JP4931612B2 - イオン交換繊維およびその製造方法ならびにイオン交換繊維を利用した繊維構造物 - Google Patents

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本発明は、空気中、水中、有機溶剤中に含まれる各種のイオンを効率良く吸着することができるイオン交換繊維の製造方法と、このイオン交換繊維を含む様々な機能を有する繊維構造物とに関するものである。
一般に、イオン交換繊維は、イオン交換樹脂と比較すると表面積が大きいため、イオン交換速度が高く、しかも繊維状であることから加工に適している。
従来より、このようなイオン交換繊維の製造方法としては、ポリビニルアルコール系ポリマーと、スルホン酸基を有するスチレン系共重合体と、溶媒とからなる紡糸原液を紡糸した後、熱処理することによってイオン交換繊維を製造する方法が提案されている( 特許文献1)。
しかし、この場合、200℃前後の高温で加熱しなければならず、製造コストが嵩むこととなってしまう。
また、上記従来のイオン交換繊維は、ポリビニルアルコール系ポリマーのヒドロキシル基と、スチレン系コポリマーのカルボシキル基とをエステル架橋したり、ポリビニルアルコール系ポリマーおよびスチレン系コポリマーのヒドロキシル基と、ポリアクリル酸のカルボシキル基とをエステル架橋したりするため、これら架橋構造導入のためにイオン交換基が消費されることとなるので、完成したイオン交換繊維には、スルホン酸基やカルボキシル基などのイオン交換基を十分に導入することができない。
カルボキシル基のみでは、交換容量を大きくすれば、高濃度ガスを吸着できるが、低濃度ガスは十分に吸着できない。スルホン酸基を導入した場合、低濃度ガスを吸着できるが、導入量が不十分なため、高濃度ガスを十分に吸着できない。したがって、高濃度も低濃度も対応てきるイオン交換繊維はなかった。
特開2005−82933号公報
本発明の目的は、低濃度から高濃度までの幅広い範囲のアミン臭や塩基性ガス臭などを取り除くことを可能にする十分な量のスルホン酸基とカルボキシル基とを導入したイオン交換繊維の製造方法と、このイオン交換繊維を用いた繊維構造物とを提供することを目的としている。
上記課題を解決するための本発明のイオン交換繊維の製造方法は、10.0ミリモル/g以下のカルボキシル基を有する原料繊維に、あらかじめ調整した量のスルホン酸基を有するモノマーを含浸させ、このモノマーを重合することで、0.5〜4.0ミリモル/gのスルホン酸基と2.0ミリモル/g以上のカルボキシル基とを導入するものである。
また、上記課題を解決するための本発明の繊維構造物は、上記イオン交換繊維に、金属化合物からなるイオウ系ガスの消臭性成分を有するイオウ系ガス吸収繊維および/または塩基性基を有する酸性ガス吸収繊維を、95質量%以下の割合で含有させてなるものである。
本発明の製造方法によれば、0.5〜4.0ミリモル/gのスルホン酸基と2.0ミリモル/g以上のカルボキシル基とを導入したイオン交換繊維を製造することができるので、スルホン酸基とカルボキシル基とのバランスによって、様々な機能を有するイオン交換繊維を得ることができる。
また、このイオン交換繊維は、0.5〜4.0ミリモル/gのスルホン酸基と、2.0ミリモル/g以上のカルボキシル基とを導入しているので、低濃度から高濃度までの幅広い範囲のアミン臭や塩基性ガス臭などを取り除くことが可能となる。
さらに、このイオン交換繊維に、イオウ系ガス吸収繊維および/または酸性ガス吸収繊維を95質量%以下の割合で含有させるた繊維構造物とすることで、この繊維構造物だけで様々な臭気を除去することが可能となる。
以下、本発明を詳述する。
本発明に採用されるカルボキシル基を有する原料繊維は、水に対する膨潤度が0.5以上であることが好ましい。膨潤度が0.5未満の場合には、繊維内部での重合が起こりにくく、十分な機能を持ったイオン交換繊維が得られない。膨潤度が高いと、多くのポリマーを複合することが可能となり、原料繊維に高い機能を付与することができる。従って、膨潤度としては高い方が好ましいが、膨潤度が高すぎると、原料繊維自体の繊維強度が弱くなるため、工業的には膨潤度が0.5〜4.5であることが好ましい。
また、本発明に採用されるカルボキシル基を有する原料繊維は、膨潤度が0.5以上であり、かつ架橋構造を有することが好ましい。かかる架橋構造を有する繊維としては、カルボキシル基またはそのアルカリ金属塩基などの親水性基含有モノマーと、カルボキシル基と反応してエステル架橋構造を形成できるヒドロキシル基含有モノマーなどが共重合され、かつエステル架橋結合が導入されてなるポリアクリル酸系架橋体繊維、無水マレイン酸系架橋体繊維、アルギン酸系架橋体繊維、アクリロニトリル系繊維にヒドラジン系化合物あるいはホルムアルデヒドにより架橋を導入した後、加水分解することによりカルボキシル基を導入したアクリレート系架橋体繊維などを挙げることができる。
特に、アクリレート系架橋体繊維は、ヒドラジン系化合物あるいはホルムアルデヒドによる架橋条件、加水分解条件をコントロールすることにより、膨潤度が高く、しかも繊維強度にも優れた繊維が得られるため、本発明に採用される原料繊維として好ましいものである。この原料繊維は、架橋条件、加水分解条件などを設定することにより、約2.2〜10ミリモル/gのカルボキシル基を導入したものを用意する。原料繊維のカルボキシル基が2.2ミリモル/g未満の場合には、2.0ミリモル/g以上のカルボキシル基を残した状態で、0.5ミリモル/g以上のスルホン酸基を有するモノマーを重合することができなくなる。また、原料繊維のカルボキシル基が10ミリモル/gを超える場合には、原料繊維の強度を確保することができなくなってしまう。
スルホン酸基を有するモノマーとしては、ビニルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、アクリルアミドt−ブチルスルホン酸、メタリルスルホン酸などの不飽和炭化水素スルホン酸および/またはこれらの塩類などが用いられる。このモノマーは、原料繊維、過酸化水素と混合して原料繊維に重合される。
混合液の調整方法は特に限定されるものではなく、例えば、モノマーを、水、または有機溶剤、または、それらの混合溶液に溶かし、原料繊維と混合し、その後、過酸化水素をモノマー溶液に含ませる方法、あるいは、過酸化水素をモノマー溶液に含ませた後、原料繊維を混合する方法、原料繊維を水、または有機溶媒、または、それらの混合溶液に分散させ、過酸化水素およびモノマーを添加する方法などが挙げられる。
また、混合液中のモノマーの量は、原料繊維に複合させるスルホン酸基が0.5〜4.0ミリモル/gとなるように設定される。原料繊維に複合されるポリマーのスルホン酸基が0.5ミリモル/g未満の場合、アミン臭を除去するイオン交換繊維として十分な性能が発現されない。また、原料繊維に複合されるポリマーのスルホン酸基が4.0ミリモル/gを超えると、十分な繊維物性を確保することができない。具体的にスルホン酸基を有するモノマーの量としては、原料繊維に対して10重量%以上添加することが望ましい。また、過酸化水素の添加量としては、添加量があまりに少ないと、重合が十分起こらない場合があるため、原料繊維に対して0.01〜50重量%添加することが望ましい。
本発明のイオン交換繊維の製造方法においては、pHを限定して重合を行うが、この重合を行う上で、特にpH6.0以下にすることが重要である。pH6.0以下にすることで、重合が起こり、繊維中にポリマーが複合される。特に、pHが1.0〜4.0の時は、繊維中に多くのポリマーが複合されるので、工業的に好ましい。一方、pHが6.0を超えると、繊維内部での重合が起こりにくく、十分な機能を持ったイオン交換繊維が得られない。pH6.0以下にする方法は特に限定されず、酸を添加するなどして、重合時に系がpH6.0以下になっていればよい。
なお、原料繊維として還元アクリレート系架橋体繊維を使用した場合には、pHを調整しなくてもよい。この還元アクリレート系架橋体繊維は、アクリレート系架橋体繊維を還元剤で還元して調製される。この際の還元処理条件、還元剤は特に限定されない。
重合温度は、特に限定されないが、低温で重合し、重合速度を遅くすることで、より多くのポリマーが複合されるが、重合速度が遅すぎると、ポリマーが効率よく複合されない。そのため、40〜80℃が好ましい。また、重合時間は、重合温度やモノマー濃度により異なり、適宜決定すればよく、限定されないが、概ね2時間〜20時間が工業的に好ましい。
本発明の製造方法によって得られるイオン交換繊維は、該イオン交換繊維を酸性溶液やアルカリ性溶液中に浸漬させても、複合させたポリマーの脱落量は極めて小さく、脱落耐久性に優れたものである。
かくして、本発明の製造方法により得られるイオン交換繊維は、カルボキシル基を導入した原料繊維を用い、スルホン酸基を有するモノマーを重合する条件を整えることにより、弱カチオン交換性を有する2.0ミリモル/g以上のカルボキシル基と、強カチオン交換性を有する0.5〜4.0ミリモル/gのスルホン酸基とを導入することができる。このようにして構成されるイオン交換繊維は、十分な量のカルボキシル基とスルホン酸基とを導入することができるので、低濃度から高濃度までの幅広い範囲のアミン臭や塩基性ガス臭などを取り除くことが可能となる。このイオン交換繊維としては、用途に応じて適宜加工されるので、原綿のみならず、糸、織物、編物、シートやマット状にした不織布などの各種の形態ものであってもよい。
また、このイオン交換繊維は、金属化合物からなるイオウ系ガスの消臭性成分を有するイオウ系ガス吸収繊維を含有させたり、塩基性基を有する酸性ガス吸収繊維を含有させたりして構成した繊維構造物としてもよい。
この場合、イオウ系ガス吸収繊維としては、例えば、特許第3695604号および特開2003−301356号公報に開示されている繊維を用いることができる。
また、酸性ガス吸収繊維としては、例えば、特開平9−316762号公報に開示されている繊維を用いることができる。
これらイオウ系ガス吸収繊維および/または酸性ガス吸収繊維は、95質量%以下の割合となるようにイオン交換繊維に含有させることが好ましい。95質量%を超えると、イオン交換繊維の絶対量が少なくなるので、このイオン交換繊維によるアミン臭や塩基性ガス臭の除去効果が十分に得られなくなってしまう。具体的な含有割合としては、適用する場所で発生する臭気成分に合わせて調整することができる。
このようにして構成した繊維構造物は、イオン交換繊維に、イオウ系ガス吸収繊維および/または酸性ガス吸収繊維を含有させているので、いわゆる4大悪臭といわれるアンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタン、硫化水素が発生するような環境であっても、この繊維構造物だけで、これら臭気の除去が可能となる。しかも、この繊維構造物は繊維状であるため、各種形態へ容易に加工転用することができ、生活用品、医療、農業、土木、工業などの様々な分野で用いることが可能となる。この繊維構造物の形態としては、用途に応じて適宜加工されるので、原綿同士を混繊してシートやマット状にした不織布であってもよいし、原綿繊維毎にシートやマット状にした不織布を積層したものであっても良いし、原綿同士を混紡した糸、織物、編物であってもよいし、原綿毎に混紡した糸で形成した織物、編物であってもよい。
以下実施例により本発明を具体的に説明する。本発明は、これらの実施例の記載によってその範囲を何等限定されるものではない。実施例中の部及び百分率は、断りのない限り重量基準で示す。なお、重量増加率、膨潤度、スルホン酸基量およびカルボキシル基量は、以下の方法により求めた。
(1)重量増加率(%)
原料繊維を、水に浸浸し、塩酸水溶液を加えて、水溶液のpHを2.0に調整する。その後、該原料繊維を塩酸水溶液から取り出し絶乾し、重量を測定する(Xg)。該原料繊維を用いてイオン交換繊維を作製後、絶乾し、重量をYgとすると、重量増加率は、以下の式で、表される。
重量増加率(%)={(Y−X)/X}×100
(2)膨潤度
原料繊維を、水に浸浸し、塩酸水溶液を加えて、水溶液のpHを2.0に調整する。その後、該原料繊維を塩酸水溶液から取り出し、水洗後、中心からサンプルまでの距離が11.5cmの遠心分離機に入れ、1200rpmで、5分間脱水する。該原料繊維の脱水後の重量を測定する(Yg)。その後、該原料繊維を絶乾し、重量を測定する(Xg)。膨潤度は、以下の式で、表される。
膨潤度=(Y−X)/X
(3)スルホン酸基、およびカルボキシル基量(mmol/g)
得られたイオン交換繊維を、十分乾燥した試料繊維約1gを精秤し(Xg)、これに200ミリリットルの水を加えた後、次いで0.1mol/リットル苛性ソーダ水溶液で常法に従って滴定曲線を求めた。この滴定曲線からスルホン酸基に消費された苛性ソーダ水溶液消費量(Ycm3 )、およびカルボキシル基に消費された苛性ソーダ水溶液消費量(Zcm3 )を求め、次式によってスルホン酸基、およびカルボキシル基量(mmol/g)を算出した。
スルホン酸基量(mmol/g)=0.1Y/X
カルボキシル基量(mmol/g)=0.1Z/X
(実施例1)
アクリロニトリル90%及びアクリル酸メチル10%からなるアクリロニトリル系重合体10部を48%のロダンソーダ水溶液90部に溶解した紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸、乾燥して1.7dTexのアクリル繊維を得た。
該アクリル繊維を、15%ヒドラジン水溶液中に添加し110℃で4.5時間ヒドラジン架橋反応を行った。得られた架橋繊維は水洗、脱水後、さらに4.5%苛性ソーダ水溶液に添加し、90℃、2時間で加水分解反応を実施した。水洗、脱水後、塩酸でpHを2.0に調整した水溶液中で処理し、水洗、脱水後、乾燥して原料繊維を作製した。原料繊維の全カルボキシル基は6.0ミリモル/g、膨潤度は0.70であった。
該原料繊維を、1mol/l の塩酸を使ってpH2.0に調整した3.3%p−スチレンスルホン酸ナトリウム(SPSS)水溶液(浴比1:50)に浸漬した。その後、原料繊維に対して2.16重量%の過酸化水素を添加し、60℃、6時間加熱し、水洗する。その後、4%硝酸で処理した後、水洗する。この硝酸処理、水洗を3回繰り返した後、脱水乾燥し、本願発明のイオン交換繊維を得た。
得られたイオン交換繊維は、重量増加率を測定したところ、17.5%であり、スルホン酸基0.81ミリモル/g、カルボキシル基5.11ミリモル/gであった。
(実施例2)
p−スチレンスルホン酸ナトリウム(SPSS)水溶液の濃度を11.0%とした以外は、上記実施例1と同様にして本願発明のイオン交換繊維を得た。
得られたイオン交換繊維は、重量増加率を測定したところ、58.0%であり、スルホン酸基2.0ミリモル/g、カルボキシル基3.8ミリモル/gであった。
(実施例3)
p−スチレンスルホン酸ナトリウム(SPSS)水溶液の濃度を7.0%とした以外は、上記実施例1と同様にして本願発明のイオン交換繊維を得た。
得られたイオン交換繊維は、重量増加率を測定したところ、42.0%であり、スルホン酸基1.6ミリモル/g、カルボキシル基4.2ミリモル/gであった。
(実施例4)
アクリロニトリル90%及びアクリル酸メチル10%からなるアクリロニトリル系重合体10部を48%のロダンソーダ水溶液90部に溶解した紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸、乾燥して1.7dTexのアクリル繊維を得た。
該アクリル繊維を、15%ヒドラジン水溶液中に添加し110℃で3.0時間ヒドラジン架橋反応を行った。得られた架橋繊維は水洗、脱水後、さらに5.2%苛性ソーダ水溶液に添加し、90℃、16時間で加水分解反応を実施した。水洗、脱水後、塩酸でpHを2.0に調整した水溶液中で処理し、水洗、脱水後、乾燥して原料繊維を作製した。原料繊維の全カルボキシル基は9.0ミリモル/g、膨潤度は0.90であった。
該原料繊維を、1mol/l の塩酸を使ってpH2.0に調整した13.0%p−スチレンスルホン酸ナトリウム(SPSS)水溶液(浴比1:50)に浸漬した。その後、原料繊維に対して2.16重量%の過酸化水素を添加し、60℃、6時間加熱し、水洗する。その後、4%硝酸で処理した後、水洗する。この硝酸処理、水洗を3回繰り返した後、脱水乾燥し、本願発明のイオン交換繊維を得た。
得られたイオン交換繊維は、重量増加率を測定したところ、106.0%であり、スルホン酸基2.8ミリモル/g、カルボキシル基4.3ミリモル/gであった。
(実施例5)
p−スチレンスルホン酸ナトリウム(SPSS)水溶液の濃度を8.5%とした以外は、上記実施例4と同様にして本願発明のイオン交換繊維を得た。
得られたイオン交換繊維は、重量増加率を測定したところ、50.0%であり、スルホン酸基1.8ミリモル/g、カルボキシル基6.0ミリモル/gであった。
(実施例6)
p−スチレンスルホン酸ナトリウム(SPSS)水溶液の濃度を5.0%とした以外は、上記実施例4と同様にして本願発明のイオン交換繊維を得た。
得られたイオン交換繊維は、重量増加率を測定したところ、31.4%であり、スルホン酸基1.3ミリモル/g、カルボキシル基6.8ミリモル/gであった。
(実施例7)
アクリロニトリル90%及びアクリル酸メチル10%からなるアクリロニトリル系重合体10部を48%のロダンソーダ水溶液90部に溶解した紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸、乾燥して1.7dTexのアクリル繊維を得た。
該アクリル繊維を、15%ヒドラジン水溶液中に添加し110℃で4.5時間ヒドラジン架橋反応を行った。得られた架橋繊維は水洗、脱水後、さらに4.5%苛性ソーダ水溶液に添加し、90℃、1.5時間で加水分解反応を実施した。水洗、脱水後、塩酸でpHを2.0に調整した水溶液中で処理し、水洗、脱水後、乾燥して原料繊維を作製した。原料繊維の全カルボキシル基は4.8ミリモル/g、膨潤度は0.6であった。
該原料繊維を、1mol/l の塩酸を使ってpH2.0に調整した11.0%p−スチレンスルホン酸ナトリウム(SPSS)水溶液(浴比1:50)に浸漬した。その後、原料繊維に対して2.16重量%の過酸化水素を添加し、60℃、6時間加熱し、水洗する。その後、4%硝酸で処理した後、水洗する。この硝酸処理、水洗を3回繰り返した後、脱水乾燥し、本願発明のイオン交換繊維を得た。
得られたイオン交換繊維は、重量増加率を測定したところ、58.0%であり、スルホン酸基2.0ミリモル/g、カルボキシル基3.0ミリモル/gであった。
(実施例8)
p−スチレンスルホン酸ナトリウム(SPSS)水溶液の濃度を17.0%とした以外は、上記実施例4と同様にして本願発明のイオン交換繊維を得た。
得られたイオン交換繊維は、重量増加率を測定したところ、290%であり、スルホン酸基4.0ミリモル/g、カルボキシル基2.3ミリモル/gであった。
(比較例1)
アクリロニトリル90%及びアクリル酸メチル10%からなるアクリロニトリル系重合体10部を48%のロダンソーダ水溶液90部に溶解した紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸、乾燥して1.7dTexのアクリル繊維を得た。
該アクリル繊維を、15%ヒドラジン水溶液中に添加し100℃で16時間ヒドラジン架橋反応を行った。得られた架橋繊維は水洗、脱水後、さらに1.0%苛性ソーダ水溶液に添加し、95℃、3時間で加水分解反応を実施した。水洗、脱水後、塩酸でpHを2.0に調整した水溶液中で処理し、水洗、脱水後、乾燥して原料繊維を作製した。原料繊維の全カルボキシル基は1.1ミリモル/g、膨潤度は0.55であった。
該原料繊維を、1mol/l の塩酸を使ってpH2.0に調整した6.5%p−スチレンスルホン酸ナトリウム(SPSS)水溶液(浴比1:50)に浸漬した。その後、原料繊維に対して2.16重量%の過酸化水素を添加し、60℃、6時間加熱し、水洗する。その後、4%硝酸で処理した後、水洗する。この硝酸処理、水洗を3回繰り返した後、脱水乾燥し、本願発明のイオン交換繊維を得た。
得られたイオン交換繊維は、重量増加率を測定したところ、19.1%であり、スルホン酸基0.87ミリモル/g、カルボキシル基0.92ミリモル/gであった。
また、この原料繊維を用いて各種条件でイオン交換繊維を調製したが、スルホン酸基0.5ミリモル/g以上で、かつ、カルボキシル基2.0ミリモル/g以上の条件を満たすイオン交換繊維を調製することはできなかった。
(比較例2)
p−スチレンスルホン酸ナトリウム(SPSS)水溶液の濃度を23.0%とした以外は、上記実施例4と同様にしてイオン交換繊維を得た。
得られたイオン交換繊維は、重量増加率を測定したところ、350.0%であり、スルホン酸基4.2ミリモル/g、カルボキシル基3.8ミリモル/gであった。しかし、引っ張り強度が0.4cN/dTしか無く、繊維物性を維持した製品とすることができなかった。
(比較例3)
p−スチレンスルホン酸ナトリウム(SPSS)水溶液の濃度を26%とした以外は、上記実施例6と同様にしてイオン交換繊維を得ようとしたが、繊維物性を維持した製品を得ることはできなかった。
(比較例4)
実施例1の原料繊維、すなわちカルボキシル基が6.0ミリモル/gとなされたイオン交換繊維を、以下の試験に用いる試料繊維として用意した。
−高濃度アンモニアガス吸着試験−
実施例1〜8、比較例1、比較例4の各イオン交換繊維について、それぞれ0.3gを採取し、これを1.5リットルのテドラーバック内へ挿入した後、各バック内に1.2%のアンモニアガスを入れた。20℃35%RHで60分後、ガス検知管を使ってアンモニアガス濃度を測定し、残留アンモニア濃度とした。結果を表1に示す。なお、ガス検知管は、検出限界1ppmのものを用いた。表1において、測定結果が測定限界未満のものは1未満と記載した。
Figure 0004931612
−低濃度アンモニアガス吸着試験−
図1に示すような実験装置を組み立て、実施例1〜8、比較例1、比較例4の各イオン交換繊維について、それぞれ0.5gをガラス管に入れて試料とした。50リットルバッグに約100ppbに調整したアンモニアガスを入れる。バブラーに0.5%ホウ酸溶液を入れ、2リットル/分でバッグ内のガスを吸収する。50リットル吸引したところでバッグおよび試料を交換する。各バブラーにつき100〜150リットル吸引する。JIS K 0099に規定されているインドフェノール青吸光光度法にて全量を発色させ、アンモニア濃度を算出した。試料を通さずに吸引して算出したアンモニア濃度を初期濃度とし、試料を通して吸引し、算出したアンモニア濃度を残留濃度とした。結果を表2に示す。
Figure 0004931612
−トリメチルアミンガス吸着試験−
実施例1〜8、比較例1、比較例4の各イオン交換繊維について、それぞれ0.5gを採取し、これを1.5リットルのテドラーバック内へ挿入した後、各バック内に初期濃度66ppmに調整したトリメチルアミンガスを入れた。40℃65%RHで30分後、ガス検知管を使ってトリメチルアミンガス濃度を測定し、残留トリメチルアミン濃度とした。結果を表3に示す。なお、ガス検知管は、検出限界0.25ppmのものを用いた。表3において、測定結果が測定限界未満のものは0.25未満と記載した。
Figure 0004931612
表1ないし表3の結果から、本願発明に係るイオン交換繊維は、高濃度アンモニア、低濃度アンモニア、トリメチルアミンの何れの臭気に対しても優れた除去性能が得られることを確認することができた。
様々な機能を有するイオン交換繊維の製造に利用することができ、これによって製造したイオン交換繊維は、それだけで使用しても良いし、イオウ系ガス吸収繊維や酸性ガス吸収繊維を含有させて使用することで、各種フィルター、消臭剤、触媒などの幅広い用途に利用することができる。
低濃度アンモニアガス吸着試験に用いる実験装置の概略図である。

Claims (3)

  1. 10.0ミリモル/g以下のカルボキシル基を有し、水に対する膨潤度が0.5以上であり、且つ架橋構造を有する原料繊維に、あらかじめ調整した量のスルホン酸基を有するモノマーを含浸させ、このモノマーを重合することで、0.5〜4.0ミリモル/gのスルホン酸基と2.0ミリモル/g以上のカルボキシル基とを導入することを特徴とするイオン交換繊維の製造方法。
  2. 請求項1記載の製造方法によって得られるイオン交換繊維。
  3. 請求項2記載のイオン交換繊維に、金属化合物からなるイオウ系ガスの消臭性成分を有するイオウ系ガス吸収繊維および/または塩基性基を有する酸性ガス吸収繊維を、95質量%以下の割合で含有させてなる繊維構造物。
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