JP4927275B2 - 油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの運行制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレベータの乗りかごを走行させるエレベータ駆動装置の制動装置として油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの運行制御方法に係り、特に油圧ブレーキシステムに関係する異常を検出し、当該異常に対して特有のオペレーションを行なうようにしたエレベータシステムの運行制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図2は、エレベータの乗りかごを走行させるエレベータ駆動装置の制動装置として油圧ブレーキを用いた、従来のエレベータシステムの全体構成例を示す概要図である。
【0003】
図2において、エレベータの乗りかご2と釣合い重り6とを連結するロープは、エレベータ駆動装置3に懸かっており、エレベータ駆動装置3がロープを移動することにより、乗りかご2を移動させる。
【0004】
油圧ブレーキ1は、エレベータの乗りかご2を走行させるエレベータ駆動装置3に、制動装置として取り付けられている。
【0005】
油圧ブレーキ1は、エレベータ停止中はばねの力で閉じており、エレベータ駆動装置3にばねの力による制動力を加えて停止している。
【0006】
エレベータオペレーション装置4が、行き先階ボタンが押される等によって乗りかご2の走行すべき状態を判断した場合、エレベータオペレーション装置4からの指令により、駆動装置制御装置5が乗員を含めた乗りかご2の重さと吊り合いおもり6の重さとにおける差分のトルク出力指令を、エレベータ駆動装置3に対して与える。
【0007】
その後、油圧ブレーキ開閉制御装置7は、エレベータオペレーション装置4からの指令により、図2中の点線で示す油圧ブレーキ開閉装置8に対して、油圧ブレーキ1を開くための指令を発生する。
【0008】
これにより、油圧ブレーキ1が開くと、エレベータオペレーション装置4からの指令により、駆動装置制御装置5がエレベータ駆動装置3に対して、乗りかご2を走行させるためのトルク指令を発生し、これにより乗りかご2が目的の位置まで移動する。
【0009】
ここで、油圧ブレーキ開閉制御装置7からの油圧ブレーキ1の開閉指令の出力から実際の動作までの一連の流れを、図2中の点線内のシステム構成図にて説明する。
【0010】
油圧ポンプ9は、エレベータシステムの起動時から常時動作しており、高圧蓄積装置10に油圧を供給し、油圧センサ11で検出した一定範囲の油圧に保たれるように、圧力蓄積油圧バルブ12を開閉させる。
【0011】
高圧蓄積装置10は、油圧ポンプ9からの油圧を蓄積することができる。
【0012】
油圧ブレーキ開閉制御装置7から油圧ブレーキ1を開く指令が出力されると、油圧ブレーキ開閉バルブ13は高圧蓄積装置10に蓄積された油圧を油圧ブレーキ1に伝達する経路を作り、伝達された油圧が油圧ブレーキ1のばねの力に打ち勝って油圧ブレーキ1が開く。
【0013】
また、油圧ブレーキ開閉制御装置7から油圧ブレーキ1を閉じる指令が出力されると、油圧ブレーキ開閉バルブ13は高圧蓄積装置10と油圧ブレーキ1との間に蓄積された油圧を作動油タンク14に伝達する経路を作って油圧を低下させることにより、油圧ブレーキ1のばねの力が油圧よりも大きくなって油圧ブレーキ1が閉じる。
【0014】
以上が、油圧ブレーキ1の基本的な動作の説明であるが、油圧ブレーキ1の作動油の温度が上昇した場合や、作動油タンク14の作動油量が低下した場合のような異常状態では、油圧ブレーキ1が正常に動作しない可能性が生じてくる。
【0015】
すなわち、作動油の温度が上昇した場合には、作動油の粘性や圧縮率が変化して、油圧ブレーキ1を開くのに必要な圧力を蓄積することができなくなる。
【0016】
また、作動油タンク14の作動油量が低下した場合には、高圧蓄積装置10への作動油の供給ができず、油圧ブレーキ1を開くのに必要な圧力を蓄積することができなくなる。
【0017】
そして、これらの異常状態によって、油圧ブレーキ1を開くことができなかったり、油圧ブレーキ1が開いている途中に閉じてしまったり、あるいは油圧ブレーキ1が開閉を繰り返す等のように正常動作ができなくなる。
【0018】
そのため、これらの異常を事前に予測して、エレベータの運行を停止させる必要がある。
【0019】
この点、従来のエレベータシステムにおいては、作動油温度センサ15、および作動油量センサ16によって、油圧ブレーキ1の正常動作が可能な範囲を超えたという信号を認識した場合に、異常検出装置17は駆動装置制御装置5を停止する指令を出力し、同時に油圧ブレーキ開閉制御装置7に対して油圧ブレーキを閉じる指令を出力することにより、乗りかご2の走行を急停止させるようにしている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のエレベータシステムでは、油圧ブレーキ1の作動油温度上昇異常や作動油量低下異常が検出されると、乗りかご2の走行を急停止させていることから、それによって乗客にショックを与えてしまっている。
【0021】
本発明の目的は、油圧ブレーキの作動油温度上昇異常や作動油量低下異常が検出された場合には、乗りかごをできるだけ急停止しないで減速走行して停止することにより、ショックを与えずに停止して乗客を安全に乗りかごから降ろすことが可能なエレベータシステムの運行制御方法を提供することにある。
【0022】
さらに、本発明の目的は、異常状態の検出後、一定時間・一定回数内の制限付きでサービス復帰のためのエレベータ再起動を試みることにより、異常状態誤検出による運転サービスの低下/停止を回避することが可能なエレベータシステムの運行制御方法を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、エレベータの乗りかごを走行させるエレベータ駆動装置の制動装置として油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの運行制御方法において、
請求項1に対応する発明では、乗りかごが走行中に、油圧ブレーキの開閉を行なう媒体である作動油の温度が異常に上昇して油圧ブレーキの正常動作が保証される範囲を超えたことを検出した場合には、乗りかごを急停止せずに最寄階まで減速走行して停止し、当該停止後に乗りかごのドアを開けるようにし、作動油温度上昇異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行して停止した後に、油圧ブレーキの正常動作が保証される範囲まで作動油温度が低下したことを検出した場合には、それまで中断していたエレベータの運行を再開させ、作動油温度上昇異常時におけるエレベータの運行中断とエレベータの運行再開とが一定時間内に一定回数繰り返された場合には、エレベータの運行を停止するようにしている。
【0024】
従って、請求項1に対応する発明のエレベータシステムの運行制御方法においては、乗りかごが走行中に、油圧ブレーキの作動油の温度が異常に上昇して油圧ブレーキの正常動作が保証される範囲を超えたことを検出した場合には、乗りかごを急停止せずに最寄階まで減速走行して停止し、当該停止後に乗りかごのドアを開けることにより、ショックを与えずに停止して乗客を安全に乗りかごから降ろすことができ、かつ、作動油温度上昇異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行して停止した後に、油圧ブレーキの正常動作が保証される範囲まで作動油温度が低下したことを検出した場合には、それまで中断していたエレベータの運行を再開させることにより、異常状態誤検出による運転サービスの低下を回避することができると共に、作動油温度上昇異常時におけるエレベータの運行中断とエレベータの運行再開とが一定時間内に一定回数繰り返された場合には、エレベータの運行を停止することにより、油圧ブレーキの異常動作による危険状態を回避することができる。
【0027】
さらに、請求項2に対応する発明では、上記請求項1に対応する発明の油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの運行制御方法において、作動油温度上昇異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行中に、油圧ブレーキの正常動作ができずに当該油圧ブレーキが開く指令を受けているにも関わらず、当該油圧ブレーキが閉じていることを示す開放異常を検出した場合には、エレベータの運行を即座に緊急停止するようにしている。
【0028】
従って、請求項2に対応する発明のエレベータシステムの運行制御方法においては、作動油温度上昇異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行中に、油圧ブレーキの正常動作ができずに油圧ブレーキが開く指令を受けているにも関わらず、油圧ブレーキが閉じていることを示す開放異常を検出した場合には、エレベータの運行を即座に緊急停止することにより、高速でさらに長くエレベータを運転して危険な状態に陥るということを回避することができる。
【0029】
さらにまた、請求項3に対応する発明では、上記請求項2に対応する発明の油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの運行制御方法において、作動油温度上昇異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行中に、油圧ブレーキの開放異常を検出してエレベータの運行を緊急停止した後に、エレベータの運行の再開を試みて再起動し、もしもその後、油圧ブレーキの開放異常検出によるエレベータの緊急停止とエレベータの再起動とが一定時間内に一定回数繰り返された場合には、エレベータの運行を停止するようにしている。
【0030】
従って、請求項3に対応する発明のエレベータシステムの運行制御方法においては、作動油温度上昇異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行中に、油圧ブレーキの開放異常を検出してエレベータの運行を緊急停止した後に、エレベータの運行の再開を試みて再起動し、その後、油圧ブレーキの開放異常検出によるエレベータの緊急停止とエレベータの再起動とが一定時間内に一定回数繰り返された場合には、エレベータの運行を停止することにより、油圧ブレーキの異常動作による危険状態を回避することができる。
【0031】
一方、請求項4に対応する発明では、乗りかごが走行中に、油圧ブレーキの開閉を行なう媒体である作動油の油量が異常に低下して油圧ブレーキの正常動作が保証される範囲を超えたことを検出した場合には、乗りかごを急停止せずに最寄階まで減速走行して停止し、当該停止後に乗りかごのドアを開けるようにし、作動油量低下異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行して停止した後に、油圧ブレーキの正常動作が保証される範囲まで作動油量が上昇したことを検出した場合には、それまで中断していたエレベータの運行を再開させ、作動油量低下異常時におけるエレベータの運行中断とエレベータの運行再開とが一定時間内に一定回数繰り返された場合には、エレベータの運行を停止するようにしている。
【0032】
従って、請求項4に対応する発明のエレベータシステムの運行制御方法においては、乗りかごが走行中に、油圧ブレーキの開閉を行な作動油の油量が異常に低下して油圧ブレーキの正常動作が保証される範囲を超えたことを検出した場合には、乗りかごを急停止せずに最寄階まで減速走行して停止し、当該停止後に乗りかごのドアを開けることにより、ショックを与えずに停止して乗客を安全に乗りかごから降ろすことができ、かつ、作動油量低下異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行して停止した後に、油圧ブレーキの正常動作が保証される範囲まで作動油量が上昇したことを検出した場合には、それまで中断していたエレベータの運行を再開させることにより、異常状態誤検出による運転サービスの低下を回避することができると共に、作動油量低下異常時におけるエレベータの運行中断とエレベータの運行再開とが一定時間内に一定回数繰り返された場合には、エレベータの運行を停止することにより、油圧ブレーキの異常動作による危険状態を回避することができる。
【0035】
さらに、請求項5に対応する発明では、上記請求項4に対応する発明の油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの運行制御方法において、作動油量低下異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行中に、油圧ブレーキの正常動作ができずに当該油圧ブレーキが開く指令を受けているにも関わらず、当該油圧ブレーキが閉じていることを示す開放異常を検出した場合には、エレベータの運行を即座に緊急停止するようにしている。
【0036】
従って、請求項5に対応する発明のエレベータシステムの運行制御方法においては、作動油量低下異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行中に、油圧ブレーキの正常動作ができずに当該油圧ブレーキが開く指令を受けているにも関わらず、当該油圧ブレーキが閉じていることを示す開放異常を検出した場合には、エレベータの運行を即座に緊急停止することにより、高速でさらに長くエレベータを運転して危険な状態に陥るということを回避することができる。
【0037】
さらにまた、請求項6に対応する発明では、上記請求項5に対応する発明の油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの運行制御方法において、作動油量低下異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行中に、油圧ブレーキの開放異常を検出してエレベータの運行を緊急停止した後に、エレベータの運行の再開を試みて再起動し、もしもその後、油圧ブレーキの開放異常によるエレベータの緊急停止とエレベータの再起動とが一定時間内に一定回数繰り返された場合には、エレベータの運行を停止するようにしている。
【0038】
従って、請求項6に対応する発明のエレベータシステムの運行制御方法においては、作動油量低下異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行中に、油圧ブレーキの開放異常を検出してエレベータの運行を緊急停止した後に、エレベータの運行の再開を試みて再起動し、その後、油圧ブレーキの開放異常によるエレベータの緊急停止とエレベータの再起動とが一定時間内に一定回数繰り返された場合には、エレベータの運行を停止することにより、油圧ブレーキの異常動作による危険状態を回避することができる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
図1は、本実施の形態による運行制御方法を適用した、油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの全体構成例を示す概要図であり、図2と同一要素には同一符号を付して示している。
【0041】
図1において、エレベータの乗りかご2と釣合い重り6とを連結するロープは、エレベータ駆動装置3に懸かっており、エレベータ駆動装置3がロープを移動することにより、乗りかご2を移動させる。
【0042】
油圧ブレーキ1は、エレベータの乗りかご2を走行させるエレベータ駆動装置3に、制動装置として取り付けている。
【0043】
油圧ブレーキ1は、エレベータ停止中はばねの力で閉じており、エレベータ駆動装置3にばねの力による制動力を加えて停止している。
【0044】
エレベータが走行する時、エレベータオペレーション装置4は、油圧ブレーキ開閉制御装置7に対して油圧ブレーキ1を開く指令を出力し、油圧ブレーキ開閉制御装置7は、油圧ブレーキ開閉装置8に対して油圧ブレーキ1を開く動作をするための信号を出力する。
【0045】
同時に、エレベータオペレーション装置4は、駆動装置制御装置5に対してエレベータ駆動装置3の回転のための指令を出力する。
【0046】
実際の動作としては、エレベータオペレーション装置4が、行き先階ボタンが押される等によって乗りかご2の走行すべき状態を判断した場合、エレベータオペレーション装置4からの指令により、駆動装置制御装置5が乗員を含めた乗りかご2の重さと吊り合いおもり6の重さとにおける差分のトルク出力指令を、エレベータ駆動装置3に対して与える。
【0047】
その後、油圧ブレーキ開閉制御装置7は、エレベータオペレーション装置4からの指令により、図1中の点線で示す油圧ブレーキ開閉装置8に対して、油圧ブレーキ1を開くための指令を発生する。
【0048】
これにより、油圧ブレーキ1が開くと、エレベータオペレーション装置4からの指令により、駆動装置制御装置5がエレベータ駆動装置3に対して、乗りかご2を走行させるためのトルク指令を発生し、これにより乗りかご2が目的の位置まで移動する。
【0049】
ここで、油圧ブレーキ開閉制御装置7からの油圧ブレーキ1の開閉指令の出力から実際の動作までの一連の流れを、図1中の点線内のシステム構成図にて説明する。
【0050】
油圧ポンプ9は、エレベータシステムの起動時から常時動作しており、高圧蓄積装置10に油圧を供給し、油圧センサ11で検出した一定範囲の油圧に保たれるように、圧力蓄積油圧バルブ12を開閉させる。
【0051】
高圧蓄積装置10は、油圧ポンプ9からの油圧を蓄積することができる。
【0052】
油圧ブレーキ開閉制御装置7から油圧ブレーキ1を開く指令が出力されると、油圧ブレーキ開閉バルブ13は高圧蓄積装置10に蓄積された油圧を油圧ブレーキ1に伝達する経路を作り、伝達された油圧が油圧ブレーキ1のばねの力に打ち勝って油圧ブレーキ1が開く。
【0053】
また、油圧ブレーキ開閉制御装置7から油圧ブレーキ1を閉じる指令が出力されると、油圧ブレーキ開閉バルブ13は高圧蓄積装置10と油圧ブレーキ1との間に蓄積された油圧を作動油タンク14に伝達する経路を作って油圧を低下させることにより、油圧ブレーキ1のばねの力が油圧よりも大きくなって油圧ブレーキ1が閉じる。
【0054】
以上が、油圧ブレーキ1の基本的な動作の説明であるが、油圧ブレーキ1の作動油温度上昇異常や作動油量低下異常が発生したような場合には、作動油タンク14に設置された作動油温度センサ15および作動油量センサ16によって、油圧ブレーキ1の正常動作が可能な範囲を超えたという信号が認識され、異常検出装置17に渡す。
【0055】
異常検出装置17は、作動油温度センサ15および作動油量センサ16により検出された異常状態を、油圧ブレーキ異常時オペレーション装置18に伝達し、油圧ブレーキ開閉制御装置7および駆動装置制御装置5に対して指令を与え、油圧ブレーキ開閉装置8の作動油温度上昇またはおよび作動油量低下異常状態におけるエレベータ走行オペレーションを行なう。
【0056】
油圧ブレーキ1には、油圧ブレーキ開放検出スイッチ19が取り付けられており、油圧ブレーキ1の開閉状態の信号を油圧ブレーキ異常動作時オペレーション装置20に渡す。
【0057】
油圧ブレーキ異常動作時オペレーション装置20は、エレベータオペレーション装置4が発生する油圧ブレーキ開放指令を同時に受け取り、油圧ブレーキ開放指令と油圧ブレーキ開放状態の整合性を監視する。
【0058】
ここで、油圧ブレーキ開放指令が出力されているのに油圧ブレーキ1が開いていると認識された場合には、油圧ブレーキ異常動作時オペレーション装置20は、油圧ブレーキ開閉制御装置7および駆動装置制御装置5に対して指令を与え、油圧ブレーキ開閉装置8のブレーキ開放異常状態におけるエレベータ走行オペレーションを行なう。
【0059】
次に、以上のように構成した本実施の形態によるエレベータシステムの運行制御方法について説明する。
【0060】
(作動油温度上昇異常時)
まず、作動油温度上昇異常時の運行制御方法について説明する。
【0061】
図1において、油圧ブレーキ1の作動油温度上昇異常が発生し、作動油タンク14に設置された作動油温度センサ15によって正常動作が可能な範囲を超えたという信号が認識された場合には、油圧ブレーキ異常時オペレーション装置18は、その時に乗りかご2が向かっている目的の階、あるいは走行方向に対して最も近い階まで乗りかご2を走行させるように、油圧ブレーキ開閉制御装置7および駆動装置制御装置5に対して指令を出力する。
【0062】
そして、乗りかご2が当該階に停止した時に、既に異常の検出が無くなっている場合には、エレベータは通常の運転に復帰する。
【0063】
一方、乗りかご2が当該階に停止した時に、異常がまだ検出されている場合には、エレベータの運行を中断し、乗客はそこで乗りかご2から降りることとなる。
【0064】
そして、エレベータの運行が中断した後に、作動油温度が正常範囲に戻って、作動油温度センサ15による異常検出が無くなった場合には、エレベータの運行を再開する。
【0065】
以上のような異常検出におけるエレベータの運行中断と運行再開とが、一定時間内に一定回数だけ繰り返してあった場合、例えば1時間以内に2回の作動油温度上昇異常が検出されてエレベータの運行中断と運行再開とが行なわれた場合には、それ以降の油圧ブレーキ1の正常動作は困難であるとみなす。
【0066】
この時、油圧ブレーキ異常時オペレーション装置18は、駆動装置制御装置5および油圧ブレーキ開閉制御装置7に対して動作禁止の指令を出力し、保守員による復旧作業があるまでエレベータの運行を停止する。
【0067】
以上は、油圧ブレーキ1の作動油温度上昇異常が検出された時の、乗りかご2を目的の階あるいは最寄の階まで走行させて一旦停止し、運行再開の判断をするオペレーションである。
【0068】
一方、油圧ブレーキ1の作動油温度上昇異常が検出されて、乗りかご2を目的の階あるいは最寄の階まで走行させている間に、油圧ブレーキ1が異常動作してしまったような場合には、エレベータオペレーション装置4が発生する油圧ブレーキ1を開く指令を出力しているのに、油圧ブレーキ開放検出スイッチ19によって油圧ブレーキ1が閉じていると検出され、油圧ブレーキ1の開放異常を油圧ブレーキ異常動作時オペレーション装置20が認識し、駆動装置制御装置5および油圧ブレーキ開閉制御装置7に対して、動作停止の指令を出力して乗りかご2の走行を緊急停止する。
【0069】
また、当該緊急停止した後は、油圧ブレーキ1の開放異常検出が、油圧ブレーキ開放検出スイッチ19の信号ノイズ等による誤認識であることが考えられるため、乗りかご2が完全に停止した後に、エレベータ運行の復帰を行なって最寄の階まで走行することを試みるように、油圧ブレーキ異常動作時オペレーション装置20は、油圧ブレーキ開閉制御装置7および駆動装置制御装置5に対して指令を出力する。
【0070】
そして、最寄の階まで走行できた場合には、通常の運行に復帰するが、エレベータの運行中断と運行再開とが一定時間内に一定回数だけ繰り返してあった場合、例えば1時間以内に2回の油圧ブレーキ開放異常が検出されてエレベータの運行中断と運行再開とが行なわれた場合には、それ以降の油圧ブレーキ1の正常動作は困難であるとみなす。
【0071】
一方、最寄の階まで走行するまでに油圧ブレーキ開放異常が検出された場合には、再度、油圧ブレーキ異常動作時オペレーション装置20の判断による緊急停止を行なう。
【0072】
以上のような試みを一定回数繰り返して最寄階まで到達できなかった場合、例えば3回行なわれた場合には、それ以降の油圧ブレーキ1の正常動作は困難であるとみなす。
【0073】
そして、油圧ブレーキ1の正常動作が困難とみなされた場合には、油圧ブレーキ異常動作時オペレーション装置20は、駆動装置制御装置5および油圧ブレーキ開閉制御装置7に対して動作禁止の指令を出力し、保守員による復旧作業があるまでエレベータの運行を停止する。
【0074】
(作動油量低下異常時)
次に、作動油量低下異常時の運行制御方法について説明する。
【0075】
図1において、油圧ブレーキ1の作動油量低下異常が発生し、作動油タンク14に設置された作動油量センサ16によって正常動作が可能な範囲を超えたという信号が認識された場合には、油圧ブレーキ異常時オペレーション装置18は、その時に乗りかご2が向かっている目的の階、あるいは走行方向に対して最も近い階まで乗りかご2を走行させるように、油圧ブレーキ開閉制御装置7および駆動装置制御装置5に対して指令を出力する。
【0076】
そして、乗りかご2が当該階に停止した時に、既に異常の検出が無くなっている場合は、エレベータは通常の運転に復帰する。
【0077】
一方、乗りかご2が当該階に停止した時に、異常がまだ検出されている場合には、エレベータの運行を中断し、乗客はそこで乗りかご2から降りることとなる。
【0078】
そして、エレベータの運行が中断した後に、作動油量が正常範囲に戻って、作動油量センサ16による異常検出が無くなった場合には、エレベータの運行を再開する。
【0079】
以上のような異常検出におけるエレベータの運行中断と運行再開とが、一定時間内に一定回数だけ繰り返してあった場合、例えば1時間以内に2回の作動油量低下異常が検出されてエレベータの運行中断と運行再開とが行なわれた場合には、それ以降の油圧ブレーキ1の正常動作は困難であるとみなす。
【0080】
この時、油圧ブレーキ異常時オペレーション装置18は、駆動装置制御装置5および油圧ブレーキ開閉制御装置7に対して動作禁止の指令を出力し、保守員による復旧作業があるまでエレベータの運行を停止する。
【0081】
以上は、油圧ブレーキ1の作動油量低下異常が検出された時の、乗りかご2を目的の階あるいは最寄の階まで走行させて一旦停止し、運行再開の判断をするオペレーションである。
【0082】
一方、油圧ブレーキ1の作動油量低下異常が検出されて、乗りかご2を目的の階あるいは最寄の階まで走行させている間に、油圧ブレーキ1が異常動作してしまったような場合には、エレベータオペレーション装置4が発生する油圧ブレーキ1を開く指令を出力しているのに、油圧ブレーキ開放検出スイッチ19によって油圧ブレーキ1が閉じていると検出され、油圧ブレーキ1の開放異常を油圧ブレーキ異常動作時オペレーション装置20が認識し、駆動装置制御装置5および油圧ブレーキ開閉制御装置7に対して、動作停止の指令を出力して乗りかご2の走行を緊急停止する。
【0083】
また、当該緊急停止した後は、油圧ブレーキ1の開放異常検出が、油圧ブレーキ開放検出スイッチ19の信号ノイズ等による誤認識であることが考えられるため、乗りかご2が完全に停止した後に、エレベータ運行の復帰を行なって最寄の階まで走行することを試みるように、油圧ブレーキ異常動作時オペレーション装置20は、油圧ブレーキ開閉制御装置7および駆動装置制御装置5に対して指令を出力する。
【0084】
そして、最寄の階まで走行できた場合には、通常の運行に復帰するが、エレベータの運行中断と運行再開とが一定時間内に一定回数だけ繰り返してあった場合、例えば1時間以内に2回の油圧ブレーキ開放異常が検出されてエレベータの運行中断と運行再開とが行なわれた場合には、それ以降の油圧ブレーキ1の正常動作は困難であるとみなす。
【0085】
一方、最寄の階まで走行するまでに油圧ブレーキ開放異常が検出される場合には、再度、油圧ブレーキ異常動作時オペレーション装置20の判断による緊急停止を行なう。
【0086】
以上のような試みを一定回数繰り返し最寄階まで到達できなかった場合、例えば3回行なわれた場合には、それ以降の油圧ブレーキ1の正常動作は困難であるとみなす。
【0087】
そして、油圧ブレーキ1の正常動作が困難とみなされた場合には、油圧ブレーキ異常動作時オペレーション装置20は、駆動装置制御装置5および油圧ブレーキ開閉制御装置7に対して動作禁止の指令を出力し、保守員による復旧作業があるまでエレベータの運行を停止する。
【0088】
上述したように、本実施の形態による油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの運行制御方法では、油圧ブレーキ1の作動油温度上昇異常や作動油量低下異常が検出された場合には、乗りかごをできるだけ急停止しないで減速走行して停止するようにしているので、ショックを与えずに停止して乗客を安全に乗りかご2から降ろすことが可能となる。
【0089】
また、作動油温度センサ15あるいは作動油量センサ16の異常信号のノイズ等による誤検出であった場合には、エレベータを再起動するようにしているので、運転サービスの低下を回避することができると共に、作動油温度センサ15あるいは作動油量センサ16の誤検出ではなく本当に異常であった場合には、温度低下等により異常がなくなるとエレベータを再起動するようにしているので、運転サービスの停止を回避することが可能となる。
【0090】
さらに、油圧ブレーキ1の作動油温度上昇異常や作動油量低下異常が検出されてエレベータが再起動することを、一定時間内に一定回数だけ繰り返したことを検出した場合には、エレベータを停止するようにしているので、油圧ブレーキ1の異常動作による危険状態を回避することが可能となる。
【0091】
さらにまた、実際に油圧ブレーキ1が異常動作をしていることを検出した場合には、エレベータを急停止させるようにしているので、高速でさらに長くエレベータを運転して危険な状態に陥るということを回避することができるが、その後エレベータを一定時間・一定回数内という制限付きで再起動させるようにしているので、もし油圧ブレーキ1が異常動作をしているという状態を誤検出した場合には、その後通常復帰して運転サービスの低下を回避することが可能となる。
【0092】
(その他の実施の形態)
尚、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で、種々に変形して実施することが可能である。
例えば、上記実施の形態では、駆動装置制御装置5および油圧ブレーキ開閉制御装置7に対して停止指令を出力することで、エレベータの運行を停止するようにしているが、これに限らず、駆動装置制御装置5および油圧ブレーキ開閉制御装置7の電源供給を遮断する装置を付加して、エレベータ停止時に遮断指令を出力するようにすることで、より一層確実にエレベータの運行停止動作を行なうことが可能となる。
【0093】
さらに、上記実施の形態では、エレベータ駆動装置3に取り付けられた油圧ブレーキ1を対象としているが、乗りかご2の制動装置として油圧ブレーキを導入した場合にも同様に適用することができ、異常検出時に乗りかごをできるだけ急停止しないようにすることで、乗客にショックを与えずにエレベータの運行を停止したり、一定時間・一定回数内の制限付きで運転サービス復帰のためのエレベータ再起動を試みるようにすることで、異常状態誤検出による運転サービスの停止を回避することが可能となる。
【0094】
また、各実施の形態は可能な限り適宜組合わせて実施してもよく、その場合には組合わせた作用効果を得ることができる。
さらに、上記各実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合わせにより、種々の発明を抽出することができる。
例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題(の少なくとも一つ)が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果(の少なくとも一つ)が得られる場合には、この構成要件が削除された構成を発明として抽出することができる。
【0095】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの運行制御方法によれば、油圧ブレーキの作動油温度上昇異常や作動油量低下異常が検出された場合には、乗りかごをできるだけ急停止しないで減速走行して停止するようにしているので、ショックを与えずに停止して乗客を安全に乗りかごから降ろすことが可能となる。
【0096】
さらに、本発明の油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの運行制御方法によれば、異常状態の検出後、一定時間・一定回数内の制限付きでサービス復帰のためのエレベータ再起動を試みるようにしているので、異常状態誤検出による運転サービスの低下/停止を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による運行制御方法を適用した、油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの全体構成例を示す概要図。
【図2】従来の油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの全体構成例を示す概要図。
【符号の説明】
1…油圧ブレーキ
2…乗りかご
3…エレベータ駆動装置
4…エレベータオペレーション装置
5…駆動装置制御装置
6…吊り合いおもり
7…油圧ブレーキ開閉制御装置
8…油圧ブレーキ開閉装置
9…油圧ポンプ
10…高圧蓄積装置
11…油圧センサ
12…圧力蓄積油圧バルブ
13…油圧ブレーキ開閉バルブ
14…作動油タンク
15…作動油温度センサ
16…作動油量センサ
17…異常検出装置
18…油圧ブレーキ異常時オペレーション装置
19…油圧ブレーキ開放検出スイッチ
20…油圧ブレーキ異常動作時オペレーション装置。
Claims (6)
- エレベータの乗りかごを走行させるエレベータ駆動装置の制動装置として油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの運行制御方法において、
前記乗りかごが走行中に、前記油圧ブレーキの開閉を行なう媒体である作動油の温度が異常に上昇して前記油圧ブレーキの正常動作が保証される範囲を超えたことを検出した場合には、前記乗りかごを急停止せずに最寄階まで減速走行して停止し、当該停止後に前記乗りかごのドアを開けるようにし、
前記作動油温度上昇異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行して停止した後に、前記油圧ブレーキの正常動作が保証される範囲まで前記作動油温度が低下したことを検出した場合には、それまで中断していたエレベータの運行を再開させ、
前記作動油温度上昇異常時におけるエレベータの運行中断とエレベータの運行再開とが一定時間内に一定回数繰り返された場合には、前記エレベータの運行を停止するようにしたことを特徴とするエレベータシステムの運行制御方法。 - 前記請求項1に記載の油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの運行制御方法において、
前記作動油温度上昇異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行中に、前記油圧ブレーキの正常動作ができずに当該油圧ブレーキが開く指令を受けているにも関わらず、当該油圧ブレーキが閉じていることを示す開放異常を検出した場合には、前記エレベータの運行を即座に緊急停止するようにしたことを特徴とするエレベータシステムの運行制御方法。 - 前記請求項2に記載の油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの運行制御方法において、
前記作動油温度上昇異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行中に、前記油圧ブレーキの開放異常を検出してエレベータの運行を緊急停止した後に、前記エレベータの運行の再開を試みて再起動し、もしもその後、前記油圧ブレーキの開放異常検出によるエレベータの緊急停止とエレベータの再起動とが一定時間内に一定回数繰り返された場合には、前記エレベータの運行を停止するようにしたことを特徴とするエレベータシステムの運行制御方法。 - エレベータの乗りかごを走行させるエレベータ駆動装置の制動装置として油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの運行制御方法において、
前記乗りかごが走行中に、前記油圧ブレーキの開閉を行なう媒体である作動油の油量が異常に低下して前記油圧ブレーキの正常動作が保証される範囲を超えたことを検出した場合には、前記乗りかごを急停止せずに最寄階まで減速走行して停止し、当該停止後に前記乗りかごのドアを開けるようにし、
前記作動油量低下異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行して停止した後に、前記油圧ブレーキの正常動作が保証される範囲まで前記作動油量が上昇したことを検出した場合には、それまで中断していたエレベータの運行を再開させ、
前記作動油量低下異常時におけるエレベータの運行中断とエレベータの運行再開とが一定時間内に一定回数繰り返された場合には、前記エレベータの運行を停止するようにしたことを特徴とするエレベータシステムの運行制御方法。 - 前記請求項4に記載の油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの運行制御方法において、
前記作動油量低下異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行中に、前記油圧ブレーキの正常動作ができずに当該油圧ブレーキが開く指令を受けているにも関わらず、当該油圧ブレーキが閉じていることを示す開放異常を検出した場合には、前記エレベータの運行を即座に緊急停止するようにしたことを特徴とするエレベータシステムの運行制御方法。 - 前記請求項5に記載の油圧ブレーキを用いたエレベータシステムの運行制御方法において、
前記作動油量低下異常時に乗りかごを最寄階まで減速走行中に、前記油圧ブレーキの開放異常を検出してエレベータの運行を緊急停止した後に、前記エレベータの運行の再開を試みて再起動し、もしもその後、前記油圧ブレーキの開放異常によるエレベータの緊急停止とエレベータの再起動とが一定時間内に一定回数繰り返された場合には、前記エレベータの運行を停止するようにしたことを特徴とするエレベータシステムの運行制御方法。
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