JP4923801B2 - 高密度鉄基成形体および高強度高密度鉄基焼結体の製造方法 - Google Patents
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Description
さらに、最近では、部品の小型化、軽量化のために、粉末冶金製品の高強度化が要望されている。とくに、鉄基粉末製品(鉄基焼結体)に対する高強度化の要求が強い。
1)鉄基金属粉に、黒鉛粉、銅粉等の合金用粉末と、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等の潤滑剤を混合し、鉄基混合粉とする、
2)鉄基混合粉を金型に充填し、圧縮成形して成形体とする、
3)成形体を焼結し、焼結体とする
というものである。
得られた焼結体は、必要に応じサイジングや切削加工が施されて製品とされる。また、焼結体に、高強度が必要なときには、浸炭熱処理や光輝熱処理を施される場合もある。
このようにして得られた成形体の密度は、高々6.6〜7.1 Mg/m3(Mgはメガグラムと読む)程度であり、従ってこれらの成形体から得られる焼結体の密度もこの程度となる。
しかしながら、温間成形技術を適用するためには、粉末を所定の温度に厳密に制御しながら成形する設備が必要となり、製造コストが増加するだけでなく、部品の寸法精度が低下するという問題があった。
しかしながら、この方法で得られた高密度成形体は、クラックが発生し易いため、複雑形状の部品を成形することは難しかった。この理由は、成形体は単に粉末を成形しただけのなので、粒子同士の強度が不足し、成形体を抜き出すときの応力によりクラックが発生し易くなるためと推察される。
しかしながら、非特許文献1では、成形時のエネルギーが3000J(成形エネルギー密度:6.1MJ/m2)の場合でも、その到達密度は真密度の97%程度(7.56Mg/m3)にすぎない。すなわち、密度が十分にあがらないという問題を残していた。
この特許文献6に記載された技術は、表面に液状潤滑剤を塗布した冷間鍛造用焼結プリフォームを、ダイス内で仮圧縮成形したのち、該プリフォームに負圧を作用させて液状潤滑剤を吸引除去し、その後ダイス内で本圧縮成形し、再焼結する焼結冷間鍛造方法である。この方法によれば、仮圧縮成形前に塗布し内部に浸透した液状潤滑剤を、本圧縮成形前に吸引除去するため、内部の微小空隙が本圧縮成形時に圧潰消滅して高密度の最終製品が得られるとしている。
しかしながら、この方法で得られる最終焼結製品の密度は、たかだか7.5Mg/m3程度であり、その強度には限界があった。
しかしながら、従来の方法で仮焼結(予備焼結〉を行うと、仮焼結(予備焼結)時に炭素(C)が成形用素材全体に拡散し、成形素材の硬度が上昇する。このため、高速成形を行うに際し、成形荷重が非常に大きくなり、しかも変形能が低下しているために、所望の形状に加工できないという問題があった。
しかしながら、特許文献7では、仮焼結条件として、1100℃×15〜20minが推奨されているが、本発明者らの実験によれば、この条件では、黒鉛が予備成形品に完全に拡散してしまい、焼結部材用素材(予備成形品)の硬さが著しく上昇し、その後の冷間鍛造が困難になることが判明した。
しかしながら、この方法で得られた金属質粉成形素材は、高速成形工程において高い変形能を有しているが、その後の本焼結時に、残存する遊離黒鉛が消失して、細長い空孔を生じる場合があるところに問題を残していた。
しかしながら、冷間鍛造工程は、金型の仕様の決定に際し、何回ものトライアルアンドエラーを要するので生産性が低いという問題がある。
その結果、予備焼結を適切な温度範囲で、好ましくは酸化および窒化を抑制した雰囲気中で行うことにより、成形体中のNおよびO含有量を極力低減した、低硬度で高い塑性変形能をもつ鉄基粉末成形素材を、成形エネルギー密度が1.4MJ/m2以上の条件で高速成形することにより、クラックの発生を招くことなしに、密度が7.65Mg/m3以上、好ましい条件では7.70Mg/m3以上の高密度で細長い空孔のない成形体が容易に得られるとの知見を得た。
さらに、成形体中のC量を適度に制限すれば、成形エネルギー密度を1.2MJ/m2程度まで下げても同様の効果が得られることを見出した。
また、従来の高速成形では、ラムを上パンチに2回以上衝突させることが一般的であったが、この方法によれば1回の操作で上述した高密度化が達成できるという利点もある。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えた末に完成されたものである。
(1)鉄基金属粉と黒鉛粉、あるいはさらに潤滑剤を混合して得られる鉄基混合粉を、予備成形後、窒素分圧が30kPa以下の非酸化性雰囲気中にて1000℃超1300℃以下の温度で予備焼結して得られた、C:0.10〜0.50mass%、O:0.3mass%以下およびN:0.010mass%以下を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、密度が7.2Mg/m3以上の鉄基粉未成形用素材を、成形エネルギー密度が1.4MJ/m2以上の条件で単軸圧縮により成形することを特徴とする高密度鉄基成形体の製造方法。
また、この高密度鉄基成形体に再焼結および/または熱処理を施すことにより、高強度で高密度の鉄基焼結体を得ることができる。
まず、本発明の鉄基粉末成形用素材の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
C(全C):0.10〜0.50mass%
Cは、浸炭焼入れ、光輝焼入れ時の焼入れ性を考慮し、焼結部材の必要強度に応じて、0.10〜0.50mass%の範囲内で調整する。C含有量が0.10mass%未満では、所望の焼入れ性を確保することができず、一方0.50mass%を超える含有は成形素材の硬さが高くなりすぎ、高速成形後の密度が低下する。
なお、C量を0.20mass%以下に制限すれば、成形エネルギー密度を1.2MJ/m2に下げても、7.65Mg/m3以上の密度の成形体を得ることができる。
Oは、鉄基金属粉に不可避的に含有される元素であるが、O含有量が増加するに従い、成形用素材の硬さが増大して、高速成形後の密度が低下するので、できるだけ低減するのが好ましい。O量が0.3mass%を超えると、高速成形後の密度が低くなるので、0.3mass%をO含有量の上限とした。なお、工業的に安定して製造できる鉄基金属粉のO含有量の下限は、0.02mass%であるため、鉄基粉末成形用素材のO含有量の下限は0.02mass%とすることが好ましい。
Nは、Cと同様、成形用素材の硬さを高める元素であり、黒鉛を鉄基金属粉中に固溶させて遊離黒鉛を実質的に零とする本発明では、成形用素材の硬さをできるだけ低く維持し、高速成形後の密度を高くするためには、N含有量をできるだけ低減するのが望ましい。Nを0.010mass%を超えて含有すると、高速成形後の密度が低くなるため、本発明ではN含有量は0.010mass%以下に限定した。好ましくは0.0050mass%以下である。
Mn:1.2mass%以下、Mo:2.3mass%以下、Cr:3.0mass%以下、Ni:5.0mass%以下、Cu:2.0mass%以下およびV:1.4mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上
Mn,Mo,Cr,Ni,CuおよびVはいずれも、焼入れ性を向上させる元素であり、焼結体の強度確保の目的で、必要に応じて1種または2種以上を選択して含有させることができる。しかしながら、各元素を、上記の上限値を超えて含有させると、成形用素材の硬さが増加し、高速成形後の密度が低くなるため、好ましくない。
なお、合金成分として特に有用な元素は、Mn,MoおよびNiであり、これらの好適含有量はそれぞれ、Mn:0.005〜1.0mass%、Mo:0.005〜2.0mass%、Ni:0.005〜5.0mass%である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、P:0.1mass%以下、S:0.1mass%以下、Si:0.2mass%以下が許容できる。また、遊離黒鉛は、以下に述べるように、0.02mass%以下に抑制することが好ましい。
本発明の鉄基粉末成形用素材は、鉄基金属粉と黒鉛粉と、あるいはさらに潤滑剤とを混合して得られる鉄基混合粉に、予備成形・予備焼結を施して得られたものであり、黒鉛が鉄基金属粉の基地組織に拡散して遊離黒鉛が実質的に存在しない組織とするのが好ましい。
本発明の鉄基粉末成形用素材では、予備焼結条件を調整することによって、遊離黒鉛は0.02mass%以下と、実質的に零とする。黒鉛粉は、予備成形・予備焼結処理により、ほとんどが鉄基金属粉中に拡散し、基地組織中に固溶または炭化物として析出し、遊離黒鉛としてはほとんど残存しない。ここに、遊離黒鉛量が0.02mass%を超えると、高速成形時に成形用素材の流れに沿った黒鉛伸展層の形成が顕著となり、再焼結時に黒鉛が鉄基金属質基地組織中に拡散消失して、細長い空孔が生じる場合がある。かような細長い空孔は、焼結体の欠陥として働き、強度を低下させることがある。このため、遊離黒鉛は0.02mass%以下に制限することが好ましい。
また、本発明の鉄基粉末成形用素材は、7.2Mg/m3以上、好ましくは7.3Mg/m3以上の密度を有することが重要である。密度を7.2Mg/m3以上さらに好ましくは7.3Mg/m3とすることにより、鉄基金属粉粒子間の接触面積が増加し、予備焼結により、接触面を介した物質拡散が広範囲にわたって生じるため、伸びが大きく変形能の高い素材となるので成形体の密度も高くできる。より好ましくは7.35Mg/m3以上である。成形用素材の密度は高いほど好ましいが、金 型寿命等のコスト的制約から7.8Mg/m3程度が上限である。なお、実用的範囲は7.30〜7.55Mg/m3である。
原料粉として、鉄基金属粉と、黒鉛粉、あるいはさらに潤滑剤を用いる。
使用する鉄基金属粉としては、C:0.05mass%以下、O:0.3mass%以下およびN:0.010mass%以下を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鉄基金属粉が好適である。また、必要に応じて、Mn:1.2mass%以下、Mo:2.3mass%以下、Cr:3.0mass%以下、Ni:5.0mass%以下、Cu:2.0mass%以下およびV:1.4mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を予合金化、部分合金化あるいはハイブリッド合金化した鋼粉も有利に適合する。さらには、ハイブリッド合金化した鋼粉と合金用粉末との混合粉として使用することもできる。
いずれの鋼粉においても、C:0.05mass%、O:0.3mass%、N:0.010mass%をそれぞれ超える含有は、粉体の圧縮性を低下させ、成形用素材の密度を7.2Mg/m3以上とすることを困難になる。なお、鉄基金属粉のより好ましいC,O,N量は、C:0.05mass%以下、O:0.3mass%以下、N:0.0050mass%以下である。
なお、O含有量はできるだけ低いことが圧縮成形性の観点からは好ましいが、Oは不可避的に含有される元素であり、経済的に高価とならず、工業的に実施可能なレベルである0.02mass%を下限とするのが望ましい。工業的な経済性の観点から好ましいO含有量は、0.03〜0.2mass%である。
なお、平均粒径は重量積算粒度分布の中点(d50)の値とする。
予備焼結は、窒素分圧が30kPa以下の非酸化性雰囲気中にて1000℃超1300℃以下の温度で行う必要がある。予備焼結温度が1000℃以下では、遊離黒鉛の残存量が0.02mass%を超えて多く、後工程の再焼結時に細長い空孔となるため、厳しい応力下で使用される部材において、欠陥として作用し、強度低下の原因となる可能性がある。一方、予備焼結温度が1300℃を超えると、成形性の向上効果は飽和し、むしろ製造コストの大幅な増加を招くので、経済的に不利となる。このため、予備焼結温度は1000℃超1300℃以下の範囲に限定した。
予備焼結後に、焼鈍を施すことにより、成形用素材の窒素含有量が顕著に低減する。そのため、予備焼結後に、焼鈍を施すプロセスとすることにより、予備焼結雰囲気の窒素分圧を95kPaまで高くしても、成形用素材中の窒素含有量を0.010mass%以下に低減することができ、ガスコストを低減できるという利点がある。この場合における予備焼結後の焼鈍は、400〜800℃の範囲の温度で行う必要がある。焼鈍温度が400℃未満あるいは800℃超では、窒素量低減効果が小さくなるからである。また、焼鈍時の雰囲気は、予備焼結時の場合と同様に、非酸化性雰囲気とする必要がある。これにより、成形用素材の窒素含有量低減効果がさらに顕著となる。なお、焼鈍時の雰囲気中の窒素分圧と、予備焼結時の雰囲気中の窒素分圧とは必ずしも同一とする必要はない。
また、焼鈍時間は、600〜3600s程度とするのが好ましい。焼鈍時間が、600s未満では窒素低減効果が少なく、一方3600sを超えると、効果が飽和する上、生産性が低下するからである。
本発明の高速成形は、例えばスウェーデンのハイドロパルサー社製の高速成形用成形機を用いて行うことができる。この高速成形は、上パンチにラムを介して衝撃的な応力を与える成形方法である。
試料1(成形用素材)を、金型2に装入し、上パンチ3をその上にセットする。油圧アキュムレーター5は、油圧発生器6から供給された油圧をもとに、衝撃ラム4に油圧8(この例では等圧力)を付与し続ける。その結果、衝撃ラム4は等加速度運動9で下方に移動し、最終的に高速で上パンチ3に衝突する。上パンチ3に衝突する時の衝撃ラム4の速度(ラム速度)は、油圧8やラムの移動距離7を調整して制御することができるが、金型2にひずみゲージ(図示省略)を取り付けて、成形圧力の測定および管理を行ってもよい。ラムの衝突は複数回行ってもよい。
成形用素材が純鉄系のように比較的軟質な場合には、1.4MJ/m2以上とする必要がある。というのは、成形エネルギー密度が1.4MJ/m2に満たないと高速成形後に十分に高い密度の成形体を得ることが難しいからである。より好ましく1.8MJ/m2以上である。また、特にC量が0.20mass%以下の場合には、成形エネルギー密度を1.2MJ/m2まで下げることができる。
一方、成形用素材が合金成分を含み比較的硬質な場合には、成形エネルギー密度は 1.8MJ/m2以上、より好ましくは2.2MJ/m2以上とする必要がある。その理由は、純鉄系の場合と同様である。
なお、成形エネルギー密度の上限は、純鉄系組成の場合には2.4MJ/m2程度、また合金系組成の場合には3.0MJ/m2程度で十分である。というのは、これらの値を超えても成形体の密度向上への寄与は小さく、むしろ金型寿命の低下を招く不利が生じる。
成形エネルギー密度 = 0.5 mv2/S ・・・(1)
ここで、mは衝撃ラムの質量、vはラム速度であり、従って0.5 mv2は成形エネルギーを意味する。またSは、加工を受ける成形用素材の垂直方向の投影面の面積である。
再焼結処理は、製品の酸化防止のため、不活性雰囲気あるいは還元性雰囲気または真空中とするのが好ましい。また、再焼結温度は、1050〜1300℃の範囲の温度とするのが好ましい。1050℃未満では、粒子間の焼結の進行や成形体に含まれるCの拡散が不十分で所望の製品強度を確保できない。また、1300℃を超えると、結晶粒が粗大化し、製品強度が低下する。
かかる熱処理としては、目的に応じて、浸炭処理、焼入れ処理、焼戻し処理等を選択できる。
熱処理条件は、とくに限定する必要はなく、ガス浸炭焼入れ、真空浸炭焼入れ、光輝焼入れ、高周波焼入れなどいずれもが適合する。例えば、ガス浸炭焼入れでは、カーボンポテンシャルが0.6〜1mass%程度の雰囲気中で800〜900℃程度の温度に加熱したのち、油 中に焼入れするのが好ましい。なお、カーボンポテンシャルとは、鋼を加熱する雰囲気の浸炭能力を表し、浸炭する温度で、浸炭に用いるガスの雰囲気と平衡に達したときの鋼の表面の炭素濃度(mass%)である。また、光輝焼入れでは、焼結体の表面の高温酸化、脱炭防止のため、Arガス等の不活性雰囲気または水素を含む窒素雰囲気等の保護雰囲気中にて、800〜950℃程度の温度に加熱したのち、油中に焼入れするのが好ましい。さらに、真空浸炭焼入れや高周波焼入れでも、上記した温度範囲に加熱したのち、焼入れするのが好ましい。これらの熱処理により製品の強度を一層向上させることができる。
なお、焼入れ処理後に、必要に応じて焼戻し処理を施してもよい。焼戻し温度は、130〜250℃の通常公知の焼戻し温度範囲とするのが好ましい。
(1)従来の高速成形技術に対する利点
本発明によれば、成形体を金型から取り出す際の割れや欠けが少ない。すなわち、本発明の成形用素材は、冷間鍛造が可能なほどに、粒子間の結合が強く、塑性変形能が高いので、成形後の除荷時のスプリングバックで受ける応力にも十分に耐える。これに対し、従来の粉末からの高速成形では、成形体中の粒子聞結合が弱いため、除荷時に割れや欠けの発生が懸念される。
また、本発明においては、まず、通常の粉末冶金の成形方法で一旦複雑形状品を成形し、予備焼結を行った後、高速成形を行うことができる。それ故、高密度複雑形状品の製造を容易に行うことができる。これに対し、粉末からの高速成形では、単軸プレスで成形できる単純形状品しか成形できない。
従来の焼結冷間鍛造法では、プリフォームに数十%程度の変形を及ぼす冷間鍛造を加えることにより真密度に近い高密度を得ていたが、本発明によれば、プリフォームに単紬の圧縮工程を施すだけで、高密度化が実現できる。単軸圧縮は冷間鍛造より加工が数倍高速で実施できるため、生産性の面で大きな利点となる。さらに、金型の仕様の決定に際し、何回ものトライアルアンドエラーを要する冷間鍛造に対し、単軸圧縮加工に用いる金型は結果形状の予測が正確にできるため、はるかに簡便である。
表1に示す鉄基金属粉と、表1に示す種類と含有量の黒鉛粉および潤滑剤とをV型混合機で混合し、鉄基混合粉とした。
鉄基金属粉として、純鉄粉A、部分合金化鋼粉B、ハイブリッド合金化鋼粉Cおよびハイブリッド合金化鋼粉にさらに金属粉を混合した混合粉Dを用いた。純鉄粉Aとしては、C:0.006mass%、Mn:0.08mass%、O:0.15mass%、N:0.0020mass%を含有する鉄粉(JFEスチール製JIP301A)を用いた。また、部分合金化鋼粉Bとてしは、純鉄粉Aに酸化モリブデン粉末を0.9mass%混合し、水素雰囲気中で875℃に3600s保持して、表面にMoを部分的に拡散付着させた部分合金化鋼粉を用いた。なお、部分合金化鋼粉Bの組成はC:0.006mass%、Mn:0.08mass%、O:0.11mass%、N:0.0023mass%、Mo:0.58mass%である。ハイブリッド合金化鋼粉Cとしては、C:0.007mass%、Mn:0.14mass%、O:0.15mass%、N:0.0020mass%、Mo:0.4mass%を含む予合金化鋼粉の表面に、上記と同じ方法で0.4mass%のMoを部分合金化したものを用いた。さらに、混合粉Dとしては、所定のMnおよびMoを含有する予合金化鋼粉の表面に上記と同じ方法でMoを部分合金化したものに、さらにNi粉を混合したものを用いた。この混合粉Dの組成は、C:0.006mass%、Mn:0.05mass%、O:0.08mass%、N:0.0020mass%、Mo:0.6mass%(予合金分:0.45mass%、部分合金分:0.15mass%)、Ni:1mass%である。
また、黒鉛粉は天然黒鉛とし、潤滑剤はステアリン酸亜鉛を用いた。
なお、表1中の鉄基混合粉中の潤滑剤の含有量は、鉄基金属質粉と黒鉛粉の合計量100質量部に対する質量部で表示してある。
得られた予備成形体に、表1に示す条件で予備焼結し、成形用素材とした。なお、一部の試料(No.15〜No.21)では、予備焼結と連続して焼鈍を行った。
得られた成形用素材の組成、表面硬さHRB(JIS Z 2245によるロックウェル硬さ)および 遊離黒鉛量を調査した。
これらの結果を表2に示す。
この時の成形エネルギー密度を表2に示す。また、得られた成形体の密度も表2に併記する。
得られた結果を表2に併記する。
なお、予備焼結後に本発明の範囲内の温度で焼鈍を行った成形用素材(No.16,No.17,No.20,No.21)は、予備焼結時の雰囲気中の窒素分圧が30kPa以上95kPa以下であっても、窒素含有量が0.010mass%以下となっている。
N含有量が本発明の適正範囲を高く外れた成形用素材(No.10,No.11)はそれぞれ、成形体の密度が低い。
C含有量が本発明の範囲を高く外れた成形用素材(No.12)も、成形体の密度が低い。
成形用素材の密度が7.2Mg/m3未満と低い場合(No.13)は、成形体の密度も低めであり、 また焼結体の平均空孔長さも53μmと長くなっている。
予備焼結後の焼鈍温度が本発明の適正範囲を外れた比較例(No.15,No.18)では、予備焼結時の雰囲気中の窒素分圧が95kPa以下でも、窒素含有量が0.010mass%を超えており、成形体の密度が低い。
予備焼結時の雰囲気中の窒素分圧が95kPaを超えた場合(No.19)には、予備焼結後に焼鈍を行っても、窒素含有量が0.010mass%を超え、成形体の密度が低い。
成形エネルギー密度が本発明の適正範囲に満たなかった場合(No.22)には、成形体の密度が低い。
純鉄粉(C:0.006mass%−Mn:0.08mass%−O:0.15mass%−N:0.0020mass%−残部Fe)に、1.5mass%のMoを拡散付着させた部分合金化鋼粉に、0.2mass%の天然黒鉛粉と、潤滑剤として0.2質量部のステアリン酸亜鉛を配合して鉄基混合粉とした(配合量の基準は実施例1と同じである)。この鉄基混合粉を、密度:7.35Mg/m3、寸法:25mmφ×15mmHの円柱形状に予備成形し、実施例1のNo.5と同様の条件で予備焼結を施した後、1000Jおよび1260Jの成形エネルギーで高速成形を行った。
その結果、成形エネルギーが1000J(成形エネルギー密度:2.0MJ/m2)の場合には、成形用素材の密度は7.68Mg/m3となり、成形エネルギーが1260J(成形エネルギー密度:2.6MJ/m2)の場合には、成形用素材の密度は7.7Mg/m3となった。
しかしながら、該文献によれば、成形のエネルギーが3000J(成形エネルギー密度:6.1MJ/m2)の場合でも、その到達密度は真密度の97%程度(7.56Mg/m3)にすぎない。
しかしながら、本実施例にて示されるように、本発明の方法によれば、該文献に例示される粉末の高速成形方式より格段に低い成形エネルギー、すなわち成形エネルギー密度でより高い密度の成形体を得ることが可能となる。
実施例1のNo.5およびNo.21の成形用素材(表1および2参照)を用い、成形エネルギー密度を表3および4に示すように種々に変化させた他は、実施例1と同じ条件で成形体、焼結体および熱処理後の焼結体を得た。
これらに対し、実施例1と同様の調査を行った。ただし、ラム運動距離は最大90mmとした。
No.5についての結果を表3に、またNo.21についての結果を表4に、それぞれ示す。
また、合金系組成(No.21)では、成形エネルギー密度:1.8MJ/m2以上で、7.65Mg/m3以上の成形体密度を得ることができた。
純鉄粉(C:0.006mass%−Mn:0.08mass%−O:0.15mass%−N:0.0020mass%−残部Fe)に、1.0mass%のMoを拡散付着させた部分合金化鋼粉に、0.2mass%の天然黒鉛粉と、潤滑剤として0.2質量部のステアリン酸亜鉛を配合して鉄基混合粉とした(配合量の基準は実施例1と同じである)。この鉄基混合粉を、密度:7.35Mg/m3、寸法:10mmW×10mmH×55mmLの矩形形状に予備成形し、実施例1のNo.5と同様の条件で予備焼結を施した後、成形エネルギー密度:1.0〜1.5MJ/m2の条件で高速成形を行った。なお、予備焼結後のC量は0.16mass%、O量は0.07mass%、N量は0.0009mass%であった。
かくして得られた成形体の密度について調べた結果を表5に示す。
2 金型
3 上パンチ
4 衝撃ラム
5 油圧アキュムレーター
6 油圧発生器
7 移動距離
8 油圧
9 等加速度運動
Claims (8)
- 鉄基金属粉と黒鉛粉、あるいはさらに潤滑剤を混合して得られる鉄基混合粉を、予備成形後、窒素分圧が30kPa以下の非酸化性雰囲気中にて1000℃超1300℃以下の温度で予備焼結して得られた、C:0.10〜0.50mass%、O:0.3mass%以下およびN:0.010mass%以下を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、密度が7.2Mg/m3以上の鉄基粉未成形用素材を、成形エネルギー密度が1.4MJ/m2以上の条件で単軸圧縮により成形することを特徴とする高密度鉄基成形体の製造方法。
- 鉄基金属粉と黒鉛粉、あるいはさらに潤滑剤を混合して得られる鉄基混合粉を、予備成形後、窒素分圧が95kPa以下の非酸化性雰囲気中にて1000℃超1300℃以下の温度で予備焼 結し、ついで400〜800℃の温度で焼鈍して得られた、C:0.10〜0.50mass%、O:0.3mass%以下およびN:0.010mass%以下を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、密度が7.2Mg/m3以上の鉄基粉未成形用素材を、成形エネルギー密度が1.4MJ/m2以上の条件で単軸圧縮により成形することを特徴とする高密度鉄基成形体の製造方法。
- 鉄基金属粉と黒鉛粉、あるいはさらに潤滑剤を混合して得られる鉄基混合粉を、予備成形後、窒素分圧が30kPa以下の非酸化性雰囲気中にて1000℃超1300℃以下の温度で予備焼結して得られた、C:0.10〜0.20mass%、O:0.3mass%以下およびN:0.010mass%以下を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、密度が7.2Mg/m3以上の鉄基粉未成形用素材を、成形エネルギー密度が1.2MJ/m2以上の条件で単軸圧縮により成形することを特徴とする高密度鉄基成形体の製造方法。
- 鉄基金属粉と黒鉛粉、あるいはさらに潤滑剤を混合して得られる鉄基混合粉を、予備成形後、窒素分圧が95kPa以下の非酸化性雰囲気中にて1000℃超1300℃以下の温度で予備焼 結し、ついで400〜800℃の温度で焼鈍して得られた、C:0.10〜0.20mass%、O:0.3mass%以下およびN:0.010mass%以下を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、密度が7.2Mg/m3以上の鉄基粉未成形用素材を、成形エネルギー密度が1.2MJ/m2以上の条件で単軸圧縮により成形することを特徴とする高密度鉄基成形体の製造方法。
- 前記鉄基粉未成形用素材が、合金成分としてさらに、Mn:1.2mass%以下、Mo:2.3mass%以下、Cr:3.0 mass%以下、Ni:5.0mass%以下、Cu:2.0mass%以下およびV:1.4mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高密度鉄基成形体の製造方法。
- 前記鉄基粉未成形用素材が、請求項5に記載の合金成分を含有する場合に、成形エネルギー密度を1.8MJ/m2以上とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高密度鉄基成形体の製造方法。
- 前記成形が、密閉鍛造または閉塞鍛造を用いた高速成形であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の高密度鉄基成形体の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかの方法で得られた高密度鉄基成形体に、再焼結および/または熱処理を施すことを特徴とする高強度高密度鉄基焼結体の製造方法。
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