JP4923215B2 - 海苔酸処理剤 - Google Patents

海苔酸処理剤 Download PDF

Info

Publication number
JP4923215B2
JP4923215B2 JP2005286747A JP2005286747A JP4923215B2 JP 4923215 B2 JP4923215 B2 JP 4923215B2 JP 2005286747 A JP2005286747 A JP 2005286747A JP 2005286747 A JP2005286747 A JP 2005286747A JP 4923215 B2 JP4923215 B2 JP 4923215B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
acid
acid treatment
treatment agent
solution
seawater
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2005286747A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007091690A (ja
Inventor
正明 田端
嘉応 川村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NATIONAL UNIVERSITY CORPORATION SAGA UNIVERSITY
Original Assignee
NATIONAL UNIVERSITY CORPORATION SAGA UNIVERSITY
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NATIONAL UNIVERSITY CORPORATION SAGA UNIVERSITY filed Critical NATIONAL UNIVERSITY CORPORATION SAGA UNIVERSITY
Priority to JP2005286747A priority Critical patent/JP4923215B2/ja
Publication of JP2007091690A publication Critical patent/JP2007091690A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4923215B2 publication Critical patent/JP4923215B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Cultivation Of Seaweed (AREA)
  • Edible Seaweed (AREA)
  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)

Description

本発明は、養殖海苔に混生する雑藻類や、細菌等による病害の防除を図る海苔酸処理剤に関し、特に、海水の混入によるpH変化が非常に少なく、且つリン分を含まず海洋の過剰な富栄養化とこれに起因する海苔生育環境悪化を招かない海苔酸処理剤に関する。
海苔の養殖にあたっては、雑藻類の混生や、細菌等が原因の病害といった問題があり、こうした雑藻類や病害の防除法としては、雑藻類及び細菌と海苔の酸に対する抵抗性の差を利用する酸処理が、従来から一般的に利用されている。この酸処理に用いられる酸処理剤は、海苔の食品としての安全性、養殖作業者の安全性を確保しつつ、酸処理剤としての十分な効果、作業における取扱い易さ等を求められており、常に改良を加えられている。近年用いられている海苔処理剤の一例として、海水に無機塩類と酸とを加えたものが、特許第3296174号公報に示されている。
この従来の海苔酸処理剤は、海水と無機塩類と酸とを含み、比重を1.03〜1.13に調整され、且つpHを0.5〜5.0に調整されてなる構成である。この海苔酸処理剤においては、それ以前の処理剤と比べて海苔以外の藻類や病害の防除効果が上回り、且つ比重が高すぎて正常な海苔を傷めることもない適切な比重範囲とされており、それ以前の酸処理剤で得られる効果をより短時間で得ることができるものとなっている。
また、他の海苔処理剤として、特許第3369544号公報に示されるものがある。この従来の他の海苔酸処理剤は、有機カルボン酸および塩化第二鉄を含有する溶液であり、且つ溶液比重を1.03未満とされるものである。この海苔酸処理剤においては、有機酸と塩化第二鉄の相乗効果で、それ以前のものよりも低濃度ながら、より短時間で効果的に海苔の雑藻や病害を防除することができ、且つ海苔葉体に対する傷害もなく、作業効率を向上させられると共に、養殖漁場の栄養塩不足を補って海苔の退色による品質低下を防止する効果も期待されるものとなっている。
ただし、養殖海苔の生育環境をなす海水は、それ自体の緩衝能によりpH8程度を維持しており、海苔に対し酸処理剤を用いる際に海水が多く混入すると、pHの値が増える、すなわち酸性度が弱まる状態に移行しやすいことから、酸処理による効果を維持するために、従来の酸処理剤には一般にリン酸やクエン酸等の化合物からなる緩衝液が加えられており、海水等が混入しても緩衝液の緩衝作用でそのpHの値があまり変化しない仕組みとされていた。
特許第3296174号公報 特許第3369544号公報
従来の酸処理剤は以上のように構成されており、酸処理剤の主体となる酸や緩衝液、又は栄養分として、リン酸化合物が含まれている場合が多いことから、酸処理に伴って海苔に付着したリン分が海水中に流出することとなり、自然に存在する量に比べて過剰なリン分が海水の富栄養化、すなわちプランクトンの大量発生を招き、これに伴う海中の窒素分の減少で、海苔原藻の成長不良や色落ちにつながってしまう危険性が極めて高いという課題を有していた。
また、海苔の酸処理はpH2程度の酸で行うのが最適であり、従来から酸と共にリン酸緩衝液やクエン酸緩衝液を用い、その緩衝能によりpHの値がなるべく変化しないように工夫されていたが、本来リン酸緩衝液やクエン酸緩衝液等の最大緩衝作用を持つpH領域は、この酸処理を効果的に行えるpH2付近から大きく離れており、その分緩衝能が劣り、作業中の海水混入による希釈がさほど進んでいない時点でも酸処理に適したpHを維持できなくなるという課題を有していた。
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、リンが含まれない配合として海苔生育環境への悪影響を防ぎ、且つ緩衝能に優れpH変化が極めて少なく、酸処理効果を最大限に発揮して海苔から雑藻類や細菌等を確実に防除できる海苔酸処理剤を提供することを目的とする。
上記課題を解決するものとして、本発明に従えば、pH2付近において水素イオン濃度変化に対する最大緩衝作用を有する共役酸塩基系に有機酸を加えた海水稀釈溶液から成り、リンを含まず、pH1〜3であり、且つ、全体の比重が1.03未満であることを特徴とする海苔酸処理剤が提供される。
本発明においては、有機酸に、溶液中で共役な酸と塩基を生じさせる化合物と海水を混合し、酸性の溶液中に緩衝液が含まれる状態を得ることにより、酸処理作業中の海水での希釈をはじめ、酸や塩基が加わることに伴うpH変化を非常に小さくして、酸処理に必要なpH2付近に維持でき、海苔への雑藻付着や病害を防止しながら、能率良く海苔に対する酸処理作業が行えると共に、海水の富栄養化を促すリンを含むリン酸緩衝液を用いずに済み、海苔養殖場周囲の環境への悪影響をなくせる。
本発明は、海苔の酸処理に好適なpH2近傍において水素イオン濃度緩衝能に優れた緩衝系と、有機酸(リンを含まない)とを組み合わせたユニークな海苔酸処理剤である。本発明者は、そのようなpH2付近において水素イオン濃度に対する最大緩衝作用を有する共役酸塩基系として、硫酸ナトリウム−硫酸水素ナトリウムから成るものが特に好ましいことを見出している。以下、主として、この硫酸ナトリウムと硫酸水素ナトリウムの共役酸塩基系に沿って本発明の実施の形態を説明する。
硫酸ナトリウム−硫酸水素ナトリウムから成る共役酸塩基系はpH1.8付近で最大緩衝作用を呈する。この系は、一般に、硫酸ナトリウムと硫酸水素ナトリウムを水溶液中で混合することによって得られるが、硫酸水素ナトリウムの代わりに、グルコン酸、酒石酸または乳酸を使用することによって生成する(後述の説明参照)。
本発明の酸処理剤で用いられる硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、グルコン酸、酒石酸および乳酸は、いずれも、一般的に用いられている安全性の高い化合物であり、海苔やその周囲の環境に悪影響を与えず、雑草類や細菌等の防除のみを確実に実行できる。また、これらの化合物は、固体結晶状態として入手できるので(但し、市販の乳酸はラセミ体であり、これは液体である)、最終的な酸処理剤として調製する直前まで必要最小限の体積のままで取扱うことができ、作業者の作業負担を減らし作業能率を大きく向上させることができる。
本発明において用いられる有機酸は、酸処理剤の主体としてそのpHを所定値(pH2)付近まで引下げるものであり、具体的な例としては、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、蟻酸、アクリル酸、クロトン酸、コハク酸、シュウ酸、グルタル酸等のリンを一切含まない有機カルボン酸が挙げられ、特に好ましい例は、クエン酸である。これらの有機酸の実際に酸処理作業に用いる状態における酸処理剤中での濃度は、0.05〜0.5%、好ましくは0.1〜0.4%である。これらの有機酸のうち、常温で結晶のものは、固体(粉末、粒剤、錠剤)状態から海水等に溶かして用いることができる。
前記共役な酸及び塩基の各化合物としての硫酸水素ナトリウム(または、グルコン酸、酒石酸、もしくは乳酸)と硫酸ナトリウムは、それぞれ海水に溶けて電離した状態で緩衝液をなすものである。これらは固体(粉末、粒剤、錠剤)の状態から海水等の溶媒に溶かして用いられる(但し、乳酸を除く)他、当初から溶液の状態とされて使用前の混合、希釈を経て用いられる場合もある。硫酸水素ナトリウム(または、グルコン酸、酒石酸、もしくは乳酸)と硫酸ナトリウムとの配合モル比は、約10:1ないし1:10の範囲が望ましく、酸処理剤のpHの値を適切な範囲となるように調製できる。2モル濃度の硫酸水素ナトリウム(または、グルコン酸、酒石酸、もしくは乳酸)と硫酸ナトリウムの各配合割合におけるpHの値を表1に示す。表1に示されるように、「Na2SO4+グルコン酸」、「Na2SO4+酒石酸」、「Na2SO4+乳酸」または「Na2SO4+NaHSO4」のいずれの混合によってもpHを2付近に調整することができ、「Na2SO4+NaHSO4」は特に低pH域に調整できることから好ましい。実際に酸処理作業に用いる状態の酸処理剤におけるこれら硫酸水素ナトリウム(または、グルコン酸、酒石酸、もしくは乳酸)及び硫酸ナトリウムの濃度は、硫酸水素ナトリウム(または、グルコン酸、酒石酸、もしくは乳酸)が0.03〜0.2%、硫酸ナトリウムが0.05〜0.3%である。
Figure 0004923215
海水は、有機酸や各化合物の希釈、溶解用として海苔養殖場付近の海水がそのまま用いられる。この海水で実際に使用する酸処理剤の比重が1.03未満となるように各材料を混合した溶液を希釈して調整する。酸処理剤の比重を1.03未満とするのは、最終的に製品として得られる海苔の性質を良好とするためであり、酸処理剤の比重が1.03以上になると、酸処理を経た海苔が柔らかくなりすぎ、製品が割れやすいといった不良につながる。また、比重1.03以上になると酸処理剤のpH値が下がりすぎ、海苔に対する他の悪影響も大きくなる。
次に、本実施形態に係る海苔酸処理剤の調製について説明する。まず、船上等の酸処理作業現場に設けられた所定容量の処理槽内に、所定割合で有機酸、硫酸水素ナトリウム(または、グルコン酸、酒石酸、もしくは乳酸)、硫酸ナトリウム、及び海水を投入して混合撹拌することにより、酸性の水溶液としての酸処理剤を得る。この場合、海水の混合量を少なくして一旦高濃度の原液を得、さらにこれを酸処理箇所等の海水で適切な濃度まで希釈して、酸処理剤を得るようにしてもよい。前記有機酸、硫酸水素ナトリウム、及び硫酸ナトリウム(または、グルコン酸、酒石酸、もしくは乳酸)は、固体または、あらかじめ水溶液とされたものを用いる。
この処理槽内における酸処理剤において、硫酸水素ナトリウムは、以下の式のように完全に電離している。
NaHSO4→Na+HSO4 ・・・・・(1)
さらに、硫酸水素イオンは、一部が電離して、(ただし、平衡を表す記号は本来の上→下←の二段重ねを⇔で代用)
HSO4 ⇔H+SO 2− ・・・・・(2)
となり、溶液は酸性を示す。
一方、硫酸ナトリウムは、以下の式のように溶液中で完全に電離し、
Na2SO4→2Na+SO4 2− ・・・・・(3)
となる。
一方、溶液中では、以下の式のような平衡が得られている。
2O⇔H+OH ・・・・・(4)
ここで、溶液中には硫酸水素イオンと硫酸イオンが多量存在している。酸を加える(Hが増加する)と、Hが溶液中に多量に存在するSO4 2−と反応し、HSO4 に変化するため、(2)式の平衡が左に動き、Hが減少して酸の影響を弱める。一方、塩基を加える(OHが増加する)と、Hが中和で失われ、(4)式の平衡が左に動くと共に、このHの減少を補うように(2)式の平衡が右へ移動することで、結果的に塩基の影響を弱めることとなる。また、水で希釈しても、硫酸水素ナトリウムと硫酸ナトリウムは同様に希釈され、濃度比は変らないため、pHの変化はほとんどない。
硫酸水素イオン(HSO4 )の酸解離平衡定数、Ka2(mol/l)は、Ka2=1.50×10−2(pKa2=1.82)であり、これに基づき、pH=1.82、すなわちpH=pKa2となるような酸性領域における最大緩衝作用を有する緩衝液が得られることとなる。
硫酸水素ナトリウム(NaHSO4)を加えていなくても、硫酸ナトリウム(Na2SO4)を含有する溶液を酸性にすればNaHSO4が生成する。すなわち、硫酸ナトリウム−硫酸水素ナトリウムから成る共役酸塩基系によるpH1.8付近で最大緩衝作用を有する酸処理剤は、「Na2SO4+NaHSO4」の混合のみならず、「Na2SO4+グルコン酸」、「Na2SO4+酒石酸」、または「Na2SO4+乳酸」の混合によっても同様に調製することができる。
こうして、処理槽内で調製された緩衝液成分を含む酸処理剤は、pHを所定値に維持可能な緩衝能を有し、この酸処理剤を用いて海苔網上の海苔に対し酸処理作業を実施することができる。
続いて、本発明に係る海苔酸処理剤を適用する酸処理作業について説明する。まず、船上の処理槽内に調製済の酸処理剤が十分存在している状態で、海苔原藻の付着している海苔網を海上に引上げてその下側に船を位置させるようにして船上に海苔網を上げ、船上の処理槽内に入れて数十秒から数分間浸漬して酸処理を行った後、処理槽から出して海中に戻す。作業者は適宜船を動かしながら海苔網の各位置に対して同様に作業を行う。酸処理作業を経て酸処理剤に海水が混入しても、緩衝能により酸処理に最適なpH2付近が維持され、酸処理をそのまま継続できる仕組みである。万が一、酸処理作業における酸処理剤の過度の使用により、そのpH値が最適範囲から著しく変化しても、処理現場でこの酸処理剤に有機酸及び硫酸水素ナトリウムの固体や溶液を追加するだけで、容易に元のpH値に戻せ、緩衝能も回復させることができる。
なお、酸処理作業は海苔網の酸処理剤への浸漬の他、海苔網の干出時に酸処理剤を海苔網に散布する方法などもある。
このように、本発明の海苔酸処理剤においては、有機酸に、溶液中で共役な酸及び塩基を生じさせる化合物としての硫酸水素ナトリウム(または、グルコン酸、酒石酸、もしくは乳酸)及び硫酸ナトリウムと海水を混合し、酸性の溶液中にpH2付近で最大緩衝作用を有する緩衝液が含まれる状態を得ることから、酸処理作業中の海水での希釈をはじめ、酸や塩基が加わることに伴うpH変化を非常に小さくすることができ、酸処理に最適なpH値を維持でき、能率良く海苔に対する酸処理作業が行えると共に、海水の富栄養化を促すリンを含むリン酸緩衝液を用いずに済み、海苔養殖場周囲の環境への悪影響をなくせる。
本発明に係る海苔酸処理剤を、有機酸や緩衝剤となる化合物等の配合条件を変えて複数種類生成し、得られた処理剤のpH値及び海苔に対する影響について比較した評価結果を示す実施例に沿って本発明を説明する。
(試験1)水100mlに対し、クエン酸一水和物、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、グルコン酸、酒石酸、または乳酸をそれぞれ加えた原液を調製した(第1実施例〜第6実施例)。さらに、比較例として、クエン酸一水和物を加えず、硫酸ナトリウムと硫酸水素ナトリウムのみを加えた原液(第1比較例)、および、従来の酸処理剤同様、水100mlに対し、クエン酸一水和物15gと第一リン酸ナトリウム15gを加えた原液を調製した。これらの各原液を海水で50倍、100倍に希釈した希釈溶液をそれぞれ調製した(第2比較例)。各希釈溶液の比重はいずれも1.030未満であった。各原液及び希釈溶液における各成分の濃度及び各液のpHの値を表2に示す。
Figure 0004923215
いずれの希釈溶液も希釈量の違いによるpHの差異は小さく、酸処理剤として要求される範囲に保たれている。本発明の配合で、酸処理剤として実際に使用する濃度において酸処理に最適となる所望のpH値が得られていることが確認できた。
(試験2)水100mlに対し、クエン酸一水和物を15g、硫酸ナトリウムを11.2g、硫酸水素ナトリウムを5.2gそれぞれ加えた原液(第7実施例)を調製すると共に、第3比較例として、クエン酸一水和物15gと第一リン酸ナトリウム15gを加えた原液を調製した。そして、各原液を海水で50倍、100倍、150倍、200倍に希釈した希釈溶液をそれぞれ調製した。各希釈溶液の比重はいずれも1.030未満であった。各原液及び希釈溶液のpHの値を表3に示す。
Figure 0004923215
第7実施例の配合のものは希釈により濃度が低下してもpHの値が急変することはなく、比較例としたリン酸緩衝液と比べてもそれより優れた緩衝能を有していると言え、海水による希釈でも酸処理性能に変化が小さい実用的な酸処理剤としての有効性が確認できた。
(試験3)この試験は、海苔葉体に及ぼす酸処理剤の影響を調べたものである。2Mのグルコン酸、酒石酸、乳酸、または硫酸水素ナトリウムと硫酸ナトリウムの9:1溶液に、クエン酸溶液最終濃度30%になるように添加した溶液を海水でpH2.0に調整した(第8実施例〜第11実施例)。比較のために、水100mlに対し1N塩酸を約0.7ml加えてpH2.0に調整した塩酸水溶液も調製した(第4比較例)。1、2、3、5、10分経過毎に海苔葉体の健全度、すなわち海苔葉体自体の変化の有無を調べた。各経過時間毎に海苔葉体が障害を受けた割合を表4に示す。
Figure 0004923215
pH2.0の処理では海苔葉体に対する影響はでないことが理解される。
(試験4)この試験は、実際の使用状態の酸処理剤を調製する例である。海水200リットルに対し、所定量の硫酸ナトリウムと、グルコン酸、酒石酸、乳酸または硫酸水素ナトリウム(一水和物)と、クエン酸(一水和物)とを加えた酸処理剤(第12実施例〜第15実施例)を調製した。さらに、これらの各酸処理液に海水50l(酸処理作業時に混入する海水量を想定)を加えて希釈した希釈液をそれぞれ調製した。使用した海水はpH8.17、比重1.021(水温17℃)であり、各酸処理液及び希釈液の比重はいずれも1.030未満であった。各酸処理液及び希釈後のpHの値を表5に示す。
Figure 0004923215
本発明の酸処理剤は、いずれも、希釈後のpH変化は小さく、酸処理剤として要求される範囲に保たれている。本発明の配合で、十分な緩衝能を備え、海水による希釈でも酸処理性能がほとんど変化せず、比較例としたリン含有酸処理液と比べても遜色なく、酸処理剤として有効に利用できることが確認できた。
(試験5)この試験は、雑藻類であるアオノリ葉体に及ぼす酸処理剤の影響を調べたものである。2Mのグルコン酸、酒石酸、乳酸、または硫酸水素ナトリウムと硫酸ナトリウムの9:1溶液に、クエン酸溶液最終濃度30%になるように添加した溶液を海水でpH1.8に調整した(第16実施例〜第19実施例)。各溶液にアオノリ葉体を浸漬し、2、5、8、10分経過後にアオノリ葉体の状態を調べた。
その結果を表6に示す。表中、○は効果がありアオノリが死んだ場合、△はアオノリが死にかけている場合、×は効果がなくアオノリが生きていることを表す。本発明の酸処理剤は、10分程度の浸漬操作によりアオノリを死滅させる効果があることが理解される。
Figure 0004923215
(試験6)この試験は、本発明の酸処理剤がアカグサレ菌に及ぼす効果を調べたものである。試験3に用いた処理剤(第8実施例〜第11実施例)および塩酸溶液(第4比較例)の各溶液にアカグサレ菌を浸漬し、1、2、3、5、10分毎にその状態を調べた。
その結果を表7に示す。表中、○は菌が死んだ場合、×は菌が死んでいない場合を表す。本発明の酸処理剤を用いてpH2.0の処理を行えば、塩酸溶液と同様、5分程度の浸漬操作によりアカグサレ菌を死滅させることができる。
Figure 0004923215
以上のように、本発明の海苔酸処理剤を用いて酸処理作業を行うと、酸処理に必要となる十分な酸性度が維持されて確実に雑藻類や細菌等の防除を実行できると共に、従来同様の短時間の酸処理作業では海苔葉体に与える悪影響は小さく、海苔の品質が損なわれることもなく、本発明の海苔酸処理剤が海苔の酸処理に非常に有効であることが確認できた。

Claims (4)

  1. pH2付近において水素イオン濃度変化に対する最大緩衝作用を有する共役酸塩基系に有機酸を加えた海水稀釈溶液から成り、リンを含まず、pH1〜3であり、且つ、全体の比重が1.03未満である海苔酸処理剤であって、前記共役酸塩基系が、硫酸ナトリウムにグルコン酸、酒石酸または乳酸を混合することによって生成される硫酸ナトリウム−硫酸水素ナトリウムから成ることを特徴とする海苔酸処理剤。
  2. 前記有機酸が、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、蟻酸、アクリル酸、クロトン酸、コハク酸、シュウ酸、またはグルタル酸から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の海苔酸処理剤。
  3. 前記有機酸がクエン酸であることを特徴とする請求項2に記載の海苔酸処理剤。
  4. 前記グルコン酸、酒石酸または乳酸と硫酸ナトリウムとの配合モル比が、10:1ないし1:10の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の海苔酸処理剤。
JP2005286747A 2005-09-30 2005-09-30 海苔酸処理剤 Active JP4923215B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005286747A JP4923215B2 (ja) 2005-09-30 2005-09-30 海苔酸処理剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005286747A JP4923215B2 (ja) 2005-09-30 2005-09-30 海苔酸処理剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007091690A JP2007091690A (ja) 2007-04-12
JP4923215B2 true JP4923215B2 (ja) 2012-04-25

Family

ID=37977804

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005286747A Active JP4923215B2 (ja) 2005-09-30 2005-09-30 海苔酸処理剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4923215B2 (ja)

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001204280A (ja) * 2000-01-27 2001-07-31 Science Iwata:Kk 海苔の新しい養殖方法
JP3369544B2 (ja) * 2000-03-29 2003-01-20 協和醗酵工業株式会社 海苔処理剤および処理方法
JP3631466B2 (ja) * 2002-01-31 2005-03-23 扶桑化学工業株式会社 養殖海苔用処理剤並びに養殖海苔用処理液及び養殖海苔の処理方法
JP4560607B2 (ja) * 2004-03-30 2010-10-13 国立大学法人佐賀大学 海苔酸処理剤

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007091690A (ja) 2007-04-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100671611B1 (ko) 살조 살균제
JP4923215B2 (ja) 海苔酸処理剤
JP3296174B2 (ja) 海苔の処理方法及び海苔用処理液
JP4303915B2 (ja) 抗菌性組成物及びその製造方法
JP4560607B2 (ja) 海苔酸処理剤
JP2006067927A (ja) 土壌改良方法
JP2007055947A (ja) 海苔養殖用殺藻殺菌処理剤、殺藻殺菌処理剤及び養殖海苔の処理方法
JP4323407B2 (ja) 海苔養殖用病害駆除剤並びに海苔養殖用処理液及び養殖海苔の処理方法
JP3631466B2 (ja) 養殖海苔用処理剤並びに養殖海苔用処理液及び養殖海苔の処理方法
JP4633896B2 (ja) 殺藻殺菌剤
JP4695377B2 (ja) 殺藻剤
EP0968136B1 (de) Verwendung von alkalicarbonat-peroxyhydraten in der fischzucht
CN100536657C (zh) 醛类复合高效杀生剂
JP2001086889A (ja) 海苔の処理方法および海苔用処理液
JP3610928B2 (ja) 養殖海苔用処理剤及び処理方法
EP0562898A2 (en) Agent for retaining vitality of cut flower and method for retaining the same
JPH10243751A (ja) 海苔の処理方法及び海苔用処理液
JP4344273B2 (ja) 海苔の雑藻駆除及び病害防除のための海苔処理方法
US6458352B2 (en) Organic controller and method for producing the same
JP2000256106A (ja) 養殖海苔用殺藻殺菌剤およびそれを用いた養殖海苔の処理方法
JP4409153B2 (ja) 海苔養殖中に発生する雑藻類の駆除方法
JPH11220963A (ja) 海苔養殖法
JP2003252706A (ja) 殺藻殺菌剤
JP2010168339A (ja) 養殖海苔用処理剤並びに養殖海苔用処理液及び養殖海苔の処理方法
JP2001122707A (ja) 海苔養殖用製剤およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080925

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20081008

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20081010

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110830

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110906

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20111027

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111027

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20111227

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

R150 Certificate of patent (=grant) or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150