JP4925658B2 - 電解槽 - Google Patents

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Description

本発明は、水道水等を電気分解して陰極水と陽極水を生成する際のように電解液を流しながら比較的連続して電解を行う際に適した電解槽に関するものである。
従来、水道水等を電気分解して陰極水と陽極水を生成する際等に用いられる流動式の電解槽は、電解槽本体の中央部に隔膜と電極板が配設され、隔膜と電極板の間にそれぞれ保持部材(ネットや支持枠等)を介在して一対の電極室が形成され、電解槽本体の一端部に一対の入水口が設けられ、他端部に一対の出水口が設けられている。そして、入水口から電解液を電解槽本体の電極室内に供給し、両電極板間に所定電圧を印加して電気分解により、陰極水と陽極水(電解水)を生成していた。
しかしながら、上記の電解槽は、入水口や出水口が簡単な円形管で構成されて電解槽における上下端部の中央部に配置されている。また、隔膜と電極板の間に保持部材(ネットや支持枠等)が介在されている。このような構造であると、水溶液が電極室全体にわたって均一に流れ難く電解効率が低下する。また従来の電解槽では、電極や隔膜の保持部材が抵抗要素(凹凸形状による抵抗)なって、水の流れに乱れが生ずることも電解効率の低下の要因となっていた(特開平8−309356号公報の図4,特開平8−309358号公報の図4〜6)。
特に、水の電気分解においては、分解に伴って水素ガスや酸素ガス,塩素ガス等の気泡が発生するが、電解液が全体的に均一に流れないと、エア溜りやイオン濃度勾配等の偏りが生ずる。このような偏りが生じた場合、電極の有効面積が減少し、スケール(カルシウムやマグネシウム等の炭素塩)の局部付着が発生して、電解効果が及ばない箇所が発生することも電解効率の低下する原因の1つとされる。
また、通常、水の電気分解において、理論上、1.23V以上の電解電圧があれば電気分解反応が起るが、必要とする生成物の量はファラデーの法則から電気量(電流と時間との積)に比例し、グラム当量の物質生成に要する電気量は1F(96485c)となる。そのため、電解電流量によって電解水の生成水質が左右され、従って必要な電解流量を確保するためには、それに見合った電解電圧を印加する必要がある。
ところで、電気分解により発生した水素ガスや酸素ガス等の気泡が電極板表面や電極板近傍のバルク相に存在していると、電解の不均衡化が生じて電極反応が起り難い現象となり、必要以上の電解電圧を印加しないと所定の電解電流が得られないことになる。そこで、必要以上の電解電圧を印加することになるが、必要以上の電解電圧を印加すると、スケール付着がより増大し、電極板に局所的な貴金属コーティングの消耗が発生して損害を促進させて、電解槽の寿命を短縮し耐久性を低下させるという問題が生じる。
更に、生成されたガス以外にも、前述のような保護部材や入水口や出水口などのその他の形状による阻害要因によって電解水の流れが均一でない場合がある。そのような場合には、水の流れは単一方向とはならず、擬似的な乱流状態になり、エア溜りやイオン濃度の勾配を発生させることになる。以上の事柄から、従来の電解槽おいては、電解効果が及ばない箇所を発生させ、損害を与えて電極板の本来の機能を減退させて電極槽の電界効果を低下させ、また耐久性を著しく低下させるものであった。
特開平8−309356号公報 特開平8−309358号公報
本発明は、前述の問題点を解決しようとするもので、電極板が本来保有している機能を十分に発揮させて電解効率が高められ、耐久性の向上が図られる電解槽を提供することを目的としている。
本発明に係る電解槽は、一対の電解槽フレームで構成された電解槽本体内に、該両電解槽フレームにより挟持された隔膜が張設され、また各電解槽フレームの内壁面に電極板が張設されて一対の電解室が形成され、前記電解槽本体の一端部に入水口を有する一対の入水溜部が設けられ、他端部に出水口を有する一対の出水溜部が設けられ、前記入水溜部及び出水溜部に電解室に通ずるスリット状開口が形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、電解槽本体内に両電解槽フレームより挟持された隔膜が張設され、各電解槽フレームの内壁面に電極板が張設されて一対の電解室が形成されているので、電極板と隔膜の間に形成された各電解室は、凹凸形状による抵抗要素がなく水溶液が電解室全体に均一に流れて水素ガスや酸素ガス等の発生に伴うエア溜りやイオン濃度勾配等の偏りが生じなくなる。従って、電極板が本来保有している機能を十分に発揮され、電解効率が高められる。
また、エア溜りやイオン濃度勾配等の偏りを生じさせないことから、発生する水素ガスや酸素ガス等の気泡が電極板表面や電極板近傍のバルク相に存在しなくなり、電界の不均衡が生じなくなり、適切な電極反応になって必要以上の電解電圧の印加が避けられ、電極の局所的な貴金属コーティングの消耗がなくなって、寿命が拡大し耐久性が高められる。また、隔膜と電極板とを支持するネットや支持枠(保持部材)は不必要になって、構造の簡単化及び薄型化にも役立つことになる。
前記の本発明において、入水溜部及び出水溜部を略水滴状断面形状にした場合には、入水溜部及び出水溜部がコアンダ効果(水流が近接する壁面に付着する現象)を利用した構成になって流れが安定し、水溶液が入水溜部からスリット状開口に向って集まりながら流れて電解室に円滑に供給され、また生成された電解液が電解室からスリット状開口を通り広がりながら流れて出水溜部に円滑に導かれる。従って、水溶液の流れが電解室全体に均一に流れて適切な電気分解が行われ、電解効率の促進が図られる。
また、スリット状開口が、電解室の断面形状と略同一の開口になっていると、水溶液の流れが電解室全体に亘ってより一層均一に流れて適切な電気分解が行われ、電解効率が促進される。
加えて、電解室の電極板と隔膜が電解槽本体中央部を貫通する支持軸で補助的に支持した場合には、電極板と隔膜の保持が確実になって、安定した電気分解が長期に亘って維持され、耐久性が増大する。
以上の手段を有する本発明によれば、凹凸形状による抵抗要素がなく水溶液が槽全体に均一に流れて水素ガスや酸素ガス等の発生に伴うエア溜りやイオン濃度勾配等の偏りが生じなくなる。また、電界の不均衡がなくなって適切な電極反応になり必要以上の電解電圧の印加が避けられ、電極の局所的な貴金属コーティングの消耗がなくなる。従って、電極板が本来保有している機能を十分に発揮して電解効率が高められ、また耐久性の向上が図られる。
以下、図面に示した本発明の実施の形態について、説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る電解槽の概略断面図、図2はその電解槽の一方側電解槽フレームの側面図、図3はその電解槽の下端部の拡大断面図、図4はその電解槽の下端部の分解斜視図である。
本実施の形態は、適宜の厚さを有して矩形状を呈するとともに、内部に一対の電極室6a,6bと、上・下端部に設けられた入水溜部8a,8b及び出水溜部9a,9bがそれぞれ対向して設けられている一対の電解槽フレーム2a,2bから構成される。
そして、各電解槽フレーム2a,2bは、その周囲に対応するリブと溝及びパッキン収容溝が形成されてリブと溝が嵌合し、パッキン収容溝にパッキン3が装入されて両電解槽フレーム2a,2b同士が係合して電解槽本体1を構成しており、電解槽本体1の左右電解槽フレーム2a,2b間は、パッキン3によって水密に接続され、各電解槽フレーム2a,2bの電極室6a,6bには、その内壁面に当接して対応する電極板(陽極板と陰極板)4a,4bが張設されている。
また、電解槽本体1の内部には、両電解槽フレーム2a,2bで挟持された隔膜5が張設され、その隔膜5は両電解槽フレーム2a,2bによる挟持の際に、前述の周囲の溝とリブとの結合により引っ張られて緩みなく張設されており、電極室6a,6bは、各電極板4a,4bと隔膜5の幅が1mm程度の帯状の電解室を形成している。
また、電解槽本体1の下端部には、入水口7a,7bからの入水を一時的に収容する入水溜部8a,8bが設けられ、上端部には出水口(図示せず)への出水を一時的に収容する出水溜部9a,9bがそれぞれ設けられている。これらの入水溜部8a,8b及び出水溜部9a,9bは、略水滴状の断面形状を有して、それぞれ絞られた先端部に電極室6a,6bに通ずるスリット状開口10Aおよび10Bを形成する開口部10a,10bおよび10c,10dがそれぞれ形成されている。また、電解槽本体1の中央部には、両電解槽フレーム2a,2bを貫通する支持軸11が設けられ、各電極板4a,4bと隔膜5を補助的に支持している。
本実施の形態を使用するには、始めに、水道水等の電解液を、入水口7a,7bに導入する。入水された電解液は、略水滴状の断面形状を有する入水溜部8a,8bに一旦溜められてからスリット状開口10Aを通って各電極室6a,6bに供給される。次いで、電極板4a,4b間に所定電圧を印加すると、正・負イオンが移動して電気分解が行われる。この電気分解により生成された陰極水と陽極水(電解水)は、各電極室6a,6bからスリット状開口10Bを通って出水溜部9a,9bに別々に導かれて一旦溜められ、出水口から電解槽本体1外に出水される。
本実施形態の電解槽は、電解槽本体1内に両電解槽フレーム2a,2bより挟持された隔膜5が張設され、各電解槽フレーム2a,2bの内壁面に電極板4a,4bが張設されている。従って、各電解室6a,6bの電極板4a,4bと隔膜5の間には、凹凸形状による抵抗要素がなく水溶液が全体に均一に流れて水素ガスや酸素ガス等の発生に伴うエア溜りやイオン濃度勾配等の偏りが生じないので高い電解効率を得ることができる。
また、均一な電解液は均一に流れるので、エア溜りやイオン濃度勾配等の偏りを生じることがなく、発生する水素ガスや酸素ガス等の気泡が電極板4a,4bの表面や近傍のバルク相に存在しなくなって電界の不均衡がなくなり、適切な電極反応が行われる。従って、必要以上の電解電圧の印加が避けられ、電極板の局所的な貴金属コーティングの消耗がなくなって寿命が拡大し、耐久性が高められる。このようにして、良質な陰極水と陽極水(電解水)が生成される。
表1は本電解槽を使用して電解室内に障害物(保持部材)を装入した場合と装入しない場合における、電解電圧及び電解電流の値を比較したものであり、これらの結果から障害物があると電界効果が阻害され、エア溜りやイオン濃度の勾配等の偏りによる電解効率が低下することが判明された。尚、障害物として、隔膜と電極板の間に薄いネットを介在させた。
Figure 0004925658
また、本実施の形態を使用して10時間電解を行った後のスケール付着状態を観察したところ、前記障害物ありの条件下ではネットの交差部分にスケール積層が見られたが、障害物なしの条件下では、電極板表面全体に薄っすらとスケール付着が見られた。このことにより、水路に凹凸形状が存在すると電解生成された炭酸塩(カルシウムやマグネシウム等)の微細粒子は、淀み部分に積層され、電解効率を低下させることが考えられる。障害物がない場合でも、全体的に薄っすらとスケール付着が観測されたものの逆電解による電極洗浄によって、容易に除去可能であることが判明した。
表2は、電極表面の白金コーティングされている残存膜厚の測定結果を示すものであり、障害物がある場合には、残存膜厚にバラツキが見受けられたが、障害物がない場合には、若干のバラツキがあるものの全体的に消耗していることが伺える。測定ポイントは、ランダムに選定した。
Figure 0004925658
更に、図5は、本発明の異なる実施形態の電解槽の下端部の拡大断面図を示したものであり、この実施の形態は、全体の構成は前記図1乃至図4に示した実施の形態とほぼ同様であるが、入水溜部13a,13b、出水溜部(図示せず)の構成が異なる。以下、入水溜部13a,13b側について図面を参照して説明する。
即ち、前記図1乃至図4に示した実施の形態が、入水溜部8a,8b及び出水溜部9a,9bは、スリット状開口10Aおよび10Bを形成する略水滴状の断面形状を有して、互いに対向して開口した開口部10a,10bおよび10c,10dがそれぞれ形成されていたので一旦両入水溜部8a,8bから供給された電解液が合流してからスリット状開口10Aへ流入し、スリット状開口10Bから流出した電解液が10c,10dにおいて併流しながら、出水溜部9a,9bに導入される。これに対して本実施の形態は、入水溜部13a,13bが略水滴状の断面形状を有し、それぞれ先端部に電極室14a,14bに通ずる電解室14a,14bの断面形状と略同一のスリット状開口15Aに直接的に接続するスリット状開口部15a,15bが形成されている。
従って、それぞれの入水溜部8a,8bに供給された電解液がそのまま入水溜部8a,8bからスリット状開口15Aに流入するので電解液が電解室14a,14bの全体に亘ってより均一に流れて適切な電気分解が行われ、電解効率が更に促進される。また、電解室14a,14bからの陰極水と陽極水(電解水)は、各電極室6a,6bからスリット状開口を通って互いに触れることなく直接出水溜部に別々に導かれるので純度のよいものを得ることができる。
尚、前記各実施の形態は、電極室6a,6bに挟んで両側に対応させてそれぞれ入水溜部8a,8bを有する一対の入水口7a,7b(出水溜部9a,9bを備えた出水口)を備えた構成としたことにより電解液をより均一に電極室6a,6bに供給するともに排出することが可能であるが、本発明は、入水口および出水口に電解室に通ずるスリット状開口が形成されていればよく、入水溜部、出水溜部の数や形状は問わない。
加えて、前記実施の形態では電解液として水道水等を用いて陰極水と陽極水(電解水)を製造する場合を示したが、他の電解液についても同様に実施することができることはいうまでもない。
本発明の一実施の形態に係る電解槽の概略断面図である。 その電解槽の一方側電解槽フレームの側面図である。 その電解槽の下端部の拡大断面図である。 その電解槽の下端部の分解斜視図である。 本発明の他の実施形態に係る電解槽の下端部の拡大断面図である。
符号の説明
1,12 電解槽本体、 2a,2b 電解槽フレーム、 4a,4b 電極板、 5 隔膜、 6a,6b,14a,14b 電極室、 8a,8b,13a,13b 入水溜部、 9a,9b 出水溜部、 10A,10B、15A スリット状開口、 11 支持軸

Claims (3)

  1. 一方の端部に入水口を設けるとともに対向する他方の端部に出水口を設けた電解槽本体内に一対の電極板が中央部に隔膜を挟んで配設された電解室が形成されており、前記電解室に入水口から出水口へと電解液を流して前記隔膜を挟んで配置された一対の電極板の間で電気分解が行われる電解槽において、前記入水口および出水口に電解室に通ずるスリット状開口が形成されている入水溜部及び出水溜部が設けられている電解槽において、前記入水溜部及び出水溜部は、基端部にスリット状開口に接続する開口を有して略水滴状断面形状を有することを特徴とする電解槽。
  2. 前記入水溜部及び出水溜部に形成されたスリット状開口が、前記電解室の断面形状と略同一形状である請求項1記載の電解槽。
  3. 前記電解槽本体が対向面を合わせて電解室を形成する一対の電解槽フレームで構成されているとともに、前記各電解槽フレームの電解室形成部の内壁面に電極板がそれぞれ張設され、前記電極板及びそれらの中央に配置される隔膜が該両電解槽フレーム間に支持された支持軸に補助的に支持されている請求項1または2記載の電解槽。
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