JP4711178B2 - 積層電子部品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、導体ペースト、特に積層コンデンサ、積層インダクタ、積層アクチュエータ等の積層セラミック電子部品の電極を形成するのに好適な導体ペーストと、これを用いた積層セラミック電子部品に関する。特に、導体ペーストをセラミックグリーンシート上に直接印刷して積層電子部品の内部電極や端子電極を形成する積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
積層セラミック電子部品(以下「積層電子部品」ということもある。)は、一般に次のようにして製造される。誘電体、磁性体、圧電体等のセラミック原料粉末を樹脂バインダ中に分散させ、シート化してなるセラミックグリーンシート(以下「グリーンシート」ということもある。)を準備する。このセラミックグリーンシート上に、貴金属やニッケル、銅等の導電性粉末を主成分とし、所望によりセラミック粉末等を含む無機粉末を、樹脂バインダおよび有機溶剤を含むビヒクルに分散させてなる内部電極用導体ペーストを、所定のパターンで印刷し、乾燥して溶剤を除去し、内部電極乾燥膜を形成する。得られた内部電極乾燥膜を有するセラミックグリーンシートを複数枚積み重ね、圧着してセラミックグリーンシートと内部電極ペースト層とを交互に積層した未焼成の積層体を得る。この積層体を、所定の形状に切断した後、高温で焼成することにより、セラミック層の焼結と内部電極層の形成を同時に行い、セラミック素体を得る。この後、素体の両端面に端子電極用導体ペーストを印刷法や浸漬法等で塗布し、焼き付けて、積層電子部品を得る。端子電極ペーストは、未焼成の積層体と同時に焼成される場合もある。
近年、積層電子部品の小型化、高積層化の要求が強く、特に導電性粉末としてニッケルを用いた積層セラミックコンデンサにおいては、セラミック層、内部電極層ともに薄層化が急速に進んでいる。このためより厚みの薄いセラミックグリーンシートが使用されるようになってきた。
一般的に、セラミックグリーンシートのバインダ成分には、ブチラール樹脂やアクリル樹脂等の樹脂が使用される。一方、導体ペーストのバインダ成分には、主としてエチルセルロース等のセルロース系樹脂が使用される。このような材料構成において、導体ペーストに通常使用されるアルコールやエステル、ケトン等の極性の高い有機溶剤が印刷後にグリーンシートのバインダを溶解する「シートアタック」と呼ばれる現象により、セラミック層の変形や絶縁性低下等、積層電子部品の特性に深刻な不具合を引き起こすことが問題となっている。特に、近年セラミックグリーンシートの薄層化が進み、シート厚みが1μmより薄いものも使用されるような状況下では、この問題はより一層深刻である。
従来、このような問題を回避するために、導体ペーストの溶剤成分として極性の高い有機溶剤に、n−ノナン、n−デカン等の直鎖脂肪族炭化水素等の、グリーンシート中の樹脂を溶解しにくい非極性の有機溶剤を組み合わせた混合溶剤を使用することにより、極性溶剤の配合量を減らすことが知られている(例えば特許文献1参照。)。しかしながら、シートアタックを抑制するために前記非極性溶剤の比率を高めると、導体ペースト中の樹脂の溶解性も低下し、ペーストの粘度が低下する。ペースト粘度を適正な値に保つためには、過剰の樹脂を配合する必要が生じ、ペースト塗布層の厚みが増して積層体が変形する等、特に高積層化する際障害となるほか、ペースト特性の長期安定性を損ない、ペースト設計上の問題が発生する。
ペーストの塗布適性や安定性を損なわずにシートアタックを防止するため、導体ペースト中に、上記脂肪族炭化水素系溶剤に加えて、グリーンシート中の樹脂を溶解しない芳香族炭化水素系溶剤を加えることが提案されている(特許文献2参照。)。しかし、芳香族炭化水素系溶剤は臭気や毒性が強いので、作業環境や安全性の面から、使用を避けることが望まれている。
また、特許文献3には、導体ペーストに、エチルヒドロキシエチルセルロース5〜20重量%に、脂肪族アルコール10〜30重量%と、グリーンシートを侵さないミネラルオイル(ミネラルスピリット)50〜85重量%を配合したビヒクルを使用することが記載されている。しかし、ミネラルスピリットには、通常芳香族炭化水素が30重量%近く含まれており、環境上及び安全上の問題がある。また、ミネラルスピリットは一般に沸点、引火点が低いため、輸送および保管に危険が伴い、負荷が大きいので、極めて大きな問題になっている。比較的沸点の高いミネラルスピリットを用いる場合、導体ペーストの樹脂はより溶解しにくくなるので、極性溶剤の比率を低下させることができない。また、エチルヒドロキシエチルセルロースは極性溶剤に対する炭化水素系の非極性溶剤の比率が高くても比較的溶解しやすいが、入手が容易で一般に導体ペーストに使用されるエチルセルロース、特に分子中のエトキシル基の含有率が48.0〜49.5%の汎用のエチルセルロースは、非極性溶剤には極めて溶解しにくいので、ミネラルスピリットの比率を増やし極性溶剤の比率を例えば30重量%以下に低下させることが難しい。このため、通常のエチルセルロースを樹脂バインダとして用いた場合、効果的にシートアタックを抑制できない。
更に、セラミックグリーンシート上に直接導体ペーストを印刷せず、転写法等により内部電極を形成させる方法も知られている。この方法は、導体ペーストをキャリアフィルム等に印刷して乾燥させ、溶剤を除去した後セラミックグリーンシートに転写する方法であり、この方法ではシートアタックを生じないが、技術的に難しい。
特開平7−240340号公報 特開2005−26217号公報 特開平7−326534号公報
本発明の目的は、セラミックグリーンシート上に直接印刷した場合にも、前述のようなシートアタックの問題がない導体ペーストを提供することにある。また、芳香族炭化水素系溶剤の含有を極力抑え、かつペースト特性の劣化や安定性の低下がなく、シートアタック性の小さい導体ペーストを提供すること、このペーストを用いて電気的特性が優れ、信頼性の高い積層セラミック電子部品を得ることにある。更に、本発明は、シート厚が5μm以下の薄いグリーンシートに対しても、シートアタックを起こさず、従って信頼性の高い高積層の積層セラミック電子部品を得ることを目的とする。
上記の目的に鑑み、本発明者者らが鋭意検討した結果、積層電子部品用導体ペーストの溶剤として、ナフテン系炭化水素を主成分とする炭化水素系溶剤を、炭化水素系溶剤以外の溶剤と特定割合で含む溶剤を使用することにより、上記本発明の課題が解決されることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、以下より構成されるものである。
(1) シート厚が5μm以下のセラミックグリーンシートと、内部電極ペースト層とを交互に積層して未焼成の積層体を形成する工程、および前記未焼成の積層体を高温で焼成する工程を含む積層電子部品の製造方法において、前記内部電極ペースト層を、導電性粉末、樹脂および有機溶剤を含み、前記樹脂の主成分がエチルセルロースであって、前記有機溶剤が、50〜95重量%の炭化水素系溶剤と、5〜50重量%の炭化水素系溶剤以外の溶剤とを含み、かつ前記炭化水素系溶剤の全量に対するナフテン系炭化水素の比率が30重量%以上であり、芳香族炭化水素の含有量が1重量%以下である導体ペーストを用いて形成してなることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
(2) 前記有機溶剤が、60〜90重量%の炭化水素系溶剤と、10〜40重量%の炭化水素系溶剤以外の溶剤とを含むことを特徴とする前記(1)に記載の積層電子部品の製造方法
(3) 前記炭化水素系溶剤以外の溶剤が、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコール系溶剤から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の積層電子部品の製造方法
本発明において、主成分がエチルセルロースである前記樹脂成分の有機溶剤として、ナフテン系炭化水素を30重量%以上含む炭化水素系溶剤50〜95重量%と、炭化水素系溶剤以外の溶剤5〜50重量%とを含み、かつ芳香族炭化水素の含有量が極めて少ない混合溶剤を使用することにより、シートアタックを引き起こさず、かつ適正な樹脂量で所望の粘性が確保でき、また長期安定性に優れたペーストを得ることができる。また、作業環境上の問題もほとんどなく、輸送、保管中の危険性も少ない。
また、本発明によれば、シートアタック性の強い極性溶剤の比率を低減することができる。特に、非極性溶剤に溶けにくい汎用のエチルセルロースを用いた場合でも、ペーストの粘度特性、印刷性、安定性を損なわずに、極性溶剤の比率を30重量%以下に減らすこともでき、これによりシートアタックを有効に防止することができる。
また、この導体ペーストを内部電極の形成に用いることにより、シート厚が5μm以下の薄いものであってもセラミックグリーンシートを損傷することなく、優れた特性を有する積層電子部品を得ることができ、特にセラミック層、内部電極層の厚さが極めて薄い高積層品においても、信頼性の高い積層電子部品を得ることができる。
(導電性粉末)
本発明において用いられる導電性粉末としては特に制限はなく、例えばニッケル、銅、コバルト、金、銀、パラジウム、白金等の金属粉末や、それらの合金粉末が挙げられる。導電性の金属酸化物や、ガラス、セラミック等の無機粉末に金属を被覆した複合粉末を用いることもできる。また、前記金属粉末や、前記合金粉末の表面に薄い酸化膜を有するものや、過焼結抑制の目的でガラス質や各種酸化物を表面に被着させたものを用いてもよい。これらの導電性粉末は、2種以上混合して用いてもよい。また必要に応じて、有機金属化合物や界面活性剤、脂肪酸類等で表面処理して用いてもよい。
導電性粉末の粒径には特に制限はなく、通常内部電極用導体ペーストに用いられるような、平均粒径が3μm以下程度のものが好ましく使用される。緻密で平滑性が高く、薄い内部電極層を形成するためには、平均粒径が0.05〜1.0μm程度の分散性が良好な微粉末を用いることが好ましい。特に、平均粒径が0.5μm以下の極めて微細なニッケル等の導電性粉末を用いた、高積層の積層コンデンサの内部電極の形成に用いた場合、本発明は顕著な効果を奏する。
(樹脂)
本発明の導体ペーストの樹脂成分は、その主成分をエチルセルロースとするものであるが、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、更にはこれらセルロース系樹脂に、必要に応じてアクリル樹脂、メタクリル樹脂、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ロジン等を混合使用しても良い。特に、主成分として非極性溶剤に対する溶解性の低いエチルセルロース、とりわけエトキシル基の含有率が48.0〜49.5%の汎用のエチルセルロースや、エトキシル基の含有率がこれより低いエチルセルロースを用いる場合にも、ペースト特性を損なうことなく炭化水素系溶剤の配合量を多くすることができるので、シートアタックを効果的に抑制することが可能である。樹脂の配合量は、特に限定されないが、通常導電性粉末100重量部に対して1〜15重量部程度である。
(有機溶剤)
ナフテン系炭化水素としては、単環または多環シクロパラフィン類のいずれも使用可能であり、これらは例えばアルキル基を有するアルキルシクロパラフィン類であってもよい。好ましい具体例として、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロノナン等の単環のシクロパラフィン類、デカリン等の多環シクロパラフィン類、またメチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1−メチル−4−イソプロピルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、メチルデカリン等のアルキルシクロパラフィン類等が使用される。これらは、単独で、または2種類以上組み合わせて使用しても差し支えない。また、これらナフテン系炭化水素と鎖式構造のパラフィン系炭化水素を含む市販の混合溶剤を使用しても良い。このような混合溶剤としては、例えば、新日本石油製 テクリーンN20、N22、ゴードー溶剤(株)製 NEWナフテゾール160、200、220、エクソンモービル社製 エクソールD40、D60、D80、D110、D130、シェルケミカルズ社製 シェルソールD60、D70、DSC等が挙げられる。特に導体ペーストの乾燥性や、安全性等を考慮すると、沸点が120〜250℃のものが好適であり、170〜220℃のものがさらに好ましい。
これらのナフテン系炭化水素は、セラミックグリーンシートに用いられるブチラール樹脂、アクリル樹脂等の樹脂を溶解しにくいので、シートアタックを引き起こさない。しかも他の脂肪族炭化水素に比べて、導体ペーストに用いられるエチルセルロース等の樹脂をよく溶解するため、全溶剤中の非炭化水素系の極性溶剤の比率を低下させることができ、これによってもシートアタック性が低下する。また芳香族炭化水素に比べて臭気や毒性が少ないので、環境上、安全性の問題が少ない。
有機溶剤として、前記ナフテン系炭化水素に、ナフテン系以外の炭化水素系溶剤を混合使用してもよい。ナフテン系以外の炭化水素系溶剤としては、限定されず、パラフィン系、オレフィン系等の直鎖脂肪族炭化水素または側鎖を有する鎖状脂肪族炭化水素等の石油系炭化水素が好ましく使用される。例えば、ヘプタン、ノナン、デカン、ドデカン、ウンデカン、トリデカン、ヘプタメチルノナン等のパラフィン類、また、前記市販の混合溶剤に含まれるパラフィン系炭化水素等が例示される。本発明においては、芳香族炭化水素系溶剤は極力少なくすることが望ましいが、全溶剤中1重量%以下であれば、含まれていても差し支えない。
全炭化水素系溶剤中に占めるナフテン系炭化水素の比率は30重量%以上とする必要がある。30重量%より低いと、導体ペースト中の樹脂の溶解性が悪くなり、塗布性、安定性の優れたペーストが得られない。より優れたペースト特性を得るためには、ナフテン系炭化水素を40重量%以上とすることが好ましい。
炭化水素系溶剤以外の溶剤成分としては、通常導体ペーストに使用されるものであって、ペーストの樹脂成分を溶解しうるものであれば特に制限はない。アルコール系、エーテル系、エステル系、ケトン系、グリコール系溶剤等の極性を有する溶剤が好適である。例えば、エタノール、ブタノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール等のアルコール類、ブチルカルビトール、ブチルセロソルブ等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオールアセテート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等のグリコール類が例示される。また、必要に応じて少量の水を混合使用してもよい。
全有機溶剤中、炭化水素系溶剤以外の溶剤の比率を10〜40重量%の範囲とすることにより、シートアタック抑制効果が極めて高く、かつペーストの塗布性、安定性が優れた導体ペーストを得ることができるので、好ましい。ただし、溶剤の種類によっては、これより高い比率で配合しても優れた効果が得られるものがある。例えば比較的シートアタック性が小さいことが知られているジヒドロテルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオールアセテート等を用いた場合は、比較的多量に配合することができる。しかし、50重量%を超えるとシートアタックを抑制できなくなり、また5重量%より少ないと、導体ペースト中の樹脂の溶解性が低下し、印刷に適した粘度、安定性が得られなくなるので、5〜50重量%の範囲とする必要がある。
導体ペースト中の有機溶剤の合計量は、通常使用される量であれば制限はなく、導電性粉末の性状や樹脂の種類、塗布法、塗布膜厚等に応じて適宜配合される。通常は導電性粉末100重量部に対して40〜150重量部程度である。
(その他の添加成分)
本発明の導体ペーストには、前記成分の他に、通常配合されることのある成分、即ち、セラミックグリーンシートに含有されるセラミックと同一または組成が近似した成分を含むセラミックや、ガラス、アルミナ、シリカ、酸化銅、酸化マンガン、酸化チタン等の金属酸化物、モンモリロナイト等の無機粉末や、金属有機化合物、可塑剤、分散剤、界面活性剤等を、目的に応じて適宜配合することができる。
(導体ペーストの製造)
本発明の導体ペーストは、常法に従って、導電性粉末を、他の添加成分と共に、樹脂および溶剤を含むビヒクル中に均一に分散させることにより製造される。
本発明の導体ペーストは、特に、積層コンデンサ、積層インダクタ、積層アクチュエータ等の、セラミックグリーンシートに直接印刷して使用する導体ペーストとして、積層セラミック電子部品の内部電極や端子電極を形成するのに適している。
(積層電子部品の製造)
積層電子部品は、内部電極形成に前記導体ペーストを用いて製造される。一例として積層セラミックコンデンサの製造方法を述べる。
まず、誘電体セラミック原料粉末を樹脂バインダ中に分散させ、ドクターブレード法等でシート成形し、シート厚が5μm以下のセラミックグリーンシートを作製する。誘電体セラミック原料粉末としては、通常チタン酸バリウム系、ジルコン酸ストロンチウム系、ジルコン酸カルシウムストロンチウム系、チタン酸鉛系等のペロブスカイト型酸化物、または、これらを構成する金属元素の一部を他の金属元素で置換したものを主成分とする粉末が使用される。必要に応じて、これらの原料粉末に、コンデンサ特性を調整するための各種添加剤が配合される。樹脂バインダとしては、ブチラール樹脂やアクリル樹脂等を主成分とする樹脂が使用される。
得られたセラミックグリーンシート上に、本発明の導体ペーストを、スクリーン印刷等の通常の方法で印刷し、乾燥して溶剤を除去し、所定のパターンの内部電極ペースト乾燥膜を形成する。内部電極ペースト乾燥膜が形成されたセラミックグリーンシートを所定の枚数だけ積み重ね、加圧積層して、未焼成の積層体を作製する。この積層体を所定の形状に切断した後、不活性ガス雰囲気中または若干の酸素を含む不活性ガス雰囲気中で250〜350℃程度の温度で脱バインダを行ってビヒクル成分を分解、飛散させた後、非酸化性雰囲気中1100〜1350℃程度の高温で焼成し、誘電体層と電極層を同時に焼結し、必要によりさらに再酸化処理を行って、積層セラミックコンデンサ素体を得る。この後、素体の両端面に端子電極が焼付け形成される。なお端子電極は、前記未焼成の積層体を切断したチップの両端面に本発明の導体ペーストを塗布し、その後、積層体と同時に焼成することによって形成してもよい。
次に、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
導電性粉末としてSEM観察により算出された平均粒径が0.2μm、比表面積が3.5m/gのニッケル粉末100重量部、樹脂としてエトキシル基含有率48.0−49.5%のエチルセルロース5重量部、溶剤としてナフテン系炭化水素約60重量%、パラフィン系炭化水素約40重量%、芳香族炭化水素1重量%以下からなる沸点範囲201〜217℃の混合炭化水素溶剤A(ゴードー溶剤(株)製 NEWナフテゾール200)65重量部およびiso−オクタノール35重量部を配合し、3本ロールミルを使って混練して、導体ペーストを作製した。
得られた導体ペーストを、樹脂バインダとしてポリビニルブチラール樹脂を用いた厚さ3μmのチタン酸バリウム系セラミックグリーンシート上に、所定の内部電極形状に印刷し、90℃で5分間乾燥して導体ペースト乾燥膜を形成した。この導体ペースト乾燥膜を有するグリーンシートを、誘電体有効層が30層になるように積み重ね、圧着、成形した後、所定の形状に切断し、未焼成の積層コンデンサチップを得た。この未焼成のチップを、窒素ガス雰囲気中、温度300℃、12時間の条件で脱バインダを行った後、引き続き水素を含む窒素ガスからなる弱還元性雰囲気中、ピーク温度1250℃で2時間本焼成を行い、次いで弱酸化性雰囲気中1000℃で1時間再酸化処理を行い、積層セラミックコンデンサ素体を作製した。次いでこの素体に端子電極を焼き付けて、積層セラミックコンデンサを得た。
この過程において、以下の評価を行なった。
まず、得られた導体ペーストは、ずり速度4s−1での粘度を測定した。また、導体ペーストを容器に密閉し50℃の恒温槽に1週間保持して、ニッケル粉末の分離を調査した。シートアタックは、導体ペーストを印刷、乾燥した後のグリーンシートを光学顕微鏡で観察して、ゆがみや破れ等、ダメージの程度を評価した。
また、得られた積層セラミックコンデンサ100個について、容量と絶縁抵抗を測定した。更に、任意に選んだコンデンサ5個について、内部電極に直交する面で切断し、断面を観察して電極の平滑度を調査した。
これらの結果を表1に示す。評価基準は次のとおりである。
ニッケル粉末の分離:◎目視で確認されず、○10%程度の分離、×30%以上の分離
シートアタック:◎ほぼ変化なし、○やや膨潤、×ゆがみや破れが発生
実施例2〜7
有機溶剤の組成を表1に示すとおりとする以外は実施例1と同様にして、導体ペーストを作製した。実施例1と同様に積層セラミックコンデンサを製造し、同様の諸特性を調べた。結果を表1に併せて示す。なお、混合炭化水素溶剤Bは、ナフテン系炭化水素約47重量%、パラフィン系炭化水素約53重量%、芳香族炭化水素約0.1重量%からなる沸点範囲210〜238℃の混合溶剤(エクソンモービル社製 エクソールD80)である。
比較例1
有機溶剤として混合炭化水素溶剤A15重量部、n−デカン50重量部、iso−オクタノール35重量部を使用する以外は、実施例1と同様にして、導体ペーストを作製した。実施例1と同様に積層セラミックコンデンサを製造し、同様の諸特性を調べた。結果を表1に併せて示す。
比較例2
エチルセルロースの配合量を10重量部とする以外は比較例1と同様にして、導体ペーストを作製した。比較例1と同様に積層セラミックコンデンサを製造し、同様の諸特性を調べた。結果を表1に併せて示す。
比較例3、4
有機溶剤として表1記載のものを使用する以外は、比較例1と同様にして、導体ペーストを作製した。比較例1と同様に積層セラミックコンデンサを製造し、同様の諸特性を調べた。結果を表1に併せて示す。
Figure 0004711178
表1の結果から明らかなように、本発明の組成の溶剤を配合することにより、ペースト粘度、分散安定性に優れ、シートアタックも抑制され、なおかつコンデンサに要求される電気特性を満足する導体ペーストを得ることができる。本発明の範囲外である比較例においては、これら全ての特性を満足させることはできないことがわかる。

Claims (3)

  1. シート厚が5μm以下のセラミックグリーンシートと、内部電極ペースト層とを交互に積層して未焼成の積層体を形成する工程、および前記未焼成の積層体を高温で焼成する工程を含む積層電子部品の製造方法において、前記内部電極ペースト層を、導電性粉末、樹脂および有機溶剤を含み、前記樹脂の主成分がエチルセルロースであって、前記有機溶剤が、50〜95重量%の炭化水素系溶剤と、5〜50重量%の炭化水素系溶剤以外の溶剤とを含み、かつ前記炭化水素系溶剤の全量に対するナフテン系炭化水素の比率が30重量%以上であり、芳香族炭化水素の含有量が1重量%以下である導体ペーストを用いて形成してなることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
  2. 前記有機溶剤が、60〜90重量%の炭化水素系溶剤と、10〜40重量%の炭化水素系溶剤以外の溶剤とを含むことを特徴とする請求項1に記載の積層電子部品の製造方法。
  3. 前記炭化水素系溶剤以外の溶剤が、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコール系溶剤から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層電子部品の製造方法。
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