JP6743720B2 - 粉末冶金用鉄基混合粉末およびその製造方法ならびに引張強さと耐衝撃性に優れた焼結体 - Google Patents

粉末冶金用鉄基混合粉末およびその製造方法ならびに引張強さと耐衝撃性に優れた焼結体 Download PDF

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本発明は、予合金鋼粉を用いた粉末冶金用鉄基混合粉末に関し、特に自動車用高強度焼結部品等の製造に供して好適なものである。
また、本発明は、上記の粉末冶金用鉄基混合粉末を用いることにより、高温焼結や、高密度成形および窒素水素雰囲気中焼結といった高コストプロセスを用いなくとも、従来のRX焼結−浸炭−焼入れ−焼戻し処理を行うことで、従来の粉末冶金用鉄基混合粉末を用いた場合と比べて、優れた引張強さと耐衝撃性(靭性)が得られる焼結体に関するものである。
粉末冶金技術は、複雑な形状の部品を、製品形状に極めて近い形状(いわゆるニアネット形状)でしかも高い寸法精度で製造できることから、大幅な切削コストの低減が可能となる。このため、粉末冶金製品が各種の機械や部品として、多方面に利用されている。
さらに、最近では、部品の小型化、軽量化のために、粉末冶金製品の更なる強度の向上が求められている。
成形体は、一般に、鉄基粉末に、銅粉や黒鉛粉などの合金用粉末と、ステアリン酸やステアリン酸金属石鹸、エチレンビスアミド等の潤滑剤を混合して鉄基粉末混合粉とし、これを金型に充填して、加圧成形することにより製造される。
鉄基粉末は、成分に応じて、鉄粉(たとえば純鉄粉等)、合金鋼粉等に分類される。また、製法による分類では、アトマイズ鉄粉、還元鉄粉等があり、これらの分類では鉄粉は合金鋼粉を含む広い意味で用いられる。
通常の粉末冶金工程で得られる成形体の密度は、6.6〜7.1 Mg/m3程度が一般的である。これらの成形体は、その後に焼結処理が施されて焼結体とされる。通常、歯車等の高強度が要求される部材に対しては、焼結後に浸炭熱処理や光輝熱処理等の高強度化処理が施される。
焼結部品は粉末を成形−焼結することによって得られるため、不可避的に部品中に空孔が形成される。この空孔が原因となり、一般的に焼結部品は鋳造品や鍛造品といった溶製材に比べて強度と靭性が低い。
このような空孔を微細化する手段としては以下の2つがある。
(1) 成形密度の増加による空孔の存在量の低減。
(2) 焼結温度の増加による空孔の球状化による無害化。
上記(1)については、例えば特許文献1に開示されているような高密度成形技術が知られている。この技術によれば、潤滑剤を金型塗布とし、粉末中に混合する潤滑剤を無くすことで、成形体密度が増加する。
しかしながら、一方で、金型に潤滑剤を塗布するための特殊なスプレ−装置が必要となる上、通常の成形行程中に金型塗布という新たな工程を追加する必要があるため、生産性が低下してしまうというデメリットがある。そのため、上記(1)の手段の適用範囲は限定的であるのが現状である。
また、上記(2)については、通常1200℃未満のRXガス雰囲気中で行う焼結を、1250℃の高温の窒素水素雰囲気中で行うことで、焼結体中の空孔を球状化して焼結部品の高強度化を図る高温焼結技術が開示されている(例えば非特許文献1)。
上記したような焼結部品の用途には、一般的にFe−4質量%Ni−1.5質量%Cu−0.5質量%Mo(以下、4Niともいう)の組成の合金粉末が用いられ、高強度部品の製造方法として最も良く用いられる手法である。
しかしながら、このような高温焼結はエネルギ−コストの観点および焼結炉の炉体寿命の観点から好ましくなく、従って上記(2)の手段についても適用範囲は限定的であるのが現状である。
また、空孔を微細化せずに微細組織そのものを強化する技術として、CrやMn等の焼入れ性を高める元素を積極的に添加し、焼入れ後の組織を微細化して強度を高める技術が提案されている(例えば特許文献2や特許文献3)。
しかしながら、CrやMnは易酸化性の元素であるため、焼結雰囲気を従来のRXガス雰囲気ではなく、窒素水素の混合ガス雰囲気とする必要がある。粉末冶金用の焼結炉は一般的にRXガス雰囲気用となっているため、窒素水素雰囲気ガスに対応するためには大幅な設備改造もしくは新たな炉の設置が必要とされる。このためCrやMnを含む合金粉末の適用についても限定的であるのが現状である。
特許第3309970号公報 特開2015−4098号公報 特開2015−183212号公報
JFE技報No.36 p.63−68
以上のことをまとめると、高強度焼結部品の適用拡大のためには、焼結部品の製造条件については従来のまま(通常の成形、1200℃未満のRX焼結および熱処理(浸炭もしくは光輝熱処理))で、より高強度の焼結部品が得られる粉末冶金用鉄基混合粉末の開発が必要であると言える。
本発明は、上記の要請に有利に応えるもので、焼結部品の製造条件ついては従来のままで、焼結後に優れた引張強さと耐衝撃性(靭性)を得ることができる粉末冶金用鉄基混合粉末を提案することを目的とする。
また、本発明は、上記の粉末冶金用鉄基混合粉末を用いることにより、製造条件は従来のままで、優れた引張強さと耐衝撃性(靭性)を兼ね備える焼結体を提案することを目的とする。
さて、発明者等は、上記の目的を達成するために、粉末冶金用鉄基混合粉末の合金成分、その添加手段および粉体特性について種々検討を重ねた。その結果、以下に述べる知見を得た。
すなわち、合金鋼粉として、Mo、CuおよびNiを予合金化した予合金鋼粉を使用するとともに、添加する黒鉛量、さらにはNi量およびCu量と、NiとCuの配合比を適正な範囲内に収め、また上記合金鋼粉の粒度、さらには粒子の形状を制御することにより、従来の焼結部品製造条件であっても、前記したFe−4Ni−1.5Cu−0.5Moを高温焼結条件にて製造した焼結部品と同等以上の機械的特性(引張強さ、靭性)が得られることを見出したのである。
ここで、Moは、焼結熱処理の際にはフェライト安定化元素として働き、焼結体の焼結密度を上げる働きを担う。
また、上記粉末の粒径を所定の範囲に制御した上で、所定の粒度の粉末形状を不定形化することで、焼結後に強度を低下させる粗大かつ不定形な空孔を低減することができる。
さらに、上記に加え、適正な添加範囲に調整したNiおよび黒鉛、もしくは適正な添加比率に調整したCuとNiの複合添加と適正な添加範囲に調整した黒鉛を添加することで、微細組織を強化するとともに空孔の周りに変形時の応力集中を緩和する残留オーステナイト相(γ相)が形成され、強度の向上を図ることができる。
本発明は、上記知見に基づき、さらに検討を加えた末に完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
1.Mo、CuおよびNiを予め合金化した予合金鋼粉と、黒鉛粉とを含むFe−Mo−Ni−Cu−C系の粉末冶金用の鉄基混合粉末であって、
上記鉄基混合粉末の成分組成が、質量%で、Mo:0.2〜1.5%、C:0.1〜1.0%、CuとNiの合計量が1.0%以上6.0%以下で、かつCu/Ni比が1以下(0の場合を含む)で含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、さらに上記予合金鋼粉の質量平均粒子径D50が120μm以下で、かつ粒子径が50μm以上の粒子断面の円形度の平均が0.6以下であることを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉末。
2.前記予合金鋼粉の質量平均粒子径D50が80μm以下であることを特徴とする前記1に記載の粉末冶金用鉄基混合粉末。
3.前記鉄基混合粉末のMo量が0.2〜0.8質量%であることを特徴とする前記1または2に記載の粉末冶金用鉄基混合粉末。
4.前記鉄基混合粉末のC量が0.1〜0.5質量%であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基混合粉末。
5.前記鉄基混合粉末のCu/Ni比が0.3以上0.6以下であることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基混合粉末。
6.前記1〜5のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基混合粉末を製造する方法であって、
所定量のMo、CuおよびNiを予合金化した予合金鋼粉に、黒鉛粉を添加し、さらに潤滑剤を添加したのち、二次混合により粉末冶金用の鉄基混合粉末とすることを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉末の製造方法。
7.前記1〜5のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基混合粉末の成形−焼結体からなることを特徴とする、引張強さと耐衝撃性に優れた焼結体。
本発明に従い得られた粉末冶金用鉄基混合粉末を用いれば、従来の焼結部品製造条件であっても、高温焼結条件にて製造した焼結部品と同等以上の引張強さと靱性を有する焼結体を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の粉末冶金用鉄基混合粉末は、適量のMo、NiおよびCuを予合金化元素として含み、さらに適正な平均粒径と円形度に調整した予合金鋼粉(以下、単に合金鋼粉ともいう)に対して、適量の黒鉛粉(C)を添加する。
上記した粉末冶金用鉄基混合粉末を、常法のプレス成形により成形体とし、さらに常法の焼結を施すことによって、本発明に従う焼結体は得られる。この際、成形体の鉄基粉末粒子間の焼結ネック部に、Moの濃化部が形成されること、および円形度低下によって成形時の粉末同士の絡み合いが強くなることで焼結が促進される。
このように焼結体密度が増加すると、強度と靱性はともに向上する。さらに、合金鋼粉に添加したNiの効果により、空孔周りに残留オーステナイトが生成し、応力が加わった際の空孔周りへの応力集中を緩和することで、強度と靭性はさらに向上する。
以下、本発明における限定理由について説明する。なお、以下に示す「%」は質量%を意味し、Mo量、Cu量、Ni量および黒鉛粉量は、粉末冶金用鉄基混合粉末全体(100質量%)に対するそれぞれの比率を表すものとする。
本発明の合金鋼粉は一般に水アトマイズ法によって製造される。水アトマイズ後の合金鋼粉(以下、生粉という)の平均粒径は特に指定しないが、後に行われる還元熱処理後に得られる合金鋼粉の平均粒子径とほぼ同等であることが望ましい。この合金鋼粉の好適な粒度範囲については後述する。
ここで、合金鋼粉の円形度は以下のようにして求める。
まず、合金鋼粉を熱硬化性樹脂に埋め込む。その後、断面を鏡面研磨し、光学顕微鏡による撮影を行なう。得られた断面写真から画像解析により粉末断面の断面積Aおよび外周長さLpを求める。このような画像解析が可能なソフトとしては、例えばImageJ(オ−プンソ−ス、アメリカ国立衛生研究所)などがある。粉末断面積より円相当径dcを算出する。ここで、dcは次式(1)によって求められる。
c=2(A/π)1/2 ・・・(1)
このようにして得られたdcを合金鋼粉の粒子径として、50μm以上の粒子を抽出する。この時、少なくとも50μm以上の粒子が150個抽出できるだけの光学顕微鏡撮影を行なう。ここで、抽出する粒子の粒子径を50μm以上に限定する理由は、50μm未満の粒子は、例え高円形度であったとしても、微粒であることによって既に粒子の表面積が高く、焼結時の高い焼結促進効果を有している。従って、円形度が規定外であっても焼結体の空孔微細化に及ぼす効果は十分なためである。
次に、抽出された粒子のdcに円周率πをかけることで円近似外周Lcを算出する。得られたLcと粉末断面の外周長さLpより円形度Cを算出する。ここで、円形度Cは以下の式(2)で定義される値とする。
C=Lc/Lp ・・・(2)
Cが1の場合、断面は真円となり、値が小さくなるにつれて不定形な断面となる。
上記のような生粉は、アトマイズ時の噴霧条件を任意に調整することによって得ることができるし、同一組成かつ円形度の異なる生粉を混合し、50μm以上の円形度が適正範囲内に納まるように調整しても構わない。
次に、生粉を湿水素および乾水素雰囲気中の高温で保持し、生粉中に含まれるCおよびOを低減する。
上記熱処理の雰囲気としては、還元性雰囲気や水素含有雰囲気が好適であり、とりわけ水素雰囲気が適している。なお、真空下で熱処理を加えても良い。好適な熱処理の温度は800〜1100℃の範囲である。温度が800℃未満であると、粉末の脱炭および脱酸が進まず、不純物の含有量が後述する好適範囲外となってしまう。また、1100℃超えると、熱処理中の粉末同士の焼結が進み、粉末の円形度が増加してしまう。
上述のようにして、熱処理を行った場合、通常は、粉末が焼結して固まった状態となっているので、所望の粒径に粉砕・分級を行う。すなわち、所望の粒径になるように、必要に応じて粉砕条件の強化、あるいは、所定の目開きの篩での分級による粗粉の除去を行う。また、必要に応じて、さらに焼鈍を施してもよい。なお、合金鋼粉の最大粒径としては、180μm以下が好ましい。
上記のようにして得た合金鋼粉の適正な平均粒子径(D50)は120μm以下である。D50が120μmを超えると、焼結の際の駆動力が弱くなって、粗大な鉄粉粒の周囲に粗大な空孔が形成されて焼結密度の低下をもたらし、焼結体や浸炭・焼入れ・焼戻し後の強度や靭性を低下させる原因となる。好ましいD50の範囲は80μm以下である。
また、合金鋼粉のうち粒子径が50μm以上の粒子については、その円形度を0.60以下、好ましくは0.57以下とするのが良い。円形度を低下させることで、成形時の粉末同士の絡み合いが強固になるとともに、粉末の圧縮性が向上するため、成形体および焼結体中の粗大な空孔が減少する。また、還元粉のように多くの空孔を含まないため、成型により高い密度を得ることができる。とはいえ、過度の円形度低下は圧縮性の低下を招くため、円形度を0.40未満とするのは好ましくない。
次に、成分の限定理由について述べる。
Mo量は、粉末冶金用鉄基混合粉末全体(100%)に対し0.2〜1.5%の比率とする。0.2%を下回ると、焼入れ性向上効果が少なく、強度向上効果も少ない。一方、1.5%を超えると、焼入れ性向上効果が飽和するだけでなく、粒子表層に濃化して固溶しきれないMoが空孔周りに硬質相として残留する。この硬質相は応力が加わった際の応力集中点となるため、強度や靭性が低下する。好ましいMo量は0.2〜0.8%の範囲である。
Cuは、鉄基粉末の固溶強化、焼入れ性向上を促し、焼結および熱処理後の部品の強度を高める有用元素である。さらに、焼結中に液相を生成することで、焼結を促進し、空孔を球状化する効果もある。
また、Niは、Cuと同様に、焼入れ性を向上させることに加え、組織中に安定かつ微細な残留γ相を形成する。この残留γ相は組織が変形した際に硬質なマルテンサイト相へと歪誘起変態する。これにより、残留γを含む組織は降伏後に高い加工硬化を示し、高い引張強度が得られる。また、残留γが変形時の応力集中となる空孔周りに存在する場合、歪誘起変態によって空孔周りの応力集中を緩和する効果もある。
これら2種類の合金化元素を所定の比率で添加することにより、高い引張と靭性を示す焼結体が得られる。具体的にはCu+Niの総添加量を1.0%以上6.0%以下とする。1.0%未満の添加量では上記の効果を十分に得ることができない。また、添加量が6.0%を超えると、その効果が飽和する上に、CuおよびNiの拡散が十分に進まず、未固溶かつ軟質なCuやNiが残留する。この軟質相により焼結体は大幅な強度低下を示す。
また、Cu/Ni比は1以下とするのが好ましい。Cu/Niが1より大きい場合はNiによる強度向上効果が不十分となる。Cu/Ni比の下限値は0であるが、Cu添加による空孔球状化の得るためには0.3〜0.6とするのが好適である。
次に、黒鉛粉は、高強度化および高疲労強度化に有効であるので、0.1〜1.0%を添加し、混合する。0.1%に満たないと上述の効果を得ることができない。一方、1.0%を超えると過共析になるため、セメンタイトが析出して強度の低下を招く。従って、黒鉛粉は0.1〜1.0%の範囲に限定する。好ましくは0.1〜0.5%の範囲である。なお、添加する黒鉛粉の平均粒径は、1〜50μm程度の範囲が好ましい。
本発明において、合金鋼粉の残部は、鉄および不可避不純物である。合金鋼粉に含有される不純物としては、C、O、NおよびS等が挙げられるが、これらの含有量は、合金鋼粉に対しそれぞれ、C:0.02%以下、O:0.3%以下、N:0.004%以下、S:0.03%以下、Si:0.2%以下、Mn:0.5%以下、P:0.1%以下であれば特に問題はないが、Oは0.25%以下がより好ましい。なお、不可避不純物量が上記の範囲を超えると、合金鋼粉の圧縮性が低下してしまい、十分な密度を有する予備成形体に圧縮成形することが困難となる。
本発明では、合金鋼粉に黒鉛粉を混合してFe−Mo−Ni-Cu−C系の粉末冶金用鉄基混合粉末とするのであるが、その混合方法は、粉体混合の常法に従って行えばよい。
さらに、焼結体の段階で、切削加工などによりさらに部品形状を作り込む必要がある場合には、MnSなどの切削性改善用粉末の添加を常法に従い適宜行うことができる。
次に、本発明の粉末冶金用混合粉を用いて焼結体を製造する際に好適な成形条件、焼結条件について説明する。
本発明の粉末冶金用鉄基混合粉末を用いた加圧成形に際しては、他に、粉末状の潤滑剤を混合することができる。また、金型に潤滑剤を塗布あるいは付着させて成形することもできる。いずれの場合であっても、潤滑剤として、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸リチウムなどの金属石鹸、エチレンビスステアリン酸アミドなどのアミド系ワックスおよびその他公知の潤滑剤のいずれもが好適に用いることができる。なお、潤滑剤を混合する場合は、粉末冶金用鉄基混合粉末:100質量部に対して、0.1〜1.2質量部程度とすることが好ましい。
本発明の粉末冶金用鉄基混合粉末を加圧成形して成形体とする際には、400〜1000MPaの加圧力で行うことが好ましい。加圧力が400MPaに満たないと得られる成形体の密度が低くなって、焼結体の特性が低下する。一方、1000MPaを超えると金型の寿命が極端に短くなって、経済的に不利になる。なお、加圧成形の際の温度は、常温(約20℃)〜約160℃の範囲とすることが好ましい。
また、上記成形体の焼結は1100℃以上1200℃以下の温度域で行うことが好ましい。焼結温度が1100℃に満たないと焼結が進行しなくなって、所望の引張強さ(1000MPa以上)が得られなくなる。一方、1200℃を超えるといわゆる高温焼結の温度域となり、焼結炉の寿命が短くなって、経済的に不利になる。なお、焼結時間は10〜180分の範囲とすることが好ましい。
さらに、得られた焼結体には、浸炭焼入れや、光輝焼入れ、高周波焼入れ、浸炭窒化処理等の強化処理を施すことが有利である。各処理の条件については常法に従って施せば良い。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、 本発明は、以下の例だけに限定されるものではない。
生粉としては、表1に示すような、Mo量、Ni量、Cu量および質量平均粒子径D50が種々に異なるアトマイズ生粉を用いた。
この生粉を、露点:30℃の水素雰囲気中で熱処理(保持温度:880℃、保持時間:1h)して、鉄粉中のC、OおよびNを所定の範囲まで低減した。
得られた合金鋼粉を樹脂に埋め込み、断面研磨を実施した後に、光学顕微鏡写真を撮影し、画像解析により円形度を算出した。
ついで、これらの合金鋼粉に対して、表1に示す量の黒鉛粉(C)を添加し、さらに得られた粉末冶金用鉄基混合粉末:100質量部に対してエチレンビスステアリン酸アミドを0.6質量部を添加したのち、V型混合機で15分間混合した。
表1に、各焼結体の試料No.と、用いた合金鋼粉の粒子径、円形度および成分を示す。ちなみに試料No.1〜5は粒子径が異なる試料群、試料No.6〜9は円形度が異なる試料群、試料No.10〜16はMo量が異なる試料群、試料No.17〜22はC量が異なる試料群、試料No.23〜27はCu+Ni量が異なる試料群、試料No.28〜31はCu/Ni比が異なる試料群で、さらに試料No.32は比較用の従来材である4Ni(Fe−4Ni−1.5Cu−0.3C)である。試料No.32については、NiおよびCuについてもMoの拡散付着時に同時に拡散付着させてある。
これらの粉末を、成形圧力690MPaで加圧成形して、長さ:55mm、幅:10mm、厚さ:10mmの棒状成形体各10個、および外径:38mm、内径:25mm、厚さ:10mmのリング状成形体各1個を作製した。
この棒状成形体およびリング状成形体に焼結を施して、焼結体とした。この焼結に際しては、試料No.1〜32はRXガス(プロパン変性ガス)雰囲気中にて、焼結温度:1130℃、焼結時間:20分の「従来」焼結条件で行った。また、試料No.32についてはH2:10%、N2:90%雰囲気中にて、焼結温度:1250℃、焼結時間:60分の「高温」焼結条件にて行った。
リング状焼結体については、外径、内径、厚さおよび質量の測定を行い、焼結体密度(Mg/m3)を算出した。
棒状焼結体については、各々5個をJIS Z 2241で規定される引張試験に供するため平行部径:5mmの丸棒引張試験片に加工し、また、各々5個をJIS Z 2242で規定されるシャルピ−衝撃試験に供するため焼結したままの棒状形状で、いずれもカ−ボンポテンシャル:0.8%のガス浸炭(保持温度:870℃、保持時間:60分)を行い、続いて焼入れ(60℃、油焼入れ)および焼戻し(保持温度:180℃、保持時間:60分)を行った。
これらの浸炭・焼入れ・焼戻し処理を施した丸棒引張試験片およびシャルピ−衝撃試験用棒状試験片を、JIS Z 2241で規定される引張試験およびJIS Z 2242で規定されるシャルピ−衝撃試験に供して、引張強さ(MPa)および衝撃値(J/cm2)を測定し、試験数n=5での平均値を求めた。
試料の合否判定は、引張強度が試料No.32の高温焼結材以上のものを「○」、引張強度および衝撃値の両方が高温焼結材以上のものを「◎」、引張強度が試料No.32未満のものを「×」とした。
得られた結果を表1に併記する。
Figure 0006743720
表1に示したとおり、本発明の要件を満足するNo.1〜4、6〜8、11〜15、18〜21、23〜26および28〜30は全て高温焼結材であるNo.32と同等以上の引張強度を有している。特に合金鋼粉の質量平均粒子径D50が80μm以下であるNo.1〜2、Mo量が0.2〜0.8質量%であるNo.11〜13、C量が0.1〜0.5質量%であるNo.18〜19、Cu/Ni比が0.3以上0.6以下であるNo.29はいずれも、靭性においてもNo.32と同等以上であり、従来のRX焼結であっても、高温焼結材レベルの極めて優れた力学特性が得られることが分かる。

Claims (6)

  1. Mo、CuおよびNiを予め合金化した予合金鋼粉と、黒鉛粉とを含むFe−Mo−Ni−Cu−C系の粉末冶金用の鉄基混合粉末であって、
    上記鉄基混合粉末の成分組成が、質量%で、Mo:0.2〜1.5%、C:0.1〜1.0%、CuとNiの合計量が1.0%以上6.0%以下で、かつCu/Ni比が1以下で含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、さらに上記予合金鋼粉の質量平均粒子径D50が120μm以下で、かつ粒子径が50μm以上の粒子断面の円形度の平均が0.6以下であることを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉末。
  2. 前記予合金鋼粉の質量平均粒子径D50が80μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の粉末冶金用鉄基混合粉末。
  3. 前記鉄基混合粉末のMo量が0.2〜0.8質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の粉末冶金用鉄基混合粉末。
  4. 前記鉄基混合粉末のC量が0.1〜0.5質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基混合粉末。
  5. 前記鉄基混合粉末のCu/Ni比が0.3以上0.6以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基混合粉末。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基混合粉末を製造する方法であって、
    所定量のMo、CuおよびNiを予め合金化した予合金鋼粉に、黒鉛粉を添加し、さらに潤滑剤を添加したのち、混合により粉末冶金用の鉄基混合粉末とすることを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉末の製造方法。
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