JP5362365B2 - 塩化鉄系廃液の再生方法、及び塩化鉄系廃液の再生装置 - Google Patents
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電解膜を介して陰極を配置した陰極室と陽極を配置した陽極室とに仕切られた電解槽を用いて行う塩化鉄系廃液の再生方法であって、
前記陰極室と別に設けた液回収槽との間で鉛を含有する塩化鉄系廃液を循環させる循環工程と、
前記陰極室において、1.11A/dm2以下の電流密度で前記塩化鉄系廃液を電解処理して前記鉛を析出させる電解工程と、
前記陰極室に析出した前記鉛を除去する鉛除去工程と、
前記鉛を除去して得られた再生塩化鉄液を、前記液回収槽又は前記陰極室から回収する回収工程と、
を包含することにある。
そこで、本構成の塩化鉄系廃液の再生方法によれば、電解工程を行うに際し、陰極室において、1.11A/dm2以下の電流密度で塩化鉄系廃液を電解処理する。これにより、第一鉄イオンの還元はある程度抑えられ、その一方で鉛イオンの還元が優先的に進行する。このように、本発明者らの鋭意研究の結果により、鉄の析出量をできるだけ少なくしながらも、塩化鉄系廃液中の鉛の濃度を低下させるのに有効な条件が存在することが判明した。
なお、電解工程により析出した鉛は、金属鉛の他、水酸化鉛や酸化鉛等の化合物の形態も考えられる。従って、以後説明する析出物としての「鉛」には、金属鉛だけではなく、これらの化合物としての形態も含むものとする。
また、塩化鉄系廃液を1.11A/dm2以下の電流密度で電解処理することにより、全体として電力コストを抑えることができ、さらには、電気分解に使用する高価な電極(特に、陽極)への負荷が小さくなるので、電極寿命を延ばすことができる。
なお、電流密度を1.11A/dm2より高くした場合でも、塩化鉄系廃液から鉛を析出させて除去することは可能であるが、鉄の析出量が増加する上、鉛の除去率自体はそれ程向上するわけではない。また、塩化鉄系廃液の再生設備の小型化にもそれ程寄与しない。
前記電解工程の前に、前記塩化鉄系廃液に鉄を溶解させる鉄溶解工程を実行することが好ましい。
この点、本構成の塩化鉄系廃液の再生方法によれば、電解工程の前に、塩化鉄系廃液に鉄を溶解させる鉄溶解工程を実行しているので、予め塩化第二鉄が塩化第一鉄に還元され、さらに、遊離塩酸は鉄と反応して塩化第一鉄となっている。従って、電解工程では略全ての電流が鉛イオンの還元反応に利用され、電気的な効率を上げることができる。なお、遊離塩酸と鉄との反応においても水素は発生するが、水素は電解工程の前に発生しているので、発生した水素を事前に拡散させる等の必要な措置をとることができる。
前記陽極室と別に設けた液循環槽との間で塩化第一鉄液を循環させることが好ましい。
この点、本構成の塩化鉄系廃液の再生方法によれば、陽極室と別に設けた液循環槽との間で塩化第一鉄液を循環させているので、塩素イオンは電解膜を通過して陽極室に入ると塩化第一鉄と陽極上で反応し、塩化第二鉄となる。その結果、陽極室において、有害な塩素ガスの発生を未然に防止することができる。
前記回収工程の後、前記陰極室に塩化第二鉄液を導入し、前記陰極室の内部に残存する鉛及び鉄を前記塩化第二鉄に溶解させて前記陰極室をクリーニングするクリーニング工程を実行することが好ましい。
この点、本構成の塩化鉄系廃液の再生方法によれば、陰極室に塩化第二鉄を導入して残留している鉛及び鉄を塩化第二鉄に完全に溶解させるので、陰極室がきれいにクリーニングされ、塩化鉄系廃液の流路の目詰まり等を防止することができる。
前記電解膜として中性膜を使用することが好ましい。
前記陰極と前記電解膜との離間距離が15mm以上に設定されていることが好ましい。
この点、本構成の塩化鉄系廃液の再生方法によれば、陰極と電解膜との離間距離が15mm以上に設定されている。この程度の離間距離を設けることにより、鉛及び鉄による電解膜の損傷や目詰まりを十分に防止することができる。
前記陰極室の下方に、析出した前記鉛を排出するための排出孔が設けられていることが好ましい。
前記再生塩化鉄液を塩素で酸化して再生塩化第二鉄液とする酸化工程を実行することが好ましい。
前記電解槽を複数並列配置して構成したフィルタープレス型電解槽を使用することが好ましい。
電解膜を介して陰極を配置した陰極室と陽極を配置した陽極室とに仕切られた電解槽と、
前記陰極室との間で鉛を含有する塩化鉄系廃液が循環する液回収槽と、
前記陽極室との間で塩化第一鉄液が循環する液循環槽と、
を備えた塩化鉄系廃液の再生装置であって、
前記陰極室において、1.11A/dm2以下の電流密度で前記塩化鉄系廃液を電解処理可能に構成されていることにある。
また、塩化鉄系廃液を1.11A/dm2以下の電流密度で電解処理することにより、電力コストを抑えることができ、さらには、電気分解に使用する高価な電極(特に、陽極)への負荷が小さくなるので、電極寿命を延ばすことができる。
なお、電流密度を1.11A/dm2より高くした場合でも、塩化鉄系廃液から鉛を析出させて除去することは可能であるが、鉄の析出量が増加する上、鉛の除去率自体はそれ程向上するわけではない。また、塩化鉄系廃液の再生設備の小型化にもそれ程寄与しない。
前記電解膜として中性膜を使用することが好ましい。
前記陰極室に、析出した前記鉛を排出するための排出孔が設けられていることが好ましい。
本構成の塩化鉄系廃液の再生装置によれば、陰極室の下方に、析出した鉛を排出するための排出孔が設けられている。このため、陰極室内部に過剰の鉛が堆積することなく、排出が容易となる。
前記電解槽は、当該電解槽を複数並列配置して構成したフィルタープレス型電解槽とされていることが好ましい。
図1は、本発明の塩化鉄系廃液の再生装置100の基本構成を概略的に示した模式図である。塩化鉄系廃液の再生装置100は、主要な構成として、電解槽10、液回収槽20、及び液循環槽30を備えている。
本発明の塩化鉄系廃液の再生方法は、上記の塩化鉄系廃液の再生装置100を使用して実行される。図2は、本発明の塩化鉄系廃液の再生方法を示したフローチャートである。各ステップの詳細を以下に説明する。
塩化鉄系廃液の主成分は塩化第一鉄であるが、塩化第二鉄や遊離塩酸もある程度存在している。このため、塩化鉄系廃液をそのまま電解処理すると、初めに、塩化第二鉄が塩化第一鉄に還元されるのに電子が消費され、さらに、遊離塩酸が分解して水素を生成するのに電子が消費される。その結果、全体の電力消費量(電力ロス)が大きくなる。また、水素が発生するので、水素濃度を適正な範囲に管理する等の手間が掛かる。
次に、陰極室3と別に設けた液回収槽20との間で塩化鉄系廃液を循環させる(S2;循環工程)。この循環工程は、先の「塩化鉄系廃液の再生装置」で説明したように、陰極室3と液回収槽20との間に形成された循環回路(すなわち、陰極側送り管21、陰極側戻し管22、及び陰極側ポンプ23)を通じて行われる。
塩化鉄系廃液を電解処理する(S3;電解工程)。これにより、陰極側に塩化鉄系廃液に溶解している金属イオンが金属となって析出する。ここで、金属の酸化還元電位を考慮すると、塩化鉛は塩化第一鉄よりも陰極に金属として析出し易いが、塩化鉄系廃液の主成分である塩化第一鉄は塩化鉛より濃度が圧倒的に高いため、鉛の析出と同時に鉄の析出も発生する。これを回避するためには、鉄が析出しない低い電圧で電解処理すればよいが、鉛の析出に長時間を要することになるため、工業的に実施するには適さなくなる。工業的な観点に立てば、設備規模やコスト面等を考慮し、設計し易い電流密度で、塩化鉄系廃液中の鉛の濃度を低下させる最適条件を探ることが最も有効である。
この試験では、鉄溶解工程(ステップ1)を経過した塩化鉄系廃液(組成:塩化第一鉄液31.3%、鉛612ppm)に対して、4種類の電流密度(0.56A/dm2、1.11A/dm2、2.78A/dm2、及び5.56A/dm2)で電解処理を行った。
上記テーブル試験の結果から、電解処理液(塩化鉄系廃液)中の鉛濃度と電解処理液から析出する金属(鉄+微量の鉛)の量との関係をまとめた。図3は、電解処理液中の鉛濃度と金属析出量との関係を示すグラフである。このグラフから、電流密度が0.56A/dm2、及び1.11A/dm2の場合では、金属析出量(主に鉄析出量)が少ないところ(約2.5kg/t−廃液)で鉛濃度を10ppm以下にまで低減することができた。一方、電流密度が2.78A/dm2、及び5.56A/dm2の場合では、鉛濃度を10ppm以下にまで低減するには、金属析出量がある程度多くなるところ(約6.5kg/t−廃液)まで電解処理を行う必要があった。この試験結果から、電解処理における電流密度を1.11A/dm2以下とすれば、塩化鉄系廃液からの鉄の析出量を少なくしつつ、鉛濃度を10ppm以下まで低減することが可能となることが判明した。
次に、電解処理液中の鉛濃度が時間とともにどのように変化するかをまとめた。図4は、電解処理液中の鉛濃度の経時変化を示すグラフである。その結果、電流密度が5.56A/dm2の場合では、約70分の電解処理で鉛濃度を10ppm以下にまで低減することができた。一方、電流密度が0.56A/dm2、1.11A/dm2、及び2.78A/dm2の場合でも、約120分の電解処理で鉛濃度を10ppm以下にまで低減することができた。このことから、電流密度を通常より低くした場合でも、電解処理を120分以上行えば、鉛濃度を10ppm以下にまで低減することが可能となることが判明した。
次に、上記の電解工程によって陰極室3に析出した鉛を除去する(S4;鉛除去工程)。この鉛除去工程は、フィルタ(図示せず)等の適切な回収手段を用いて実行される。
次に、鉛を除去して得られた再生塩化鉄液を、液回収槽20又は陰極室3から回収する(S5;回収工程)。この回収した再生塩化鉄液は、塩化第一鉄が主成分である。そこで、必要に応じて、この再生塩化鉄液を塩素で酸化し、再生塩化第二鉄液とする。これにより、再生塩化第二鉄液をプリント基板等のエッチング液として再利用することができる。
ところで、塩化鉄系廃液から析出した鉛はフロック状になっている場合がある。また、同時に析出した鉄は針状になって陰極に付着している場合がある。このため、回収工程の後も陰極室3の内部に鉛析出物の一部が鉄析出物とともに残留することがある。そこで、陰極室3に新たな塩化第二鉄を導入し、残留している鉛及び鉄を塩化第二鉄に完全に溶解させる(S6;クリーニング工程)。これにより、陰極室3がきれいにクリーニングされ、塩化鉄系廃液の流路の目詰まり等を防止することができる。
本発明の塩化鉄系廃液の再生方法、及び塩化鉄系廃液の再生装置は、電解槽としてフィルタープレス型のものを用いることにより、塩化鉄系廃液に含まれる鉛成分をさらに効率よく除去することができる。
〔スケールアップ試験〕
2 陰極
3 陰極室
4 陽極
5 陽極室
6 排出孔
10 電解槽
50 フィルタープレス型電解槽
20 液回収槽
30 液循環槽
100 塩化鉄系廃液の再生装置
Claims (14)
- 電解膜を介して陰極を配置した陰極室と陽極を配置した陽極室とに仕切られた電解槽を用いて行う塩化鉄系廃液の再生方法であって、
前記陰極室と別に設けた液回収槽との間で鉛を含有する塩化鉄系廃液を循環させる循環工程と、
前記陰極室において、1.11A/dm2以下の電流密度で前記塩化鉄系廃液を電解処理して前記鉛を析出させる電解工程と、
前記陰極室に析出した前記鉛を除去する鉛除去工程と、
前記鉛を除去して得られた再生塩化鉄液を、前記液回収槽又は前記陰極室から回収する回収工程と、
を包含する塩化鉄系廃液の再生方法。 - 前記電解工程の前に、前記塩化鉄系廃液に鉄を溶解させる鉄溶解工程を実行する請求項1に記載の塩化鉄系廃液の再生方法。
- 前記陽極室と別に設けた液循環槽との間で塩化第一鉄液を循環させる請求項1又は2に記載の塩化鉄系廃液の再生方法。
- 前記回収工程の後、前記陰極室に塩化第二鉄液を導入し、前記陰極室の内部に残存する鉛及び鉄を前記塩化第二鉄に溶解させて前記陰極室をクリーニングするクリーニング工程を実行する請求項1〜3の何れか一項に記載の塩化鉄系廃液の再生方法。
- 前記電解膜として中性膜を使用する請求項1〜4の何れか一項に記載の塩化鉄系廃液の再生方法。
- 前記陰極と前記電解膜との離間距離が15mm以上に設定されている請求項1〜5の何れか一項に記載の塩化鉄系廃液の再生方法。
- 前記陰極室の下方に、析出した前記鉛を排出するための排出孔が設けられている請求項1〜6の何れか一項に記載の塩化鉄系廃液の再生方法。
- 前記再生塩化鉄液を塩素で酸化して再生塩化第二鉄液とする酸化工程を実行する請求項1〜7の何れか一項に記載の塩化鉄系廃液の再生方法。
- 前記電解槽を複数並列配置して構成したフィルタープレス型電解槽を使用する請求項1〜8の何れか一項に記載の塩化鉄系廃液の再生方法。
- 電解膜を介して陰極を配置した陰極室と陽極を配置した陽極室とに仕切られた電解槽と、
前記陰極室との間で鉛を含有する塩化鉄系廃液が循環する液回収槽と、
前記陽極室との間で塩化第一鉄液が循環する液循環槽と、
を備えた塩化鉄系廃液の再生装置であって、
前記陰極室において、1.11A/dm2以下の電流密度で前記塩化鉄系廃液を電解処理可能に構成されている塩化鉄系廃液の再生装置。 - 前記電解膜として中性膜を使用する請求項10に記載の塩化鉄系廃液の再生装置。
- 前記陰極と前記電解膜との離間距離が15mm以上に設定されている請求項10又は11に記載の塩化鉄系廃液の再生装置。
- 前記陰極室の下方に、析出した前記鉛を排出するための排出孔が設けられている請求項10〜12の何れか一項に記載の塩化鉄系廃液の再生装置。
- 前記電解槽は、当該電解槽を複数並列配置して構成したフィルタープレス型電解槽とされている請求項10〜13の何れか一項に記載の塩化鉄系廃液の再生装置。
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