JP4934043B2 - 液浸式ArFレーザー露光用液体および液浸式ArFレーザー露光方法 - Google Patents

液浸式ArFレーザー露光用液体および液浸式ArFレーザー露光方法 Download PDF

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Description

本発明は、液浸式ArFレーザー露光用液体および液浸式ArFレーザー露光方法に関し、特に、半導体集積回路などの各種電子デバイスを製造するためのリソグラフィー工程で用いられる投影露光装置において、露光時に投影光学系と電子デバイスとなる基板との間の光路中に液体を介在させる、液浸式ArFレーザー露光装置に使用される技術に関するものである。
各種電子デバイスの高集積化・高密度化に伴って、リソグラフィー法による形成パターンは微細化が進み、最先端の工程では波長193nmのArFレーザーを用いて、ハーフピッチ90から65nm程度の線幅/線間隔パターンの解像が可能となっている。
電子デバイスの高集積化・高密度化の要求は高まり続けており、リソグラフィー工程においてもなお一層の微細化が求められている。リソグラフィー工程の微細化には、露光光の波長を短くすることが一般的であり、ハーフピッチ65nmより微細な領域に対しては、F2レーザー、EUV(extreme ultraviolet:極端紫外光)等を用いた装置の開発も進められているが、これらの波長において透明なレンズの開発が困難になって光学系がコスト高になるなど、課題が多い。
他の微細化の手段として、レンズのNA(numerical aperture:開口数)の増大化がある。NAの増大化には、投影レンズによる露光光の入射角度を大きくする方法が一般的であるが、この場合、レンズと空気の屈折率差により入射角度に限界があることに加え、DOF(depth of focus:焦点深度幅)が低下してしまう問題がある。
これらに対し、従来の投影光学系を用いて、すなわち露光光の波長が同じでも、DOFを低下させずにNAを増大させる手法として、液浸式露光法が提案されている(特許文献1)。この方法は、露光時に、レンズと基板の間の少なくとも一部分に、空気や窒素ガスなどの気体よりも高屈折率の液体を介在させるものである。この液体の屈折率をnとすれば、液体中での露光光の波長は、空気や窒素ガスのみの従来のドライ露光法と比べて1/nになり、同じ露光波長の光源を用いても、入射角度をより大きくできて解像度を向上させることが可能で、DOFもより拡大できる。
高屈折率の液体として純水(屈折率1.44)を用いる液浸式露光法は、ArFレーザーを光源としてハーフピッチ45nm前後の線幅/線間隔パターンまでの解像が可能で、すでにさまざまな関連技術が公開されている(特許文献2)。
さらに続く微細な領域としては、ハーフピッチ40〜30nm程度の線幅/線間隔パターンが求められており、これをArF露光で実現するためには、193nmの波長光において屈折率が1.6以上の液体を用いることが望まれている。また、レーザーによる発熱などの影響の少ない良好な露光性能を維持するためには、同じく193nmでの透明性が高く、透過率にして1mmの膜厚で80%以上、好ましくは90%以上が必要とされる。
ここで、純水より高屈折率の液体については、まず現在開発中のハーフピッチ45nm前後までの液浸式露光技術において、短波長領域で透明性が高いことから、純水と同等に適用が検討されているフッ素系溶剤(特許文献3)が有力とされる。しかし、構造中にフッ素を有する化合物は一般に屈折率が低く、目的の屈折率1.6を満たす化合物は見出されていない。
そのほかにも、無機化合物を添加した水、あるいは有機溶剤を用いた検討は報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。しかしながら、これらも以下のような欠点がある。すなわち、無機化合物を添加した水としては、リン酸水溶液などの例があるが、これらは、屈折率は1.6まで到達したものがあるものの、透過率が低く、また添加物がレンズや基板を汚染したり腐食したりする可能性がある。また有機溶媒系でも、グリセロール(屈折率1.6)などのアルコール類では屈折率は高いものの、190nm近傍に吸収をもつため、透過率が低い。
特開平6−124873号公報 特開2005−19616号公報 特開2004−325466号公報 Brucc W. Smith他5名、「Approaching the numerical aperture of water-immersion lithography at 193nm」、Proceedings of SPIE、2004年、Vol.5377、p.273−284頁 Simon G. Kaplan and John H. Burnett、「Characterization of refractive properties of fluids for immersion photolithography」、International Symposium on Immersion and 157nm Lithography、2004年、8月2−5日
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、液浸露光用の液体として、ArFレーザーの波長光において光透過率が高く、かつ屈折率が高い材料を提供する。
本発明の課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した。その結果、不純物の量を制御した飽和炭化水素化合物の中で193nmの波長光に対して透過率・屈折率とも高いものが得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
[1]トランス−デカヒドロナフタレンまたはビシクロヘキシルを主成分とし、不飽和結合またはヘテロ原子を構造中に含む不純物の含有量が、それぞれ、
(i)共役した不飽和結合を有する化合物で合計2μg/mL以下、
(ii)共役した不飽和結合を有さず共役しない不飽和結合を有する化合物で合計30μg/mL以下、
(iii)不飽和結合を有しないアミン類では合計15μg/mL以下、
(iv)前記(i)乃至(iii)以外のヘテロ環状化合物、アルコール類、エーテル類および含ハロゲン化合物では合計100μg/mL以下である、液浸式ArFレーザー露光用液体であり、
[2][1]に記載の液体において、前記(i)乃至(iv)の前記不純物の含有量が、合計で100μg/mL以下である、液浸式ArFレーザー露光用液体であり、
[3][1]または[2]に記載の液体において、前記不純物が、芳香族化合物、ヘテロ環状化合物、アルケン類、アルキン類、アルコール類、エーテル類、カルボニル化合物、含ハロゲン化合物およびアミン類からなる群から選択される一種以上である、液浸式ArFレーザー露光用液体であり、
[4][1]または[2]に記載の液体において、前記ヘテロ環状化合物が、含酸素環状化合物、含硫黄環状化合物および含窒素環状化合物からなる群から選択される一種以上である、液浸式ArFレーザー露光用液体であり、
[5][1]または[2]に記載の液体において、
前記主成分がトランス−デカヒドロナフタレンであって、
前記(i)共役した不飽和結合を有する化合物が、トルエン、テトラヒドロナフタレンおよびフタル酸エステル類からなる群から選択される一種以上であり、
前記(ii)共役した不飽和結合を有さず共役しない不飽和結合を有する化合物がオクテン類であり、
前記(iv)(i)乃至(iii)以外のヘテロ環状化合物、アルコール類、エーテル類または含ハロゲン化合物がシクロヘキサノール類である、液浸式ArFレーザー露光用液体であり、
[6][1]または[2]に記載の液体において、
前記主成分がビシクロヘキシルであって、
前記(i)共役した不飽和結合を有する化合物がビフェニル、クレゾール類、およびフタル酸エステル類からなる群から選択される一種以上であり、
前記(ii)共役した不飽和結合を有さず共役しない不飽和結合を有する化合物がシクロヘキサンカルボン酸メチルであり、
前記(iv)前記(i)乃至(iii)以外のヘテロ環状化合物、アルコール類、エーテル類または含ハロゲン化合物がテトラヒドロフラン、シクロヘキシルメタノールおよびn−ブタノールからなる群から選択される一種以上である、液浸式ArFレーザー露光用液体であり、
[7][1]乃至[]いずれかに記載の液浸式ArFレーザー露光用液体を用いる液浸式ArFレーザー露光方法である。
本発明の液浸式露光用液体は、飽和炭化水素化合物を主成分とし、不飽和結合またはヘテロ原子を構造中に含む不純物の含有量が、それぞれ、
(i)共役した不飽和結合を有する化合物で合計2μg/mL以下、
(ii)共役した不飽和結合を有さず共役しない不飽和結合を有する化合物で合計30μg/mL以下、
(iii)不飽和結合を有しないアミン類では合計15μg/mL以下、
(iv)上記(i)乃至(iii)以外のヘテロ環状化合物、アルコール類、エーテル類および含ハロゲン化合物では合計100μg/mL以下
である。以下、この液浸式露光用液体を、「液浸式露光用液体(a)」とも呼ぶ。
本発明においては、液浸式露光用液体中の不純物のうち、上記(i)〜(iv)に分類される物質のそれぞれが、上記の所定の濃度以下となっている。複数種類の不純物のそれぞれについて、所定の濃度以下になるようにすることにより、193nmの波長光に対して透過率が80%/mm以上で、かつ高屈折率の液浸式露光用液体を安定的に得ることができる。
液浸式露光用液体(a)の屈折率は、解像度をさらに向上させる観点では、屈折率がたとえば1.5以上、好ましくは1.6以上、さらに好ましくは1.63以上である。
また、液浸式露光用液体(a)の透過率および屈折率をさらに高める観点では、上記(i)〜(iv)に分類される不飽和結合またはヘテロ原子を構造中に含む不純物の含有量が、合計で100μg/mL以下であり、かつ、(i)〜(iv)の各不純物濃度を上記範囲とすることが好ましい。
本発明で液浸式露光用液体(a)として用いる飽和炭化水素化合物はトランス−デカヒドロナフタレンまたはビシクロヘキシルである。
また、飽和炭化水素化合物は、単一で用いても、複数種の化合物を混合して用いてもよい。
主成分である飽和炭化水素化合物の液浸式露光用液体(a)中の濃度、つまり主成分の純度は、193nmにおける透過率をより一層高める観点では、好ましくは99.0重量%以上、より好ましくは99.5%以上、さらに好ましくは99.9%以上である。
なお、主成分である飽和炭化水素化合物の純度とは、液浸式露光用液体全体に対する主成分である飽和炭化水素化合物の割合である。飽和炭化水素化合物は1種でもよいし複数種でもよいが、複数種の場合、主成分として含まれる飽和炭化水素化合物の液浸式露光用液体全体に対する割合が純度となる。
本発明で用いられる飽和炭化水素化合物は、光や熱、酸素などに対する安定性が高く、毒性および腐食性も小さいため、取り扱いが簡便であり、工業的に安価に入手もしくは合成が可能である。したがって現在開発が進んでいる純水を用いた液浸式露光技術に、大きな技術的変更やコストをかけることなく適用することができる。
また、本発明により、高屈折率で光透過率の高い液浸式露光用液体が得られる。本発明の液浸式露光用液体を用いる液浸式露光方法においては、従来の露光装置を用いる場合であっても、より微細な解像が可能となる。特に、現在開発中のArF液浸露光装置に適用することにより、たとえば次々世代の電子デバイス製造に必要とされる、ハーフピッチ40〜30nm程度の線幅/線間隔パターンを容易に達成することができるため、本発明の工業的価値は大きい。
ここで、本発明で規定される飽和炭化水素化合物中の不純物は、市販品中に、または石炭・石油化学品などから製造する際に混在しうる化合物群、あるいは露光工程中にレジストなどから混入されうる化合物群であり、以下により具体的に示す。なお、金属やイオン性不純物は容易に除去できるので、市販の飽和炭化水素化合物中には通常含まれない。
本発明において、液浸式露光用液体中の不純物のうち、所定の濃度以下に設定される化合物は、不飽和結合またはヘテロ原子を構造中に含む物質である。この物質は、以下の(i)〜(iv)に大別される。
(i)共役した不飽和結合を有する化合物、
(ii)共役した不飽和結合を有さず共役しない不飽和結合を有する化合物、
(iii)不飽和結合を有しないアミン類、および
(iv)上記(i)〜(iii)以外のヘテロ環状化合物、アルコール類、エーテル類および含ハロゲン化合物。
(i)共役した不飽和結合を有する化合物としては、たとえば、芳香族化合物、共役ジエン類、α,β−不飽和カルボニル化合物が挙げられる。
芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン、ビフェニル、フルオレン、アントラセン、フェナントレンなどの芳香族炭化水素化合物;
フェノール、クレゾールや2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のクレゾール類、カテコール、ベンジルアルコール、アニリン、アミノナフタレン、ベンゼンチオール、安息香酸、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)等のフタル酸エステル類などの官能基置換芳香族化合物などが挙げられる。
共役ジエン類としては、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
α,β−不飽和カルボニル化合物としては、アクリル酸エステル類などが挙げられる。
液浸式露光用液体中の(i)共役した不飽和結合を有する化合物の合計濃度は、2μg/mL以下、好ましくは1μg/mL以下、さらに好ましくは0.1μg/mL以下である。
(ii)共役した不飽和結合を有さず共役しない不飽和結合を有する化合物としては、たとえば、上記(i)以外のアルケン類、アルキン類、カルボニル化合物が挙げられる。
このうち、アルケン類としては、1−ヘキセン、1−オクテンなどの末端オレフィン類;
2−オクテンなどの内部オレフィン類;
シクロヘキセンなどの環状オレフィン類;
またそれぞれのジエン類およびトリエン類などが挙げられる。
アルキン類としては、1−ヘキシン、1−オクチンなどが挙げられる。
カルボニル化合物としては、ヘキサナール、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類;
アセトン、2−ブタノン、アセトフェノンなどのケトン類;
酢酸などのカルボン酸類;
酢酸エチル、シクロヘキサンカルボン酸メチルなどのエステル類;
またそれぞれ官能基を複数の組み合わせでもつ化合物などが挙げられる。
液浸式露光用液体中の(ii)共役した不飽和結合を有さず共役しない不飽和結合を有する化合物の合計濃度は、30μg/mL以下、好ましくは10μg/mL以下、さらに好ましくは1μg/mL以下である。
(iii)不飽和結合を有しないアミン類としては、トリエチルアミン、ヘキシルアミンなどが挙げられる。液浸式露光用液体中の(iii)不飽和結合を有しないアミン類の合計濃度は、15μg/mL以下、好ましくは5μg/mL以下、さらに好ましくは0.5μg/mL以下である。
(iv)上記(i)〜(iii)以外のヘテロ環状化合物、アルコール類、エーテル類および含ハロゲン化合物のうち、ヘテロ環状化合物としては、フラン、ピラン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの含酸素環状化合物;
チオフェン、テトラヒドロチオフェンなどの含硫黄環状化合物;
ピロール、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジンなどの含窒素環状化合物などが挙げられる。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、n−オクタノールなどの鎖状アルコール類;
シクロヘキサノール、シクロヘキシルメタノール、ジメチルシクロヘキサノールなどのシクロヘキサノール類や、その他の環状アルコール類が挙げられる。
また、上記においては、モノアルコールを例示したが、分子中の水酸基の数に特に制限はなく、たとえば、他に、
エチレングリコールなどのジオール類;
グリセロールなどのトリオール類などが挙げられる。
エーテル類としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタンなどが挙げられる。
含ハロゲン化合物としては、クロロホルム、ブロモベンゼン、ヨードベンゼンなどが挙げられる。
液浸式露光用液体中の(iv)上記(i)〜(iii)以外のヘテロ環状化合物、アルコール類、エーテル類および含ハロゲン化合物の合計濃度は、100μg/mL以下、好ましくは50μg/mL以下、さらに好ましくは3μg/mL以下である。
本発明の液浸式露光用液体における不純物は、たとえば、芳香族化合物、ヘテロ環状化合物、アルケン類、アルキン類、アルコール類、エーテル類、カルボニル化合物、含ハロゲン化合物およびアミン類からなる群から選択される一種以上である。
また、本発明において、主成分の飽和炭化水素化合物と不純物とのさらに具体的な組み合わせとして、たとえば、以下の態様が挙げられる。
主成分の飽和炭化水素化合物がトランス−デカヒドロナフタレンであって、(i)共役した不飽和結合を有する化合物が、トルエン、テトラヒドロナフタレンおよびフタル酸エステル類からなる群から選択される一種以上であり、(ii)共役した不飽和結合を有さず共役しない不飽和結合を有する化合物がオクテン類であり、(iv)前記(i)乃至(iii)以外のヘテロ環状化合物、アルコール類、エーテル類または含ハロゲン化合物がシクロヘキサノール類である態様、または
主成分の飽和炭化水素化合物がビシクロヘキシルであって、(i)共役した不飽和結合を有する化合物がビフェニル、クレゾール類、およびフタル酸エステル類からなる群から選択される一種以上であり、(ii)共役した不飽和結合を有さず共役しない不飽和結合を有する化合物がシクロヘキサンカルボン酸メチルであり、(iv)(i)乃至(iii)以外のヘテロ環状化合物、アルコール類、エーテル類または含ハロゲン化合物がテトラヒドロフラン、シクロヘキシルメタノールおよびn−ブタノールからなる群から選択される一種以上である態様。
また、本発明の好ましい態様として、下記液浸式露光用液体(b)が挙げられ、さらに好ましい態様として、下記液浸式露光用液体(c)が挙げられる。
液浸式露光用液体(b):
飽和炭化水素化合物を主成分とし、不飽和結合またはヘテロ原子を構造中に含む不純物の含有量が、それぞれ
(i)共役した不飽和結合を有する化合物で合計1μg/mL以下、
(ii)共役した不飽和結合を有さず共役しない不飽和結合を有する化合物で合計10μg/mL以下、
(iii)不飽和結合を有しないアミン類では合計5μg/mL以下、
(iv)上記(i)乃至(iii)以外のヘテロ環状化合物、アルコール類、エーテル類および含ハロゲン化合物では合計50μg/mL以下であるもの。
液浸式露光用液体(b)によれば、波長193nmの光に対する透過率が90%/mm以上であって屈折率がたとえば1.63以上である高透過率かつ高屈折率が安定的に得られる。
また、液浸式露光用液体(b)の透過率および屈折率をさらに高める観点では、上記(i)〜(iv)に分類される不飽和結合またはヘテロ原子を構造中に含む不純物の含有量が、合計で50μg/mL以下であり、かつ、(i)〜(iv)の各不純物濃度を上記範囲とすることが好ましい。
液浸式露光用液体(c):
飽和炭化水素化合物を主成分とし、不飽和結合またはヘテロ原子を構造中に含む不純物の含有量が、それぞれ、
(i)共役した不飽和結合を有する化合物で合計0.1μg/mL以下、
(ii)共役した不飽和結合を有さず共役しない不飽和結合を有する化合物で合計1μg/mL以下、
(iii)不飽和結合を有しないアミン類では合計0.5μg/mL以下、
(iv)前記(i)乃至(iii)以外のヘテロ環状化合物、アルコール類、エーテル類および含ハロゲン化合物では合計3μg/mL以下であるもの。
液浸式露光用液体(c)によれば、波長193nmの光に対する透過率が98%/mm以上であって屈折率がたとえば1.63以上である高透過率かつ高屈折率が安定的に得られる。
また、液浸式露光用液体(c)の透過率および屈折率をさらに高める観点では、上記(i)〜(iv)に分類される不飽和結合またはヘテロ原子を構造中に含む不純物の含有量が、合計で3μg/mL以下であり、かつ、(i)〜(iv)の各不純物濃度を上記範囲とすることが好ましい。
次に、本発明の液浸式露光用液体の製造方法を説明する。液浸式露光用液体(a)は、不純物(i)〜(iv)が上述した濃度範囲であれば、どのような製法で得られるものであってもよい。
液浸式露光用液体として用いる飽和炭化水素化合物の合成法、精製法については、特に限定されるものではないが、市販品あるいは同じ炭素骨格で不飽和結合を有する化合物を水素還元するなどして合成したものを、活性炭処理あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーあるいは蒸留などにより高純度に精製することで得ることができる。
ただし、液浸式露光用液体(a)を、上述した従来の方法で安定して得ることは困難である。なぜなら、液浸式露光用液体(a)を得るためには、上記(i)〜(iv)の各不純物の濃度を所定値以下とする必要があるが、蒸留では、原料に沸点の近い、あるいは主成分と共沸混合物を生じる不純物を所定値以下にするために、工程数の増大、収率の低下などの問題が生じる。また実施例の項で後述するように、市販の飽和炭化水素化合物を原料とした場合シリカゲルを用いた濾過だけでは、(i)〜(iv)のすべての不純物の濃度を所定値以下とすることはできなかった。このため、露光光に対する透過率を充分に高めることはできなかった。
一方、本発明においては、飽和炭化水素化合物および不純物の種類に応じて所定の吸着剤を選別して用い、さらに、種類の異なる複数の吸着剤に飽和炭化水素化合物を接触させる。液浸式露光用液体の原料となる液体中に除去必須の不純物成分が複数存在しており、一つの吸着剤ではすべての不純物成分を除去することが困難な場合にも、複数の吸着剤を組み合わせて用いることにより、性質の異なる複数の不純物成分をたとえば同一工程で効率よく除去することができる。また、これにより、飽和炭化水素化合物の純度をより一層向上させることができる。このため、(i)〜(iv)のいずれの不純物についても濃度を所定値以下とすることが可能となり、高屈折率かつ高透過率の液浸式露光用液体(a)を簡便に得られることができる。
また、特に、液浸式露光用液体(c)は、通常の蒸留や酸処理のみによっては安定して得ることは困難で、複数種の吸着剤を組み合わせて用い、必要に応じて吸着操作を複数回繰り返し行うことにより、はじめて安定的に実現される。
以下、複数の吸着剤を用いた液浸式露光用液体の精製方法をさらに具体的に説明する。
ここでは、飽和炭化水素化合物を第1および第2の吸着剤に接触させて、不純物濃度が上述した濃度以下の当該飽和炭化水素化合物を含む液浸式露光用液体を得る。飽和炭化水素化合物を第1の吸着剤に接触させる工程と第2の吸着剤に接触させる工程とは、同一工程であってもよいし、別工程であってもよい。また、第2の吸着剤は、液体中に含まれる微粒子、第1の吸着剤などを物理的に濾別する濾材としての機能をもつものとすることもできる。
たとえば、第1の吸着剤と第2の吸着剤とを混合して飽和炭化水素化合物に接触させて、飽和炭化水素化合物を第1の吸着剤に接触させるとともに第2の吸着剤に接触させてもよい。また、第1の吸着剤と第2の吸着剤と別々の空間に収容し、飽和炭化水素化合物を第1の吸着剤に接触させる工程の後、第2の吸着剤と接触させる工程を行ってもよい。
また、吸着剤の接触は、たとえばバッチ法やカラムクロマトグラフィーにより行うことができる。吸着剤の接触は、単数または複数段のいずれとしてもよい。
吸着剤としては、飽和炭化水素化合物の性状に応じて選択した複数種を組み合わせて用いることができるが、たとえば、シリカゲル、活性炭、アルミナ(活性アルミナ)、ゼオライト、モレキュラーシーブス等が挙げられる。
吸着剤の具体的な組み合わせとしては、第1の吸着剤を活性炭とし、第2の吸着剤をシリカゲルまたはアルミナとする組み合わせが挙げられる。こうすることにより、飽和炭化水素化合物の純度および透過率をさらに確実に高めることができる。
また、吸着剤の形状は、たとえば粒子状とする。こうすれば、露光装置における液浸式露光用液体の供給系の所定の領域に容易に充填可能であり、また、吸着剤の比表面積を増加させることができる。
また、液浸式露光用液体の精製方法が、さらに、飽和炭化水素化合物を第3または第3から第n(nは4以上の整数)の吸着剤に接触させる工程を含んでもよい。これにより、飽和炭化水素化合物中に複数の不純物が含まれる場合にも、これらの不純物をより一層効果的に除去することができる。
なお、飽和炭化水素化合物を第3または第3から第n(nは4以上の整数)の吸着剤に接触させる工程は、飽和炭化水素化合物を第1または第2の吸着剤に接触させる工程と同一工程であってもよいし、飽和炭化水素化合物を第1および第2の吸着剤に接触させる工程とは別工程としてもよい。また、第3または第nの吸着剤は、液体中に含まれる微粒子、その他の吸着剤などを物理的に濾別する濾材としての機能をもつものとすることもできる。
飽和炭化水素化合物を第3の吸着剤に接触させる工程が、飽和炭化水素化合物を第1または第2の吸着剤に接触させる工程と同一工程である例として、第1、第2および第3の吸着剤を混合し、飽和炭化水素化合物に接触させる方法が挙げられる。また、第1および第3の吸着剤を混合したものに飽和炭化水素化合物を接触させた後、飽和炭化水素化合物を第2の吸着剤に接触させてもよい。
飽和炭化水素化合物を第3の吸着剤に接触させる工程が、飽和炭化水素化合物を第1または第2の吸着剤に接触させる工程と別工程である例として、第1、第2および第3の吸着剤をそれぞれ別々の空間に収容し、飽和炭化水素化合物を所定の順序で接触させる方法が挙げられる。さらに具体的には、第1の吸着剤を活性炭とし、第2の吸着剤をシリカゲルとし、第3の吸着剤をアルミナとして、飽和炭化水素化合物を、第1、第3および第2の吸着剤にこの順に接触させてもよい。
さらに、四種以上の吸着剤に接触させる場合にも、三種以下の吸着剤を用いる場合と同様に、所定の吸着剤を適宜組み合わせることができる。
なお、本発明の液浸式露光用液体を製造する精製装置の例としては、原料の液体を入れた原料槽に、第1の吸着剤を共存させて攪拌しておき、第2の吸着剤を充填したカラムへ送液して通過させ、蓄積槽に液浸液体として蓄積する装置が挙げられる。なお、上述したように、第2に続いて、第3、さらには第n(nは4以上の整数)の吸着剤を充填したカラムに連続して通過させてもよい。
また、ひとつのカラムに複数の吸着剤を充填してもよい。また、カラムを通過した液体をサンプリングし、その純度をガスクロマトグラフィー法または透過スペクトル法等により測定して、サンプリングした液体の不純物濃度が上述した濃度以下あるいは所定の透過率以上とならない場合には再度吸着剤のカラムを通過させるような循環システムをとることもできる。
このようにすれば、純水と同等の透過率とより高い屈折率を示す高屈折率透明液体がより一層簡便に提供され、この液体を既存の液浸式露光装置に適用することにより、純水を利用する場合と比べてより微細な解像を可能にでき、より高集積化、高密度化した電子デバイスの製造に利用できる。
なお、上述した精製方法においては、原料の純度が低い場合に必要に応じて、他の精製や新たな合成を併用してもよい。精製法、合成法については、特に限定されるものではないが、精製する場合、たとえば、市販品を活性炭あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィーに加えて、蒸留により高純度に精製してもよい。また、新たな合成の例としては、同じ炭素骨格で不飽和結合をもつ化合物を水素還元して化合物を合成し、上記と同様に精製することによっても得ることができる。
また、最初の精製においては、少なくとも第1および第2の吸着剤に接触させて、不純物濃度が上述した濃度以下の飽和炭化水素化合物を得るが、当該方法で精製済みの飽和炭化水素化合物を、露光後、再度精製して露光に用いる際には、少なくとも一種類の吸着剤に接触させればよい。
たとえば、本発明の液浸式露光用液体は、ArFレーザーが照射されたのち、吸着剤に接触させた液体であってもよい
また、本発明の液浸式露光用液体において、主成分の飽和炭化水素化合物が、ArFレーザーが照射されたのち、吸着剤に接触させたトランス−デカヒドロナフタレンであり、(ii)共役した不飽和結合を有さず共役しない不飽和結合を有する化合物がオクタヒドロナフタレン類およびオキソデカヒドロナフタレン類の一種以上であり、(iv)(i)乃至(iii)以外のヘテロ環状化合物、アルコール類、エーテル類および含ハロゲン化合物がヒドロキシデカヒドロナフタレン類であってもよい。
また、本発明の液浸式露光用液体において、主成分の飽和炭化水素化合物が、ArFレーザーが照射されたのち、吸着剤に接触させたビシクロヘキシルであり、(ii)共役した不飽和結合を有さず共役しない不飽和結合を有する化合物がシクロヘキセン、シクロヘキシルシクロヘキセン類およびジシクロヘキセニル類の一種以上であり、(iv)(i)乃至(iii)以外のヘテロ環状化合物、アルコール類、エーテル類および含ハロゲン化合物がヒドロキシヘキシルシクロヘキサン類であってもよい。
本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって限定を受けるものではない。
なお、以下において、不純物の濃度は、ガスクロマトグラフィー(カラム:SUPELCO EQUITY-1;内径0.25mm;長さ60m;膜厚0.25μm、温度40℃〜300℃;昇温速度10℃/分、検知FID(Flame Ionization Detector:水素炎イオン化検出器))により定量した。
光の透過率は、栓付の光路長10mmの石英セルにサンプルを入れ、窒素バブリングを30分以上行ったのち、窒素充填した同型のセルをリファレンスとして、紫外可視分光光度計(日立製作所製U−3010)を使用し、透過率測定モードにより測定した。
193nmでの屈折率は、ゴニオメータースペクトロメータ(独MOLLER-WEDEL社製1型UV-VIS-IR)を使用し、波長193.4nm、23℃における値を、最小偏角法により測定した。D線(589nm)での屈折率は、多波長アッベ屈折計(アタゴ社製DR−M2)を使用し、25℃における値を測定した。
また、以下の実施例、実験例および比較例において、精製には、以下の吸着剤を用いた。
シリカゲル:和光純薬社製、ワコーゲルC−200
アルミナ:MERCKICN社製、Alumina A、酸性 Super−I
活性炭:Norit社製、RO、ペレット
(実施例1)
市販のトランス−デカヒドロナフタレン(東京化成社製)10重量部に1重量部の活性炭を加えて、室温で24時間撹拌した後、前段として0.5重量部のアルミナと後段として2重量部のシリカゲルを用いたカラムで2回吸着ろ過することにより、不純物は表1のように減少した。精製後(実施例1)の結果を精製前の結果と併せて表1に示す。
Figure 0004934043
ただし、表1において、不純物A〜Fは、それぞれ、以下の物質である。
A:トルエン
B:1−オクテン
C:2−オクテン
D:2,4−ジメチルシクロヘキサノール
E:テトラヒドロナフタレン
F:フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)
上記不純物のうち、A、EおよびF成分は上記(i)に分類される。BおよびC成分は、上記(ii)に分類される。また、D成分は、上記(iv)に分類される。
また、表1および本明細書の他の表において、「<」は、不純物濃度が検出限界値未満であったことを示す。
これにより、193nmでの透過率98%/mmの液体を得た。屈折率を測定すると、1.64という高い値が得られた。
なお、精製後の液体において、アミン類は検出されなかった。
(実験例1)
実施例1のように精製したトランス−デカヒドロナフタレンに、不純物を添加し、透過率を測定したところ、表2のような関係が得られた。なお、表2に示した試料1、2、6、10、14および18のD線(589nm)での屈折率は、いずれも1.47であった。試料1の193nmでの屈折率が1.64であることから、試料2、6、10、14および18の193nmでの屈折率も1.6以上であると推算される。
Figure 0004934043
なお、表2において、不純物A〜Fは、表1同様、それぞれ、以下の物質である。
A:トルエン
B:1−オクテン
C:2−オクテン
D:2,4−ジメチルシクロヘキサノール
E:テトラヒドロナフタレン
F:フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)
また、表2において、試料1〜21のうち、試料1は、不純物を添加していない試料である。
試料2〜5は、A(トルエン)を所定濃度で添加した試料である。
試料6〜9は、E(テトラヒドロナフタレン)を所定濃度で添加した試料である。
試料10〜13は、F(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル))を所定濃度で添加した試料である。
試料14〜17は、B(1−オクテン)を所定濃度で添加した試料である。
試料18〜21は、D(2,4−ジメチルシクロヘキサノール)を所定濃度で添加した試料である。
(実施例2)
市販のビシクロヘキシル(東京化成社製)10重量部に1重量部の活性炭を加えて、室温で24時間撹拌した後、前段として0.5重量部のアルミナと後段として2重量部のシリカゲルを用いたカラムで3回吸着ろ過することにより、不純物は表3のように減少した。精製後(実施例2)の結果を精製前の結果と併せて表3に示す。
Figure 0004934043
なお、表3において、不純物G〜Kは、それぞれ、以下の物質である。
G:テトラヒドロフラン
H:シクロヘキシルメタノール
I:シクロヘキサンカルボン酸メチル
J:ビフェニル
K:2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
上記不純物のうち、GおよびH成分は上記(iv)に分類される。I成分は、上記(ii)に分類される。また、JおよびK成分は、上記(i)に分類される。
これにより、193nmでの透過率99%/mmの液体を得た。屈折率を測定すると、1.64という高い値が得られた。
なお、精製後の液体において、アミン類は検出されなかった。
(実験例2)
実施例2の精製ビシクロヘキシルに、不純物を添加し、透過率を測定したところ、表4のような関係が得られた。なお、表4に示した試料22、27および31のD線(589nm)での屈折率は、いずれも1.48であった。試料22の193nmでの屈折率が1.64であることから、試料27および31の193nmでの屈折率も1.6以上であると推算される。
Figure 0004934043
なお、表4において、不純物G〜Kは、表3同様、それぞれ、以下の物質である。
G:テトラヒドロフラン
H:シクロヘキシルメタノール
I:シクロヘキサンカルボン酸メチル
J:ビフェニル
K:2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
また、表4において、試料22〜34のうち、試料22は、不純物を添加していない試料である。
試料23〜26は、G(テトラヒドロフラン)を所定濃度で添加した試料である。
試料27〜30は、J(ビフェニル)を所定濃度で添加した試料である。
試料31〜34は、K(2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール)を所定濃度で添加した試料である。
(実験例3)
実施例2の精製ビシクロヘキシルに、不純物を添加し、透過率を測定したところ、表5のような関係が得られた。なお、表5に示した試料35、36、40および44のD線(589nm)での屈折率は、いずれも1.48であった。試料35の193nmでの屈折率が1.64であることから、試料36、40、44の193nmでの屈折率も1.6以上であると推算される。
Figure 0004934043
なお、表5において、不純物L〜Nは、それぞれ、以下の物質である。
L:アセトン
M:クロロホルム
N:トリエチルアミン
上記不純物のうち、L成分は上記(ii)に分類される。M成分は、上記(iv)に分類される。また、N成分は、上記(iii)に分類される。
また、表5において、試料35〜47のうち、試料35は、不純物を添加していない試料である。
試料36〜39は、L(アセトン)を所定濃度で添加した試料である。
試料40〜43は、M(クロロホルム)を所定濃度で添加した試料である。
試料44〜47は、N(トリエチルアミン)を所定濃度で添加した試料である。
(比較例1)
市販のトランス−デカヒドロナフタレン10重量部に対し、0.01重量部のシリカゲルを用いてろ過したところ、不純物は表6のように減少したが、193nmでの透過率は、25%/mmにとどまった。
Figure 0004934043
なお、表6において、不純物A〜Fは、表1と同様に、それぞれ、以下の物質である。
A:トルエン
B:1−オクテン
C:2−オクテン
D:2,4−ジメチルシクロヘキサノール
E:テトラヒドロナフタレン
F:フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)
(実施例3)
市販のビシクロヘキシル(Aldrich社製)10重量部に1重量部の活性炭を加えて、室温で24時間撹拌した後、前段として0.5重量部のアルミナと後段として2重量部のシリカゲルを用いたカラムで2回吸着ろ過することにより、不純物は表7のように減少した。精製後(実施例3)の結果を精製前の結果と併せて表7に示す。
Figure 0004934043
なお、表7において、不純物F、G、KおよびOは、それぞれ、以下の物質である。
F:フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)
G:テトラヒドロフラン
K:2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
O:n−ブタノール
上記不純物のうち、GおよびO成分は上記(iv)に分類される。また、FおよびK成分は、上記(i)に分類される。
これにより、193nmでの透過率99%/mmの液体を得た。屈折率を測定すると、1.64という高い値が得られた。
なお、精製後の液体において、アミン類は検出されなかった。
(実施例4)
実施例1のように精製したトランス−デカヒドロナフタレンを、窒素下石英セルに入れて密栓し、シミュレーションとして、通常の露光条件である10mJ付近より二桁以上大きいエネルギー条件で、ArFエキシマレーザー(浜松ホトニクス社製L5837)を照射した(エネルギー総量6,000mJ)。このサンプルの透過率を測定すると、93.7%/mmに低下した。これら10重量部に対して1重量部のシリカゲルを用いたカラムで吸着ろ過することにより、193nmでの透過率が98%/mm以上に回復した。この回復した液を分析したところ、(i)乃至(iv)に相当する不純物は検出されなかった。
(実施例5)
実施例2のように精製したビシクロヘキシルを、窒素下石英セルに入れて密栓し、シミュレーションとして、通常の露光条件である10mJ付近より二桁以上大きいエネルギー条件で、ArFエキシマレーザー(浜松ホトニクス社製L5837)を照射した(エネルギー総量6,000mJ)。このサンプルの透過率を測定すると、96.7%/mmに低下した。これら10重量部に対して1重量部のシリカゲルを用いたカラムで吸着ろ過することにより、193nmでの透過率が99%/mm以上に回復した。この回復した液を分析したところ、(i)乃至(iv)に相当する不純物は検出されなかった。
以上の実施例により、純水と同等の透過率とより高い屈折率を示す高屈折率透明液体が得られた。よって、得られた液体を既存の液浸式露光装置に適用することにより、純水を利用する場合と比べてより微細な解像を可能にでき、より高集積化、高密度化した電子デバイスの製造に利用できる。

Claims (7)

  1. トランス−デカヒドロナフタレンまたはビシクロヘキシルを主成分とし、不飽和結合またはヘテロ原子を構造中に含む不純物の含有量が、それぞれ、
    (i)共役した不飽和結合を有する化合物で合計2μg/mL以下、
    (ii)共役した不飽和結合を有さず共役しない不飽和結合を有する化合物で合計30μg/mL以下、
    (iii)不飽和結合を有しないアミン類では合計15μg/mL以下、
    (iv)前記(i)乃至(iii)以外のヘテロ環状化合物、アルコール類、エーテル類および含ハロゲン化合物では合計100μg/mL以下である、液浸式ArFレーザー露光用液体。
  2. 請求項1に記載の液体において、前記(i)乃至(iv)の前記不純物の含有量が、合計で100μg/mL以下である、液浸式ArFレーザー露光用液体。
  3. 請求項1または2に記載の液体において、前記不純物が、芳香族化合物、ヘテロ環状化合物、アルケン類、アルキン類、アルコール類、エーテル類、カルボニル化合物、含ハロゲン化合物およびアミン類からなる群から選択される一種以上である、液浸式ArFレーザー露光用液体。
  4. 請求項1または2に記載の液体において、前記ヘテロ環状化合物が、含酸素環状化合物、含硫黄環状化合物および含窒素環状化合物からなる群から選択される一種以上である、液浸式ArFレーザー露光用液体。
  5. 請求項1または2に記載の液体において、
    前記主成分がトランス−デカヒドロナフタレンであって、
    前記(i)共役した不飽和結合を有する化合物が、トルエン、テトラヒドロナフタレンおよびフタル酸エステル類からなる群から選択される一種以上であり、
    前記(ii)共役した不飽和結合を有さず共役しない不飽和結合を有する化合物がオクテン類であり、
    前記(iv)前記(i)乃至(iii)以外のヘテロ環状化合物、アルコール類、エーテル類または含ハロゲン化合物がシクロヘキサノール類である、液浸式ArFレーザー露光用液体。
  6. 請求項1または2に記載の液体において、
    前記主成分がビシクロヘキシルであって、
    前記(i)共役した不飽和結合を有する化合物がビフェニル、クレゾール類、およびフタル酸エステル類からなる群から選択される一種以上であり、
    前記(ii)共役した不飽和結合を有さず共役しない不飽和結合を有する化合物がシクロヘキサンカルボン酸メチルであり、
    前記(iv)前記(i)乃至(iii)以外のヘテロ環状化合物、アルコール類、エーテル類または含ハロゲン化合物がテトラヒドロフラン、シクロヘキシルメタノールおよびn−ブタノールからなる群から選択される一種以上である、液浸式ArFレーザー露光用液体。
  7. 請求項1乃至いずれかに記載の液浸式ArFレーザー露光用液体を用いる液浸式ArFレーザー露光方法。
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