果
上記実施例1で得られたカンカニクジュヨウメタノール抽出エキスについて上記の試験を実施した。その結果を表7及び図1に示す。
Figure 0004936507
式(1)〜式(5)で表される化合物についての試験結果
上記実施例で得られた式(1)〜式(5)で表される化合物等について上記の試験を実施した。得られた結果を表8に示す。
Figure 0004936507
実施例3の試験結果を示すグラフ図である。

Claims (4)

  1. カンカニクジュヨウの肉質茎、又はそれを、水、低級脂肪族アルコールもしくはその含水物により抽出して得られる抽出液又は抽出エキスを有効成分として含むことを特徴とする血管弛緩剤
  2. 下記の式(1)〜式(5)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有することを特徴とする血管弛緩剤
    Figure 0004936507
  3. 下記の式(3)〜式(11)のいずれかで表されることを特徴とする配糖体化合物。
    Figure 0004936507
  4. 請求項3に記載の配糖体化合物を含有することを特徴とするヒト又は動物用の医薬又は食品。
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