JP2016180086A - 親水性モノマーの単独グラフト重合法 - Google Patents

親水性モノマーの単独グラフト重合法 Download PDF

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Abstract

【課題】 従来、放射線グラフト重合法において、強酸及び強塩基性イオン交換基を導入する場合、有機高分子基材に疎水性モノマーをグラフト重合し、二次反応によってイオン交換基を導入するか、又は強酸及び強塩基性イオン交換基を有するモノマーの重合を促進するための補助モノマーを共存させてグラフト重合してきた。そのため、前者では製造工程が複雑になりコストがかかる、後者では工程が簡素になるが十分なイオン交換容量が得られないという課題が存在していた。【解決手段】 本発明は強酸及び強塩基性イオン交換基を有するモノマーをグラフト重合するに際し、モノマー水溶液に無機塩を加えることにより、水溶液系で単独グラフト重合が可能となった。性能向上とコスト低減が可能となった。【選択図】図5

Description

本発明は機能性分離材料の製造方法として、最近とみに有効性を増している放射線グラフト重合方法に関するものである。
放射線グラフト重合法は機能性分離材料の製造方法として、その利用価値が急速に高まっている。特に、既存の高分子に形状をそのままに機能性官能基を導入できるため、これまで適用できなかった使用方法が可能になっている。例えば、従来の吸着材、例えばイオン交換樹脂などの場合、形状がビーズ状の粒子であるため、その使用方法は充填塔方式に限られていた。しかしながら、放射線グラフト重合法は既存のさまざまな高分子に機能を導入できるため、繊維状、フィルム状、中空糸状などの形状を有する機能性材料が製造できる。特に、繊維の場合はカット繊維にして流動させる方式や充填塔方式でも使用できる。また、撚糸や不織布の場合はワインドフィルターやプリーツフィルターなどへのフィルター化が可能であるため、粒子とイオンとの同時分離が可能となる。
このように、繊維は成型加工が容易であるという点以外にも、表面積が大きいために大きな吸着速度が得られるという特長がある。さまざまな形状、例えば、組みひも、ワインドフィルター、ネットなどに成型加工が容易にできるため、これまで考えられなかったような場所にも使用できるようになった。例えば、福島第1原子力発電所の事故においては、廃炉が決定しているが、同時に汚染水問題を解決しなければならない。林立する汚染水貯蔵タンク、汚染土壌に接触した地下水、港湾そして崩壊した燃料の冷却水処理装置から発生し続ける汚染水など、これらをいかに処理するか考える場合、繊維状吸着材使用方法を工夫することによって、様々な汚染環境に合わせて吸着材形状を提案できる。
放射線グラフト重合法における基材材質の選択は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルなどを用いた既存の高分子成型材料から、使用方法、形状、強度やラジカル保存性などを考慮して決める。
また、グラフト重合に用いるモノマーとしては、官能基を有するモノマーか又は官能基に転換可能なものから選択される。ここで、官能基がイオン交換基である場合を説明すると、強酸性カチオン交換基を有するモノマーとしてスルホン酸基を有するスチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)や強塩基性アニオン交換基である4級アンモニウム基を有するビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)が挙げられる。
これら強酸性カチオン交換基を有するモノマーや強塩基性アニオン交換基を有するモノマーは非常に親水性が強いため水溶性である。一方、既存の高分子は親水性の用途を目的に製造されたもの以外はほとんどが疎水性である。したがって、これらの材料と水を接触させると、水に濡れないものが多い。特に、グラフト重合しやすいポリエチレンやポリエステルなどはこの傾向が著しい。
ポリエチレンなどより親水性が高いポリマーであるナイロンについても、水に対し濡れ性が悪いため、モノマーが接近しづらく、グラフト重合速度が小さい。したがって、高いグラフト率(重量増加率)を必要とする場合、重合速度を上げるための補助モノマーを共存させ、混合モノマーでグラフト重合を行う(特許文献1)。例えば、VBTACをポリエチレンに単独グラフト重合する場合、グラフト率は極めて小さく、全くグラフト重合しないのがふつうである。この場合、図1に示すようにVBTACにN−ビニルピロリドン(NVP)を混合することによって、グラフト重合が進む。例えば、VBTAC/NVP/水の比率を20/10/70(重量)でグラフト重合すると、容易に30%〜50%程度のグラフト率が得られる。ここで、グラフト率はグラフト重合前後の重量増加率のことである。
しかしながら、混合モノマーにより形成されたグラフト鎖は混合モノマーの状態で重合されるため、本来目標のイオン交換容量値よりも小さいイオン交換容量となる。例えば、VBTAC単独でグラフト重合した場合、グラフト率が50%得られたとして計算上1.6meq/g前後の値が得られるが、混合モノマーの場合、同様のグラフト率が得られたとしても0.6mmol/g程度の値しか得られない。したがって、水処理や空気浄化に使用する場合、交換容量が小さいため、すぐに破過してしまうという課題がある。
大きなイオン交換容量を得るには、イオン交換基に転換できるモノマーを予めグラフト重合し、次いでイオン交換基導入反応を行う製造方法がある。このようなモノマーとして、図2に示すクロロメチルスチレンや図3に示すメタクリル酸グリシジル(GMA)がある。例えば、GMAをグラフト重合した後、トリメチルアミン塩酸塩やトリエチルアミン塩酸塩を反応させ、4級アンモニウム基を導入することができる。しかし、この方法では、次のような問題点がある。
(1)工程が2段階になるため複雑な操作を必要とする
(2)GMAをグラフト重合した後にメタノールなどの有機溶媒で洗浄しなければならな い。有機溶媒とその廃液処理費のためにコストが上昇する。
(3)トリメチルアミン塩酸塩に起因するアミン臭のために作業環境が悪化する
(4)GMAの場合はエステル基を有するため、加水分解が起こりやすい
などの問題点があり、コスト高の原因にもなっていた。
特に、4級アンモニウム基が導入される前のモノマーであるクロロメチルスチレン(CMS)は、それ自身が強い催涙性を有し、CMSモノマー液中に添加されている重合禁止剤の除去や4級アンモニウム化反応のために使用するトリメチルアミンの悪臭による環境対策に細心の注意を必要とするため、GMA以上に製造が煩雑である(特許文献2)。
このように、放射線グラフト重合法において、有機高分子の中でも特に繊維に対し強酸性カチオン交換基及び強塩基性アニオン交換基を有する水溶性モノマーを直接グラフト重合できる例が非常に少なく、弱酸性又は弱塩基性のイオン交換基を有する水溶性モノマーや非イオン性の水溶性モノマーと共存させてグラフト重合を行うか、又は予めイオン交換基に転換可能な非水溶性モノマーをグラフト重合し、その後二次反応でイオン交換基を導入するという方法を採用していた。そのため、前者では工程数は少ないがイオン交換容量が小さい、また後者ではイオン交換容量は大きくなるが、工程数と使用薬品量が増え製造コスト上昇を招いていた。
したがって、強酸性や強塩基性イオン交換基が単独でグラフト重合できれば、高いイオン交換容量を維持しながら、水洗浄が可能、工程数の減少、環境負荷が小さくなるなどメリットが非常に大きい。
特開平6−49236 特開平1−258740
本発明の課題は、工程数が少なくかつ大きなイオン交換容量が得られる強酸性カチオン交換基を有するモノマー又は強塩基性アニオン交換基を有するモノマーを単独でグラフト重合できるグラフト重合方法を提供することである。
本発明者らは、グラフト鎖の膨潤・収縮とイオン交換性能や無機化合物の担持量との関係を鋭意研究するなかで、塩類濃度が高い場合に強塩基性アニオン交換基を有するモノマーが単独グラフト重合することを見出し、本発明に到達した。本発明の特徴は次の通りである。
(1)有機高分子基材に対し、親水性モノマーを放射線グラフト重合するに当たり、無機塩類を共存させてグラフト重合することを特徴とする親水性モノマーの単独グラフト重合方法
(2)前記、親水性モノマーが強酸性カチオン交換基を有する水溶性モノマー、強塩基性アニオン交換基を有する水溶性モノマーから選択される(1)記載の親水性モノマーの単独グラフト重合方法
(3)前記、有機高分子基材は、繊維、膜、多孔膜、中空糸、中空糸膜、スポンジ、粉末、粒子から選択されたものである(1)又は(2)記載の親水性モノマーの単独グラフト重合方法
(4)前記、有機高分子基材は、合成高分子として、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリアミド、アクリル系、ポリエステルおよびその誘導体から選択されたもの、天然高分子として、綿、麻等の天然セルロース系繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニア法レーヨン、ポリノジック等の再生セルロース繊維、テンセル等の精製セルロース繊維、アセテート、ジアセテート等半合成の繊維より選択されたものである(1)、(2)又は(3)記載の親水性モノマーの単独グラフト重合方法
代表例な有機系高分子吸着材はイオン交換樹脂であるが、放射線グラフト重合法で製造する吸着材もイオン交換基を有するものが多い。中でも、強酸性カチオン交換基であるスルホン酸基、強塩基性アニオン交換基である4級アンモニウム基は酸性からアルカリ性の液性においてイオン交換が可能であるため、最もよく利用される。
放射線グラフト重合法により既存の高分子基材に強酸性カチオン交換基や強塩基性アニオン交換基を導入する際、基材とモノマーの親・疎水性が極めて重要である。特に、イオン交換基を有するモノマーをグラフト重合する場合、そのイオン交換基の種類により親水性の強いモノマーと弱いモノマーとに分けられる。親水性の強いモノマーとしては、強酸性カチオン交換基や強塩基性アニオン交換基を有するモノマーがあり、前者の代表例としてスチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)、後者の代表例としてビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)がある。強塩基性アニオン交換基を有するモノマー例としてはVBTACの他にジエチルアミノメエチルメタクリレート(DEAEMA)やジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)などの3級アミンを4級アンモニウム化したものもある。
以下、4級アンモニウム基を有するモノマーとしてジメチルアミノプロピルアクリルアミド4級アンモニウム塩(DMAPAA‐Q)を放射線グラフト重合法により導入する例を挙げ説明する。VBTACは価格が非常に高いことや入手性に難があること、またDEAEMAなどエステル系のモノマーはエステル基の加水分解が起こりやすいため、耐薬品性や安定性に問題があるためである。
DMAPAA‐Qは図4に示すように、DMAPAAを4級アンモニウム化した化学構造を有している。4級アンモニウム基は正の電荷を有しており、親水性が非常に大きいため、水溶性モノマーである。そのため、イオン交換基の周りに、水分子を多く同伴しながら、反応に関与している。ナイロン繊維に対し、無機塩類を加えないで、DMAPAA−Q水溶液のグラフト重合を行ってもグラフト重合は難しい
しかしながら、無機塩類を加えることで、グラフト重合速度が向上する。その理由は以下のように考えられる。一般に疎水性の基材に対して、親水性のモノマーは接近しにくく、内部まで進入できない。ここで、モノマー水溶液に無機塩類を加えると、浸透圧によって4級アンモニウム基の周りから水分子が奪われ、疎水性基材に対してモノマーが接近しやすくなる。また、4級アンモニウム基は正の電荷を有し、互いに反発しあっているが、無機塩類が高濃度に存在すると、電荷の反発が相対的に弱まるため、グラフト済みの基材に対するモノマーの接近が容易になる。
ここで、添加する塩類として、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムなど無機塩類の他に、同様の働きを有する物質であれば、いかなるものも利用できる。添加する無機塩類の濃度をさらに上げると、相対的に電荷の反発が弱まることに加え、浸透圧の上昇により、水分子が奪われる。そのため、グラフト鎖が収縮し、接近したモノマーがグラフト重合に関与できなくなる。
ナイロン繊維に対するDMAPAA−Qの前照射放射線グラフト重合においては、塩化ナトリウム濃度が0.5Mから1.5Mの範囲が最適である。このようにして、他の補助モノマーを共存させなくとも、単独でグラフト重合が可能となる。グラフト鎖に高密度に4級アンモニウム基を導入することができ、水処理や空気の処理に適用できる強塩基性アニオン交換基として機能を発揮できる。
また、別の4級アンモニウム基を有するモノマーのVBTACはナイロン繊維に対して無機塩類を添加せずとも、グラフト重合が進行する。したがって、塩類を添加する場合には最適値が存在する。この最適値は、基材の種類、モノマーの種類と濃度、添加する塩類等によって決まる。
スルホン酸基を有するモノマーのスチレンスルホン酸などにおいても、強塩基性アニオン交換基を有するモノマーの場合と同様に、無機塩類を添加することによって、グラフト重合速度を上げることができる。
本発明の放射線グラフト重合法により、強酸及び強塩基性イオン交換基を有する親水性モノマーが水溶液系で単独グラフト重合できるようになった。これまで、疎水性のモノマーをグラフト重合し、反応後は有機溶媒洗浄を必要とし、さらに二次反応でトリメチルアミンやクロロスルホン酸など作業環境や使用環境等に影響の大きい薬品を使用するという煩雑さを解消し、コスト高を抑えることができる。
ポリエチレン繊維に対するビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドとN‐ビニル‐2‐ピロリドンの共グラフト重合を示す図 クロロメチルスチレンの化学構造 メタクリル酸グリシジルの化学構造 DMAPAA−Qの化学構造 ナイロン繊維へのDMAPAA−Qのグラフト重合を示す図
本発明によるDMAPAA−Qのナイロン繊維へのグラフト重合を図5に示す。基材としてはナイロン繊維を使用している。また、放射線としては電子線を採用し、照射した後にモノマーと接触させる前照射グラフト重合法を採用している。この図のように、水溶性モノマー1段の反応で強塩基性アニオン交換基を導入でき、グラフト率にもよるが2meq/g程度の中性塩分解容量が容易に得られる。グラフト重合後も水を利用して残留薬剤を除去できる。水溶性モノマーでない場合は、残留モノマーを除去するため、有機溶媒を使用しなければならず、廃液処理の問題が起こる。
放射線グラフト重合法とは、γ線や電子線等の電離性放射線を基材に照射し、基材表面あるいは基材内部に生成したラジカルを利用してモノマーを重合させ、基材からグラフト鎖を成長させる方法である。図5においても、ガンマ線を利用できる。
放射線グラフト重合法の特徴として、放射線の照射により、基材の表面のみならず基材の内部にまでラジカルを容易に発生させることができる点が挙げられる。よって、基材表面だけではなく基材内部にまでモノマーを重合させることがきるので、基材に導入されるグラフト鎖の数が多くなり、したがって基材に導入される官能基の数も多くなる。
グラフト(graft)とは「接ぎ木」という意味であり、グラフト鎖の一端が基材に固定されていて、他端が固定されていない自由端である状態を表す。グラフト鎖がこのような形態的特徴を有するので、グラフト鎖間にはサイズの小さなイオンから大きな分子まで容易に侵入することができる。また、イオン交換基の周囲に存在する水分子の数も多い。架橋構造を有するイオン交換樹脂と比較して、大きく異なる特徴である。
特にグラフト鎖中にイオン交換基のような固定電荷が存在すると、固定電荷同士が静電的に反発するため、グラフト鎖が延び、グラフト鎖同士も反発しあう。このため、グラフト鎖間に広いスペースが形成される。このように形成されたグラフト鎖間のスペースにおいては、強酸性又は強塩基性の親水性モノマーも荷電反発を受ける。しかし、グラフト重合溶液中に塩化ナトリウムのような無機塩類を加えることにより、グラフト鎖中およびモノマーの官能基の周囲に存在していた水分子が減少し、また相対的な荷電の反発も小さくなるため、グラフト鎖間へのモノマーの進入が容易となる。
さらに、無機塩類濃度を高くすると、グラフト鎖に保持されていた水分子が少なくなるため、グラフト鎖が収縮し、モノマーの進入が抑えられる。そのため、グラフト率が大きくならない。無機塩類濃度は基材とモノマーとの組合せによるため、最適濃度は実験的に確認することが重要である。
放射線グラフト重合法に使用する基材の形状は、市販の高分子基材の中から自由に選択することができるが、繊維状基材は表面積が大きいことや成型加工が容易であるため、放射性物質の除染のように、様々な汚染環境が想定される場合に使用方法を選択でき好適である。
本発明の放射性物質捕集材の基材として有用な繊維素材として、合成繊維の他、綿などのセルロース系繊維、動物性繊維、鉱物系繊維、若しくは再生繊維、またはそれらの混合繊維が挙げられる。合成繊維にはポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、フッ素系等が含まれる。
セルロース系繊維には、綿、麻等の天然セルロース系繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニア法レーヨン、ポリノジック等の再生セルロース繊維、テンセル等の精製セルロース繊維、アセテート、ジアセテート等の半合成繊維が含まれる。
これら繊維は親水性モノマーとの親和性が異なるため、各繊維毎にグラフト重合に使用するモノマーの種類や濃度及び添加する塩類の種類や濃度を決定する必要がある。その条件は、先にも述べたように実験的に確かめることができる。
本発明の利用分野は、放射線グラフト重合が最も好ましい。放射線グラフト重合法はいくつかの工程からなりたっている。先ず、基材への放射線照射、照射済み基材へのモノマーのグラフト重合、そしてイオン交換基に代表される官能基の導入のための官能基導入工程から成り立っている。本発明はイオン交換基を有する水溶性モノマーをグラフト重合することにより、官能基導入工程が不要となったことを特徴としている。次に、各工程を説明する。
まず第1工程では、グラフト重合すべき繊維物質に放射線を照射する。照射条件は、特に限定はないが、十分なグラフト効率を得るためには、脱酸素状態で、5〜200kGy、特に20〜100kGyが好ましい。酸素濃度は、必要とされる重合率でグラフト重合が達成される濃度であればよく、好ましくは、酸素濃度1%以下、より好ましくは、酸素濃度100ppm以下である。本発明の目的のために好適に用いることのできる放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外線などがあげられるが、これらに限定されるものではない。工業的には、γ線又は電子線が適している。
第2工程のグラフト重合は照射のタイミングにより、前照射グラフト重合法と同時照射グラフト重合法に分けられ、本発明はどちらの照射方法をも採用できる。前照射グラフト重合法はあらかじめ基材に放射線を照射した後、モノマーと接触させる重合方法であり、単独重合物の生成量が少ないため分離材料の製造方法にふさわしい。同時照射グラフト重合法は基材とモノマーとの共存下に放射線を照射するグラフト重合法である。本発明においては前照射グラフト重合法及び同時照射グラフト重合法のいずれも利用することが可能であるが、単独重合物(ホモポリマー)生成量の少ない前照射グラフト重合法がより好ましい。
モノマーとの接触が液体か又は気体かによって、それぞれ液相グラフト重合法と気相グラフト重合法に分けられるが、本発明においては、無機塩類の共存を特徴とするため基本的に液相グラフト重合に利用できる。また、液相及び気相グラフト重合法の中間に位置するグラフト重合法として含浸重合法がある。この方法は、予め所定のグラフト率が得られるようモノマー量を制御して基材に浸み込ませるグラフト重合法であるが、本発明はこのグラフト重合法にも利用できる。
(1)DMAPAA−Q導入繊維の製造
繊維径約40μmのナイロン繊維よりなる撚糸10gをポリエチレン袋に入れ、減圧排気―窒素ガス導入という窒素置換操作を3回繰り返した。この袋を、ガンマ線100kGyを照射した。照射後のナイロン繊維を取り出し、ガラスアンプルに入れ、予め窒素ガスでバブリング操作により脱酸素されたジメチルアミノプロピルアクリルアミドの4級アンモニウム塩(DMAPAA−Q、興人製)20%水溶液に浸漬した。この水溶液には、塩化ナトリウム5%となるように添加した。40℃で16時間グラフト重合反応を行って71%のグラフト率を得た。重量増加率から算出したイオン交換容量2.0meq/gに対し、滴定法による実測値が中性塩分解容量1.9meq/gの強塩基性アニオン交換繊維を得た。
実施例1において、塩化ナトリウム濃度を10%及び20%となるように添加した実験を行ったところ、グラフト率はそれぞれ18%及び6%であった。
比較例1
実施例1において、塩化ナトリウムを加えず、他は同様の条件でグラフト重合を行った。結果はグラフト率0%であり、まったくグラフト重合しなかった。
比較例2
実施例1において、共グラフト重合の実験を行った。新たにNN−ジメチルアクリルアミド(興人製、DMAA)を加え、DMAPAA−Q7%とDMAA3%のモノマー混合溶液を作成し、塩化ナトリウムを加えず、同様のグラフト重合を行った。16時間後のグラフト率が65%であり、十分なグラフト率が得られたが、中性塩分解容量は0.6meq/gの強塩基性アニオン交換繊維であった。グラフト率に比較して中性塩分解容量の値が低かった。
実施例1、2及び比較例3より、ナイロン基材に対してDMAPAA−Qを単独でグラフト重合する際、塩化ナトリウム濃度を無添加の場合は0%、5%添加で71%のグラフト率が得られた。さらに濃度を高く10%及び20%を添加した場合、グラフト率はそれぞれ18%及び6%と小さくなり、塩化ナトリウム添加濃度には極大値が存在することが分かった。また、比較例2では、実施例1と同様のグラフト率が得られているにもかかわらず、中性塩分解容量が1/3と小さかった。
実施例1においてDMAPAA−Qの代わりにスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー製、スピノマー)20%、塩化ナトリウム5%となるよう加え、グラフト重合を行ったところ、53%のグラフト率が得られた。この繊維は中性塩分解容量が1.58meq/g強酸性カチオン交換繊維であった。
比較例2
実施例3において塩化ナトリウムを加えず、他は同様の条件でグラフト重合を行った。結果はグラフト率0.2%であり、ほとんどグラフト重合しなかった。
放射線グラフト重合法は機能性材料の製造方法として極めて有効である。その中でも、イオン交換基、特に強酸性カチオン交換や強塩基性アニオン交換基のように親水性の大きな水溶性モノマーをグラフト重合した材料は利用価値が高い。これまでは、これらモノマーを親水性の基材に対して、単独グラフト重合適用できる例はあったが、それ以外の材料に対しては、ほとんどグラフト重合できなかった。本発明では、これまで単独グラフト重合が難しいとされてきた疎水性の基材に対して、単独のモノマー水溶液でグラフト重合が可能となった。特に、ポリオレフィン系高分子繊維、ナイロンなどアミド系繊維に対して、単独でグラフト重合ができるようになったため、性能向上とコスト低減が可能となった。したがって、利用価値が極めて大である。

Claims (4)

  1. 有機高分子基材に対し、親水性モノマーを放射線グラフト重合するに当たり、無機塩類を共存させてグラフト重合することを特徴とする親水性モノマーの単独グラフト重合方法
  2. 前記、親水性モノマーが強酸性カチオン交換基を有するモノマー、強塩基性アニオン交換基を有するモノマーから選択される請求項1記載の親水性モノマーの単独グラフト重合方法
  3. 前記有機高分子基材は、繊維、膜、多孔膜、中空糸、中空糸膜、スポンジ、粉末、粒子から選択されたものである請求項1、2記載の親水性モノマーの単独グラフト重合方法
  4. 前記有機高分子基材は、合成高分子として、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリアミド、アクリル系、ポリエステルおよびその誘導体から選択されたもの、天然高分子として、綿、麻等の天然セルロース系繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニア法レーヨン、ポリノジック等の再生セルロース繊維、テンセル等の精製セルロース繊維、アセテート、ジアセテート等半合成の繊維より選択されたものである請求項1、2、3記載の親水性モノマーの単独グラフト重合方法
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2022510909A (ja) * 2018-11-30 2022-01-28 インテグリス・インコーポレーテッド ペンダント親水性基を有する親水性フィルタ膜、ならびに関連する調製および使用の方法

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