JP4931865B2 - 固体高分子型燃料電池発電システム及び固体高分子型燃料電池発電方法 - Google Patents

固体高分子型燃料電池発電システム及び固体高分子型燃料電池発電方法 Download PDF

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Description

本発明は、固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)発電システム及びPEFC発電方法に関する。より詳細には、硫黄化合物を含有する原燃料を改質して燃料電池の燃料として供給する燃料改質システムを備えたPEFC発電システム及びPEFC発電方法に関する。
炭化水素、アルコールなどを原燃料として用いるPEFC発電システムには、燃料改質システムが含まれている。燃料改質システムでは、原燃料から、燃料電池の燃料となる水素が多く含まれている水素リッチガスが製造される。原燃料から効率よく水素リッチガスを製造する方法として、触媒の存在下水蒸気と原燃料を反応させて改質ガスを得る水蒸気改質法が広く実用化され、燃料電池用の燃料改質システム、特に定置用燃料電池発電システムにおいて一般的に採用されている。水蒸気改質触媒は、硫黄被毒に弱いので、硫黄化合物を含む原燃料(例えば、都市ガス、LPG、ナフサなどの炭化水素系燃料など)を用いる場合には、原燃料は脱硫してから水蒸気改質に供される。
一方、PEFCの場合には、燃料となる水素リッチガス中にCOが高濃度に含まれていると電池の電極触媒が被毒されて発電性能が低下するので、水素リッチガス中のCO濃度は通常10ppm程度以下にする必要がある。
しかしながら、炭化水素、アルコールなどを水蒸気改質して得られる改質ガス中には、通常COが0.1%以上含まれているので、CO濃度を10ppm程度以下にするために、改質ガスに酸素(空気)を添加し、触媒の共存下COを選択的に酸化してCO2に変換するCO選択酸化プロセスが設けられる。
即ち、一般的なPEFC発電システム用の燃料改質システムには、原燃料から硫黄化合物を除去する脱硫剤を充填した脱硫器と、脱硫された原燃料を水蒸気改質触媒の共存下水蒸気と反応させて改質ガスを生成する改質反応器と、改質ガスに含まれるCOをCO選択酸化触媒の共存下空気中の酸素で選択的に酸化してCO2に変換するCO選択酸化反応器とが含まれている。
また、炭化水素のように低温で改質すると平衡などの制約から効率が低下する原燃料を用いる場合には、改質ガス中のCO濃度を0.1〜1%程度まで低減するために、一般に、改質ガス中のCOを触媒の共存下水蒸気と反応させてCO2に変換するCO変成器がCO選択酸化反応器に先立って設けられる。
この様なPEFC発電システムにおける燃料改質システムでは、プロセスガスの流れは一方向で、改質ガスが原燃料に混合される事はない。
また、脱硫器においては、吸着式脱硫剤が用いられ、常温で吸着脱硫を行う常温脱硫剤がしばしば用いられる。
しかし、常温脱硫剤では、硫黄化合物のキャッチアップ量が少ないだけでなく、吸着の選択性が高くないので、硫黄化合物だけでなく炭化水素を幾分吸着する。このため、原燃料の組成や温度の変化によって硫黄のキャッチアップ量が変化する。更に、吸着していた炭化水素が運転条件の変化で脱着して改質反応器に高濃度で到達するために、改質触媒上でのカーボン析出を引き起こすという問題があった。
これらの問題点を解決できる脱硫剤として、特開平1-123627号公報及び特開平1-123628号公報には、銅−亜鉛系脱硫剤及び銅−亜鉛−アルミニウム系脱硫剤が開示されている。これらの脱硫剤を用いる場合には、原燃料中の硫黄を安定して1ppb以下に脱硫できる。
しかしながら、これらの脱硫剤を使用する場合でも、高度の脱硫レベルを維持する場合には、脱硫剤の使用量を多くしなければならない。
一方、一般に、脱硫剤の使用量を減らして安定した脱硫を行うには、水添脱硫プロセスが採用されている。水添脱硫は、硫化したNi-MoやCo-Mo系触媒を用い、水素の共存下250〜350℃で、有機硫黄を硫化水素に変換し、該硫化水素を吸着脱硫剤であるZnOと反応させ、ZnSとして脱硫する。水添用の水素源としては、通常、改質して得られる水素をリサイクルして原燃料に混合して用いる。
しかし、この方法では、脱硫レベルは通常0.1ppm程度で、微量の硫黄は改質プロセスにスリップしてしまうため、硫黄被毒により改質触媒の寿命が短縮すると共に、水蒸気改質プロセスでのS/C(水蒸気/原燃料中の炭素モル比)を低くした経済的な運転ができない。
また、250℃以上にならないと原燃料の投入ができないため、起動に時間がかかり、燃料電池などの用途には不向きである。実際に、かかる水添脱硫プロセスを採用しているオンサイトリン酸型燃料電池では、起動操作をしてから発電するまでに約3時間を要している。
さらに、起動時には、水添用の水素がないため、触媒被毒を避けるためには水素を別途準備しておく必要があるが、家庭用など小型の発電システムとして応用が期待されているPEFCでは、水素を準備しておくことはコストやメンテナンス性などから考えがたい。また、家庭用途では起動停止が頻繁に行われるので、起動時の水添用水素の添加の省略は、直ちに改質触媒の劣化につながる。
一方、水素のリサイクルについても、大型の水素製造プラントでは、製品の水素をリサイクルして原燃料に添加するが、燃料電池発電システムに含まれる燃料改質システムなどでは、水素を精製しないので、改質ガスやアノードオフガスをリサイクルしている。200kWクラスのリン酸型燃料電池発電システムにおいては、リサイクルガスの流量も多く、電池の作動温度が180〜200℃程度と高いので、リサイクルガス中に水蒸気が凝縮することはないが、1〜数kWクラスの小型のPEFC発電システムの場合、電池の作動温度が80℃程度以下と低く、流量も極端に少なくなるので、リサイクルガスに含まれる水分がリサイクルライン中で凝縮して閉塞の問題をもたらす場合がある。
さらに、PEFC発電システムの場合、CO選択酸化反応器で空気を添加するので、窒素が改質反応器に供給され、PEFCに悪影響を与えるアンモニアが生成してしまうという問題点があり、改質ガスやアノードオフガスをリサイクルすることができなかった。
本発明は、特に小型のPEFCシステムに適用する際に問題となる改質ガスのリサイクルや、起動時の脱硫性能の確保を可能とすることにより、少量の脱硫剤で安定した高度な脱硫を実現し、小型で高効率、メンテナンスフリーでなおかつ、起動時間が短く起動停止頻度を多くできるPEFC発電システムおよびPEFC発電方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記問題点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、改質ガスのリサイクルの問題については、リサイクルガスをCO選択酸化反応器の上流側から分岐し、当該ガスから水分を凝縮分離することにより、アンモニアを生成せず、リサイクルライン内での水分の凝縮によるトラブルを発生させず、小型でも安定した運転が可能となることを見出した。
また、特定の水添吸着脱硫剤を用いた場合には、水添活性を有すると共に、水素が共存しない条件下でも、長期間連続でなければ吸着脱硫作用により原燃料中の有機硫黄化合物を1ppb以下のレベルまで除去できることを見いだした。
更に、短時間であれば、常温でも、硫黄化合物を吸着でき、原燃料中の硫黄化合物を1ppb以下のレベルまで除去でき、吸着された硫黄化合物は、好ましい運転温度である250℃程度まで脱硫剤が加熱された後には分解され、硫黄はバルクに吸収されるため、起動時に脱硫剤が十分に昇温していない状態で原燃料を投入しても、改質プロセスに触媒がスリップすることはないことも見いだした。
即ち、本発明は、以下の固体高分子型燃料電池発電システムおよび固体高分子型燃料電子発電方法に係る。
1.原燃料を改質して水素リッチガスを生成する燃料改質システムと、水素リッチガスと酸素を固体高分子電解質を介して電気化学的に反応させて電気を発生する燃料電池とを少なくとも含む固体高分子型燃料電池発電システムであって、上記燃料改質システムが、原燃料から硫黄化合物を除去する脱硫剤を充填した脱硫器と、脱硫された原燃料を水蒸気改質触媒の共存下、水蒸気と反応させて改質ガスを生成する改質反応器と、改質ガスに含まれるCOをCO選択酸化触媒の共存下空気中の酸素で選択的に酸化してCO2に変換するCO選択酸化反応器とを少なくとも含む燃料改質システムであり、上記CO選択酸化反応器に供される前の改質ガスの少なくとも一部のガスから水蒸気を凝縮分離する水蒸気凝縮分離手段と、前記水蒸気凝縮分離手段により水蒸気が凝縮分離除去されたガスをリサイクルして原燃料に添加するシステムが設けられ、
上記脱硫器の脱硫剤として、CuとZnとNiまたは/及びFeとを少なくとも含有する水添吸着脱硫剤を用いて脱硫することを特徴とする固体高分子型燃料電池発電システム。
2.燃料改質システムが、改質反応器とCO選択酸化反応器の間に、改質ガス中のCOの大部分をCO変成触媒の共存下水蒸気と反応させてCO2に変換するCO変成器が設置されている上記1記載の固体高分子型燃料電池発電システム。
3.燃料改質システムが、気体状の原燃料を圧縮して供給する原燃料圧縮器を脱硫器よりも上流に備えており、CO選択酸化反応器に供される前の改質ガスの一部が、水蒸気を凝縮分離された後に原燃料圧縮器の吸入側に供給されることにより、原燃料に添加される手段が設けられている上記1または2記載の固体高分子型燃料電池発電システム。
4.水添吸着脱硫剤が、共沈法で得られたCu及びZnの酸化物を少なくとも含む混合物にNi及び/またはFeを含浸担持した組成物を水素還元して得られる水添吸着脱硫剤である上記1乃至3記載の固体高分子型燃料電池発電システム。
5.改質ガス中の水蒸気を凝縮分離する手段が、CO選択酸化反応器に供する直前に設けられ、全ての改質ガスが水蒸気凝縮分離手段に供され、水蒸気分離後であって、CO選択酸化用の空気を添加する前の改質ガスの一部をリサイクルして原燃料に添加する手段が設けられている上記1乃至4記載の固体高分子型燃料電池発電システム。
6.原燃料を改質して水素リッチガスを生成する燃料改質プロセスと、水素リッチガスと酸素を固体高分子電解質を介して電気化学的に反応させて電気を発生する燃料電池とを少なくとも含む固体高分子型燃料電池発電方法であって、原燃料から硫黄化合物を脱硫剤により除去する脱硫プロセスと、脱硫された原燃料を水蒸気改質触媒の共存下水蒸気と反応させて改質ガスを生成する改質プロセスと、改質ガスに含まれるCOをCO選択酸化触媒の共存下空気中の酸素で選択的に酸化してCO2に変換するCO選択酸化プロセスを少なくとも含む燃料改質プロセスにおいて、通常運転時、CO選択酸化プロセスに供される前の改質ガスの少なくとも一部のガスを水蒸気凝縮分離プロセスにより水蒸気を凝縮分離させ、前記水蒸気凝縮分離プロセスにより水蒸気を凝縮分離除去したガスをリサイクルして原燃料に添加し、上記脱硫プロセスにおいて、CuとZnとNiおよび/またはFeとを少なくとも含有する水添吸着脱硫剤を用いて脱硫することを特徴とする固体高分子型燃料電池発電方法。
7.燃料改質プロセスが、改質プロセスを出た改質ガス中のCOの大部分をCO変成触媒の共存下、水蒸気と反応させてCO2に変換するCO変成プロセスに供した後、通常運転時、CO選択酸化プロセスに供する前の改質ガスの少なくとも一部を水蒸気凝縮分離プロセスに供する燃料改質プロセスである上記6記載の固体高分子型燃料電池発電方法。
8.水添吸着脱硫剤が、共沈法で得られたCu及びZnの酸化物を少なくとも含む混合物にNi及び/またはFeを含浸担持した組成物を水素還元して得られる水添吸着脱硫剤である上記6または7記載の固体高分子型燃料電池発電方法。
9.原燃料が、炭素数4以下のアルカンを主成分とする気体状炭化水素である上記6乃至8記載の固体高分子型燃料電池発電方法。
10.水蒸気改質プロセスにおけるS/C(水蒸気/原燃料中の炭素モル比)が、2乃至3である上記9記載の固体高分子型燃料電池発電方法。
11.原燃料ガス流量に対するリサイクルに用いるガスの流量の体積比が、0.001乃至0.05である上記9または10記載の固体高分子型燃料電池発電方法。
12.起動時など改質ガスをリサイクルできない場合に、一時的に改質ガスのリサイクルを休止して脱硫プロセスを行い、その後、リサイクルを開始する上記6乃至10記載の固体高分子型燃料電池発電方法。
本発明によれば、小型のPEFCシステムに適用する際に問題となる改質ガスのリサイクル時の水の凝縮によるトラブルやアンモニア生成を避けられる。本発明は、特に5kW程度以下(より好ましくは0.5〜2kW程度)の小型のPEFCを含む固体高分子型燃料電池発電システムに対して、好適に用いることができる。
本発明では、定常時だけでなく水添用水素が供給されない起動時でも脱硫性能を確保できる。その結果、少量しか脱硫剤を用いていない場合であっても、安定した高度な脱硫を実現することができる。
本発明によると、小型で高効率、メンテナンスフリーでなおかつ、起動時間が短く起動停止頻度を多くできるPEFC発電システムを得ることができる。
本発明によるPEFC発電システムには、原燃料を改質して水素リッチガスを生成する燃料改質システムと、水素リッチガスと酸素を固体高分子電解質を介して電気化学的に反応させて電気を発生する燃料電池とが少なくとも含まれる。
本発明で用いる燃料電池は、水素リッチガスと酸素または空気中の酸素を固体高分子電解質を介して電気化学的に反応させて電気を発生する燃料電池であるかぎり特に制約はない。また、本発明によるPEFC発電方法についても、燃料電池の運転方法については特に制約はない。本発明の効果が大きくなるのは、燃料電池を約100℃以下で動作させるいわゆるPEFCを用いる場合である。
本発明で用いる燃料改質システムは、図1に例示するように、原燃料6から硫黄化合物を除去する脱硫剤を充填した脱硫器1と、脱硫された原燃料を水蒸気改質触媒の共存下水蒸気7と反応させて改質ガスを生成する改質反応器2と、改質ガスに含まれるCOをCO選択酸化触媒の共存下空気8中の酸素で選択的に酸化してCO2に変換するCO選択酸化反応器3とを少なくとも含み、上流側から脱硫器、改質反応器、CO選択酸化反応器の順に位置し、CO選択酸化反応器に供される前の改質ガスの少なくとも一部を、該改質ガス中に含まれる水蒸気を凝縮分離したのちリサイクルして原燃料に添加する手段が設けられている。
以下、水蒸気を凝縮分離した後の改質ガスの一部であって、原燃料に添加されるガスをリサイクルガスという。また、リサイクルガスが流れるラインをリサイクルラインという。
CO選択酸化反応器を出た水素リッチガスは、PEFCに燃料として供給されるが、必要に応じて、水素リッチガスの流路途中に、遮断弁、逆止弁、流量調整弁、パージ用分岐ライン、加湿装置などを備えていても良い。
CO選択酸化反応器に入る改質ガス中のCO濃度を低減するために、図2のように改質反応器2とCO選択酸化反応器3の間に、改質ガス中のCOの大部分をCO変成触媒の共存下水蒸気と反応させてCO2に変換するCO変成器11が設置されていてもよい。この場合、リサイクルライン5は、CO変成器11とCO選択酸化器3の間のガスを分岐する構造とすればよい。この時、CO選択酸化用空気を改質ガスに添加する前に、改質ガスをリサイクルラインとCO選択酸化反応器へのラインとに分岐する必要がある。
本発明に用いる脱硫器には、CuとZnとNiおよび/またはFeとを少なくとも含有する水添吸着脱硫剤が充填され、原燃料とCO選択酸化反応器に供される前の改質ガスの一部から改質ガス中に含まれる水蒸気を凝縮分離したリサイクルガスとの混合ガスが供給される構造となっている。
脱硫器に供給する原燃料の圧力が不足する場合には、図3に示すように、原燃料を昇圧するための原燃料圧縮器12を脱硫器よりも上流に設置してもよい。また、リサイクルガスを原燃料圧縮器の吸入側に供給する構造としてもよく、この場合には、リサイクルガスを原燃料に混合するためのリサイクルガスブロアーを省略できる可能性があるという利点がある。
本発明に用いる改質反応器は、通常用いられる水蒸気改質反応器でよく、Ni系、Ru系などの水蒸気改質触媒が充填され、通常、水蒸気7を供給する手段と、反応に必要な熱を供給する手段が備えられている。また、水を蒸発させて改質用の水蒸気を発生させる水蒸気発生器を備えていてもよい。
本発明に用いるCO選択酸化反応器は、通常用いられるCO選択酸化反応器でよく、Pt系、Ru系などのCO選択酸化触媒が充填され、通常空気8を供給する手段が備えられている。ただし、本発明においては、リサイクルラインは、空気を混合する前の改質ガスから分岐させる必要がある。
本発明で用いる改質ガスから水蒸気を凝縮分離する手段としては、その手段よりも後流側のラインで水蒸気が凝縮しないようにできれば、その構造等に特に制限はない。例えば、水冷式の凝縮器と気液分離器を組み合わせ、ドレインが抜き出されるものを例示できる。
また、当該水蒸気を凝縮分離する手段は、図1乃至3に示すようにリサイクルライン上に取り付けてもよく、図4に示すように、改質ガスの全量を通過させて水蒸気を凝縮分離できるように取り付けてもよい。後者の場合には、水蒸気を凝縮分離した後、CO選択酸化反応器において空気を添加する前にリサイクルラインを分岐してもよい。この場合、CO選択酸化反応器に入る改質ガスは、水蒸気が分離されているので、CO選択酸化反応器の運転温度範囲が広がるとともに、低温での運転が可能になる。したがって、PEFC発電システムの燃料改質システムの運転で問題となるCO選択酸化反応器の制御性や安定性が向上するというメリットがある。図4の様なフローとした上で、必要があれば、さらにリサイクルライン上に水蒸気を凝縮分離する手段を設けてもよい。
本発明で用いるリサイクルラインには、図示していないが、必要に応じて、遮断弁、調節弁、逆止弁、ブロアー、定量ポンプなどを設置してもよい。但し、本発明による水添吸着脱硫剤を用いる場合には、必ずしもリサイクルガス量を原燃料の流量に合わせて厳密に制御する必要はない。また、ゲージ圧2kPa程度の日本の低圧の都市ガスを原燃料として、原燃料圧縮器を用いて原燃料を圧縮し、原燃料圧縮器の吸入側にリサイクルガスを添加するシステムにおいては、CO選択酸化反応器以降のプロセスガスの背圧が、通常、2kPaよりは遙かに大きいので、リサイクルライン上に逆止弁を設けなくとも、逆流することはない。
本発明において用いるCuとZnとNiおよび/またはFeとを少なくとも含有する水添吸着脱硫剤は、特に制限はないが、幅広い条件で使用可能とするためには、共沈法で得られたCu及びZnの酸化物にNiおよび/またはFeを含浸担持した組成物を水素還元して得られる水添吸着脱硫剤であることが望ましい。
かかる水添吸着脱硫剤は、共沈法で得られたCu及びZnの酸化物にNi及び/またはFeを含浸担持した組成物を水素還元して得られる限り、特に制限はないが、例えば、以下のような製造法で製造できる。
まず、硝酸銅、酢酸銅などの水溶性銅化合物、および硝酸亜鉛、酢酸亜鉛などの水溶性亜鉛化合物を溶解する水溶液と、炭酸ナトリウムなどのアルカリ性水溶液とを混合・攪拌して沈殿を生じさせる。生成した沈殿を水洗、ろ過し、乾燥したのち、空気などの酸化雰囲気下、270〜400℃程度において焼成し、さらに水を加えてスラリーとした後、ろ別、成形、乾燥して酸化銅−酸化亜鉛の混合成形体を得る。なお、共沈時にAlを含有せしめ、酸化銅−酸化亜鉛−酸化アルミニウムの混合成形体とすることにより、耐熱性を向上させてもよい。
該酸化銅−酸化亜鉛の混合成形体中の銅と亜鉛の比は特に限定されるものではないが、原子比で1:0.3〜10程度、好ましくは1:0.5〜3程度、より好ましくは1:1〜2.3程度となるようにする。混合成形体の寸法等は特に制限されないが、小さすぎるとプロセスの圧損が大きくなり、大きすぎると硫黄のキャッチアップ量が減るおそれがあるので、通常2〜6mm程度の大きさが好ましい。
次いで、上記のようにして得られた酸化銅−酸化亜鉛の混合成形体を、Ni及び/またはFeの硝酸塩、酢酸塩など水溶性塩を溶解する水溶液中に浸漬し、Ni及び/またはFeを含浸させ、乾燥した後、空気などの酸化雰囲気下、通常270〜400℃程度において焼成し、水添吸着脱硫剤前駆体を得る。このときの該前駆体中のNi及び/またはFeの含有量は、1〜10重量%程度となるように調整することが好ましい。
次に、上記で得られた前駆体を、水素を6体積%程度以下、好ましくは0.5〜4体積%程度含む水素と不活性ガスとの混合ガスの存在下に、150〜350℃程度で還元処理することにより、所望の水添吸着脱硫剤が得られる。
本発明のPEFC発電システムに供給される原燃料としては、炭化水素、アルコールなどがあげられる。硫黄化合物を全く含まない合成燃料である場合には、本発明によるシステムは利用できるが、効果はあまりない。硫黄化合物を含む原燃料としては、例えば、都市ガスとして供給されている天然ガス、プロパンガス、ブタンガス等のLPG、ナフサなどを例示できる。天然ガス、LPGなどの炭素数4以下のアルカンを主成分とする気体状の炭化水素がより好ましい。このようなアルカンを主成分とする気体炭化水素を用いた場合には、本発明の効果がより安定して幅広い運転条件で得られる。
本発明によるPEFC発電方法では、原燃料をまず脱硫プロセスで脱硫する。通常の運転においては、CO選択酸化プロセスに供される前の改質ガスから水蒸気を凝縮分離したリサイクルガスを脱硫前の原燃料に混合し、これをCuとZnとNiおよび/またはFeとを少なくとも含有する水添吸着脱硫剤に接触されることにより脱硫する。このときの脱硫剤の温度は、好ましくは100〜400℃程度、より好ましくは200〜300℃程度である。
添加すべきリサイクルガスの流量は、原燃料中の硫黄化合物の種類と濃度、リサイクルガスと原燃料の組成などに応じて適宜設定することができる。例えば、硫黄含有量がppmオーダーであり、容易に水素化されるアルケンが原燃料中に含まれていない限り、水素が、原燃料に対して体積比で0.0005程度以上であれば十分であり、より好ましくは0.005程度以上である。本発明におけるリサイクルガスは、通常水素濃度が50%程度以上となっているので、リサイクルガスの流量としては、原燃料に対する体積比で0.001程度以上、より好ましくは0.01程度以上である。
一方、本発明による脱硫プロセスでは、水素が過剰に存在しても、脱硫性能には実質的に影響を与えない。しかし、リサイクルガスの添加割合が増えると、リサイクルガス中に含まれるCO2やCOと水素が脱硫剤上で反応し、メタンを生成する副反応が起こった場合、温度上昇が大きくなるというリスクがある。従って、原燃料中に特に硫黄濃度が高くなく、容易に水素化されるアルケン類が顕著に含まれない限り、リサイクルガス流量は、原燃料に対して体積比で0.05程度以下とすることが好ましい。リサイクルガスが完全にメタン化した場合でも、脱硫プロセスでの温度上昇は数十℃程度に止まるので、より好ましい温度範囲で運転している限り、実質的な問題は生じない。従って、発電量に合わせて原燃料の流量を変える場合も、原燃料の全流量範囲で、リサイクルガスの体積比が成り行きで好ましい範囲である0.001乃至0.05程度となる場合には、特にリサイクルガスの流量を制御する必要はない。
脱硫プロセスの圧力としては、常圧付近がより好ましいが、上記記載の製造方法によってえられた水添吸着脱硫剤を用いれば、ゲージ圧で1MPa程度まで上昇させることができる。
脱硫プロセスのGHSV(ガス時間当たり空間速度)は、原燃料中の硫黄化合物の種類及び濃度、使用時間などにより、適宜設計されるが、硫黄含有量がppmオーダーであり、容易に水素化されるアルケンが原燃料中に含まれていない限り、GHSVが100乃至5000h-1程度、好ましくは200乃至2000 h-1程度となるように定めればよい。
脱硫プロセスがかかる運転条件で運転される場合、原燃料中の硫黄濃度を容易に1ppbレベル以下とすることができる。
一方、起動時など改質ガスをリサイクルできない運転状態においては、改質ガスをリサイクルせずに、原燃料をそのまま水添吸着脱硫剤に接触させて脱硫してもよい。起動時など改質ガスをリサイクルできない場合とは、例えば、リサイクルガスの水素濃度が低すぎる場合(通常50%程度以下)、リサイクルガスのCO濃度が高すぎる場合(通常2%程度以上)などの場合である。
リサイクルを行わない状態で、十分な脱硫性能が得られる時間は、原燃料の組成、硫黄化合物の種類及び濃度、脱硫剤の使用経過時間などに依存するが、リサイクルガス添加前の原燃料の硫黄含有量がppmオーダーであり、容易に水素化されるアルケンが原燃料中に含まれていおらず、好ましい温度範囲で適正に設計されたGHSVで運転されている限り、10時間〜100時間程度は連続で脱硫性能を維持することができる。その後、改質ガスをリサイクルすれば、脱硫剤に新鮮な水素が供給されるので、再びリサイクルを停止しても、やはり10〜100時間程度は連続で脱硫性能を維持することができる。
さらに、起動時、脱硫剤が好ましい温度域に到達していない段階において、リサイクルガスを添加せず、原燃料をそのまま水添吸着脱硫剤に接触させて脱硫することも可能である。この状態で、十分な脱硫性能が得られる時間は、原燃料の組成、硫黄化合物の種類及び濃度、脱硫剤の使用経過時間などに依存するが、硫黄含有量がppmオーダーであり、容易に水素化されるアルケンが原燃料中に含まれておらず、好ましいGHSVで運転されている限り、1〜3時間程度は連続で脱硫性能を維持することができる。その後、脱硫剤を昇温し、改質ガスをリサイクルすれば、脱硫剤に吸着した有機硫黄が分解すると共に、新鮮な水素が供給されるので、再びリサイクルを停止し、温度が好ましい温度より低くなっても、やはり1〜3時間程度は連続で脱硫性能を維持することができる。
また、原燃料中の硫黄濃度が高い場合には、水添吸着脱硫剤の使用量を大幅に削減するため、原燃料を、既知のZnO等吸着脱硫剤に接触させて大部分の硫黄を吸着除去した後、水添吸着脱硫剤に接触させてもよい。
さらに、原燃料中に難分解性の有機硫黄化合物が高濃度で含まれる場合や容易に水素化されるアルケンが顕著に含まれる場合には、まず、原燃料にリサイクルガスを添加し、Ni-Mo系、Co-Mo系などの既知の水添脱硫触媒に接触させて有機硫黄やアルケンを水素化したのち、上記吸着脱硫剤に接触させて大部分の硫黄を吸着除去し、水添吸着脱硫剤に接触させてもよい。この場合、リサイクルガスの体積比は、既知の水添脱硫触媒の使用条件に合わせて、水添吸着脱硫剤のみで脱硫する場合に比べて大きく設定する必要があり、また、上記製造方法による水添吸着脱硫剤を使用することが望ましい。
上記脱硫プロセスにより脱硫された原燃料は、水蒸気と混合して水蒸気改質プロセスに供される。PEFC発電システムにおいては、PEFCの運転温度が低いためにPEFCの排熱を利用して改質用の水蒸気を発生できず、燃料を余分に消費して水蒸気を発生する必要があるので、燃料改質システムの熱効率を高め、PEFC発電システムの発電効率を向上させるには、低いS/C比(水蒸気/原燃料中の炭素モル比)で運転すればよい。本発明においては、水蒸気改質プロセスで使用する水蒸気改質触媒や反応条件は既知の方法でよいが、本発明によるPEFC発電方法であれば、原燃料中の硫黄が安定して1ppbレベル以下となっているので、S/C<3の低S/C運転が可能である。原燃料として、天然ガスやLPGなどを用いる場合には、発電効率が極大となるS/C=2乃至3程度、好ましくは2.2乃至2.8程度で運転することが好ましい。
上記水蒸気改質プロセスにより生成した改質ガス中のCO濃度が1%程度以上と高い場合には、該改質ガスは、CO変成プロセスに供されることが好ましい。本発明においては、CO変成プロセスで使用するCO変成触媒はCu-Zn系触媒など既知のCO変成触媒でよく、反応条件は既知の条件でよいが、CO選択酸化プロセスでのCO低減性能と耐久性、並びにCO選択酸化反応の制御性を向上する上で、CO変成プロセスにおいてできる限りCO濃度を低減することが好ましく、CO変成出口の改質ガス中のCO濃度が、ドライベースで好ましくは1%以下程度、より好ましくは0.5%以下程度となるよう、CO変成プロセスの反応条件を選ぶことが望ましい。
上記水蒸気改質プロセスにより生成した改質ガス、または、上記CO変成プロセスでCOを低減した改質ガスは、酸化用の空気を添加してからCO選択酸化プロセスに供される。本発明においては、CO選択酸化プロセスで使用するCO選択酸化触媒や反応条件は既知の方法でよいが、酸化用の空気を添加する前の改質ガスをリサイクル用に分岐する。
リサイクルする改質ガスから水蒸気を凝縮分離するプロセスは、リサイクルガスを分岐したあと原燃料に混入するまでの間に行っても良く、または、改質ガス全量から水蒸気を凝縮分離したのちリサイクルガスを分岐し、原燃料に添加しても良い。
改質ガスからの水蒸気の凝縮分離に際しては、必ずしも水蒸気を完全凝縮分離する必要はなく、リサイクルラインから原燃料にリサイクルガスを添加するまでに水蒸気が凝縮することのないように、条件、手法などを適宜設定するればよい。例えば、水冷式の水蒸気凝縮器に常温(10〜25℃程度)の水を流通させることにより、水蒸気を凝縮させて、気水分離器でドレインを抜き出す方法を例示できる。
上記CO選択酸化反応器を出た水素リッチガスは、PEFCに供給され、酸素または空気との電気化学的反応により、電力を生成する。該水素リッチガスを燃料としてPEFCで発電する方法は、特に制限されず、既知の水素リッチガスを燃料にしてPEFCで発電する方法を適用することができる。
また、起動時など、水素リッチガスの組成がPEFCでの発電に適当でない場合は、PEFCには供給せず、そのまま燃焼するなどして処理しても良い。
システムの停止時においては、燃料改質システムに空気が混入しないような措置がとられる限り、特に制約はない。リサイクルを停止してからも短時間(定格ガス流量として1〜3時間程度)であれば原燃料を投入できるので、原燃料が気体であれば、原燃料での燃料改質システムのパージを行うこともできる。PEFCの停止操作は、常法に従って行えばよい。
以下、参考例、実施例、比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
参考例1
硝酸銅、硝酸亜鉛及び水酸化アルミニウムを1:1:0.3のモル比で含有する混合水溶液を、攪拌しながら約60℃に保った炭酸ナトリウム水溶液に滴下し、沈澱を生じさせた。得られた沈澱を水洗、濾過、乾燥の後、直径1/8インチ×長さ1/8インチに打錠成形し、約300℃で焼成して酸化銅−酸化亜鉛−酸化アルミニウム混合物成形体を得た。
次いで、得られた混合物成形体を硝酸ニッケル水溶液中に浸漬してニッケルを含浸せしめ、乾燥の後、約300℃で焼成して脱硫剤前駆体を得た。得られた脱硫剤前駆体中のニッケル濃度は、5重量%であった。
上記で得られた脱硫剤前駆体を、水素を2容量%含有する水素−窒素混合ガス気流中で、約200℃で還元することにより、Cu-Zn-Al-Ni系水添吸着脱硫剤を得た。
参考例2
参考例1で得られたCu-Zn-Al-Ni系水添吸着脱硫剤を充填したSUS製反応管(触媒層長30cm)に、表1に示される組成の都市ガス(13Aガス)を、GHSV=2000h-1、水素/都市ガス=0.01(モル比)、圧力0.02kg/cm2-G、温度250℃の条件で脱硫した。脱硫後のガス中の硫黄含有量は、5000時間にわたって0.1ppb以下であった。
表1
メタン 88%
エタン 6%
プロパン 3%
ブタン 3%
ジメチルサルファイド 3mg-S/Nm3
t-ブチルメルカプタン 2mg-S/Nm3
参考例3
参考例1で得られたCu-Zn-Al-Ni系水添吸着脱硫剤を用い、水素を添加しない以外は参考例2と同様にして都市ガスを脱硫した。脱硫後のガス中の硫黄含有量は、200時間にわたって0.1ppb以下であった。
参考例4
参考例1で得られたCu-Zn-Al-Ni系水添吸着脱硫剤を用い、温度を室温(約25℃)とする以外は参考例2と同様にして都市ガスを脱硫した。脱硫後のガス中の硫黄含有量は、20時間にわたって0.1ppb以下であった。
実施例1
基本的なフローが、図2であるPEFC発電システムを構成した。すなわち、参考例1で得られたCu-Zn-Al-Ni系水添吸着脱硫剤100mlを充填したSUS製脱硫器1と、Ru系水蒸気改質触媒200mlを充填した外熱式水蒸気改質反応器2と、Cu-Zn系CO変成触媒800mlを充填した熱交換型CO変成器11と、Ru系CO選択酸化触媒200mlを充填したCO選択酸化反応器3と、1kW級の常圧作動のPEFCスタック9を図2のようなフローで組み合わせた。さらに、CO変成器出口の改質ガスを一部分岐し、水冷式の凝縮器と気水分離器からなる水蒸気凝縮分離器に導入した後、定量ポンプで原燃料ガスに添加できるリサイクルラインを設けた。
実施例2
実施例1のPEFC発電システムを用いて、発電試験を行った。原燃料として、表1記載の都市ガス4.2 l/min(標準状態)を用いた。これに水蒸気を凝縮分離することによって露点が20℃以下となったリサイクルガス50 ml/min(標準状態)を加えて、混合後の燃料ガスを250℃に予熱し、脱硫器で脱硫した。脱硫した原燃料にS/C=2.5となるように水蒸気を加えて、入口約450℃、出口約650℃に保たれた外熱式水蒸気改質反応器に供し、改質ガスを得た。得られた改質ガスを約250℃まで冷却し、CO変成器に供給することによって、残存する水蒸気で大部分のCOを
CO2に変換した。このガスの一部を分岐し、水蒸気を凝縮分離してリサイクルガスとした。残りの改質ガスは、入口温度を90℃に保ち、触媒層の温度が180℃を越えないように温度制御されたCO選択酸化反応器に空気0.8l/min(標準状態)を添加した上で導入され、COを10ppm以下に低減した。こうして得られた水素リッチガスを燃料とし、空気を酸化剤としてPEFCスタックで水素利用率約70%で定電流で発電し、約1.1kWの直流電力を得た。
この時の脱硫後の原燃料中の硫黄濃度は0.1ppb以下であった。また、PEFCに供給される水素リッチガス中のメタン濃度は1.8%、CO濃度は1ppm未満であった。一方、リサイクルガス中の水素濃度は約75%であった。
さらに、運転を約1000時間継続したところ、PEFCの電圧が若干低下したものの、約1.1kWの直流電力は引き続き得られた。このときの脱硫後の原燃料ガス中の硫黄濃度は0.1ppb以下であった。また、PEFCに供給される水素リッチガス中のメタン濃度は1.8%、CO濃度は1ppm未満であった。
比較例1
CO選択酸化反応器出口ガスの一部をリサイクルガスとして用いる以外は、実施例2と同様にして発電を行った。ごく初期においては、約1.1kWの直流電力が得られたが、その後徐々に電圧が低下し、約300時間後には発電電力が1kWを切ってしまった。さらに約200時間経過後には電圧が急激に低下したため、発電を中止した。
CO選択酸化反応器出口ガスを分析したところ、アンモニアが約0.1ppm検出された。
実施例3
各反応器及び水蒸気凝縮分離用熱交換器を除く熱交換器が同一形状のプレート型エレメントで構成され、該プレート型エレメントを積層して一体化した図5に示すフローの燃料改質システムを製作した。図5の装置は、PEFCセルスタックを除いて、蒸気発生器を内蔵する以外の基本的なフローは、図4と同様である。CO選択酸化反応器を出た水素リッチガスは、PEFCスタックに燃料として供給されるように接続し、PEFC発電システムを構成した。
CO変成器を出たガスは、全量水冷式の水蒸気凝縮分離器に導入されて水蒸気を凝縮分離したあと、一部はリサイクルガスとして、原燃料圧縮器の吸入側に添加され、残りは、CO選択酸化反応に供した。
ここで、表1に示す組成の都市ガス4.2 l/min(標準状態)に、水蒸気を凝縮分離し、露点が20℃以下となったリサイクルガス50 ml/min(標準状態)を加えて燃料圧縮器で0.2kg/cm2程度に昇圧し、熱交換の後、参考例1で得られたCu-Zn-Al-Ni系水添吸着脱硫剤100mlを充填した脱硫器で約250℃で脱硫した。脱硫後の原燃料をS/C=2.5で水蒸気改質したのち、CO変成を行い、水蒸気を凝縮分離後、空気0.8l/min(標準状態)を加えてCO選択酸化反応に供した。この時の改質反応器出口改質ガス温度は約620℃に制御し、CO変成器出口は約150℃、CO選択酸化反応器入口は約25℃となり、CO選択酸化反応器の触媒層の温度は、160℃を越えないように温度制御した。
このとき、リサイクルガス中の水素濃度は約75%、得られた水素リッチガス中のメタン濃度は2.5%、CO濃度は3ppm未満であり、PEFCからは約1.1kWの電力が得られた。
さらに、1000時間にわたって、このシステムを運転し続けたが、得られた水素リッチガス中のメタン濃度、CO濃度には変化がなく、PEFCからも、ほぼ1.1kWの電力が継続的に得られた。
比較例2
改質ガスのリサイクルを中断し、原燃料圧縮器と脱硫器の間に市販の酸化マンガン系常温脱硫剤を100ml充填した常温脱硫器を配し、脱硫器の中は空洞とする以外は実施例3と同様にして、PEFC発電システムを構成した。
脱硫を常温脱硫器を用いて常温で行う以外は実施例3と同様にして、発電試験を行った。その結果、初期においては、得られた水素リッチガス中のメタン濃度は2.5%、CO濃度は3ppm未満であり、PEFCからは約1.1kWの電力が得られた。
さらに、運転を継続したところ、約600時間経過した頃からPEFCの電圧が顕著に低下し始めた。さらに、約100時間運転を継続したが、ついに電池電圧が危険な領域まで低下したので、運転を中止した。
このときの水素リッチガス中のメタン濃度は8.2%であり、CO濃度は1ppm未満であった。これは、改質触媒が硫黄被毒により劣化し、改質性能が低下して水素の流量が低下し、PEFCでの水素利用率が上がったためであると考えられる。
実施例4
水添吸着脱硫剤を400ml充填した以外は、実施例3で用いたPEFC発電システムと同様のシステムを使用し、実施例3と同様の条件において発電を行った。
1000時間経過後も得られる水素リッチガス中のメタン濃度およびCO濃度には変化がなく、PEFCの出力は、約1.1kWを保っていた。
引き続き、以下のような負荷変動を与えながら燃料改質システム単独で運転を継続した。まず50%負荷相当で1時間運転し、次に100%負荷相当で1時間運転することを1サイクルとして、合計2900サイクル(条件変更などの時間を含めた運転時間:6100時間)の負荷変動を与えた。なお、50%負荷相当の運転条件としては、原燃料として、表1記載の都市ガス2.52 l/min(標準状態)を使用し、これにリサイクルガス30 ml/min(標準状態)を添加した。100%負荷相当の運転条件は、実施例3における運転条件と同一である。
得られた水素リッチガス中のメタン濃度およびCO濃度は、負荷変動を与える前と同様であった。
負荷変動を与えた後、再度燃料改質システムをPEFCに再度接続し、100%負荷を与えながら発電を行った。PEFCの出力は、約1.1kWであった。
以上のことから、負荷変動により脱硫器へ流入するガスの流速が変化しても、全く問題なく脱硫が行われていることが明らかである。
実施例5
実施例3で用いたPEFC発電システムを用い、停止時窒素を用いて燃料改質システムをパージした。再度起動する際、プロセスガスは流通せずに改質炉燃料を送り込んで改質反応器を昇温すると共に、起動用ヒーターを作動させて水蒸気発生器、脱硫器、CO変成器を昇温し、水蒸気発生器とプロセスガスの通る反応器全ての温度が120℃を越えたときに、水蒸気発生器に原水を供給し始めた。そして、リサイクルラインを閉じた状態で都市ガスの供給を開始した。このときの脱硫器の温度は約180℃、改質器出口のプロセスガス温度は450℃であった。このまま約20分間昇温を続けたのち、CO選択酸化反応用の空気を導入すると共に、リサイクルラインを開とした。このあと、各部の温度が安定するまで約20分保持した後、水素リッチガスをPEFCに供給し、発電を開始した。
この様な停止・起動操作50回を含む1000時間の運転を行ったが、得られた水素リッチガス中のメタン濃度は2.4%、CO濃度は3ppm未満であり、PEFCからは約1.1kWの電力が継続的に得られた。
更に、停止・起動操作が合計135回となり、運転時間の合計が1100時間となるまで運転を継続した。得られた水素リッチガス中のメタン濃度は、変化がなく、PEFCからは約1.1kWの電力が継続的に得られた。
比較例3
脱硫器にNi-Mo系水添脱硫触媒50mlとZnO吸着脱硫剤50mlを充填し、リサイクルガスの流量を500mlとする以外は実施例5と同様にして起動停止を含む発電試験を行った。
途中で徐々にPEFCの電圧が低下し始め、最終的には1kWを切ってしまった。このとき、水素リッチガス中のメタン濃度は5.7%まで上昇していた。
比較例4
CO変成器出口のガスの一部について、水蒸気を凝縮分離せずにリサイクルする以外は、実施例2と同様にして発電を行った。
発電開始2時間後からしばしば電圧が低下し、3時間後には運転できなくなった。原燃料のラインに水が混入し、流量が不安定化したのが原因であると考えられる。
図1は、本発明によるPEFC発電システムの一態様を示すフロー図である。 図2は、本発明によるPEFC発電システムの別の態様を示すフロー図である。 図3は、本発明によるPEFC発電システムの第三の態様を示すフロー図である。 図4は、本発明によるPEFC発電システムの第四の態様を示すフロー図である。 図5は、実施例において用いたPEFC発電システムの構成とフローを示す図である。
符号の説明
1…脱硫器
2…改質反応器
3…CO選択酸化反応器
4…水蒸気凝縮分離器
5…リサイクルライン
6…原燃料
7…プロセス水蒸気
8…CO選択酸化用空気
9…固体高分子型燃料電池
10…ドレイン
11…CO変成器
12…原燃料圧縮器
13…水蒸気発生器
14…改質ガス冷却用熱交換器
15…気水分離器
16…起動用ヒーター
17…CO選択酸化反応器用冷却ファン
18…水蒸気発生用原水
19…改質炉用燃料
20…燃焼空気
21…断熱材
22…燃焼排ガス

Claims (6)

  1. 原燃料を改質して水素リッチガスを生成する燃料改質プロセスと、水素リッチガスと酸素を固体高分子電解質を介して電気化学的に反応させて電気を発生する燃料電池とを少なくとも含む固体高分子型燃料電池発電方法であって、原燃料から硫黄化合物を脱硫剤により除去する脱硫プロセスと、脱硫された原燃料を水蒸気改質触媒の共存下水蒸気と反応させて改質ガスを生成する改質プロセスと、改質ガスに含まれるCOをCO選択酸化触媒の共存下空気中の酸素で選択的に酸化してCO2に変換するCO選択酸化プロセスを少なくとも含む燃料改質プロセスにおいて、通常運転時、CO選択酸化プロセスに供される前であってCO選択酸化用空気を改質ガスに添加する前に、改質ガスの少なくとも一部のガスを水蒸気凝縮分離プロセスにより水蒸気を凝縮分離させ、前記水蒸気凝縮分離プロセスにより水蒸気を凝縮分離除去したガスをリサイクルして原燃料に添加し、上記脱硫プロセスにおいて、CuとZnとNiおよび/またはFeとを少なくとも含有する水添吸着脱硫剤を用いて脱硫し、起動時など改質ガスをリサイクルできない場合に、一時的に改質ガスのリサイクルを休止して脱硫プロセスを行い、その後、リサイクルを開始することを特徴とする固体高分子型燃料電池発電方法。
  2. 燃料改質プロセスが、改質プロセスを出た改質ガス中のCOの大部分をCO変成触媒の共存下、水蒸気と反応させてCO2に変換するCO変成プロセスに供した後、通常運転時、CO選択酸化プロセスに供する前の改質ガスの少なくとも一部を水蒸気凝縮分離プロセスに供する燃料改質プロセスである請求項1記載の固体高分子型燃料電池発電方法。
  3. 水添吸着脱硫剤が、共沈法で得られたCu及びZnの酸化物を少なくとも含む混合物にNi及び/またはFeを含浸担持した組成物を水素還元して得られる水添吸着脱硫剤である請求項1または2記載の固体高分子型燃料電池発電方法。
  4. 原燃料が、炭素数4以下のアルカンを主成分とする気体状炭化水素である請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池発電方法。
  5. 水蒸気改質プロセスにおけるS/C(水蒸気/原燃料中の炭素モル比)が、2乃至3である請求項4記載の固体高分子型燃料電池発電方法。
  6. 原燃料ガス流量に対するリサイクルに用いるガスの流量の体積比が、0.001乃至0.05である請求項4または5記載の固体高分子型燃料電池発電方法。
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