以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る引戸装置は、開閉移動する扉体である引戸本体が1個となっている引戸装置であって、この引戸本体が、この引戸本体よりも上方に配置されたガイド部材であるガイドレールから吊り下げられ、このガイドレールに案内されて開閉移動を行う上吊り式の引戸装置である。
図1は、例えば、ホテルや、病院、特別養護老人施設等の建物内における廊下と部屋との間に設置され、引戸本体1で開閉される開口部が出入口2となっているこの上吊り式の引戸装置の全体を示す正面図である。引戸本体1は、壁3に形成された出入口2からこの壁3の厚さ方向にずれた位置に配置されているものである。この引戸装置の外枠組みを形成する枠部材は、板材の折り曲げ品又は押出成形品となっている上枠部材10のみとなっており、引戸本体1が全閉位置に達して出入口2を閉じたときにこの引戸本体1の先端が当接する戸先側の竪枠部材や、この戸先側の竪枠部材とは引戸本体1の移動方向反対側(開き側)に配置されるべき戸尻側の竪枠部材は配置されていない。また、この引戸装置では、出入口2を開けたときに引戸本体1を収納するための戸袋も配置されていない。
図2は、図1のS2−S2線断面図であり、引戸本体1が全閉位置に達したときの状態を示す図であり、図3は、図2において、引戸本体1が全開位置に達したときの状態を示す図である。また、図4は、図1のS4−S4線断面図である。
図2に示すように、出入口2は、本実施形態に係る引戸装置の引戸本体1が設置される前から存在しており、この引戸本体1が配置される前のこの出入口2は、2点鎖線で示されている開き戸装置90の開き戸本体91により開閉されていたものである。この開き戸本体91は、回動中心部材であるヒンジ92で出入口2に対して開閉自在に枠組み体5に取り付けられていた。出入口2の外周を形成するこの枠組み体5は、図2に示す引戸本体1の閉じ側の側枠部材6及び開き側の側枠部材7と、図4に示す上部の上枠部材8とで構成される三方枠となっており、本実施形態に係る引戸装置が設置された後も残されているものである。このため、本実施形態に係る引戸装置は改修用引戸装置となっている。
本実施形態に係る引戸装置の外枠組みを構成する上枠部材10は、この上枠部材10が2点鎖線で示されている図2及び図3からわかるように、全閉位置に達した引戸本体1の閉じ側(言い換えると、戸先側)の先端1Cの位置よりも少し戸先側の位置から、全開位置に達した引戸本体1の戸尻側の先端部1Dの位置よりも少し戸尻側の位置まで延びる長さを有している(図1も参照)。
また、図2に示されているように、壁3と、引戸本体1の室内側の面である内面部1B(図1では紙面裏側の面部、室外側の面である外面部1Aは図1の紙面表側の面部)との間には、3個の枠部材20,23,26が、引戸本体1の開閉移動方向に離間して立設されている。引戸本体1の高さ方向である上下方向に延びるこれらの枠部材20,23,26のうち、出入口2における引戸本体1の開き側の端部である側枠部材7と壁3に取り付けられている枠部材23の上下寸法である高さ寸法は、図4に示すように、床4から、枠組み体5の上枠部材8の平坦部8Bの下面までの長さとなっている。図示されていないが、他の枠部材20,26の高さ寸法も、枠部材23の高さ寸法と同じ又は略同じとなっている。
図2に示されているように、3個の枠部材20,23,26のうち、出入口2における引戸本体1の閉じ側の端部である側枠部材6に取り付けられている枠部材20は、板材の折り曲げ品又は押出成形品となっている内部材21と外部材22の組合せ品となっている。内部材21は、底部21Aと、この底部21Aの両端部から壁3の厚さ方向へ延びる2個の延出部21B,21Cとからなっており、底部21Aが、側枠部材6にビス等の結合具29で結合されている。一方、外部材22は、壁3の厚さ方向へ延びる延出部22Aと、引戸本体1の閉じ移動方向に延びる前方延出部22Bとからなっており、延出部22Aは、内部材21の延出部21Bにビス等の結合具30で結合されている。
また、側枠部材7及び壁3に取り付けられている枠部材23も、板材の折り曲げ品又は押出成形品となっている内部材24と外部材25の組合せ品となっている。内部材24は、壁3の厚さ方向に延びる延出部24Aと、この延出部24Aの一方の端部から引戸本体1の閉じ移動方向に延びる延出部24Bと、延出部24Aの他方の端部から引戸本体1の開き移動方向に延びる後方延出部24Cとからなっており、延出部24Bは壁3にビス等の結合具29で結合されている。一方、外部材25は、底部25Aと、この底部25Aの両端部から壁3の厚さ方向へ延びる2個の延出部25B,25Cと、この延出部25Cの先端部から引戸本体1の閉じ移動方向に延びる前方延出部25Dとからなっており、この前方延出部25Dが側枠部材7にビス等の結合具29で結合されている。また、延出部25Bは、内部材24の延出部24Aにビス等の結合具30で結合されている。
さらに、上枠部材10の引戸本体1の戸尻側の端部と対応する位置に配置され、壁3に取り付けられている枠部材26も、板材の折り曲げ品又は押出成形品となっている内部材27と外部材28の組合せ品となっている。内部材27は、壁3の厚さ方向に延びる延出部27Aと、この延出部27Aの一方の端部から引戸本体1の閉じ移動方向に延びる前方延出部27Bと、前記延出部27Aの他方の端部から引戸本体1の開き移動方向に延びる後方延出部27Cとからなっており、この後方延出部27Cは壁3にビス等の結合具29で結合されている。一方、外部材28は、底部28Aと、この底部28Aの両端部から壁3の厚さ方向内側へ延びる延出部28B,28Cとからなっており、この延出部28Cが内部材27の延出部27Aにビス等の結合具30で結合されている。
図2に示されているように、引戸本体1は、出入口2から壁3の厚さ方向にずれた位置に配置されているため、引戸本体1と壁3との間には隙間19が生じているが、本実施形態では、この隙間19を塞ぐための第1及び第2塞ぎ部材が配置されている。
すなわち、出入口2における引戸本体1の開き側の端部に配置されている枠部材23が、引戸本体1と壁3との間に生じる隙間19を塞ぐための第1塞ぎ部材となっており、この枠部材23は、隙間19に挿入配置され、この配置位置は、出入口2における引戸本体1の開き側の端部からこの引戸本体1の開き移動方向へ離間した位置となっている。そして、本実施形態では、図3に示されているように、引戸本体1と、壁3と、枠部材23の出入口2側の面となっている外部材25の延出部25Cとで囲まれた空間である空間部35が、具体的な構造を後述する引戸本体1の内面部1Bにおける閉じ側の端縁部に設けられている手掛け部である窪み部51を収納可能かつこの窪み部51を操作可能とする空間部となっている。
また、本実施形態では、出入口2における引戸本体1の閉じ側の端部に配置されている枠部材20が、引戸本体1と壁3との間に生じる隙間19を塞ぐための第2塞ぎ部材となっている。
また、図2に示されているように、枠部材23と枠部材26との間には、引戸本体1が全閉位置に達した際、枠部材23,26間に露出する壁3を隠すための目隠し部材31が配置されており、この目隠し部材31は、床4から、上枠部材10を壁3に取り付けるための取付部材40(具体的な構造は後述する)を構成する枠部材42の下面部42C(図4参照)までの上下寸法である高さ寸法を有している。言い換えると、目隠し部材31の高さ寸法は、3個の枠部材20,23,26の高さ寸法と同じ又は略同じとなっている。
図2に示すように、目隠し部材31の引戸本体1の閉じ移動方向の端部31Aは、枠部材23の内部材24の後方延出部24C、及び枠部材23の外部材25の延出部25Bに接着剤や接着テープ等の結合具で結合されている。これと同様に、目隠し部材31の引戸本体1の開き移動方向の端部31Bは、枠部材26の内部材27の前方延出部27B、及び枠部材26の外部材28の延出部28Cに接着剤や接着テープ等の結合具で結合されている。また、目隠し部材31における引戸本体1と対向する面は、枠部材23の外枠材25の底部25A、及び枠部材26の外部材28の底部28Aと面一又は略面一となっている。
なお、図2に示すように、枠部材20の外部材22の延出部22Aと前方延出部22Bとの角部22Cには、開閉移動中の引戸本体1が外部材22と衝突した場合に、引戸本体1及び/又は外部材22の損傷を防止するためのカバー部材32が取り付けられている。これと同様の理由から、枠部材23の外部材25の底部25Aと延出部25Cの角部25Eにも、カバー部材33が取り付けられている。ゴムや軟質合成樹脂等の弾性材料又は軟質材料で形成されているこのカバー部材33は、図4に示されているように、枠部材23の外部材25の上下方向全長又は略全長にわたって設けられている。また、図示されていないが、ゴムや軟質合成樹脂等の弾性材料又は軟質材料で形成されているカバー部材32も、枠部材20の外部材22の上下方向全長又は略全長にわたって設けられている。なお、これらのカバー部材32,33は、全閉位置に達した引戸本体1と壁3との密閉性を高めるためのものでもある。
図4に示されているように、上枠部材10は、上面部10Aと、この上面部10Aにおける上枠部材10の幅方向(図4では左右方向)の一方の端部から垂下した垂下部10Bとを有しており、これら上面部10Aと垂下部10Bは、上枠部材10の全長にわたって連続して設けられている。また、垂下部10Bの壁3とは反対側の面の下部には、引戸本体1の開閉移動を案内するためのガイド部材であるガイドレール13が押出成形あるいは引抜成形等により形成されている。
また、図4で示されているように、上枠部材10の上面部10Aの下側は、上枠部材10の開口部10Cとなっており、垂下部10Bの壁3とは反対側に形成されているこの開口部10Cから、上枠部材10の内部空間に収納配置されている扉体移動機構(具体的な構造は後述する)についての点検及び整備を含む各種の作業を行えるようになっている。
通常時の開口部10Cは点検カバー11で塞がれており、上枠部材10の長手方向(左右方向)の長さ寸法と同じ又は略同じ長さ寸法を有するこの点検カバー11は、上枠部材10の上面部10Aにねじ部材12で止められる上面部11Aと、この上面部11Aから鉛直又は略鉛直下向きに延びていて、途中部が上枠部材10の内側へ少し窪んだ正面部11Bと、この正面部11Bの下端から上枠部材10の内側へ水平又は略水平に屈曲している下面部11Cと、この下面部11Cの先端から立ち上がった立上部11Dとを有している。下面部11Cと立上部11Dとにより、板材の折り曲げ品又は押出成形品となっている点検カバー11の下部の剛性が確保されている。
前述した扉体移動機構についての点検等の作業を行う場合には、ねじ部材12を取り外し、点検カバー11を取り外すことにより、上枠部材10の内部空間に収納配置されている扉体移動機構を露出させる。
なお、点検カバー11の正面部11Bの裏面(正面部11Bにおける上枠部材10の内側の面)に、例えば、ハット形状の断面が点検カバー11の長手方向に連続している補強部材17を接着剤や接着テープ等の結合具で結合し、これにより、正面部11Bの面強度を補強し、正面部11Bの上下寸法や左右寸法が大きくても、正面部11Bに撓み変形や開閉時の振動がより発生しないようにしてもよい。
なお、通常時の上枠部材10及びこの上枠部材10に取り付けられている点検カバー11の長手方向(左右方向)の両端部は開口状態となる。このため、図2に示されているように、開口状態となっているこれらの両端部には、これらの両端部を覆うことができる面積を有する板状部材で形成されたカバー部材18(2点鎖線で示されている部分、図4及び図6も参照)が取り付けられている。
また、図4に示すように、上枠部材10と壁3との間には、上枠部材10を壁3に取り付けるための取付部材40が配置されており、この取付部材40は、上枠部材10の長手方向(左右方向)の長さ寸法と同じ又は略同じ長さ寸法を有する2個の枠部材41,42の組合せ品となっている。ガイドレール13が形成されている上枠部材10の垂下部10Bは、ビス等の結合具14で枠部材41の垂下部41Bに取り付けられている。また、枠部材41の上面部41Aは、ビス等の結合具44で枠部材42の上面部42Aに結合されており、枠部材41の垂下部41Bの下部も、ビス等の結合具44で枠部材42の立上部42Dに結合されている。一方、枠部材42の垂下部42Bは、スペーサ43を介してビス等の結合具45で壁3に結合されている。このように、上枠部材10は、取付部材40とスペーサ43を介して壁3に取り付けられている。
図1で示されているように、床4の引戸本体1が開閉移動する移動経路における、全閉位置に達したこの引戸本体1の戸尻側の端部の位置と対応する位置には、ガイドローラ75が配置されている。このガイドローラ75は、図4で示されているとおり、下方に向かって開口している引戸本体1の下端部に挿入されている。このため、引戸本体1の前記ガイドレール13で案内される開閉移動は、引戸本体1の下端部がガイドローラ75で案内されながら行われる。
図1で示されているように、引戸本体1の壁3と対向する面とは反対側の面である外面部1A(言い換えると、室外側の面(図1では手前側の面))の閉じ側の端縁部には、室外側から引戸本体1を開閉移動させるためにこの引戸本体1に手を掛けるための把持部50が設けられており、この把持部50の上方には、引戸本体1を全閉位置に施錠するための施錠装置52が配置されている。
図5は、引戸本体1の内面部1B(言い換えると、室内側の面(図1では奥側の面))の戸先側の端部近傍の一部拡大図であり、この図5には、引戸本体1の外面部1Aに配置されている前記把持部50及び前記施錠装置52の裏側の部分が示されている。施錠装置52は、一方の側である室外側(表側)がシリンダー錠53であり、他方の側である室内側(裏側)が、この図5に示されているように、サムターン錠54となっており、室外側では、シリンダー錠53の鍵穴に挿入されたキーの回転操作による施錠及び開錠が行われ、室内側では、サムターン錠54の回転操作部材の回転操作による施錠及び開錠が行われる。
また、図5に示されているように、引戸本体1の室外側に配置されている前記把持部50の裏側には、上下方向に長い長方形状の窪み部51が形成されている。このため、この窪み部51が、引戸本体1の壁3と対向する面である内側面1Bにおける閉じ側の端縁部に設けられ、室内側から引戸本体1を開閉移動させるためにこの引戸本体1に手を掛けるための手掛け部となっている。窪み部51は、最深部となっている上下方向に長い長方形状の平坦部51Aと、四方の周縁部からこの平坦部51Aに向かって傾斜しながら窪んでいる傾斜部51Bとからなっており、この窪み部51の水平断面図が示されている図2からわかるように、窪み部51は略船底形状を有している。
次に、上枠部材10の内部空間に収納配置されている引戸本体1を開閉移動させるための扉体移動機構について説明する。図6は、点検カバー11を取り外して示すこの扉体移動機構の正面図である。
前述したように、上枠部材10の垂下部10Bの壁3とは反対側の面の下部には、引戸本体1の直線の開閉移動を案内するガイド部材となっているガイドレール13が形成されており、このガイドレール13は、上枠部材10の長手方向(左右方向)略全長にわたる長さを有している。また、このガイドレール13は、図4に示されているように、上下に延びる基端部13Aを有する略L字形状であり、この基端部13Aが上枠部材10の前記垂下部10Bの下部を形成している。引戸本体1には、この引戸本体1の上方において、ガイドレール13に転動自在に係合している係合部材であるローラ16がブラケット15を介して取り付けられ、このローラ16は、図6で示されているとおり、上枠部材10の長手方向である引戸本体1の開閉移動方向に2個設けられている。このため、本実施形態に係る引戸装置は、引戸本体1が2個のローラ16によってガイドレール13から吊り下げられた上吊り式の引戸装置になっている。
また、上枠部材10の内部空間には、引戸本体1を自動的に閉じ移動させるための渦巻きばね式の閉鎖装置55が配置され、この閉鎖装置55は、上枠部材10における戸先側の端部の近傍において、上枠部材10の垂下部10Bやガイドレール13の基端部13Aにビス等の結合具で結合されている。閉鎖装置55からは、この閉鎖装置55の内部に設けられている渦巻きばね機構に一端が連結された合成樹脂製等の紐状部材56が導出され、この紐状部材56の他端は、上記2個のローラ16のうち、戸先側のローラ16を回転自在に保持しているブラケット15に連結されている。引戸本体1が出入口2を全閉としているときに、図1に示す引戸本体1の外面部1Aに設けられている把持部50を握った手、又は引戸本体1の内面部1Bに形成された手掛け部である窪み部51に掛けた手によって引戸本体1を開き移動させると、閉鎖装置55から繰り出される紐状部材56により、上記渦巻きばね機構の渦巻きばねにばね力が蓄圧され、把持部50又は窪み部51から手を離すと、この蓄圧されたばね力によって引戸本体1が自動的に全閉位置まで閉じ移動する。このため、本実施形態に係る引戸装置は、自動閉鎖式の引戸装置となっている。
また、上枠部材10の内部空間には、図6で示すシリンダ式の制動装置60が、ピストンロッド62を引戸本体1の戸尻側に向けて配置され、この制動装置60は、ガイドレール13の基端部13Aにブラケット61で取り付けられている。引戸本体1の上記2個のローラ16のうち、戸尻側のローラ16を回転自在に保持しているブラケット15には、ピストンロッド62の先端部と引戸本体1の開閉移動方向に対向する当接部材64が取り付けられ、これらのピストンロッド62の先端部と当接部材64とのうち、一方には、他方と吸着力等で接離自在となったマグネット等による接離部材63が設けられている。
全閉位置に達している引戸本体1を上述のように開き移動させたときには、先端部が当接部材64に接離部材63の吸着力で接続状態となっているピストンロッド62は伸び作動し、ピストンロッド62の伸び作動の限度を越えて引戸本体1が開き移動すると、接離部材63において当接部材64はピストンロッド62から分離する。また、引戸本体1が閉じ移動すると、その途中で当接部材64は接離部材63を介してピストンロッド62の先端部に当接し、引戸本体1が閉じ移動を継続することにより、ピストンロッド62は縮み作動を始め、制動装置60には、このときにシリンダ式の制動装置60の内部の空気を絞りながら排出するバルブが設けられているため、引戸本体1は、このバルブの絞り作用による制動力を受けながら、上記閉鎖装置55により低速で全閉位置まで自動移動する。
なお、上記バルブは、ピストンロッド62が伸び作動するときには、空気を絞らずにシリンダ式の制動装置60の内部に流入させるタイプのものであるため、全閉位置からの引戸本体1の開き移動を、閉鎖装置55の上記渦巻きばね機構の渦巻きばねにばね力を蓄圧させるだけの小さな力によって行える。
なお、以上のように、全閉位置へ向かって閉じ移動しているときの引戸本体1に制動力を作用させるための装置は、上記シリンダ式の制動装置60に限定されず、例えば、引戸本体1と上枠部材10とのうちの一方に取り付けられたラック部材と、他方に取り付けられ、このラック部材に噛合するピニオン部材を有するロータリー式のダンパー装置とを含んで構成され、引戸本体1の全閉位置へ向かう閉じ移動によってピニオン部材がラック部材で回転することにより、ロータリー式のダンパー装置の内部に充填されている粘状物質等によって制動力が生ずるものでもよい。
また、図6に示されているように、戸尻側のローラ16を保持している前記ブラケット15に取り付けられている当接部材64には、ゴム等による緩衝部材70が後ろ向き(言い換えると、開き移動方向)に取り付けられている。引戸本体1の開き移動により、緩衝部材70が、ガイドレール13の基端部13Aにブラケット71で取り付けられているストップ部材72に当接することにより引戸本体1は開き移動限位置である後退限位置に達する。すなわち、引戸本体1は全開位置に達する。このため、ストップ部材72は、引戸本体1の開き移動限位置を規定する部材となっている。
なお、図3に示されているように、本実施形態では、引戸本体1が全開位置に達したとき、この引戸本体1の手掛け部となっている窪み部51は引戸本体1と壁3との間に形成された前記空間部35に収納され、この空間部35に収納された窪み部51は室内側から手掛け操作が可能となっている。そして、全開位置に達した引戸本体1の閉じ側の先端1Cの開閉移動方向の位置は、出入口2における引戸本体1の開き側の先端(側枠部材7の突出部7Aの先端)の前記開閉移動方向の位置よりも開き側の位置となっている。
なお、本実施形態において、引戸本体1を開き移動限位置に停止させるための停止装置を配置してもよい。例えば、上枠部材10の垂下部10Bには、引戸本体1に取り付けた係止部材が係止される被係止部材を取り付け、引戸本体1が後退限位置に達したときに、この引戸本体1の前記係止部材が上枠部材10の前記被係止部材に係止し、この係止状態が維持されるものを挙げることができる。この場合には、前記把持部50を握った手、又は前記窪み部51に掛けた手で引戸本体1に閉じ移動力を付与すると、前記係止部材が前記被係止部材に係止している状態が解除され、引戸本体1は、前述したように、閉鎖装置55の渦巻きばね機構の渦巻きばねに蓄圧されたばね力等により、前述したように閉じ移動する。
次に、改修用引戸装置となっている本実施形態に係る引戸装置の取付方法について説明する。
まず、改修用引戸装置の取付方法の第1工程として、図2において2点鎖線で示されている開き戸装置90に開き戸本体91を回動中心部材であるヒンジ92と共に取り外す作業を行う。なお、このとき、出入口2の外周を形成する枠組み体5は残す。
次に、第2工程として以下の作業を行う。
まず、第1塞ぎ部材である枠部材23を枠組み体5の側枠部材7及び壁3に結合する作業、第2塞ぎ部材である枠部材20を枠組み体5の側枠部材6に結合する作業、枠部材26を壁3に結合する作業を行った後、前記目隠し部材31を枠部材23及び枠部材26に取り付ける作業を行う。
次に、上枠部材10を壁3に取り付けるための図4に示す取付部材40及びスペーサ43を壁3に取り付ける。なお、枠部材20,23,26の取付作業は、取付部材40及びスペーサ43の取付作業の後でもよい。
この後、ガイドレール13が形成された上枠部材10を取付部材40に取り付ける作業を行うと共に、床4にガイドローラ75を取り付ける作業を行う。
次に、引戸本体1を吊り上げ、この引戸本体1に取り付けられた2個のローラ16(図4及び図6参照)をガイドレール13に係合させる作業を行う。
最後に、点検カバー11を上枠部材10に取り付ける作業や、開口状態となっている上枠部材10や点検カバー11の両端部を覆うためのカバー部材18の取付作業を行う。
以上説明した第1の実施形態では、引戸本体1の壁3と対向する面における閉じ側の端縁部には、手を掛けるための手掛け部である窪み部51が設けられており、図3に示すように、引戸本体1と壁3との間には、全開位置に達したこの引戸本体1の前記窪み部51を収納可能かつ手掛け操作可能とする空間部35が形成され、全開位置に達した前記引戸本体1の閉じ側の先端1Cの開閉移動方向の位置は、出入口2における引戸本体1の開き側の先端(側枠部材7の突出部7Aの先端)の前記開閉移動方向の位置よりも開き側の位置となっている。
すなわち、本実施形態では、引戸本体1が全開位置に達したとき、この引戸本体1の窪み部51は引戸本体1と壁3との間に形成された前記空間部35に収納され、この空間部35に収納された前記窪み部51は手掛け操作が可能となっている。そして、全開位置に達した引戸本体1の閉じ側の先端1Cの開閉移動方向の位置は、前記出入口2における前記引戸本体1の開き側の先端(側枠部材7の突出部7Aの先端)の前記開閉移動方向の位置と同じ又はこれよりも開き側の位置となっている。
このため、本実施形態によると、引戸本体1が全開位置に達した際において、この引戸本体1の引き残しはゼロとなる。すなわち、本実施形態によると、引戸本体1が全開位置に達した際において、従来と比較して、より大きな面積を有する出入口2を確保することができるようになる。
また、本発明によると、引戸本体1が全開位置に達した際において、引戸本体1と壁3との間に形成された前記空間部35に手を挿入することで引戸本体1の窪み部51を手掛け操作することができ、これにより、引戸本体1の両面1A,1Bのうちの壁3と対向する面側(本実施形態では室内側である内面部1B側)からこの引戸本体1を閉じ移動させることができる。
また、本実施形態では、図2及び図3に示すように、引戸本体1は出入口2から壁3の厚さ方向にずれた位置に配置されているため、引戸本体1と壁3との間には隙間19が生じる。このため、この隙間19を塞ぐために、出入口2における引戸本体1の開き側の端部には、引戸本体1と壁3との間に生じる前記隙間19を塞ぐための第1塞ぎ部材となっている枠部材23が配置され、前記出入口2における前記引戸本体1の閉じ側の端部にも、前記隙間19を塞ぐための第2塞ぎ部材となっている枠部材20が配置されている。このため。本実施形態によると、引戸本体1が全閉位置に達した際におけるこの引戸本体1と壁3との密閉性は高いものとなる。
なお、本実施形態において、引戸本体1の壁3と対向する面である内面部1Bにおける閉じ側の端縁部に設けられる手掛け部は窪み部51ではなく、引戸本体1の壁3と対向する面とは反対側の面である外面部1Aにおける閉じ側の端縁部に設けられ、引戸本体1の厚さ方向外側に突出している把持部50でもよい。すなわち、引戸本体1の壁3と対向する面である内面部1Bにおける閉じ側の端縁部に設けられる手掛け部は、引戸本体1と壁3との間に形成された前記空間部35に収納可能かつこの空間部35に手を挿入して手掛け操作可能なものであればよい。
図7〜図10には、第2の実施形態に係る引戸装置が示されている。図7は、本実施形態に係る引戸装置の全体を示す正面図であり、図8は、図7のS8−S8線断面図であり、図9は、図7のS9−S9線断面図であり、図10は、図7のS10−S10線断面図である。なお、図8は、図7に示されている全閉位置に達していた引戸本体が開き移動され、この引戸本体が全開位置に達した状態の断面図であり、図1に示されている全閉位置に達していた引戸本体の戸先側の先端部は、図8では2点鎖線で示されている。
本実施形態に係る引戸装置も、前述の第1の実施形態に係る引戸装置と同様に、開閉移動する引戸本体が1個となっている上吊り式の改修用引戸装置となっている。後述するように、本実施形態に係る引戸装置が、全閉位置に達した引戸本体を収納するための戸袋を備えている点で、第1の実施形態に係る引戸装置と大きく異なる。なお、以下に説明する各実施形態において、第1の実施形態と同じ部材、装置には同一符号を付し、その説明は省略する。
図7に示すように、本実施形態に係る引戸装置の引戸本体101で開閉される開口部は、第1実施形態と同様に、出入口2となっており、この引戸本体101も、壁3に形成された出入口2からこの壁3の厚さ方向にずれた位置に配置されている。
この図7に示されているように、本実施形態に係る引戸装置の外枠組みは、上枠部材110と、引戸本体101が全閉位置に達して出入口2を閉じたときにこの引戸本体101の先端が当接する戸先側の竪枠部材111と、この戸先側の竪枠部材111とは引戸本体101の閉じ移動方向反対側に配置されている戸尻側の竪枠部材112と、これらの竪枠部材111,112の間に配置されているとともに、出入口2を開けたときの引戸本体101が収納される戸袋150における出入口2の側の端部に配置された竪額縁部材113と、床4における戸袋150の下端に配置された幅木114と、を含んで構成されている。板材の折り曲げ品又は押出成形品となっているこれらの上枠部材110と戸先側の竪枠部材111と戸尻側の竪枠部材112と竪額縁部材113と幅木114は、引戸装置の外枠組みを形成する枠部材であり、また、開閉移動する引戸本体101に対して不動となった不動部材となっている。そして、本実施形態では、出入口2は、枠部材110〜114で形成された外枠組みの内側の一部の空間となっている。
なお、出入口2は、第1の実施形態と同様に、本実施形態に係る引戸装置の引戸本体1が設置される前から存在しており、この引戸本体1が配置される前のこの出入口2は、2点鎖線で示されている開き戸装置90の開き戸本体91により開閉されていたものである。
図7に示すように、上枠部材110は、戸先側の竪枠部材111から戸尻側の竪枠部材112まで延びる長さを有し、上記枠部材110〜114のうちの1つとなっている竪額縁部材113は、戸袋150における出入口2側の見切り部材となっている。
出入口2を開けたときの引戸本体101が収納される戸袋150は、図7のS8−S8線断面図である図8に示されているように、壁3と、引戸本体101の壁3と対向する面(内面部101B)とは反対側の面(外面部101A)と対向して配置された外面形成部材151と、を含んで構成されている。この外面形成部材151は、図7のS9−S9線断面図である図9に示されているように、内側壁材121と、外側壁材122と、これらの壁材を補強するための補強部材120と、を含んで構成されている。ハット形状の断面が、上枠部材110と幅木114の長手方向(図7及び図8では左右方向)に連続している補強部材120は、竪枠部材111,112と竪額縁部材113の長手方向でもある上下方向に複数個配設されている。そして、これらの補強部材120の上下において、内側壁材121が接着テープ等による結合具で補強部材120に結合され、これらの内側壁材121の外側に外側壁材122が配置され、補強部材120にビスやステープル等の結合具で結合されているこの外側壁材122の表面に、クロス等の壁仕上げ材が取り付けられている。このため、これらの内側壁材121と外側壁材122と補強部材120と壁仕上げ材により、戸袋150を構成する外面形成部材151が形成されている。
また、図9に示されているように、複数個の内側壁材121のうち、2個の内側壁材121Aの上下寸法Hは、市販されている汎用の壁材の上下寸法の正確な半分である。このため、これら2個の内側壁材121Aの上下寸法の合計は、市販されている汎用の壁材の上下寸法と同じであり、したがって、2個の内側壁材121Aを、市販されている汎用の壁材を切断して容易に得ることができるとともに、この市販されている汎用の壁材を、使用されない無駄な部分が生ずることを極力防止して有効に活用できる。
なお、図7で示されている上下複数個の前記補強部材120のうち、上下寸法が大きい補強部材120Aが配置されている外面形成部材151の箇所には、左右方向への長さを有する手摺りを設けることができ、この手摺りは、補強部材120Aに達するビス等の取付具でこの補強部材120Aに取り付けることができる。
なお、本実施形態において、図7で示されている上枠部材110の上側の部分や、戸先側の竪枠部材111に対して出入口2とは反対側の部分、戸尻側の竪枠部材112に対して戸袋150とは反対側の部分にも壁を設けてもよい。この場合において、壁の表面は、戸袋150の外面形成部材151の表面に取り付けられた前記壁仕上げ材の表面と面一又は略面一状態となることが好ましい。
図8で示されているように、引戸本体101の外面部101Aの側に配置されている竪額縁部材113は、壁3の厚さ方向に配置された内部材155と外部材156、及びこれらの部材よりも戸尻側に配置されている補助部材157との組み合わせ品である。外部材156を構成する戸尻側の竪枠部材112の側へ延びている後方延出部156Aと、補助部材157を構成する戸尻側の竪枠部材112の側へ延びている後方延出部157Aの間の隙間には、補強部材120における戸先側の竪枠部材111の側の端部が挿入され、この端部は、ビス等の結合具158で補助部材157の後方延出部157Aに結合され、補強部材120における戸尻側の竪枠部材112の側の端部は、ビス等の結合具116で戸尻側の竪枠部材112の後方延出部112Cに結合されている。
また、第1の実施形態と同様に、壁3と、外面形成部材151との間には、引戸本体101の高さ方向である上下方向に延びる2個の枠部材123,126が、引戸本体101の開閉移動方向に離間して立設されている。これらの枠部材123,126のうち、出入口2の開き側の端部である側枠部材7及び壁3に取り付けられている枠部材123の上下寸法である高さ寸法は、図10に示すように、床4から、枠組み体5の上枠部材8の突出部8Aの先端面までの長さとなっている。図示されていないが、他の枠部材126の高さ寸法も、枠部材123の高さ寸法と同じ又は略同じとなっている。
図8に示すように、側枠部材7及び壁3に取り付けられている枠部材123は、第1の実施形態の枠部材23と同様に、板材の折り曲げ品又は押出成形品となっている内部材124と外部材125の組合せ品となっている。内部材124は、壁3の厚さ方向に延びる延出部124Aと、この延出部124Aの一方の端部から引戸本体101の閉じ移動方向に延びる前方延出部124Bとからなっており、前方延出部124Bは壁3にビス等の結合具29で結合されている。一方、外部材125は、底部125Aと、この底部125Aの両端部から壁3の厚さ方向内側へ延びる2個の延出部125B,125Cと、この延出部125Cの先端部から引戸本体101の閉じ移動方向に延びる前方延出部125Dとからなっており、この前方延出部125Dが前記側枠部材7にビス等の結合具29で結合されている。また、延出部125Bは、内部材124の前記延出部124Aにビス等の結合具30で結合されている。
また、上枠部材110の引戸本体101の戸尻側の端部と対応する位置に配置され、壁3に取り付けられている枠部材126も、第1の実施形態の枠部材26と同様に、板材の折り曲げ品又は押出成形品となっている内部材127と外部材128の組合せ品となっている。内部材127は、壁3の厚さ方向に延びる延出部127Aと、この延出部127Aの一方の端部から引戸本体101の開き移動方向に延びる後方延出部127Bとからなっており、この後方延出部127Bは壁3にビス等の結合具29で結合されている。一方、外部材128は、底部128Aと、この底部128Aの両端部から壁3の厚さ方向内側へ延びる延出部128B,128Cとからなっており、この延出部128Cが内部材127の延出部127Aにビス等の結合具30で結合されている。また、外部材128の底部128Aは、戸尻側の竪枠部材112の後方延出部112Bにビス等の結合具115で結合されている。
図8に示されているように、引戸本体101は、第1の実施形態の引戸本体1と同様に、出入口2から壁3の厚さ方向にずれた位置に配置されているため、引戸本体101と壁3との間には隙間119が生じているが、本実施形態でも、この隙間119を塞ぐための第1及び第2塞ぎ部材が配置されている。
すなわち、出入口2における引戸本体101の開き側の端部に配置されている枠部材123が、引戸本体101と壁3との間に生じる隙間119を塞ぐための第1塞ぎ部材となっており、この枠部材123は、隙間119に挿入配置され、この配置位置は、出入口2における引戸本体101の開き側の端部からこの引戸本体101の開き移動方向へ離間した位置となっている。そして、本実施形態では、図8に示されているように、引戸本体101と、壁3と、枠部材123の出入口2側の面となっている外部材125の延出部125Cとで囲まれた空間部136が、引戸本体101の内面部101Bにおける閉じ側の端縁部に設けられている手掛け部である窪み部51を収納可能かつこの窪み部51を操作可能とする空間部となっている。
また、本実施形態では、引戸本体101が全閉位置に達して出入口2を閉じたときにこの引戸本体101の先端が当接する戸先側の前記竪枠部材111が、出入口2における引戸本体101の閉じ側の端部に配置され、前記隙間119を塞ぐための第2塞ぎ部材を兼ねたものとなっている。
図8に示すように、枠部材123の外部材125の底部125Aと延出部125Cの角部125Eには、枠部材123と引戸本体101との間隔を小さくし、引戸本体101が開き移動中において、この引戸本体101を開き操作した人の指等が、これらの枠部材123と引戸本体101との隙間に挟まってしまうことを防止するための指詰め防止部材153が取り付けられている。ゴムや軟質合成樹脂等の弾性材料又は軟質材料で形成されているこの指詰め防止部材153は、枠部材123の外部材125の底部125Aにビス等の取付具で取り付けられている。これと同様の理由から、竪額縁部材113の角部113Aにも、竪額縁部材113と引戸本体101との間隔を小さくし、引戸本体101が開き移動中において、この引戸本体101を開き操作した人の指等が、これらの竪額縁部材113と引戸本体101との隙間に挟まってしまうことを防止するための指詰め防止部材152が取り付けられている。ゴムや軟質合成樹脂等の弾性材料又は軟質材料で形成されているこの指詰め防止部材152は、竪額縁部材113の内部材155の底部155Aにビス等の取付具で取り付けられている。なお、図10に示されているように、指詰め防止部材152は、竪額縁部材113の上下方向全長又は略全長にわたって設けられており、指詰め防止部材153も、枠部材123の外部材125の上下方向全長又は略全長にわたって設けられている。
図8で示されているように、戸先側の竪枠部材111における出入口2とは反対側の側面部(図8では左側面部)、上枠部材110及び取付部材160における出入口2とは反対側の端部(図8では左端部)には、これらの部分を覆うためのカバー部材180が接着剤等で結合されている。一方、戸尻側の竪枠部材112における出入口2とは反対側の側面部(図8では右側面部)である内側延出部112D,112E、内側壁材121及び外側壁材122における出入口2とは反対側の側面部(図8では右側面部)、枠部材126の外部材128の延出部128B、上枠部材110、後述する点検カバー131及び取付部材160における出入口2とは反対側の端部(図8では右端部)には、これらの部分を覆うためのカバー部材181が接着剤等で結合されている。また、上下方向に延びる角柱状のこれらのカバー部材180,181は、壁3にも接着剤等で結合されている。なお、これらのカバー部材180,181の上下寸法である高さ寸法は、図7及び図9に示すように、床4から後述する上枠部材110の上面部110Aまでの長さを有している。
図10で示されているように、上枠部材110は、水平に延びる上面部110Aと、この上面部110Aにおける上枠部材110の幅方向(図10では左右方向)の一方の端部から垂下した垂下部110Bと、を有し、この上面部110Aの下面には、外面形成部材151を構成する内側壁材121と外側壁材122の上端面が当接している。また、上面部110Aにおける垂下部110Bとは反対側の幅方向の端部には、僅かに下方へ延びた下方延出部110Cが形成され、この下方延出部110Cの下端には、斜め上方であって、壁3の厚さ方向外側へ延出した傾斜延出部110Dが設けられている。これらの延出部110C,110Dは、図7で示されている出入口2と対応する部分だけに設けられている。
なお、図10に示されているように、外面形成部材151における後述する点検カバー131が取り付けられる高さ位置には、図7で示されている上下複数個の前記補強部材120のうち、最上部の補強部材120Bが配置されている。
図10で示されている上枠部材110の下方延出部110Cの下方への延出量は小さいため、この下方延出部110Cの下側は、上枠部材110の開口部110Eとなっており、垂下部110Bとは上枠部材110の前記幅方向とは反対側に形成されているこの開口部110Eから、上枠部材110の内部空間に収納配置されている扉体移動機構についての点検及び整備を含む各種の作業を行えるようになっている。
図10に示すように、通常時の開口部110Eは点検カバー131で塞がれており、この点検カバー131は、上端は斜め下向きに形成され、上枠部材110の傾斜延出部110Dに係止される係止部131Aと、この係止部131Aから鉛直又は略鉛直下向きに延びている正面部131Bと、この正面部131Bの下端から上枠部材110の内側へ水平又は略水平に屈曲している下面部131Cと、この下面部131Cの先端から立ち上がった立上部131Dとを有する。係止部131Aと下面部131Cと立上部131Dにより、板材の折り曲げ品又は押出成形品となっている点検カバー131の全体の剛性が確保されている。
なお、図示されていないが、立上部131Dは、図7の左右方向であって上枠部材110の長手方向でもある点検カバー131の長手方向の全長にわたって設けられておらず、点検カバー131には、この長手方向の両端部において、立上部131Dが存在していない立上部欠損部が設けられている。
前述の開口部110Eを塞いでいるときの点検カバー131は、図10で示されているとおり、係止部131Aが上枠部材110の傾斜延出部110Dに係止され、これにより点検カバー131の重量が上枠部材110で支持されるようになっている。
また、図7で示されているとおり、戸先側の竪枠部材111と竪額縁部材113に取り付けられているブラケットになっていて、点検カバー131の長手方向の両端部と対応する位置に設けられているブラケット132,133に、下面部131Cがねじ部材134,135で止められている。
また、前述した扉体移動機構についての点検等の作業を行うために、点検カバー131を取り外して上枠部材110の上記開口部110Eを開けるときには、ねじ部材134,135を取り外し、これにより、点検カバー131は、上端の係止部131Aを中心に上枠部材110の内外方向に揺動可能となるため、上枠部材110の外側方向へ揺動させることにより、係止部131Aを上枠部材110の傾斜延出部110Dから抜き取ることができる。このようにして点検カバー131を取り外す際において、点検カバー131には、立上部131Dが存在していない前記立上部欠損部が、点検カバー131の長手方向の両端部に設けられているため、言い換えると、ねじ部材134,135が配置される位置と対応する下面部131Cの先端の箇所は、立上部131Dが存在しない立上部欠損部となっているため、この点検カバー131の取り外し作業を、ブラケット132,133の図示しないねじ止め部と立上部131Dとが干渉することなく行える。
また、ねじ部材134,135は、点検カバー131の下面部131Cとブラケット132,133のねじ止め部とに下から上に挿入されるものであるため、点検カバー131の取り付け作業、取り外し作業のために作業者がねじ部材134,135について行う作業は、出入口2に立ったこの作業者が手を上に伸ばすことによって行え、この作業を容易に行える。
さらに、たとえ、何かの原因でねじ部材134,135が脱落することがあっても、点検カバー131の上端の係止部131Aは上枠部材110の傾斜延出部110Dに係止され、点検カバー131の下面部131Cの上側には、ねじ部材134,135の雄ねじ軸部を螺合させるブラケット132,133のねじ止め部が存在するため、点検カバー131が上下の振動等によって上枠部材110から外れてしまうことを有効に防止することができる。
また、本実施形態では、図10で示されているように、上枠部材110の傾斜延出部110Dには、点検カバー131の係止部131Aがこの傾斜延出部110Dに直接接触することを防止するゴムや合成樹脂等による冠部材140が被せられ、これにより、上枠部材110と点検カバー131の材料である金属同士が直接接触して点検カバー131の取付作業時や取外作業時等において異音が発生することや、上枠部材110及び/又は点検カバー131に傷が生ずること等を防止している。
また、図10で示されているように、点検カバー131の正面部131Bの裏面(正面部131Bにおける上枠部材110の内側の面)に、例えば、ハット形状の断面が点検カバー131の長手方向に連続している補強部材141を接着剤や接着テープ等の結合具で結合し、これにより、正面部131Bの面強度を補強し、正面部131Bの上下寸法や左右寸法が大きくても、正面部131Bに撓み変形や開閉時の振動がより発生しないようにしてもよい。
また、図10に示されているように、上枠部材110を壁3に取り付けるための取付部材160は、第1の実施形態の取付部材40と同様に、上枠部材110の長手方向(図7では左右方向)の長さ寸法と同じ長さ寸法を有する2個の枠部材161,162の組合せ品となっている。上枠部材110の垂下部110Bは、ビス等の結合具14で枠部材161の垂下部161Bに取り付けられており、具体的な構造を後述するガイドレール145の基端部145Aも、上枠部材110の垂下部110Bと共にビス等の結合具14で枠部材161の垂下部161Bに取り付けられている。また、枠部材161の上面部161Aは、ビス等の結合具44で枠部材162の上面部162Aに結合されており、枠部材161の垂下部161Bは、上枠部材110の垂下部110Bと共にビス等の結合具44で枠部材162の立上部162Dに結合されている。一方、枠部材162の垂下部162Bは、スペーサ163を介してビス等の結合具45で壁3に結合されている。以上のように、ガイドレール145の基端部145Aが取り付けられた上枠部材110は、取付部材160とスペーサ163を介して壁3に取り付けられている。
本実施形態では、上枠部材110の内部空間に収納配置されている引戸本体101を開閉移動させるための扉体移動機構の原理、構造は、前述した第1の実施形態の扉体移動機構とほぼ同様のものとなっている。
図10に示されているように、上枠部材110の内部には、この上枠部材110の略全長にわたる長さを有するガイドレール145が配置され、引戸本体101の直線の開閉移動を案内するガイド部材となっているこのガイドレール145は、上下に延びる基端部145Aを有する略L字形状であり、前述したように、基端部145Aが、上枠部材110の前記垂下部110Bと共にビス等の結合具14で枠部材161の垂下部161Bに取り付けられている。このように、本実施形態では、ガイドレール13が上枠部材10と一体となっている第1の実施形態とは異なり、ガイドレール145は上枠部材110とは別体となっている。
図10に示されているように、引戸本体101には、この引戸本体101の上方において、ガイドレール145に転動自在に係合しているローラ48がブラケット47を介して取り付けられ、図示されていないが、このローラ48は、前述した第1の実施形態と同様に、上枠部材110の長手方向である引戸本体101の開閉移動方向に2個設けられている。このため、本実施形態に係る引き戸装置も、引戸本体101が2個のローラ48によってガイドレール145から吊り下げられた上吊り式の引戸装置となっている。
また、第1の実施形態と同様に、本実施形態においても、上枠部材110の内部空間には、引戸本体101を自動的に閉じ移動させるための図示しない渦巻きばね式の閉鎖装置が配置され、この閉鎖装置は、上枠部材110における戸先側の竪枠部材111に近い端部の近傍において、上枠部材110の垂下部110Bやガイドレール145の基端部145Aにビス等の結合具で結合されている。このため、本実施形態に係る引戸装置も、自動閉鎖式の引戸装置となっている。
さらに、第1の実施形態と同様に、本実施形態においても、上枠部材110の内部空間には、全閉位置へ向かって閉じ移動しているときの引戸本体101に制動力を作用させるための図示しないシリンダ式の制動装置が、ピストンロッドを戸尻側の竪枠部材112の側に向けて配置されており、この制動装置は、ガイドレール145の基端部145Aにブラケットで取り付けられている。また、図示されていないが、引戸本体101の上記2個のローラ48のうち、戸尻側のローラ48を回転自在に保持しているブラケット47には、ピストンロッドの先端部と引戸本体101の開閉移動方向に対向する当接部材が取り付けられ、これらのピストンロッドの先端部と当接部材とのうち、一方には、他方と吸着力等で接離自在となったマグネット等による接離部材が設けられている。
本実施形態に係る引戸装置も、引戸本体101の開き移動限位置である後退限位置を規定するストップ部材を備えているが、このストップ部材は、第1の実施形態のストップ部材72(図6参照)のように、上枠部材の内部空間には配置されているものではない。本実施形態では、図7〜図9に示されているとおり、上枠部材110等と同様に不動部材となっている戸尻側の竪枠部材112の底部112Aの下部に、引戸本体101の開閉移動方向において引戸本体101と対向しているストップ部材172が取り付けられている。ゴム等の弾性材料からなるこのストップ部材172は、開き移動した引戸本体101が戸袋150の内部に収納され、図8に示すように、引戸本体101の戸尻側の端部101Dがストップ部材172に当接したときに、引戸本体101は後退限位置に達する。
本実施形態では、ストップ部材172は、図7〜図9に示されているように、戸尻側の竪枠部材112の長手方向である上下方向において、床4に近い下部の箇所に配置されている。すなわち、本実施形態では、ストップ部材172は、第1の実施形態のように、ガイドレールと同じ高さの箇所又はガイドレールよりも上側の上部の箇所に配置されていない。したがって、ストップ部材172が配置されている高さ位置は、ガイドレール145よりも低い位置であって、引戸本体101を開閉移動させるためにガイドレール145に係合する係合部材となっているローラ48の上端と引戸本体101の下端との中央位置よりも低い位置となっている。
このため、引戸本体101が、上枠部材110の内部において引戸本体101の上方に配置されているガイドレール145から吊り下げられた上吊り式引戸のものとなっていても、この引戸本体101が後退限位置まで高速で開き移動し、これによって引戸本体101が大きな力でストップ部材172に衝突しても、ガイドレール145に係合しているローラ48を中心として、引戸本体101がこの引戸本体101の開閉移動方向に大きく振れ運動することをなくすことができ、このときの引戸本体101の姿勢の安定性を確保することができる。
なお、戸袋150の外面形成部材151の下部に、戸袋150の内部を掃除するためや、戸袋150の内部に配置されている各種の部材、手段、装置等についてのメンテナンス作業を行うための蓋で開閉されるメンテナンス用開口部を設けてもよい。この場合には、メンテナンス用開口部の範囲内又はこの範囲に近い位置(例えば、メンテナンス用開口部から手が届く位置)にストップ部材172を配置することが好ましい。これによると、メンテナンス用開口部から戸袋150の内部に挿入した手等により、ストップ部材172についてのメンテナンス作業も容易に行えることになる。
また、図7で示されているように、引戸本体101が開閉移動する移動経路における前記竪額縁部材113の配置位置と対応する位置、言い換えると、幅木114における戸先側の竪枠部材111の側の端部には、ガイドローラ175が配置されている。第1の実施形態と同様に、このガイドローラ175は、図10で示されているとおり、下方に向かって開口している引戸本体101の下端部に挿入され、引戸本体101の前記ガイドレール145で案内される開閉移動は、引戸本体101の下端部がガイドローラ175で案内されながら行われる。
次に、改修用引戸装置となっている本実施形態に係る引戸装置の取付方法について説明する。
まず、第1の実施形態と同様に、改修用引戸装置の取付方法の第1工程として、図2において2点鎖線で示されている開き戸装置90に開き戸本体91を回動中心部材であるヒンジ92をと共に取り外す作業を行う。なお、このとき、出入口2の外周を形成する枠組み体5は残す。
次に、第2工程として以下の作業を行う。
まず、第1塞ぎ部材である枠部材123を枠組み体5の側枠部材7及び壁3に結合する作業、取付部材160をスペーサ163を介して壁3に取り付ける作業や、枠部材126を壁3に結合する作業を行う。
次に、上枠部材110をガイドレール145と共に取付部材160に取り付ける作業や、戸尻側の竪枠部材112を枠部材126に取り付ける作業を行う。
この後、床4にガイドローラ175を取り付ける作業を行った後、引戸本体101を吊り上げ、この引戸本体101に取り付けられた2個のローラ48(図10参照)をガイドレール145に係合させる作業を行う。
次に、外面形成部材151を構成する内側壁材121(補強部材120を含む)及び外側壁材122や、竪額縁部材113を配置する作業を行う。
この後、戸先側の竪枠部材111を側枠部材6に取り付ける作業を行った後、左右のカバー部材180,181を取り付ける作業を行う。
そして、最後に、点検カバー131を上枠部材110に取り付ける作業を行う。
図11及び図12には、第3の実施形態に係る引戸装置が示されており、本実施形態は、前述の第2の実施形態に係る引戸装置が備えている戸袋の別実施形態となっている。図11は、本実施形態に係る引戸装置の全体を示す正面図であり、図12は、図11のS12−S12線断面図である。なお、図12は、図11に示されている全開位置に達していた引戸本体が開き移動されて、この引戸本体が全開位置に達したときの状態の断面図である。
図11及び図12に示されているように、壁103には、複数個(図示例では2個)の開口部である出入口202,302が形成されており、本実施形態では、それぞれの出入口202,302を開閉するための引戸本体101,301を備えた2個の引戸装置200,300が設置されている。前述した第1及び第2の実施形態と同様に、これらの引戸装置200,300の引戸本体101,301が配置される前は、2個の出入口202,302は、図示しない開き戸装置の開き戸により開閉されていたものである。
左右2個の引戸装置200,300のうち、図11及び図12において右側に設置されている引戸装置300は、左側に設置されている引戸装置200と同一のものとなっているので、以下、引戸装置200について説明する。
図11に示されているように、本実施形態に係る引戸装置200は、第2の実施形態に係る引戸装置と同様に、全開位置に達した引戸本体101を収納するための戸袋250を備えているが、この戸袋250の構造が、第2の実施形態に係る引戸装置の戸袋150の構造と異なる。
図11及び図12に示されているように、引戸装置200の戸袋250は、第2の実施形態と同様に、壁103と、引戸本体101の壁103と対向する面(内面部101B)とは反対側の面(外面部101A)と対向して配置された外面形成部材251と、を含んで構成されており、この外面形成部材251は、内側壁材221と、外側壁材222と、これらの壁材を補強するための補強部材220とを含んで構成されている。
本実施形態では、図12に示すように、この外面形成部材251の左右寸法(引戸本体101の開閉移動方向の幅寸法)であるW1は、出入口202と出入口302との間の壁103の左右寸法(枠組み体5の左右寸法である幅寸法は除く)であるW2と略同じとなっている。
なお、本実施形態において、第2の実施形態と同様に、竪額縁部材113における出入口302側の側面(言い換えると、出入口202とは反対側の側面)から、戸尻側の竪枠部材112における出入口302側の側面(言い換えると、出入口202とは反対側の側面)までの間には、この間の距離W3の左右寸法(引戸本体101の開閉移動方向の幅寸法)を有する外面形成部材を配置し、戸尻側の竪枠部材112における前記側面から壁103の出入口302側の側面までの間には、この間の距離W4の左右寸法を有する壁部材を配置するようにしてもよい。すなわち、竪額縁部材113における出入口302側の側面から、壁103の出入口302側の側面までの間には、引戸本体101の開閉移動方向の幅寸法W3を有する外面形成部材と、引戸本体101の開閉移動方向の幅寸法W4を有する壁部材を配置するようにしてもよい。
しかし、本実施形態では、外面形成部材251の引戸本体101の開閉移動方向の幅寸法は、竪額縁部材113における出入口302側の側面から、壁103の出入口302側の側面までの間の距離W1(前記W3とW4の合計値)となっている。すなわち、外面形成部材251は、引戸本体101の戸袋250の構成部材となっているとともに、竪額縁部材113における出入口302側の側面から、壁103の出入口302側の側面までの間に配置されるべき壁体を兼用するものとなっている。
このため、本実施形態によると、引戸装置200を設置する際において、戸袋250の外面形成部材251の他に、壁部材を別途用意する必要がなく、引戸装置200の施工作業や設置作業等が容易となる。
なお、図12に示すように、外面形成部材251を構成する内側壁材221及び外側壁材222の出入口302側の側面は、引戸装置200の右側に設置されている引戸装置300の戸先側の竪枠部材311の出入口202側の側面に接着剤等で結合されている。
また、第2の実施形態と同様に、本実施形態では、図12に示されているように、壁103と、外面形成部材251との間には、引戸本体101の高さ方向である上下方向に延びる2個の枠部材123,126が、引戸本体101の開閉移動方向に離間して立設されているが、枠部材126は、壁103における出入口302側の端部近傍に取り付けられている。
また、図12に示されているように、枠部材123と枠部材126との間には、これらの枠部材123,126や戸尻側の竪枠部材112における壁103と対向する面等がビス等の結合具で取り付けられる取付部材261が配置されている。この取付部材261の引戸本体101の閉じ移動方向の端部は、枠部材123に接着剤や接着テープ等の結合具で結合されている。これと同様に、取付部材261の引戸本体101の開き移動方向の端部も、枠部材126に接着剤や接着テープ等の結合具で結合されている。
また、戸尻側の竪枠部材112における壁103と対向する面とは反対側の面は、外面形成部材251の補強部材220や内側壁材221にビス等の結合具で結合されている。
また、戸袋250の内部空間、すなわち、外面形成部材251と取付部材261との間に形成された空間における枠部材126が配置されている位置と同じ位置又は略同じ位置には、枠部材190が配置されており、この枠部材190は、引戸装置300の戸先側の竪枠部材311に取り付けられたアンカー部材191に溶着又は接着により取り付けられているとともに、枠部材126や外面形成部材251の補強部材220にもビス等の結合具で結合されている。
なお、図11に示すように、本実施形態に係る引戸装置200の外枠組みを構成する上枠部材210は、この引戸装置200の戸先側の竪枠部材111から、隣接する引戸装置300の戸先側の竪枠部材311における出入口202側の面まで延びる長さを有しており、また、幅木214は、床4における戸袋250の下端に配置されている。
図13には、第4の実施形態に係る引戸装置の水平断面図が示されており、本実施形態は、前述の第2の実施形態に係る引戸装置が備えている戸袋のさらなる別実施形態となっている。
図12と同様の図となっているこの図13に示されているように、本実施形態に係る引戸装置400は、2個の壁410(図13では左右方向に延びる壁),411(図13では上下方向に延びる壁)が互いに直角に交わるコーナー部412付近に設置されるものである。2個の壁410,411のうちの壁410におけるコーナー部412から離間した場所に出入口402が形成されており、この出入口402が引戸装置400の引戸本体101により開閉されるようになっている。
引戸装置400の戸袋450は、第2及び第3の実施形態と同様に、壁410と、引戸本体101の壁410と対向する面(内面部101B)とは反対側の面(外面部101A)と対向して配置された外面形成部材451と、を含んで構成されており、この外面形成部材451は、図示されない内側壁材と、外側壁材422と、これらの壁材を補強するための補強部材420とを含んで構成されている。
図13に示すように、この外面形成部材451の左右寸法、すなわち、引戸本体101の開閉移動方向の幅寸法であるW5は、壁410の出入口402側の側面から、この壁410が交差する壁411の表面411Aまでの距離W6と略同じ寸法となっている。
なお、本実施形態において、第2の実施形態と同様に、竪額縁部材113における壁411側の側面(言い換えると、出入口402とは反対側の側面)から、戸尻側の竪枠部材112における壁411側の側面(言い換えると、出入口402とは反対側の側面)までの間には、この間の距離W7の左右寸法(引戸本体101の開閉移動方向の幅寸法)を有する外面形成部材を配置し、戸尻側の竪枠部材112における前記側面から、壁410が交差する壁411の表面411Aまでの間には、この間の距離W8の左右寸法を有する壁部材を配置するようにしてもよい。すなわち、竪額縁部材113における壁411側の側面から、壁411の表面411Aまでの間には、引戸本体101の開閉移動方向の幅寸法W7を有する外面形成部材と、引戸本体101の開閉移動方向の幅寸法W8を有する壁部材を配置するようにしてもよい。
しかし、本実施形態では、外面形成部材451の引戸本体101の開閉移動方向の幅寸法は、竪額縁部材113における壁411側の側面から、壁411の表面411Aまでの間の距離W5(前記W7とW8の合計値)となっている。すなわち、外面形成部材451は、引戸本体101の戸袋450の構成部材となっているとともに、竪額縁部材113における壁411側の側面から、壁411の表面411Aまでの間に配置されるべき壁体を兼用するものとなっている。
このため、本実施形態によると、第3の実施形態と同様に、引戸装置400を設置する際において、戸袋450の外面形成部材451の他に、壁部材を別途用意する必要がなく、引戸装置400の施工作業や設置作業等が容易となる。
なお、図13に示すように、外面形成部材451を構成する図示されない内側壁材及び外側壁材422の壁411側の側面は、壁411の表面411Aに接着剤等で結合されている。
また、第2及び第3の実施形態と同様に、本実施形態では、図13に示されているように、壁410と、外面形成部材451との間には、引戸本体101の高さ方向である上下方向に延びる2個の枠部材123,126が、引戸本体101の開閉移動方向に離間して立設されているが、枠部材126は、壁410における壁411側の端部に取り付けられている。
また、図13に示されているように、枠部材123と枠部材126との間には、これらの枠部材123,126や戸尻側の竪枠部材112における壁410と対向する面等がビス等の結合具で取り付けられる取付部材461が配置されている。この取付部材461の引戸本体101の閉じ移動方向の端部は、枠部材123に接着剤や接着テープ等の結合具で結合されている。これと同様に、取付部材461の引戸本体101の開き移動方向の端部は、枠部材126に接着剤や接着テープ等の結合具で結合されている。
また、戸尻側の竪枠部材112における壁410と対向する面とは反対側の面は、外面形成部材451の補強部材420や図示されない内側壁材にビス等の結合具で結合されている。
また、第3の実施形態と同様に、戸袋450の内部空間、すなわち、外面形成部材451と取付部材461との間に形成された空間における枠部材126が配置されている位置と同じ位置又は略同じ位置には、枠部材190が配置されている。この枠部材190は、壁411の表面411Aに接着剤等により取り付けられているとともに、枠部材126や外面形成部材451の補強部材420や図示されない側壁部材にもビス等の結合具で結合されている。
なお、図13に示すように、本実施形態に係る引戸装置400の外枠組みを構成する上枠部材は、この引戸装置400の戸先側の竪枠部材111から、壁411の表面411Aに接着剤等により取り付けられている枠部材190まで延びる長さを有しており、また、幅木は、床4における戸袋450の下端に配置されている。
図14は、第5の実施形態に係る引戸装置の水平断面図であり、第2の実施形態に係る引戸装置の水平断面図が示されている図8と同様の図である。
この図14に示されているように、出入口2の外周を形成する枠組み体5の構成部材である側枠部材7の引戸本体101側の角部7C(2点鎖線で示されている部分)と、この側枠部材7が取り付けられている壁3の部分における引戸本体101側の角部3A(2点鎖線で示されている部分)は、出入口2における引戸本体101の開き側の端部の引戸本体101側の角部となっており、これらの角部7Cと角部3Aは切り欠かれている。このため、出入口2における引戸本体101の開き側の端部の引戸本体101側の角部には、切欠部510が形成されている。
図示されていないが、本実施形態では、この切欠部510は、側枠部材7の上下方向全長又は略全長にわたって形成されている。しかし、この切欠部510は、少なくとも引戸本体101の手掛け部である前記窪み部51の上下方向全長又は略全長にわたって形成されていればよい。
また、本実施形態では、側枠部材6の突出部6A(2点鎖線で示されている部分)は取り除かれており、この側枠部材6の平坦部6Bにおける側枠部材7と対向する面には化粧材となっているカバー部材501が取り付けられている。一方、側枠部材7の突出部7A(2点鎖線で示されている部分)も取り除かれており、この側枠部材7の平坦部7Bにおける側枠部材6と対向する面、及び前記切欠部510の表面にも、化粧材となっているカバー部材502が取り付けられている。
本実施形態では、引戸本体101は、第2の実施形態における引戸本体101よりも壁3に近い位置に配置されるようになっている。言い換えると、本実施形態における引戸本体101から壁3までのこの壁3の厚さ方向の距離は、第2の実施形態における引戸本体101から壁3までのこの壁3の厚さ方向の距離よりも短くなっている。このため、壁3と、戸袋550を構成する外面形成部材551との間に立設される2個の枠部材523,526の形状、構造は第2の実施形態のものとは異なっている。
図14に示されているように、2個の枠部材523,526は、どちらも板材の折り曲げ品又は押出成形品となっているものであり、同じ形状、構造等を有している。枠部材523は、底部523Aと、この底部523Aの両端部から壁3の厚さ方向内側へ延びる2個の延出部523B,523Cと、この延出部523Cの先端部から引戸本体101の閉じ移動方向に延びる前方延出部523Dとからなっており、この前方延出部523Dが壁3にビス等の結合具529で結合されている。一方、枠部材526も、底部526Aと、この底部526Aの両端部から壁3の厚さ方向内側へ延びる2個の延出部526B,526Cと、この延出部526Cの先端部から引戸本体101の閉じ移動方向に延びる前方延出部526Dとからなっており、この前方延出部526Dが壁3にビス等の結合具529で結合されている。
なお、本実施形態においても、引戸本体101と壁3との間に生じた隙間519を塞ぐための第1及び第2塞ぎ部材が配置されている。すなわち、出入口2における引戸本体101の開き側の端部に配置されている枠部材523が、引戸本体101と壁3との間に生じる隙間519を塞ぐための第1塞ぎ部材となっており、この枠部材523は、隙間519に挿入配置され、この配置位置は、出入口2における引戸本体101の開き側の端部からこの引戸本体101の開き移動方向へ離間した位置となっている。そして、本実施形態では、引戸本体101と、壁3と、枠部材523の出入口2側の面となっている枠部材523の延出部523Cとで囲まれた空間部535が、引戸本体101の内面部101Bにおける閉じ側の端縁部に設けられている手掛け部である窪み部51を収納可能かつこの窪み部51を操作可能とする空間となっている。さらに、本実施形態では、前記切欠部510が形成されたことにより形成された空間部536も窪み部51を収納可能かつこの窪み部51を操作可能とする空間となっている。
また、本実施形態においても、引戸本体101が全閉位置に達して出入口2を閉じたときにこの引戸本体101の先端が当接する戸先側の前記竪枠部材511が、出入口2における引戸本体101の閉じ側の端部に配置され、前記隙間519を塞ぐための第2塞ぎ部材を兼ねたものとなっている。
なお、第2の実施形態と同様に、枠部材523にも、枠部材523と引戸本体101との間隔をより小さくし、引戸本体101が開き移動中において、この引戸本体101を開き操作した人の指等が、これらの枠部材523と引戸本体101との隙間に挟まってしまうことを防止するための指詰め防止部材553が取り付けられている。ゴムや軟質合成樹脂等の弾性材料又は軟質材料で形成されているこの指詰め防止部材553は、枠部材523の底部523Aにビス等の取付具で取り付けられている。なお、竪額縁部材113に取り付けられている指詰め防止部材152と同様に、指詰め防止部材553も、枠部材523の上下方向全長又は略全長にわたって設けられている。
また、第2の実施形態と同様に、戸先側の竪枠部材511における出入口2とは反対側の側面部(図14では左側面部)、図示されない上枠部材及び取付部材の左端部には、これらの部分を覆うためのカバー部材580が接着剤等で結合されている。一方、戸尻側の竪枠部材112における出入口2とは反対側の側面部(図14では右側面部)、内側壁材121及び外側壁材122における出入口2とは反対側の側面部(図14では右側面部)、枠部材526の延出部526B、上枠部材、点検カバー及び取付部材における出入口2とは反対側の端部(図14では右端部)には、これらの部分を覆うためのカバー部材581が接着剤等で結合されている。また、上下方向に延びる角柱状のこれらのカバー部材580,581は、壁3にも接着剤等で結合されている。
以上説明した本実施形態では、壁3と枠部材523の延出部523Cと引戸本体101で囲まれた空間部535は小さなものとなっている。しかし、本実施形態では、出入口2における引戸本体101の開き側の端部の引戸本体101側の角部に切欠部510が形成されることにより、空間部536が別に形成されている。このため、引戸本体101が全開位置に達した際の引戸本体101の窪み部51に容易に手を掛けることができるようになっている。
なお、図3に示すように、第1の実施形態では、引戸本体1と、壁3と、枠部材23の出入口2側の面となっている外部材25の延出部25Cとで囲まれた空間部35は、引戸本体1の壁3と対向する内面部1Bにおける閉じ側の端縁部に設けられた手掛け部である窪み部51を収納かつこの窪み部51を手掛け操作するのに充分なスペースを有している。また、図8、図12及び図13に示すように、第2〜第4の実施形態でも、引戸本体101と、壁3と、枠部材123の出入口2側の面となっている外部材125の延出部125Cとで囲まれた空間部136は、引戸本体101の壁3と対向する内面部101Bにおける閉じ側の端縁部に設けられた手掛け部である窪み部51を収納かつこの窪み部51を操作するのに充分なスペースを有している。
このため、第1の実施形態では、引戸本体1の壁3と対向する内面部1Bにおける閉じ側の端縁部に設ける手掛け部は、引戸本体1の壁3と対向する内面部1Bとは反対側の外面部1Aにおける閉じ側の端縁部に設けられた手掛け部である把持部50でもよい。これと同様に、第2〜4の実施形態でも、引戸本体101の壁3と対向する内面部101Bにおける閉じ側の端縁部に設ける手掛け部も、引戸本体101の壁3と対向する内面部101Bとは反対側の外面部101Aにおける閉じ側の端縁部に設けられた手掛け部である把持部50でもよい。
また、以上の第1〜第4の実施形態では、第5の実施形態と同様に、出入口2の外周を形成する枠組み体5の突出部6A,7A、8Aは取り除いてもよい。そして、これらの突出部6A,7A,8Aを取り除いた後に残る平坦部6B,7B,8Bの表面には、第5の実施形態と同様に、化粧材となっているカバー部材を取り付けるようにしてもよい。
以上の第1〜第5の実施形態では、引戸本体の個数は1個であったが、複数個でもよい。引戸本体の個数が複数個である場合には、これらの引戸本体は、片引き式のものでもよく、引分け式のもの(例えば、左右1組の引戸本体により開口部が開閉されるものや、左右2組の第1及び第2引戸本体により開口部が開閉されるもの等)でもよい。
また、以上の第1〜第5の実施形態に係る引戸装置は上吊り式引戸装置であったが、引戸本体が、この引戸本体に上下に配置されたガイド部材により案内されて開閉移動する一般的な引戸装置等でもよい。