以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。また、下記の実施の形態では、前輪を内燃機関により駆動し、後輪をモータジェネレータにより駆動するハイブリッド車両に本発明にかかる制動装置が搭載されている場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明にかかる制動装置が搭載される車両としては、例えば、動力伝達機構を介して内燃機関あるいはモータジェネレータの少なくともいずれか一方により車輪を駆動するハイブリッド車両などであっても良い。
[実施の形態]
図1は、実施の形態にかかる制動装置の概略構成例を示す図である。図2は、油圧ブレーキ装置の概略構成例を示す図である。図3は、BF*−PMCマップを示す図である。図4は、ST−PWCマップを示す図である。図1および図2に示すように、実施の形態にかかる制動装置1は、図示しないハイブリッド車両に搭載され、油圧ブレーキ装置2と、回生制動装置3と、ハイブリッド制御装置4とにより構成されている。
油圧ブレーキ装置2は、インラインシステムを構成するものであり、圧力制動力を発生するものである。油圧ブレーキ装置2は、図2に示すように、ブレーキペダル21と、ストロークセンサ21aと、マスタシリンダ22と、リザーバ22aと、ブレーキブースタ23と、負圧センサ23aと、マスタシリンダ圧センサ24と、ブレーキアクチュエータ25と、ホイールシリンダ26a,26b,26c,26dと、ブレーキパッド27a,27b,27c,27dと、ブレーキロータ28a,28b,28c,28dと、ブレーキ制御装置29と、により構成されている。ここで、油圧ブレーキ装置2では、マスタシリンダ22からブレーキアクチュエータ25を介して各ホイールシリンダ26a〜26dまでの油圧経路に、作動流体であるブレーキオイルが充填されている。油圧ブレーキ装置2では、基本的に、運転者がブレーキペダル21を操作することで、ブレーキペダル21に作用する踏力に応じてマスタシリンダ22によりブレーキオイルに操作圧力が付与され、操作圧力、すなわちマスタシリンダ圧PMCが各ホイールシリンダ26a〜26dにホイールシリンダ圧PWCとして作用することで、マスタ圧制動力が圧力制動力として発生することとなる。
ブレーキペダル21は、運転者が図示しないハイブリッド車両に対して制動力を発生させる際、すなわち制動要求によって操作するものである。ストロークセンサ21aは、ストローク検出手段であり、ブレーキペダル21が運転者により踏み込まれた際の踏み込み量、すなわちブレーキペダル21のペダルストローク量STを検出するものである。ストロークセンサ21aは、ブレーキ制御装置29に接続されており、ストロークセンサ21aが検出したブレーキペダル21のペダルストローク量STは、ブレーキ制御装置29に出力される。
マスタシリンダ22は、操作圧力付与手段であり、運転者によるブレーキペダル21の操作に応じて、作動流体であるブレーキオイルを加圧し、操作圧力であるマスタシリンダ圧PMCを付与するものである。マスタシリンダ22は、運転者がブレーキペダル21を踏み込むことでブレーキペダル21に作用する踏力が付与される図示しないピストンによりブレーキオイルを加圧するものである。なお、マスタシリンダ22には、リザーバ22aが連結されており、リザーバ22aに油圧経路のブレーキオイルが貯留されている。
ブレーキブースタ23は、真空式倍力装置であり、図示しない内燃機関により発生する負圧により、運転者がブレーキペダル21を踏み込むことでブレーキペダル21に作用する踏力を増幅するものである。ブレーキブースタ23は、負圧配管23bおよび逆止弁23cを介して、図示しない内燃機関の吸気経路と接続されている。ブレーキブースタ23は、内燃機関の吸気経路に発生する負圧と外気による圧力との差圧により図示しないダイヤフラムに作用する力により踏力を増幅する。従って、実施の形態では、ブレーキブースタ23により増幅されたブレーキペダル21に作用する踏力に応じて、マスタシリンダ22によりブレーキオイルが加圧され、ブレーキオイルに操作圧力が付与される。つまり、ブレーキブースタ23は、操作圧力付与手段の一部を構成するものである。従って、操作圧力は、運転者の踏力と内燃機関の負圧に応じたものとなる。ここで、負圧センサ23aは、負圧配管23bの途中に設けられている。つまり、負圧センサ23aは、負圧配管23b内の圧力を負圧PVとして検出するものである。負圧センサ23aは、ブレーキ制御装置29に接続されており、負圧センサ23aが検出した負圧PVは、ブレーキ制御装置29に出力される。
マスタシリンダ圧センサ24は、操作圧力検出手段であり、操作圧力を検出するものである。マスタシリンダ圧センサ24は、実施の形態では、マスタシリンダ22とブレーキアクチュエータ25の後述する第1マスタカットソレノイドバルブ25aとを接続する油圧配管L10の途中に設けられている。つまり、マスタシリンダ圧センサ24は、油圧配管L10内のブレーキオイルの圧力を操作圧力、すなわちマスタシリンダ圧PMCとして検出するものである。マスタシリンダ圧センサ24は、ブレーキ制御装置29に接続されており、マスタシリンダ圧センサ24が検出したマスタシリンダ圧PMCは、ブレーキ制御装置29に出力される。
ブレーキアクチュエータ25は、マスタシリンダ22によりブレーキオイルに付与されたマスタシリンダ圧PMCに応じて各ホイールシリンダ26a〜26dに作用するホイールシリンダ圧PWCを制御、あるいはマスタシリンダ22によりブレーキオイルにマスタシリンダ圧PMCが付与されているか否かにかかわらず各ホイールシリンダ26a〜26dにホイールシリンダ圧PWCを作用させるものである。ブレーキアクチュエータ25は、マスタカットソレノイドバルブ25a,25bと、保持ソレノイドバルブ25c,25d,25e,25fと、減圧ソレノイドバルブ25g,25h,25i,25jと、リザーバ25k,25lと、加圧ポンプ25m,25nと、逆止弁25o,25p,25q,25rと、駆動用モータ25sと、油圧配管L10〜L17,L20〜L27とにより構成されている。
各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bは、加圧手段を構成する調圧手段であり、加圧圧力Ppを調圧するものである。マスタカットソレノイドバルブ25aは、油圧配管L10と油圧配管L11とに接続されており、油圧配管L10と油圧配管L11との連通、連通の解除や、連通時におけるマスタカットソレノイドバルブ25aの上流側と下流側との差圧を調圧する。つまり、マスタカットソレノイドバルブ25aは、加圧ポンプ25mにより加圧された作動流体の圧力とマスタシリンダ圧PMCとの差圧を加圧圧力Ppとして調整するものである。また、マスタカットソレノイドバルブ25bは、油圧配管L20と油圧配管L21とに接続されており、油圧配管L20と油圧配管L21との連通、連通の解除や、連通時におけるマスタカットソレノイドバルブ25bの上流側と下流側との差圧を調整する。つまり、マスタカットソレノイドバルブ25bは、加圧ポンプ25nにより加圧されたブレーキオイルの圧力とマスタシリンダ圧PMCとの差圧を加圧圧力Ppとして調整するものである。マスタカットソレノイドバルブ25a,25bは、リニアソレノイドバルブであり、ブレーキ制御装置29に接続されている。従って、各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bは、ブレーキ制御装置29からの指令電流値に基づいて、供給される電流が制御され、開度を制御する開度制御がそれぞれ行われるものである。つまり、マスタカットソレノイドバルブ25a,25bは、電流値に応じて加圧圧力Ppを調圧する。なお、各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bは、電流が供給されていない、すなわち非通電時に全開となっている。
保持ソレノイドバルブ25cは、マスタシリンダ22に接続する油圧配管L11とホイールシリンダ26aに接続する油圧配管L12と接続されており、油圧配管L11と油圧配管L12との連通、連通の解除を行うものである。つまり、保持ソレノイドバルブ25cは、マスタシリンダ22とホイールシリンダ26aとの接続、接続の解除を行うものである。また、保持ソレノイドバルブ25dは、マスタシリンダ22に接続する油圧配管L11とホイールシリンダ26bに接続する油圧配管L13と接続されており、油圧配管L11と油圧配管L13との連通、連通の解除を行うものである。つまり、保持ソレノイドバルブ25dは、マスタシリンダ22とホイールシリンダ26bとの接続、接続の解除を行うものである。また、保持ソレノイドバルブ25eは、マスタシリンダ22に接続する油圧配管L21とホイールシリンダ26cに接続する油圧配管L22と接続されており、油圧配管L21と油圧配管L22との連通、連通の解除を行うものである。つまり、保持ソレノイドバルブ25eは、マスタシリンダ22とホイールシリンダ26cとの接続、接続の解除を行うものである。また、保持ソレノイドバルブ25fは、マスタシリンダ22に接続する油圧配管L21とホイールシリンダ26dに接続する油圧配管L23と接続されており、油圧配管L21と油圧配管L23との連通、連通の解除を行うものである。つまり、保持ソレノイドバルブ25fは、マスタシリンダ22とホイールシリンダ26dとの接続、接続の解除を行うものである。各保持ソレノイドバルブ25c〜25fは、常開型ソレノイドバルブであり、ブレーキ制御装置29に接続されている。従って、各保持ソレノイドバルブ25c〜25fは、ブレーキ制御装置29によりON/OFF制御されることで、開閉がそれぞれ制御されるものである。各保持ソレノイドバルブ25c〜25fは、ブレーキ制御装置29によりONされると通電状態となり、通電時は全閉となる。一方、ブレーキ制御装置29によりOFFされると非通電状態となり、非通電時は全開となる。各保持ソレノイドバルブ25c〜25fは、通電時に各ホイールシリンダ26a〜26dに作用する合計圧力、すなわちホイールシリンダ圧が油圧配管L11,L21内のブレーキオイルの圧力よりも高い場合には、ブレーキオイルを各保持ソレノイドバルブ25c〜25fの上流側(油圧配管L11,L21側)に戻す逆止弁がそれぞれ設けられている。
減圧ソレノイドバルブ25gは、ホイールシリンダ26aに接続する油圧配管L12とリザーバ25kに接続する油圧配管L14と接続されており、油圧配管L12と油圧配管L14との連通、連通の解除を行うものである。つまり、減圧ソレノイドバルブ25gは、ホイールシリンダ26aとリザーバ25kとの接続、接続の解除を行うものである。また、減圧ソレノイドバルブ25hは、ホイールシリンダ26bに接続する油圧配管L13とリザーバ25kに接続する油圧配管L14と接続されており、油圧配管L13と油圧配管L14との連通、連通の解除を行うものである。つまり、減圧ソレノイドバルブ25hは、ホイールシリンダ26bとリザーバ25kとの接続、接続の解除を行うものである。また、減圧ソレノイドバルブ25iは、ホイールシリンダ26cに接続する油圧配管L22とリザーバ25lに接続する油圧配管L24と接続されており、油圧配管L22と油圧配管L24との連通、連通の解除を行うものである。つまり、減圧ソレノイドバルブ25iは、ホイールシリンダ26cとリザーバ25lとの接続、接続の解除を行うものである。また、減圧ソレノイドバルブ25jは、ホイールシリンダ26dに接続する油圧配管L23とリザーバ25lに接続する油圧配管L24と接続されており、油圧配管L23と油圧配管L24との連通、連通の解除を行うものである。つまり、減圧ソレノイドバルブ25jは、ホイールシリンダ26dとリザーバ25lとの接続、接続の解除を行うものである。各減圧ソレノイドバルブ25g〜25jは、常閉型ソレノイドバルブであり、ブレーキ制御装置29に接続されている。従って、各減圧ソレノイドバルブ25g〜25jは、ブレーキ制御装置29によりON/OFF制御されることで、開閉がそれぞれ制御されるものである。各減圧ソレノイドバルブ25g〜25jは、ブレーキ制御装置29によりONされると通電状態となり、通電時は全開となる。一方、ブレーキ制御装置29によりOFFされると非通電状態となり、非通電時は全閉となる。
リザーバ25kは、油圧配管L14および加圧ポンプ25mに接続する油圧配管L15と、油圧配管L10に逆止弁25qを介して連通する油圧配管L17と接続されている。従って、リザーバ25kには、減圧ソレノイドバルブ25g,25hからのブレーキオイル、あるいは油圧配管L10、すなわちマスタカットソレノイドバルブ25aの上流側のブレーキオイルを導入することができる。リザーバ25lは、油圧配管L24および加圧ポンプ25nに接続する油圧配管L25と、油圧配管L20に逆止弁25rを介して連通する油圧配管L27と接続されている。従って、リザーバ25lには、減圧ソレノイドバルブ25i,25jからのブレーキオイル、あるいは油圧配管L20、すなわちマスタカットソレノイドバルブ25bの上流側のブレーキオイルを導入することができる。
各加圧ポンプ25m,25nは、加圧手段を構成するものであり、ブレーキオイルを加圧するものである。加圧ポンプ25mは、リザーバ25kに接続する油圧配管L15と、油圧配管L11に逆止弁25oを介して連通する油圧配管L16とに接続されている。従って、加圧ポンプ25mは、リザーバ25kを介してマスタカットソレノイドバルブ25aの上流側のブレーキオイルを吸引し、加圧して油圧配管L11、すなわちマスタカットソレノイドバルブ25aの下流側に吐出するものである。また、加圧ポンプ25nは、リザーバ25lに接続する油圧配管L25と、油圧配管L21に逆止弁25pを介して連通する油圧配管L26とに接続されている。従って、加圧ポンプ25nは、リザーバ25lを介してマスタカットソレノイドバルブ25bの上流側のブレーキオイルを吸引し、加圧して油圧配管L21、すなわちマスタカットソレノイドバルブ25bの下流側に吐出するものである。ここで、各加圧ポンプ25m,25nは、駆動用モータ25sにより駆動される。駆動用モータ25sは、ブレーキ制御装置29に接続されている。従って、各加圧ポンプ25m,25nは、ブレーキ制御装置29により駆動用モータ25sが駆動制御されることで、駆動制御される。以上のように、加圧手段は、各加圧ポンプ25m,25nによりブレーキオイルを加圧し、加圧されたブレーキオイルの圧力とマスタシリンダ圧との差圧を各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bがそれぞれ調圧することで、加圧圧力Ppをブレーキオイルに付与するものである。
ここで、ブレーキアクチュエータ25の動作について説明する。ブレーキアクチュエータ25が増圧モード時では、各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bが非通電、各保持ソレノイドバルブ25c〜25fが非通電、各減圧ソレノイドバルブ25g〜25jが非通電、各加圧ポンプ25m,25nが非駆動となるように、ブレーキ制御装置29がブレーキアクチュエータ25を制御する。増圧モード時は、マスタシリンダ22と、各ホイールシリンダ26a〜26dが油圧配管L10,L20、各マスタカットソレノイドバルブ25a,25b、油圧配管L11,L21、各保持ソレノイドバルブ25c〜25fおよび油圧配管L12,L22を介して接続される。従って、マスタシリンダ22によりブレーキオイルに付与された操作圧力であるマスタシリンダ圧PMCは、ホイールシリンダ圧PWCとして各ホイールシリンダ26a〜26dに直接作用する。これにより、マスタシリンダ圧PMCに応じて各ホイールシリンダ26a〜26dに作用するホイールシリンダ圧PWCを制御することができる。なお、マスタシリンダ22によりブレーキオイルに付与されたマスタシリンダ圧PMCが減少すると、ホイールシリンダ圧PWCも減少する。このとき、各ホイールシリンダ26a〜26d内のブレーキオイルは、油圧配管L12,L22、各保持ソレノイドバルブ25c〜25f、油圧配管L11,L21、各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bおよび油圧配管L10,L20を介してマスタシリンダ22に戻され、リザーバ22aに貯留される。
また、ブレーキアクチュエータ25が保持モード時では、マスタカットソレノイドバルブ25a,25bが非通電、各保持ソレノイドバルブ25c〜25fが通電、各減圧ソレノイドバルブ25g〜25jが非通電、各加圧ポンプ25m,25nが非駆動となるように、ブレーキ制御装置29がブレーキアクチュエータ25を制御する。保持モード時は、各保持ソレノイドバルブ25c〜25fと各ホイールシリンダ26a〜26dとの間でブレーキオイルが保持されるため、各ホイールシリンダ26a〜26dに作用するホイールシリンダ圧を一定に維持できる。また、ブレーキアクチュエータ25が減圧モード時では、マスタカットソレノイドバルブ25a,25bが非通電、各保持ソレノイドバルブ25c〜25fが通電、各減圧ソレノイドバルブ25g〜25jが通電、各加圧ポンプ25m,25nが非駆動となるように、ブレーキ制御装置29がブレーキアクチュエータ25を制御する。減圧モード時は、各保持ソレノイドバルブ25c〜25fと各ホイールシリンダ26a〜26dとの間で保持されていたブレーキオイルが油圧配管L14,L24および油圧配管L15,L25を介してリザーバ25k,25lに貯留されるため、各ホイールシリンダ26a〜26dに作用するホイールシリンダ圧PWCを減少できる。これにより、ブレーキアクチュエータ25は、図示しない前後輪のいずれかがロックして路面に対してスリップすることを抑制するアンチロックブレーキ制御を行うことができる。
なお、ブレーキアクチュエータ25が増圧モード時では、加圧手段によりブレーキオイルに加圧圧力Ppを付与することができる。例えば、マスタカットソレノイドバルブ25a,25bがブレーキ制御装置29からの指令電流値に基づいて開度制御され、開度が全開時よりも小さくなり、加圧ポンプ25m,25nを駆動する駆動用モータ25sがブレーキ制御装置29からの駆動指令値に基づいて駆動制御されると、各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bの上流側、すなわち油圧配管L10,20から各リザーバ25k,25lにブレーキオイルが導入される。各リザーバ25k,25lに導入されたブレーキオイルは、加圧ポンプ25m,25nにより加圧され、油圧配管L11,L21、各保持ソレノイドバルブ25c〜25fおよび油圧配管L12,L22を介して各ホイールシリンダ26a〜26dに充填される。ここで、各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bは、各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bの下流側のブレーキオイル、すなわち各ホイールシリンダ26a〜26dに作用するホイールシリンダ圧PWCと、各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bの上流側のブレーキオイル、すなわちマスタシリンダ22により発生するマスタシリンダ圧PMCと差圧を加圧圧力Ppとして調圧しているので、ホイールシリンダ圧PWCは、マスタシリンダ圧PMCと加圧圧力Ppとの合計圧力となる。つまり、合計圧力は、ホイールシリンダ圧PWCとして各ホイールシリンダ26a〜26dに作用する。
また、加圧手段は、運転者によるブレーキペダル21の操作を行わない場合でも、ブレーキ制御装置29により、ブレーキオイルの加圧を行うことができる。このとき、上述した保持モード、減圧モードとなるように、ブレーキ制御装置29によりブレーキアクチュエータ25を制御すれば、各ホイールシリンダ26a〜26dに作用するホイールシリンダ圧PWCを調整することができる。これにより、ブレーキアクチュエータ25は、図示しない前後輪のいずれかが駆動力を路面に伝達している際に、路面に対してスリップすることを抑制するトラクションコントロールや、図示しないハイブリッド車両が旋回中に、図示しない前後輪のいずれかが横滑りをすることを抑制する姿勢安定化制御(VSC)などを行うことができる。
各ホイールシリンダ26a〜26d、各ブレーキパッド27a〜27dおよび各ブレーキロータ28a〜28dは、圧力制動手段であり、各ホイールシリンダ26a〜26dに充填されたブレーキオイルの圧力であるホイールシリンダ圧PWC、すなわちマスタシリンダ圧PMCと加圧圧力Ppとの合計圧力が作用することで、圧力制動力を発生するものである。図示しないハイブリッド車両は、右前輪にホイールシリンダ26a、ブレーキパッド27a、ブレーキロータ28aが設けられ、左後輪にホイールシリンダ26b、ブレーキパッド27b、ブレーキロータ28bが設けられ、右後輪にホイールシリンダ26c、ブレーキパッド27c、ブレーキロータ28cが設けられ、左前輪にホイールシリンダ26d、ブレーキパッド27d、ブレーキロータ28dが設けられている。つまり、油圧ブレーキ装置2の配管は、各車輪に対してクロス配管で配置されている。各ホイールシリンダ26a〜26dは、ホイールシリンダ圧が作用することで、各車輪とそれぞれ一体回転する各ブレーキパッド27a〜27dと対向する各ブレーキロータ28a〜28dを各ブレーキパッド27a〜27dにそれぞれ接触させ、各ブレーキパッド27a〜27dと各ブレーキロータ28a〜28dとの間にそれぞれ発生する摩擦力によって圧力制動力を発生するものである。なお、左右前輪に設けられる各ブレーキパッド27a,27dおよびブレーキロータ28a,28dは、各ホイールシリンダ26a〜26dに同一ホイールシリンダ圧PWCが作用した際に、左右後輪に設けられる各ブレーキパッド27b,27cとブレーキロータ28b,28cとの間で発生する摩擦力よりも、大きな摩擦力を発生するように設定されている。
ブレーキ制御装置29は、制動装置1を制御することで、運転者の制動要求に基づいた制動力を発生させるものである。ブレーキ制御装置29は、特に、油圧ブレーキ装置2を制御するものである。ブレーキ制御装置29は、図1に示すように、制動装置1および図示しないハイブリッド車両に備えられたセンサから各種入力信号が入力される。入力信号としては、実施の形態では、例えば、回生制動装置3による実効回生制動力BTK、ストロークセンサ21aにより検出されたペダルストローク量ST、負圧センサ23aにより検出された負圧PV、マスタシリンダ圧センサ24により検出されたマスタシリンダ圧PMCなどがある。
ブレーキ制御装置29は、これらの入力信号と、記憶部29cに予め記憶されている各種マップとに基づいて各種出力信号を出力する。出力信号としては、実施の形態では、例えば、回生制動装置3に回生制動を行わせるための目標回生制動力BFr*に基づいた信号、各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bの開度制御、各保持ソレノイドバルブ25c〜25fのON/OFF制御、各減圧ソレノイドバルブ25g〜25jのON/OFF制御、各加圧ポンプ25m,25nを駆動する駆動用モータ25sの駆動制御などを行うための信号などである。
また、ブレーキ制御装置29は、上記入力信号や出力信号の入出力を行う入出力部(I/O)29aと、処理部29bと、記憶部29cとにより構成されている。処理部29bは、メモリおよびCPU(Central Processing Unit)により構成されている。処理部29bは、少なくとも要求制動力設定部29dと、加圧制動力設定部29eと、目標回生制動力設定部29fと、バルブ開度制御部29gと、ポンプ駆動制御部29hとを有している。処理部29bは、制動装置1の制御方法などに基づくプログラムをメモリにロードして実行することにより、制動装置1の制御方法、特に制動装置1の制御方法などを実現させるものであっても良い。
また、記憶部29cは、記憶手段であり、BF*−PMCマップ、ST−PWCマップなどの各種マップが予め記憶されている。なお、記憶部29cは、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、ROM(Read Only Memory)のような読み出しのみが可能なメモリ、あるいはRAM(Random Access Memory)のような読み書きが可能なメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
BF*−PMCマップは、図3に示すように、要求制動力BF*とマスタシリンダ圧PMCとに基づいたものであり、要求制動力BF*とマスタシリンダ圧PMCとの対応関係を示すものである。BF*−PMCマップでは、マスタシリンダ圧PMCの増加に伴い、要求制動力BF*が増加して設定されるように設定されている。なお、実施の形態では、要求制動力BF*をBF*−PMCマップおよび検出されたマスタシリンダ圧PMCに基づいて設定するが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、要求制動力BF*とマスタシリンダ圧PMCと負圧PVとに基づいたBF*−PMC−PVマップ、検出されたマスタシリンダ圧PMCおよび負圧センサ23aにより検出される負圧PVに基づいて設定しても良い。BF*−PMC−PVマップは、負圧PVの低下に伴い、同一マスタシリンダ圧PMCにおいて要求制動力BF*が増加して設定されるように設定されている。
ST−PWCマップは、図4に示すように、ペダルストローク量STとホイールシリンダ圧PWCとに基づいたものであり、ペダルストローク量STとホイールシリンダ圧PWCとの対応関係を示すものである。ST−PWCマップでは、ペダルストローク量の減少に伴い、ホイールシリンダ圧PWCが減少して設定されるように設定されている。なお、ST−PWCマップは、各ブレーキパッド27a〜27dの偏摩耗や油圧ブレーキ装置2を構成する部品の経時劣化による遊びの大きさなどによりペダルストローク量STとホイールシリンダ圧PWCとの対応関係が変化する領域と、油圧ブレーキ装置2を構成する部品の剛性により、ペダルストローク量STとホイールシリンダ圧PWCとの対応関係がペダルストローク量STの増加に伴いホイールシリンダ圧PWCがリニアに増加する領域とにより構成されている。
処理部29bの要求制動力設定部29dは、要求制動力設定手段であり、運転者の制動要求に基づいた要求制動力を設定するものである。要求制動力設定部29dは、基本的には、マスタシリンダ圧センサ24により検出されたマスタシリンダ圧PMCと、BF*−PMCマップとに基づいて要求制動力BF*を設定するものである。
処理部29bの加圧制動力設定部29eは、加圧制動力設定手段であり、上記要求制動力設定部29dにより設定された要求制動力BF*と、マスタシリンダ圧センサ24により検出されたマスタシリンダ圧PMCに基づいて設定されたマスタ圧制動力BFpmcとに基づいて、加圧制動力BFppを設定するものである。
処理部29bの目標回生制動力設定部29fは、回生制動力設定手段であり、上記要求制動力設定部29dにより設定された要求制動力BF*と、圧力制動力、すなわちマスタ圧制動力BFpmcと加圧制動力設定部29eにより設定された加圧制動力BFppとの合計制動力との差を目標回生制動力BFr*として設定するものである。
処理部29bのバルブ開度制御部29gは、各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bの開度制御を行うものである。バルブ開度制御部29gは、上記加圧制動力設定部29eにより設定された加圧制動力BFppに基づいて設定された加圧圧力Ppに基づいて指令電流値Iを設定し、設定された指令電流値Iに基づいて各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bの開度制御を行うものである。
処理部29bのポンプ駆動制御部29hは、駆動用モータ25sを駆動制御することで、各加圧ポンプ25m,25nを駆動するものである。つまり、加圧手段は、運転者によるブレーキペダル21の操作に応じた要求制動力BF*に基づいて加圧制動力BFppが設定され、設定された加圧制動力BFppに基づいて設定された加圧圧力Ppに基づいてブレーキオイルを加圧して、ブレーキオイルに設定された加圧圧力Ppを付与する。
回生制動装置3は、インラインシステムを構成するものであり、回生制動手段である。回生制動装置3は、回生制動力を発生し回生制動を行うものである。回生制動装置3は、目標回生制動力設定部29fにより設定された目標回生制動力BFr*に基づいて回生制動力を発生するものである。つまり、回生制動装置3は、要求制動力BF*と、圧力制動力、すなわちマスタ圧制動力BFpmcと加圧制動力BFppとの合計制動力との差を回生制動力として発生するものである。回生制動装置3は、モータジェネレータ31と、インバータ32と、バッテリ33と、モータジェネレータ制御装置34とにより構成されている。モータジェネレータ31は、ジェネレータとして機能するとともに、モータとしても機能するものであり、例えば同期発電電動機である。モータジェネレータ31は、車軸と連結されており、モータとして機能する場合に車軸を介して車軸に取り付けられている車輪に回転力を付与し、ジェネレータとして機能する場合に車輪の回転力に基づいて車軸に回生制動力を発生する。モータジェネレータ31は、インバータ32を介してバッテリ33と接続されている。モータジェネレータ31は、バッテリ33から電力が供給され、回転駆動することでモータとして機能することができるとともに、回生制動を行い、発電した電力をバッテリ33に蓄電することでジェネレータとして機能することができる。モータジェネレータ31は、モータジェネレータ制御装置34に接続されている。モータジェネレータ制御装置34は、インバータ32を介して、モータジェネレータ31をモータとして機能させる駆動制御、あるいはモータジェネレータ31をジェネレータとして機能させる回生制動制御を行うものである。モータジェネレータ制御装置34は、ハイブリッド制御装置4に接続されており、ハイブリッド制御装置4からの駆動制御、あるいは目標回生制動力BFr*に基づいた回生制動制御の指示に応じて、インバータ32のスイッチング制御を行う。なお、ハイブリッド制御装置4には、モータジェネレータ制御装置34を介してモータジェネレータ31の回転数や、モータジェネレータ31への相電流値などが入力される。また、バッテリ33は、図示しないバッテリ制御装置に接続されており、バッテリ制御装置により管理されている。バッテリ制御装置は、充放電電流、バッテリ温度などに基づいて残容量SOC、入出力制限などを算出するものである。バッテリ制御装置は、ハイブリッド制御装置4に接続されており、残容量SOCなどがハイブリッド制御装置4に出力される。
ハイブリッド制御装置4は、図示しないハイブリッド車両を総合的に運転制御するものである。ハイブリッド制御装置4は、ブレーキ制御装置29、モータジェネレータ制御装置34、図示しない内燃機関を運転制御するエンジン制御装置、上記図示しないバッテリ制御装置、内燃機関の駆動力を車輪に伝達する変速機を制御する変速機制御装置などと接続されている。なお、ハイブリッド制御装置4には、図示しないイグニッションスイッチのON/OFF、図示しないシフトレバーのシフトポジション、図示しないアクセルペダルのアクセル開度、図示しないハイブリッド車両の車速などがハイブリッド車両に備えられたセンサから入力される。
次に、実施の形態にかかる制動装置1の制御方法、特に、制動装置1により発生する制動力の制御方法について説明する。図5は、実施の形態にかかる制動装置の制御方法のフローを示す図である。なお、制動装置1の制御方法は、制動装置1の制御周期、例えば数msecごとに行われる。
まず、ブレーキ制御装置29の処理部29bは、同図に示すように、制動要求中であるか否かを判断する(ステップST1)。ここでは、処理部29bは、例えば、ブレーキペダル21の踏み込みを検出する図示しない踏力検出センサにより、運転者によりブレーキペダル21の踏み込みがあったか否かを検出することで、運転者による制動要求があったか否かを判断する。
次に、処理部29bは、運転者による制動要求があったと判断される(ステップST1肯定)と、ペダルストローク量ST、マスタシリンダ圧PMC、実効回生制動力BTKを取得する(ステップST2)。ここでは、処理部29bは、ストロークセンサ21aにより検出され、ブレーキ制御装置29に出力されたペダルストローク量STを取得し、マスタシリンダ圧センサ24により検出され、ブレーキ制御装置29に出力された操作圧力であるマスタシリンダ圧PMCを取得し、上記ハイブリッド制御装置4からブレーキ制御装置29に出力された実効回生制動力BTKを取得する。なお、実効回生制動力BTKは、目標回生制動力設定部29fにより設定され、ハイブリッド制御装置4に出力された目標回生制動力BFr*と、モータジェネレータ31の回転数と、バッテリ33の残容量SOCとに基づいて、回生制動装置3が実際に発生することができる回生制動力である。従って、実効回生制動力BTKは、現在の制御周期により設定された目標回生制動力BFr*に基づいたものではなく、前回以前に設定された目標回生制動力BFr*に基づいたものとなる。
次に、要求制動力設定部29dは、要求制動力BF*を設定する(ステップST3)。ここでは、要求制動力設定部29dは、上記検出されたマスタシリンダ圧PMCと、図3に示すBF*−PMCマップとに基づいて、運転者の制動要求に応じた要求制動力BF*を設定する。
次に、処理部29bは、図5に示すように、マスタシリンダ圧PMCに基づいてマスタ圧制動力BFpmcを設定する(ステップST4)。ここでは、処理部29bは、検出されたマスタシリンダ圧PMCと、下記の式(1)とに基づいてマスタ圧制動力BFpmcを設定する。ここで、KFは、左右前輪に対応するホイールシリンダ26a,26dにそれぞれ作用するホイールシリンダ圧PWCから各ホイールシリンダ26a,26dの制動力を導き出すための変換係数である。ここで、KRは、左右後輪に対応するホイールシリンダ26b,26cにそれぞれ作用するホイールシリンダ圧PWCから各ホイールシリンダ26b,26cの制動力を導き出すための変換係数である。
BFpmc=2×PMC×(KF+KR) …(1)
次に、処理部29bの加圧制動力設定部29eは、要求制動力変化量ΔBF*が0以上であるか否かを判断する(ステップST5)。ここでは、加圧制動力設定部29eは、要求制動力変化量ΔBF*、すなわち今回の制御周期で設定された要求制動力BF*と前回の制御周期で要求制動力設定部29dにより設定され、後述するステップST11において記憶部29cに記憶された前回要求制動力BF*Lとの差(BF*−BF*L)に基づいて、要求制動力BF*が保持状態あるいは増加傾向のいずれかであるか否かを判断する。
次に、処理部29bの加圧制動力設定部29eは、要求制動力変化量ΔBF*が0以上であると判断する(ステップST5肯定)と、前回加圧制動力BFppLを設定する(ステップST6)。ここでは、加圧制動力設定部29eは、前回の制御周期で加圧圧力Ppとして設定され、後述するステップST11において前回加圧圧力PpLとして記憶部29cに記憶された前回加圧圧力PpLに基づいて前回加圧制動力BFppLを設定する。加圧制動力設定部29eは、記憶されていた前回加圧圧力PpLと、下記の式(2)とに基づいて前回加圧制動力BFppLを設定する。
BFppL=2×PpL×(KF+KR) …(2)
次に、加圧制動力設定部29eは、加圧制動力BFppを設定する(ステップST7)。ここでは、加圧制動力設定部29eは、上記設定された前回加圧制動力BFppL未満とならないように、加圧制動力BFppを設定する。つまり、加圧制動力設定部29eは、要求制動力BF*が保持状態あるいは増加傾向である場合に、加圧手段が発生する加圧圧力Ppが少なくとも維持されるように、少なくとも前回加圧制動力BFppLを維持する加圧制動力BFppを設定する。加圧制動力設定部29eは、設定された前回加圧制動力BFppLと、前回の制御周期で目標回生制動力BFr*として設定され、後述するステップST11において前回目標回生制動力BFr*Lとして記憶部29cに記憶された前回目標回生制動力BFr*Lと、取得した実効回生制動力BTKと、下記の式(3)とに基づいて加圧制動力BFppを設定する。なお、実施の形態では、加圧制動力設定部29eは、前回目標回生制動力BFr*Lと実効回生制動力BTKとの差、すなわち回生制動装置3により発生する回生制動力が前回目標回生制動力BFr*L未満である場合は、前回加圧制動力BFppLよりも増加して加圧制動力BFppを設定する。
BFpp=BFppL+(BFr*L−BTK) …(3)
次に、目標回生制動力設定部29fは、目標回生制動力BFr*を設定する(ステップST8)。ここでは、目標回生制動力設定部29fは、要求制動力BF*と圧力制動力との差を目標回生制動力BFr*に設定するものである。つまり、目標回生制動力設定部29fは、要求制動力BF*からマスタ圧制動力BFpmcおよび加圧制動力BFppを減算した値を目標回生制動力BFr*として設定するものである。目標回生制動力設定部29fは、設定された要求制動力BF*と、設定されたマスタ圧制動力BFpmcと、設定された加圧制動力BFppと、下記の式(4)とに基づいて目標回生制動力BFr*を設定する。なお、目標回生制動力設定部29fは、設定された目標回生制動力BFr*をハイブリッド制御装置4に送信する。ハイブリッド制御装置4は、目標回生制動力BFr*と、モータジェネレータ31の回転数と、バッテリ33の残容量SOCとに基づいて、回生制動装置3が実際に発生することができる実効回生制動力BTKを設定し、モータジェネレータ制御装置34に送信する。モータジェネレータ制御装置34は、実効回生制動力BTKに基づいてインバータ32のスイッチング制御を行うことで、モータジェネレータ31に対して実効回生制動力BTKに基づいた回生制動制御を行い、回生制動装置3により実効回生制動力BTKを発生させる。
次に、処理部29bは、加圧圧力Ppを設定する(ステップST9)。ここでは、処理部29bは、設定された加圧制動力BFppと、下記の式(4)とに基づいて、各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bおよび各加圧ポンプ25m、25nによりブレーキオイルに付与される加圧圧力Ppを設定する。従って、加圧圧力Ppは、加圧制動力BFppが少なくとも前回加圧制動力BFppLを維持するように設定されているので、処理部29bにより、少なくとも前回加圧圧力PpLを維持した値に設定される。
Pp=BFpp/2/(KF+KR) …(4)
次に、ポンプ駆動制御部29hは各加圧ポンプ25m,25nの駆動制御を行い、バルブ開度制御部29gは各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bの開度制御を行う(ステップST10)。ここで、ポンプ駆動制御部29hは、各加圧ポンプ25m,25nを常時決められた回転数で駆動し、一定の吐出量を保つように駆動制御する。つまり、ポンプ駆動制御部29hは、各加圧ポンプ25m,25nを常時決められた回転数で駆動し、一定の吐出量を保つように、各加圧ポンプ25m,25nを駆動する駆動用モータ25sを駆動制御する。バルブ開度制御部29gは、設定された加圧圧力Ppと図示しないPp−Iマップとに基づいて、各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bの開度制御を行うための指令電流値Iを設定する。バルブ開度制御部29gは、設定された指令電流値Iに基づいて各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bの開度制御を行う。各加圧ポンプ25m,25nが一定の吐出量を保つように駆動制御され、各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bが開度制御されることで、各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bの下流側であるホイールシリンダ圧PWCが各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bの上流側であるマスタシリンダ圧PMCに差圧である加圧圧力Ppとの和となる。つまり、各ホイールシリンダ26a〜26dに作用するホイールシリンダ圧PWCは、マスタシリンダ圧PMCと少なくとも前回加圧圧力PpLを維持する加圧圧力Ppとの合計圧力となる。従って、各ホイールシリンダ26a〜26dに作用するホイールシリンダ圧PWCにより発生する圧力制動力は、マスタシリンダ圧により発生するマスタ圧制動力BFpmcと加圧圧力Ppにより発生する加圧制動力BFppとの合計となる。
次に、処理部29bは、設定された要求制動力BF*を前回要求制動力BF*L、設定された加圧圧力Ppを前回加圧圧力PpL、設定された目標回生制動力BFr*を前回目標回生制動力BFr*L、設定されたペダルストローク量STを前回ペダルストローク量STL、設定されたマスタシリンダ圧PMCを前回マスタシリンダ圧PMCLとする(ステップST11)。つまり、前回要求制動力BF*L=BF*と、前回加圧圧力PpL=Ppと、前回目標回生制動力BFr*L=BFr*と、前回ペダルストローク量STL=STと、前回マスタシリンダ圧PMCL=PMCとして、記憶部29cに記憶する。
以上のように、実施の形態にかかる制動装置1では、設定された要求制動力BF*と、圧力制動力との差、すなわち設定された要求制動力BF*から設定されたマスタ圧制動力BFpmcおよび設定された加圧制動力BFppを減算した目標回生制動力BFr*に基づいた実効回生制動力BTKを回生制動装置3が発生することで、回生制動を行う。つまり、加圧手段がブレーキオイルに加圧圧力を付与することで発生する加圧制動力により要求制動力を維持しようとすることができる。従って、例えば運転者がブレーキペダル21の踏み込みを維持あるいはさらに踏み込んでいる状態、すなわち要求制動力BF*が保持状態あるいは増加傾向では、加圧制動力BFppが前回加圧制動力BFppL以上とし、目標回生制動力BFr*の増加、すなわち実効回生制動力BTKの増加を抑制し、加圧手段によるブレーキオイルの加圧を低減しないので、ブレーキペダル21に戻り感が発生することを抑制できる。これにより、ペダルフィーリングの悪化を抑制することができる。
次に、処理部29bは、要求制動力変化量ΔBF*が0未満であると判断する(ステップST5否定)と、ホイールシリンダ圧PWCを設定する(ステップST12)。ここでは、処理部29bは、上記取得されたペダルストローク量STと、図4に示すPWC−STマップとに基づいて、ホイールシリンダ圧PWCを設定する。
次に、処理部29bは、図5に示すように、前回ホイールシリンダ圧PWCLを設定する(ステップST13)。ここでは、処理部29bは、前回の制御周期で取得され、ステップST11において記憶部29cに記憶された前回ペダルストローク量STLと、図4に示すPWC−STマップとに基づいて、前回ホイールシリンダ圧PWCLを設定する。
次に、処理部29bは、ホイールシリンダ圧変化量ΔPWCを設定する(ステップST14)。ここでは、処理部29bは、今回の制御周期で取得したペダルストローク量STに基づいたホイールシリンダ圧PWCと前回の制御周期で取得した前回ペダルストローク量STLに基づいた前回ホイールシリンダ圧PWCLとの差(PWCL−PWC)をホイールシリンダ圧変化量ΔPWCとして設定する。
次に、処理部29bは、マスタシリンダ圧減少量ΔPMCを設定する(ステップST15)。ここでは、処理部29bは、今回の制御周期で取得したマスタシリンダ圧PMCから前回の制御周期で取得したマスタシリンダ圧PMCLを減算した値(PMCL−PMC)をマスタシリンダ圧減少量ΔPMCとして設定する。
次に、加圧制動力設定部29eは、減少可能加圧圧力PpXを設定する(ステップST16)。ここでは、加圧制動力設定部29eは、ホイールシリンダ圧変化量ΔPWCからマスタシリンダ圧減少量ΔPMCを減算した値(ΔPWC−ΔPMC)を減少可能加圧圧力PpXとして設定する。
次に、加圧制動力設定部29eは、前回加圧制動力BFppLを設定する(ステップST17)。ここでは、ステップST11において記憶部29cに記憶された前回加圧圧力PpLと、設定された減少可能加圧圧力PpXと、下記の式(5)とに基づいて前回加圧制動力BFppLを設定する。実施の形態では、前回加圧制動力BFppLは、前回加圧圧力PpLからマスタシリンダ圧PMCの減少に基づいて設定された減少可能加圧圧力PpXを減算した値に基づいたものとなる。従って、要求制動力BF*が減少傾向である場合には、操作圧力、すなわちマスタシリンダ圧PMCの減少に基づいて加圧圧力Ppを減少することが許容される。
BFppL=2×(PpL−PpX)×(KF+KR) …(5)
次に、加圧制動力設定部29eは、加圧制動力BFppを設定する(ステップST7)。ここでは、上記加圧圧力Ppを減少することが許容された状態で設定された前回加圧制動力BFppLに基づいて、加圧制動力BFppを設定することとなる。加圧制動力設定部29eは、上述のように、設定された前回加圧制動力BFppLと、記憶された前回目標回生制動力BFr*Lと、取得した実効回生制動力BTKと、上記の式(3)とに基づいて加圧制動力BFppを設定する。
次に、目標回生制動力設定部29fは、目標回生制動力BFr*を設定する(ステップST8)。ここでは、目標回生制動力設定部29fは、上述のように、設定された要求制動力BF*と、設定されたマスタ圧制動力BFpmcと、設定された加圧制動力BFppと、上記の式(4)とに基づいて目標回生制動力BFr*を設定する。
次に、処理部29bは、加圧圧力Ppを設定する(ステップST9)。ここでは、処理部29bは、上述のように、設定された加圧制動力BFppと、上記の式(4)とに基づいて、各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bおよび各加圧ポンプ25m、25nによりブレーキオイルに付与される加圧圧力Ppを設定する。設定された加圧圧力Ppは、上述のように、前回加圧圧力PpLよりもマスタシリンダ圧PMCの減少に伴って減少した値に設定されることとなる。
次に、ポンプ駆動制御部29hは各加圧ポンプ25m,25nの駆動制御を行い、バルブ開度制御部29gは各マスタカットソレノイドバルブ25a,25bの開度制御を行う(ステップST10)。
次に、処理部29bは、設定された要求制動力BF*を前回要求制動力BF*L、設定された加圧圧力Ppを前回加圧圧力PpL、設定された目標回生制動力BFr*を前回目標回生制動力BFr*L、設定されたペダルストローク量STを前回ペダルストローク量STL、設定されたマスタシリンダ圧PMCを前回マスタシリンダ圧PMCLとする(ステップST11)。
以上のように、実施の形態にかかる制動装置1では、運転者がブレーキペダルの踏み込みを緩めている状態、すなわち設定された要求制動力BF*が減少傾向では、加圧圧力Ppが前回加圧圧力PpLよりも減少することを許容する。加圧圧力Ppは、例えば、前回加圧圧力PpLよりもマスタシリンダ圧PMCの減少に基づいて減少した値、すなわちペダルフィーリングが悪化しない値に設定される。従って、加圧手段によるブレーキオイルの加圧の低減は、運転者によりブレーキペダル21が踏み戻されている状態で行われるので、ブレーキペダル21に戻り感が発生しても、ペダルフィーリングが悪化することを抑制することができる。これにより、加圧手段により加圧圧力を低減することができるので、加圧制動力が減少して要求制動力に対して回生制動力を増加することができ、回収する電力を増加でき、回生量を増加することができる。