JP6172671B2 - 環境にやさしいアニオン交換体及びその製造方法 - Google Patents

環境にやさしいアニオン交換体及びその製造方法 Download PDF

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Description

イオン交換樹脂は脱塩、脱色、軟化、超純水製造など水処理や有価物の製造、有害物質の除去など広範囲に利用されている。本発明はこのイオン交換樹脂と同等の機能を有しているイオン交換体の製造方法に関するものである。特に、様々な有機高分子素材を自由に選択できる放射線グラフト重合法を利用したアニオン交換体及びその製造方法に関するものである。
従来技術
アニオン交換樹脂はスチレンージビニルベンゼン共重合体のビーズ状粒子をクロロメチル化した後、トリメチルアミンやトリエチルアミンなどの3級アミンを反応させ4級アンモニウム基を導入している。ここで、クロロメチル基を導入する際利用されるクロロメチルメチルエーテルは非常に毒性が強く取扱いに細心の注意を必要とする。また、トリメチルアミンは悪臭の代表物質として最初にリストアップされる物質であり、作業環境のみならず環境対策が非常に重要である。これらの対策をとるため多大な費用を投じている。
クロロメチルメチルエーテルの毒性に鑑み、クロロメチル化を行ったスチレン(クロロメチル化スチレン(CMS)が市販されている。しかしながら、このモノマーは重合しやすいため、ターシャリー・ブチルカテコール(TBC)やニトロメタンなどの重合禁止剤が加えられている。このモノマーを重合に用いる場合、重合禁止剤を除去するために、水酸化ナトリウム溶液などによってCMSを洗浄し、重合禁止剤を抽出除去する必要がある。この抽出除去を完全に行うには、洗浄を何回も実施する必要がある。この結果、洗浄廃液が多量に発生し、産業廃棄物に多大なコストがかかる。抽出除去が不十分であると十分に重合しない。
また、CMS中のTBCを除去するために、塩基性活性アルミナ粒子を充填したカラムにCMSを通液することも試みられている。しかしながら、CMSを直接活性アルミナ層に通液すると、発熱により重合が開始し、通液不可能の状態に至る。アセトンやメタノールなどを通液し予め発熱させ、そのあとにCMSを通液する方法があるが、廃液が増加する問題点がある。また、TBC吸着後の活性アルミナは固体廃棄物であり、カラムからの取出しにも水以外の薬液が必要となるため、大きな問題点となっている。
アニオン交換樹脂は直径約0.5mmのビーズ状の樹脂として製品化されている。この製品形状では、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂ともにカラム充填方式で純水製造などに利用される。この場合、原水タンク、除濁のための前処理装置、ポンプ、イオン交換樹脂塔及びイオン交換樹脂が寿命に達した場合に行う再生設備とから成る。除濁のための前処理装置としては原水の水質にも依存するが凝集沈殿、砂ろ過装置などから成る。一連の装置はプラントと呼んでも差し支えない。
放射線グラフト重合法は既存の様々な高分子材料に機能を導入できるため、機能性材料の製造方法として注目されている。特に、既存の様々な高分子、例えば繊維、繊維の集合体である織布や不織布、フィルム、中空糸、粒子などにイオン交換基を導入できるため、カラム充填方式以外の使用方法が可能である。例えば、マスク、脱臭剤などの衛生材料から撚糸を巻き回したワインド式カートリッジフィルタ、不織布をプリーツ折りして成形したプリーツ式カートリッジフィルタ、組み紐、ネット、繊維を切断したカット繊維など用途に合わせて成形加工し利用できる。そのため、放射線グラフト重合法によるイオン交換体は一般産業用途のみならず一般消費者向けの用途にも利用できる。
このように、身近な家庭環境にも用途が広がるため、より安全に安価に製造できる強塩基性アニオン交換体の製造方法が開発される必要がある。しかしながら、放射線グラフト重合法を利用した強塩基性アニオン交換体の製造においては、例えば、特公平6−20554(文献1)のようにCMSが多用されてきた。
繊維やその集合体である不織布などの基材にCMSを使用すると、従来のビーズ状の樹脂の場合と比べ、その形状や重合方法にもよるが、洗浄が不十分になる場合がある。洗浄不足になると、未利用モノマーや単独重合物などが残留し、CMS蒸気や液体に曝露された結果、作業の継続が困難となる。重合物の洗浄効率を高めるため十分な量のトルエンやアセトンなどの有機溶媒が必要となる。洗浄操作は1回ではなく数回行う必要があるため、有機溶媒の廃液が増加する問題がある。この操作を念入りに行わないとグラフト重合後の基材から催涙性のCMS蒸気や液体が発生し、目や皮膚から浸透するため、作業を継続することが困難となる。グラフト重合前におけるCMSからの重合禁止剤の抽出除去操作やカラム通液操作などの作業に加え、重合後の製品の取扱い操作を局所排気設備の整った環境で適切な防護衣を着用し実施する必要がある。
CMSのクロロメチル基にトリメチルアミンを導入したモノマー(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、略称VBTAC)が市販されている。このモノマーは既に4級アンモニウム基が導入されているため、重合禁止剤の除去操作を省略できる。また、二次反応が不要であるためトリメチルアミン取扱い時のアミン臭対策も必要ではない。したがって、放射線グラフト重合法によるモノマーとして好適に利用できる。しかしながら、VBTACは非常に親水性の大きなモノマーであるため、親水性の基材に対しては単独でグラフト重合が可能であるが、疎水性の基材、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどに対しては全くグラフト重合できない。
この問題を解決するため、例えば特開平6−49236(文献2)のように、親水基を有するモノマーとイオン交換基を有するモノマーとを共グラフト重合させると、イオン交換基を導入できることが示されている。ここで、親水基を有するモノマーはビニルピロリドンやヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)であり、イオン交換基を有するモノマーはVBTACやスチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)などである。文献2の実施例4によると、HEMAとVBTACの組合せで158%と高いグラフト率が得られている。しかし、イオン交換容量は1.4meq/gとVBTAC単独でグラフトした場合に想定される値から大きく下回っている。
また、VBTACグラフト製品には乾燥状態でアミン臭を発生する問題がある。一般的な水処理におけるイオン交換用途では大きな問題とはならないと思われるが、生活雑貨や衛生用品として利用する場合は大きな問題となる。例えば、マスク製品に本材料を利用した場合、吸着性能を高めるため、4級アンモニウム基を再生型(OH型)に変換すると、極微量のアミン臭が発生して不快感が生ずる場合があり、製品の品質管理上細心の注意を要する。CMSをグラフト重合後、トリメチルアミンで4級アンモニウム化した場合も同様の化学構造であるため、同様のアミン臭の問題が起こる。
CMSは非常に高いモノマーであるが、VBTACはCMSをさらに4級アンモニウム化したものであるため、1kgあたりの価格が1万円以上と極めて高価である。したがって、VBTACを用いた材料は非常に価格の高いものとなる。
メタクリル酸グリシジル(GMA)という2重結合とエポキシ基の2種類の機能を有するモノマーがあり、重合のしやすさ及び官能基の導入しやすさのため、最近特に放射線7グラフト重合の分野で広く使用されているモノマーがある。
GMAグラフト物を利用して代表的なカチオン交換基であるスルホン酸基を導入する場合はGMAグラフト物を亜硫酸ナトリウム、水とアルコールなど有機溶媒を加えた液に浸漬し、80℃以上で数時間加熱することによって比較的マイルドに製造できる。たとえば、GMAのグラフト率(重量増加率)100%前後の重合物にスルホン化反応を行い、中性塩分解容量2.5meq/g程度の強酸性カチオン交換体が製造できる。
そしてGMAグラフト物にアニオン交換基を導入する場合、2級アミンを反応させて3級アミンにする方法が広く行われている(非特許文献1)。しかしながら、4級アンモニウム基を導入している例は少ない。トリメチルアミンやトリメチルアミン塩酸塩で4級アンモニウム化した例があるが、反応物を乾燥させるとアミン臭の発生が強く、イオン交換容量の低下も認められるなど安定した製造方法とは言えなかった。また、トリメチルアミンは4級アンモニウム化反応時にしかるべく環境対策を施さないと、強烈なアミン臭を周辺にまき散らすことになる。
トリメチルアミン塩酸塩を用いれば多少のアミン臭を低減させることはできるが、トリメチルアミンの閾値自体が0.035ppmと低濃度であるため、アミン臭を感じない程度に低減させることは全く期待できない。
既存の高分子材料に放射線グラフト重合法を適用すれば、様々な形状の機能性材料が創製でき、さらに多くの用途を見出せる筈であるが、モノマーが高価であることに加え十分な環境対策が必要であるなど製造コストの上昇、さらに、製品を開封する際、場合によってはアミン臭が発生するなど使用時の問題点などのために、特定の産業用途にしか利用が広がっていない。この課題を解決する方法が望まれている。
特公平6−20554 特開平6−49236
"Capture of Microbial Cells on Brush−Type Polymeric Materials Bearing Different Functional Groups" William Lee, et al,Biotechnology & Bioengineering,Vol53,No.5,1997
このように、従来アニオン交換樹脂の製造方法は、使用した薬品の種類によって、良好な作業環境の維持、環境負荷低減の観点から大きな問題点を有していた。またカラム充填塔方式という使用方法のために、一定の産業用途にしか適用できなかった。
また、放射線グラフト重合法を利用した場合においても、コスト高や製品からのアミン臭発生等の品質管理に細心の注意を要し、素材の形状を生かした様々な用途への展開が困難であった。
本発明者らは、放射線グラフト重合法による高分子材料の高機能化を継続的に行ってきた。その中で、GMAは重合禁止剤を除去せずとも簡単に重合し高いグラフト率が得られる点を生かし、トリメチルアミンを使用せずともアミン臭のない4級アンモニウム基の導入が可能な方法を見出し、本発明に到達した。即ち、次の(1)〜(4)に示す特徴を有する強塩基性アニオン交換体及びその製造方法を見出した。
(1)グリシジル系モノマーのグラフト側鎖に3級アミノ基を2個以上有するポリアミン化合物を導入した化学構造を有する有機高分子素材の強塩基性アニオン交換体
グリシジル系モノマーは放射線グラフト重合において精製せずとも高いグラフト率得られる。そして、3級アミンを2個以上有するポリアミンは沸点が高いため、4級アンモニウム化反応時のアミン臭が小さく、作業環境対策上有利である。
(2)有機高分子素材に電離性放射線を照射した後、グリシジル系の重合性単量体をグラフト重合し、次いでハロゲン化水素酸によるハロゲン化アルキル化を経て、3級アミノ基を2個以上有するアミンを反応させるか、又は3級アミノ基を2個以上有するアミンのハロゲン化水素酸塩を反応させることにより、4級アンモニウム基を導入した(1)記載の強塩基性アニオン交換体の製造方法
放射線を利用したグラフト重合法は、単に照射するだけで基材の内部にまでラジカル生成が可能である。化学的なラジカル重合法では開始剤となる薬液を必要とし、廃液が発生するばかりでなく、所定の温度や圧力で反応させねばならない。
また、ラジカルを付与された高分子成型体はモノマーとの接触、官能基導入のための薬液との接触及び洗浄液との接触を経て最終製品ができる。特に、グラフト重合は30〜50℃の範囲内で穏やかに進行させることができる。ここで、薬液と高分子成型体との分離は単に薬液を排出するか高分子成型体を薬液から取り出すだけでよい。
(3)前記3級アミノ基を2個以上有するアミン化合物がトリエチレンジアミン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンから選択される(2)記載の強塩基性アニオン交換体の製造方法
3級アミンを2個以上有するポリアミン、特にトリエチレンジアミン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルエチレンジアミン及びヘキサメチレンテトラミンのポリアミンは求核性が高く反応しやすい。複数の3級アミンがエポキシ基と反応し、架橋構造を形成する場合もあるが、4級アンモニウムの脱落や分解を防止するうえで好ましい。
(4)前記有機高分子素材は繊維、繊維の集合体である撚糸、織布、不織布、カット繊維、中空糸、フィルム、スポンジ状空隙材料、フィルム、ネット、粒子これらの加工品より選択される(2)又は(3)記載の強塩基性イオン交換体の製造方法
放射線グラフト重合法は、既存の様々な高分子素材に適用が可能である。特に、繊維やその加工品である織布や不織布などにも容易に適用できるため、産業用途から民生用途にまで適用分野が極めて広くなる。
本発明によれば、放射線照射によって有機高分子内にラジカルを生成させ、グリシジル系モノマーと接触させ、グラフト重合を行った後、3級アミンを2個以上有するアミンを利用して4級アンモニウム化を行い、強塩基性アニオン交換体を得ることができる。
アミノ化反応時にアミン臭の発生がなく、製品からのアミン臭発生もない。従来、形状がビーズ状であったため、カラム充填方式での使用に限られていたが、放射線グラフト重合法により種々の形状の高分子、その中でも特に成型加工の容易な繊維に4級アンモニウム基を導入できるため、産業用途ばかりでなく安全衛生分野など一般消費者向けの用途にも利用分野を拡大できる。
本発明による強塩基性アニオン交換繊維の合成経路1 本発明による強塩基性アニオン交換繊維の合成経路2 ジアザビシクロウンデセンの化学構造 ヘキサメチレンテトラミンの化学構造
以下、本発明をさらに具体的に図面を用いて説明する。本発明に利用する2個以上の3級アミンを有するポリアミンとしてはいくつかあるが、最も好ましいのはTEDAである。以下TEDAについて説明するが、この範囲に限定されるわけではない。
本発明による強塩基性アニオン交換体の作製経路を図1に示す。既存の高分子、例えばナイロン繊維に代表的な放射線であるガンマ線を照射し、グリシジル系モノマーであるメタクリル酸グリシジル(GMA)をグラフト重合する。そして、グラフト鎖のエポキシ基を所定濃度の塩酸で開環し、次に3級アミンを2個有するトリエチレンジアミン(TEDA)で4級アンモニウム化を行い、強塩基性アニオン交換体を作製することができる。
GMAグラフト物にTEDAを導入する場合、TEDA単独の水溶液又はそれにメタノールやイソプロピルアルコールなどアルコール溶媒を加えてもよい。しかしながら、重量増加率から計算したTEDA導入量と比べ、4級アンモニウム基の導入量が大きくならない。また、TEDA水溶液は強塩基性を示すため、高温で加温し続けると熱分解や化学的分解を促進し、交換容量の低下を招く恐れがある。
エポキシ基を予めハロゲン化水素酸等で開環し、そのハロゲン化アルキル基に対して求核性の大きなTEDAを反応させれば、高い4級アンモニウム化率を得ることができる。例えば、GMAグラフト物を数%の塩酸に浸漬し、40℃以上の温度で所定時間加温することにより容易に4級アンモニウム化できる。導入量は重量増加率から簡単に計算できる。
エポキシ基を開環するため、GMAグラフト物を塩酸溶液で加温することはラボ的には容易である。しかし、工業規模の装置に適用する場合、装置の材質面で問題となる。耐酸性の反応槽、ポンプなどに著しく費用がかかり、製品のコストに影響する。これでは、本発明の本来の目的に即していない。
図2では、予め塩酸等によってTEDA溶液のpHを中性側に調製しておくことにより、工程を簡略化できると同時にグラフト物の分解を抑制し、塩酸による反応装置の腐食を防止することができる。
TEDA水溶液を塩酸などハロゲン化水素酸で予め中和した液でTEDAを導入することにより、反応装置の腐食を抑制するだけでなく、反応物の中性塩分解容量(4級アンモニウム基)をも高い値で導入することができる。そのpHは4〜10である。さらに好ましくはpH4.5〜9.5である。pH4以下であれば、装置の腐食対策を講じなければならない。pH10以上であれば、中性塩分解容量の値が小さくなる。また、GMA等のエステル基やTEDAの安定性も問題となる。ハロゲン化水素酸としては塩酸が一般的である。例えば、TEDA導入前に塩酸水溶液でTEDA水溶液をpH調製することで容易に実施できる。もちろん、臭化水素酸、ヨウ化水素酸なども利用できる。
TEDAの導入箇所はGMAのエポキシ基の左右いずれかと考えられるが、予め塩酸等によって開環した場合やTEDA導入時のpH等により変化すると思われる。しかしながら、4級アンモニウム基を安定して導入でき、高いイオン交換容量と繰り返し使用可能な化学的安定性が得られれば、TEDA導入箇所によらずいずれも利用できる。
3級アミンを2個以上有するアミンとしてTEDA以外に図3に示す化学構造のジアザビシクロウンデセン、図4に示す化学構造のヘキサメチレンテトラミン及びテトラメチルエチレンジアミンなどがあり、本発明に利用できる。これらは沸点が高く求核性が大きいため、本発明の強塩基性アニオン交換基導入反応に好適である。しかし、この中でも本発明のように環境対策を重視した強塩基性アニオン交換体の製造においては、無臭で反応の容易なTEDAが好適に利用できる。
3級アミンを2個以上有するアミンが4級アンモニウム基として導入される場合、もう一方の3級アミンも隣接するグラフト鎖と結合し、架橋する可能性がある。しかしながら、両端で結合しているため、分解等によるアミンの脱落防止には好ましい。
グリシジル系モノマーとしてはメタクリル酸グリシジルやアクリル酸グリシジルなどが挙げられる。中でもメタクリル酸グリシジル(GMA)は化学的耐久性が大きく、グリシジル系モノマーとして好ましい。GMAは図1に示すようにグラフト側鎖の形成に必要な2重結合とイオン交換基やキレート基の導入に必要なエポキシ基を有しており、放射線グラフト重合を利用した機能性材料の製造に好適である。また、予め使用するにあたって重合禁止剤のヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)を取り除く精製を行う必要もなく便利である。
放射線を利用して有機高分子素材にラジカルを生成させ、このラジカルを開始点としてGMAをグラフト重合させる。この方法は放射線グラフト重合法として公知であり、予め放射線を照射した後、モノマーを反応させる前照射グラフト重合法が単独重合物の生成量が少なく本発明に好ましい。
ここで、放射線グラフト重合法について説明する。放射線グラフト重合法とは、γ線や電子線等の電離性放射線を基材に照射し、基材表面あるいは基材内部に生成したラジカルを利用してモノマーを重合させ、基材からグラフト鎖を成長させる方法である。
放射線グラフト重合法に用いる電離性放射線としては、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、電子線、紫外線などを用いることができるが、工業的に利用できるガンマ線や電子線が本発明に適している。
基材に放射線照射を行うタイミングにより、前照射グラフト重合法と同時照射グラフト重合法があるがどちらも利用できる。前者は基材に放射線を照射した後、モノマーと接触させてグラフト重合を行う。後者は基材とモノマーが同時に存在する状態で放射線照射を行う方法であり、いずれの方法も採用できる。
また、グラフト重合をモノマー液中で行う液相グラフト重合法、モノマー蒸気中で行う気相グラフト重合法、グラフト重合させたい量のモノマーを付与した後、不活性ガス中で反応させる含浸気相グラフト重合法などいずれのグラフト重合法も利用できる。
放射線グラフト重合法は既存の高分子にその形状を保持しながら、機能を導入できる材料開発の手段であるため、いかなる形状のものにも適用できる。例えば、繊維、繊維の集合体である撚糸、織布、不織布、カット繊維、中空糸、フィルム、スポンジ状空隙材料、フィルム、ネット、粒子これらの加工品などより選択できる。特に、衣料品や住環境にも利用しやすい有機高分子繊維が本発明の用途には適しており、その形状が単繊維、その集合体である織布、不織布、撚糸、それらの切断品より選択されたものが好適に利用できる。
繊維の材質として、合成繊維の他、綿などのセルロース系繊維、動物性繊維、鉱物系繊維、若しくは再生繊維、またはそれらの混合繊維が挙げられる。合成繊維にはポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、フッ素系等が含まれる。セルロース系繊維には、綿、麻等の天然セルロース系繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニア法レーヨン、ポリノジック等の再生セルロース繊維、テンセル等の精製セルロース繊維、アセテート、ジアセテート等の半合成繊維が含まれる。鉱物系繊維には、石綿、玄武岩繊維等が含まれる。動物性繊維には、羊毛等の獣毛繊維、絹等が含まれる。再生繊維には、キチン・キトサン繊維、コラーゲン繊維などが含まれる。これら繊維素材の混紡を用いることもまた可能である。
(1)メタクリル酸グリシジル(GMA)の放射線グラフト重合
直径約35μmのナイロン繊維にガンマ線を40kGy照射した。次に予め窒素バブリングにより脱酸素したメタクリル酸グリシジル/メタノール(=1/9)のモノマー溶液に浸漬し、45℃で6時間反応した。反応終了後の繊維をジメチルホルムアミド溶液に浸漬し、さらにメタノールに浸漬して洗浄した。乾燥後の重量を測定することにより、重量増加率(グラフト率)133%が得られた。
(2)GMAグラフト繊維へのTEDAの導入
次に、GMAグラフト繊維を1規定塩酸に浸漬し、60℃で2時間加温し、エポキシ基を開環した。さらに、TEDA10%水溶液に浸漬し、70℃で5時間反応させた。この繊維をメタノール洗浄後、乾燥重量を測定し、重量増加率から1.5mmol/gのTEDAが導入されたことが分かった。この間、全くアミン臭は感じられず、ドラフトでの吸引排気も不要であった。
(3)TEDA導入繊維のイオン交換容量測定
TEDA導入繊維1gを1規定水酸化ナトリウム100mlに浸漬し30分間攪拌することによって再生し、純水500mlで10回バッチ洗浄した。次に塩化ナトリウム1%水溶液100mlに浸漬して、30分攪拌した。上澄み液を別のビーカーにとり、繊維を100ml純水で3回洗浄し、洗浄済みの液は先のビーカーに合わせた。このビーカーの液を0.02規定塩酸で中和滴定し、1.9mmeq/gの中性塩分解容量が得られた。この繊維は1.5mmol/gのTEDAが導入されているため、全体で3meq/gのアミノ基のうち1.9meq/gが強塩基性アニオン交換体、残りの1.1meq/gが弱塩基性アニオン交換体であった。水処理等に利用できるアニオン交換容量が十分に導入されていた。
(4)強酸性カチオン交換繊維の製造
(1)で得られたグラフト率133%のGMAグラフト済み繊維を亜硫酸ナトリウム10%、イソプロピルアルコール10%、水80%の溶液に浸漬し、80℃で10時間反応を行った。取り出した繊維を塩酸5%で再生し、塩化ナトリウムを用いて中性塩分解容量を測定したところ、2.6meq/gであった。
(5)純水製造試験
(2)で得られた強塩基性アニオン交換繊維と(4)で得られた強酸性カチオン交換繊維をそれぞれ乾燥重量で10gずつとり、数mmにはさみでカット後、それぞれ水酸化ナトリウムと塩酸で再生し、洗浄した後混合した。20mmφカラムに純水を用いて充填し、層高約250mmのイオン交換繊維よりなる混床を形成した。食塩濃度10mg/Lの合成原水を作成し、流量を60ml/分でカラムに通水した。合成原水の電気伝導率が28μS/cmに対し、処理水の電気伝導率は0・5μS/cm以下と安定していた。即ち、GMAグラフト物から得られた強酸及び強塩基性イオン交換体を用いて純水製造が可能であることが分かった。
(6)TEDA塩酸液(pH9)によるTEDA導入繊維
(1)で使用したGMAグラフト繊維を使用し、(2)のTEDA導入反応を行った。この際、塩酸によるエポキシ基の開環を行わず、pH12近くあるTEDA液を塩酸で予めpH9に調整して導入反応を行った。結果は中性塩分解容量が1.9meq/gであり、塩酸によるエポキシ基開環反応を行った場合と同様の結果が得られた。このことから、塩酸を用いるために懸念された高仕様の装置材質やポンプを通常の仕様に変更することが可能となった。そればかりでなく、1工程簡略化することができ、時間短縮や製造用水としての純水使用量低減、排水量低減を図ることが可能となった。
(7)TEDA塩酸液(pH6)によるTEDA導入繊維
(6)と同様のTEDA導入反応をpH6で行った。結果は中性塩分解容量が1.3meq/gとやや小さくなったが、それでもイオン交換反応を行うには十分な交換容量が得られた。
(8)TEDA塩酸液(pH4)によるTEDA導入繊維
(6)と同様のTEDA導入反応をpH4で行った。結果は中性塩分解容量が1.2meq/gとやや小さくなったが、それでもイオン交換反応を行うには十分な交換容量が得られた。TEDA液のpHが小さくなるにつれ中性塩分解容量が低下するが、TEDAの3級アミンへの塩酸の配位による求核性の低下と関係していると推察された。
(9)TEDA液(pH12)によるTEDA導入繊維
(6)と同様のTEDA導入反応を塩酸を使用せずTEDA液のままpH12で行った。結果は中性塩分解容量が0.5meq/gと低下した。そして、導入反応時間が長くなるにつれ、イオン交換容量の低下がみられた。TEDAの安定性やGMAのエステル部の加水分解が懸念された。
(10)TEDA導入繊維のアルカリ耐久試験
(6)で得られた繊維を水酸化ナトリウムでpH12に調整した液に浸漬して70℃に加温し、5日間のアルカリ耐久試験を行った。5日経過後の中性塩分解容量1.9meq/gと耐久性試験開始前と同様の値であった。実用上、十分な耐アルカリ性を有していることが分かった。

Claims (4)

  1. 既存の有機高分子素材に電離性放射線を照射した後、グリシジル系の重合性単量体をグラフト重合し、次いでハロゲン化水素酸によりエポキシ基を開環するハロゲン化アルキル化を経て3級アミノ基を2個以上有するアミンを反応させることにより、4級アンモニウム基を導入した強塩基性アニオン交換体の製造方法。
  2. 既存の有機高分子素材に電離性放射線を照射した後、グリシジル系の重合性単量体をグラフト重合し、次いで3級アミノ基を2個以上有するアミンをハロゲン化水素酸によりpH4〜10に調整した液を反応させることにより、4級アンモニウム基を導入した強塩基性アニオン交換体の製造方法。
  3. 前記3級アミノ基を2個以上有するアミンがトリエチレンジアミン、ジアザビシクロウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン及びテトラメチルエチレンジアミンから選択される請求項1又は2記載の強塩基性アニオン交換体の製造方法。
  4. 前記有機高分子素材は繊維、繊維の集合体である撚糸、織布、不織布、カット繊維、中空糸、フィルム、スポンジ状空隙材料、フィルム、ネット、粒子及びこれらの加工品より選択される請求項1又は2記載の強塩基性アニオン交換体の製造方法。
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