(実施形態1)
本実施形態の半導体装置について図1〜図4を参照しながら説明するが、本実施形態では半導体装置として、図1に示すように実装基板(例えば、ガラスエポキシ樹脂基板など)40に実装して用いる加速度センサAを例示する。
加速度センサAは、第1の半導体基板を用いて形成され後述のセンシング部を有するセンサ基板1と、第2の半導体基板を用いて形成されセンサ基板1のセンシング部に電気的に接続される複数の貫通孔配線24を有しセンサ基板1の一表面側(図1(a)における下面側)に接合された第1のカバー基板2と、第3の半導体基板を用いて形成されセンサ基板1の他表面側(図1(a)における上面側)に接合された第2のカバー基板3とを備えている。ここにおいて、センサ基板1および各カバー基板2,3の外周形状は矩形状であり、各カバー基板2,3はセンサ基板1と同じ外形寸法に形成されている。
また、センサ基板1は、シリコン基板からなる支持基板10a上のシリコン酸化膜からなる絶縁層(埋込酸化膜)10b上にn形のシリコン層(活性層)10cを有するSOIウェハを加工することにより形成してあり、第1のカバー基板2は第1のシリコンウェハを加工することにより形成し、第2のカバー基板3は第2のシリコンウェハを加工することにより形成してある。ここにおいて、本実施形態では、SOIウェハが第1の半導体基板を構成し、第1のシリコンウェハが第2の半導体基板を構成し、第2のシリコンウェハが第3の半導体基板を構成している。なお、本実施形態では、SOIウェハにおける支持基板10aの厚さを300μm〜500μm程度、絶縁層10bの厚さを0.3μm〜1.5μm程度、シリコン層10cの厚さを4μm〜10μm程度とし、また、第1のシリコンウェハの厚さを200μm〜300μm程度、第2のシリコンウェハの厚さを100〜300μm程度としてあるが、これらの数値は特に限定するものではない。また、SOIウェハの主表面であるシリコン層10cの表面は(100)面としてある。
センサ基板1は、図1および図3に示すように、枠状(本実施形態では、矩形枠状)のフレーム部11を備え、フレーム部11の内側に配置される重り部12が一表面側(図3(b)における上面側)において可撓性を有する4つの短冊状の撓み部13を介してフレーム部11に揺動自在に支持されている。言い換えれば、センサ基板1は、枠状のフレーム部11の内側に配置される重り部12が重り部12から四方へ延長された4つの撓み部13を介してフレーム部11に揺動自在に支持されている。ここで、フレーム部11は、上述のSOIウェハの支持基板10a、絶縁層10b、シリコン層10cそれぞれを利用して形成してある。これに対して、撓み部13は、上述のSOIウェハにおけるシリコン層10cを利用して形成してあり、フレーム部11よりも十分に薄肉となっている。
重り部12は、上述の4つの撓み部13を介してフレーム部11に支持された直方体状のコア部12aと、センサ基板1の上記一表面側から見てコア部12aの四隅それぞれに連続一体に連結された直方体状の4つの付随部12bとを有している。言い換えれば、重り部12は、フレーム部11の内側面に一端部が連結された各撓み部13の他端部が外側面に連結されたコア部12aと、コア部12aと一体に形成されコア部12aとフレーム部11との間の空間に配置される4つの付随部12bとを有している。つまり、各付随部12bは、センサ基板1の上記一表面側から見た平面視において、フレーム部11とコア部12aと互いに直交する方向に延長された2つの撓み部13,13とで囲まれる空間に配置されており、各付随部12bそれぞれとフレーム部11との間にはスリット14が形成され、撓み部13を挟んで隣り合う付随部12b間の間隔が撓み部13の幅寸法よりも長くなっている。ここにおいて、コア部12aは、上述のSOIウェハの支持基板10a、絶縁層10b、シリコン層10cそれぞれを利用して形成し、各付随部12bは、SOIウェハの支持基板10aを利用して形成してある。しかして、センサ基板1の上記一表面側において各付随部12bの表面は、コア部12aの表面を含む平面からセンサ基板1の上記他表面側(図3(b)における下面側)へ離間して位置している。なお、センサ基板1の上述のフレーム部11、重り部12、各撓み部13は、マイクロマシニング技術を利用して形成すればよい。
ところで、図3(a),(b)それぞれの右下に示したように、センサ基板1の上記一表面に平行な面内でフレーム部11の一辺に沿った一方向をx軸の正方向、この一辺に直交する辺に沿った一方向をy軸の正方向、センサ基板1の厚み方向の一方向をz軸の正方向と規定すれば、重り部12は、x軸方向に延長されてコア部12aを挟む2つ1組の撓み部13,13と、y軸方向に延長されてコア部12aを挟む2つ1組の撓み部13,13とを介してフレーム部11に支持されていることになる。なお、上述のx軸、y軸、z軸の3軸により規定した直交座標では、センサ基板1において上述のシリコン層10cにより形成された部分の表面における重り部12の中心位置を原点としている。
重り部12のコア部12aからx軸の正方向に延長された撓み部13(図3(a)の右側の撓み部13)は、コア部12a近傍に2つ1組のゲージ抵抗Rx2,Rx4が形成されるとともに、フレーム部11近傍に1つのゲージ抵抗Rz2が形成されている。一方、重り部12のコア部12aからx軸の負方向に延長された撓み部13(図3(a)の左側の撓み部13)は、コア部12a近傍に2つ1組のゲージ抵抗Rx1,Rx3が形成されるとともに、フレーム部11近傍に1つのゲージ抵抗Rz3が形成されている。ここに、コア部12a近傍に形成された4つのゲージ抵抗Rx1,Rx2,Rx3,Rx4は、x軸方向の加速度を検出するために形成されたもので、平面形状が細長の長方形状であって、長手方向が撓み部13の長手方向に一致するように形成してあり、図4における左側のブリッジ回路Bxを構成するように配線(センサ基板1に形成されている拡散層配線、金属配線17など)によって接続されている。なお、ゲージ抵抗Rx1〜Rx4は、x軸方向の加速度がかかったときに撓み部13において応力が集中する応力集中領域に形成されている。
また、重り部12のコア部12aからy軸の正方向に延長された撓み部13(図3(a)の上側の撓み部13)はコア部12a近傍に2つ1組のゲージ抵抗Ry1,Ry3が形成されるとともに、フレーム部11近傍に1つのゲージ抵抗Rz1が形成されている。一方、重り部12のコア部12aからy軸の負方向に延長された撓み部13(図3(a)の下側の撓み部13)はコア部12a近傍に2つ1組のゲージ抵抗Ry2,Ry4が形成されるとともに、フレーム部11側の端部に1つのゲージ抵抗Rz4が形成されている。ここに、コア部12a近傍に形成された4つのゲージ抵抗Ry1,Ry2,Ry3,Ry4は、y軸方向の加速度を検出するために形成されたもので、平面形状が細長の長方形状であって、長手方向が撓み部13の長手方向に一致するように形成してあり、図4における中央のブリッジ回路Byを構成するように配線(センサ基板1に形成されている拡散層配線、金属配線17など)によって接続されている。なお、ゲージ抵抗Ry1〜Ry4は、y軸方向の加速度がかかったときに撓み部13において応力が集中する応力集中領域に形成されている。
また、フレーム部11近傍に形成された4つのゲージ抵抗Rz1,Rz2,Rz3,Rz4は、z軸方向の加速度を検出するために形成されたものであり、図4における右側のブリッジ回路Bzを構成するように配線(センサ基板1に形成されている拡散層配線、金属配線17など)によって接続されている。ただし、2つ1組となる撓み部13,13のうち一方の組の撓み部13,13に形成したゲージ抵抗Rz1,Rz4は長手方向が撓み部13,13の長手方向と一致するように形成されているのに対して、他方の組の撓み部13,13に形成したゲージ抵抗Rz2,Rz3は長手方向が撓み部13,13の幅方向(短手方向)と一致するように形成されている。
なお、図1〜3では、センサ基板1における金属配線17のうち第1の接続用接合金属層19近傍の部位のみを図示してあり、拡散層配線の図示は省略してある。
ここで、センサ基板1の基本的な動作の一例について説明する。
いま、センサ基板1に加速度がかかっていない状態で、センサ基板1に対してx軸の正方向に加速度がかかったとすると、x軸の負方向に作用する重り部12の慣性力によってフレーム部11に対して重り部12が変位し、結果的にx軸方向を長手方向とする撓み部13,13が撓んで当該撓み部13,13に形成されているゲージ抵抗Rx1〜Rx4の抵抗値が変化することになる。この場合、ゲージ抵抗Rx1,Rx3は引張応力を受け、ゲージ抵抗Rx2,Rx4は圧縮応力を受ける。一般的にゲージ抵抗は引張応力を受けると抵抗値(抵抗率)が増大し、圧縮応力を受けると抵抗値(抵抗率)が減少する特性を有しているので、ゲージ抵抗Rx1,Rx3は抵抗値が増大し、ゲージ抵抗Rx2,Rx4は抵抗値が減少することになる。したがって、図4に示した一対の入力端子VDD,GND間に外部電源から一定の直流電圧を印加しておけば、図4に示した左側のブリッジ回路Bxの出力端子X1,X2間の電位差がx軸方向の加速度の大きさに応じて変化する。同様に、y軸方向の加速度がかかった場合には図4に示した中央のブリッジ回路Byの出力端子Y1,Y2間の電位差がy軸方向の加速度の大きさに応じて変化し、z軸方向の加速度がかかった場合には図4に示した右側のブリッジ回路Bzの出力端子Z1,Z2間の電位差がz軸方向の加速度の大きさに応じて変化する。しかして、上述のセンサ基板1は、各ブリッジ回路Bx〜Bzそれぞれの出力電圧の変化を検出することにより、当該センサ基板1に作用したx軸方向、y軸方向、z軸方向それぞれの加速度を検出することができる。本実施形態では、各撓み部13が可撓性要素部を構成し、センサ基板1が機能基板を構成している。また、重り部12と各撓み部13とで可動部を構成し、各ゲージ抵抗(ピエゾ抵抗)Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4それぞれが、センサ基板1におけるセンシング部を構成している。
ところで、センサ基板1は、上述の3つのブリッジ回路Bx,By,Bzに共通の2つの入力端子VDD,GNDと、ブリッジ回路Bxの2つの出力端子X1,X2と、ブリッジ回路Byの2つの出力端子Y1,Y2と、ブリッジ回路Bzの2つの出力端子Z1,Z2とを備えており、これらの各入力端子VDD,GNDおよび各出力端子X1,X2,Y1,Y2,Z1,Z2が、上記一表面側(つまり、第1のカバー基板2側)に第1の電気接続用金属層19として設けられており、第1のカバー基板2に形成された貫通孔配線24と電気的に接続されている。すなわち、センサ基板1には、8つの電気接続用金属層19が形成され、第1のカバー基板2には、8つの貫通孔配線24が形成されている。なお、8つの第1の電気接続用金属層19は、外周形状が矩形状(本実施形態では、正方形状)であり、フレーム部11の周方向に離間して配置されている(矩形枠状のフレーム部11の4辺それぞれに2つずつ配置されている)。
また、センサ基板1のフレーム部11上には、フレーム部11よりも開口面積が大きな枠状(矩形枠状)の第1の封止用金属層18が形成されており、上述の8つの電気接続用金属層19は、フレーム部11において第1の封止用金属層18よりも内側に配置されている。要するに、センサ基板1は、第1の封止用金属層18の幅寸法をフレーム部11の幅寸法に比べて小さく設定し、第1の封止用金属層18と各電気接続用金属層19とを同一平面上に形成してある。
ここにおいて、センサ基板1は、上記一表面側において上記シリコン層10c上にシリコン酸化膜とシリコン窒化膜との積層膜からなる絶縁膜16が形成されており、第1の電気接続用金属層19および第1の封止用金属層18および金属配線17は絶縁膜16の同一レベル面上に同一厚さで形成されている。
また、第1の封止用金属層18および第1の電気接続用金属層19は、接合用のAu膜と絶縁膜16との間に密着性改善用のTi膜を介在させてある。言い換えれば、第1の封止用金属層18および第1の電気接続用金属層19は、絶縁膜16の同一レベル面上に形成されたTi膜と当該Ti膜上に形成されたAu膜との積層膜により構成されている。要するに、第1の電気接続用金属層19と第1の封止用金属層18とは同一の金属材料により形成されているので、第1の電気接続用金属層19と第1の封止用金属層18とを同時に形成することができるとともに、第1の電気接続用金属層19と第1の封止用金属層18とを同じ厚さに形成することができる。なお、第1の封止用金属層18および第1の電気接続用金属層19は、Ti膜の膜厚を15〜50nm、Au膜の膜厚を500nmに設定してあり、金属配線17の膜厚は1μmに設定してあるが、これらの数値は一例であって特に限定するものではない。ここにおいて、各Au膜の材料は、純金に限らず不純物を添加したものでもよい。また、本実施形態では、各Au膜と絶縁膜16との間に密着性改善用の密着層としてTi膜を介在させてあるが、密着層の材料はTiに限らず、例えば、Cr、Nb、Zr、TiN、TaNなどでもよい。
上述の各ゲージ抵抗Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4および上記各拡散層配線は、上記シリコン層10cにおけるそれぞれの形成部位に適宜濃度のp形不純物をドーピングすることにより形成され、上述の金属配線17は、絶縁膜16上にスパッタ法や蒸着法などにより成膜した金属膜(例えば、Al膜、Al合金膜など)をリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してパターニングすることにより形成されており、金属配線17は絶縁膜16に設けたコンタクトホールを通して拡散層配線と電気的に接続されている。また、第1の電気接続用金属層19と金属配線17とは、第1の電気接続用金属層19における金属配線17との接続部位19b(図2参照)が、第1のカバー基板2におけるセンサ基板1との対向面に形成された後述の変位空間形成用凹部21内に位置する形で電気的に接続されている。
第1のカバー基板2は、センサ基板1側(図1(a)における上面側)の表面に、センサ基板1の重り部12と各撓み部13とで構成される可動部の変位空間を確保する上述の変位空間形成用凹部21が形成されるとともに、変位空間形成用凹部21の周部に厚み方向に貫通する複数(本実施形態では、8つ)の貫通孔22が形成されており、厚み方向の両面と各貫通孔22の内面とに跨って熱絶縁膜(シリコン酸化膜)からなる絶縁膜23が形成され、貫通孔配線24と貫通孔22の内面との間に絶縁膜23の一部が介在している。ここにおいて、第1のカバー基板2の8つの貫通孔配線24は当該第1のカバー基板2の周方向に離間して形成されている。なお、貫通孔配線24の材料としては、Cuを採用しているが、Cuに限らず、例えば、Niなどを採用してもよい。また、本実施形態では、第1のカバー基板2が、センサ基板1の厚み方向(ここでは、第1のカバー基板2側)への上記可動部の過度な変位を規制する第1のストッパを兼ねている。
また、第1のカバー基板2は、センサ基板1側の表面において変位空間形成用凹部21の周部に、各貫通孔配線24それぞれと電気的に接続された複数(本実施形態では、8つ)の第2の電気接続用金属層29が形成されている。第1のカバー基板2は、センサ基板1側の表面の周部の全周に亘って枠状(矩形枠状)の第2の封止用金属層28が形成されている。また、上述の8つの第2の電気接続用金属層29は、外周形状が細長の長方形状であり、第2の封止用金属層28よりも内側に配置されている。ここにおいて、第2の電気接続用金属層29は、長手方向の一端部が貫通孔配線24と接合されており、他端側の部位がセンサ基板1の金属配線17よりも外側でセンサ基板1の第1の電気接続用金属層19と接合されて電気的に接続されるように配置してある。要するに、第1のカバー基板2の周方向において貫通孔配線24と当該貫通孔配線24に対応する第1の電気接続用金属層19との位置をずらしてあり、第2の電気接続用金属層29を、長手方向が第2の封止用金属層28の周方向に一致し且つ貫通孔配線24と第1の電気接続用金属層19とに跨る形で配置してある。
また、第2の封止用金属層28および第2の電気接続用金属層29は、接合用のAu膜と絶縁膜23との間に密着性改善用のTi膜を介在させてある。言い換えれば、第2の封止用金属層28および第2の電気接続用金属層29は、絶縁膜23の同一レベル面上に形成されたTi膜と当該Ti膜上に形成されたAu膜との積層膜により構成されている。要するに、第2の電気接続用金属層29と第2の封止用金属層28とは同一の金属材料により形成されているので、第2の電気接続用金属層29と第2の封止用金属層28とを同時に形成することができるとともに、第2の電気接続用金属層29と第2の封止用金属層28とを同じ厚さに形成することができる。なお、第2の封止用金属層28および第2の電気接続用金属層29は、Ti膜の膜厚を15〜50nm、Au膜の膜厚を500nmに設定してあるが、これらの数値は一例であって特に限定するものではない。ここにおいて、各Au膜の材料は、純金に限らず不純物を添加したものでもよい。また、本実施形態では、各Au膜と絶縁膜23との間に密着性改善用の密着層としてTi膜を介在させてあるが、密着層の材料はTiに限らず、例えば、Cr、Nb、Zr、TiN、TaNなどでもよい。
また、第1のカバー基板2におけるセンサ基板1側とは反対側の表面には、各貫通孔配線24それぞれと電気的に接続された複数の外部接続用電極25が形成されている。ここで、各外部接続用電極25は、厚み方向に積層されたTi膜とCu膜とNi膜とAu膜との積層膜により構成されており、最上層がAu膜となっている。本実施形態では、各外部接続用電極25の外周形状が矩形状となっており、第1のカバー基板2におけるセンサ基板1側とは反対側の表面には、各外部接続用電極25と各貫通孔配線24とを接続する複数(本実施形態では、8つ)の配線26が形成されている。なお、各配線26は、各外部接続用電極25と同様に厚み方向に積層されたTi膜とCu膜とNi膜とAu膜との積層膜により構成されており、各外部接続用電極25と連続一体に形成されている。また、本実施形態では、各外部接続用電極25が半田リフロー用パッドを構成しており、各外部接続用電極25の大きさを、半田リフローに適した大きさ(200μm□以上)を下回らないように設計してあり、隣り合う外部接続用電極25間の距離を、半田リフローに適した距離を下回らないように設計してある。
第2のカバー基板3は、センサ基板1との対向面に、重り部12の変位空間を形成する所定深さ(例えば、5μm〜10μm程度)の凹部31を形成してある。ここで、第2のカバー基板3の凹部31は、リソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して形成してある。本実施形態では、第2のカバー基板3における凹部31の内底面とセンサ基板1との間に、重り部12の変位空間が形成され且つ第2のカバー基板3がセンサ基板1の厚み方向(ここでは、センサ基板1における第1のカバー基板2側とは反対側方向)への上記可動部の過度な変位を規制する第2のストッパとして機能するように凹部31の深さ寸法を設定してある。なお、本実施形態では、第2のカバー基板3におけるセンサ基板1との対向面に、重り部12の変位空間を形成する凹部31を形成してあるが、重り部12のコア部12aおよび各付随部12bのうち支持基板10aを利用して形成されている部分の厚さを、フレーム部11において支持基板10aを利用して形成されている部分の厚さに比べて、センサ基板1の厚み方向への重り部12の許容変位量分だけ薄くするようにすれば、第2のカバー基板3に凹部31を形成しなくても、センサ基板1の上記他表面側には上記他表面に交差する方向(上述のセンサ基板1における第1のカバー基板2側とは反対側方向)への重り部12の変位を可能とする隙間が重り部12と第2のカバー基板3との間に形成され、且つ、第2のカバー基板3が、上記可動部の過度な変位を規制する第2のストッパとして機能する。
ところで、本実施形態の加速度センサAにおけるセンサ基板1と第1のカバー基板2とは、第1の封止用金属層18と第2の封止用金属層28とが接合されるとともに、第1の電気接続用金属層19と第2の電気接続用金属層29とが接合され、センサ基板1と第2のカバー基板3とは、互いの対向面の周部同士が接合されている。また、加速度センサAは、センサ基板1を多数形成したSOIウェハと第1のカバー基板2を多数形成した第1のシリコンウェハおよび第2のカバー基板3を多数形成した第2のシリコンウェハとをウェハレベルで接合してから、ダイシング工程により所望のチップサイズの加速度センサAに切断されている。したがって、各カバー基板2,3がセンサ基板1と同じ外形サイズとなり、小型のチップサイズパッケージを実現できるとともに、製造が容易になる。
ここにおいて、センサ基板1と第1のカバー基板2および第2のカバー基板3との接合方法としては、センサ基板1の残留応力を少なくするためにより低温での接合が可能な接合方法を採用することが望ましく、本実施形態では、常温接合法を採用している。常温接合法では、接合前に互いの接合面へアルゴンのプラズマ若しくはイオンビーム若しくは原子ビームを真空中で照射して各接合面の清浄化・活性化を行ってから、接合面同士を接触させ、常温下で接合する。本実施形態では、上述の常温接合法により、常温(例えば、25℃)下で適宜の荷重を印加して、センサ基板1の第1の封止用金属層18と第1のカバー基板2の第2の封止用金属層28とを接合するのと同時に、センサ基板1の第1の電気接続用金属層19と第1のカバー基板2の第2の電気接続用金属層29とを接合しており、また、上述の常温接合法により、常温(例えば、25℃)下でセンサ基板1のフレーム部11と第2のカバー基板3の周部とを接合している。しかして、本実施形態における加速度センサAでは、センサ基板1と第1のカバー基板2との間の接合がAu−Au接合となり、センサ基板1と第2のカバー基板3との接合がSi−Si接合となっている。ここで、本実施形態では、センサ基板1と各カバー基板2,3が同じ半導体材料であるSiにより形成されているので、センサ基板1と各カバー基板2,3との線膨張率差に起因した応力(センサ基板1における残留応力)が上記ブリッジ回路の出力信号に与える影響を低減でき、各カバー基板2,3がセンサ基板1と異なる材料により形成されている場合に比べて、センサ特性のばらつきを低減することができる。なお、センサ基板1は、SOIウェハを加工して形成してあるが、SOIウェハに限らず、例えば、シリコンウェハを加工して形成してもよい。また、本実施形態では、センサ基板1と第2のカバー基板3とが、Si−Siの組み合わせの常温接合により接合されているが、Si−Siの組み合わせに限らず、Si−Si、Si−SiO2、SiO2−SiO2の群から選択される1組の組み合わせの常温接合により接合されるようにしてもよい。
ところで、上述の第1のカバー基板2は、第2の電気接続用金属層29と当該第2の電気接続用金属層29に電気的に接続された外部接続用電極25とを機能基板であるセンサ基板1の厚み方向において重ならないようにずらしてあり、第2の電気接続用金属層29と当該第2の電気接続用金属層29に電気的に接続された外部接続用電極25との間の領域においてセンサ基板1側の表面側である一表面側に、外部接続用電極25と実装基板40の導体パターン43とを半田からなる接合部50により接合することに伴い上記可動部に発生する応力を緩和する溝部20bが形成されている。ここにおいて、第1のカバー基板2の溝部20bは、例えば誘導結合プラズマ(ICP)型のドライエッチング装置を用いた異方性エッチング技術を利用して形成すればよい。また、本実施形態では、溝部20bを形成した後に上述の絶縁膜23を形成するようにしているので、溝部20bの内面にも絶縁膜23の一部が形成されている。
以上説明した本実施形態の加速度センサAは、第1のカバー基板2では、機能基板であるセンサ基板1の第1の電気接続用金属層19と接合される第2の電気接続用金属層29よりも当該第2の電気接続用金属層29と電気的に接続される外部接続用電極25が内側に位置するように、第2の電気接続用金属層29の形成位置と外部接続用電極25の形成位置とが一面内方向においてずれており、第2の電気接続用金属層29と当該第2の電気接続用金属層29に電気的に接続された外部接続用電極25との間の領域に、外部接続用電極25と実装基板40の導体パターン43との接合に伴い上記可動部に発生する応力を緩和する溝部20bが形成されているので、実装基板40との線膨張率差に起因してセンサ基板1の上記可動部に生じる応力を緩和でき、且つ、センサ基板1の厚み方向への上記可動部の過度な変位を規制するストッパを兼ねる第2のカバー基板3の変形を抑制できる。
ここにおいて、本実施形態の加速度センサAでは、第1のカバー基板2に上述の溝部20bが形成されていることにより、実装基板40との線膨張率差に起因して上記可動部の各撓み部13に生じる応力を緩和することが可能となり、特性劣化(本実施形態では、センサ特性の劣化)を抑制できる。また、本実施形態の加速度センサAでは、センサ基板1の第1の電気接続用金属層19と接合される第2の電気接続用金属層29よりも当該第2の電気接続用金属層29と電気的に接続される外部接続用電極25が内側に位置するように、第2の電気接続用金属層29の形成位置と外部接続用電極25の形成位置とがずれていることにより、外部接続用電極25が第2の電気接続用金属層29よりも外側に位置するようにずらしてある場合に比べて、実装基板40との線膨張率差に起因した応力による第2のカバー基板3の変形を抑制することができる(実装基板40との線膨張率差に起因して第2のカバー基板3に生じる応力を低減することができる)。
また、本実施形態の加速度センサAは、外部接続用電極25の周辺に外部接続用電極25の材料に比べて半田濡れ性の低い材料(例えば、SiO2、レジストなどの絶縁材料)により形成された絶縁膜からなる半田広がり防止部27が形成されているので、実装基板40へ半田リフローにより実装する際に半田が外部接続用電極25の周辺まで流出するのを防止することができて接合面積の増大による応力の増大を抑制することができる。
なお、本実施形態では、加速度センサAと実装基板40との接合部50を半田により形成しているが、接合部50は半田に限らず、Auバンプなどのバンプにより形成してもよく、接合部50をAuバンプにより形成する場合には、接合部50を半田により形成する場合に比べて各外部接続用電極25の大きさを小さくすることが可能となる(例えば、半田により形成する場合には200μm□以上の大きさに設定するのが望ましいが、Auバンプにより形成する場合には100μm□以下の大きさに設定することが可能となる)。ここにおいて、接合部50を半田により形成する場合の接合温度は270℃程度、接合部50をAuバンプにより形成する場合の接合温度は100〜400℃程度に設定すればよい。
また、本実施形態では、第1のカバー基板2を第1のシリコンウェハを加工して形成するとともに、第2のカバー基板3を第2のシリコンウェハを加工して形成してあるが、各カバー基板2,3は、シリコンウェハに限らず、センサ基板1の基礎となるSOIウェハとの線膨張率差が小さな基板であればよく、例えば、パイレックス(登録商標)などのガラス基板やセラミック基板(例えば、アルミナセラミック基板)などを採用してもよい。
(実施形態2)
本実施形態の加速度センサAの基本構成は実施形態1と略同じであって、図5に示すように、溝部20bが、第1のカバー基板2におけるセンサ基板1側とは反対側の表面である他表面側にも形成されている点、外部接続用電極25と貫通孔配線24とを電気的に接続する配線26の一部が上記他表面側の溝部20bの内面に沿って形成されている点などが相違し、他の構成は実施形態1と同様なので説明を省略する。
上述の説明から分かるように、本実施形態における第1のカバー基板2は、第2の電気接続用金属層29と当該第2の電気接続用金属層29に電気的に接続された外部接続用電極25との間の領域において上記一表面側および上記他表面側それぞれに、外部接続用電極25と実装基板40の導体パターン43とを半田からなる接合部50により接合することに伴い上記可動部に発生する応力を緩和する溝部20bが形成されている。ここにおいて、第1のカバー基板2は、第2の電気接続用金属層29と当該第2の電気接続用金属層29に電気的に接続された外部接続用電極25との間に蛇腹状構造部20cが形成されるように上記一表面側の溝部20bの形成位置と上記他表面側の溝部20bの形成位置とを上記一面内方向にずらしてある。
上述の各溝部20bの深さ寸法は、第1のカバー基板2の厚み寸法の半分よりもやや大きな寸法に設定してあるが、第1のカバー基板2の上記一表面側に形成する溝部20bの深さ寸法と上記他表面側に形成する溝部20bの深さ寸法とは必ずしも同じ値に設定する必要はなく、第1のカバー基板2の厚み寸法をT1、第1のカバー基板2の上記一表面に形成する溝部20bの深さ寸法をD1、第1のカバー基板2の上記他表面に形成する溝部20bの深さ寸法をD2とすれば、T1≦(D1+D2)の条件を満たすように適宜設定すればよい。
以上説明した本実施形態の加速度センサAでは、第1のカバー基板2の外部接続用電極25とセンサ基板1の上記可動部との間に第1のカバー基板2の蛇腹状構造部20cが存在しており、実施形態1の加速度センサAに比べて、実装基板40から上記可動部までの応力伝達距離が長くなるから、実装基板40との線膨張率差に起因して上記可動部に生じる応力をより緩和することが可能となる。
なお、本実施形態の加速度センサAでは、第1のカバー基板2の上記他表面側において外部接続用電極25と貫通孔配線24とを電気的に接続する配線26の一部が溝部20bの内面に沿って形成されており、このように配線26の一部を溝部20bの内面に沿って形成する場合には、配線26の材料として、貫通孔配線24と同様にCuを採用することが望ましい。
(実施形態3)
本実施形態の加速度センサAの基本構成は実施形態2と略同じであって、図6に示すように、第1のカバー基板2の各溝部20bが、内底面から離れるほど開口面積が徐々に大きくなるテーパ状に形成されている点が相違し、他の構成は実施形態2と同様なので説明を省略する。
しかして、本実施形態の加速度センサAでは、第1のカバー基板2の各溝部20bが上記テーパ状の形状に形成されていることにより、第1のカバー基板2の上記他表面側の溝部20bに沿って一部が形成される配線26の形成が容易になり、配線26の断線が起こりにくくなる。
(実施形態4)
本実施形態の加速度センサAの基本構成は実施形態3と略同じであって、図7に示すように、外部接続用電極25と電気的に接続される配線26が溝部20bを避けて形成されている点が相違し、他の構成は実施形態3と同様なので説明を省略する。
しかして、本実施形態の加速度センサAでは、外部接続用電極25と電気的に接続される配線26が溝部20bを避けて形成されているので、配線26の形成が容易になり、溝部20bでの段差に起因した配線26の断線を防止することができる。
(実施形態5)
本実施形態の加速度センサAの基本構成は実施形態4と略同じであって、図8に示すように、溝部20b内に、溝部20bの周辺部位の材料(つまり、第1のカバー基板2の材料であるSi)よりも弾性率(ヤング率)の低い低弾性材料を充実させることで低弾性材料部20dを形成してある点が相違し、他の構成は実施形態4と同様なので説明を省略する。
しかして、本実施形態の加速度センサAでは、溝部20bの周辺部位の材料よりも弾性率の低い低弾性材料が溝部20bに充実されているので、機械的強度を高めることができるとともに溝部20bへの異物の侵入を防止することができる。なお、他の実施形態において溝部20bに低弾性材料を充実させてもよい。
上述の低弾性材料としては、樹脂(例えば、ポリエチレンなど)や金属(例えば、Au、Ag、Al、Znなど)を採用すればよく、樹脂を採用する場合には、ポッティング技術やスピンコート技術などを利用して溝部20bに充実させればよく、金属を採用する場合には、めっき法やスパッタ法などを利用して溝部20bに充実させればよい。ここにおいて、低弾性材料として、樹脂を採用すれば、金属を採用する場合に比べて溝部20bへ容易に充実させることができる。また、溝部20bが上述のテーパ状に形成されている場合の方が溝部20bへ容易に充実させることができる。なお、第1のカバー基板2の材料であるSiのヤング率は130GPaであるのに対して、上述の低弾性材料として採用可能なポリエチレン、Au、Ag、Al、Znのヤング率は、それぞれ、7.6×10−1GPa、78GPa、82.7GPa、70.3GPa、108GPaである。また、第1のカバー基板2の材料としてアルミナセラミックを採用する場合には、上述の低弾性材料として、アルミナセラミックよりも弾性率の低い材料を採用すればよく、アルミナセラミックのヤング率が355GPaであってSiのヤング率よりも大きいので、例えば、Cu、Ni、Pt、鋼鉄などの金属の採用も可能となり、低弾性材料の選択肢が増える。Cu、Ni、Pt、鋼鉄のヤング率は、それぞれ、130GPa、199GPa〜220GPa、206GPaである。
上述の各実施形態では、半導体装置として、ピエゾ抵抗形の加速度センサを例示したが、本発明の技術思想は、ピエゾ抵抗形の加速度センサに限らず、例えば、容量形の加速度センサやジャイロセンサ、圧力センサ、マイクロアクチュエータ、マイクロリレー、マイクロバルブなどにも適用できる。