JP2012140539A - 架橋性樹脂成形体、架橋樹脂成形体、及び積層体 - Google Patents

架橋性樹脂成形体、架橋樹脂成形体、及び積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】ピール強度及び微細配線埋め込み性に優れた積層体の製造に有用な、架橋性樹脂成形体及び架橋樹脂成形体、並びにそれらを用いて得られる積層体を提供すること。
【解決手段】脂環式構造含有ポリマー、架橋剤、及び少なくとも1つの架橋性基を有するカップリング剤を含んでなる架橋性樹脂成形体、前記架橋性樹脂成形体を架橋してなる架橋樹脂成形体、並びに前記架橋性樹脂成形体及び/又は前記架橋樹脂成形体からなる層を有する積層体。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子機器の材料等として好適に用いられる架橋性樹脂成形体、架橋樹脂成形体、及び積層体に関する。
電子機器などに用いられる電気回路基板は、例えば、絶縁層となる樹脂層と導体層となる銅箔とを積層し、これを加熱圧着して銅張積層板を得、次いで銅箔をエッチングするなどにより回路を形成することで製造される。近年の電子機器の小型化や通信の高速度化に伴い、電子回路基板にも小型化、多機能化が求められている。
情報処理の高速化に要求される信号伝達速度の高速化には電子回路基板を構成する材料の誘電率を低減することが有効であり、また、伝送時の損失を低減するためには誘電正接の少ない材料を用いることが効果的である。例えば、絶縁層を構成するための樹脂材料としては、低誘電性の樹脂である、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド、ポリブタジエン、及びシクロオレフィンポリマーなどを用いるのが、また、導体層を構成する金属箔については、表面粗度を小さくするのが有効であることが知られている。しかしながら、前記樹脂材料は一般に金属箔に対する密着性が乏しく、さらに金属箔の表面粗度を小さくすることで、益々絶縁層と導体層との密着性が低下することになる。これに対し、絶縁層と導体層との密着性を高める方法として、金属箔の表面をカップリング剤で処理することが知られている。また、特許文献1には、ノルボルネン系モノマー、メタセシス重合触媒、連鎖移動剤、及び架橋剤を含む重合性組成物を塊状重合してなる後架橋可能な熱可塑性樹脂を金属箔と積層し架橋することにより、金属箔に対しカップリング剤による表面処理を行わずとも、密着性に優れた架橋樹脂複合材料が得られることが開示されている。
ところで、絶縁層の線膨張率を低下させるなどの観点からは、絶縁層に充填剤が用いられるが、その場合は、樹脂と充填剤とがその界面においてよく密着していることが必要である。しかしながら、前記のような樹脂材料と充填剤との密着性は一般に不充分である。これに対し、例えば、特許文献2には、所定の鎖状オレフィン基を少なくとも1つ有するシランカップリング剤で処理した無機充填材と、少なくとも1種のメタセシス重合性シクロオレフィン系化合物を、メタセシス重合触媒系によって重合と成型を同時に行って得られる重合体とより少なくともなる無機材料充填重合体成型物では、樹脂と無機充填材との接着性が改善されることが開示されている。
特開2004−244609号公報 特開平2−276852号公報
本発明者らは、カップリング剤による表面処理を行っていない低粗度の銅箔表面に対し、前記特許文献1に記載の後架橋可能な熱可塑性樹脂を積層し、また、特許文献2に記載のシランカップリング剤で表面処理した低粗度の銅箔表面に対し、同文献に記載のメタセシス重合性シクロオレフィン系化合物とメタセシス重合触媒系とからなる組成物を塗布し、それぞれ加熱硬化して積層体を得、樹脂層と銅箔との密着性について評価したところ、特に銅箔の表面粗度(Rz)が2μm以下の場合、密着性が不充分になる場合があることが明らかになった。
本発明の目的は、ピール強度及び微細配線埋め込み性に優れた積層体の製造に有用な、架橋性樹脂成形体及び架橋樹脂成形体、並びにそれらを用いて得られる積層体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、脂環式構造含有ポリマー、架橋剤、及び架橋性基を有するカップリング剤を含んでなる架橋性樹脂成形体によれば、表面粗度(Rz)が2μm以下の金属箔を用いた場合でも所望の積層体が得られることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基いて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、
〔1〕脂環式構造含有ポリマー、架橋剤、及び少なくとも1つの架橋性基を有するカップリング剤を含んでなる架橋性樹脂成形体、
〔2〕脂環式構造含有ポリマーが、主鎖及び/又は末端にカップリング剤の親水基を有してなるものである前記〔1〕記載の架橋性樹脂成形体、
〔3〕脂環式構造含有ポリマーの全モノマー単位100モル%中、カップリング剤の親水基が結合したモノマー単位の割合が0.005〜15モル%である前記〔2〕記載の架橋性樹脂成形体、
〔4〕カップリング剤の親水基が、Ti、Al、又はSiに結合した、ヘテロ原子が含まれていてもよい、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20の、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキロイル基、又はアルケノイル基からなる親水基(X)である前記〔2〕又は〔3〕記載の架橋性樹脂成形体、
〔5〕テトラアルコキシシラン化合物、テトラアルケニロキシシラン化合物、及びテトラアリーロキシシラン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物をさらに含有してなる前記〔1〕〜〔4〕いずれか記載の架橋性樹脂成形体、
〔6〕繊維状強化材をさらに含んでなる前記〔1〕〜〔5〕いずれか記載の架橋性樹脂成形体、
〔7〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の架橋性樹脂成形体を架橋してなる架橋樹脂成形体、
〔8〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の架橋性樹脂成形体及び/又は前記〔7〕に記載の架橋樹脂成形体からなる層を有する積層体、並びに
〔9〕架橋性樹脂成形体からなる層を、表面粗度(Rz)が2μm以下である金属箔に積層し架橋してなる前記〔8〕記載の積層体、
が提供される。
本発明によれば、ピール強度及び微細配線埋め込み性に優れた積層体の製造に有用な、架橋性樹脂成形体及び架橋樹脂成形体、並びに前記積層体を提供することができる。本発明の積層体は、特に、高周波用多層回路基板の製造に好適に用いることができる。
1.架橋性樹脂成形体
本発明の架橋性樹脂成形体は、脂環式構造含有ポリマー、架橋剤、及び少なくとも1つの架橋性基を有するカップリング剤を含んでなる。
(脂環式構造含有ポリマー)
本発明に用いる脂環式構造含有ポリマーとは、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有するポリマーをいう。機械的強度や耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を有するものが好ましい。
前記脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械的強度や耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造がより好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、同様の観点より、通常、4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲である。脂環式構造含有ポリマー中の、脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合は、目的に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有ポリマー中の、脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合がこの範囲にあると得られるポリマーの透明性や耐熱性の観点から好ましい。
脂環式構造含有ポリマーとしては、特に限定はないが、例えば、シクロオレフィンモノマーの開環重合体、シクロオレフィンモノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、シクロオレフィンモノマーの付加重合体、シクロオレフィンモノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体、及びスチレンやα−メチルスチレンなどのビニル芳香族系モノマーからなるポリマーの芳香環部分の水素添加物などが挙げられる。中でも、機械的強度や耐熱性の観点から、シクロオレフィンモノマーの開環重合体が好ましい。本発明の架橋性樹脂成形体中、これらの脂環式構造含有ポリマーは、それぞれ単独で、又は2種以上が含まれていてもよい。なお、本明細書において、シクロオレフィンとは、炭素−炭素二重結合を含む脂環式構造を有するオレフィンを、シクロオレフィンモノマーとは、シクロオレフィンからなる単量体をいう。
脂環式構造含有ポリマーの分子量は、目的に応じて適宜選択すればよいが、テトラヒドロフランを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜100,000の範囲であれば、機械的強度と樹脂加工性とが良好にバランスされ好適である。
脂環式構造含有ポリマーとしては、得られる積層体においてピール強度と微細配線埋め込み性を向上させる観点から、その主鎖及び/又は末端にカップリング剤の親水基を有する脂環式構造含有ポリマー(以下、脂環式構造含有ポリマー(A)という場合がある。)が好ましい。
脂環式構造含有ポリマー(A)中、ポリマーに結合しているカップリング剤の親水基は、特に限定されるものではない。カップリング剤の構造は一般に、TiやAl等の金属元素やSiなどに結合したアルコキシ基等からなる親水基と、樹脂などの疎水性表面と相互作用する疎水基とからなる。親水基中のアルコキシ基等の部分は加水分解し、縮合することで無機物表面と結合しうるため、脂環式構造含有ポリマーに結合しているカップリング剤の親水基は、得られる積層体において層間密着性、例えば、樹脂層と金属箔との密着性の向上に寄与するものと推定される。
本発明においてカップリング剤の親水基としては、無機物表面への結合反応性が良好であることから、Ti、Al、又はSiに結合した、ヘテロ原子が含まれていてもよい、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜5の、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキロイル基、又はアルケノイル基からなる親水基(X)が好ましく、Siに結合した、ヘテロ原子が含まれていてもよい、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜5の、アルコキシ基、又はアルケニルオキシ基からなる親水基(x)がより好ましい。へテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びハロゲン原子が挙げられる。親水基部分にTiを含むカップリング剤としてはチタネートカップリング剤が、親水基部分にAlを含むカップリング剤としてはアルミネートカップリング剤が、親水基部分にSiを含むカップリング剤としてはシランカップリング剤が、それぞれ挙げられ、前記親水基(X)は、これらのカップリング剤の親水基部分に相当する。脂環式構造含有ポリマー(A)中、親水基は、1種類の親水基からなっても、相異なる2種類以上の親水基からなってもよい。
前記チタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルジアクリルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネートなどが挙げられる。
前記アルミネートカップリング剤としては、例えば、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム等のアルコキシアルミニウムなどが挙げられる。
前記シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリ(β−メトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリルシラン類;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン類;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ジメトキシメチルシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン等のアミノシラン類などが挙げられる。
カップリング剤の親水基は、当該親水基の、アルコキシ基等ではなく、アルコキシ基等が結合している、TiやAl等の金属元素やSiなどと脂環式構造含有ポリマーとが、直接的に、又は、例えば、2価の炭素数1〜20の有機基を介して間接的に結合することで、脂環式構造含有ポリマーの主鎖及び/又は末端に結合している。前記有機基としては、例えば、へテロ原子を含んでいてもよい、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、へテロ原子を含んでいてもよい、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖のアルケニレン基、及びアリーレン基などが挙げられる。へテロ原子は前記と同様である。脂環式構造含有ポリマー(A)中、カップリング剤の親水基は、1つのモノマー単位に2以上結合していてもよく、また、必ずしも脂環式構造を有するモノマー単位に結合していなくてもよい。
脂環式構造含有ポリマー(A)の全モノマー単位100モル%中、カップリング剤の親水基が結合したモノマー単位の割合は、特に限定されないが、得られる積層体においてピール強度と微細配線埋め込み性とを効率よく高める観点から、通常、0.005〜15モル%、好ましくは0.01〜10モル%、より好ましくは0.05〜8モル%である。なお、カップリング剤の親水基が結合したモノマー単位の割合が15モル%を超えると、得られる効果は、当該割合が15モル%の場合と実質的に同じである。カップリング剤の親水基が結合したモノマー単位の割合は、例えば、NMR(核磁気共鳴)法により求めることができる。かかる割合は、脂環式構造含有ポリマーへのカップリング剤結合量を適宜調整することで調整可能である。
脂環式構造含有ポリマー(A)中、末端にカップリング剤の親水基が結合した脂環式構造含有ポリマーの割合は、特に限定されないが、例えば、後述の連鎖移動基を有するカップリング剤を用いる架橋性樹脂成形体の製造方法において、連鎖移動基を有するカップリング剤と、当該カップリング剤を除く他の連鎖移動剤との配合割合を適宜調整することで調整可能である。
脂環式構造含有ポリマー(A)の調製方法としては、特に限定されないが、例えば、(i)少なくとも1つのシクロオレフィン構造を有するカップリング剤の存在下にシクロオレフィンモノマーを開環重合する方法、(ii)少なくとも1つの連鎖移動基を有するカップリング剤の存在下にシクロオレフィンモノマーを開環重合する方法、(iii)前記(i)と(ii)の組合せ方法、及び(iv)シンクロオレフィンモノマーの開環重合後に、得られたポリマーの主鎖及び/又は末端にカップリング剤を結合させる方法などが挙げられる。中でも、本発明の架橋性樹脂成形体を効率的に製造可能であることから、前記(i)〜(iii)いずれかの方法が好ましい。脂環式構造含有ポリマー(A)の調製は、架橋性樹脂成形体の調製時に併せて行うのが好ましい。少なくとも1つのシクロオレフィン構造を有するカップリング剤、少なくとも1つの連鎖移動基を有するカップリング剤、及び本発明の架橋性樹脂成形体の調製方法については後述する。
(架橋剤)
架橋剤は、本発明の架橋性樹脂成形体中、脂環式構造含有ポリマーにおいて架橋反応を誘起する目的で用いられる。脂環式構造含有ポリマーは本発明の架橋性樹脂成形体において基材樹脂をなす。本発明の架橋性樹脂成形体を加熱すると、基材樹脂は溶融するが、高粘度であるため、その形状は保持する一方、任意の部材を接触させた場合、該成形体表面では、該部材の形状に対し樹脂が追従性を発揮し、最終的に架橋して硬化する。本発明の架橋性樹脂成形体のかかる特性は、該成形体を、例えば、金属箔に積層し、加熱して溶融、架橋して得られる積層体においてピール強度や微細配線埋め込み性の向上に寄与するものと考えられる。
本発明において、架橋剤としては、特に限定されないが、通常、ラジカル発生剤が好適に用いられる。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、ジアゾ化合物、及び非極性ラジカル発生剤などが挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどのペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオキシド類;などが挙げられる。中でも、開環重合反応に対する障害が少ない点で、ジアルキルペルオキシド類及びペルオキシケタール類が好ましい。
ジアゾ化合物としては、例えば、4,4’−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、4,4’−ジアジドカルコン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ジアジドジフェニルスルホン、4,4’−ジアジドジフェニルメタン、2,2’−ジアジドスチルベンなどが挙げられる。
非極性ラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジフェニルブタン、1,4−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2,2−テトラフェニルエタン、2,2,3,3−テトラフェニルブタン、3,3,4,4−テトラフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルプロパン、1,1,2−トリフェニルエタン、トリフェニルメタン、1,1,1−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニルプロパン、1,1,1−トリフェニルブタン、1,1,1−トリフェニルペンタン、1,1,1−トリフェニル−2−プロペン、1,1,1−トリフェニル−4−ペンテン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタンなどが挙げられる。
これらのラジカル発生剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上のラジカル発生剤を併用し、その量比を調整することで、架橋性樹脂成形体の基材樹脂のガラス転移温度や溶融状態を任意に制御することが可能である。ラジカル発生剤の1分間半減期温度としては、特に限定はないが、通常、150〜300℃、好ましくは180〜250℃の範囲である。ここで1分間半減期温度とは、ラジカル発生剤の半量が1分間で分解する温度である。ラジカル発生剤の1分間半減期温度は、例えば、各ラジカル発生剤メーカー(例えば、日本油脂株式会社)のカタログやホームページを参照すればよい。
架橋剤の配合量は、脂環式構造含有ポリマー100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。架橋剤の配合量がかかる範囲にあれば、脂環式構造含有ポリマーの硬化物が充分な架橋密度を有し、所望の物性を有する架橋樹脂成形体及び積層体が効率的に得られるので、好適である。
(架橋性基を有するカップリング剤)
本発明に用いる少なくとも1つの架橋性基を有するカップリング剤とは、カップリング剤の疎水基部分に少なくとも1つの架橋性基を含むカップリング剤をいう。かかるカップリング剤は、架橋性基の存在により、本発明の架橋性樹脂成形体の架橋時に架橋反応に関与して脂環式構造含有ポリマーに結合しうる。従って、架橋性基を有するカップリング剤を含む架橋性樹脂成形体を架橋してなる架橋樹脂成形体の基材樹脂は脂環式構造含有ポリマー(A)の硬化物と実質的に同じものとなる。脂環式構造含有ポリマーに結合しているカップリング剤の親水基は無機物表面と結合しうるため、得られる積層体において層間密着性の向上に寄与するものと推定される。
少なくとも1つの架橋性基を有するカップリング剤としては、特に限定されないが、架橋性基と、カップリング剤の親水基、好ましくは前記親水基(X)、より好ましくは前記親水基(x)とが結合してなる化合物が挙げられる。架橋性基としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。中でも、脂環式構造含有ポリマーとの架橋反応性に優れることから、ラジカル重合性不飽和基が好ましく、ビニリデン基がより好ましい。ビニリデン基を含む架橋性基としては、イソプロペニル基やメタクリル基などが挙げられる。架橋性基とカップリング剤の親水基との結合様式は、脂環式構造含有ポリマーとカップリング剤の親水基との結合様式と同様である。架橋性基を有するカップリング剤としては、例えば、メタクリルシランなどが挙げられる。架橋性基を有するカップリング剤の配合量は、特に限定されないが、脂環式構造含有ポリマー(A)の全モノマー単位100モル%中、カップリング剤の親水基が結合したモノマー単位の割合が前記範囲となるように架橋性樹脂成形体に配合するのが好ましい。
また、本発明の架橋性樹脂成形体には、得られる積層体においてピール強度と微細配線埋め込み性をバランスよく高める観点から、テトラアルコキシシラン化合物、テトラアルケニロキシシラン化合物、及びテトラアリーロキシシラン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を含有させるのが好ましい。シラン化合物において、アルコキシ基、アルケニロキシ基、及びアリーロキシ基の炭素数としては、通常、1〜10の範囲である。シラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、及びテトラフェノキシシランなどが挙げられ、加水分解及び縮合の反応性に優れることから、テトラエトキシシランが好ましい。シラン化合物の配合量は、特に限定されないが、脂環式構造含有ポリマー100重量部に対し、通常、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。
(架橋性樹脂成形体の製造方法)
本発明の架橋性樹脂成形体の製造方法としては、特に限定されないが、当該成形体を効率的に製造可能であることから、シクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、少なくとも1つの架橋性基を有するカップリング剤、及び架橋剤を含む重合性組成物を開環重合する方法が好ましい。脂環式構造含有ポリマーを脂環式構造含有ポリマー(A)とする場合は、例えば、前記方法において、少なくとも1つのシクロオレフィン構造を有するカップリング剤及び/又は少なくとも1つの連鎖移動基を有するカップリング剤を重合性組成物に配合し開環重合すればよい。かかる方法によれば、得られる架橋性樹脂成形体に含まれる脂環式構造含有ポリマー(A)は、前記(i)〜(iii)のいずれかの方法により形成されることになる。なお、架橋剤は、前記架橋剤を、通常、得られる架橋性樹脂成形体において、前記配合量となるように用いられる。また、重合性組成物には前記シラン化合物を含有させてもよい。
前記シクロオレフィンモノマーの脂環構造としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環及びこれらの組み合わせ多環などが挙げられる。シクロオレフィンモノマーとしては、得られる積層体の機械的強度を向上させる観点から、多環のシクロオレフィンモノマーが好ましい。各環構造を構成する炭素原子数に特に限定はないが、通常、4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。シクロオレフィンモノマーは、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、及びアリール基などの炭素数1〜30の炭化水素基や、カルボキシル基や酸無水物基などの極性基を置換基として有していてもよい。
本発明において、前記シクロオレフィンモノマーとしては、得られる積層体の機械的強度を向上させる観点から、架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するものが好適に用いられる。本明細書において架橋性炭素−炭素不飽和結合とは、メタセシス開環重合には関与せず、架橋反応に関与する炭素−炭素不飽和結合をいう。
前記架橋性炭素−炭素不飽和結合としては、芳香族炭素−炭素不飽和結合を除く炭素−炭素不飽和結合、すなわち、脂肪族炭素−炭素二重結合又は三重結合が挙げられ、本発明においては、通常、脂肪族炭素−炭素二重結合をいう。架橋性炭素−炭素不飽和結合を有するシクロオレフィンモノマー中、該不飽和結合の位置は特に限定されるものではなく、炭素原子で形成される脂環構造内の他、該脂環構造以外の任意の位置、例えば、側鎖の末端や内部に存在していてもよい。例えば、前記脂肪族炭素−炭素二重結合は、ビニル基、ビニリデン基、又はビニレン基として存在し得、良好にラジカル架橋性を発揮することから、ビニル基及び/又はビニリデン基として存在するのが好ましく、ビニリデン基として存在するのがより好ましい。
架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するシクロオレフィンモノマーとしては、特に、架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するノルボルネン系モノマーが好ましい。ノルボルネン系モノマーとは、ノルボルネン環構造を分子内に有するシクロオレフィンモノマーをいう。例えば、ノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類、及びテトラシクロドデセン類などが挙げられる。
架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するシクロオレフィンモノマーとしては、例えば、3−ビニルシクロヘキセン、4−ビニルシクロヘキセン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロへキサジエン、1,4−シクロへキサジエン、5−エチル−1,3−シクロへキサジエン、1,3−シクロへプタジエン、1,3−シクロオクタジエンなどの単環シクロオレフィンモノマー;5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−アリルノルボルネン、5,6−ジエチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエンなどのノルボルネン系モノマー;を挙げることができる。これらの中では、架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するノルボルネン系モノマーが好ましい。
本発明においてシクロオレフィンモノマーとしては、前記架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するシクロオレフィンモノマーの他、架橋性炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーが用いられる。
架橋性炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとしては、例えば、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3,5−ジメチルシクロペンテン、3−クロロシクロペンテン、シクロへキセン、3−メチルシクロへキセン、4−メチルシクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロヘキセン、3−クロロシクロヘキセン、シクロへプテンなどの単環シクロオレフィンモノマー;ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,5,6−トリメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、テトラシクロドデセン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−シクロへキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、5−クロロノルボルネン、5,5−ジクロロノルボルネン、5−フルオロノルボルネン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチルノルボルネン、5−クロロメチルノルボルネン、5−メトキシノルボルネン、5,6−ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5−ジメチルアミノノルボルネン、5−シアノノルボルネンなどのノルボルネン系モノマー;を挙げることができる。これらの中でも、架橋性炭素−炭素不飽和結合を持たないノルボルネン系モノマーが好ましい。
以上のシクロオレフィンモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、シクロオレフィンモノマーとして、架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するシクロオレフィンモノマーと架橋性炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとの混合物が用いられる。
重合性組成物に用いるシクロオレフィンモノマー中、架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するシクロオレフィンモノマーと架橋性炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとの配合割合は所望により適宜選択すればよいが、重量比(架橋性炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するシクロオレフィンモノマー/架橋性炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマー)で、通常、5/95〜100/0、好ましくは10/90〜95/10、より好ましくは15/85〜90/15の範囲である。当該配合割合がかかる範囲にあれば、得られる架橋樹脂成形体及び積層体において耐熱性や機械的強度がバランス良く向上し、好適である。
なお、本発明に用いる重合性組成物には、本発明の効果の発現が阻害されない限り、以上のシクロオレフィンモノマーと共重合可能な任意のモノマーが含まれていてもよい。
本発明に用いるメタセシス重合触媒は、前記シクロオレフィンモノマーをメタセシス開環重合可能なものであれば、特に限定されない。
メタセシス重合触媒としては、遷移金属原子を中心にして、複数のイオン、原子、多原子イオン及び/又は化合物が結合してなる錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、5族、6族及び8族(長周期型周期表、以下同じ。)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、5族の原子としては、好ましくはタンタルが挙げられ、6族の原子としては、好ましくは、モリブデン及びタングステンが挙げられ、8族の原子としては、好ましくは、ルテニウム及びオスミウムが挙げられる。
これらの中でも、8族のルテニウムやオスミウムの錯体が好ましく、ルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性に優れるため、残留未反応モノマーに由来する臭気が少ないプリプレグを効率的に生産することができる。また、8族のルテニウムやオスミウムの錯体は、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でもプリプレグの生産が可能である。
ルテニウムカルベン錯体の具体例としては、以下の式(1)又は式(2)で表される錯体が挙げられる。
Figure 2012140539
式(1)及び(2)において、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでもよい、環状又は鎖状の、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。X及びXは、それぞれ独立して任意のアニオン性配位子を示す。L及びLはそれぞれ独立して、ヘテロ原子含有カルベン化合物又はヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物を表す。また、RとRは互いに結合して、ヘテロ原子を含んでいてもよい、脂肪族環又は芳香族環を形成してもよい。さらに、R、R、X、X、L及びLは、任意の組合せで互いに結合して多座キレート化配位子を形成してもよい。
ヘテロ原子とは、周期表15族及び16族の原子をいう。ヘテロ原子の具体例としては、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、砒素原子、及びセレン原子などが挙げられる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、窒素原子、酸素原子、リン原子、及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。
ヘテロ原子含有カルベン化合物は、カルベン炭素原子の両側にヘテロ原子が隣接して結合した構造を有するものが好ましく、さらにカルベン炭素原子とその両側のヘテロ原子とを含んでヘテロ環が形成された構造を有するものがより好ましい。また、カルベン炭素原子に隣接するヘテロ原子に嵩高い置換基を有するものが好ましい。
ヘテロ原子含有カルベン化合物としては、以下の式(3)又は式(4)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2012140539
式(3)又は式(4)において、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでもよい、環状又は鎖状の、炭素数1〜20個の炭化水素基を表す。また、R〜Rは任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。
前記式(3)又は式(4)で表される化合物の具体例としては、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1−シクロヘキシル−3−メシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどが挙げられる。
また、前記式(3)又は式(4)で示される化合物のほかに、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、1,3,4−トリフェニル−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3−ジヒドロチアゾール−2−イリデンなどのヘテロ原子含有カルベン化合物も用い得る。
前記式(1)及び式(2)において、アニオン(陰イオン)性配位子XとXは、中心金属原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、例えば、弗素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基などを挙げることができる。これらの中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
また、中性電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよい。その具体例としては、カルボニル類、アミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、チオエーテル類、芳香族化合物、オレフィン類、イソシアニド類、及びチオシアネート類などが挙げられる。これらの中でも、ホスフィン類、エーテル類及びピリジン類が好ましく、トリアルキルホスフィンがより好ましい。
前記式(1)で表される錯体化合物としては、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(3−フェニル−1H−インデン−1−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(2−フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)[(フェニルチオ)メチレン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、ヘテロ原子含有カルベン化合物及びヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物が各々1つ結合したルテニウム錯体化合物;
ベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、ヘテロ原子含有カルベン化合物以外の2つの中性電子供与性化合物が結合したルテニウム錯体化合物;
ベンジリデンビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデンビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ルテニウムジクロリドなどの、2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が結合したルテニウム錯体化合物;などが挙げられる。
前記式(2)で表される錯体化合物としては、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(フェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(t−ブチルビニリデン)(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリドなどが挙げられる。
これらの錯体化合物の中でも、前記式(1)で表され、かつ配位子として前記式(4)で表される化合物を1つ有するものが最も好ましい。
メタセシス重合触媒の使用量は、(触媒中の金属原子:シクロオレフィンモノマー)のモル比で、通常、1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。
メタセシス重合触媒は所望により、少量の不活性溶剤に溶解又は懸濁して使用することができる。かかる溶剤としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、ミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素;などが挙げられる。これらの中では、工業的に汎用な芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素の使用が好ましい。また、メタセシス重合触媒としての活性を低下させないものであれば、液状の老化防止剤、液状の可塑剤、液状のエラストマーを溶剤として用いてもよい。
メタセシス重合触媒は、重合活性を制御し、重合反応率を向上させる目的で活性剤(共触媒)と併用することもできる。
活性剤としては、アルミニウム、スカンジウム、スズの、アルキル化物、ハロゲン化物、アルコキシ化物及びアリールオキシ化物などを用いることができる。その具体例としては、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。
活性剤の使用量は、(触媒中の金属原子:活性剤)のモル比で、通常、1:0.05〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:20、より好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
また、メタセシス重合触媒として、5族及び6族の遷移金属原子の錯体を用いる場合には、メタセシス重合触媒及び活性剤は、いずれもモノマーに溶解して用いるのが好ましいが、生成物の性質を本質的に損なわない範囲であれば少量の溶剤に懸濁又は溶解させて用いることができる。
前記少なくとも1つのシクロオレフィン構造を有するカップリング剤とは、カップリング剤の疎水基部分に少なくとも1つのシクロオレフィン構造を含むカップリング剤をいう。かかるカップリング剤は、シクロオレフィン構造の存在によりシクロオレフィンモノマーとして機能し、その存在下にシクロオレフィンモノマーを開環重合すると、得られるポリマー鎖中にモノマー単位として組み込まれうる。シクロオレフィン構造を有するカップリング剤としては、特に限定されないが、シクロオレフィンモノマーとして前記したシクロオレフィンに、カップリング剤の親水基が、好ましくは前記親水基(X)が、より好ましくは前記親水基(x)が、結合してなる化合物が挙げられる。シクロオレフィンとカップリング剤の親水基との結合様式は、脂環式構造含有ポリマーとカップリング剤の親水基との結合様式と同様である。少なくとも1つのシクロオレフィン構造を有するカップリング剤としては、例えば、6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネンや2−(ビシクロヘプタ−5−エン−2−イル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。少なくとも1つのシクロオレフィン構造を有するカップリング剤の配合量は、特に限定されないが、得られる脂環式構造含有ポリマー(A)の全モノマー単位100モル%中、カップリング剤の親水基が結合したモノマー単位の割合が前記範囲となるように重合性組成物に配合するのが好ましい。
前記少なくとも1つの連鎖移動基を有するカップリング剤とは、カップリング剤の疎水基部分に少なくとも1つの連鎖移動基を含むカップリング剤をいう。かかるカップリング剤は、連鎖移動基の存在により、その存在下にシクロオレフィンモノマーを開環重合すると、連鎖移動剤として機能し、得られるポリマーにおいて末端に位置するモノマー単位に結合しうる。連鎖移動基としては、例えば、ビニル基などが挙げられる。連鎖移動基を有するカップリング剤としては、特に限定されないが、連鎖移動剤として後述する化合物に、カップリング剤の親水基が、好ましくは前記親水基(X)が、より好ましくは前記親水基(x)が、結合してなる化合物が挙げられる。連鎖移動剤として後述する化合物とカップリング剤の親水基との結合様式は、脂環式構造含有ポリマーとカップリング剤の親水基との結合様式と同様である。連鎖移動基を有するカップリング剤としては、例えば、スチリルシラン、アリルシラン、及びアクリロキシシランなどが挙げられる。少なくとも1つの連鎖移動基を有するカップリング剤は、得られる脂環式構造含有ポリマー(A)中の、末端にカップリング剤の親水基が結合した脂環式構造含有ポリマーの割合を調整する観点から、連鎖移動基を有するカップリング剤を除く他の連鎖移動剤と併用してもよい。
本発明の架橋性樹脂成形体の調製に用いる重合性組成物には、前記の、シクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、架橋性基を有するカップリング剤、少なくとも1つのシクロオレフィン構造を有するカップリング剤、少なくとも1つの連鎖移動基を有するカップリング剤、及び架橋剤の他、所望により、充填剤、重合調整剤、重合反応遅延剤、連鎖移動剤、反応性流動化剤、架橋助剤、老化防止剤、及び着色料等のその他の配合剤を配合してもよい。
本発明においては、得られる積層体を高機能化させる観点から、重合性組成物に充填剤を配合するのが好適である。本発明に用いる重合性組成物は、従来、プリプレグや積層体の製造に用いられている、エポキシ樹脂等を溶媒に溶かしてなる重合体ワニスと比べて低粘度であるため、容易に充填剤を高配合することができる。よって、得られる架橋性樹脂成形体や積層体中には、充填剤が、従来のプリプレグ又は積層体の限界含有量を超えて含まれ得る。
充填剤としては、有機充填剤及び無機充填剤のいずれをも用いることができる。所望により適宜選択すればよいが、通常、無機充填剤が好適に用いられる。かかる無機充填剤としては、例えば、高誘電フィラー、低線膨張フィラー、及び非ハロゲン難燃剤が挙げられる。
高誘電フィラーとは誘電性が概して高い無機フィラーである。高誘電フィラーを重合性組成物に配合することで、得られる積層体において誘電正接は小さく、かつ誘電率を大きくできるため、例えば、かかる積層体によれば、低損失で、デバイス設計の小さな回路基板等が得られ、好適である。
高誘電フィラーとしては、工業的に使用されるものであれば格別な限定なく用いることができるが、特に1GHzにて20℃で測定される比誘電率が、通常、5以上、好ましくは10以上、より好ましくは15以上のものが好適である。比誘電率は、インピーダンスアナライザー(アジレントテクノロジー社製)により測定することが出来る。かかる高誘電フィラーとしては、例えば、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウム、ジルコン酸鉛、及びジルコニアなどのジルコン酸化物;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸コバルト、チタン酸亜鉛、及びチタニアなどのチタン酸化物;などを挙げることができる。
低線膨張フィラーとは線膨張係数が概して低い無機フィラーである。低線膨張フィラーを重合性組成物に配合することで、得られる積層体において機械的強度が向上し、線膨張係数を低減させることができ、好適である。
低線膨張フィラーの線膨張係数としては、通常、15ppm/℃以下である。線膨張係数は、熱機械分析装置(TMA)により測定することができる。かかる低線膨張フィラーとしては、工業的に用いられるものであれば格別な限定なく用いることができる。例えば、シリカ、シリカバルーン、アルミナ、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化すず、酸化ベリリウム、バリウムフェライト、及びストロンチウムフェライト等の無機酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸水素ナトリウム等の無機炭酸塩;硫酸カルシウム等の無機硫酸塩;タルク、クレー、マイカ、カオリン、フライアッシュ、モンモリロナイト、ケイ酸カルシウム、ガラス、及びガラスバルーン等の無機ケイ酸塩;などが挙げられ、好ましくはシリカである。
非ハロゲン難燃剤は、ハロゲン原子を含まない難燃性化合物からなる。非ハロゲン難燃剤を重合性組成物に配合すれば、得られる積層体の難燃性を向上でき、しかも積層体の燃焼時にダイオキシン発生の心配がなく、好適である。非ハロゲン難燃剤としては、工業的に用いられるものであれば格別な限定なく用いることができる。例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物難燃剤;ジメチルホスフィン酸アルミニウムやジエチルホスフィン酸アルミニウムなどのホスフィン酸塩難燃剤;酸化マグネシウムや酸化アルミニウム等の金属酸化物難燃剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート、及びビスフェノールAビス(ジクレジル)ホスフェートなどの、ホスフィン酸塩以外の含燐難燃剤;メラミン誘導体類、グアニジン類、及びイソシアヌル類等の含窒素難燃剤;ポリ燐酸アンモニウム、燐酸メラミン、ポリ燐酸メラミン、ポリ燐酸メラム、燐酸グアニジン、及びフォスファゼン類等の燐及び窒素の双方を含有する難燃剤;などが挙げられる。非ハロゲン難燃剤としては、金属水酸化物難燃剤、ホスフィン酸塩難燃剤、及びホスフィン酸塩以外の含燐難燃剤が好ましい。含燐難燃剤としては、トリクレジルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート、及びビスフェノールAビス(ジクレジル)ホスフェートが特に好ましい。
本発明に使用される充填剤の粒子径(平均粒子径)は、所望により適宜選択すればよいが、粒子を三次元的にみたときの長手方向と短手方向の長さの平均値として、通常、0.001〜50μm、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmの範囲である。
以上の充填剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明に用いられる重合性組成物への配合量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、50重量部以上、好ましくは50〜1,000重量部、より好ましくは50〜750重量部、さらに好ましくは100〜500重量部の範囲である。
重合調整剤は、重合活性を制御したり、重合反応率を向上させたりする目的で配合されるものであり、例えば、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、及びテトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。これらの重合調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合調整剤の配合量は、例えば、モル比(メタセシス重合触媒中の金属原子:重合調整剤)で、通常、1:0.05〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:20、より好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
重合反応遅延剤は、重合性組成物の粘度増加を抑制し得るものである。従って、重合反応遅延剤を配合してなる重合性組成物は、架橋性樹脂成形体として、例えば、プリプレグを作製する際、容易に繊維状強化材に均一に含浸させることができ、好ましい。重合反応遅延剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ビニルジフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、及びスチリルジフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物;アニリンやピリジンなどのルイス塩基;等を用いることができる。その配合量は、所望により適宜調整すればよい。
本発明に用いる重合性組成物には、所望により連鎖移動剤を配合してもよい。得られる架橋性樹脂成形体では、その加熱硬化時に表面の樹脂追従性が向上しうるため、かかる成形体を積層し、加熱して溶融、架橋して得られる積層体では、層間密着性及び配線埋め込み性が高まり、好ましい。
連鎖移動剤は、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有していてもよい。連鎖移動剤の具体例としては、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、アリルアミン、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、及び4−ビニルアニリンなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たない連鎖移動剤;ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、アクリル酸アリル、メタクリル酸ウンデセニル、アクリル酸スチリル、及びエチレングリコールジアクリレートなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1つ有する連鎖移動剤;アリルトリビニルシランやアリルメチルジビニルシランなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を2以上有する連鎖移動剤などが挙げられる。これらの中でも、得られる積層体において、配線埋め込み性と耐熱性とを高度にバランスさせる観点から、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するものが好ましく、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1つ有するものがより好ましい。かかる連鎖移動剤の中でも、ビニル基とメタクリル基とを1つずつ有する連鎖移動剤が好ましく、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、及びメタクリル酸ウンデセニルなどが特に好ましい。
これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明に用いる重合性組成物への連鎖移動剤の配合量としては、得られる積層体の配線埋め込み性と耐熱性とのバランスを考慮し、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
本発明に使用される反応性流動化剤とは、本発明の架橋性樹脂成形体の基材樹脂である脂環式構造含有ポリマーにおいて、流動化剤として該ポリマーのガラス転移温度(Tg)を低下させ、かつ架橋剤により架橋反応が誘起された後においては当該反応に関与して該ポリマーに結合反応性を示す化合物をいう。例えば、本発明の架橋性樹脂成形体が反応性流動化剤を含む場合、当該成形体を金属箔などと積層する際、当該成形体を加熱することで容易に溶融積層することができ、しかも得られる積層体においては充分な層間密着性が得られる。さらに、反応性流動化剤は、積層する際の加熱で架橋剤により誘起される架橋反応に関与して脂環式構造含有ポリマーに結合し得るため、当該加熱以後は、該ポリマー中で実質的に遊離の状態で存在することはなく、従って、いわゆる可塑剤のように、得られる積層体の耐熱性を低下させる因子となることもない。むしろ、得られる積層体において耐熱性や耐クラック性を高める効果を奏し得る。
本発明に使用される反応性流動化剤としては、シクロオレフィンモノマー中の重合性の炭素−炭素二重結合や、ビニル基などの、開環重合反応に関与し得る脂肪族炭素−炭素不飽和結合を持たず、かつ架橋剤により誘起される架橋反応に関与して重合体に結合し得る脂肪族炭素−炭素不飽和結合や有機基を1つ有する単官能化合物、中でも、重合性の脂肪族炭素−炭素不飽和結合を持たず、かつ架橋性の脂肪族炭素−炭素不飽和結合を1つ有する単官能化合物が好ましい。架橋剤により誘起される架橋反応に関与して脂環式構造含有ポリマーに結合し得る、架橋性の脂肪族炭素−炭素不飽和結合としては、反応性流動化剤を構成する化合物中、例えば、末端ビニリデン基として、特に、イソプロペニル基やメタクリル基として存在するのが好ましく、メタクリル基として存在するのがより好ましい。前記有機基としては、エポキシ基、イソシアネート基、及びスルホ基などが挙げられる。
かかる反応性流動化剤としては、例えば、ラウリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、及びメトキシジエチレングリコールメタクリレートなどの、メタクリル基を1つ有する単官能化合物;イソプロペニルベンゼンなどの、イソプロペニル基を1つ有する単官能化合物;などが挙げられ、好ましくはメタクリル基を1つ有する単官能化合物である。これらの反応性流動化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。反応性流動化剤の配合量は、所望により適宜選択すればよいが、シクロオレフィンモノマー100重量部に対し、通常、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部である。
本発明に使用される架橋助剤は、開環重合に関与せず、架橋剤により誘起される架橋反応に関与可能な架橋性炭素−炭素不飽和結合を2以上有する化合物が好ましい。かかる架橋性炭素−炭素不飽和結合は、架橋助剤を構成する化合物中、例えば、末端ビニリデン基として、特に、イソプロペニル基やメタクリル基として存在するのが好ましく、メタクリル基として存在するのがより好ましい。
架橋助剤の具体例としては、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、o−ジイソプロペニルベンゼンなどの、イソプロペニル基を2以上有する多官能化合物;エチレンジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−ブチレンジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレートなどの、メタクリル基を2以上有する多官能化合物などを挙げることができる。中でも、架橋助剤としては、得られる積層体の耐熱性や耐クラック性を向上させる観点から、メタクリル基を2以上有する多官能化合物が好ましい。メタクリル基を2以上有する多官能化合物の中では、特に、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレートやペンタエリトリトールトリメタクリレートなどの、メタクリル基を3つ有する多官能化合物がより好適である。
前記架橋助剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋助剤の配合量としては、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部である。
反応性流動化剤と架橋助剤とを共に配合する場合、両者の配合割合は、所望により適宜選択すればよいが、重量比(反応性流動化剤/架橋助剤)で、通常、5/95〜90/10、好ましくは10/90〜70/30、より好ましくは15/85〜70/30の範囲である。配合割合がかかる範囲にあれば、架橋性樹脂成形体においては樹脂の流動性が向上し、また、積層体においては配線埋め込み性と耐熱性とがバランスされ、好適である。本発明において特に好適な反応性流動化剤と架橋助剤との組合せとしては、ベンジルメタクリレート(反応性流動化剤)とトリメチロ−ルプロパントリメタクリレート(架橋助剤)とからなる組合せが挙げられる。
反応性流動化剤と架橋助剤とからなる組合せの、本発明の重合性組成物への配合量(反応性流動化剤と架橋助剤との合計配合量)としては、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.2〜200重量部、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは2〜60重量部である。
重合性組成物に老化防止剤として、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、リン系老化防止剤及びイオウ系老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の老化防止剤を加えることにより、架橋反応を阻害しないで、得られる積層体の耐熱性を高度に向上させることができ、好適である。これらの中でも、フェノール系老化防止剤及びアミン系老化防止剤が好ましく、フェノール系老化防止剤が特に好ましい。これらの老化防止剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。老化防止剤の配合量は、目的に応じて適宜選択すればよいが、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
本発明に用いる重合性組成物は、上記成分を混合して得ることができる。混合方法としては、常法に従えばよく、例えば、メタセシス重合触媒を適当な溶媒に溶解若しくは分散させた液(触媒液)を、シクロオレフィンモノマー、及び適宜、その他の配合剤等を配合した液(モノマー液)に添加し、攪拌することによって調製することができる。
本発明の架橋性樹脂成形体は、前記重合性組成物を開環重合することにより得られる。重合性組成物を開環重合して架橋性樹脂成形体を得る方法としては、例えば、(a)重合性組成物を支持体上に塗布し、次いで塊状重合する方法、(b)重合性組成物を成形型内に注入し、次いで塊状重合する方法、(c)重合性組成物を繊維状強化材に含浸させ、次いで塊状重合する方法などが挙げられる。
本発明の重合性組成物は低粘度であるため、(a)の方法における塗布は円滑に実施でき、(b)の方法における注入では、複雑形状の空間部であっても迅速に泡かみを起こさずに重合性組成物を行き渡らせることができ、(c)の方法においては、繊維状強化材に対して速やかに満遍なく重合性組成物を含浸させることができる。
(a)の方法によれば、フィルム状や板状等の架橋性樹脂成形体が得られる。該成形体の厚さは、通常、15mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは0.5mm以下、最も好ましくは0.1mm以下である。支持体としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、及びナイロンなどの樹脂からなるフィルムや板;鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、金、及び銀などの金属材料からなるフィルムや板;などが挙げられる。中でも、金属箔又は樹脂フィルムの使用が好ましい。金属箔又は樹脂フィルムの厚さは、作業性などの観点から、通常、1〜150μm、好ましくは2〜100μm、より好ましくは3〜75μmである。金属箔としては、その表面が平滑であるものが好ましく、その表面粗度(Rz)としては、通常、10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。本明細書において表面粗度(Rz)は、AFM(原子間力顕微鏡)により測定することができる。金属箔の表面粗度が上記範囲にあれば、例えば、得られる高周波回路基板において、高周波伝送におけるノイズ、遅延、及び伝送ロス等の発生が抑えられ、好ましい。金属箔の表面は、シランカップリング剤、チオールカップリング剤、及びチタネートカップリング剤などの公知のカップリング剤や接着剤などで処理されていてもよい。(a)の方法によれば、例えば、支持体として銅箔を用いた場合、樹脂付き銅箔〔Resin Coated Copper (RCC)〕を得ることができる。
支持体上に重合性組成物を塗布する方法としては、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、及びスリットコート法などの公知の塗布方法が挙げられる。
支持体上に塗布された重合性組成物を所望により乾燥させ、次いで塊状重合する。塊状重合は重合性組成物を所定の温度で加熱して行われる。重合性組成物の加熱方法としては特に制約されず、支持体に塗布された重合性組成物を、加熱プレート上に載せて加熱する方法、プレス機を用いて加圧しながら加熱(熱プレス)する方法、加熱したローラーで押圧する方法、加熱炉内で加熱する方法などが挙げられる。
(b)の方法によれば、任意の形状の架橋性樹脂成形体を得ることができる。その形状としては、シート状、フィルム状、柱状、円柱状、及び多角柱状等が挙げられる。
ここで用いる型としては、従来公知の成形型、例えば、割型構造、すなわち、コア型とキャビティー型を有する成形型を用いることができ、それらの空隙部(キャビティー)に重合性組成物を注入して塊状重合させる。コア型とキャビティー型は、目的とする成形品の形状にあった空隙部を形成するように作製される。成形型の形状、材質、大きさなどは特に制限されない。さらに、ガラス板や金属板などの板状成形型と所定の厚さのスペーサーとを用意し、スペーサーを2枚の板状成形型で挟んで形成される空間内に重合性組成物を注入し塊状重合することにより、シート状又はフィルム状の架橋性樹脂成形体を得ることもできる。
重合性組成物を成形型のキャビティー内に充填する際の充填圧力(注入圧)は、通常、0.01〜10MPa、好ましくは0.02〜5MPaである。充填圧力が低すぎると、キャビティー内周面に形成された転写面の転写が良好に行われない傾向にあり、充填圧が高すぎると、成形型の剛性を高くしなければならず経済的ではない。型締圧力は、通常、0.01〜10MPaの範囲内である。重合性組成物の加熱方法としては、成形型に配設された電熱器やスチームなどの加熱手段を利用する方法や、成形型を電気炉内で加熱する方法などが挙げられる。
(c)の方法は、シート状又はフィルム状の架橋性樹脂成形体を得るのに好適に使用される。得られる成形体の厚さは、通常、0.001〜10mm、好ましくは0.005〜1mm、より好ましくは0.01〜0.5mmの範囲である。この範囲にあれば、積層時の賦形性、及び積層体の機械的強度や靭性などが向上し、好適である。例えば、重合性組成物の繊維状強化材への含浸は、重合性組成物の所定量を、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、及びスリットコート法等の公知の方法により繊維状強化材に塗布し、所望によりその上に保護フィルムを重ね、上側からローラーなどで押圧することにより行うことができる。重合性組成物を繊維状強化材に含浸させた後、含浸物を所定温度に加熱することで重合性組成物を塊状重合させ、所望の架橋性樹脂成形体を得る。架橋性樹脂成形体中、繊維状強化材の含有量としては、通常、10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の範囲である。この範囲にあれば、得られる積層体の誘電特性と機械的強度がバランスされ、好適である。
繊維状強化材としては、無機系及び/又は有機系の繊維が使用できる。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、及び液晶ポリエステル繊維などの有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、ブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、及びシリカ繊維などの無機繊維;などが挙げられる。これらの中でも、有機繊維やガラス繊維が好ましく、特にアラミド繊維、液晶ポリエステル繊維、及びガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、Eガラス、NEガラス、Sガラス、Dガラス、及びHガラス等の繊維を好適に用いることができる。これらは1種単独で、又は2種以上を組合せて用いることができる。繊維状強化材の形態としては、特に限定されず、例えば、マット、クロス、及び不織布などが挙げられる。
繊維状強化材に重合性組成物を含浸させてなる含浸物の加熱方法としては、例えば、含浸物を支持体上に設置して前記(a)の方法のようにして加熱する方法、予め型内に繊維状強化材を設置しておき、該型内で重合性組成物を含浸させて含浸物を得、前記(b)の方法のようにして加熱する方法などが挙げられる。
前記(a)、(b)及び(c)のいずれの方法においても、重合性組成物を重合させるための加熱温度は、通常、30〜250℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは90〜150℃の範囲であって、かつ架橋剤、通常、ラジカル発生剤の1分間半減期温度以下、好ましくは1分間半減期温度の10℃以下、より好ましくは1分間半減期温度の20℃以下である。また、重合時間は適宜選択すればよいが、通常、1秒間〜20分間、好ましくは10秒間〜5分間である。重合性組成物をかかる条件で加熱することにより未反応モノマーの少ない架橋性樹脂成形体が得られるので好適である。
本発明の架橋性樹脂成形体は、その構成樹脂の一部分が架橋されたものであってもよい。例えば、型内で重合性組成物を塊状重合したときには、型の中心部分は重合反応熱が発散しにくいので、型内の一部の温度が高くなりすぎる場合がある。高温部では架橋反応が起き、架橋が生ずることがある。しかし、熱を発散しやすい表面部が架橋性の樹脂で形成されていれば、本発明の架橋性樹脂成形体は所望の効果を充分に発揮し得る。
本発明の架橋性樹脂成形体は、ラジカル発生剤などの架橋剤を含有してなるが、架橋反応を起す温度以上に加熱しない限り、表面硬度が変化するなどの不具合を生じず、保存安定性に優れる。
本発明の架橋性樹脂成形体は、例えば、プリプレグとして、本発明の架橋樹脂成形体及び積層体の製造に好適に用いられる。
2.架橋樹脂成形体
本発明の架橋樹脂成形体は、前記架橋性樹脂成形体を架橋することにより得られる。架橋性樹脂成形体の架橋は、該成形体を、該成形体の基材樹脂である脂環式構造含有ポリマー(A)において架橋反応が生ずる温度以上に加熱維持することにより行うことができる。加熱温度は、通常、架橋剤により架橋反応が誘起される温度以上である。例えば、架橋剤としてラジカル発生剤を使用する場合、通常、1分間半減期温度以上、好ましくは1分間半減期温度より5℃以上高い温度、より好ましくは1分間半減期温度より10℃以上高い温度である。典型的には、100〜300℃、好ましくは150〜250℃の範囲である。加熱時間は、0.1〜180分間、好ましくは0.5〜120分間、より好ましくは1〜60分間の範囲である。また、前記重合性組成物を、前記架橋性樹脂成形体が架橋する温度以上に維持することにより、具体的には、ここに記載する、温度及び時間で加熱することにより、シクロオレフィンモノマーの塊状重合と、当該重合により生ずる脂環式構造含有ポリマー(A)における架橋反応とを共に進行させて、本発明の架橋樹脂成形体を製造することも可能である。このようにして架橋樹脂成形体を製造する場合、前記(a)の方法に準じ、例えば、支持体として銅箔を用いれば、銅張積層板〔Copper Clad Laminates (CCL)〕を得ることができる。
3.積層体
本発明の積層体は、前記架橋性樹脂成形体及び/又は前記架橋樹脂成形体からなる層を有してなるものである。架橋性樹脂成形体、又は架橋樹脂成形体からなる層が複数存在する場合、両成形体はそれぞれ、連続的に積層されていても、他の層を挟んで間接的に積層されていてもよい。
本発明の架橋性樹脂成形体からなる層を有する積層体としては、例えば、前記(a)の方法で得られる、銅箔と架橋性樹脂成形体とが層状に一体化してなるRCCが挙げられる。また、本発明の架橋樹脂成形体からなる層を有する積層体としては、例えば、前記(a)の方法に準じて得られる、銅箔と架橋樹脂成形体とが層状に一体化してなるCCLが挙げられる。前記(a)の方法において、支持体として、別途得られた架橋樹脂成形体を用いれば、架橋性樹脂成形体からなる層と架橋樹脂成形体からなる層とを有する積層体を得ることもできる。本発明の積層体としては、特に、架橋性樹脂成形体からなる層を、表面粗度(Rz)が2μm以下である金属箔に積層し架橋してなるものが好ましい。
また、架橋性樹脂成形体がシート状又はフィルム状である場合、該成形体、及び所望により、シート状又はフィルム状の架橋樹脂成形体を、任意に積層し、又はさらに、例えば、前記金属箔を積層し、熱プレスして架橋することにより、架橋樹脂成形体からなる層を有する、本発明の積層体が得られる。その際、前記RCCやCCLなどの積層体を積層してもよい。熱プレスするときの圧力は、通常、0.5〜20MPa、好ましくは3〜10MPaである。熱プレスは、真空又は減圧雰囲気下で行ってもよい。熱プレスは、平板成形用のプレス枠型を有する公知のプレス機、シートモールドコンパウンド(SMC)やバルクモールドコンパウンド(BMC)などのプレス成形機を用いて行なうことができる。
本発明の積層体は、低誘電率及び低誘電正接といった、シクロオレフィンポリマーに特有の優れた電気的特性を有しており、高周波領域での伝送ロスが少なく、かつ配線埋め込み性及び耐熱性に優れるため、広範囲の用途を有する高周波用多層回路基板の材料として好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
実施例及び比較例における各特性は、以下の方法に従って評価した。
(1)ピール強度
銅張積層板から銅箔を引き剥がすときの強度を、JIS C6481に準拠して測定し、以下の基準に従ってピール強度を評価した。
(評価基準)
A:0.3kN/m超
B:0.2kN/m超0.3kN/m以下
C:0.2kN/m以下
(2)微細配線埋め込み性
プリプレグシートを回路基板( L/S=15μmの配線を15本配置した試験基板)上に重ね、205℃で10分間、3MPaにて加熱プレスを行い積層体を得た。該積層体を、配線方向に対し垂直な方向で任意に3箇所で切断した。得られた積層体の切断面を目視により観察し、回路基板上の樹脂層への微細配線埋め込み性について以下の基準で評価した。
A:配線が埋め込まれていない部分がない
B:配線が埋め込まれていない
(3)粘度
重合性組成物の粘度を室温でE型粘度計により回転数10rpmで測定し、以下の基準にて評価した。
A:粘度が、1000mPa・sec未満
B:粘度が、1000mPa・sec以上3,000mPa・sec未満
C:粘度が、3,000mPa・sec以上
実施例1
ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド 51部と、トリフェニルホスフィン 79部とを、トルエン 952部に溶解させて触媒液を調製した。これとは別に、シクロオレフィンモノマーとしてテトラシクロドデセン(TCD)80部及びジシクロペンタジエン 20部、酸化ケイ素粒子(アドマテックス社製、商品名SOC02、平均粒子径0.5μm)200部、連鎖移動剤としてスチレン 0.74部、架橋剤としてジ−t−ブチルペルオキシド(1分間半減期温度186℃)2部、反応性流動化剤としてベンジルメタクリレート 15部、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレート 20部、難燃剤としてジメチルホスフィン酸アルミニウム 50部、フェノール系老化防止剤として3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール 1部、並びにメタクリルシラン 2部を混合してモノマー液を調製した。ここに上記触媒液をシクロオレフィンモノマー100gあたり0.12mLの割合で加えて撹拌し、重合性組成物を調製した。
ついで、得られた重合性組成物をガラスクロス(Eガラス)に含浸させ、これを120℃にて5分間で重合反応を行い、厚さ0.15mmのプリプレグシートを得た。得られたプリプレグシートを用い、前記(2)微細配線埋め込み性に記載の方法に従って積層体を得、微細配線埋め込み性について評価した。
次に、作製したプリプレグシート6枚を重ね、さらに12μmF2銅箔(シランカップリング剤処理電解銅箔、粗度Rz=1,600nm、古河サーキットホイル社製)で、積層したプリプレグシートを挟み、205℃で20分間、3MPaにて加熱プレスを行い銅張積層板を得た。得られた銅張積層板のピール強度を評価した。以上の結果を表1に示す。
実施例2
さらに連鎖移動剤としてスチレン 0.74部を重合性組成物に加えた以外は実施例1と同様にして、プリプレグシート及び銅張積層板を得、各特性について評価した。結果を表1に示す。
実施例3
さらに添加剤としてテトラエトキシシラン 0.74部を重合性組成物に加えた以外は実施例2と同様にして、プリプレグシート及び銅張積層板を得、各特性について評価した。結果を表1に示す。
比較例1
重合性組成物にメタクリルシランを配合しなかった以外は実施例2と同様にして、プリプレグシート及び銅張積層板を得、各特性について評価した。結果を表1に示す。
比較例2
メタクリルシランの代わりにエトキシシラン 2部を重合性組成物に加えた以外は実施例2と同様にして、プリプレグシート及び銅張積層板を得、各特性について評価した。結果を表1に示す。
Figure 2012140539
表1より、実施例1〜3で得られた重合性組成物は低粘度であり、積層体は優れたピール強度と微細配線埋め込み性を有することが分かる。一方、比較例1ではメタクリルシランを重合性組成物に添加しなかったところ粘度が高くなり、得られた積層体はピール強度と微細配線埋め込み性に劣ることが、比較例2ではメタクリルシランの代わりにエトキシシランを重合性組成物に添加したところその粘度は低くなるが、得られた積層体はピール強度に劣ることが分かる。

Claims (9)

  1. 脂環式構造含有ポリマー、架橋剤、及び少なくとも1つの架橋性基を有するカップリング剤を含んでなる架橋性樹脂成形体。
  2. 脂環式構造含有ポリマーが、主鎖及び/又は末端にカップリング剤の親水基を有してなるものである請求項1記載の架橋性樹脂成形体。
  3. 脂環式構造含有ポリマーの全モノマー単位100モル%中、カップリング剤の親水基が結合したモノマー単位の割合が0.005〜15モル%である請求項2記載の架橋性樹脂成形体。
  4. カップリング剤の親水基が、Ti、Al、又はSiに結合した、ヘテロ原子が含まれていてもよい、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20の、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキロイル基、又はアルケノイル基からなる親水基(X)である請求項2又は3記載の架橋性樹脂成形体。
  5. テトラアルコキシシラン化合物、テトラアルケニロキシシラン化合物、及びテトラアリーロキシシラン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物をさらに含有してなる請求項1〜4いずれか記載の架橋性樹脂成形体。
  6. 繊維状強化材をさらに含んでなる請求項1〜5いずれか記載の架橋性樹脂成形体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の架橋性樹脂成形体を架橋してなる架橋樹脂成形体。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の架橋性樹脂成形体及び/又は請求項7に記載の架橋樹脂成形体からなる層を有する積層体。
  9. 架橋性樹脂成形体からなる層を、表面粗度(Rz)が2μm以下である金属箔に積層し架橋してなる請求項8記載の積層体。
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