JP2007258664A - 液浸露光用液体および液浸露光方法 - Google Patents

液浸露光用液体および液浸露光方法 Download PDF

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  • Exposure And Positioning Against Photoresist Photosensitive Materials (AREA)
  • Exposure Of Semiconductors, Excluding Electron Or Ion Beam Exposure (AREA)

Abstract

【課題】193nmにおいて1.65以上、好ましくは1.7以上の高屈折率を有し、液浸露光波長において優れた透過性を有し、フォトレジスト膜あるいはその上層膜成分の溶出や溶解を防ぎ液浸露光用液体として使用した場合、パターン形状の劣化を抑えより解像度および焦点深度の優れたパターンを形成できる。
【解決手段】液浸露光装置または液浸露光方法に用いられる液体であって、該液体は、温度23℃において液体であり、かつ温度23℃における密度が1.0g/cm3以上である分子内に環構造を4つ以上含む橋かけ飽和炭化水素化合物を含む液体であり、D線の屈折率が1.53以上であり、また、波長193nmにおける光路長1mmあたりの放射線透過率が70%以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は液浸露光用液体および液浸露光方法に関する。
半導体素子等を製造するのに際し、フォトマスクとしてのレチクルのパターンを投影光学系を介して、フォトレジストが塗布されたウエハ上の各ショット領域に転写するステッパー型、またはステップアンドスキャン方式の投影露光装置が使用されている。
投影露光装置に備えられている投影光学系の解像度の理論限界値は、使用する露光波長が短く、投影光学系の開口数が大きいほど高くなる。そのため、集積回路の微細化に伴い投影露光装置で使用される放射線の波長である露光波長は年々短波長化しており、投影光学系の開口数も増大してきている。
また、露光を行なう際には、解像度と同様に焦点深度も重要となる。解像度R、および焦点深度δの理論限界値はそれぞれ以下の数式で表される。

R=k1・λ/NA (i)
δ=k2・λ/NA2 (ii)

ここで、λは露光波長、k1、k2はプロセス係数であり、NAは投影光学系の開口数であり空気の屈折率を1とした場合、下式(ii')で定義される。すなわち同じ解像度Rを得る場合には短い波長を有する放射線を用いた方が大きな焦点深度δを得ることができる。

NA=sinθ(θ=レジスト表面への露光光の最大入射角) (ii')

上記に述べたように、これまでは、露光光源の短波長化、開口数の増大により集積回路の微細化要求に応えてきており、現在では露光光源としてArFエキシマレーザ(波長193nm)を用いた1L1S(1:1ラインアンドスペース)ハーフピッチ90nmノードの量産化が検討されている。しかしながら、更に微細化が進んだ次世代のハーフピッチ65nmノードあるいは45nmノードについてはArFエキシマレーザの使用のみによる達成は困難であるといわれている。そこで、これらの次世代技術についてはF2エキシマレーザ(波長157nm)、EUV(波長13nm)等の短波長光源の使用が検討されている。しかしながら、これらの光源の使用については技術的難易度が高く、現状ではまだ使用が困難な状況にある。
ところで、上記の露光技術においては、露光されるウエハ表面にはフォトレジスト膜が形成されており、このフォトレジスト膜にパターンが転写される。従来の投影露光装置では、ウエハが配置される空間は屈折率が1の空気または窒素で満たされている。このとき、ウエハと投影露光装置のレンズとの間の空間を屈折率nの媒体で満たした場合、解像度R、焦点深度δの理論限界値は以下の数式にて表されることが報告されている。

R=k1・(λ/n)/NA (iii)
δ=k2・nλ/NA2 (iv)

ここで、NAは実際の投影光学系の開口数ではなく、上記式(ii')で定義される定数を意味する(正確には投影光学系の開口数NA'はNA'=nsinθ(nは上記と同じ定義)で表される。)
上式は、屈折率nの液体を投影露光装置のレンズとウエハの間に満たし、適当な光学系を設定することにより、解像度の限界値及び、焦点深度をそれぞれn分の1、n倍にすることが理論的に可能であることを意味している。例えば、ArFプロセスで、上記媒体として水を使用すると波長193nmの光の水中での屈折率nはn=1.44であるから、空気または窒素を媒体とする露光時と比較し、解像度Rは69.4%(R=k1・(λ/1.44)/NA)、焦点深度は144%(δ=k2・1.44λ/NA2)となる光学系の設計が理論上可能である。
このように露光するための放射線の実効波長を短波長化し、より微細なパターンを転写できる投影露光する方法を液浸露光といい、今後のリソグラフィーの微細化、特に数10nm単位のリソグラフィーには、必須の技術と考えられ、その投影露光装置も知られている(特許文献1参照)。
現在、水による液浸露光は量産検討の段階にあり、水液浸により、NA=1.35露光機による45nmハーフピッチノードのデバイス生産までは可能であると考えられている。45nmハーフピッチノード以下については水より高屈折率な液浸用液体により実現する可能性があり、このような高屈折率液体の開発が行なわれている。例えば、発明者らは1.6程度の屈折率をもつ液浸露光用液体の開発を行ない既に特許出願している(特許文献2参照)。
この開発された液体は、NAの更なる向上が可能になるものの、水液浸に対するNAの増大効果を考慮すると更に屈折率が高い液体が望まれている。
特開平11−176727号公報 国際公開WO2005/114711号公報
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、例えば193nmにおいて1.65以上、好ましくは1.7以上の高屈折率を有し、液浸露光波長において優れた透過性を有し、フォトレジスト膜あるいはその上層膜成分の溶出や溶解を防ぎ液浸露光用液体として使用した場合、パターン形状の劣化を抑えより解像度および焦点深度の優れたパターンを形成できる液体を提供することを目的とする。
上述したように、屈折率の高いことが液浸露光用液体として好ましい。特に193nmにおいて1.65以上の高屈折率を有することが好ましい。しかし、化合物の屈折率をあげるためには、化合物の分極率および数密度を上げることが有効であるが、分極率をあげるためにヘテロ原子、重原子を含む官能基を導入した場合、193nmでの透過率が確保できない。また、レジストとの相互作用が強くなり、量産プロセスに適合しない。一方、置換基をもたない炭化水素化合物では一般に屈折率が不足する。
本発明者らは鋭意検討した結果、分子構造中に4つ以上の環構造を有し、所定の物性を有する飽和炭化水素化合物が、液体状態で高密度を有し、数密度向上効果により高い屈折率を有し、さらにレジストとの相互作用が小さく液浸用液体として有効な性質を有することを見出し発明の完成に至った。
本発明の液浸露光用液体は、投影光学系のレンズと基板との間に満たされた液体を介して露光する液浸露光装置または液浸露光方法に用いられる液体であって、該液体は、温度23℃において液体であり、かつ温度23℃における密度が1.0g/cm3以上である飽和炭化水素化合物を含む液体であることを特徴とする。
上記飽和炭化水素化合物は、D線の屈折率が1.53以上であり、また、波長193nmにおける光路長1mmあたりの放射線透過率が70%以上であることを特徴とする。
また、上記飽和炭化水素化合物は、橋かけ飽和炭化水素化合物であり、その橋かけ飽和炭化水素化合物は、分子内に環構造を4つ以上含むことを特徴とする。
本発明の液浸露光方法は、露光ビームでマスクを照明し、投影光学系のレンズと基板との間に満たされた上記記載の液浸露光用液体を介して露光ビームで基板を露光することを特徴とする。
本発明の液浸露光方法は、液浸露光用液体として、飽和炭化水素化合物を用いるので、疎水性が高い。また、露光波長において高屈折率である高密度の橋かけ飽和炭化水素化合物、特に分子内に環構造を4つ以上含む飽和炭化水素液体を用いるので、フォトレジスト膜あるいはその上層膜成分、特に親水性成分の溶出、溶解を防ぎ、レジストパターン生成時の欠陥、レンズの浸食の問題を解決でき、また、液浸露光用液体として用いた場合にパターン形状の劣化を抑え解像度および焦点深度の改良が可能である。
液浸露光用液体として使用できる飽和炭化水素化合物は、橋かけ飽和炭化水素化合物であることが好ましく、特に分子内に環構造を4つ以上含む飽和炭化水素であることが好ましい。不飽和結合が存在すると露光ビームが液浸露光用液体に吸収されやすくなる。
橋かけ飽和炭化水素化合物は、複数の炭素環を分子内に含み、かつ二重結合を含まない炭素原子と水素原子のみからなる化合物をいう。また、炭素環の数は鎖式構造まで開くのに必要な環原子間結合の切断の数をいう。本発明においては炭素環を4つ以上含む飽和炭化水素が好ましい。分子内に環構造を4つ以上含む飽和炭化水素であると、後述する諸物性を満足しやすい。
液浸露光用液体として使用できる橋かけ飽和炭化水素化合物を以下に例示する。
Figure 2007258664
上記化合物の中で好ましい例を下記式(1−1)〜式(1−4)に挙げる。
Figure 2007258664
上記化合物は、液浸露光装置が作動する温度範囲、例えば23℃において液体であり、23℃における密度が1.0g/cm3以上、好ましくは1.0〜1.2g/cm3である。
また、屈折率は純水よりも高いことが前述した(iii)式、(iv)式の理由で好ましい。具体的には、屈折率が水と露光前のレジスト膜(または液浸用上層膜)との間の値であり、かつ水と比較してより高い値であることが好ましく、23℃において、波長193nmにおける屈折率が1.65〜1.9、好ましくは1.7〜1.8である。また、23℃において、D線(波長589nm)における屈折率が1.5〜1.65、好ましくは1.53〜1.65の範囲である。
また、使用環境の変化による屈折率変化はデフォーカスの原因となるため本化合物は屈折率が温度、圧力等の影響を受けにくい化合物であることが好ましい。特に、温度については、レンズ、レジスト材料の光吸収に伴う発熱により使用時に変化することが想定されるため、屈折率の温度依存性が低いことが好ましい。具体的には、屈折率(n)の温度(T)による変化率dn/dTの絶対値が好ましくは、5.0×10-3(℃-1)、更に好ましくは7.0×10-4(℃-1)以内である。
また、本観点から、本化合物の比熱は大きい値であることが好ましく、具体的には比熱の値は0.1cal/g・℃以上であることが好ましく、更に好ましくは0.30cal/g・℃以上である。
また、上記化合物は、その屈折率が色収差による影響を受けにくいことが好ましく、露光波長周辺における屈折率の波長依存性が小さいことが好ましい。
また、他の特性としては、遠紫外領域での透過性が高く、粘度、酸素、窒素等の気体の溶解度、レンズ、レジスト(またはレジスト上層膜)との接触角、表面張力、引火点等が下記に記す範囲であることが好ましい他、レンズ、レジスト材料との化学的相互作用が少ないことが望まれる。以下、これらの特性について具体的に説明する。
193nmにおける放射線透過率は、23℃において、光路長1mmの透過率が70%以上であることが好ましく、特に好ましくは90%以上であり、更に好ましくは95%以上である。この場合、透過率が70%未満であると液体の光吸収により生じた熱エネルギーによる発熱が起こりやすくなり、温度上昇による屈折率変動による光学像のデフォーカス、および歪が生じやすくなる。また、液体の吸収により、レジスト膜に到達する光量が減少し、スループットの大幅な低下を引き起こす原因となる。
粘度は20℃における粘度が0.5Pa・s以下、特にウエハとレンズ材料の間のギャップが1mm以下の環境で使用する場合は好ましくは0.03Pa・s以下、特に好ましくは0.005Pa・s以下である。粘度が0.5Pa・sをこえる場合、レジスト膜(または液浸用上層膜)とレンズ材料との間のギャップに液体が浸入しにくい、あるいは、液浸の液体供給方法として局所液浸法、露光方式として、ウエハをのせたステージを動かすことにより、ウエハを全面露光するステップアンドスキャン方式を用いた場合十分なスキャン速度を得られずスループットの大幅な低下をもたらし、また摩擦による温度上昇がおこりやすい傾向にあり温度変化による光学特性変化の影響を受けやすい。また、特にウエハとレンズ材料の間のギャップが1mm以下である場合、前者の理由から粘度は0.03Pa・s以下であることが好ましく、この場合、ギャップの距離(液膜の厚さ)を低減させることにより、液体の透過率を上昇させ、液体の吸収の影響を受けにくくすることができ好適である。
また、粘度が大きくなった場合液中の気泡(ナノバブル、マイクロバブル)の生成が起こりやすくなり、また、該気泡の寿命が長くなるため好適でない。
また、本発明に係る液体への気体の溶解度は、酸素および窒素の25℃、分圧が1気圧(atm)であるときの液体中の気体のモル分率であらわされる溶解度が好ましくは0.5×10-4〜70×10-4、更に好ましくは2.5×10-4〜50×10-4であり、これらの気体の溶解度が0.5×10-4以下である場合レジスト等から発生したナノバブルが消失しにくいためバブルによる光散乱によりパターニング時にレジストの欠陥が生じやすくなる。また70×10-4以上であると露光時に周囲の気体を吸収するため、気体の吸収による光学特性の変化の影響を受けやすくなる。
また、本発明の液体とレジスト(または液浸用上層膜)との間の接触角は好ましくは20°から90°、更に好ましくは50°から80°であり、また、石英ガラスやCaF2などのレンズ材料との接触角は好ましくは90°以下、好ましくは80°以下である。本発明の液体と露光前のレジスト(または液浸上層膜)との接触角が20°以下であるとギャップに対して液体が浸入されにくく、また、露光方式として上記、局所液浸法とステップアンドスキャン方式の組み合わせを用いた場合液体が膜中に飛散しやすくなる。一方、本発明の液体と露光前のレジスト(または液浸上層膜)との接触角が90°以上になると凹凸のあるレジスト(または上層膜)境界面で気体を取り込みやすくなり、気泡が発生しやすくなる。このような現象は、Immersion Lithography Modeling 2003 Year−End Report(International SEMATECH)に記載されている。
また、本発明の液体とレンズ材料との接触角が90°をこえる場合レンズ表面と液体の間に気泡が生じる傾向がある。
また、特に現在水の液浸露光で用いられているのと同様の、局所液浸法による液浸でステップアンドスキャン方式の露光装置に使用する場合、スキャン時の液体の飛散が問題となるため、本発明の液体は表面張力が高いことが好ましい。具体的には20℃における表面張力は好ましくは5dyn/cm〜90dyn/cm、更に好ましくは20dyn/cm〜80dyn/cmである。
本発明の液体とレジスト表面との接触角が好適でない場合、適当な液浸上層膜を使用することにより接触角を改善することができる。特に本発明の液体は低極性であるため、高極性上層膜を用いることにより接触角を高くすることができる。
本液体による光酸発生剤、塩基性成分等のレジスト成分の抽出はレジストのパターニング性能に欠陥、プロファイルの劣化等の悪影響を及ぼすのみでなく、液体自身の汚染につながり、例えば液体の光学特性の変化やレンズの浸食等の原因となる。また、このために液体の再利用が困難になったり、頻繁な液体の精製が必要となる。したがって、液体の抽出による汚染は少ないことが好ましい。溶出量の評価はHPLC等による方法によって評価可能であるが、より正確には193nmにおける吸光度が、レジスト中の成分の混入に対して極めて敏感であるため、後者の変化を追跡することにより評価可能である。
本発明の液体は使用環境下で爆発、発火、引火等の危険性が低い化合物であることが好ましい。具体的には引火点は25℃以上であることが好ましく、50℃以上であることが更に好ましい、発火点は好ましくは180℃以上、更に好ましくは230℃以上である。また、25℃における蒸気圧は50mmHg以下であることが好ましく、更に好ましくは5mmHg以下である。
また、人体、環境に対する有害性が低いことが好ましく具体的には、人体に対する有害性に関しては、急性毒性が低く、発がん性、変異原性、催奇形性、生殖毒性等のない化合物が好ましい。具体的には、例えば、許容濃度が、好ましくは30ppm以上、更に好ましくは70ppm以上であり、Ames試験の結果は陰性である液体が好ましい。環境に対する有害性については、残留性、生態蓄積性のない化合物が好ましい。
また、本発明の液体はガスクロマトグラフィーで測定した純度が95.0重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは99.0重量%以上であり、更に好ましく純度が99.9重量%以上である。
特に、193nm等露光波長において、吸光度が大きいオレフィンを含有する化合物、芳香族環を含有する化合物、硫黄(スルフィド、スルホキシド、スルホン構造)、ハロゲン、カルボニル基、エーテル基を含有する化合物等の割合は0.01重量%未満であることが好ましく、0.001重量%未満であることが特に好ましい。
また、本化合物からなる液体は半導体集積回路製造工程に使用されるものであることから、金属または金属塩含有量が低いことが好ましく、具体的には金属含量が100ppb以下、好ましくは10ppb以下、更に好ましくは1.0ppb以下である。金属含量が100ppbをこえると金属イオンまたは金属成分によりレジスト膜等に悪影響を及ぼしたりウエハーを汚染するおそれがある。
金属としては、Li、Na、K、Mg、Cu、Ca、Al、Fe、Zn、Niから選ばれた少なくとも1つの金属が挙げられる。これらの金属は原子吸光法により測定することができる。
また、本液体中の酸素濃度は100ppm(100μg/ml)以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは2ppm以下である。また、特に露光時には好ましくは1ppm以内、更に好ましくは10ppb以内である。酸素濃度が100ppmをこえると溶存酸素による酸化反応等による透過率低下が起こりやすい傾向にある。また、酸化反応等が起こらない場合にも、酸素が溶存した場合、例えば実施例に示すように溶存酸素および、酸素に放射線をあてた時に生じるオゾンの吸収のため、溶存酸素濃度に依存して液体の吸光度が低下する。また、酸素共存下で液体を露光した場合、生成したオゾンが液体を酸化し、液体の劣化がはやまる。
また、本液体は特に偏光露光を行なう場合、旋光性を有すると光学コントラスト低下の原因となるため、旋光性を有さない液体であることが好ましい。具体的には、本液体を構成する化合物が旋光性を有しない(光学活性でない)化合物であることが好ましく、液体の構成化合物が旋光性を有する(光学活性な)化合物である場合には等量の光学異性体を含有し(ラセミ体として存在し)、液体全体として光学活性を有しないことが好ましい。
本発明の化合物は、市販の化合物として入手できるか、あるいは、既存の種々の合成法により入手可能な原料から製造することができる。以下、本化合物の製造法について具体例を挙げて説明する。
例えば、式(1−1)〜式(1−4)で示した化合物は、市販品として入手可能なノルボルナジエン(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2,5−エン)を適当な遷移金属触媒の存在下にて多量体化し、得られた多量体、例えば2量化生成物にC−C不飽和結合が存在する場合は不飽和結合を水素化することにより合成することができる。
具体的には、ノルボルナジエンの多量体を得て、この多量体の二重結合部分を水素化することで得られる。例えば、多量体は米国特許第4,207,080号公報に記載されている方法を採用でき、ノルボルナジエンをジエチルアルミニウムクロライド、アセチルアセトンの鉄またはコバルト錯体、およびビス(1,2−ジフェニルホスフィン)エタンの3成分系触媒を用いて、室温でトルエン、キシレン溶媒中で合成することができる。二重結合部分の水素化は周知の還元反応、水素添加反応などを用いることができる。
上記化合物の製造に使用するノルボルナジエン誘導体中には上記のうち硫黄含有化合物の含有量が低いものが好ましい。この場合硫黄含有化合物の含有量は好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。硫黄含有化合物の含有量が100ppmをこえると該硫黄含有化合物が接触水素化の際の触媒毒となり水添反応の進行を妨げる原因となる他、化合物中に該硫黄含有化合物に由来する硫黄含有不純物が混入し、精製により除けない場合、本発明の液体の193nm等の露光波長における透過率が低下する原因となる。
また、上記化合物を製造する場合は、原料の純度が高いことが好ましく、好ましい純度は99.0%以上、特に好ましい純度は99.9%以上である。この場合、不純物として硫黄化合物等の含有量が高い場合上記の問題が起こるほか、不純物として他の不純物、芳香族化合物およびその誘導体が含まれた場合、これらの不純物が水添された分離困難な炭化水素化合物を生成し純度制御が困難となる。
また、接触水素化の触媒としては、ニッケル系、白金、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム等の貴金属系触媒のほか、コバルト・モリブデン、ニッケル・モリブデン、ニッケル・タングステン等の硫化物を用いることができる。この中でニッケル系触媒がその触媒活性、コストの面から好ましい。
また、これらの金属触媒は適当な担体に担持して使用することが好ましく、この場合触媒が担体上に高分散されることにより、水素化の反応速度があがる他、特に、高温、高圧条件下における活性点劣化を防止し、また、触媒毒に対する抵抗力が向上する。
該担体としては、SiO2、γ−Al23、Cr23、TiO2、ZrO2、MgO、ThO2、珪藻土、活性炭等を好適に使用することができる。
また、上記接触水素化の方法としては、溶剤を用いない気相法および原料を適当な溶剤に溶解して反応させる液相法を用いることができる。この中で、気相法がコストおよび反応速度に優れるため好ましい。
気相法を用いる場合、触媒としてはニッケル、白金等が好ましい。使用する触媒の量は多いほど反応速度があがるが、コストの面から好ましくない。したがって、反応速度を速め、反応を完結させるためには触媒量を少なくし、温度および水素圧が高い条件で反応させることが好ましい。具体的には触媒量が原料対比0.01〜10重量部で水素圧が5〜15MPa、反応温度は100℃〜400℃程度で反応させるのが好ましい。
上記の水素化反応において、反応転化率は好ましくは90%以上、更に好ましくは99%以上である。
上記反応後、適当な精製を行なうことにより、未反応原料、触媒等の不純物を除去することが好ましい。
上記精製法としては、精密蒸留、水洗、濃硫酸洗浄、ろ過、晶析等の精製法およびその組み合わせを用いることができる。この中で、精密蒸留が不揮発性の触媒由来の金属その他の金属除去、原料由来の成分の両方の除去に対して有効であることから好ましい。また、触媒由来の金属を除去するために触媒に応じた脱金属処理を行なうことが好ましい。
また出発原料を適当な触媒を用いて異性化することにより、選択的にexo異性体、endo異性体、(endo、exo混合)異性体を得ることができる。
以下、好ましい液浸露光用液体の密度および粘度の具体例を表1に示す。
Figure 2007258664
本発明の液浸露光用液体は上記式の中から選ばれる構造を有するので、例えば193nmにおける吸光度が小さく好適であるが、該波長領域の吸光度は微量不純物の影響をうけやすい。また、これらの液体中の中に塩基成分が存在した場合非常に微量でもレジストプロファイルに大きな影響を与える。これらの不純物は上記液体を適当な方法で精製することによって除去することができる。例えば、濃硫酸洗浄、水洗、アルカリ洗浄、シリカゲルカラム精製、精密蒸留、アルカリ条件下での過マンガン酸塩処理およびこれらの組み合わせで精製することができる。
具体的には、例えば濃硫酸洗浄を濃硫酸の着色がなくなるまで繰り返し、その後、水洗、アルカリ洗浄により濃硫酸を除去し、更に水洗、乾燥後、精密蒸留を行なうことにより好適に精製することができる。
また、化合物によっては上記処理を行なう前にアルカリ性条件下過マンガン酸塩で処理することにより更に効率よく不純物を除去することができる。
上記精製操作のうち、濃硫酸洗浄は193nmにおいて吸収の大きい芳香族化合物、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物の除去に有効な他、微量塩基性化合物の除去に有効であり好ましい精製法である。該処理は精製する化合物により最適な攪拌法、温度範囲、処理時間、処理回数を選定して処理することが好ましい。
具体的には温度については、高いほど不純物除去の効率はあがるが、同時に副反応により吸収原因となる不純物が生成しやすくなる傾向にある。好ましい処理温度は−20℃〜40℃、特に好ましい処理温度は−10℃〜20℃である。
処理時間については長いほど、上記芳香族化合物、炭素―炭素不飽和結合を有する不純物との反応が進み上記不純物の除去効率があがるが、副反応による吸収原因となる不純物の生成量が増加する傾向にある。
上記濃硫酸処理で精製を行なう場合処理後に本発明の液体中に残存する濃硫酸由来の酸性不純物。濃硫酸処理により生成したスルホン酸成分を完全に除去するため、アルカリ洗浄、純水洗浄および水分除去のための乾燥処理を行なうことが好ましい。
また、濃硫酸洗浄後に精密蒸留を行なうことにより、より効率よく吸収原因となる不純物を除去することができる。
該精密蒸留は除去すべき不純物と本発明の液体の沸点差に応じてその分離に必要な理論段数以上の理論段数を有する蒸留塔で行なうことが好ましい。不純物除去の観点から好ましい理論段数は10段〜100段であるが、理論段数を高めた場合設備、製造コストが高くなるため、他の精製法との組み合わせにより、これより低い段数での精製も可能である。特に好ましい理論段数は30段〜100段である。
また、該精密蒸留は適当な温度条件下で行なうことが好ましい。蒸留温度が高くなると化合物の酸化反応等により吸収の低減効果が小さくなる傾向にある。好ましい蒸留温度は30℃〜120℃、特に好ましい蒸留温度は30℃〜80℃である。
上記の温度範囲での蒸留を行なうために、必要に応じて該精密蒸留は減圧下で行なうことが好ましい。
上記精製処理は窒素またはアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。この場合、不活性ガス中の酸素濃度、有機成分濃度が低いことが好ましい。好ましい酸素濃度は1000ppm以下、更に好ましくは10ppm以下、特に好ましくは1ppm以下である。
また、上記処理のうち過マンガン酸塩による処理は特に非芳香族の炭素―炭素不飽和結合含有化合物の除去に有効であるが、3級炭素を有する化合物については3級炭素の酸化反応が起こりやすいことから、3級炭素を有さない化合物の精製に好適である。
また、該処理は副反応を防ぐ観点から室温以下の低温で行なうことが好ましい。
なお、式(1−1)〜(1−4)で表される化合物については精密蒸留とシリカゲルカラムの組み合わせによる精製が特に好ましい。これらの化合物に濃硫酸洗浄または過マンガン酸による処理では硫酸の付加または酸化反応がおこるため効率よい精製が困難である。
また、本発明の化合物は低極性化合物であるため酸素、窒素等の気体の溶解度が高い。このため、これらの気体の溶存の影響を受けやすく、たとえば大気雰囲気下で放置した場合、溶存酸素の吸収または溶存酸素が光により励起されて生じるオゾンの吸収、あるいは溶存酸素の関与する酸化反応等により例えば193nmの透過率の低下が起こる傾向がある。このため、これらの化合物は脱気処理を施し、窒素、アルゴン等の不活性で吸収の少ない気体中で保存することが好ましい。具体的には保存液体中の酸素濃度が100ppm以下であることが好ましく、更に好ましくは10ppm以下になるように処理することが好ましい。また、露光前に脱酸素できない場合は、特に1ppm以下が好ましく、さらに好ましくは10ppb以下である。
以下、本発明の液浸露光用液体を用いた液浸露光方法について説明する。
本発明の液浸露光用液体は、上記に述べたように不活性気体中で保存することが好ましいが、その際の容器としては、容器成分または容器のふたの成分(例えば、プラスチックに配合される可塑剤等)の溶出のない容器で保存することが好ましい。好ましい容器の例としては例えば材質がガラス、金属(例、SUS)、陶器、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、ECTFE(エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー)、PTFE/PDD(ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソールコポリマー)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PVF(ポリビニルフルオライド)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)等のフッ素樹脂である容器が挙げられるが、特に好ましくは材質がガラス、フッ素樹脂の容器である。
また、好ましい容器のふたの例としては、例えば材質がポリエチレンで可塑剤を含まないふたや、材質がガラス、金属(例、SUS)、陶器、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、ECTFE(エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー)、PTFE/PDD(ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソールコポリマー)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PVF(ポリビニルフルオライド)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)等のフッ素樹脂であるふたが挙げられる。
また、容器から露光機に送液時に使用する配管については、上記と同様の溶出の起こらない配管であることが好ましく、好ましい配管の材質としてはガラス、金属、陶器等が挙げられる。
本発明の液浸露光用液体は、液浸露光に用いた場合、微粒子、気泡(マイクロバブル)がパターンの欠陥等の原因となることから、微粒子および気泡の原因となる溶存気体の除去を露光前にしておくことが好ましい。
微粒子の除去方法としては適当なフィルターを用いてろ過する方法が挙げられる。フィルターとしては、微粒子の除去効率がよく、かつろ過時に溶出による、露光波長における吸収の変化のない材質を用いたフィルターが好ましい。好ましいフィルター材質としては、例えばガラス、金属(例えば、SUS、銀)、および金属酸化物、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、ECTFE(エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー)、PTFE/PDD(ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソールコポリマー)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PVF(ポリビニルフルオライド)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が挙げられる。また、フィルターのハウジング、コア、サポート、プラグ等の周辺部の材質についても、上記のフィルターの好ましい材質の中から選択される材質であることが好ましい。
溶存気体の除去方法としては、例えば減圧脱気法、超音波脱気法、気体透過性膜による脱気法、各種のデガッサーを用いた脱気法等が挙げられる。
本発明の液浸露光用液体は露光時は光学系の一部となるため、液体の屈折率などの光学的性質の変化の影響のない環境で使用することが好ましい。例えば、液体の光学特性に影響を与える温度、圧力等を一定にした環境下で使用することが好ましい。例えば温度については好ましくは、±0.1℃、更に好ましくは±0.01℃の範囲で管理することが好ましい。
また、本発明の液体を用いた液浸露光は、大気雰囲気下で行なうことも可能であるが、上述のように、本発明の液体に対する酸素の溶解度が高く、露光波長における吸収特性に影響を与える場合があるため、露光波長における吸収の少なく、液体と化学反応を起こさない不活性気体中で露光することが好ましい。好ましい該不活性気体としては、例えば、窒素、アルゴン等が挙げられる。
また、空気中の有機成分による汚染による液体の露光波長における吸収特性の変化を防ぐ観点から、使用雰囲気中の有機成分濃度を一定レベル以下に管理することが好ましい。この有機成分濃度の管理方法としては、上記不活性気体雰囲気に高純度のものを用いるほか、有機成分を吸着するフィルター、各種ガス精製管(装置)を使用する方法等が挙げられる。濃度管理のためには、定期的に周辺雰囲気の分析を行なうことが好ましいが、この目的には例えばガスクロマトグラフィーを用いた種々の分析法を用いることができる。
露光領域の液浸の液体供給方法としては、mooving pool法、seimming stage法、Local Fill法(局所液浸方式)が知られているが(特別セミナー液浸露光技術(2004年5月27日開催)セミナーテキスト参照)、局所液浸法が液浸露光用液体の使用量が少なくてすむため好ましい。
本液体を用いた液浸露光用の最終(対物)レンズ材料としては現行のCaF2あるいはfused silicaがその光学特性から好ましい。他の好ましいレンズ材料としてはたとえば高周期アルカリ土類金属Mのフッ素塩および一般式Cax1-x2で表される塩、CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属の酸化物等が好ましく、該材料を用いた場合、CaF2(n@193nm=1.50)、fused silica(n@193nm=1.56)と比較してレンズの屈折率が高くなるため、とりわけ開口数が1.5をこえる高NAのレンズを設計、加工する際に好ましい。
本発明の液体は、レジスト成分の抽出が極めて少ないため使用後に再利用することができる。露光時のレジスト膜からの溶出等の影響が無視できるレジスト(またはレジスト上層膜)を用いた場合、本発明の液体は精製することなく再利用できるが、その場合は、脱気、ろ過等の処理を行なった後再利用することが好ましい。これらの処理はインラインで行なうことが工程を簡易化の観点から好ましい。
また、使用時に上記のレジスト膜からの溶出等が1回の使用で無視できるレベルであっても、使用回数が一定回数をこえた場合、蓄積された不純物の影響により、液体の物性が変化することが予想されるため、一定回数使用後に回収、精製を行なうことが好ましい。
該精製の方法としては、水洗処理、酸洗浄、アルカリ洗浄、精密蒸留、適当なフィルター(充填カラム)を用いた精製、ろ過等の方法および、上記に述べた本発明の液体の精製法、あるいはこれらの精製法の組み合わせによる方法が挙げられる。この中で、水洗処理、アルカリ洗浄、酸洗浄、精密蒸留あるいはこれらの精製法の組み合わせにより精製を行なうのが好ましい。
上記アルカリ洗浄は本発明の液体に溶出した露光により発生した酸の除去、酸洗浄は本発明の液体に溶出したレジスト中の塩基性成分の除去、水洗処理は本発明の液体に溶出したレジスト膜中の光酸発生剤、塩基性添加剤、露光時に発生した酸等の溶出物の除去に対して有効である。
精密蒸留については、上記添加剤のうち低揮発性の化合物の除去に対して有効な他、露光時にレジスト中の保護基の分解により発生する疎水性成分を除去するのに有効である。
上記本発明の液浸露光用液体は、それぞれ単独でも、また混合物であっても使用できる。好ましい例としては、単独で使用する場合である。単独で使用することにより、液浸露光条件を設定しやすくなる。
また、本発明の液体は必要に応じて本発明以外の液体と混合して使用することができ、そうすることにより、例えば屈折率、透過率等の光学特性値、接触角、比熱、粘度、膨張率等の物性値を所望の値にすることができる。
本目的に使用される本発明以外の液体としてはその他の液浸露光可能な溶剤の他、各種の消泡剤、界面活性剤等を使用することができ、バブルの低減や、表面張力のコントロールに有効である。
上記液浸露光用液体を用いて、液浸露光がなされる。
基板上にフォトレジストを塗布してフォトレジスト膜が形成される。基板は、例えばシリコンウエハ、アルミニウムで被覆したウエハ等を用いることができる。また、レジスト膜の潜在能力を最大限に引き出すため、例えば特公平6−12452号公報等に開示されているように、使用される基板上に有機系あるいは無機系の反射防止膜を形成しておくことができる。
使用されるフォトレジストは、特に限定されるものではなく、レジストの使用目的に応じて適時選定することができる。フォトレジストの樹脂成分としては、酸解離性基を含む高分子が挙げられる。該酸解離性基は露光により分解しないことが好ましく、とりわけ、該分解後生成物が露光条件下で揮発し、本発明の液体に溶出しないものであることが好ましい。これらの高分子の例としては、高分子側鎖に脂環族基、ラクトン基およびこれらの誘導体等を含む樹脂、ヒドロキシスチレン誘導体等を含む樹脂等が挙げられる。
特に高分子側鎖に脂環族基、ラクトン基およびこれらの誘導体を含む樹脂を用いるフォトレジストが好ましい。これらのフォトレジストは、脂環式炭化水素化合物または珪素原子を環構造中に含む環式炭化水素化合物と類似する化学構造を含むので、本発明の液浸露光用液体との親和性に優れる。また、フォトレジスト膜を溶出させたり溶解させたりしない。
フォトレジストの例としては、樹脂成分として酸解離性基を含む高分子と、酸発生剤と、酸拡散制御剤等の添加剤を含有する化学増幅型のポジ型またはネガ型レジスト等を挙げることができる。
本発明の液浸露光用液体を用いる場合、特にポジ型レジストが好ましい。化学増幅型ポジ型レジストにおいては、露光により酸発生剤から発生した酸の作用によって、重合体中の酸解離性有機基が解離して、例えばカルボキシル基を生じ、その結果、レジストの露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が高くなり、該露光部がアルカリ現像液によって溶解、除去され、ポジ型のレジストパターンが得られる。
フォトレジスト膜は、フォトレジスト膜を形成するための樹脂組成物を適当な溶媒中に、例えば0.1〜20重量%の固形分濃度で溶解したのち、例えば孔径30nm程度のフィルターでろ過して溶液を調製し、このレジスト溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布方法により基板上に塗布し、予備焼成(以下、「PB」という。)して溶媒を揮発することにより形成する。なお、この場合、市販のレジスト溶液をそのまま使用できる。該、フォトレジスト膜は、液浸上層膜および液浸露光用液体よりも高屈折率であることが好ましく、具体的にはフォトレジスト膜の屈折率nRESが1.65以上の範囲にあるのが好ましい。特にNAが1.3以上の場合nRESは1.75より大きいことが好ましくこの場合NAの増大に伴う露光光のコントラスト低下を防ぐことができる。
なお、液浸露光方法においては、フォトレジスト膜上に更に液浸用上層膜を形成することができる。
液浸用上層膜としては、露光光の波長に対して十分な透過性とフォトレジスト膜とインターミキシングを起こすことなくフォトレジスト膜上に保護膜を形成でき、更に液浸露光時に使用される上記液体に溶出することなく安定な被膜を維持し、現像前に剥離することができる膜であれば使用することができる。この場合、該上層膜が現像液であるアルカリ液に容易に溶解する膜であれば現像時に剥離されることから好ましい。
アルカリ可溶性を付与するための置換基としては、ヘキサフルオロカルビノール基およびカルボキシル基の少なくとも1つの基を側鎖に有する樹脂であることが好ましい。
該液浸用上層膜は、同時に多重干渉防止機能を有することが好ましく、この場合、該液浸用上層膜の屈折率nOCは以下に示す数式であることが好ましい。

OC=(nlq×nRES0.5

ここで、nlqは液浸露光用液体の屈折率を、nRESはレジスト膜の屈折率をそれぞれ表す。
上記液浸上層膜は、液浸上層膜用樹脂組成物をレジスト膜上にレジスト膜とインターミキシングしない溶剤に0.01〜10%の固形分濃度で溶解した後、フォトレジスト膜の形成時と同様の方法により塗布、予備焼成を行なうことにより形成することができる。
本発明の液浸露光用液体を評価するために、以下に示す感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成した。また、その一部に以下に示す液浸用上層膜を形成した。この評価用レジスト膜を用いて液浸露光用液体としての特性(溶出試験、膜の溶解性試験、パターニング評価)を測定した。
参考例1
感放射線性樹脂組成物に用いる樹脂を以下の方法で得た。
Figure 2007258664
化合物(S1−1)53.92g(50モル%)、化合物(S1−2)10.69g(10モル%)、化合物(S1−3)35.38g(40モル%)を2−ブタノン187gに溶解した単量体溶液(1)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)3.37gを2−ブタノン64gに溶解した溶液(2)を準備し、更に2−ブタノンを15g投入した1000mlの三つ口フラスコに前に準備した単量体溶液(1)28.77g、溶液(2)4.23gを投入し、その後減圧置換法にて窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、15分後、単量体溶液(1)258.98g、溶液(2)24.64gを送液ポンプを用いて3時間かけて滴下した。滴下終了後更に4時間攪拌した。重合終了後、重合溶液は放冷することにより30℃以下に冷却した。反応終了後、溶液は放冷し30℃以下に冷却し、4000gのイソプロピルアルコールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。ろ別された白色粉末を2度2000gのイソプロピルアルコールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(85g、収率85重量%)。この重合体はMwが7,600であり、13C−NMR分析の結果、化合物(S1−1)、化合物(S1−2)、化合物(S1−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が53.1:8.5:38.4(モル%)の共重合体であった。この重合体を樹脂(A−1)とする。
参考例2
液浸用上層膜を形成する樹脂を以下の方法で得た。
Figure 2007258664
化合物(S2−1)50g、化合物(S2−2)5g、化合物(S2−3)25g、化合物(S2−4)20g、およびアゾビスイソ吉草酸メチル6.00gをメチルエチルケトン200gに溶解し、均一溶液としたモノマー溶液を準備した。そして、メチルエチルケトン100gを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージした。窒素パージ後、フラスコ内を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に調製した上記モノマー溶液を滴下漏斗を用いて、10ml/5分の速度で滴下した。滴下開始時を重合開始時点として、重合を5時間実施した。重合終了後、反応溶液を30℃以下に冷却し、次いで該反応溶液をヘプタン2000g中へ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末をヘプタン400gと混合してスラリーとして攪拌する操作を2回繰り返して洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥して、白色粉末の樹脂(E−1)を得た(89g、収率89重量%)。樹脂(E−1)は、Mwが7,300であった。
参考例3
感放射線性樹脂組成物を以下の方法で得た。
表2に示す樹脂、酸発生剤、酸拡散制御剤、溶剤を混合、均一溶液とした後、孔径200nmのメンブランスフィルターでろ過することにより感放射線性樹脂組成物(F1)を調製した。表2において、部は重量基準である。
なお、用いた酸発生剤(B)、酸拡散制御剤(C)、溶剤(D)を以下に示す。
酸発生剤(B)
B‐1:トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート
酸拡散制御剤(C)
C−1:2−フェニルベンズイミダゾール
溶剤(D)
D−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
Figure 2007258664
参考例4
液浸用上層膜組成物を以下の方法で得た。
表3に示す樹脂、溶剤を混合して均一溶液とした後、孔径200nmのメンブランスフィルターでろ過することにより液浸用上層膜組成物(G1)を調製した。表3において、n−BuOHはノルマルブタノールを表し、部は重量基準である。
Figure 2007258664
参考例5
評価用レジスト膜(H−1およびH−2)を以下の方法で得た。
8インチシリコンウエハ上に、スピンコート、PB(90℃、60秒)により下層反射防止膜ARC29(ブルーワサイエンス社製)の塗布を行ない、膜厚77nmの塗膜を形成した後、同条件で表7に示す感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜(膜厚205nm)を形成した(H−1)。
また、上記と同様の方法で感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜(膜厚205nm)を形成した後、このレジスト膜上に、表7に示す液浸用上層膜組成物をスピンコート、PB(130℃、90秒)により膜厚32nmの上層膜を形成した(H−2)。
Figure 2007258664
実施例1
50mlの3つ口フラスコ内に鉄(II)アセチルアセトナート66mgを測り取った後、フラスコ内を真空にし、窒素ガスで常圧に戻す操作を3回行ない窒素雰囲気に置換した。その後、十分窒素バブリングを行ない水分および酸素を除いたノルボルナジエン6.91g、0.5mol/lビスジフェニルフォスフィノエタンを1.5mlをシリンジを用いて添加した。続いて1.0mol/lジエチルアルミニウムクロリドーヘキサン溶液1.875mlを十分乾燥および、窒素置換したシリンジで注入した。この後、フラスコを65℃に加熱して10時間反応させた。反応後反応溶液を室温に戻した後、混合物に希(10wt%)塩酸を添加して反応をクエンチした。その後、混合物をセライトろ過し、不溶分を除去した後、混合物を希塩酸10mlで2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mlで2回、飽和食塩水10mlで1回洗浄した。洗浄後有機層を無水硫酸マグネシウム1gを用いて乾燥した。乾燥後ろ過により乾燥剤を除去し、溶剤のトルエンをロータリーエバポレーターで留去した。その後混合物をウイッドマー精留等を備えた蒸留装置で減圧蒸留により精製することにより化合物(1−1)の前駆体2.0gを得た。
こうして得た化合物(1−1)の前駆体を既知の方法により水素化することにより化合物(1−1)1.6gを得た。
上記の方法で得た化合物(1−1)1.5gを攪拌子を備えた50mlのナスフラスコに投入し、続いてフラスコ内を1時間窒素をフローさせ窒素置換した。その後あらかじめ窒素雰囲気下で1時間開放することにより溶存気体を窒素に置換した濃硫酸2mlを同じフラスコに投入して300rpmでフラスコ内液体を窒素雰囲気、室温下1時間攪拌した。その後、デカンテーションで濃硫酸を除去し、再度濃硫酸2mlを投入し、上記と同様の濃硫酸処理を3回繰り返した。その後、有機成分を蒸留水2mlで1回洗浄し、有機分を減圧蒸留し、窒素で常圧に戻すことにより液体EK−1を得た。EK−1の193.4nmにおける吸光度は0.6/cm(1mmあたりの透過率87%に相当)であった。23℃における密度は1.077g/cm3であった。
本液体のLi,Na,K,Mg,Cu,Ca,Al,Fe,Mn,Sn,Zn,Niの金属含量をICP−MS法により測定したところ全ての金属含有量は検出限界(1ppb)未満であった。また、溶存酸素濃度を測定したところ検出限界(1ppm)未満であった。
実施例2
実施例1と同様の方法で合成した化合物(1−1)50gを精密蒸留し40gの蒸留済み化合物(1−1)を得た。その後こうして得た蒸留済み化合物(1−1)をシリカゲル5gを充填したカラムを通過させ液体EK−2を得た。液体EK−2の193.4nmにおける吸光度を測定方法Aにより測定したところ吸光度は0.4/cm(1mmあたりの透過率91%に相当)であり、23℃における密度は1.077g/cm3であった。また測定方法Bにより測定した屈折率波長依存性は表5のようになった。
測定方法A:日本分光製V7100を用いて光路長1cmのセルにより測定を行ない、ランベルトベールの法則により1mmあたりの透過率に換算した値を求めた。
測定方法B:J.A.Woollam社のVUV−VASEおよびプリズムセルを用い屈折率の波長依存性を最小偏角法により測定した。
Figure 2007258664
実施例3〜実施例6、および比較例1
上記評価用レジスト膜を用いて、本発明の液浸露光用液体EK−1およびEK−2を、溶出試験、膜の溶解性試験、パターニング評価(浸漬パターニング評価、2光速干渉露光機による液浸露評価)、レジスト接触時の吸光度変化(あるいは汚染)により評価した。結果を表6に示す。
(1)溶出試験
評価用レジスト膜を塗布したウエハーに、約4mlの液体を液膜の厚が2mmになるように調節し180秒浸漬させた。その後液体の193.4nmにおける吸光度を測定した。浸漬前後で吸光度変化が0.05以下であった場合を溶出試験結果が「○」、0.05より大きかった場合を溶出試験結果が「×」とした。
(2)膜の溶解性試験
評価用レジスト膜を塗布したウエハの初期膜厚を測定した後、約4mlの液体を液膜の厚さが2mmになるように180秒浸漬させた後、液体を除去し、液体浸漬部位の膜厚測定を行なった。このとき膜厚の減少量が初期膜厚の0.5%以内であれば液浸露光用液体がレジスト膜を溶解しないと判断して「○」、0.5%以上であれば液浸露光用液体がレジスト膜を溶解するとして「×」とした。
(3)パターニング評価試験
評価用レジスト膜を塗布したウエハーに対してArF投影露光装置S306C(ニコン(株)社製)でNA=0.78、シグマ:0.85、2/3Annの光学条件で露光(露光量30mJ/cm2)を行ない、その後CLEAN TRACK ACT8のホットプレートでPEB(130℃、90秒)を行ない、同CLEAN TRACK ACT8のLDノズルにてパドル現像(現像液成分 2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、60秒間)、超純水でリンス。次いで15秒間スピンドライし、現像後基板Aを作成した。その後、上記の現像後基板Aと同じ方法で露光まで行なった基板に、液浸露光用液体を膜厚が2mmになるように180秒浸漬させた後、液体をスピンドライにより除去し、PEB(130℃、90秒)現像を行ない現像後基板Bを得た。現像後基板AとBを走査型電子顕微鏡(日立計測器(株)社製)S-9360で90nmライン、90nmスペースのマスクパターンに該等するパターンを観測した。このとき、基板Bについて矩形な形状でパターンが得られており、基板AとBのライン部分の線幅の差ΔCDが線幅の10%以下であれば「○」、10%より大きければ「×」とした。
Figure 2007258664
本発明の液浸露光用液体は、温度23℃における密度が1.0g/cm3以上である飽和炭化水素化合物を含む液体であるので、液浸露光時にフォトレジスト膜を溶解せず、解像度、現像性等にも優れたレジストパターンを形成することができ、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造に極めて好適に使用することができる。

Claims (6)

  1. 投影光学系のレンズと基板との間に満たされた液体を介して露光する液浸露光装置または液浸露光方法に用いられる液体であって、該液体は、温度23℃において液体であり、かつ温度23℃における密度が1.0g/cm3以上である飽和炭化水素化合物を含む液体であることを特徴とする液浸露光用液体。
  2. 前記飽和炭化水素化合物は、D線の屈折率が1.53以上であることを特徴とする請求項1記載の液浸露光用液体。
  3. 前記飽和炭化水素化合物は、波長193nmにおける光路長1mmあたりの放射線透過率が70%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の液浸露光用液体。
  4. 前記飽和炭化水素化合物は、橋かけ飽和炭化水素化合物であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の液浸露光用液体。
  5. 前記橋かけ飽和炭化水素化合物は、分子内に環構造を4つ以上含むことを特徴とする請求項4記載の液浸露光用液体。
  6. 露光ビームでマスクを照明し、投影光学系のレンズと基板との間に満たされた液体を介して前記露光ビームで基板を露光する液浸露光方法であって、前記液体が請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の液浸露光用液体であることを特徴とする液浸露光方法。
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