JP4930808B2 - 導電性ペースト - Google Patents
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Description
たとえば、内部電極を形成するための導電性ペーストに使用する有機溶剤として、ブチラール樹脂との相溶性が比較的低い溶剤を使用することが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。具体的には、特許文献1ではジヒドロターピネオールを用いた導電性ペーストが、特許文献2ではジヒドロターピニルアセテートを用いた導電性ペーストが、特許文献3ではイソボニルプロピネート、イソボニルブチレート、イソボニルイソブチレートなどのボルナン骨格含有カルボン酸付加物を含有する導電性ペーストがそれぞれ提案されている。
一般に、バインダーと溶剤のSP値の相違が大きいほど、高粘度化したり、あるいは溶解しない。また、有機ビヒクル中の有機バインダーとして、一般的に用いられているエチルセルロースはターピネオールよりアセテート系溶剤に対して溶解性が良くなく、そのビヒクルを用いた導電性ペーストは経時による粘度変化が生じやすい。すなわち、このようにペースト粘度が変化すると、印刷性の変動が生じるため、印刷時に適正な膜厚や形状が得られなくなり、品質が安定した電極等を製造できなくなる問題点があった。
また特許文献5では、使用するニッケル粉末の硫黄含有量を100ppm未満とするものであり、この硫黄は、ペースト粘度の経時変化を抑制する働きを持つと同時にニッケルの触媒活性を低下させる働きを有していることから、含まれる硫黄量が少なくなると脱バインダー処理時にバインダー樹脂の部分的な熱分解による急激なガスの発生を引き起こし、品質の低下を招いてしまう。
しかし、特許文献6に開示された導電性ペーストは、シートアタックは起こしにくいが粘度の経時変化が大きく、長期間にわたって安定した導電膜が得られにくい難点がある。
(1)有機ビヒクルを構成する樹脂が、疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体で、
(2)有機溶剤が、ジヒドロターピニルアセテート、イソボニルアセテート、イソボニルプロピネート、イソボニルブチレート、イソボニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種以上からなり、さらに疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体におけるエトキシル基含有率が56%〜63%の範囲であることを特徴とするものである。
(1)有機ビヒクルを構成する樹脂が、疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体で、
(2)有機溶剤が、
(A)ジヒドロターピニルアセテート、イソボニルアセテート、イソボニルプロピネート、イソボニルブチレート、イソボニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種の主溶剤と、
(B)エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、又はジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選ばれる少なくとも1種以上の副溶剤を、
混合した混合溶剤からなり、さらに疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体におけるエトキシル基含有率が56%〜63%の範囲であることを特徴とするものである。
以下、各構成要素について詳しく説明する。
導電性金属粉末としては、Ni、Cu、Ag、Pd、Au、Pt、あるいはこれらの合金からなる金属粉末を適宜選択して使用する。なかでも導電性、耐食性、価格等を考慮するとNi粉末が最適である。なお、Ni粉末を用いる場合には、脱バインダー処理時のバインダー樹脂の部分的な熱分解による急激なガス発生を抑制するために、数百ppm程度のS(硫黄)を含むNi粉末が好ましい。
その導電性金属粉末の粒径は、0.05〜1.0μmの分散性が良好な微粉末が適当で、導電性ペーストにおける導電性金属粉末の含有量は、40〜60mass%が好ましい。
導電性ペーストのセラミック粉末としては、使用する積層セラミック部品により適宜選択できるが、強誘電体のペロブスカイト型酸化物を用いると良く、その中でも特にチタン酸バリウム(BaTiO3、以下BTと称す場合がある)が望ましい。また、このチタン酸バリウムを主成分に酸化物(例えばMn、Cr、Si、Ca、Ba、Mg、V、W、Ta、Nbおよび1種類以上の希土類元素の酸化物)を副成分として含むセラミック粉末、チタン酸バリウム(BaTiO3)のBa原子やTi原子を他原子、Sn、Pb、Zrなどで置換したようなペロブスカイト型酸化物強誘電体のセラミック粉末でも良い。さらには積層セラミックデバイスのグリーンシートを形成するセラミック粉末であるZnO、フェライト、PZT、BaO、Al2O3、Bi2O3、R(希土類元素)2O3、TiO2、Nd2O3などの酸化物も選択できる。
そのセラミック粉末の粒径は、0.01〜0.5μmの範囲が望ましい。
有機ビヒクルは、バインダーとなる樹脂(以下、バインダー樹脂と称す)を有機溶剤に溶解させたものである。
3−1.バインダー樹脂
導電性ペースト用のバインダー樹脂に使用されているエチルヒドロキシエチルセルロース(以下、EHECと略記する)は、3つのヒドロキシ基の水素がエチル基(−CH2CH3)、ヒドロキシエチル基(−(CH2CH2O−)m−R’)に置換されるが、エチル基よりヒドロキシエチル基が多く存在するため親水性となる。そのため、EHECは水系やアルコール系溶剤には溶解するが、有機溶剤系には一部しか溶解しない。
例えば、特許文献6では、EHECと脂肪族系アルコールを使用した導電性ペーストが報告されているが、EHECはジヒドロターピニルアセテートやイソボニルプロピネート等の有機溶剤には溶解しないため、本発明では使用できない。
ところで、疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体は、有機溶剤に溶けることから、耐シートアタック性を有し、かつ経時粘度変化率が少ない有機溶剤の選択が重要である。
このエチル基(−CH2CH3)の置換割合は、ヒドロキシエチル基((−CH2CH2O−)m−R’)の水素(H)が、エチル基(−CH2CH3)に置換されたり、(−CH2CH2O−)mの長さmを調整することで変化する。
本発明で用いられるバインダー樹脂のa-EHECは、ヒドロキシエチル基よりエチル基の置換割合が多く存在するもので、エチル基が多いために疎水性となる。
図1は、有機溶剤に不溶解なa−EHECのエチル基ピーク高さ、およびヒドロキシエチル基ピーク高さを示す図で、1点鎖線で示すようにヒドロキシエチル基ピーク高さは、破線で示したエチル基ピーク高さよりも高くなっている。すなわち、「ヒドロキシエチル基ピーク高さ」が「エチル基ピーク高さ」より大きくなる場合には、ヒドロキシエチル基の割合が多いと判定する。
このように、a−EHECの疎水性の判定は、1H-NMR法を用いてヒドロキシエチル基とエチル基の含有割合が既知のa−EHECのピークを測定しておけば、それと比較することにより推定することができる。
なお、a−EHECのエトキシル基含有率、すなわちエトキシエチル基とエトキシル基の含有率の合計が56%未満である場合、(−CH2CH2O−)mの長さとエトキシル基のバランスが低下し、有機溶剤との相溶性が悪くなるため、高粘度化したり、あるいは溶解しなくなる。
したがって、溶剤系に溶解する疎水性a−EHECとしては、エトキシル基含有率、すなわちエトキシエチル基とエトキシル基の含有率の合計が56%以上、63%以下のa−EHECを選択する必要がある。
ビヒクルを調製するためのバインダー樹脂を溶解させる有機溶剤には、ビヒクルの馴染みをよくするために、導電性ペーストを構成する有機溶剤と同じものを用いるのが好ましい。そこで本発明では、ジヒドロターピニルアセテートやイソボニルプロピネート等を用いている。
これらの有機溶剤は、セラミックグリーンシートに対してシートアタックを生じないので、例えばセラミックグリーンシートの厚みが5μm以下と薄い場合でも、セラミックグリーンシート中のブチラールが溶解して、セラミックグリーンシートを膨潤・溶解させることを抑制することができる。
導電性ペーストにおける有機溶剤は、導電性金属粉末、セラミック粉末、および有機ビヒクルを分散せしめ、その粘度を調製し、所定のパターンで印刷できるようにするものである。
本発明の有機溶剤は、有機ビヒクルのバインダー樹脂と組み合わせてシートアタックを生じさせることがなく、バインダー樹脂を良く溶解させ、かつ経時粘度変化を起こさない溶剤が用いられる。
この主溶剤と副溶剤の混合溶剤を用いる場合は、導電性ペーストの粘度特性の調製がより容易となり、乾燥スピードが速くなる利点を有するものである。
(1)導電性ペーストの粘度
導電性ペーストの粘度は、ブルックフィールド社製B型粘度計を用いて10rpm(ずり速度=4sec−1)の条件で測定した。
導電性ペーストの経時粘度変化率は、導電性ペースト製造後の粘度をそれぞれ測定し、常温(25℃)で30日間静置した後、再度それぞれ測定して粘度変化量を製造後の粘度で割り、百分率(%)で表している。なお、導電性ペーストの経時粘度変化率は少ないほど好ましい。
本発明の導電性ペーストは、誘電体セラミックグリーンシート上に所定のパターンで印刷し、乾燥して溶剤を飛ばして乾燥膜を形成する。その後、酸化性雰囲気又は不活性雰囲気中にて500℃以下で脱バインダーを行い、酸化しないように還元雰囲気中にて1300℃程度で加熱焼成を行って内部電極とする。
この時、得られた乾燥膜の密度が高ければ緻密な導電膜が得られ、静電容量が設計値に近くなる。導電性金属粉末やセラミック粉末の凝集や、バインダー樹脂の安定性が悪ければ、乾燥膜密度は低下する。したがって、導電性ペーストを印刷して乾燥させた後の乾燥膜密度を測定することにより、導電膜の特性を推定することが可能となる。
(4−1)本発明の有機ビヒクルの作製
本発明の有機ビヒクルは、バインダー樹脂成分としてエトキシル基含有率が57.2%、60.35%、62.40%と異なる3種類のa−EHECを18mass%、有機溶剤としてイソボニルプロピネートまたはジヒドロターピニルアセテートのいずれかを82mass%配合し、60℃に加熱して実施例に用いた有機ビヒクルを作製した。
比較のため、樹脂成分として従来から使用されているECを18mass%、有機溶剤としてターピネオール、イソボニルプロピネートまたはジヒドロターピニルアセテートのいずれかを82mass%配合し、60℃に加熱して比較例に用いた有機ビヒクルを作製した。
なお、使用した樹脂溶液粘度は、トルエン/エタノール=80/20(重量比)の混合溶液にバインダー樹脂を溶解した時の粘度(単位:Pa・s)を示している。また、ビヒクル粘度の測定は、全てブルックフィールド社製B型粘度計を用いて10rpm(ずり速度=4sec−1 )の条件で測定した値である。
さらに、エトキシル基含有率の異なるa−EHEC(a−EHEC1〜3)を、イソボニルプロピネートに溶解した本発明ビヒクルNo.1、2、4のビヒクル粘度の違いからは、エトキシル基含有率により、相溶性が変化することもわかる。
すなわち、イソボニルプロピネートに対して、ECは相溶性が低く、一方、a−EHECは相溶性が高いと言える。
一方、本発明ビヒクルは、ビヒクル中に含まれる樹脂と有機溶剤の相溶性が良好であるため、ビヒクルが物理的に経時変化を起こし難く、その結果優れたペースト安定性を保つことができる。
以下、実施例を用いて本発明の導電性ペーストを詳細する。
導電性金属粉末に粒径0.4μmのニッケル粉末(Ni)を47.0mass%、セラミック粉末として粒径0.1μmのチタン酸バリウム(BT)を4.7mass%、ビヒクルとして表2のビヒクルNo.13を13.06 mass%、および0.3mass%の分散剤を、34.94mass%の有機溶剤ジヒドロターピニルアセテートに溶解して導電性ペーストを作製した。
導電性金属粉末に粒径0.2μmのニッケル粉末(Ni)を47.0mass%、セラミック粉末として粒径0.04μmのチタン酸バリウム(BT)を4.7mass%、ビヒクルとして表2のビヒクルNo.12を13.0 6mas%、および0.4mass%の分散剤を、27.8mass%の主溶剤イソボニルプロピネートと、6.97mass%の副溶剤エチレングリコールモノブチルエーテルからなる混合有機溶剤中に溶解して導電性ペーストを作製した。
表3に実施例1、2、3および比較例1、2の成分組成を示す。
導電性ペーストの粘度変化率は、導電性ペースト製造後の粘度をそれぞれ測定し、常温(25℃)で30日間まで静置した後、再度それぞれ測定して粘度変化量を製造後の粘度で割り、百分率で求めた値である。
導電性ペーストの粘度は、ブルックフィールド社製B型粘度計を用いて10rpm(ずり速度=4sec−1 )の条件で測定した。
乾燥膜密度の測定方法は、導電性ペーストをPETフィルム上に5×10cmの面積で膜厚30μmとなるように印刷後、120℃で40分間空気中で乾燥させた。その乾燥した導電性ペーストの乾燥膜を1×1cmに切断し、その厚みと質量を測定して、乾燥膜密度を算出した。
なお、本発明では乾燥膜密度の測定は、PETフィルム上に導電性ペーストを印刷して行ったが、導電性ペーストをセラミック誘電体層グリーンシートに印刷した場合でも同様の特性が得られる。
すなわち、本発明の導電性ペーストに用いられた有機溶剤のジヒドロターピニルアセテートやイソボニルプロピネートのようなアセテート系溶剤と、エチルセルロース(EC)の相溶性(SP値)の差が大きいため、エチルセルロース(EC)をバインダー樹脂として用いた場合の有機溶剤に対する溶解性が低く、得られた導電性ペーストは経時による粘度変化が大きいことが比較例から伺える。一方、疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体(a−EHEC)とのSP値の差は小さいため、有機溶剤に対する溶解性が高く、得られた導電性ペーストは経時による粘度変化が少ないと言える。
また、有機溶剤に対するバインダー樹脂の相溶性の良し悪しが乾燥膜密度と関係する理由はわからないが、本発明で使用するアセテート系溶剤に溶解する樹脂が、エトキシル基含有率が56%以上、63%以下の疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体(a−EHEC)であれば、エチルセルロース(EC)を使用する場合より乾燥膜密度が高くなり、焼成時に緻密な電極膜の形成が期待できるものである。
Claims (7)
- 導電性金属粉末、セラミック粉末、有機ビヒクル、分散剤、有機溶剤等を含む導電性ペーストであって、
(1)有機ビヒクルを構成する樹脂が、疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体で、
(2)有機溶剤が、ジヒドロターピニルアセテート、イソボニルアセテート、イソボニルプロピネート、イソボニルブチレート、イソボニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種以上からなることを特徴とする導電性ペースト。 - 導電性金属粉末、セラミック粉末、有機ビヒクル、分散剤、有機溶剤等を含む導電性ペーストであって、
(1)有機ビヒクルを構成する樹脂が、疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体で、
(2)有機溶剤が、
(A)ジヒドロターピニルアセテート、イソボニルアセテート、イソボニルプロピネート、イソボニルブチレート、イソボニルイソブチレートから選ばれる少なくとも1種の主溶剤と、
(B)エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、又はジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選ばれる少なくとも1種以上の副溶剤を、
混合した混合溶剤からなることを特徴とする導電性ペースト。 - 前記疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体におけるエトキシル基含有率が56%〜63%の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ペースト。
- 前記導電性金属粉末が、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Cu、およびこれらの合金から選ばれる1種の金属粉末であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
- 前記セラミック粉末が、ペロブスカイト型酸化物であるチタン酸バリウム(BaTiO3)である請求項1から4のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
- 前記セラミック粉末が、ペロブスカイト型酸化物強誘電体である請求項1から4のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
- 前記セラミック粉末が、積層セラミックデバイスのグリーンシートを構成する酸化物である請求項1から4のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
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