JP4936016B2 - 多価アルコール含有重合性組成物、プリプレグ、及び積層体 - Google Patents

多価アルコール含有重合性組成物、プリプレグ、及び積層体 Download PDF

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Description

本発明は、重合性組成物、プリプレグ、及び積層体に関する。さらに詳しくは、高周波領域での誘電正接が極めて小さく、難燃性や層間密着性に優れた積層体の製造に有用な、重合性組成物及びプリプレグ、並びに該積層体に関する。
近年、高度情報化時代を迎え、情報伝送は高速化・高周波に動き出し、マイクロ波通信やミリ波通信が現実になってきている。これらの高周波化時代の回路基板には、高周波における伝送ロスを極限まで軽減するために誘電正接が極めて小さい誘電材料が求められている。また、回路基板は一般に誘電体層と導電性の金属層とから構成されるが、電気的信頼性を確保する為に、誘電体層と金属層との界面の密着性も要求される。
このような要求の中で、ポリブタジエン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマーなどは電気特性に優れた誘電材料として注目されているが、これらは炭化水素系ポリマーであるため非常に燃えやすく難燃性を付与するために、難燃剤を配合することが提案されている。
例えば、特許文献1には、ジシクロペンタジエンなどの分子内にメタセシス開環反応性部を2以上有する環状オレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、及び連鎖移動剤を含む反応液を140〜230℃の温度で塊状重合して熱可塑性樹脂を得、次いで該熱可塑性樹脂を加熱溶融し架橋する架橋樹脂の製造方法が開示されている。具体的には、テトラシクロドデセンと5−エチリデン−2−ノルボルネンとジシクロペンタジエンからなるモノマー液に連鎖移動剤としてのスチレンとメタセシス重合触媒を加えて反応液を調製し、150℃に加熱して重合させるとトルエンに可溶のフィルムが得られ、次いで該トルエン可溶フィルムを200℃に加熱した面状ヒーター上に置くと、一旦溶融したフィルムがトルエン不溶の架橋フィルムになることを開示している。また、本方法に使用される反応液には、ガラス繊維、紙基材などの強化材、リン酸エステル化合物、赤リン、ポリリン酸アンモニウムなどのリン系難燃剤を含む難燃剤、ガラス粉末、カーボンブラック、水酸化アルミニウムなどの無機充填剤などを含有してもよいことが記載されている。また、これら添加剤の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001〜10重量部の範囲であることが記載されている。
特許文献2には、芳香環を有するシクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、連鎖移動剤、架橋剤及び難燃剤等を含む重合性組成物を塊状重合して樹脂成形体を製造する方法が開示されている。具体的には、芳香環含有シクロオレフィンモノマーとジシクロペンタジエン、メタセシス重合触媒、及び難燃剤として赤燐、ポリリン酸アンモニウム及び水酸化アルミニウムの組み合わせを含む重合性組成物を70℃の金型内に移送し重合して成形物を得、または、シクロオレフィンモノマーとして芳香環含有シクロイオレフィンモノマー、テトラシクロドデセン及び2−ノルボルネン、メタセシス重合触媒、連鎖移動剤としてメタクリル酸アリル、架橋剤としてジ−t−ブチルペルオキシド及び難燃剤として水酸化マグネシウム、ポリリン酸メラミン及び赤燐の組み合わせを含む重合性組成物をガラスクロスに含浸させた後に重合し加熱硬化させて積層板を得ている。本報には、また、難燃剤を多量に添加できること、難燃剤として、ハロゲン系難燃剤;アンチモン系難燃剤;金属水酸化物系難燃剤;赤燐、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ポリリン酸アンモニウム、燐酸グアニジン、フォスファゼンなどの燐系難燃剤;窒素系難燃剤;などが使用できること、及び架橋剤、充填剤、強化材等を添加できることが記載されている。
特開2007−277572号公報 国際公開第2005/014690号パンフレット
しかしながら、これらの、シクロオレフィンモノマーを重合してなる、フィルムやプリプレグ、積層体の難燃化は、民生用途拡大により一層高いレベルが求められている。また、高周波回路基板における電気的信頼性の確保のため、誘電体層と金属層との間でより一層高いレベルの層間密着性が求められている。
本発明の目的は、高周波領域での誘電正接が極めて小さく、難燃性や層間密着性に優れた積層体の製造に有用な、重合性組成物及びプリプレグ、並びに該積層体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討の結果、シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤及びハロゲン系難燃剤を含む重合性組成物に多価アルコールを配合することにより、誘電正接が小さく、層間密着性や難燃性に優れるプリプレグや積層体が容易に得られることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、
〔1〕シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、ハロゲン系難燃剤、及び多価アルコールを含有してなる重合性組成物、
〔2〕架橋助剤をさらに含むものである前記〔1〕記載の重合性組成物、
〔3〕連鎖移動剤をさらに含むものである前記〔1〕又は〔2〕記載の重合性組成物、
〔4〕前記〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の重合性組成物を強化繊維に含浸させた後に重合してなるプリプレグ、並びに
〔5〕前記〔4〕に記載のプリプレグと、当該プリプレグ及び/又は他の材料とを積層した後、硬化してなる積層体、
が提供される。
本発明によれば、高周波領域での誘電正接が極めて小さく、難燃性や層間密着性に優れた積層体の製造に有用な、重合性組成物及びプリプレグ、並びに該積層体が提供される。本発明の積層体は、高周波領域での誘電正接が小さく、かつ層間密着性と難燃性に優れるため、幅広い用途で高周波基板材料として好適に使用することができる。
本発明の重合性組成物は、シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、ハロゲン系難燃剤、及び多価アルコールを含有してなる。本発明のプリプレグは、前記重合性組成物を強化繊維に含浸させた後に重合してなり、本発明の積層体は、前記プリプレグと、当該プリプレグ及び/又は他の材料とを積層した後、硬化してなる。
(シクロオレフィンモノマー)
本発明に使用されるシクロオレフィンモノマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、かつ該環構造中に重合性の炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物である。本明細書において「重合性の炭素−炭素二重結合」とは、連鎖重合(開環重合)可能な炭素−炭素二重結合をいう。開環重合には、イオン重合、ラジカル重合、メタセシス重合など種々の形態のものが存在するが、本発明においては、通常、メタセス開環重合をいう。
シクロオレフィンモノマーの環構造としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環及びこれらの組み合わせ多環などが挙げられる。各環構造を構成する炭素数に特に限定はないが、通常、4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。
シクロオレフィンモノマーは、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、アリール基などの炭素数1〜30の炭化水素基や、カルボキシル基又は酸無水物基などの極性基を置換基として有していてもよいが、得られる積層体を低誘電正接とする観点から、極性基を持たない、すなわち、炭素原子と水素原子のみで構成されるものが好ましい。
シクロオレフィンモノマーとしては、単環のシクロオレフィンモノマーと多環のシクロオレフィンモノマーのいずれをも用いることができる。得られる積層体の耐熱性と誘電特性を高度にバランスさせる観点から、多環のシクロオレフィンモノマーが好ましい。多環のシクロオレフィンモノマーとしては、特にノルボルネン系モノマーが好ましい。「ノルボルネン系モノマー」とは、ノルボルネン環構造を分子内に有するシクロオレフィンモノマーをいう。例えば、ノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類、テトラシクロドデセン類などが挙げられる。
シクロオレフィンモノマーは、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないものと、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するものとに分けられる。本明細書において「架橋性の炭素−炭素不飽和結合」とは、開環重合には関与せず、架橋反応に関与可能な炭素−炭素不飽和結合をいう。架橋反応とは橋架け構造を形成する反応であり、縮合反応、付加反応、ラジカル反応、メタセシス反応など種々の形態のものが存在するが、本発明においては、通常、ラジカル架橋反応又はメタセシス架橋反応、特にラジカル架橋反応をいう。架橋性の炭素−炭素不飽和結合としては、芳香族炭素−炭素不飽和結合を除く炭素−炭素不飽和結合、すなわち、脂肪族炭素−炭素二重結合又は三重結合が挙げられ、本発明においては、通常、脂肪族炭素−炭素二重結合をいう。架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマー中、不飽和結合の位置は特に限定されるものではなく、炭素原子で形成される環構造内の他、該環構造以外の任意の位置、例えば、側鎖の末端や内部に存在していてもよい。
架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとしては、例えば、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3,5−ジメチルシクロペンテン、3−クロロシクロペンテン、シクロへキセン、3−メチルシクロへキセン、4−メチルシクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロヘキセン、3−クロロシクロヘキセン、シクロへプテンなどの単環シクロオレフィンモノマー;ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,5,6−トリメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、テトラシクロドデセン(TCD)、1,4−メタノ−1.4.4a.9aテトラヒドロフルオレン(MTF)、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−シクロへキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、5−クロロノルボルネン、5,5−ジクロロノルボルネン、5−フルオロノルボルネン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチルノルボルネン、5−クロロメチルノルボルネン、5−メトキシノルボルネン、5,6−ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5−ジメチルアミノノルボルネン、5−シアノノルボルネンなどのノルボルネン系モノマー;を挙げることができ、好ましくは架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないノルボルネン系モノマーである。
架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマーとしては、例えば、3−ビニルシクロヘキセン、4−ビニルシクロヘキセン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロへキサジエン、1,4−シクロへキサジエン、5−エチル−1,3−シクロへキサジエン、1,3−シクロへプタジエン、1,3−シクロオクタジエンなどの単環シクロオレフィンモノマー;5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−アリルノルボルネン、5,6−ジエチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエンなどのノルボルネン系モノマー;を挙げることができ、好ましくは架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するノルボルネン系モノマーである。
これらのシクロオレフィンモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明に使用されるシクロオレフィンモノマーとしては、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマーを含むものが、得られる積層体において耐クラック性等の信頼性が向上し、好適である。
本発明の重合性組成物に配合するシクロオレフィンモノマー中、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマーと架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとの配合割合は所望により適宜選択されるが、重量比(架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマー/架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマー)で、通常、5/95〜100/0、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは15/85〜70/30の範囲である。当該配合割合がかかる範囲にあれば、得られる積層体において層間密着性、耐熱性及び難燃性等の特性が高度にバランスされ、好適である。
(重合触媒)
本発明に使用される重合触媒としては、前記シクロオレフィンモノマーを重合できるものであれば特に限定はないが、本発明の重合性組成物は、後述のプリプレグの製造において、直接塊状重合に供して用いるのが好適であり、通常、メタセシス重合触媒を用いるのが好ましい。
メタセシス重合触媒としては、前記シクロオレフィンモノマーをメタセシス開環重合可能である、通常、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオン、及び化合物などが結合してなる錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、第5族、第6族及び第8族(長周期型周期表による。以下、同じ。)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、第5族の原子としては、例えば、タンタルが挙げられ、第6族の原子としては、例えば、モリブデンやタングステンが挙げられ、第8族の原子としては、例えば、ルテニウムやオスミウムが挙げられる。遷移金属原子としては中でも、第8族のルテニウムやオスミウムが好ましい。すなわち、本発明に使用されるメタセシス重合触媒としては、ルテニウム又はオスミウムを中心原子とする錯体が好ましく、ルテニウムを中心原子とする錯体がより好ましい。ルテニウムを中心原子とする錯体としては、カルベン化合物がルテニウムに配位してなるルテニウムカルベン錯体が好ましい。ここで、「カルベン化合物」とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子(カルベン炭素)を持つ化合物をいう。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性に優れるため、本発明の重合性組成物を塊状重合に供してプリプレグを得る場合、得られるプリプレグには未反応のモノマーに由来する臭気が少なく、生産性良く良質なプリプレグが得られる。また、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも使用可能である。
前記ルテニウムカルベン錯体としては、得られるプリプレグ及び積層体の機械強度と耐衝撃性とが高度にバランスされ得ることから、ヘテロ環構造を有するカルベン化合物を配位子として少なくとも1つ有するものが好ましい。ヘテロ環構造を構成するヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子等が挙げられ、好ましくは窒素原子である。また、ヘテロ環構造としては、イミダゾリン環構造又はイミダゾリジン環構造が好ましい。かかるヘテロ環構造を有する化合物の具体例としては、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどが挙げられる。
本発明においてメタセシス重合触媒として使用される、好適なルテニウムカルベン錯体の具体例としては、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリドなどの、配位子として、ヘテロ環構造を有するカルベン化合物と、その他の中性電子供与体とを有するルテニウムカルベン錯体が挙げられる。ここで「中性電子供与体」とは、中心金属原子から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子をいう。
前記メタセシス重合触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。メタセシス重合触媒の使用量は、モル比(メタセシス重合触媒中の金属原子:シクロオレフィンモノマー)で、通常、1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。
メタセシス重合触媒は所望により、少量の不活性溶媒に溶解又は懸濁して使用することができる。かかる溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、ミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;インデン、テトラヒドロナフタレンなどの脂環と芳香環とを有する炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素;などが挙げられる。これらの中では、鎖状脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、及び脂環と芳香環とを有する炭化水素の使用が好ましい。
(架橋剤)
本発明で使用される架橋剤は、本発明の重合性組成物を重合反応に供して得られる重合体において架橋反応を誘起する目的で使用される。従って、該重合体は、後架橋可能な熱可塑性樹脂となる。本発明において架橋剤としては、通常、ラジカル発生剤が好適に用いられる。ラジカル発生剤としては、例えば、有機過酸化物、ジアゾ化合物、及び非極性ラジカル発生剤などが挙げられ、好ましくは有機過酸化物、及び非極性ラジカル発生剤である。
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどのペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオキシド類;3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン、3,6−ジエチル−3,6−ジメチル−1,2,4,5−テトロキサンなどの環状パーオキサイド類;が挙げられる。中でも、重合反応に対する障害が少ない点で、ジアルキルペルオキシド類、ペルオキシケタール類、及び環状パーオキサイド類が好ましい。
ジアゾ化合物としては、例えば、4,4’−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノンなどが挙げられる。
非極性ラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタンなどが挙げられる。
ラジカル発生剤を架橋剤として使用する場合、1分間半減期温度は、硬化(本発明の重合性組成物を重合反応に供して得られる重合体の架橋)の条件により適宜選択されるが、通常、100〜300℃、好ましくは150〜250℃、より好ましくは160〜230℃の範囲である。ここで1分間半減期温度は、ラジカル発生剤の半量が1分間で分解する温度である。ラジカル発生剤の1分間半減期温度は、例えば、各ラジカル発生剤メーカー(例えば、日本油脂株式会社)のカタログやホームページを参照すればよい。
前記ラジカル発生剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の重合性組成物へのラジカル発生剤の配合量としては、配合するシクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
(ハロゲン系難燃剤)
本発明に使用されるハロゲン系難燃剤は、工業的に使用されるものであれば格別な限定なく用いることができる。ハロゲン系難燃剤の具体例としては、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、塩素化ポリスチレン、塩素化ポリエチレン、高塩素化ポリプロピレン、クロロスルホン化ポリエチレンなどの塩素含有難燃剤、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルオキシド、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールS、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニルプロパン)、ペンタブロモトルエンなどの臭素含有難燃剤などが挙げられる。得られる積層体において大きなQ値(誘電正接の逆数)と高い難燃性とをより高度にバランスさせる観点から、ハロゲン系難燃剤としては臭素含有難燃剤が好適である。
本発明に使用されるハロゲン系難燃剤中のハロゲン含有量は、所望により適宜選択すればよいが、通常、30重量%以上、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%の範囲である。ハロゲン系難燃剤の融点、軟化点、分解温度、ガラス転移温度等は、所望により適宜選択すればよいが、前記特性のいずれもが、通常、200℃以上、好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上であるのが好適である。
これらのハロゲン系難燃剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。公知の難燃助剤を共に配合してもよい。ハロゲン系難燃剤の配合量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、10〜300重量部、好ましくは20〜200重量部、より好ましくは30〜150重量部の範囲である。
(多価アルコール)
多価アルコールは、主として難燃助剤として機能するものと推定されるが、多価アルコールを含む、本発明の重合性組成物より得られる積層体では、難燃性が向上し、成形加工時や燃焼時の腐食性ガスの発生が抑制されると共に、層間密着性、誘電特性、及び機械強度などが優れたものとなる。
本発明に用いられる多価アルコールとしては、特に限定されるものではないが、水酸基数が、通常、2以上、好ましくは3以上であって、水酸基濃度が多価アルコール1gに対し1×10−2〜3.5×10−2当量であるものが好ましい。
かかる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAなどの2価のアルコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリストールなどの3価以上のアルコールなどが挙げられ、好ましくは3価以上のアルコールである。
これらの多価アルコールは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。多価アルコールの配合量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部、より好ましくは3〜15重量部の範囲である。多価アルコールがこの範囲にあれば、難燃性と層間密着性とが高度にバランスされ好適である。
(重合性組成物)
本発明の重合性組成物には、上記する、シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、ハロゲン系難燃剤、及び多価アルコールを必須成分として、所望により、重合調整剤、重合反応遅延剤、連鎖移動剤、架橋助剤、充填剤、老化防止剤及びその他の配合剤を添加することができる。
重合調整剤は、重合活性を制御したり、重合反応率を向上させたりする目的で配合されるものであり、例えば、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。これらの重合調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合調整剤の配合量は、例えば、モル比(メタセシス重合触媒中の金属原子:重合調整剤)で、通常、1:0.05〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:20、より好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
重合反応遅延剤は、本発明の重合性組成物の粘度増加を抑制し得るものである。従って、重合反応遅延剤を配合してなる重合性組成物は、プリプレグを作製する際、容易に強化繊維に均一に含浸させることができ、好ましい。重合反応遅延剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ビニルジフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、スチリルジフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物;アニリン、ピリジンなどのルイス塩基;等を用いることができる。その配合量は、所望により適宜調整すればよい。
本発明の重合性組成物に連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体を高粘度でありながら、流動性に優れたものとすることができ、当該重合体を含んでなる、後述のプリプレグは、例えば、他の材料と積層する際、溶融積層が可能となる。また、得られる積層体にあっては、層間密着性及び耐熱性が一層向上し得る。
連鎖移動剤は、開環重合に関与でき、本発明の重合性組成物を重合反応に供して得られる重合体の末端に結合可能な脂肪族炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物である。当該二重結合の例としては、末端ビニル基が挙げられる。連鎖移動剤は、積層体の層間密着性や耐熱性を向上させる観点から、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するのが好ましい。
かかる連鎖移動剤の具体例としては、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、アリルアミン、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、4−ビニルアニリンなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たない連鎖移動剤;ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、アクリル酸アリル、メタクリル酸ウンデセニル、アクリル酸スチリル、エチレングリコールジアクリレートなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1つ有する連鎖移動剤;アリルトリビニルシラン、アリルメチルジビニルシランなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を2以上有する連鎖移動剤などが挙げられる。これらの中でも、得られる積層体において、誘電特性、層間密着性や耐熱性等と難燃性を高度にバランスさせる観点から、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するものが好ましく、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1つ有するものがより好ましい。かかる連鎖移動剤の中でも、ビニル基とメタクリル基とを1つずつ有する連鎖移動剤が好ましく、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、メタクリル酸ウンデセニルなどが特に好ましい。
これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の重合性組成物への連鎖移動剤の配合量としては、配合するシクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
架橋助剤の配合は、得られる積層体の層間密着性や耐熱性を高度に改善でき好適である。架橋助剤としては、開環重合に関与せず、架橋剤により誘起される架橋反応に関与可能な架橋性の炭素−炭素不飽和結合を2以上有する多官能性架橋助剤が好適に用いられる。かかる架橋性の炭素−炭素不飽和結合は、架橋助剤を構成する化合物中、例えば、末端ビニリデン基として、中でも、イソプロペニル基やメタクリル基として、特にメタクリル基として存在するのが好ましい。
架橋助剤の具体例としては、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、o−ジイソプロペニルベンゼンなどの、イソプロペニル基を2以上有する多官能性架橋助剤;エチレンジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−ブチレンジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレートなどの、メタクリル基を2以上有する多官能性架橋助剤などを挙げることができる。中でも、架橋助剤としては、メタクリル基を2以上有する多官能性架橋助剤が好ましい。メタクリル基を2以上有する多官能性架橋助剤の中では、特に、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレートなどの、メタクリル基を3つ有する多官能性架橋助剤がより好適である。
前記架橋助剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の重合性組成物への架橋助剤の配合量としては、配合するシクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部である。
充填剤の配合は、得られる積層体において誘電正接や耐熱性等の特性を高度に向上させることができ、好適である。本発明の重合性組成物は、従来、プリプレグや積層体の製造に用いられているエポキシ樹脂等の重合体ワニスと比べて低粘度であるため、容易に充填剤を高配合することができる。よって、得られるプリプレグ又は積層体中には、充填剤が、従来のプリプレグ又は積層体の限界含有量を超えて含まれ得る。従って、本発明の積層体の前記特性は、従来の積層体と比べて、格別顕著に優れたものとなる。
充填剤としては、工業的に一般に使用されるものであれば格別な限定はなく、無機充填剤や有機充填剤のいずれも用いることができるが、好適には無機充填剤である。
無機充填剤としては、例えば、鉄、銅、ニッケル、金、銀、アルミニウム、鉛、タングステン等の金属粒子;カーボンブラック、グラファイト、活性炭、炭素バルーン等の炭素粒子;シリカ、シリカバルーン、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化すず、酸化ベリリウム、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の無機酸化物粒子;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム等の無機炭酸塩粒子;硫酸カルシウム等の無機硫酸塩粒子;タルク、クレー、マイカ、カオリン、フライアッシュ、モンモリロナイト、ケイ酸カルシウム、ガラス、ガラスバルーン等の無機ケイ酸塩粒子;チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛等のチタン酸塩粒子、窒化アルミニウム、炭化ケイ素粒子やウィスカー等が挙げられる。
有機充填剤としては、例えば、木粉、デンプン、有機顔料、ポリスチレン、ナイロン、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、塩化ビニル、各種エラストマー、廃プラスチック等の粒子化合物が挙げられる。
これらの充填剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、配合するシクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、50重量部以上、好ましくは50〜1,000重量部、より好ましくは50〜750重量部、さらに好ましくは50〜500重量部の範囲である。
また、老化防止剤として、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、リン系老化防止剤及びイオウ系老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の老化防止剤を配合することは、架橋反応を阻害しないで、得られる積層体の耐熱性を高度に向上させることができ、好適である。これらの中でも、フェノール系老化防止剤とアミン系老化防止剤が好ましく、フェノール系老化防止剤がより好ましい。これらの老化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。老化防止剤の使用量は、所望により適宜選択されるが、配合するシクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜2重量部の範囲である。
本発明の重合性組成物には、その他の配合剤を配合することができる。その他の配合剤としては、その他の難燃剤、着色剤、光安定剤、顔料、発泡剤などを用いることができる。その他の難燃剤としては、ホスフィン酸塩以外の含リン難燃剤、含窒素難燃剤、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物などが挙げられる。着色剤としては、染料、顔料などが用いられる。染料の種類は多様であり、公知のものを適宜選択して使用すればよい。これらのその他の配合剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
本発明の重合性組成物は、上記成分を混合して得ることができる。混合方法としては、常法に従えばよく、例えば、重合触媒を適当な溶媒に溶解若しくは分散させた液(触媒液)を調製し、別にシクロオレフィンモノマーや架橋剤などの必須成分、及び所望によりその他の配合剤を配合した液(モノマー液)を調製し、該モノマー液に該触媒液を添加し、攪拌することによって調製することができる。
(強化繊維)
本発明に使用される強化繊維としては、格別な制限はないが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、液晶ポリエステル繊維などの有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、ブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、シリカ繊維などの無機繊維;などを挙げることができる。これらの中でも、有機繊維やガラス繊維が好ましく、特にアラミド繊維、液晶ポリエステル繊維、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、Eガラス、NEガラス、Sガラス、Dガラス、Hガラス等の繊維が好適に用いることができる。
これらの強化繊維は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、所望により適宜選択されるが、プリプレグあるいは積層体中の、通常、10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の範囲であり、この範囲にあれば、得られる積層体の誘電特性と機械強度が高度にバランスされ、好適である。
(プリプレグ)
本発明のプリプレグは、前記重合性組成物を前記強化繊維に含浸させた後に重合してなるものである。
重合性組成物の強化繊維への含浸は、例えば、重合性組成物の所定量を、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法等の公知の方法により強化繊維に塗布し、所望によりその上に保護フィルムを重ね、上側からローラーなどで押圧することにより行うことができる。本発明においては、重合性組成物を強化繊維に含浸させた後、含浸物を所定温度に加熱することにより、重合性組成物を塊状重合させることができ、それによってシート状又はフィルム状のプリプレグが得られる。
含浸を型内で行う場合は、型内に強化繊維を設置し、該型内に重合性組成物を注ぎ込んで行う。この方法によれば、任意の形状のプリプレグを得ることができる。その形状としては、シート状、フィルム状、柱状、円柱状、多角柱状等が挙げられる。ここで用いる型としては、従来公知の成形型、例えば、割型構造、すなわち、コア型とキャビティー型を有する成形型を用いることができ、それらの空隙部(キャビティー)に重合性組成物を注入して塊状重合させる。コア型とキャビティー型は、目的とするプリプレグの形状にあった空隙部を形成するように作製される。また、成形型の形状、材質、大きさなどは特に制限されない。また、ガラス板や金属板などの板状成形型と所定の厚さのスペーサーとを用意し、スペーサーを2枚の板状成形型で挟んで形成される空間内に重合性組成物を注入し、該型内で硬化を行うことにより、シート状又はフィルム状のプリプレグを得ることができる。
本発明の重合性組成物は、エポキシ樹脂等を溶媒に溶かしてなる従来の重合体ワニスと比較して低粘度であり、強化繊維に対する含浸性に優れるので、重合で得られる樹脂を強化繊維基材に均一に含浸させることができる。前記樹脂を構成する重合体は、実質的に架橋構造を有さず、例えば、トルエンに可溶である。当該重合体の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(溶離液:テトラヒドロフラン)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜100,000の範囲である。
本発明の重合性組成物は、通常、メタセシス重合触媒を含んでなる。上記いずれの方法においても、重合性組成物を重合させるための加熱温度は、通常、50〜250℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜170℃の範囲であって、かつ架橋剤、通常、ラジカル発生剤の1分間半減期温度以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは20℃以下である。また、重合時間は適宜選択すればよいが、通常、10秒間から60分間、好ましくは20分間以内である。重合性組成物をかかる条件で加熱することにより未反応モノマーの少ないプリプレグが得られるので好適である。
本発明のプリプレグの厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常、0.001〜10mm、好ましくは0.01〜1mm、より好ましくは0.05〜0.5mmの範囲である。この範囲にあれば、積層時の賦形性、また、硬化して得られる積層体の機械強度や靭性の特性が充分に発揮され好適である。
本発明のプリプレグの揮発成分量は、200℃で1時間加熱したときに揮発する量で、通常、30重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、もっとも好ましくは1重量%以下である。プリプレグの揮発成分量が過度に多いと、プリプレグのベタつきが発生し操作性及び保存安定性が不良化する傾向がある。
(積層体)
本発明の積層体は、本発明のプリプレグと、当該プリプレグ及び/又は当該プリプレグ以外の他の材料とを積層し、所望により更に賦形した後に、硬化することで製造することができる。
積層してもよい他の材料としては、使用目的に応じて適宜選択されるが、例えば、熱可塑性樹脂材料、金属材料などが挙げられ、特に金属材料が好適に用いられる。金属材料としては、回路基板で一般に用いられるものを格別な制限なく用いることができ、通常、金属箔、好ましくは銅箔が用いられる。金属材料の厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常、1〜50μm、好ましくは3〜30μm、より好ましくは5〜20μm、最も好ましくは5〜15μmの範囲である。また、金属材料は、その表面が、シランカップリング剤、チオール系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、各種接着剤などで処理されているものが好ましい。中でもシランカップリング剤で処理されているものがより好ましい。
本発明のプリプレグと、金属材料との接着界面における、金属材料からなる層表面の粗度(Rz)は、特に限定されないが、通常、2,500nm以下、好ましくは2,000nm以下、より好ましくは1,800nm以下、さらに好ましくは1,000nm以下である。一方、粗度の下限は、格別な限定はないが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。金属材料からなる層表面の粗度が上記範囲にあれば、高周波伝送に於けるノイズ、遅延、伝送ロス等の発生が抑えられ好ましい。金属材料からなる層表面の粗度の調整は、積層する金属材料表面の粗度が所望の範囲にあるものを選択して使用することにより容易に行うことができる。かかる表面粗度を有する金属材料は市販品より入手可能である。なお、粗度(Rz)は、AFM(原子間力顕微鏡)により測定可能である。
積層及び硬化させる方法は、常法に従えばよい。例えば、平板成形用のプレス枠型を有する公知のプレス機、シートモールドコンパウンド(SMC)やバルクモールドコンパウンド(BMC)などのプレス成形機を用いて熱プレスを行なうことができる。加熱温度は、架橋剤により架橋反応が誘起される温度以上である。例えば、架橋剤としてラジカル発生剤を使用する場合、通常、1分間半減期温度以上、好ましくは1分間半減期温度より5℃以上高い温度、より好ましくは1分間半減期温度より10℃以上高い温度である。典型的には、100〜300℃、好ましくは150〜250℃の範囲である。加熱時間は、0.1〜180分、好ましくは1〜120分、より好ましくは2〜60分の範囲である。プレス圧力としては、通常、0.1〜20MPa、好ましくは0.1〜10MPa、より好ましくは1〜5MPaである。また、熱プレスは、真空又は減圧雰囲気下で行ってもよい。
かくして得られる本発明の積層体は、高周波領域での伝送ロスが少なく、かつ層間密着性や難燃性に優れるため、広範囲の用途を有する高周波基板材料として好適に用いることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
実施例及び比較例における各特性は、下記の方法に従い測定、評価した。
(1)層間密着性
積層体における金属箔の引き剥がし強さをJIS C6481に基づいて測定し、以下の基準で評価した。
◎:0.5kN/m以上
○:0.4kN/mを超え、0.5kN/m未満
×:0.4kN/m未満
(2)難燃性
積層体の銅箔をエッチング処理により取り除いたものから短冊状試験片(14mm×125mm)を切り出し、炎を該試験片に10秒間接炎し、離炎後の有炎を観察し、以下の基準で評価した。
◎:離炎後の有炎はない
△:離炎後の有炎はあるが、間もなく消える
×:離炎後の有炎が上部まで達し、激しく燃えた
実施例1
ベンジリデン(1,3−ジメチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド51部と、トリフェニルホスフィン79部とを、トルエン952部に溶解させて触媒液を調製した。これとは別に、シクロオレフィンモノマーとして、テトラシクロドデセン(TCD)70部と1,4−メタノ−1.4.4a.9aテトラヒドロフルオレン(MTF)30部入れ、ここに連鎖移動剤としてジビニルベンゼンを1.2部、架橋剤としてメチルフェニルヘキサンを5部、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレート20部、フェノール系老化防止剤として3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール1.0部、ハロゲン系難燃剤としてビス(ペンタブロモフェニル)エタン(アルベマール社製、SAYTEX8010)を40部、難燃助剤として三酸化アンチモン(日本精鉱社製、PATOX−M)を15部、多価アルコールとしてペンタエリストールを2部加えた後、上記触媒液をシクロオレフィンモノマー100gあたり0.12mlの割合で加えて撹拌し、重合性組成物を調製した。
ついで、得られた重合性組成物をガラスクロス2112(Eガラス)に含浸させ、これを140℃、1分間で重合反応を行い、厚さ130μmのプリプレグを得た。また、プリプレグのガラスクロス含有量は40%であった。
次に作製したプリプレグシートを6枚重ね、さらに12μmF0銅箔(シランカップリング剤処理電解銅箔、粗度Rz=1,600nm、古河サーキットホイル社製)で、積層したプリプレグシートを挟み、220℃で2時間、3MPaにて加熱プレスを行い積層体を得た。得られた積層体の層間密着性、及び難燃性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例2
連鎖移動剤をアリルメタクリレートに変える以外は実施例1と同様にして積層体を得、各特性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例3
多価アルコールをトリメチロールプロパンに変える以外は実施例2と同様にして積層体を得、各特性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例4
シクロオレフィンモノマーを、テトラシクロドデセン(TCD)60部とジシクロペンタジエン(DCP)40部に変える以外は実施例1と同様にして積層体を得、各特性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例5
多価アルコールの配合量を5部に変える以外は実施例1と同様にして積層体を得、各特性を評価した。その結果を表1に示す。
比較例1
多価アルコールを用いない以外は実施例1と同様にして積層体を得、各特性を評価した。その結果を表1に示す。
Figure 0004936016
実施例1〜5で得られた積層体はいずれも層間密着性及び難燃性に優れていた。一方、重合性組成物に多価アルコールを配合しなかった比較例1で得られた積層体では層間密着性及び難燃性の点で劣る結果となった。

Claims (5)

  1. シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、ハロゲン系難燃剤、及び多価アルコールを含有してなる重合性組成物。
  2. 架橋助剤をさらに含むものである請求項1記載の重合性組成物。
  3. 連鎖移動剤をさらに含むものである請求項1または2記載の重合性組成物。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載の重合性組成物を強化繊維に含浸させた後に重合してなるプリプレグ。
  5. 請求項4に記載のプリプレグと、当該プリプレグおよび/または他の材料とを積層した後、硬化してなる積層体。
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