JP4925473B2 - 放電加工装置における腐食防止剤の回収方法 - Google Patents

放電加工装置における腐食防止剤の回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、放電加工装置における腐食防止剤の回収方法に関し、特に、加工液のイオン交換処理を行うイオン交換樹脂に吸着された腐食防止剤の回収方法に関する。
水系加工液にワークを浸漬して放電加工を行う場合、鉄系や超硬合金(焼結合金)のワークに腐食が生じることが知られている。ワークにおける腐食は、黄銅のワイヤ電極を負極、鉄系や超硬合金のワークを正極として、負極と正極の電位差から負極と正極との間に腐食電流が流れて、正極側のワークが溶出して生じると考えられている。
そこで、このような腐食を防止すべく、従来は例えば特許文献1または特許文献2に示すように、加工液に腐食防止剤を添加して放電加工を行いワークの腐食を防止する方法が広く採用されている。
特開昭62−251013号公報 特開平4−250921号公報
ところで、放電加工においては加工液の比抵抗値を所定に設定するためイオン交換樹脂への通水が適宜行われるが、この通水により腐食防止剤がイオン交換樹脂に吸着されることがある。
そこで、加工液への腐食防止剤の補給が適宜行われるが、腐食防止剤の補給量が多くなるとランニングコストの増大を招くこととなる。
近年は高い加工精度の要求から加工液の比抵抗値を高く設定するためイオン交換樹脂の通水量は多くなる傾向となっているが、このように通水量が多くなると腐食防止剤の吸着量も多くなってしまい、ランニングコストの増大が一層大きな問題として指摘されていた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、イオン交換樹脂に吸着した腐食防止剤を回収してランニングコストを低減させることができる放電加工装置における腐食防止剤の回収方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、放電加工装置における腐食防止剤の回収方法に係る請求項の発明は、加工液に添加された腐食防止剤が加工液を循環供給する加工液循環系統に備えられたイオン交換樹脂に吸着するとともに、吸着した腐食防止剤をイオン交換樹脂から回収する放電加工装置における腐食防止剤の回収方法であって、イオン交換樹脂を加工液循環系統に複数備えるとともに、複数のイオン交換樹脂において腐食防止剤の吸着量の少ないイオン交換樹脂から腐食防止剤の吸着量の多いイオン交換樹脂に順次通水して腐食防止剤の吸着量の多いイオン交換樹脂から吸着した腐食防止剤を脱離させ回収することを特徴とする放電加工装置における腐食防止剤の回収方法。
本発明によれば、イオン交換樹脂を加工液循環系統に複数備えるとともに、複数のイオン交換樹脂において腐食防止剤の吸着量の少ないイオン交換樹脂から腐食防止剤の吸着量の多いイオン交換樹脂に順次通水して腐食防止剤の吸着量の多いイオン交換樹脂から吸着した腐食防止剤を脱離させ回収することによりランニングコストを低減させることができる。
ここで、腐食防止剤はプリン塩基類からなり(請求項)、該プリン塩基類は例えばアデニンとすることができる(請求項)。
本発明によれば、イオン交換樹脂に吸着した腐食防止剤を回収することによりランニングコストを低減させることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1実施形態を示すワイヤカット放電加工装置の全体構成の概略を示す図である。同図を参照してワイヤカット放電加工装置1の概要を説明すると、ワイヤカット放電加工装置1は、上側ガイド組体2と下側ガイド組体3との間に工具電極としてのワイヤ電極Eを連続的に供給し、ワークWを加工槽4内のワークスタンド5に載置した状態で水系加工液(以下、水系加工液を単に加工液とする)に浸漬し、各軸モータ6によりワイヤ電極EとワークWとの極間の距離を所定に設定しつつ電源装置7により極間に所定の電圧を印加して放電を発生させワークWの放電加工を行う構成となっており、加工槽4には加工液循環系統10により加工液が連続的に循環供給される。
すなわち、図2に示すように、加工液循環系統10は、汚液槽11aとろ過フィルタ11bと清水槽11cとを備える加工液貯留槽11、加工液温度設定装置12、腐食防止剤添加装置13、第1のイオン交換樹脂塔14、第2のイオン交換樹脂塔15を構成機器として含み、加工槽4から排出された汚れた加工液が汚液槽11aに貯留されるとともに、ろ過フィルタ11bを介して清澄化された加工液が清水槽11cに貯留され、加工液は加工液温度設定装置12により所定の温度に、第1のイオン交換樹脂塔14または第2のイオン交換樹脂塔15により所定の比抵抗値にそれぞれ設定され、更に腐食防止剤添加装置13によりワークW等の腐食を防止する腐食防止剤が所定量添加されて加工槽4に循環供給される。
腐食防止剤添加装置13においては通水性のある包装材に包装された粉末状の腐食防止剤が溶解槽13aに備えられており、腐食防止剤添加用ポンプ13bにより溶解槽13aに加工液を供給することによって腐食防止剤を加工液に溶解しながら添加する。
本発明においては、腐食防止剤はプリン塩基類からなる薬剤、より詳しくは化1に示す粉末状のアデニン(6−アミノプリン)〔CAS登録番号73−24−5〕としている。
Figure 0004925473
すなわち、プリン塩基類であるアデニンは、加工液に添加することによりワークW等の防食に大きな効果を発揮することが本発明者により明らかとされている。アデニンはイオン交換樹脂に吸着されることも本発明者により明らかとされており、イオン交換樹脂への吸着により加工液中のアデニンの濃度が低下する。
第1のイオン交換樹脂塔14および第2のイオン交換樹脂塔15は相互に並列に配置されており、本実施形態にあっては、一方の樹脂塔に加工液が通水されるときは他方の樹脂塔は非通水状態となるように入口バルブ14a,15aおよび出口バルブ14b,15bを所要に操作しつつ、樹脂通水ポンプ16を動作させて加工液のイオン交換処理を行う。また、本実施形態にあっては、通水時間が所定の時間に到達したときに、通水状態にあるイオン交換樹脂塔に相当量のアデニンが吸着されたものと見做してバルブ操作を行いイオン交換樹脂塔の切り換えを行う。
ワイヤカット放電加工装置1には更にイオン交換樹脂に吸着したアデニンを回収すべく腐食防止剤回収系統20が備えられている。腐食防止剤回収系統20は水源20aを有し、水源20aは第1のイオン交換樹脂塔14および第2のイオン交換樹脂塔15を介して加工液循環系統10の清水槽11cに接続されている。
より詳しくは、図2に示すように、腐食防止剤回収系統20は、第1のイオン交換樹脂塔14と第1のイオン交換樹脂塔14の入口バルブ14a間の配管に接続される第1の回収系統21および第2のイオン交換樹脂塔15と第2のイオン交換樹脂塔15の入口バルブ15a間の配管に接続される第2の回収系統22を含み、第1の回収系統21には第1の回収用バルブ21aが、第2の回収系統22には第2の回収用バルブ22aが、それぞれ備られている。
図3に示すように、第1のイオン交換樹脂塔14に吸着したアデニンを回収する場合は、第1のイオン交換樹脂塔14の入口バルブ14aを閉塞し、かつ、第1のイオン交換樹脂塔14の出口バルブ14bを開放しつつ、腐食防止剤回収系統20の第1の回収用バルブ21aを開放し、第1のイオン交換樹脂塔14に所定の液、より詳しくは水道水を通水する。
また、図4に示すように、第2のイオン交換樹脂塔15に吸着したアデニンを回収する場合は、第2のイオン交換樹脂塔15の入口バルブ15aを閉塞し、かつ、第2のイオン交換樹脂塔15の出口バルブ15bを開放しつつ、腐食防止剤回収系統20の第2の回収用バルブ22aを開放し、第2のイオン交換樹脂塔15に水道水を通水する。
ここで、本発明者により、プリン塩基類であるアデニンが吸着したイオン交換樹脂塔に水道水を通水することにより吸着したアデニンがイオン交換樹脂塔から脱離し、かつ、脱離したアデニンはワーク等の腐食防止効果を引き続き発揮することが明らかとされている。また、本発明者により、水道水による腐食防止剤の脱離量は比抵抗値を所定に設定した加工液よりも多くなることも明らかとされている。通常、水道水の比抵抗値は10000Ω・cm以下であり、加工液の比抵抗値は50000Ω・cm乃至100000Ω・cm程度である。
なお、腐食防止剤回収系統20によるイオン交換樹脂に吸着したアデニンの回収は、加工液の蒸発時や加工液の交換時、更にはワイヤカット放電加工装置1の最初の稼動時に加工液循環系統10への加工液の補給や供給を兼ねて行われる。
ワイヤカット放電加工装置1には上述したアデニンの回収方法を行うべくNC制御装置30が併設されている。このNC制御装置30は、図5に示すように、入力部31、記憶部32、処理部33からなる。
入力部31は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等で構成されており、この入力部31から処理部33における各種処理に必要な情報が入力される。
記憶部32は、ハードディスク、CD−ROM等で構成されており、放電加工を実行するために必要な各種NCプログラム等を記憶する機能を有している。
処理部33は、入力部31から入力された各種情報と記憶部32に記憶されたNCプログラムに基づいて所定の制御信号を出力し放電加工を実行しつつ上述したアデニンの回収方法を実行する機能を有している。処理部33はCPUがその機能を果たす。
次にNC制御装置30による上述したアデニンの回収方法を図6のフローチャートに基づいて説明する。なお、以下においては第1のイオン交換樹脂塔14により加工液のイオン交換処理を所要に行った後に第2のイオン交換樹脂塔15に切り換えて、第1のイオン交換樹脂塔14に吸着されたアデニンを回収する場合について説明するものとする。
すなわち、ステップS10において、まず入力部31からオペレータが所定の情報を入力するとともに、処理部33が入力された情報に基づいて制御信号を出力し第1のイオン交換樹脂塔14の入口バルブ14aおよび出口バルブ14bを開放して第1のイオン交換樹脂塔14を通水可能な状態とし、第2のイオン交換樹脂塔15の入口バルブ15aおよび出口バルブ15bを閉塞して第2のイオン交換樹脂塔15を通水されない状態とする。なお、腐食防止剤回収系統20の各バルブ21a,22aは閉塞した状態とする。
次いで、ステップS20において、処理部33がステップS10で入力された情報に基づいて制御信号を出力し加工液温度設定装置12、腐食防止剤添加用ポンプ13a、および樹脂通水ポンプ16を動作させて、加工液の温度、加工液中のアデニンの濃度、比抵抗値を所定に調整する。そして、更に処理部33が記憶部32から所定のNCプログラムを読み出しつつ制御信号を出力し、各軸モータ6および電源装置7を動作させてワークWの放電加工を実行する。放電加工においては加工屑を介して加工液中に金属イオンが発生し比抵抗値が減少するので第1のイオン交換樹脂塔14に適宜通水し比抵抗値の調整を行う。この通水により第1のイオン交換樹脂塔14にアデニンが吸着する。
次に、ステップS30において、オペレータが第1のイオン交換樹脂塔14の通水時間が所定の時間に到達したことを確認すると、オペレータは第1のイオン交換樹脂塔14に相当量のアデニンが吸着されたと見做す。
そして、ステップS40において、オペレータが入力部31からイオン交換樹脂塔を切り換えるための情報を入力し、該入力された情報に基づいて処理部33が制御信号を出力して第1のイオン交換樹脂塔14の入口バルブ14aを閉塞し、かつ、第2のイオン交換樹脂塔15の入口バルブ15aおよび出口バルブ15bを開放してイオン交換樹脂の切り換えを行う。これにより以後加工液のイオン交換処理は第2のイオン交換樹脂塔15が行う。
続いて、ステップS50において、オペレータが入力部31から腐食防止剤回収系統20による第1のイオン交換樹脂塔14に吸着されたアデニンの回収操作を開始するための情報を入力する。そして、処理部33が入力された情報に基づいて制御信号を出力して腐食防止剤回収系統20の第1の入口バルブ21aと第1のイオン交換樹脂塔14の出口バルブ14bを開放するとともに、水源20aから水道水を供給して第1のイオン交換樹脂塔14に吸着されたアデニンを脱離させ該脱離させたアデニンを水道水とともに加工液循環系統10に補給する(図3)。これにより、第1のイオン交換樹脂塔14に吸着したアデニンが回収されランニングコストの低減を図ることができる。
次に本発明の第2実施形態について図7に基づいて説明する。すなわち、本発明の第2実施形態は、吸着量の少ないイオン交換樹脂塔40(未だアデニンが吸着されていない場合を含む)を上流側に、吸着量の多いイオン交換樹脂塔50を下流側に、それぞれ配置し、イオン交換樹脂塔40からイオン交換樹脂塔50に加工液を順次通水することにより、アデニンの吸着量の多いイオン交換樹脂塔50から吸着したアデニンを所要に脱離させ回収する構成を示している。
この場合においては、例えば吸着量が平衡に到達したイオン交換樹脂塔を下流側に配置し、未だアデニンが吸着されていないイオン交換樹脂塔を上流側に配置する等する。
次いで本発明の第3実施形態について図8および図9に基づいて説明する。本発明の第3実施形態は上述した第1実施形態に対し第1のイオン交換樹脂塔14の出口側と第2のイオン交換樹脂塔15の入口側とを接続する第1の直列系統60および第2のイオン交換樹脂塔15の出口側と第1のイオン交換樹脂塔14の入口側とを接続する第2の直列系統70を加工液循環系統10に更に備えるとともに、各直列系統60,70にバルブ60a,70aを備える。
すなわち、図8に示すように、第1の直列系統60に備えるバルブ60aを開放し、かつ、第2の直列系統70に備えるバルブ70aを閉塞することにより、第1のイオン交換樹脂塔14から第2のイオン交換樹脂塔15に加工液が通水される。また、図9に示すように、第1の直列系統60に備えるバルブ60aを閉塞し、かつ、第2の直列系統70に備えるバルブ70aを開放することにより、第2のイオン交換樹脂塔15から第1のイオン交換樹脂塔14に加工液が通水される。
第1のイオン交換樹脂塔14と第2のイオン交換樹脂塔15との間でアデニンの吸着量に差が生じている場合には、各直列系統60,70の各バルブ60a,70aの開閉操作を所要に行うことにより、アデニンの吸着量の少ないイオン交換樹脂塔からアデニンの吸着量の多いイオン交換樹脂塔に通水順序を適宜変更し、アデニンの吸着量の多いイオン交換樹脂塔から吸着したアデニンを脱離させて回収する。
なお、腐食防止剤回収系統20により水道水をいずれか一方のイオン交換樹脂塔に通水して吸着したアデニンを所要に脱離させアデニンの吸着量が相対的に少ない状態とし、アデニンを脱離させたイオン交換樹脂塔から他方のイオン交換樹脂塔に順次通水されるように通水順序を適宜変更することとしてもよい。上述した第1実施形態に対し腐食防止剤回収系統20によるアデニンの回収操作を少なくすることができるので加工液の補給回数が制限される場合に特に有効となる。
本発明は、放電加工において腐食防止剤を回収する場合に役立つ。
本発明の実施形態に係るワイヤカット放電加工装置の全体概要を示す構成図である。 ワイヤカット放電加工装置における加工液循環系統の構成を示す系統図である。 腐食防止剤回収系統による第1のイオン交換樹脂塔に吸着した腐食防止剤の回収方法を説明するための系統図である。 腐食防止剤回収系統による第2のイオン交換樹脂塔に吸着した腐食防止剤の回収方法を説明するための系統図である。 NC制御装置の構成を示すブロック図である。 腐食防止剤の回収方法を説明するためのフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係るイオン交換樹脂塔に吸着した腐食防止剤の回収方法を説明するための図である。 本発明の第3実施形態に係るイオン交換樹脂塔に吸着した腐食防止剤の回収方法を説明するための第1の図である。 本発明の第3実施形態に係るイオン交換樹脂塔に吸着した腐食防止剤の回収方法を説明するための第2の図である。
符号の説明
E:ワイヤ電極
W:ワーク
1:ワイヤカット放電加工装置
2:上側ガイド組体
3:下側ガイド組体
4:加工槽
5:ワークスタンド
6:各軸モータ
7:電源装置
10:加工液循環系統
11a:汚液槽
11b:ろ過フィルタ
11c:清水槽
12:加工液温度設定装置
13:腐食防止剤添加装置
14:第1のイオン交換樹脂塔
14a:入口バルブ
14b:出口バルブ
15:第2のイオン交換樹脂塔
15a:入口バルブ
15b:出口バルブ
16:樹脂通水ポンプ
20:腐食防止剤回収系統
20a:水源
21:第1の回収系統
21a:第1の回収用バルブ
22:第2の回収系統
22a:第2の回収用バルブ
30:NC制御装置
31:入力部
32:記憶部
33:処理部
40:アデニンの吸着量の少ないイオン交換樹脂塔
50:アデニンの吸着量の多いイオン交換樹脂塔
60:第1の直列系統
60a:バルブ
70:第2の直列系統
70a:バルブ

Claims (3)

  1. 加工液に添加された腐食防止剤が前記加工液を循環供給する加工液循環系統に備えられたイオン交換樹脂に吸着するとともに、該吸着した腐食防止剤を前記イオン交換樹脂から回収する放電加工装置における腐食防止剤の回収方法であって、
    前記イオン交換樹脂を前記加工液循環系統に複数備えるとともに、前記複数のイオン交換樹脂において前記腐食防止剤の吸着量の少ないイオン交換樹脂から前記腐食防止剤の吸着量の多いイオン交換樹脂に順次通水して前記腐食防止剤の吸着量の多いイオン交換樹脂から前記吸着した腐食防止剤を脱離させ回収することを特徴とする放電加工装置における腐食防止剤の回収方法。
  2. 前記腐食防止剤はプリン塩基類からなることを特徴とする請求項1に記載の放電加工装置における腐食防止剤の回収方法。
  3. 前記プリン塩基類はアデニンとすることを特徴とする請求項に記載の放電加工装置における腐食防止剤の回収方法。
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