JP2016084564A - 改質セルロース系繊維の製造方法及び当該方法で製造される改質セルロース系繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】何ら特別な装置を必要とせず高いグラフト化率を得ることができ、その結果、高度な吸湿発熱性或いは高度な消臭性を有し、且つ、改質後の繊維の風合いを硬化させることのない改質セルロース系繊維の製造方法の提供。
【解決手段】セルロース系繊維に対して、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーと、これらのビニルモノマー以外の親水性基含有化合物とを同浴中に含有する水溶液で処理することにより、上記ビニルモノマーと親水性基含有化合物とを構成要素とするグラフト鎖をセルロース系繊維に導入する改質セルロース系繊維の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】セルロース系繊維に対して、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーと、これらのビニルモノマー以外の親水性基含有化合物とを同浴中に含有する水溶液で処理することにより、上記ビニルモノマーと親水性基含有化合物とを構成要素とするグラフト鎖をセルロース系繊維に導入する改質セルロース系繊維の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、改質セルロース系繊維の製造方法に関するものであり、特に、親水性のグラフト鎖を導入した改質セルロース系繊維の製造方法に関するものである。また、本発明は、これらの方法で製造された改質セルロース系繊維に関するものである。
吸湿性の高いセルロース系繊維を更に親水化して、高度な吸湿性を有する改質セルロース系繊維が市場から要求されている。例えば、これらの改質セルロース系繊維が吸湿時に発熱することを利用したセルロース系吸湿発熱性繊維が提案されている。また、これらの改質セルロース系繊維がアンモニアなどの塩基性悪臭物質を吸着することを利用したセルロース系消臭繊維が提案されている。
セルロース系繊維を改質して親水化する方法としては、グラフト共重合反応などによりセルロース分子に親水基を導入する方法が一般的である。例えば、下記特許文献1に記載の改質セルロース繊維及びその製造方法は、セルロース系繊維にメタクリル酸をグラフト共重合させたものである。また、下記特許文献2に記載の吸湿発熱セルロース繊維生地及びその製造方法は、セルロース繊維にリン酸エステルを共有結合させると共に、(メタ)アクリル酸塩又は(メタ)アクリル酸アミドをグラフト結合させたものである。
ところで、上記特許文献1の改質セルロース系繊維においては、水溶液系反応であり一般にグラフト化率を上げることが難しく、高いグラフト化率を得た場合でも繊維の風合いが硬化するという問題があった。また、上記特許文献2の改質セルロース系繊維においては、高いグラフト化率を得る方法として提案されているが、電子線照射によるセルロース分子の表面活性化を必要とし、特別な装置を必要とする問題があった。
そこで、本発明は、上記問題に対処して、何ら特別な装置を必要とせず高いグラフト化率を得ることができ、その結果、高度な吸湿発熱性或いは高度な消臭性を有し、且つ、改質後の繊維の風合いを硬化させることのない改質セルロース系繊維の製造方法及び当該方法で製造される改質セルロース系繊維を提供することを目的とする。
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、セルロース系繊維にアクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの塩をグラフト共重合する際に、親水基を有する他の分子を併用することで上記課題が解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明に係る改質セルロース系繊維の製造方法は、請求項1の記載によると、
セルロース系繊維に対して、
アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーと、
これらのビニルモノマー以外の親水性基含有化合物とを同浴中に含有する水溶液で処理することにより、
前記ビニルモノマーと、前記親水性基含有化合物とを構成要素とするグラフト鎖を前記セルロース系繊維に導入することを特徴とする。
セルロース系繊維に対して、
アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーと、
これらのビニルモノマー以外の親水性基含有化合物とを同浴中に含有する水溶液で処理することにより、
前記ビニルモノマーと、前記親水性基含有化合物とを構成要素とするグラフト鎖を前記セルロース系繊維に導入することを特徴とする。
また、本発明は、請求項2の記載によると、請求項1に記載の改質セルロース系繊維の製造方法であって、
前記親水性基含有化合物は、ポリアルキレングリコール、又はその誘導体からなる化合物であることを特徴とする。
前記親水性基含有化合物は、ポリアルキレングリコール、又はその誘導体からなる化合物であることを特徴とする。
また、本発明は、請求項3の記載によると、請求項1に記載の改質セルロース系繊維の製造方法であって、
前記親水性基含有化合物は、ポリアルキレングリコール・アクリレート、ポリアルキレングリコール・メタクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール・モノアクリレート、及びアルコキシポリアルキレングリコール・モノメタクリレートから選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーであることを特徴とする。
前記親水性基含有化合物は、ポリアルキレングリコール・アクリレート、ポリアルキレングリコール・メタクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール・モノアクリレート、及びアルコキシポリアルキレングリコール・モノメタクリレートから選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーであることを特徴とする。
また、本発明は、請求項4の記載によると、請求項1〜3のいずれか1つに記載の改質セルロース系繊維の製造方法であって、
前記グラフト鎖の構成要素として、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの塩として、アクリル酸、メタクリル酸の部分中和物を使用することを特徴とする。
前記グラフト鎖の構成要素として、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの塩として、アクリル酸、メタクリル酸の部分中和物を使用することを特徴とする。
また、本発明は、請求項5の記載によると、請求項1〜4のいずれか1つに記載の改質セルロース系繊維の製造方法であって、
改質前の繊維重量に対して導入されたグラフト鎖の重量比率が、8重量%〜15重量%の範囲内にあることを特徴とする。
改質前の繊維重量に対して導入されたグラフト鎖の重量比率が、8重量%〜15重量%の範囲内にあることを特徴とする。
また、本発明は、請求項6の記載によると、請求項1〜5のいずれか1つに記載の改質セルロース系繊維の製造方法であって、
改質前後の各セルロース系繊維を被検体として吸湿発熱温度を評価するにあたり、
温度20℃で乾燥状態にある被検体を温度20℃で相対湿度90%の恒温恒湿室に静置した後4分後の、
未改質のセルロース系繊維の表面温度をA(℃)とし、
改質後のセルロース系繊維の表面温度をB(℃)としたときに、
吸湿発熱性の向上に対応する表面温度の上昇度の値が、
B−A ≧ 1.5(℃)
であることを特徴とする。
改質前後の各セルロース系繊維を被検体として吸湿発熱温度を評価するにあたり、
温度20℃で乾燥状態にある被検体を温度20℃で相対湿度90%の恒温恒湿室に静置した後4分後の、
未改質のセルロース系繊維の表面温度をA(℃)とし、
改質後のセルロース系繊維の表面温度をB(℃)としたときに、
吸湿発熱性の向上に対応する表面温度の上昇度の値が、
B−A ≧ 1.5(℃)
であることを特徴とする。
また、本発明は、請求項7の記載によると、請求項1〜5のいずれか1つに記載の改質セルロース系繊維の製造方法であって、
改質後のセルロース系繊維を被検体として保温率測定装置(カトーテック株式会社製、KES-F7サーモラボII試験機)による保温率を評価するにあたり、
乾燥状態に対応するドライコンタクト法で測定した被検体の保温率をC(%)とし、
湿潤状態に対応するウェットスペース法で測定した被検体の保温率をD(%)としたときに、
吸湿発熱性の向上に対応するウェットスペース法とドライコンタクト法との保温率の上昇度の値が、
D−C ≧ 25.0(%)
であることを特徴とする。
改質後のセルロース系繊維を被検体として保温率測定装置(カトーテック株式会社製、KES-F7サーモラボII試験機)による保温率を評価するにあたり、
乾燥状態に対応するドライコンタクト法で測定した被検体の保温率をC(%)とし、
湿潤状態に対応するウェットスペース法で測定した被検体の保温率をD(%)としたときに、
吸湿発熱性の向上に対応するウェットスペース法とドライコンタクト法との保温率の上昇度の値が、
D−C ≧ 25.0(%)
であることを特徴とする。
また、本発明に係る改質セルロース系繊維は、請求項8の記載によると、請求項6又は7に記載の改質セルロース系繊維の製造方法により製造される。
また、本発明に係る吸湿発熱性繊維は、請求項9の記載によると、請求項8に記載の改質セルロース系繊維を含有する。
また、本発明に係る消臭性繊維は、請求項10の記載によると、請求項8に記載の改質セルロース系繊維を含有する。
上記構成によれば、本発明は、セルロース系繊維に対して、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーと、これらのビニルモノマー以外の親水性基含有化合物とを同浴中に含有する水溶液で処理することにより、これらのビニルモノマーと親水性基含有化合物とを構成要素とするグラフト鎖をセルロース系繊維に導入する。これらの操作は、何ら特別な装置を必要とせず、従来から使用されているグラフト化反応装置を使用することができる。
また、上記構成によれば、アクリル酸、メタクリル酸などのビニルモノマーを単独でグラフト共重合するよりも高いグラフト化率を得ることができる。このことにより、改質されたセルロース系繊維は、高度な吸湿発熱性或いは高度な消臭性を有するものとなる。更に、上記構成によれば、高いグラフト化率を得られた場合であっても、改質後の繊維の風合いを硬化させることがない。
また、上記構成によれば、アクリル酸、メタクリル酸などのビニルモノマーと併用する親水性基含有化合物として、ポリアルキレングリコール、又はその誘導体からなる化合物を使用してもよい。このことにより、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
また、上記構成によれば、アクリル酸、メタクリル酸などのビニルモノマーと併用する親水性基含有化合物として、ポリアルキレングリコール、又はその誘導体からなる化合物に替えて、ポリアルキレングリコール・アクリレート、ポリアルキレングリコール・メタクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール・モノアクリレート、及びアルコキシポリアルキレングリコール・モノメタクリレートから選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーを使用するようにしてもよい。このことにより、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
また、上記構成によれば、セルロース系繊維に導入するグラフト鎖の構成要素として、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの塩として、アクリル酸、メタクリル酸の部分中和物を使用するようにしてもよい。このことにより、高いグラフト化率が得られると共に改質後の繊維の風合いを硬化させることがなく、上記作用効果をより一層発揮することができる。
また、上記構成によれば、セルロース系繊維に導入するグラフト鎖の重量比率は、8重量%〜15重量%の範囲内としてもよい。このことにより、高いグラフト化率に起因して上記作用効果をより一層発揮することができる。
また、上記構成によれば、改質後のセルロース系繊維を被検体として吸湿発熱温度を評価するにあたり、温度20℃で乾燥状態にある被検体を温度20℃で相対湿度90%の恒温恒湿室に静置した後4分後の、未改質のセルロース系繊維の表面温度をA(℃)とし、改質後のセルロース系繊維の表面温度をB(℃)としたときに、吸湿発熱性の向上に対応する表面温度の上昇度の値が、
B−A ≧ 1.5(℃)
であるようにしてもよい。このことにより、改質後のセルロース系繊維の高度な吸湿発熱性を示すことができ、上記作用効果を具体的に発揮することができる。
B−A ≧ 1.5(℃)
であるようにしてもよい。このことにより、改質後のセルロース系繊維の高度な吸湿発熱性を示すことができ、上記作用効果を具体的に発揮することができる。
また、上記構成によれば、改質後のセルロース系繊維を被検体として保温率測定装置(カトーテック株式会社製、KES-F7サーモラボII試験機)による保温率を評価するにあたり、乾燥状態に対応するドライコンタクト法で測定した被検体の保温率をC(%)とし、湿潤状態に対応するウェットスペース法で測定した被検体の保温率をD(%)としたときに、吸湿発熱性の向上に対応するウェットスペース法とドライコンタクト法との保温率の上昇度の値が、
D−C ≧ 25.0(%)
であるようにしてもよい。このことにより、改質後のセルロース系繊維の高度な吸湿発熱性を示すことができ、上記作用効果を具体的に発揮することができる。
D−C ≧ 25.0(%)
であるようにしてもよい。このことにより、改質後のセルロース系繊維の高度な吸湿発熱性を示すことができ、上記作用効果を具体的に発揮することができる。
よって、本発明によれば、何ら特別な装置を必要とせず高いグラフト化率を得ることができ、その結果、高度な吸湿発熱性或いは高度な消臭性を有し、且つ、改質後の繊維の風合いを硬化させることのない改質セルロース系繊維の製造方法及び当該方法で製造される改質セルロース系繊維を提供することができる。
本発明において、セルロース系繊維とは、一般に衣料や産業資材など各種繊維製品に使用される天然セルロース系繊維及び再生セルロース系繊維をいう。天然セルロース系繊維としては、綿、亜麻(リネン)、苧麻(ラミー)、黄麻(ジュート)、大麻(ヘンプ)などが挙げられる。また、再生セルロース系繊維としては、ビスコースレーヨン、ハイウェットモジュラスレーヨン(HWMレーヨン)、ポリノジックレーヨン、銅アンモニアレーヨン(キュプラ)、溶剤紡糸セルロース繊維(テンセル(登録商標)、リヨセル(登録商標))などが挙げられる。
本発明において、セルロース系繊維の形態はどのようなものであってもよく、短繊維(ステープルファイバー)、長繊維(フィラメントファイバー)などの繊維の状態であってもよく、或いは、紡績糸、フィラメント糸、織物、編物、不織布、ロープ、網などの繊維構造物の状態であってもよい。また、セルロース系繊維の単独であってもよく、又は、セルロース系繊維と他の化学繊維或いは天然繊維との混合繊維の状態であってもよい。
本発明に係る改質セルロース系繊維の製造方法においては、セルロース系繊維を構成するセルロース分子に対して、グラフト共重合反応による側鎖(グラフト鎖)を導入する。グラフト鎖の構成要素には、主骨格としてアクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーを使用する。また、主骨格に併用する第2成分として、親水性基含有化合物を使用する。
グラフト鎖の主骨格を構成するアクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの塩は、いずれもカルボキシル基又はその塩による親水性を有する化合物である。上記特許文献1においては、メタクリル酸のみをセルロース系繊維にグラフト共重合し、反応浴中に酸を併用することにより、高いグラフト化率を得ることができると記載されている。しかし、この場合には、メタクリル酸のみのグラフト鎖で親水性を得ることができるが、改質後の繊維の風合いを硬化させることとなる。
これに対して、本発明においては、親水性を有するアクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの塩に加え、第2成分として、より親水性の高い親水性基含有化合物を併用することを特徴とする。このことにより、高いグラフト化率を得ることができ、より高い親水性を有する改質セルロース系繊維を得ることがでる。更に、親水性基含有化合物を併用することにより、改質セルロース系繊維の風合いを硬化させることがない。
本発明においては、アクリル酸、メタクリル酸、或いはこれらの混合物のカルボキシル基を酸型(カルボン酸)のまま使用してもよく、又は、カルボキシル基を中和した塩型(カルボン酸塩)として使用してもよい。カルボン酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などどのような塩でもよく、特に限定するものではないが、本発明においてはナトリウム塩を使用することが好ましい。
カルボン酸塩を使用する場合には、カルボン酸を中和する程度は特に限定するものではないが、完全中和するのではなく、部分中和することが好ましい。アクリル酸又はメタクリル酸を部分中和した状態で親水性基含有化合物を併用してグラフト共重合反応を行うことにより、高いグラフト化率が得られると共に改質後の繊維の風合いを硬化させることがない。部分中和の程度は、特に限定するものではなく、共重合成分の比率とグラフト化率など反応条件により適宜選定すればよい。なお、部分中和の詳細については、後述の実施例において説明する。
グラフト鎖の第2成分である親水性基含有化合物としては、以下に説明する2種類の化合物を使用することが好ましい。まず、1つ目の化合物として、ポリアルキレングリコール、又はその誘導体からなる化合物を挙げることができる。ポリアルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなど種々のグリコール類を使用することができる。また、これらの誘導体として、例えば、上記各グリコール類のモノエーテルも親水性を有するものであれば使用することができる。
上記各グリコール類の中で本発明においては、ポリエチレングリコールを使用することが好ましい。ポリエチレングリコールは、その分子構造中に−CH2CH2O−基を多く有しており、高い親水性を発現する。また、末端に−OH基を有しており、更に高い親水性を発現すると共に、アクリル酸又はメタクリル酸とのエステル結合の可能性を有している。
本発明に使用するポリエチレングリコールの分子量(重合度)は、どの程度であってもよいが、ポリエチレングリコール♯200〜♯20000を使用することが好ましく、更に、ポリエチレングリコール♯1000〜♯6000を使用することがより好ましい。このような分子量のポリエチレングリコールを併用することにより、高いグラフト化率を得ることができ、且つ、改質後の繊維の風合いを硬化させることのない改質セルロース系繊維を得ることができる。
次に、グラフト鎖の第2成分として使用する2つ目の化合物として、ポリアルキレングリコール・アクリレート、ポリアルキレングリコール・メタクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール・モノアクリレート、又はアルコキシポリアルキレングリコール・モノメタクリレートを挙げることができる。これらの化合物は、アクリル酸又はメタクリル酸のカルボキシル基がポリアルキレングリコール又はアルコキシポリアルキレングリコールの水酸基とエステル結合した化合物であり、その構造中に−CH2CH2O−基を多く有しており、高い親水性を発現する。また、アルコキシポリアルキレングリコールの場合にはモノエステル(モノアクリレート又はモノメタクリレート)を構成するが、ポリアルキレングリコールの場合にはモノエステル又はジエステルのいずれをしようしてもよい。
本発明に使用する上記アクリレート又はメタクリレートに結合するポリアルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなど種々のものを挙げることができる。これらのグリコール類の中で本発明においては、ポリエチレングリコールを使用することが好ましい。
本発明に使用するポリエチレングリコール・アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコール♯200・アクリレート、ポリエチレングリコール♯400・アクリレート、ポリエチレングリコール♯600・アクリレート、ポリエチレングリコール♯1000・アクリレート、ポリエチレングリコール♯2000・アクリレート、ポリエチレングリコール♯4000・アクリレートなどを挙げることができる。また、ポリエチレングリコール・メタクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコール♯200・メタクリレート、ポリエチレングリコール♯400・メタクリレート、ポリエチレングリコール♯600・メタクリレート、ポリエチレングリコール♯1000・メタクリレート、ポリエチレングリコール♯2000・メタクリレート、ポリエチレングリコール♯4000・メタクリレートなどを挙げることができる。このようなポリエチレングリコール・アクリレート又はポリエチレングリコール・メタクリレートを併用することにより、高いグラフト化率を得ることができ、且つ、改質後の繊維の風合いを硬化させることのない改質セルロース系繊維を得ることができる。
一方、上記モノアクリレート又はモノメタクリレートに結合するアルコキシポリアルキレングリコールとしては、上記グリコール類のモノアルキルエーテルを使用することができる。これらのアルコキシポリアルキレングリコールの中で本発明においては、アルコキシポリエチレングリコールを使用することが好ましい。また、アルコキシ基は特に限定するものではないが、化合物の親水性を大きく低下させないものが好ましく、例えば、メトキシ基或いはエトキシ基、特にメトキシ基が好ましい。
本発明に使用するアルコキシポリエチレングリコール・モノアクリレートとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコール♯200・モノアクリレート、メトキシポリエチレングリコール♯400・モノアクリレート、メトキシポリエチレングリコール♯600・モノアクリレート、メトキシポリエチレングリコール♯1000・モノアクリレート、メトキシポリエチレングリコール♯2000・モノアクリレート、メトキシポリエチレングリコール♯4000・モノアクリレートなどを挙げることができる。また、アルコキシポリエチレングリコール・モノメタクリレートとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコール♯200・モノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール♯400・モノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール♯600・モノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール♯1000・モノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール♯2000・モノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール♯4000・モノメタクリレートなどを挙げることができる。このようなアルコキシポリエチレングリコール・モノアクリレート又はアルコキシポリエチレングリコール・モノメタクリレートを併用することにより、高いグラフト化率を得ることができ、且つ、改質後の繊維の風合いを硬化させることのない改質セルロース系繊維を得ることができる。
以下、本発明に係る改質セルロース系繊維の製造方法を実施形態により説明する。但し、本発明は、以下の実施形態にのみ限定されるものではない。また、処理されるセルロース系繊維の形状はどのようなものであってもよく、繊維(ワタ)、糸、織物、編物、不織布などであってもよい。
本実施形態においては、ビニル基を有するモノマーをセルロース分子にグラフト共重合する方法であれば特に限定するものではない。一般に、アクリル酸又はメタクリル酸をセルロース分子にグラフト共重合する方法としては、触媒法や放射線法などがある。本実施形態においては、特別な装置を必要としない触媒法による水溶液系反応を採用することが好ましい。但し、本発明において放射線法などを使用することを妨げるものではない。
また、触媒についても特に限定するものではないが、レドックス系触媒をラジカル共重合開始剤として使用することが好ましい。本実施形態においては、レドックス系触媒として過酸化水素と二価鉄塩との組合せを採用する。ここで、二価鉄塩としては、水溶液系反応浴中で二価鉄イオンを放出するものであり、例えば、硫酸鉄(II)(FeSO4)、硫酸アンモニウム鉄(II)((NH4)2Fe(SO4)2・6H2O)、塩化第(II)(FeCl2)、硝酸鉄(II)(Fe(NO3)2)などを挙げることができる。本実施形態においては、硫酸アンモニウム鉄(II)を使用する。
水溶液系反応浴中の過酸化水素(H2O2)の濃度は、30%過酸化水素水を使用し反応浴に対して0.1重量%〜1.0重量%を使用することが好ましい。また、水溶液系反応浴中の二価鉄塩の濃度は、硫酸アンモニウム鉄(II)(モール塩、6水和物)を使用し反応浴に対して0.01重量%〜0.1重量%を使用することが好ましい。更に、水溶液系反応浴中には、金属イオン封鎖剤を併用することが好ましい。本実施形態においては、金属イオン封鎖剤としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム)を使用する。
このようにレドックス系触媒を溶解した水溶液にグラフト鎖の主骨格を構成するアクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの塩、及び、第2成分である親水性基含有化合物を混合して水溶液系反応浴を調整する。なお、本実施形態においては、アクリル酸又はメタクリル酸を中和するために水酸化ナトリウムなどのアルカリ剤を添加する。部分中和の際のアルカリ剤の添加量については、後述の実施例で説明する。
ここで、セルロース系繊維に対する水溶液系反応浴の浴比は、特に限定するものではなく、改質するセルロース系繊維の形状及び使用する反応装置により適宜選定すればよい。一般に、繊維重量に対する反応浴の浴比は、1:5〜1:100、好ましくは、1:5〜1:50で処理する。なお、本実施形態においては、浴比を1:25で処理する。
一方、水溶液系反応浴中に混合するアクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの塩の量は、改質するセルロース系繊維の重量に対して、10重量%〜100重量%、好ましくは、20重量%〜50重量%を使用する。一方、水溶液系反応浴中に混合する親水性基含有化合物の量は、改質するセルロース系繊維の重量に対して、1重量%〜30重量%、好ましくは、1重量%〜10重量%を使用する。アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの塩の量、及び、親水性基含有化合物の量が上記範囲内にあれば、高いグラフト化率を得ることができ、且つ、改質後の繊維の風合いを硬化させることがない。なお、本実施形態においては、改質するセルロース系繊維の重量に対して、それぞれ、35重量%と3重量%で使用する。なお、本実施形態においては、親水性基含有化合物の量を変化させて使用する。
グラフト共重合の反応温度は、40℃〜100℃、好ましくは、60℃〜90℃で処理する。また、グラフト共重合の反応時間は、1時間〜6時間、好ましくは、2時間〜4時間で処理する。なお、本実施形態においては、反応温度は80℃、反応時間4時間で処理する。
このような反応条件でグラフト共重合反応を行うことにより、改質前のセルロース系繊維に導入されたグラフト鎖の比率(グラフト化率)は、改質前の繊維重量に対して8重量%〜15重量%の範囲内となることが好ましく、また、10重量%〜15重量%の範囲内となることがより好ましい。ここで、グラフト化率は、下記の式、
グラフト化率(%)
=〔(改質後の繊維重量−改質前の繊維重量)/(改質前の繊維重量)〕×100
により定義する。
グラフト化率(%)
=〔(改質後の繊維重量−改質前の繊維重量)/(改質前の繊維重量)〕×100
により定義する。
グラフト化率がこのように高くなれば、改質後のセルロース系繊維は、高い親水性を示し、その結果として、高度な吸湿発熱性を有するものとなる。また、このように高いグラフト化率によって導入されたカルボン酸などにより、アンモニア、アミン、糞尿臭などの塩基性悪臭物質に対する消臭効果を有するものとなる。
ここで、改質後のセルロース系繊維に導入されたグラフト鎖のカルボン酸は、一部が酸型のままであり、一部が塩型に変換されている。そこで、これらのカルボン酸の酸型と塩型との比率は、目的により適宜選定することができる。例えば、改質後のセルロース系繊維を更にアルカリ中和して塩型の比率を上げることにより、親水性の程度が増して吸湿発熱性が更に向上する。逆に、改質後のセルロース系繊維のカルボン酸の多くを酸型のまま残すことにより、塩基性悪臭物質に対する消臭効果が更に向上する。
ここで、改質後のセルロース系繊維の吸湿発熱性を評価する方法について説明する。本実施形態においては、2種類の評価方法を採用し、改質セルロース系繊維をこれらのいずれかの方法で評価する。以下、評価方法について説明する。
(1)表面温度測定法(サーモグラフィー法)
未改質のセルロース系繊維と改質後のセルロース系繊維とを被検体として、サーモグラフィーにより繊維表面温度を測定し評価する。具体的には、温度20℃で乾燥状態にある被検体を温度20℃で相対湿度90%の恒温恒湿室に静置する。静置してから4分後の未改質のセルロース系繊維の表面温度A(℃)、及び、改質後のセルロース系繊維の表面温度B(℃)をサーモグラフィーにより測定する。なお、使用するサーモグラフィーとしては、どのような機器を使用してもよいが、本実施形態においては、FLIR Systems Inc.製のAGEMA THERMOVISION 210を使用した。
未改質のセルロース系繊維と改質後のセルロース系繊維とを被検体として、サーモグラフィーにより繊維表面温度を測定し評価する。具体的には、温度20℃で乾燥状態にある被検体を温度20℃で相対湿度90%の恒温恒湿室に静置する。静置してから4分後の未改質のセルロース系繊維の表面温度A(℃)、及び、改質後のセルロース系繊維の表面温度B(℃)をサーモグラフィーにより測定する。なお、使用するサーモグラフィーとしては、どのような機器を使用してもよいが、本実施形態においては、FLIR Systems Inc.製のAGEMA THERMOVISION 210を使用した。
ここで、未改質のセルロース系繊維の表面温度A(℃)に対して、改質後のセルロース系繊維の表面温度B(℃)が大きく上昇している場合には、吸湿発熱性に対する改質の効果と解することができる。よって、表面温度測定法は、吸湿発熱性を直接的に評価できる方法である。
そこで、これらの値から、改質前後の被検体の表面温度の差B−A(℃)を吸湿発熱性の向上効果として評価する。このとき、被検体の表面温度の差(上昇度)が下記の式、
B−A ≧ 1.5(℃)
を満足する値であれば、高度な吸湿発熱性を有する改質セルロース系繊維と判断することができる。
B−A ≧ 1.5(℃)
を満足する値であれば、高度な吸湿発熱性を有する改質セルロース系繊維と判断することができる。
(2)保温率測定法(サーモラボII試験機法)
改質後のセルロース系繊維を被検体として、保温率測定装置(カトーテック株式会社製、KES-F7サーモラボII試験機)による保温率を評価する。具体的には、本測定装置を用いて乾燥状態(ここでは、温度20℃、相対湿度65%の状態をいう。)に対応するドライコンタクト法で測定した被検体の保温率C(%)、及び、本測定装置を用いて湿潤状態に対応するウェットスペース法で測定した被検体の保温率D(%)を測定する。
改質後のセルロース系繊維を被検体として、保温率測定装置(カトーテック株式会社製、KES-F7サーモラボII試験機)による保温率を評価する。具体的には、本測定装置を用いて乾燥状態(ここでは、温度20℃、相対湿度65%の状態をいう。)に対応するドライコンタクト法で測定した被検体の保温率C(%)、及び、本測定装置を用いて湿潤状態に対応するウェットスペース法で測定した被検体の保温率D(%)を測定する。
ここで、ドライコンタクト法で測定した被検体の保温率C(%)に対して、ウェットスペース法で測定した被検体の保温率D(%)が大きく向上している場合には、被検体の湿潤による吸湿発熱性の効果と解することができる。よって、保温率測定法は、吸湿発熱性を間接的に評価できる方法である。
そこで、これらの値から、改質後の被検体の保温率の差D−C(%)を吸湿発熱性の向上効果として評価する。このとき、被検体の保温率の差(上昇度)が下記の式、
D−C ≧ 25.0(%)
を満足する値であれば、高度な吸湿発熱性を有する改質セルロース系繊維と判断することができる。
D−C ≧ 25.0(%)
を満足する値であれば、高度な吸湿発熱性を有する改質セルロース系繊維と判断することができる。
以下、上記実施形態を各実施例により説明する。
本実施例1は、グラフト鎖の主骨格を構成する成分としてメタクリル酸(以下「MAA」という。)を使用し、グラフト鎖の第2成分としてメトキシポリエチレングリコール・モノメタクリレート(以下「M‐PEG‐MA」という。)を使用するものである。また、反応系は、レドックス系触媒による水溶液系反応によるものである。また、MAAを部分中和した水溶液系反応浴を使用した。
本実施例1においては、ガラス製撹拌容器と空気冷却管とを具備した300ml三角フラスコをグラフト共重合装置として使用した。次に、水溶液系反応浴の調整について説明する。水溶液系反応浴の総容量を250mlとし、MAAを3.5g(1.4重量%)、M‐PEG‐MAを0.3g(0.12重量%)、30%過酸化水素水を0.9g(0.36重量%)、硫酸アンモニウム鉄(II)(モール塩、6水和物)を0.08g(0.032重量%)、EDTAを0.1g(0.04重量%)、及び、MAA中和用の水酸化ナトリウム(NaOH10重量%水溶液)を5.0ml溶解した水溶液系反応浴を調整する。ここで、使用するM‐PEG‐MAとして、3種類のPEGの分子量のものを使用した(実施例1−1、1−2、1−3)。具体的には、M‐PEG♯400‐MA、M‐PEG♯2000‐MA、M‐PEG♯4000‐MAを使用した。各実施例1における具体的な処方を表1に示す。
一方、水溶液系反応浴として、MAAを単独で使用し、M‐PEG‐MAを併用しないものを比較例1−1とした。更に、M‐PEG♯2000‐MAの使用量を変化させて単独で使用し、MAAを併用しないものを比較例1−2、1−3、1−4とした。各比較例1における具体的な処方を表1に示す。
上述のようにして調整した各実施例及び各比較例の水溶液系反応浴250mlに対して、綿100%の精練漂白した編物(スムース組織、目付:203g/m2)を10g投入してグラフト共重合反応を行った。浴比は、1:25であった。グラフト共重合反応は、80℃で4時間の反応を行った。反応後の編物は、水洗浄後、水酸化ナトリウム0.5重量%水溶液に浸漬撹拌してカルボン酸を中和して塩型とした後、余剰のアルカリを温水洗浄で除去して乾燥した。
各実施例1、各比較例1、及び未処理の綿繊維について、グラフト化率(%)、及び、吸湿率(%)を測定した。グラフト化率(%)の測定は、次のようにして行った。まず、反応前後の編物を105℃で2時間乾燥してから重量を測定した。グラフト化率(%)は、これらの値から述のように下記式、
グラフト化率(%)
=〔(改質後の繊維重量−改質前の繊維重量)/(改質前の繊維重量)〕×100
により算出した。算出したグラフト化率(%)の値を表2に示す。
グラフト化率(%)
=〔(改質後の繊維重量−改質前の繊維重量)/(改質前の繊維重量)〕×100
により算出した。算出したグラフト化率(%)の値を表2に示す。
また、吸湿率(%)の測定は、次のようにして行った。まず、各編物の吸湿量(g)を測定した。吸湿量(g)の測定は、80℃で20分間乾燥した編物を室温25℃、関係湿度80%の雰囲気内に収容し、室内を空気循環させながら3時間放置した後の重量(吸湿量)を測定した。吸湿量(%)は、これらの値から下記式、
吸湿量(%)
=〔(吸湿量)/(105℃×2時間乾燥後の重量)〕×100
により算出した。算出した吸湿量(%)の値を表2に示す。
吸湿量(%)
=〔(吸湿量)/(105℃×2時間乾燥後の重量)〕×100
により算出した。算出した吸湿量(%)の値を表2に示す。
表2から分かるように、MAAとM‐PEG‐MAとを併用した実施例1−1、1−2、1−3の改質綿繊維は、いずれもグラフト化率が10%以上と高い値を示している。また、併用するM‐PEG‐MAのPEGの分子量が大きい程、より高いグラフト化率を示している。一方、MAA単独で使用した比較例1−1の改質綿繊維は、7.6%というグラフト化率を示すものの、上記各実施例に比べて低い値となっている。また、M‐PEG‐MA単独で使用した比較例1−2、1−3、1−4においては、ビニル基を有しているにも拘らず、使用量を多くしても綿繊維にグラフト共重合しないことが分かる。
また、実施例1−1、1−2、1−3の改質綿繊維は、高いグラフト化率に起因して、いずれも15%以上という高い吸湿率を示している。一方、比較例1−1の改質綿繊維は、未処理繊維に比べて高い吸湿率を示すものの、上記各実施例に比べて低い値となっている。また、比較例1−2、1−3、1−4においては、グラフト共重合しないことから、吸湿率の値は未処理繊維と同程度であった。このことから、実施例1−1、1−2、1−3の改質綿繊維においては、未処理繊維及び各比較例に比べ吸湿発熱性が向上しているものと考えられる。なお、吸湿発熱性の評価は、後述の実施例3において説明する。
本実施例2は、グラフト鎖の主骨格を構成する成分として上記実施例1と同じMAAを使用し、グラフト鎖の第2成分としてポリエチレングリコール(以下「PEG」という。)を使用するものである。また、反応系は、上記実施例1と同じレドックス系触媒による水溶液系反応によるものである。また、上記実施例1と同じようにMAAを部分中和した水溶液系反応浴を使用した。
まず、水溶液系反応浴の調整について説明する。本実施例2においては、水溶液系反応浴の総容量を250mlとし、MAAを3.5g(1.4重量%)、PEGを0.3g(0.12重量%)、30%過酸化水素水を0.9g(0.36重量%)、硫酸アンモニウム鉄(II)(モール塩、6水和物)を0.08g(0.032重量%)、EDTAを0.1g(0.04重量%)、及び、MAA中和用の水酸化ナトリウム(NaOH10重量%水溶液)を5.0ml溶解した水溶液系反応浴を調整する。ここで、使用するPEGとして、4種類のPEGの分子量のものを使用した(実施例2−1、2−2、2−3、2−4、2−5、2−6)。具体的には、PEG♯200、PEG♯600、PEG♯4000、PEG♯6000を使用した。なお、PEG♯4000に関しては、使用量を0.3g〜1.2g(0.12重量%〜0.48重量%)と変化させて使用した。各実施例2における具体的な処方を表3に示す。
本実施例2においては、比較例として、上記実施例1における比較例1−1(MAAを単独で使用)と同一のものを比較例2とした。
上述のようにして調整した各実施例及び比較例の水溶液系反応浴250mlに対して、上記実施例1と同じ綿100%の精練漂白した編物(スムース組織、目付:203g/m2)を10g投入してグラフト共重合反応を行った。浴比は、1:25であった。グラフト共重合反応は、上記実施例1と同じ80℃で4時間の反応を行った。反応後の編物は、水洗浄後、水酸化ナトリウム0.5重量%水溶液に浸漬撹拌してカルボン酸を中和して塩型とした後、余剰のアルカリを温水洗浄で除去して乾燥した。
各実施例2、比較例2、及び未処理の綿繊維について、グラフト化率(%)、及び、吸湿率(%)を測定した。グラフト化率(%)、及び、吸湿率(%)の測定は、上記実施例1と同様にして行った。算出したグラフト化率(%)、及び、吸湿率(%)の値を表4に示す。
表4から分かるように、MAAとPEGとを併用した実施例2−1、2−2、2−3、2−4、2−5、2−6の改質綿繊維は、併用するPEGの分子量が大きい程、より高いグラフト化率を示している。特に、PEGの分子量が大きなPEG♯4000又はPEG♯6000を併用した実施例2−3、2−4、2−5、2−6の改質綿繊維は、いずれもグラフト化率が10%以上と高い値を示している。
また、実施例2−1、2−2、2−3、2−4、2−5、2−6の改質綿繊維は、高いグラフト化率に起因して、いずれも15%以上という高い吸湿率を示している。特に、PEGの分子量が大きなPEG♯4000又はPEG♯6000を併用した実施例2−3、2−4、2−5、2−6の改質綿繊維は、17%以上から20%以上もの非常に高い吸湿率を示している。
ここで、PEGの分子量が小さなPEG♯200又はPEG♯600を併用した実施例2−1、2−2の改質綿繊維は、グラフト化率の値は比較例2(MAAを単独で使用)と変わらない値を示しているが、吸湿率の値は比較例2よりも高くなっている。この理由は定かではないが、MAAとPEGの親水性の違いから、グラフト鎖においてMAAよりも親水性の高いPEGが併用された実施例2−1、2−2の方が、比較例2より高い吸湿性を示したものと考える。
以上のことから、実施例2−1、2−2、2−3、2−4、2−5、2−6の改質綿繊維においては、未処理繊維及び比較例2に比べ吸湿発熱性が向上しているものと考えられる。なお、吸湿発熱性の評価は、後述の実施例3において説明する。
本実施例3においては、上記実施例1−3、及び、比較例1−1と同様の水溶液系反応浴によるグラフト共重合反応において、再度、別ロットでの反応を行って効果を確認した。また、本実施例3においては、得られた改質綿繊維に対して、上述の表面温度測定法(サーモグラフィー法)、及び、保温率測定法(サーモラボII試験機法)という2種類の評価方法で吸湿発熱性を直接的或いは間接的に評価した。
本実施例3においては、グラフト鎖の主骨格を構成する成分としてMAAを使用し、グラフト鎖の第2成分としてM‐PEG♯4000‐MAを使用した(上記実施例1−3と同じ)。一方、MAAを単独で使用し、M‐PEG♯4000‐MAを併用しないもの(上記比較例1−1と同じ)を比較例3とした。なお、水溶液系反応浴の調整、使用繊維、及び、反応条件に関しては、上記実施例1−3、及び、上記比較例1−1と同様にして行った。本実施例3及び比較例3における具体的な処方を表5に示す。
実施例3、比較例3、及び未処理の綿繊維について、グラフト化率(%)、吸湿率(%)、表面温度の上昇度(表面温度測定法)、及び、保温率の上昇度(保温率測定法)を測定した。グラフト化率(%)、及び、吸湿率(%)の測定は、上記実施例1と同様にして行った。また、吸湿発熱性(表面温度測定法)、及び、吸湿発熱性(保温率測定法)の測定は、上述の方法により行った。算出したグラフト化率(%)、吸湿率(%)、及び、吸湿発熱性の各値を表6に示す。
表6において、実施例3及び比較例3の改質綿繊維に対するグラフト化率(%)、及び、吸湿率(%)の値が、上記実施例1−3、及び、比較例1−1の値と若干異なっている。これは、同一処方による別ロットの反応に起因するものでありであり、良好に再現できているものと判断できる。
表6の表面温度の上昇度(表面温度測定法)は、上述のように、繊維を温度20℃で相対湿度90%の恒温恒湿室に静置してから4分後の表面温度をサーモグラフィーにより測定したものである。表面温度A(℃)は、未処理の綿繊維の表面温度であり、表面温度B(℃)は、改質綿繊維の表面温度である。表6において、MAAとM‐PEG♯4000‐MAとを併用した実施例3の改質綿繊維に対する表面温度の差(上昇度)B−A(℃)は1.8℃であり、1.5℃以上の高い値を示している。このことから、高度な吸湿発熱性により表面温度が上昇していることが分かる。これに対して、比較例3(MAAを単独で使用)の改質綿繊維に対する表面温度の差(上昇度)B−A(℃)は1.0℃であり、吸湿発熱性を有するものの、実施例3の改質綿繊維には及ばない。
一方、保温率の上昇度(保温率測定法)は、上述のように、保温率測定装置(カトーテック株式会社製、KES-F7サーモラボII試験機)により保温率(%)を測定したものである。保温率C(%)は、乾燥状態に対応するドライコンタクト法で測定した繊維の保温率であり、保温率D(%)は、湿潤状態に対応するウェットスペース法で測定した繊維の保温率である。表6において、実施例3に対する保温率の差(上昇度)D−C(%)は26.9%であり、25.0%以上の高い値を示している。このことから、高度な吸湿発熱性により保温率が向上していることが分かる。これに対して、比較例3(MAAを単独で使用)の改質綿繊維に対する保温率の差(上昇度)D−C(%)は23.3%であり、未処理繊維の保温率の差(上昇度)24.2%と変わらない値を示している。
本実施例4においては、グラフト鎖の主骨格を構成する成分としてMAAを使用し、グラフト鎖の第2成分としてPEG♯4000を使用した(上記実施例2−3と同じ)。一方、比較例としてMAAを単独で使用し、PEG♯4000を併用しないもの(上記比較例1−1と同じ)を比較例4−1とし、この比較例4−1に対して、MAAのグラフト共重合反応が終了しグラフト鎖が導入された後からグラフト鎖にPEG♯4000を付加する反応を試みた(比較例4−2、4−3)。即ち、MAAとPEG♯4000との併用が、同浴反応(同時処理)を必須の要件とするか否かを検討した。なお、水溶液系反応浴の調整、使用繊維、及び、反応条件に関しては、上記実施例1−3、及び、上記比較例1−1と同様にして行った。本実施例4及び各比較例4における具体的な処方を表7に示す。
比較例4−2における条件1とは、グラフト共重合反応が終了しグラフト鎖が導入された後の改質綿繊維を温水洗浄し、PEG♯4000を0.3g(0.12重量%)溶解した250mlの水溶液中に80℃で1時間加熱処理した。また、比較例4−3における条件2とは、グラフト共重合反応が終了した後の反応浴(母液)にPEG♯4000を0.3g(0.12重量%)添加して改質綿繊維を80℃で1時間加熱処理した。
実施例4、各比較例4、及び未処理の綿繊維について、グラフト化率(%)、及び、吸湿率(%)を測定した。グラフト化率(%)、及び、吸湿率(%)の測定は、上記実施例1と同様にして行った。算出したグラフト化率(%)、及び、吸湿率(%)の値を表8に示す。
表8から分かるように、グラフト共重合反応の後からグラフト鎖にPEG♯4000を付加する反応を試みた比較例4−2、4−3においては、比較例4−1と同程度のグラフト化率及び吸湿率しか示していない。よって、MAAとPEG♯4000との併用については、同浴反応(同時処理)が必須の要件であることが分かる。
本実施例5においては、グラフト鎖の主骨格を構成する成分としてMAAを使用し、グラフト鎖の第2成分としてPEG♯20000を使用した。一方、MAAを単独で使用し、PEG♯20000を併用しないものを比較例とし、この比較例に対して、MAAの中和の程度を変化させて(比較例5−1、5−2、5−3、5−4)、改質綿繊維のグラフト化率と風合いとの関係を検討した。なお、水溶液系反応浴の調整、使用繊維、及び、反応条件に関しては、上記各実施例、及び、上記比較例1−1と同様にして行った。本実施例5及び各比較例5における具体的な処方を表9に示す。
比較例5−1、5−2、5−3、5−4においては、MAAの中和のために水溶液系反応浴に投入する水酸化ナトリウム(NaOH10重量%水溶液)の量を変化させている。NaOH10重量%水溶液を投入しない比較例5−1は、MAAのカルボン酸が酸型のままである。これに対して、NaOH10重量%水溶液を3.0ml〜5.0ml投入した比較例5−2、5−3は、MAAのカルボン酸が徐々に部分中和された形となり、NaOH10重量%水溶液を8.0ml投入した比較例5−4は、MAAのカルボン酸が約54%中和された形となる。
実施例5、各比較例5、及び未処理の綿繊維について、グラフト化率(%)、及び、吸湿率(%)を測定し、また、改質綿繊維の風合いを評価した。グラフト化率(%)、及び、吸湿率(%)の測定は、上記実施例1と同様にして行った。また、改質綿繊維の風合いは、改質綿繊維を105℃で2時間乾燥した後、触感による官能検査を行った。算出したグラフト化率(%)、吸湿率(%)、及び、風合い評価の結果を表10に示す。
表10から分かるように、比較例のMAAを単独で使用するグラフト共重合反応においては、MAAのカルボン酸を中和する程度が低い程グラフト化率が高く、カルボン酸を全く中和することなく酸型で反応させた比較例5−1において、最も高いグラフト化率を示している。また、各比較例のグラフト化率に比例して吸湿率も高くなる。一方、MAAのカルボン酸を中和する程度が低いほど繊維の風合いが硬くなるという欠点が現れている。
これに対して、MAAとPEG♯20000とを併用した実施例5においては、比較例5−1と同等の高いグラフト化率と、これに起因する高い吸湿率を示している。一方、実施例5の改質綿繊維の風合いは良好なものであった。このことから、MAAにPEG♯20000を併用することにより、高いグラフト化率と高い吸湿率を得ることができると共に、従来のMAA単独のグラフト共重合反応では得られなかった良好な風合いを得ることができる。
本実施例6は、上記実施例1〜実施例5で使用した綿100%の精練漂白した編物(スムース組織)に替えて、綿100%の精練漂白した織物(40番手ブロード、目付:129g/m2)を使用するものである。なお、当該織物は、シルケット加工をすることなく使用した。また、本実施例6においては、グラフト鎖の主骨格を構成する成分としてMAAを使用し、グラフト鎖の第2成分として上記実施例1−1と同じM‐PEG♯400‐MAを使用した。なお、M‐PEG♯400‐MAに関しては、使用量を0.3g〜2.0g(0.12重量%〜0.8重量%)と変化させて使用した(実施例6−1、6−2、6−3)。一方、MAAを単独で使用し、M‐PEG♯400‐MAを併用しないもの(上記比較例1−1と同じ)を比較例6とした。各実施例6及び比較例6における具体的な処方を表11に示す。
実施例6−1、6−2、6−3、比較例6、及び未処理の綿繊維について、グラフト化率(%)、及び、吸湿率(%)を測定した。グラフト化率(%)、及び、吸湿率(%)の測定は、上記実施例1と同様にして行った。算出したグラフト化率(%)、及び、吸湿率(%)の値を表12に示す。また、実施例6−2、比較例6、及び未処理の綿繊維について、表面温度の上昇度(表面温度測定法)を測定した。表面温度の上昇度(表面温度測定法)の測定は、上記実施例3と同様にして行った。測定した表面温度(℃)と上昇度の値を表12に示す。
表12において、実施例6−1、6−2、6−3の改質綿繊維に対するグラフト化率(%)、及び、吸湿率(%)の値が、上記実施例1〜実施例5の各値と異なっているが、これは綿100%編物と綿100%織物による組織的な差異によるものと判断される。特に、実施例6−1のグラフト化率が4.8%と若干低い値を示しているが、この場合でも吸湿率が15.3%であり、未処理繊維の10.2%及び比較例6の14.2%よりも良好な値を示している。
一方、表12の表面温度の上昇度(表面温度測定法)は、上述のように、繊維を温度20℃で相対湿度90%の恒温恒湿室に静置してから4分後の表面温度をサーモグラフィーにより測定したものである。表面温度A(℃)は、未処理の綿繊維の表面温度であり、表面温度B(℃)は、改質綿繊維の表面温度である。表12において、MAAとM‐PEG♯400‐MAとを併用した実施例6−2の改質綿繊維に対する表面温度の差(上昇度)B−A(℃)は2.3℃であり、1.5℃以上の高い値を示している。このことから、高度な吸湿発熱性により表面温度が上昇していることが分かる。これに対して、比較例6(MAAを単独で使用)の改質綿繊維に対する表面温度の差(上昇度)B−A(℃)は1.3℃であり、吸湿発熱性を有するものの、実施例6−2の改質綿繊維には及ばない。
なお、上記実施例1〜実施例6においては、いずれもグラフト化率及び吸湿率を測定し、その結果として、高度な吸湿発熱性を有すると共に、風合いの良好な改質綿繊維を得ることができると説明するものである。従って、上記実施例1〜実施例6においては、改質綿繊維をアルカリ中和して塩型の比率を上げることにより、吸湿発熱性の向上を図っている。
一方、上記各実施例は、改質綿繊維の消臭性能については説明をしていない。しかし、上記各実施例による改質綿繊維は、高いグラフト化率を示しており、このように高いグラフト化率によって導入されたカルボン酸などにより、アンモニア、アミン、糞尿臭などの塩基性悪臭物質に対する消臭効果を有するものである。従って、改質綿繊維のカルボン酸の多くを酸型のまま残すことにより、塩基性悪臭物質に対する消臭効果の向上を図ることができる。
以上説明したように、本発明においては、何ら特別な装置を必要とせず高いグラフト化率を得ることができ、その結果、高度な吸湿発熱性或いは高度な消臭性を有し、且つ、改質後の繊維の風合いを硬化させることのない改質セルロース系繊維の製造方法及び当該方法で製造される改質セルロース系繊維を提供することができる。
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施例に限らず次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記各実施例においては、改質するセルロース系繊維として、綿編物及び綿織物を使用するものであるが、これに限るものではなく、亜麻、苧麻、黄麻、大麻などの天然セルロース系繊維、或いは、ビスコースレーヨン、ハイウェットモジュラスレーヨン、ポリノジックレーヨン、キュプラ、テンセル、リヨセルなどの再生セルロース系繊維を使用するようにしてもよい。
(2)上記各実施例においては、改質するセルロース系繊維として、編物及び織物の状態で使用するものであるが、これに限るものではなく、繊維(ワタ)、紡績糸、フィラメント糸、不織布、ロープ、網などの状態であってもよい。
(3)上記各実施例においては、綿100%編物及び綿100%織物というセルロース系繊維を単独で使用するものであるが、これに限るものではなく、セルロース系繊維と他の化学繊維或いは天然繊維との混合繊維の状態で改質するようにしてもよい。この場合には、混合されているセルロース系繊維が主に改質されることとなる。
(4)上記各実施例においては、グラフト鎖の主骨格を構成する成分としてメタクリル酸(MAA)を使用するものであるが、これに限るものではなく、アクリル酸やこれらの塩を使用するようにしてもよい。
(5)上記各実施例においては、グラフト鎖の第2成分である親水性基含有化合物としてポリエチレングリコール(PEG)、或いは、メトキシポリエチレングリコール・モノメタクリレート(M‐PEG‐MA)を使用するものであるが、これに限るものではなく、PEG以外のグリコール類やその誘導体、又は、M‐PEG‐MA以外のアルコキシポリエチレングリコール・モノメタクリレートやアルコキシポリエチレングリコール・モノアクリレート、若しくは、ポリエチレングリコール・メタクリレートやポリエチレングリコール・アクリレートなどを使用するようにしてもよい。
(1)上記各実施例においては、改質するセルロース系繊維として、綿編物及び綿織物を使用するものであるが、これに限るものではなく、亜麻、苧麻、黄麻、大麻などの天然セルロース系繊維、或いは、ビスコースレーヨン、ハイウェットモジュラスレーヨン、ポリノジックレーヨン、キュプラ、テンセル、リヨセルなどの再生セルロース系繊維を使用するようにしてもよい。
(2)上記各実施例においては、改質するセルロース系繊維として、編物及び織物の状態で使用するものであるが、これに限るものではなく、繊維(ワタ)、紡績糸、フィラメント糸、不織布、ロープ、網などの状態であってもよい。
(3)上記各実施例においては、綿100%編物及び綿100%織物というセルロース系繊維を単独で使用するものであるが、これに限るものではなく、セルロース系繊維と他の化学繊維或いは天然繊維との混合繊維の状態で改質するようにしてもよい。この場合には、混合されているセルロース系繊維が主に改質されることとなる。
(4)上記各実施例においては、グラフト鎖の主骨格を構成する成分としてメタクリル酸(MAA)を使用するものであるが、これに限るものではなく、アクリル酸やこれらの塩を使用するようにしてもよい。
(5)上記各実施例においては、グラフト鎖の第2成分である親水性基含有化合物としてポリエチレングリコール(PEG)、或いは、メトキシポリエチレングリコール・モノメタクリレート(M‐PEG‐MA)を使用するものであるが、これに限るものではなく、PEG以外のグリコール類やその誘導体、又は、M‐PEG‐MA以外のアルコキシポリエチレングリコール・モノメタクリレートやアルコキシポリエチレングリコール・モノアクリレート、若しくは、ポリエチレングリコール・メタクリレートやポリエチレングリコール・アクリレートなどを使用するようにしてもよい。
Claims (10)
- セルロース系繊維に対して、
アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーと、
これらのビニルモノマー以外の親水性基含有化合物とを同浴中に含有する水溶液で処理することにより、
前記ビニルモノマーと、前記親水性基含有化合物とを構成要素とするグラフト鎖を前記セルロース系繊維に導入することを特徴とする改質セルロース系繊維の製造方法。 - 前記親水性基含有化合物は、ポリアルキレングリコール、又はその誘導体からなる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の改質セルロース系繊維の製造方法。
- 前記親水性基含有化合物は、ポリアルキレングリコール・アクリレート、ポリアルキレングリコール・メタクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール・モノアクリレート、及びアルコキシポリアルキレングリコール・モノメタクリレートから選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーであることを特徴とする請求項1に記載の改質セルロース系繊維の製造方法。
- 前記グラフト鎖の構成要素として、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの塩として、アクリル酸、メタクリル酸の部分中和物を使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の改質セルロース系繊維の製造方法。
- 改質前の繊維重量に対して導入されたグラフト鎖の重量比率が、8重量%〜15重量%の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の改質セルロース系繊維の製造方法。
- 改質前後の各セルロース系繊維を被検体として吸湿発熱温度を評価するにあたり、
温度20℃で乾燥状態にある被検体を温度20℃で相対湿度90%の恒温恒湿室に静置した後4分後の、
未改質のセルロース系繊維の表面温度をA(℃)とし、
改質後のセルロース系繊維の表面温度をB(℃)としたときに、
吸湿発熱性の向上に対応する表面温度の上昇度の値が、
B−A ≧ 1.5(℃)
であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の改質セルロース系繊維の製造方法。 - 改質後のセルロース系繊維を被検体として保温率測定装置(カトーテック株式会社製、KES-F7サーモラボII試験機)による保温率を評価するにあたり、
乾燥状態に対応するドライコンタクト法で測定した被検体の保温率をC(%)とし、
湿潤状態に対応するウェットスペース法で測定した被検体の保温率をD(%)としたときに、
吸湿発熱性の向上に対応するウェットスペース法とドライコンタクト法との保温率の上昇度の値が、
D−C ≧ 25.0(%)
であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の改質セルロース系繊維の製造方法。 - 請求項6又は7に記載の改質セルロース系繊維の製造方法により製造されてなる改質セルロース系繊維。
- 請求項8に記載の改質セルロース系繊維を含有してなる吸湿発熱性繊維。
- 請求項8に記載の改質セルロース系繊維を含有してなる消臭性繊維。
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