JP5434442B2 - 重合性組成物、樹脂成形体、及び積層体 - Google Patents
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Description
本発明の目的は、誘電正接が小さく、高いピール強度を有する積層体を与える重合性組成物及び架橋性樹脂成形体、並びに、これらを用いて得られる架橋樹脂成形体及び積層体を提供することである。
〔1〕アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー(A)、ビニル基及び/又はビニリデン基を有するシクロオレフィンモノマー(B)(ただし、(メタ)アクリロイル基を有するものを除く。)、及び、脂環構造内に架橋性の炭素−炭素不飽和結合を有するシクロオレフィンモノマー(C)(ただし、(メタ)アクリロイル基、ビニル基又はビニリデン基を有するものを除く。)を含む単量体混合物、メタセシス重合触媒、及び架橋剤を含有してなる重合性組成物であって、前記単量体混合物中における、前記(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー(A)の含有割合が0.1〜9モル%であり、前記単量体混合物中における、前記シクロオレフィンモノマー(A)と、前記シクロオレフィンモノマー(B)及び/又は前記シクロオレフィンモノマー(C)との比率が、「シクロオレフィンモノマー(A):シクロオレフィンモノマー(B)及び/又はシクロオレフィンモノマー(C)」の重量比で、0.1:100〜9:100である重合性組成物、
〔2〕前記シクロオレフィンモノマー(A)1モルに対して0.2〜10モルの連鎖移動剤をさらに含有する前記〔1〕に記載の重合性組成物、
〔3〕前記単量体混合物中における、前記シクロオレフィンモノマー(A)、シクロオレフィンモノマー(B)及びシクロオレフィンモノマー(C)の合計の含有量が20重量%以上である前記〔1〕または〔2〕に記載の重合性組成物、
〔4〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の重合性組成物を塊状重合してなる架橋性樹脂成形体、
〔5〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の重合性組成物を塊状重合してなる重合体を架橋してなる架橋樹脂成形体、並びに、
〔6〕少なくとも、前記〔4〕に記載の架橋性樹脂成形体、又は前記〔5〕に記載の架橋樹脂成形体を積層してなる積層体、
が提供される。
本発明で用いる単量体混合物は、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー(A)を0.1〜9モル%含有する。
本発明で用いるメタセシス重合触媒としては、上述した単量体混合物を構成する単量体をメタセシス開環重合できるものであれば良いが、通常、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオンおよび/または化合物が結合してなる錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、5族、6族及び8族(長周期型周期表、以下同じ)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、5族の原子としては例えばタンタルが挙げられ、6族の原子としては、例えばモリブデンやタングステンが挙げられ、8族の原子としては、例えばルテニウムやオスミウムが挙げられる。これらの中でも、8族のルテニウムやオスミウムの錯体をメタセシス重合触媒として用いることが好ましく、ルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性が優れるため、架橋性樹脂成形体の生産性に優れ、得られる架橋性樹脂成形体は、未反応のモノマーに由来する臭気が少なく、作業性に優れる。ルテニウムカルベン錯体は、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活し難いので、これを用いることにより、大気下での生産を可能とすることができる。
本発明で用いる架橋剤は、本発明の重合性組成物を塊状重合することにより得られる架橋性樹脂成形体において、架橋反応を誘起する目的で使用される。従って、得られる成形体は後架橋可能な熱可塑性樹脂からなるものとなる。ここで「後架橋可能な」とは、該樹脂を加熱することにより架橋反応を進行させて架橋樹脂になし得ることを意味する。当該樹脂を基材樹脂とする本発明の架橋性樹脂成形体は、加熱により溶融し、高粘度であるため、その形状は保持する一方、任意の部材を接触させた場合、その表面では、該部材の形状に対し追従性を発揮し、最終的に架橋して硬化する。本発明の架橋性樹脂成形体のかかる特性は、本発明の架橋性樹脂成形体を積層し、加熱して溶融、架橋して得られる積層体においてピール強度の向上に寄与するものと考えられる。
本発明の重合性組成物は、上記した単量体混合物、メタセシス重合触媒、及び架橋剤に加えて、連鎖移動剤を含有していることが好ましい。
本発明の重合性組成物は、上記単量体混合物、メタセシス重合触媒、架橋剤、及び所望により連鎖移動剤を含有してなるものである。また、本発明で用いる重合性組成物には、所望により、充填剤、難燃剤、重合調整剤、重合反応遅延剤、老化防止剤、その他の配合剤などを添加することができる。
本発明の架橋性樹脂成形体は、上述した本発明の重合性組成物を塊状重合することにより得られる。重合性組成物を塊状重合して架橋性樹脂成形体を得る方法としては、例えば、(a)重合性組成物を支持体上に塗布し、次いで塊状重合する方法、(b)重合性組成物を成形型内に注入し、次いで塊状重合する方法、(c)重合性組成物を繊維状強化材に含浸させ、次いで塊状重合する方法などが挙げられる。
本発明の架橋性樹脂成形体は、例えば、プリプレグとして、本発明の架橋樹脂成形体及び積層体の製造に好適に用いられる。
本発明の架橋樹脂成形体は、本発明の重合性組成物を塊状重合し、架橋してなるものである。かかる架橋樹脂成形体は、例えば、上述した本発明の架橋性樹脂成形体を架橋することにより得られる。架橋性樹脂成形体の架橋は、該成形体を、該成形体を構成する重合体において架橋反応が生ずる温度以上に維持することによって行うことができる。加熱温度は、通常、架橋剤により架橋反応が誘起される温度以上である。例えば、架橋剤としてラジカル発生剤を使用する場合、通常、1分間半減期温度以上、好ましくは1分間半減期温度より5℃以上高い温度、より好ましくは1分間半減期温度より10℃以上高い温度である。典型的には、100〜300℃、好ましくは150〜250℃の範囲である。加熱時間は、0.1〜180分間、好ましくは0.5〜120分間、より好ましくは1〜60分間の範囲である。また、本発明の重合性組成物を、上述した架橋性樹脂成形体が架橋する温度以上に維持することにより、具体的には、上述した温度及び時間で加熱することにより、シクロオレフィンモノマーの塊状重合と、当該重合により生ずるシクロオレフィンポリマーにおける架橋反応とを共に進行させて、本発明の架橋樹脂成形体を製造することも可能である。このようにして架橋樹脂成形体を製造する場合、上記(a)の方法に準じ、例えば、支持体として銅箔を用いれば、銅張積層板〔Copper Clad Laminates (CCL)〕を得ることができる。
本発明の積層体は、少なくとも、前記架橋性樹脂成形体、又は前記架橋樹脂成形体を積層してなるものである。両成形体はそれぞれ、連続的に積層されていても、他の層を挟んで間接的に積層されていてもよい。
なお、各特性の定義及び評価方法は、以下のとおりである。
積層体について、エッチングを行った後、インピーダンスアナライザー(アジレントテクノロジー社製、型番号E4991A)を用いて20℃で周波数1GHzにおける誘電正接(tanδ)を容量法にて測定し、以下の基準で評価した。
○:0.001以下
△:0.001超、0.0015以下
×:0.0015超
室温(25℃)下、積層体から銅箔(厚さ12μm)を引き剥がすときの強度を、JIS C6481に基づいて測定することで、ピール強度の評価を行った。ピール強度は、以下の基準にしたがって、評価した。
○:0.4kN/m超
△:0.3kN/m超、0.4kN/m以下
×:0.3kN/m以下
ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド0.05部と、トリフェニルホスフィン0.01部とを、インデン1.51部に溶解させて触媒液を調製した。これとは別に、シクロオレフィンモノマーとして、エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(ETD)60部、ジシクロペンタジエン(DCP)40部、及びメタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)2.4部、ならびに、酸化防止剤としての2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール0.28部を添加した混合物をガラス容器に入れ、ここに充填剤としてのシリカ(アドマテックス社製、製品名SO−E2、シランカップリング剤処理品 平均粒径0.5μm)100部、並びに、難燃剤としてのアンチモン酸化物(PATOX−M、日本精鉱社製)20部及びエタン−1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)(SAYTEX8010、アルベマール社製)40部を入れ、均一に混合した。次いで、ここに、連鎖移動剤としてのジビニルベンゼン(東京化成社製)1.8部、及び、架橋剤としてのジ−t−ブチルパーオキサイド〔化薬アクゾ社製、カヤブチルD(登録商標)〕1.14部を投入してモノマー液を得た。そして、このモノマー液に上記メタセシス触媒液をシクロオレフィンモノマー100部あたり1.6ml投入して攪拌し、重合性組成物を得た。なお、実施例1においては、単量体混合物中における、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)の含有割合は、2.11モル%であった。また、ジビニルベンゼンの含有割合は、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)1モルに対して1モルであった。
メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)の配合量を2.4部から、4.8部に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合性組成物および積層体を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例2においては、単量体混合物中における、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)の含有割合は、4.13モル%であった。また、ジビニルベンゼンの含有割合は、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)1モルに対して0.5モルであった。
メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)の配合量を2.39部から、1.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合性組成物および積層体を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例3においては、単量体混合物中における、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)の含有割合は、1.07モル%であった。また、ジビニルベンゼンの含有割合は、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)1モルに対して2モルであった。
メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)を使用せず、かつ、ジビニルベンゼン1.8部の代わりに、ウンデセニルモノメタクリレート2.9部を使用した以外は、実施例1と同様にして、重合性組成物および積層体を製造し、同様に評価を行った。
メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、重合性組成物および積層体を製造し、同様に評価を行った。
メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)の配合量を2.4部から100部に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合性組成物および積層体を製造し、同様に評価を行った。なお、比較例3においては、単量体混合物中における、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)の含有割合は、100モル%であった。
シクロオレフィンモノマーとして、ジシクロペンタジエン(DCP)80部、及びスチリルノルボルネン(ST−NB)20部を用い、かつ、連鎖移動剤としてのジビニルベンゼンの配合量を1.8部から、0.3部に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合性組成物および積層体を製造し、同様に評価を行った。
シクロオレフィンモノマーとして、エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(ETD)57.7部、ジシクロペンタジエン(DCP)38.5部、及び、ビニルノルボルネン(Vinyl−NB)3.8部を用いた以外は、実施例1と同様にして、重合性組成物および積層体を製造し、同様に評価を行った。
シクロオレフィンモノマーとして、エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(ETD)67.5部、及び、エチリデンノルボルネン(ETD−NB)32.5部を用い、かつ、連鎖移動剤として、ジビニルベンゼン1.8部の代わりに、スチレン0.7部を使用した以外は、実施例1と同様にして、重合性組成物および積層体を製造し、同様に評価を行った。
また、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー(A)を用いず、連鎖移動剤としてジビニルベンゼン又はスチレンを用いた場合には、ピール強度に劣る結果となった(比較例2,4〜6)。
さらに、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー(A)の配合量が多すぎる場合には、ピール強度は良好なものの、誘電正接が高くなる結果となった(比較例3)。
Claims (6)
- (メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー(A)、ビニル基及び/又はビニリデン基を有するシクロオレフィンモノマー(B)(ただし、(メタ)アクリロイル基を有するものを除く。)、及び、脂環構造内に架橋性の炭素−炭素不飽和結合を有するシクロオレフィンモノマー(C)(ただし、(メタ)アクリロイル基、ビニル基又はビニリデン基を有するものを除く。)を含む単量体混合物、メタセシス重合触媒、及び架橋剤を含有してなる重合性組成物であって、
前記単量体混合物中における、前記(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー(A)の含有割合が0.1〜9モル%であり、
前記単量体混合物中における、前記シクロオレフィンモノマー(A)と、前記シクロオレフィンモノマー(B)及び/又は前記シクロオレフィンモノマー(C)との比率が、「シクロオレフィンモノマー(A):シクロオレフィンモノマー(B)及び/又はシクロオレフィンモノマー(C)」の重量比で、0.1:100〜9:100である重合性組成物。 - 前記シクロオレフィンモノマー(A)1モルに対して0.2〜10モルの連鎖移動剤をさらに含有する請求項1に記載の重合性組成物。
- 前記単量体混合物中における、前記シクロオレフィンモノマー(A)、シクロオレフィンモノマー(B)及びシクロオレフィンモノマー(C)の合計の含有量が20重量%以上である請求項1または2に記載の重合性組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の重合性組成物を塊状重合してなる架橋性樹脂成形体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の重合性組成物を塊状重合してなる重合体を架橋してなる架橋樹脂成形体。
- 少なくとも、請求項4に記載の架橋性樹脂成形体、又は請求項5に記載の架橋樹脂成形体を積層してなる積層体。
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