以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、以下の実施の形態では、本発明に係る通信システムを、データの送受信処理を行なうECUが複数接続される車載LANに適用した車載通信システムを例に説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における車載通信システムの構成を示すブロック図である。実施の形態1における車載通信システムは、データを送受信する通信装置であるECU1,1,…と、ECU1,1,…を接続している通信線2a,2b,2c,2d,2e,2fと、異なる通信線2a,2b,2c,2d,2e,2fに接続されているECU1,1,…間のデータの送受信を中継するGW装置3a,3bと、特定のGW装置である分配装置4と、GW装置3a,3b及び分配装置4間を接続している通信線5とを含む。
ECU1,1,…は、測定値、計算値、制御値等の各種物理量の数値情報を含むデータの送信又はエンジン、ブレーキ等のマイクロコンピュータによる制御が可能な装置である。例えばGW装置3aに通信線2aを介して接続されているECU1,1,…の内の一はABS(Antilock Brake System)として機能し、車輪の回転速度(車輪速)を検知する図示しないセンサと接続されている。このECU1は、車輌の制動時にセンサを介して検知した車輪速に基づいてブレーキを制御すると共に、車輪速の測定値データを通信線2aを介して他のECU1,1,…及びGW装置3aへ送信する。
ECU1,1,…は、いくつかの群に分けられて群毎に通信線2a,2b,2c,2d,2e,2fに接続されている。ECU1,1,…はCAN(Control Area Network)プロトコルに準じてデータを送受信し、通信線2a,2b,2c,2d,2e,2fにバス型に接続されている。また通信線2a,2b,2c,2d,2e,2fは夫々、GW装置3a,3b及び分配装置4の内のいずれかに接続されている。
GW装置3a,3b及び分配装置4は、異なる群に属して異なる通信線2a,2b,2c,2d,2e,2fに接続されているECU1,1,…間のデータの送受信を中継する中継装置である。その内の特定のGW装置である分配装置4は、データベースDBとして使用する記憶領域を備えている。分配装置4は、ECU1,1,…から送信されるデータを集約してデータベースDBに記憶し、他のGW装置3a,3bを介してECU1,1,…へデータを送信する。GW装置3a,3bはECU1,1,…から送信されたデータを分配装置4へ送信し、分配装置4から送信されたデータを通信線2a,2b,2c,2d,2e,2fを介して自身に接続しているECU1,1,…へ送信するように構成してある。
GW装置3a,3b及び分配装置4間は幹線となる通信線5で接続されており、GW装置3a,3b及び分配装置4によって複数の群に分けられたECU1,1,…間のデータの送受信を中継する幹線型の車載ネットワークを構成している。なお、GW装置3a,3b及び分配装置4間を接続している通信線5は、帯域が十分に広く高速な通信を実現する例えばEthernet(登録商標)に準じたLANケーブル等の通信媒体であることが望ましい。実施の形態1におけるGW装置3a,3b及び分配装置4の通信線5を介した接続形態はバス型とする。以下、通信線2a,2b,2c,2d,2e,2fと通信線5との区別を明瞭にするため、通信線2a,2b,2c,2d,2e,2fを「支線」、通信線5を「幹線」と呼び説明する。
なお、以下の説明では、ECU1,1,…、GW装置3a,3b及び分配装置4間におけるデータの送受信は、複数のデータがまとめられた「メッセージ」の送受信によって実行される。ECU1,1,…は、自身の動作によって得られるデータ群をメッセージとしてまとめて送信する。分配装置4は受信したメッセージからデータを読み出してデータベースDBに記憶し、ECU1,1,…へ送信する際には、データベースDBから読み出した一又は複数のデータを含むメッセージとして送信する。
図2は、実施の形態1における車載通信システムを構成するGW装置3a及び分配装置4の内部構成を示すブロック図である。GW装置3bの内部構成はGW装置3aと同様であるので詳細な説明を省略する。
GW装置3aは、以下に示す各構成部の動作を制御する制御部30と、揮発性のメモリを利用した記憶部31と、支線2a,2bに接続されている支線通信部32と、幹線5に接続されている幹線通信部33とを備えている。なお、記憶部31は揮発性のメモリに限られず、書き換え可能な不揮発性のメモリを利用してもよい。
制御部30は、図示しない車輌のオルタネータ、バッテリー等の電力供給装置から電力の供給を受け、図示しない内蔵メモリに記憶されている制御プログラムを読み出して実行し、各構成部を制御する。
記憶部31には、制御部30が各処理について使用する各種情報が記憶される。各種情報には、GW装置3a自身を他のGW装置3b及び分配装置4と区別するための識別番号が含まれている。実施の形態1では、分配装置4の識別番号は「1」、GW装置3aの識別番号は「2」、GW装置3bの識別番号「3」とする夫々の識別番号が記憶部31に記憶されている。
支線通信部32は、支線2a,2bを介したCANに基づくメッセージの送受信を実現する。制御部30は、支線通信部32における支線2aとの通信ポート、及び支線2bとの通信ポートを区別することが可能である。制御部30は、支線2aに接続されているECU1,1,…との間でメッセージを送受信する場合には支線通信部32における通信ポート「1」を使用し、支線2bに接続されているECU1,1,…との間でメッセージを送受信する場合には支線通信部32における通信ポート「2」を使用する。幹線通信部33は、幹線5における他のGW装置3b及び分配装置4とのメッセージの送受信を実現する。
制御部30は、GW装置3aに支線2a,2bを介して接続されているECU1,1,…から送信されたメッセージを支線通信部32により受信した場合は原則として、分配装置4にデータを集約させるため、受信したメッセージを幹線通信部33により分配装置4へ送信する。これに際し制御部30は、支線通信部32によりメッセージを受信したときにECU1,1,…が接続されている支線2a,2bのいずれかに対応する通信ポートを識別し、自身の装置の識別番号及び識別した通信ポートを送信元のアドレス情報としてメッセージに付加する。さらに制御部30は、送信先の装置の識別番号及び通信ポートを送信先のアドレス情報として付加する。なお、制御部30は、GW装置3b及び分配装置4を介してECU1,1,…へメッセージを送信するのではなく、GW装置3b及び分配装置4自体を送信先としてメッセージを送信する場合には、送信先のアドレス情報に含まれる通信ポートを「0」とする。
分配装置4の内部構成は、分配装置4が特定のGW装置であることからGW装置3aの内部構成と同様である。分配装置4は、各構成部の動作を制御する制御部40と、揮発性のメモリを利用した記憶部41と、支線2c,2dに接続されている支線通信部42と、幹線5に接続されている幹線通信部43とを備えている。各構成部の機能はGW装置3aにおける構成部と同様であるので詳細な説明を省略する。ただし、分配装置4の記憶部41には、データベースDBとして使用される記憶領域が設けられており、分配装置4の制御部40は各ECU1,1,…から送信され、GW装置3a,3bによって中継されるメッセージに含まれるデータをデータベースDBに集約して記憶し、各データをデータベースDBから読み出してメッセージとして各ECU1,1,…へ送信する。
なお、分配装置4の記憶部41には、各メッセージ毎にそのメッセージの送信元のECU1,1,…の対応を示す送信元情報が記憶されている。また、記憶部41には、データベースDBから読み出されたデータを含むメッセージをいずれのECU1,1,…へどのようなタイミングで送信すべきかを示す送信タイミング情報が記憶されている。更に、記憶部41には、ECU1,1,…のGW装置3a,3b及び分配装置4への接続構成を示す接続情報が記憶されている。
図3は、実施の形態1における分配装置4の記憶部41に記憶されている送信元情報、送信タイミング情報及び接続情報の内容例を示す説明図である。図3(a)に送信元情報の内容例、図3(b)に送信タイミング情報の内容例、図3(c)に接続情報の内容例を夫々示している。
図3(a)の説明図に示されているように、送信元情報にはメッセージを識別するメッセージIDに対応付けて送信元のECU1,1,…の識別情報として番号が含まれている。図3(a)の説明図に示される内容例では、メッセージIDが「0001」のメッセージは、番号「2」が割り振られたECU1から送信されることが示されている。
図3(b)の説明図に示されているように、送信タイミング情報にはメッセージを識別するメッセージIDに対応付けて送信先のECU1,1,…を識別する番号と、送信タイミングとが含まれている。図3(b)の説明図に示される内容例では、メッセージID「0001」のメッセージは、10ミリ秒毎に番号「1」が割り振られたECU1へ送信すべきことが示されている。
図3(c)の説明図に示されているように、接続情報には送信元及び送信先のアドレス情報を付加するため、各ECU毎に、ECUを識別する番号に対応付けて、各ECU1,1,…の接続先であるGW装置3a,3b又は分配装置4の装置の識別番号と、各装置に接続している支線2a,2b,2c,2d,2e,2fに対応する通信ポートの識別番号とが含まれている。図3(c)の説明図に示される内容例では、番号「1」が割り振られたECU1は、装置の識別番号が「2」であるGW装置3aにおける識別番号が「2」である通信ポートに対応する支線2bに接続されていることが示されている。
分配装置4の制御部40は、図3の説明図に示したような送信元情報、送信タイミング情報及び接続情報に基づいて、どのようなタイミングでいずれのメッセージを送信するかを認識し、そのメッセージを送信する際に適切なアドレス情報を付加することが可能である。図3の説明図に示したような内容例を参照した場合、制御部40は、メッセージID「0001」のメッセージについてはGW装置3bに支線2eを介して接続されている番号「2」が割り振られたECU1から送信されることを認識することができる。また制御部40は、当該メッセージは10ミリ秒毎に番号「1」が割り振られたECU1へ送信すべきであり、送信する際に付加する送信先のアドレス情報として装置の識別番号「2」及び通信ポートの識別番号「2」を認識することが可能である。
分配装置4の制御部40によって付加されるアドレス情報のフォーマットは例えば以下のようにする。図4は、実施の形態1における分配装置4の制御部40によって付加されるアドレス情報の内容例を示す説明図である。図4(a)は、幹線5でユニキャスト送信のみを行なう場合のフォーマットを示し、図4(b)は、幹線5でマルチキャスト送信に対応する場合のフォーマットを示している。
図4(a)の説明図に示した内容例では、先頭及び2番目の「1」及び「0」は送信先のアドレス情報を示し、分配装置4の識別番号及び分配装置4自体でメッセージを処理するようにするための通信ポートの識別番号である。3、4番目の「2」及び「2」は送信元のアドレス情報を示し、送信元のECU1が接続しているGW装置3aの識別番号及びGW装置3aにおける支線2bに対応する通信ポートの識別番号である。更に詳細には例えば、送信先及び送信元のアドレス情報を夫々1バイトで記述し、装置の識別番号を3ビット、通信ポートの識別番号を5ビットで記述する。これにより、例えば装置の識別番号の「0」(000b)は「予約」とし、「7」(111b)は全装置を示すとして使用しないとしても、GW装置及び分配装置を最大6台で構成することが可能である。同様に通信ポートの識別番号についても、「0」(00000b)は装置自身、「31」(11111b)は全ポートを示すとして使用しないとしても、最大30ポートまで対応可能である。又は、装置の識別番号を4ビット、通信ポートの識別番号を4ビットで記述する場合は、GW装置及び分配装置を最大14台で構成し、夫々最大14ポートまで対応可能である。
図4(b)の説明図に示した内容例では、先頭の「2」は送信先の数を示し、2、3番目の「2」及び「1」は1つ目の送信先のアドレス情報、4、5番目の「3」及び「2」は2つ目の送信先のアドレス情報、6、7番目の「1」及び「0」は、送信元のアドレス情報を示している。図4(b)に示した例では、装置の識別番号が「1」である分配装置4から、装置の識別番号が「2」であるGW装置3aの識別番号が「1」の通信ポート、及び、装置の識別番号が「3」であるGW装置3bの識別番号が「2」の通信ポートに接続されているECU1へメッセージが送信される。幹線5でマルチキャスト送信に対応する場合に、1つの送信先として例えばGW装置3aに支線2aを介して接続しているECU1へ分配装置4からメッセージを送信するときは、アドレス情報を「1」「2」「1」「1」「0」とすればよい。
上述のように構成される車載通信システムにおいて、ECU1,1,…から送信されたメッセージがGW装置3a,3b及び分配装置4によって中継される処理について説明する。
図5は、実施の形態1における車載通信システムを構成するGW装置3a,3bの制御部30が、支線2a,2b,2e,2fを介して受信したメッセージのデータを分配装置4へ送信する処理手順の一例を示すフローチャートである。
制御部30は、支線2a,2b又は支線2e,2fを介して接続されているECU1,1,…のいずれかから送信されたメッセージを支線通信部32により受信し(ステップS11)、受信したメッセージから支線のプロトコルのヘッダ情報、CRC(Cyclic Redundancy Check)等を除去してデータを読み出す(ステップS12)。制御部30は、読み出したデータに自身の装置の識別番号、データを受信した通信ポートの識別番号、送信先である分配装置4の装置の識別番号、及び分配装置4でデータを処理させるためのポートの識別番号を含むアドレス情報を付加する(ステップS13)。
制御部30は、アドレス情報に加えて幹線のプロトコルのヘッダ情報、CRC等を付加したメッセージとして作成し(ステップS14)、作成したメッセージを幹線通信部33により分配装置4へ送信し(ステップS15)、ECU1,1,…からメッセージを受信した場合の処理を終了する。このように制御部30がアドレス情報を自動的に付加して幹線5を介して分配装置4へ送信することにより、GW装置3a,3bに送信されたメッセージが適切に中継され、分配装置4に送信される。
なお、分配装置4にもECU1,1,…が支線2c,2dを介して接続されている。したがって、分配装置4の制御部40もECU1,1,…から送信されたメッセージを受信し、そのメッセージに対する処理を行なう。この場合、分配装置4の制御部40は受信したメッセージからデータを取得して記憶部41のデータベースDBに記憶するので、支線通信部42によりメッセージを受信した場合、後述する図6のフローチャートに示す処理手順を実行する。
図6は、実施の形態1における車載通信システムを構成する分配装置4の制御部40が、GW装置3a,3bから送信されたメッセージを受信した場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
制御部40は、GW装置3a,3bから送信されたメッセージを幹線通信部43により受信し(ステップS21)、メッセージに付加されているアドレス情報を読み出し(ステップS22)、読み出したアドレス情報に示される送信先の装置の識別番号が自身を示しているか否かを判断する(ステップS23)。
制御部40は、自身を示していると判断した場合(S23:YES)、受信したメッセージからデータを取得し(ステップS24)、記憶部41のデータベースDBに記憶し(ステップS25)、GW装置3a,3bからメッセージを受信した場合の処理を終了する。
制御部40は、自身を示していないと判断した場合(S23:NO)、メッセージを破棄し(ステップS26)、GW装置3a,3bからメッセージを受信した場合の処理を終了する。
なお、上述したように分配装置4の制御部40は支線通信部42により支線2c,2dを介して接続しているECU1,1,…からデータを受信した場合、ステップS21、ステップS24及びステップS25の処理を実行する。
図7は、実施の形態1における車載通信システムを構成する分配装置4、及びGW装置3a,3bによりメッセージをECU1,1,…へ送信する処理手順の一例を示すフローチャートである。
なお、分配装置4の制御部40が、データベースDBに記憶されているデータを含むメッセージをいずれのECU1,1,…へ、どのようなタイミングで送信すべきかを表わす送信タイミング情報を記憶部41から参照する。各メッセージについて送信すべきタイミングとなった場合、制御部40により以下の処理が開始される。
分配装置4の制御部40は、記憶部41のデータベースDBからデータを読み出し(ステップS31)、読み出したデータを含むメッセージに、送信先のECU1,1,…が接続されているGW装置3a,3bの識別番号、送信先のECU1,1,…が接続している支線2a,2b,2c,2d,2e,2fに対応するポートの識別番号、送信元である分配装置4の識別番号、及び分配装置4自身が送信元であることを表わすポート番号を含むアドレス情報を付加する(ステップS32)。制御部40は、アドレス情報を付加したメッセージを幹線通信部43によりGW装置3a,3bへ送信する(ステップS33)。
GW装置3a,3bの制御部30は、分配装置4から送信されたメッセージを幹線通信部33により受信し(ステップS34)、付加されているアドレス情報を読み出す(ステップS35)。制御部30は、読み出したアドレス情報に含まれる送信先の装置の識別番号が自身を示しているか否かを判断する(ステップS36)。制御部30は、自身を示していると判断した場合(S36:YES)、付加されているアドレス情報を除去し(ステップS37)、ステップS35で読み出した送信先の通信ポートの識別番号に基づき、支線通信部32によりメッセージをECU1,1,…へ送信し(ステップS38)、メッセージを送信する処理を終了する。
GW装置3a,3bの制御部30は、自身を示していないと判断した場合(S36:NO)、受信したメッセージを破棄し(ステップS39)、メッセージを送信する処理を終了する。
なお、分配装置4の制御部40は、記憶部41の送信タイミング情報を参照して支線2c,2dを介して接続されているECU1,1,…へデータベースDBから読み出したデータを含むメッセージを送信する場合、上述のステップS31によりデータベースDBからデータを読み出し、アドレス情報を付加することなしにGW装置3a,3bの制御部30がステップS38でメッセージを送信した処理と同様に支線通信部42によりECU1,1,…へメッセージを送信する。
次に、GW装置3a,3bの制御部30及び分配装置4の制御部40が図5乃至図7のフローチャートに示した処理を行なうことにより、メッセージの中継が実現されることを具体例を挙げて説明する。図8及び図9は、実施の形態1における車載通信システムで送受信されるメッセージの内容例及び流れを示す模式図である。図8及び図9の模式図では、各装置をブロックで表わす。図8及び図9中のGW装置3a,3b及び分配装置4を表わすブロック内に示されている四角に囲まれた番号は各装置の識別番号を示す。丸に囲まれた番号は各支線2a,2b,2c,2d,2e,2fに対応する通信ポートの識別番号を示す。
図8及び図9の模式図を参照し、GW装置3aに支線2bを介して接続されているECU1からメッセージが送信された場合、及び当該ECU1へメッセージを送信する場合におけるGW装置3a,3b及び分配装置4の動作について説明する。
図8の模式図は、GW装置3aに支線2bを介して接続されているECU1から送信されたメッセージがGW装置3aによって受信され、分配装置4へ送信される際のメッセージの内容例及び流れを示している。図8中の白矢印はメッセージの流れを表わしている。GW装置3aの制御部30は、GW装置3aに支線2bを介して接続しているECU1から送信されたメッセージを受信した場合、アドレス情報を付加して分配装置4へ送信する。この場合のアドレス情報は、図8中のX1で示されるように「1」「0」「2」「2」が付加される。
分配装置4の制御部40は、図8中のX1で示されるようなメッセージを受信した場合、アドレス情報を読み出して先頭の装置の識別番号が「1」であることから自身を示していると判断する。更に制御部40は、送信先の通信ポートの識別番号が「0」であることからデータベースDBにデータを記憶する処理を行なう。このとき制御部40は、メッセージX1の送信元が装置の識別番号が「2」であるGW装置3aの、識別番号が「2」の通信ポートに対応する支線2bに接続されているECU1であることを認識することが可能である。
なお、GW装置3bも幹線5にバス型に接続されているので、GW装置3bの制御部30も図8中のX1で示されるメッセージを受信する。しかしながらGW装置3bの制御部30は、アドレス情報を読み出して先頭の装置の識別番号が「1」であることから自身を示していないと判断して当該メッセージを受信しても破棄する。
図8の模式図では、分配装置4に支線2cを介して接続しているECU1から送信されたメッセージの流れについても示されている。分配装置4の制御部40は、自身に支線2cを介して接続しているECU1から送信されたメッセージを受信した場合、データを取得してデータベースDBに記憶する。
図9の模式図は、分配装置4のデータベースDBから読み出されたデータを含み、GW装置3aによって中継されてECU1へ送信されるメッセージの内容例及び流れを示している。図9中の白矢印はメッセージの流れを表わしている。分配装置4の制御部40は、記憶部41の送信タイミング情報に基づき、番号「1」が割り振られたECU1へメッセージを送信するタイミングとなった場合(図3(b)参照)、接続情報に基づいて番号「1」が割り振られたECU1は、装置の識別番号が「2」であるGW装置3aの識別番号が「2」である通信ポートに対応する支線2bに接続していることを認識する(図3(c)参照)。制御部40は、当該ECU1へメッセージを送信する場合、接続情報に基づいてアドレス情報を付加する。この場合のアドレス情報は、図9中のX2で示されるように「2」「2」「1」「0」が付加される。
GW装置3aの制御部30は、図9中のX2で示されるようなメッセージを受信した場合、アドレス情報を読み出して先頭の装置の識別番号が「2」であることから自身を示していると判断する。更に制御部30は、送信先の通信ポートの識別番号が「2」であることから、対応する支線2bに接続しているECU1へメッセージを送信する。なお、制御部30は、装置元の装置の識別番号の「1」及び通信ポートの識別番号「0」からメッセージX2の送信元が分配装置4であり、且つ、送信されたメッセージはデータベースDBから読み出されたデータを含むメッセージであることを認識することが可能である。
GW装置3bも幹線5にバス型に接続されているので、GW装置3bの制御部30も図9中のX2で示されるメッセージを受信する。しかしながらGW装置3bの制御部30は、アドレス情報を読み出して先頭の装置の識別番号が「2」であることから自身を送信先とするメッセージでないと判断して当該メッセージを受信しても破棄する。
図9の模式図では、分配装置4に支線2cを介して接続しているECU1へ送信されるメッセージの流れについても示されている。分配装置4の制御部40は、送信タイミング情報に基づいてデータベースDBからデータを読み出して支線2cを介して接続しているECU1へメッセージを送信する場合、支線通信部42によりCANに基づくメッセージを支線2dを介して送信する。
このように、ECU1,1,…の群毎にGW装置3a,3b及び分配装置4を幹線5により接続し、GW装置3a,3b及び分配装置4間でメッセージを送受信する幹線型ネットワークを構成することにより、必要のない支線2a,2b,2c,2d,2e,2fへ無駄にメッセージが送信されることを防いで支線2a,2b,2c,2d,2e,2fにおける通信負荷を低減することが可能になる。
なお、実施の形態1では、GW装置3a,3b及び分配装置4間におけるメッセージの送受信の際にアドレス情報が付加される構成とした。しかしながら、本発明はこれに限らず、GW装置3a,3bの制御部30は、支線通信部32により受信したメッセージはそのまま分配装置4へ送信する構成としてもよい。このときGW装置3a,3bの制御部30は、受信した際の通信ポートを識別する処理を行なわずともよい。また、この場合の分配装置4の制御部40は、幹線通信部43により受信したメッセージに対して自身を送信先とするメッセージであるか否かを判断することなしに、データを読み出してデータベースDBに記憶する処理を行なう。分配装置4の制御部40は、支線通信部42により受信したメッセージについても、そのままデータを読み出してデータベースDBに記憶する処理を行なう。分配装置4がデータベースDBから読み出したデータを含むメッセージを各ECU1,1,…へ送信する際にも、アドレス情報を付加することなくメッセージを送信してもよい。この場合、GW装置3a,3bの制御部30は、幹線通信部33により受信したメッセージに対しては、メッセージIDに応じて自身に支線2a,2b,2e,2fを介して接続しているECU1,1,…へ中継するか、又は破棄するかを判断することも可能である。また、制御部30は、自身に支線2a,2b,2e,2fを介して接続しているECU1,1,…へメッセージを中継する場合にも、メッセージIDに応じていずれの通信ポートにより送信するかを判断して送信することも可能である。この場合、メッセージIDに応じた判断基準を記憶部31に記憶させておくことにより、制御部30が当該判断基準に基づく判断をすることが可能である。
ただし、実施の形態1で説明したように、幹線5で接続されるGW装置3a,3bと同様の構成の分配装置4が、データを集約する特定のGW装置として動作し、メッセージを送信する際にはアドレス情報を付加して送信することにより、より効率的に所望のデータを各ECU1,1,…へ送信することが可能となる。なお、GW装置3a,3bも記憶部31にデータを記憶する分配装置として動作し、各分配装置が一度データを記憶してから必要に応じて各ECU1,1,…へメッセージを送信する構成とすることによりGW装置で全てを中継する場合と比較して支線2a,2b,2c,2d,2e,2fにおける通信負荷を低減させることができる。また、分配装置間で一度記憶したデータを同期させて、各ECU1,1,…へ送信されるメッセージの同一性を担保することもできる。しかしながら、全てのGW装置3a,3b及び分配装置4を分配装置として動作させずとも、データベースDBとして使用される記憶領域を備える分配装置4を1台追加することで同様の効果を得ることができる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、ECU1,1,…、GW装置3a,3b及び分配装置4を含む車載通信システムが実施の形態1と同様に幹線型ネットワークを構成する場合に、支線2a,2b,2c,2d,2e,2fのいずれかに新たなECU1が接続されて起動する際に行なわれる処理について説明する。
実施の形態1で説明したように、分配装置4の記憶部41には、送信元情報、送信タイミング情報及び接続情報が記憶されている。新たなECU1が接続された場合、当該新たなECU1から送信されるメッセージを他のECU1,1,…へ送信する際、又は新たなECU1へメッセージを送信する際に、新たなECU1から送信されるメッセージ、新たなECU1へ送信すべきメッセージとそのタイミング、及び新たなECU1の接続構成が夫々、送信元情報、送信タイミング情報及び接続情報に追加されていることが必要となる。
そこで、実施の形態2では実施の形態1で説明した車載通信システムに新たなECU1が接続された場合のGW装置3a,3b及び分配装置4における処理について説明する。実施の形態2における車載通信システムの構成は、実施の形態1と同様であるので、同一の符号を付して以下に説明する。
新たなECU1が接続された場合、ECU1は少なくとも起動時にメッセージを送信する構成とする。ECU1により起動時に送信されるメッセージは、夫々の機能に応じた制御により送信される測定値、計算値、制御値等の各種物理量の数値情報等のデータを含むメッセージでよい。メッセージにはメッセージIDが含まれており、分配装置4の記憶部41には、メッセージIDと送信元のECU1を識別する番号との対応が送信元情報として記憶されているので、制御部40はメッセージIDに基づいて送信元のECU1を識別することが可能である。記憶部41に記憶されている送信元情報には、新たに接続されるECU1、起動していないECU1についての情報も含まれているとする。
なお、ECU1は自身の識別情報、例えば割り当てられた番号、及び自身が送信するメッセージIDを含む特定のメッセージを起動時に送信する構成としてもよい。これにより、送信元情報に新たなECU1から送信されるメッセージのメッセージIDに対応するECU1の識別番号が存在しない場合であっても、新たな送信元情報を追加することが可能である。
GW装置3a,3bの制御部30は、実施の形態1における図5のフローチャートに示した処理手順と同一の処理を行ない、新たなECU1から送信されたメッセージを分配装置4へ送信する。分配装置4の制御部40は基本的に、実施の形態1における図6のフローチャートに示した処理手順を行なう。ただし、制御部40は、受信したメッセージのメッセージIDを読み出し、記憶部41の接続情報が不明なECU1から送信されるメッセージのメッセージIDであるときには、付加されているアドレス情報に基づいて接続情報を追加する。
以下に、フローチャートを参照して分配装置4の制御部40による処理を説明する。実施の形態1における図6のフローチャートに示した分配装置4の制御部40による処理手順と共通する処理手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
図10は、実施の形態2における車載通信システムを構成する分配装置4の制御部40が、GW装置3a,3bから送信されたメッセージを受信した場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
分配装置4の制御部40は、受信したメッセージに付加されているアドレス情報を読み出し(S22)、更にメッセージIDを読み出す(ステップS41)。制御部40は、記憶部41の送信元情報及び接続情報を参照することにより、読み出したメッセージIDの送信元のECU1の接続情報が不明であるか否かを判断する(ステップS42)。なお、制御部40は、読み出したメッセージIDの送信元のECU1の接続情報が存在しない場合に不明であると判断する。
制御部40は、接続情報が不明でないと判断した場合(S42:NO)、処理をステップS23に進める。制御部40は、接続情報が不明であると判断した場合(S42:YES)、ステップS22で読み出したアドレス情報に示される送信元の装置の識別番号、及び装置における通信ポートの識別番号からなる接続情報を追加し(ステップS43)、処理をステップS23に進める。
なお、分配装置4に接続されている支線2c,2dに新たにECU1が接続された場合は、分配装置4の制御部40は、新たなECU1から送信されたメッセージを支線通信部42により受信する。制御部40は、受信したメッセージのメッセージIDを読み出し、読み出したメッセージIDの送信元のECU1の接続情報が不明であるか否かを判断する。制御部40は、不明であると判断した場合、自身の装置の識別番号、及びメッセージを受信した通信ポートの識別番号からなる接続情報を追加する。
分配装置4の制御部40は、図10のフローチャートに示した処理を、新たなECU1が少なくとも起動時に送信したメッセージを受信した場合のみならず、新たなECU1が一定周期でメッセージを送信し、当該メッセージがGW装置3a,3bによって送信される都度行なってもよい。この場合、制御部40は、ステップS42における接続情報が不明であるか否かの判断を行なうことなしに、未だ接続情報が記憶されていない場合には接続情報を追加し、既に接続情報が記憶されている場合には更新するようにしてもよい。なお、新たなECU1からメッセージが送信される都度毎回行なうのではなく、所定時間毎に1回、又は所定のメッセージ受信数毎に行なう構成でもよい。また、新たなECU1から起動時に特定のメッセージが送信された場合のみ制御部40が図10のフローチャートに示した処理を行ない、2回目以降は図6のフローチャートに示した処理を行なう構成でもよい。
次に、分配装置4の制御部40が図10のフローチャートに示した処理を行なうことにより、新たなECU1についての接続情報の追加が実現されることを具体例を挙げて説明する。図11は、実施の形態2における車載通信システムで新たなECU1から送信されるメッセージの内容例及び流れを示す模式図である。図11の模式図の構成は、図8及び図9と同様である。
図11の模式図を参照し、GW装置3bに接続されている支線2fに、新たにECU1が接続されて起動した場合における分配装置4の動作について説明する。図11中の白矢印は、メッセージの流れを表わしている。なお、この新たに接続されたECUから送信されるメッセージのメッセージIDは「0020」であるとする。GW装置3bの制御部30は、新たなECU1から送信されたメッセージを受信した場合、アドレス情報を付加して分配装置4へ送信する。この場合のアドレス情報は、図11中のX3で示されるように「1」「0」「3」「2」が付加される。
分配装置4の制御部40は、図11中のX3で示されるようなメッセージを受信した場合、アドレス情報を読み出し、更にメッセージID「0020」を読み出す。制御部40は、記憶部41の送信元情報を参照してメッセージID「0020」の送信元のECU1の識別番号「20」(図3(a)参照)を特定する。制御部40は、記憶部41の接続情報を参照して番号「20」が割り振られたECU1の接続情報が存在しないことから接続情報が不明であると判断する。そして制御部40は、アドレス情報に示される送信元の装置の識別番号「3」及び通信ポートの識別番号「2」を、番号「20」が割り振られたECU1の接続情報として追加する。
図12は、実施の形態2における分配装置4の制御部40の処理によって追加された接続情報の内容例を示す説明図である。追加される前の接続情報として実施の形態1における図3(c)に示した説明図が対応する。
図12の説明図に示されているように、番号「20」が割り振られたECU1の接続情報が追加されている。新たに追加された接続情報は、番号「20」が割り振られたECU1が、装置の識別番号が「3」であるGW装置3bにおける識別番号が「2」である通信ポートに対応する支線2fに接続されていることが示されている。
このような処理により、分配装置4の制御部40は、ECU1,1,…が新たに追加されるような場合も含む多様なシステム構成に柔軟に応じてメッセージを適切に送受信することが可能になる。
なお、実施の形態2では新たに接続されるECU1のみならず、既に接続されているECU1,1,…も含む各ECU1,1,…が起動時に必ずメッセージを送信し、これに対して分配装置4の制御部40が、図10のフローチャートに示した処理手順を実行することによって図3(c)又は図12の説明図に示したような接続情報を動的に作成する処理を行なう構成でもよい。また、車載通信システムの運用中に接続構成が変動することが想定される場合、一定時間が経過する都度、分配装置4の制御部40がECU1,1,…から送信されるメッセージに基づいて接続情報を更新する構成でもよい。例えば、車種又はオプションによって異なるECU1,1,…のGW装置3a,3b及び分配装置4への接続構成、GW装置3a,3b及び分配装置4間の接続構成に応じて接続情報を適切なものに保持することが可能になる。
(変形例)
次に、実施の形態2における変形例としてECU1,1,…が支線2a,2b,2c,2d,2e,2fの内のいずれか複数に多重接続されている場合について説明する。以下に、番号「1」が割り振られたECU1が支線2b及び2fに多重接続されている場合に、分配装置4の制御部40が接続情報を更新する処理について説明する。
変形例における車載通信システムの構成は、一のECU1が支線2b及び支線2fのいずれにも接続されており、分配装置4の制御部40が多重接続に応じて接続情報を記憶する処理を行なうこと以外は、実施の形態2における構成と同様である。実施の形態2と同様の構成については同一の符号を用いて詳細な説明を省略する。
図13は、実施の形態2の変形例における車載通信システムの構成を示すブロック図である。変形例における車載通信システムは、一のECU1が支線2b及び支線2fのいずれにも接続されている。この場合、ECU1が支線2a又は支線2fのいずれを介してメッセージの送受信を行なうかはECU1の動作による。これに対し、分配装置4の制御部40は、当該ECU1からメッセージを受信し、当該ECU1へメッセージを送信するためにはECU1がいずれの支線2b,2fを介してメッセージを送受信するか、又は両方を介してメッセージを送受信するかを認識する必要がある。したがって、分配装置4の制御部40は、ECU1から送信されるメッセージに基づいてECU1についての接続情報を更新する。なお、この場合、接続情報を更新した時刻を制御部40が図示しない内蔵タイマから取得して共に記憶しておくことにより、古い接続情報を後に削除することが可能な構成とする。
また、変形例では分配装置4の制御部40は、ECU1とのメッセージの送受信を支線2b若しくは支線2fのいずれか一方のみを介して行なうか、又は両方を介して行なうかのいずれかの与えられた設定に従って動作する。
まず、分配装置4の制御部40が、ECU1とのメッセージの送受信を支線2b又は支線2fのいずれか一方のみを介して行なうように設定された場合について説明する。分配装置4の制御部40は、番号「1」が割り振られたECU1から送信されたメッセージをGW装置3a,3bを介して受信する都度、GW装置3a,3bの制御部30によって付加されたアドレス情報に基づき接続情報を更新する。
ECU1が支線2bを介してメッセージを送信した場合、GW装置3aの支線通信部32における識別番号が「2」である通信ポートが識別されるので、GW装置3aから分配装置4へメッセージが送信される際に付加されるアドレス情報は「1」「0」「2」「2」である。したがって分配装置4の制御部40は、番号「1」が割り振られたECU1に対応付けて、送信元の装置の識別番号「2」及び通信ポートの識別番号「2」を接続情報として記憶する。接続情報が更新されるまでは、分配装置4の制御部40が番号「1」が割り振られたECU1へメッセージを送信する際にはアドレス情報として「2」「2」「1」「0」が付加される。
他のタイミングでECU1が支線2fを介してメッセージを送信した場合、GW装置3bの支線通信部32における識別番号が「2」である通信ポートが識別されるので、GW装置3bから分配装置4へメッセージが送信される際に付加されるアドレス情報は「1」「0」「3」「2」である。したがって分配装置4の制御部40は、番号「1」が割り振られたECU1に対応付けて、送信元の装置の識別番号「3」及び通信ポートの識別番号「2」を接続情報として更新する。次に接続情報が更新されるまでは、分配装置4の制御部40が番号「1」が割り振られたECU1へメッセージを送信する際にはアドレス情報として「3」「2」「1」「0」が付加される。
次に、分配装置4の制御部40が、ECU1とのメッセージの送受信を支線2b及び支線2fの両方を介して行なうように設定された場合について説明する。この場合、分配装置4の制御部40は、GW装置3a,3bの制御部30によって付加されたアドレス情報に基づく接続情報が既に記憶されている接続情報と異なるときに、接続情報を追加する。したがって、分配装置4の制御部40は、番号「1」が割り振られたECU1に対応付けて、装置の識別番号「2」及び通信ポートの識別番号「2」からなる接続情報に加え、装置の識別番号「3」及び通信ポートの識別番号「2」からなる接続情報を追加して記憶する。なお、この場合、幹線5におけるメッセージの送受信はマルチキャスト送信に対応させる。分配装置4の制御部40が番号「1」が割り振られたECU1へメッセージを送信する際には、2つの接続情報に基づくアドレス情報が付加される(図4(b)参照)。
なおこの場合、番号「1」が割り振られたECU1から送信されるメッセージには、異なる経路で送信されていても同一の内容のメッセージであるのか、更新された異なる内容のメッセージであるのかを識別可能にするために、新しいメッセージほど値が大きい又は小さいシリアル番号が含められていることが望ましい。これにより、分配装置4の制御部40は、受信したメッセージに含められたシリアル番号に基づき、メッセージの新旧を判別することが可能である。制御部40は、同一のECU1から送信されたメッセージを重複して受信した場合にいずれかを破棄する処理、又は古いメッセージを破棄する処理が可能である。
図14は、実施の形態2の変形例における分配装置4の記憶部41に記憶される接続情報の内容例を示す説明図である。図14の説明図に示すように、実施の形態2の変形例における接続情報には、制御部40によって取得された時刻が対応付けられて記憶されている。図14(a)及び(b)は、分配装置4の制御部40が、ECU1とのメッセージの送受信を支線2b又は支線2fのいずれか一方のみを介して行なうように設定された場合に記憶される接続情報である。記憶部41に記憶される接続情報は、ECU1からメッセージが送信される経路によって図14(a)と(b)とで切り替わる。図14(c)は、分配装置4の制御部40が、ECU1とのメッセージの送受信を支線2b及び支線2fの両方を介して行なうように設定された場合に記憶される接続情報である。
図14の説明図に示したように接続情報に最終更新時刻が対応付けて記憶されていることにより、ECU1,1,…が休止した場合、支線2a,2b,2c,2d,2e,2fとの接続が切断された場合等の状況に応じて、古い接続情報を削除することが可能である。
図15は、実施の形態2の変形例における車載通信システムで分配装置4から送信されるメッセージの内容例及び流れを示す模式図である。図15の模式図の構成は、図8及び図9と同様である。図15の模式図を参照し、ECU1とのメッセージの送受信を支線2b及び支線2fの両方を介して行なうように設定された場合に、分配装置4から送信されるメッセージの内容例及び流れについて説明する。図15中の白矢印は、メッセージの流れを表わしている。分配装置4の制御部40は、記憶部41の送信タイミング情報に基づき、番号「1」が割り振られたECU1へメッセージを送信するタイミングとなった場合(図3(b)参照)、図14(c)に示した接続情報に基づいてアドレス情報を付加して送信する。この場合のアドレス情報は、図15中のX4で示されるように「2」「2」「2」「3」「2」「1」「0」が付加される。GW装置3aの装置の識別番号及びGW装置3aにおける支線2bに対応する通信ポートを1つ目の送信先とし、GW装置3bの装置の識別番号及びGW装置3bにおける支線2fに対応する通信ポートを2つ目の送信先として、2つの送信先へのマルチキャスト送信を行なう。
なお、図8、図9、及び図11の模式図中におけるX1、X2、X3夫々で示したアドレス情報の先頭に、送信先の数を表わす「1」を加えることにより幹線5におけるマルチキャスト送信と、ユニキャスト送信とを併用することが可能である。ブロードキャスト送信とする場合には先頭に送信先の最大数を付加し、GW装置3a,3bの制御部30及び分配装置4の制御部40でこれを判別することによって実現することも可能である。
このように、送信されるメッセージにアドレス情報を付加することにより、ECU1,1,…が支線2a,2b,2c,2d,2e,2fのいずれか複数に多重接続されているような構成の場合であっても、接続情報を更新することができる。これにより、分配装置4から適切なアドレス情報が付加されたメッセージが送信される。
(実施の形態3)
実施の形態1及び2では、分配装置4は特定のGW装置として他のGW装置3a,3bとは異なり、別途データベースDBとして使用される記憶領域を備えている構成とした。しかしながら、幹線5における接続構成、及びメッセージの送信経路によっては、分配装置4が分配装置としての機能を有しているよりも、GW装置3aの位置にある装置が分配装置として動作すべき場合もある。そこで、実施の形態3では、幹線5によって接続されているGW装置はいずれもデータベースとして使用される記憶領域を備え、分配装置として動作することが可能である構成とする。そして、各GW装置の内のいずれか一つが自動的に選出されて特定のGW装置である分配装置として動作するように構成する。
図16は、実施の形態3における車載通信システムの構成を示すブロック図である。実施の形態3における車載通信システムは、ECU1,1,…と、支線である通信線2a,2b,2c,2d,2e,2fと、ECU1,1,…間のデータの送受信を中継するGW装置6a,6b,6cと、幹線である通信線5とを含む。
実施の形態3における車載通信システムの構成は、実施の形態1及び2に対し、GW装置3a,3b及び分配装置4が、GW装置6a,6c,6bに代替されていること以外は同様である。したがって、ECU1,1,…、通信線2a,2b,2c,2d,2e,2f及び通信線5については詳細な説明を省略して実施の形態1及び2と同一の符号を付し、以下に、GW装置6a,6b,6cのいずれか1つが分配装置として選出される構成について説明する。
実施の形態3における車載通信システムを構成するGW装置6a,6b,6cは、いずれも分配装置として動作する場合にデータベースDBa,DBb,DBcとして使用することが可能な領域を夫々備えている。
図17は、実施の形態3における車載通信システムを構成するGW装置6aの内部構成を示すブロック図である。GW装置6b,6cの内部構成は、GW装置6aの内部構成と同様であるので、詳細な説明を省略する。
GW装置6aは、各構成部の動作を制御する制御部60と、揮発性のメモリを利用した記憶部61と、支線2a,2bに接続されている支線通信部62と、幹線5に接続されている幹線通信部63とを備えている。なお、記憶部61は揮発性のメモリに限られず、書き換え可能な不揮発性のメモリを利用してもよい。
制御部60は、図示しない車輌のオルタネータ、バッテリー等の電力供給装置から電力の供給を受け、図示しない内蔵メモリに記憶されている制御プログラムを読み出して実行し、各構成部を制御する。
記憶部61には、制御部60が各処理について使用する各種情報が記憶される。各種情報には、GW装置6a自身を他のGW装置6b,6cと区別するための識別番号が含まれている。実施の形態3では、GW装置6aの識別番号は「2」、GW装置6bの識別番号は「1」、GW装置6cの識別番号は「3」とし、夫々の識別番号が記憶部61に記憶されている。
支線通信部62は、支線2a,2bを介したCANに基づくメッセージの送受信を実現する。制御部60は、支線通信部62における支線2aとの通信ポートと支線2bとの通信ポートとを区別することが可能である。制御部60は、支線2aに接続されているECU1,1,…との間でメッセージを送受信する場合は支線通信部62における通信ポート「1」を使用し、支線2bに接続されているECU1,1,…との間でメッセージを送受信する場合には支線通信部62における通信ポート「2」を使用する。
幹線通信部63は、幹線5における他のGW装置6a,6bとのメッセージ、及び後述の通知フレームの送受信を実現する。
制御部60は基本的に、実施の形態1及び2におけるGW装置3a,3bの制御部30と同様に、支線2a,2bに接続されているECU1,1,…から送信されたメッセージを、分配装置として動作するGW装置6a,6b,6cのいずれかにデータを集約させるために送信する。これに際し制御部60は、自身の装置の識別番号及び支線通信部62における通信ポートの識別番号からなる送信元のアドレス情報を付加する。また、送信先の分配装置として動作するGW装置6a,6b,6cのいずれかの装置の識別番号及び通信ポートの識別番号からなる送信先のアドレス情報を付加する。
また、実施の形態3におけるGW装置6a,6b,6cの制御部60は夫々、いずれも実施の形態1及び2における分配装置4として動作することが可能である。ただし、その内のいずれか一が分配装置として動作すべく選出される。GW装置6a,6b,6cのいずれかが分配装置として動作すべく選出される手順は以下のようにされる。
GW装置6a,6b,6cは夫々起動時は分配装置未知状態にある。GW装置6a,6b,6cのいずれもが自身が分配装置となるべく立候補する。このときGW装置6a,6b,6cの制御部60は夫々、立候補することを示す立候補通知フレームを幹線通信部63により幹線5を介してGW装置6a,6b,6cへ送信する。立候補通知フレームには、立候補する装置を識別するためにアドレス情報が含まれる構成とする。例えば、GW装置6aから送信される立候補通知フレームに含まれるアドレス情報は「7」「0」「2」「0」である。先頭及び2番目は送信先のアドレス情報であり、先頭の「7」は全装置を送信先とするブロードキャストを示している。3番目及び4番目の「2」及び「0」は送信元のアドレス情報であり、装置の識別番号が「2」であるGW装置6aが送信元であることを識別することが可能である。
各GW装置6a,6b,6cは、他のGW装置6a,6b,6cから受信した立候補通知フレームに基づいて、立候補を取り下げるか否かを判断する。立候補と取り下げると判断したGW装置6a,6b,6cは、落選状態へ遷移する。落選状態へ遷移したGW装置6a,6b,6cのいずれかは以後、実施の形態1及び2におけるGW装置3a,3bと同様の動作を行なう。最終的に立候補を取り下げずに残ったGW装置6a,6b,6cのいずれかは、当選状態へ遷移する。当選状態へ遷移したGW装置6a,6b,6cの内のいずれかが、分配装置として動作すべく選出される。選出されたGW装置6a,6b,6cのいずれかは、選出されたことを示す当選通知フレームを各GW装置6a,6b,6cへ送信する。当選通知フレームも同様に当選した装置を識別するためにアドレス情報が含まれる。例えば、GW装置6bから送信される当選通知フレームに含まれるアドレス情報は「7」「0」「1」「0」である。当選状態にあるGW装置6a,6b,6cのいずれかは以後、実施の形態1及び2における分配装置4と同様の動作を行なう。
なお、当選状態にあるGW装置6a,6b,6cのいずれか、例えばGW装置6bは、分配装置4と同様の動作を行なう間も、自らが当選状態にあることを示すために当選通知フレームの送信を継続する。一方、落選状態へ遷移した他のGW装置6a,6cは、当選通知フレームの受信を継続する。当選状態にあるGW装置6bで障害が発生して当選通知フレームの送信が停止された場合、当選通知フレームの受信を待機している他のGW装置6a,6cは、当選通知フレームが送信されないことを検知すると再び分配装置未知状態へ遷移し、改めて分配装置として動作すべくGW装置6a,6cのいずれかが選出される。
次に、GW装置6a,6b,6cの制御部60が夫々、立候補通知フレーム及び当選通知フレームを送受信し、分配装置未知状態、落選状態及び当選状態のいずれかへ遷移してGW装置6a,6b,6cのいずれかが分配装置として選出される処理について、フローチャートを参照して説明する。なお、各処理は、分配装置未知状態、落選状態及び当選状態のいずれかにある場合に夫々分けて説明する。
図18は、実施の形態3における車載通信システムを構成するGW装置6aの制御部60の分配装置未知状態における処理手順の一例を示すフローチャートである。GW装置6b,6cの制御部60による処理手順は、GW装置6aの制御部60による処理手順と同様であるので詳細な説明を省略する。
制御部60は、分配装置未知状態にある場合、立候補通知フレームの周期的な送信を開始する(ステップS5101)。制御部60は、分配装置未知状態へ遷移(起動)してから一定期間が経過したか否かを判断する(ステップS5102)。制御部60は、一定期間が経過していないと判断した場合(S5102:NO)、幹線通信部63により立候補通知フレームを受信したか否かを判断する(ステップS5103)。
制御部60は、立候補通知フレームを受信したと判断した場合(S5103:YES)、立候補通知フレームに含まれているアドレス情報を読み出し(ステップS5104)、読み出したアドレス情報に示される送信元の装置の識別番号の値は、自身の装置の識別番号の値よりも小さいか否かを判断する(ステップS5105)。制御部60は、送信元の装置の識別番号の値は自身の装置の識別番号の値よりも小さいと判断した場合(S5105:YES)、立候補を取り下げて立候補通知フレームの周期的送信を停止する(ステップS5106)。制御部60は、落選状態へ遷移し(ステップS5107)、分配装置未知状態における処理を終了する。
制御部60は、ステップS5103で立候補通知フレームを受信していないと判断した場合(S5103:NO)、幹線通信部63により当選通知フレームを受信したか否かを判断する(ステップS5108)。制御部60は、分配装置未知状態にある間に立候補通知フレームも当選通知フレームも受信していないと判断した場合(S5108:NO)、処理をステップS5102へ戻す。
制御部60は、ステップS5108において当選通知フレームを受信したと判断した場合(S5108:YES)、他の装置が選出されたので落選したと認識し、含まれているアドレス情報を読み出し(ステップS5109)、アドレス情報に示される送信元の装置の識別番号を分配装置の装置の識別番号として記憶する(ステップS5110)。また制御部60は、立候補通知フレームの周期的送信を停止して(S5106)落選状態へ遷移し(S5107)、分配装置未知状態における処理を終了する。
制御部60は、ステップS5105において、立候補通知フレームの送信元の装置の識別番号の値は自身の装置の識別番号の値以上であると判断した場合(S5105:NO)、処理をステップS5102へ戻す。
制御部60は、ステップS5102において、分配装置未知状態のまま一定期間が経過したと判断した場合(S5102:YES)、落選せずに残ったので自身が当選したと認識して立候補通知フレームの周期的送信を停止し(ステップS5111)、当選状態へ遷移し(ステップS5112)、分配装置未知状態における処理を終了する。
なお、図18のフローチャートに示した処理手順では、ステップS5105において立候補を取り下げるか否かを自身の装置の識別番号の値よりも小さいか否かにより判断した。しかしながら、ステップS5105の処理は、自身の装置の識別番号の値よりも大きいか否かを判断し、装置の識別番号の値がより大きい装置が当選するように構成してもよい。
図19は、実施の形態3における車載通信システムを構成するGW装置6aの制御部60の落選状態における処理手順の一例を示すフローチャートである。
制御部60は、落選状態へ遷移した場合、落選状態へ遷移してから一定期間が経過したか否かを判断する(ステップS521)。制御部60は、一定期間が経過していないと判断した場合(S521:NO)、幹線通信部63により他のGW装置6b,6cから立候補通知フレーム又は当選通知フレームを受信したか否かを判断する(ステップS522)。制御部60は、一定期間が経過していない間に立候補通知フレーム及び当選通知フレームのいずれも受信していないと判断した場合(S522:NO)、そのまま処理をステップS521へ戻す。
制御部60は、一定期間が経過していない間に立候補通知フレーム又は当選通知フレームを受信したと判断した場合(S522:YES)、一定期間をリセットし(ステップS523)、処理をステップS521へ戻し、再度一定期間が経過したか否かの判断処理を行なう。
制御部60は、立候補通知フレーム及び当選通知フレームのいずれも受信せずに一定期間が経過したと判断した場合(S521:YES)、GW装置6a,6b,6c全てが落選状態へ遷移している可能性も有る。そこで制御部60は、分配装置としていずれかの装置の識別番号を記憶している場合には記憶を消去し(ステップS524)、再度、分配装置未知状態へ遷移し(ステップS525)、落選状態における処理を終了する。
図20は、実施の形態3における車載通信システムを構成するGW装置6aの制御部60の当選状態における処理手順の一例を示すフローチャートである。
制御部60は、当選状態へ遷移した場合は分配装置として動作を開始すると共に自身が選出されたことを他へ通知するために当選通知フレームの周期的な送信を開始する(ステップS531)。ただし、GW装置6a,6b,6cのいずれか2つが同時に当選状態へ遷移する場合も考えられる。そこで制御部60は、幹線通信部63により当選通知フレームを受信したか否かを判断する(ステップS532)。
制御部60は、当選通知フレームを受信していないと判断した場合(S532:NO)、立候補通知フレームを受信したか否か判断する(ステップS533)。制御部60は、立候補通知フレームを受信していないと判断した場合(S533:NO)、処理をステップS532へ戻す。制御部60は、立候補通知フレームを受信したと判断した場合(S533:YES)、受信した立候補通知フレームを破棄し(ステップS534)、処理をステップS532へ戻す。
制御部60は、当選通知フレームを受信したと判断した場合(S532:YES)、当選通知フレームに含まれているアドレス情報を読み出し(ステップS535)、読み出したアドレス情報に示される送信元の装置の識別番号の値は、自身の装置の識別番号の値よりも小さいか否かを判断する(ステップS536)。制御部60は、当選通知フレームの送信元の装置の識別番号の値は自身の装置の識別番号の値以上であると判断した場合(S536:NO)、処理をステップS532へ戻す。
制御部60は、当選通知フレームの送信元の装置の識別番号の値は自身の装置の識別番号の値よりも小さいと判断した場合(S536:YES)、ステップS535で読み出したアドレス情報に示される送信元の装置の識別番号を分配装置の装置の識別番号として記憶する(ステップS537)。そして制御部60は、当選通知フレームの周期的送信を停止し(ステップS538)、落選状態へ遷移する(ステップS539)。この場合、制御部60は、分配装置としての動作を中止し、当選状態における処理を終了する。
また、実施の形態3における車載通信システムの構成では、図18のフローチャートに示したステップS5101により開始される立候補通知フレームの送信周期、及び図20のフローチャートに示したステップS531により開始される当選通知フレームの送信周期は例えば1ミリ秒である。また、図18のフローチャートに示したステップS5102、及び、図19のフローチャートに示したステップS521における一定期間は例えば5ミリ秒とする。これにより、各装置が一斉に起動してから5ミリ秒後には、GW装置6a,6b,6cのいずれかが分配装置として動作すべく選出される。
なお、図18乃至図20のフローチャートに示した処理手順では、GW装置6a,6b,6cは、立候補通知フレームと当選通知フレームとを区別した。これにより、GW装置6a,6b,6cは、分配装置未知状態にある場合に当選通知フレームを受信したときには、他の装置が選出されたと判断して落選状態へ遷移し、当選状態にある場合に立候補通知フレームを受信しても破棄した。しかしながら、いずれか1つのGW装置、例えばGW装置6bが優先的に分配装置として動作すべく選出されるように構成する場合がある。この場合、GW装置6aが一度当選状態へ遷移したとしても自身よりも優先的に選出されるべきGW装置6bを送信元とする立候補通知フレームを受信した場合、破棄せずに自身が落選状態へ遷移するように構成する。そこで、この場合は立候補通知フレームと当選通知フレームとを区別せずに、GW装置6a,6b,6cの制御部60は、受信した立候補通知フレーム又は当選通知フレームの送信元の装置の識別番号が自身の装置の識別番号よりも小さい場合は落選状態へ遷移する。したがってこの場合、図18のフローチャートに示した処理手順の内のステップS5103において、制御部60は、立候補通知フレーム又は当選通知フレームを受信した否かを判断してステップS5108を省略する。また、この場合、図20のフローチャートに示した処理手順の内のステップS532において、制御部60は、立候補通知フレーム又は当選通知フレームを受信した否かを判断してステップS533及びステップS534を省略する。
このように、いずれのGW装置6a,6b,6cが特定のGW装置である分配装置として動作するか否かを動的に決定する構成とすることにより、ECU1,1,…及びGW装置6a,6b,6の多様な接続構成に応じて、分配装置の位置を適切にすることができる。また、車載通信システムの場合、例えば車種又はオプションによって構成自体が異なるシステムを搭載するのではなく、いずれの車種及びオプションにも対応できるように同一のシステムを搭載し、車輌の製造段階中、販売時等に事後的に運用構成を可変とすることが考えられる。したがって、実施の形態3に示したように事後的に多様な接続構成に応じて分配装置の位置を適切にすることができることにより、同一のシステムで多様な車種及びオプションに対応させることが可能になる。
(実施の形態4)
実施の形態1乃至3では、幹線5がバス型の接続形態である場合について示した。これに対し、以下に示す実施の形態4乃至6では、リング型、メッシュ型を含むスイッチ型ネットワークにより幹線5を構成する場合を示す。
実施の形態4は、実施の形態1及び2に示したGW装置3a,3b及び分配装置4間を幹線5によりバス型に接続した構成に対し、幹線5をスイッチ型ネットワークにより構成する場合について示す。実施の形態4における車載通信システムは、GW装置3cを更に含み、GW装置3a,3b,3c及び分配装置4がスイッチ型ネットワークにより接続される構成とする。
スイッチ型ネットワークでは、リング型及びメッシュ型の接続を許すので、GW装置3a,3b,3c及び分配装置4間でメッセージが無限にループする可能性がある。そこで、実施の形態4における車載通信システムでは、データベースDBにデータを記憶させるためにGW装置3a,3b,3cから分配装置4へメッセージが送信され、データベースDBから読み出されたデータを含むメッセージが分配装置4からGW装置3a,3b,3cを介して各ECU1,1,…へ送信される際にメッセージが無限にループしないような送信経路を自動的に選択する。
実施の形態4における車載通信システムのハードウェア構成は、GW装置3c、該GW装置3cに接続されている通信線2g,2h及びECU1,1,…が追加されていることと、幹線5の接続形態(トポロジー)がスイッチ型であることとが異なり、他の構成は実施の形態1及び2における車載通信システムと同様である。したがって、共通する構成については同一の符号を付し、幹線5がスイッチ型の接続形態である場合の各装置の機能及び処理について以下に説明する。
図21は、実施の形態4における車載通信システムの構成を示すブロック図である。実施の形態4における車載通信システムは、ECU1,1,…と、支線である通信線2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hと、GW装置3a,3b,3cと、分配装置4と、幹線である通信線5a,5b,5c,5d,5eとを含む。
実施の形態1及び2と同様に、ECU1,1,…は支線2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hへCANプロトコルに準じてバス型に接続されている。実施の形態4におけるGW装置3a,3b,3c及び分配装置4は基本的に、相互に1対1の関係で接続されており、スイッチ型の接続形態を構成している。GW装置3aと分配装置4とが幹線5aにより接続されており、分配装置4とGW装置3bとが幹線5bにより接続されている。GW装置3bとGW装置3cとが幹線5cにより接続されており、GW装置3aとGW装置3cとが幹線5dにより接続されている。また、GW装置3aとGW装置3bとが幹線5eにより接続されている。
実施の形態4でも原則として、ECU1,1,…から送信されたメッセージは、GW装置3a,3b,3cを介して中継されるか、又は分配装置4自身によって受信されることにより、分配装置4のデータベースDBに集約される。
図22は、実施の形態4における車載通信システムを構成するGW装置3a及び分配装置4の内部構成を示すブロック図である。なお、GW装置3b,3cの内部構成は、GW装置3aの内部構成と同様であるので詳細な説明を省略する。
実施の形態4におけるGW装置3a及び分配装置4の内部構成は、実施の形態1及び2におけるGW装置3a及び分配装置4の内部構成とほぼ同様であるので、共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
ただし、実施の形態4におけるGW装置3a,3b,3c及び分配装置4は、相互に1対1の関係で接続されていることから、図22のブロック図に示すようにGW装置3aの幹線通信部33は幹線5a,5d,5eに、分配装置4の幹線通信部43は幹線5a,5bに接続されている。
GW装置3aの制御部30は、幹線通信部33における幹線5aとの通信ポート、幹線5dとの通信ポート、及び幹線5eとの通信ポートを区別することが可能である。GW装置3aの制御部30は、幹線通信部33により幹線5aを介して送受信する場合には通信ポート「1」を使用する。同様に制御部30は、幹線5dを介して送受信する場合には通信ポート「2」を使用し、幹線5eを介して送受信する場合には通信ポート「3」を使用する。同様に、分配装置4の制御部40は、幹線通信部43における幹線5aとの通信ポートと、幹線5bとの通信ポートとを区別することが可能である。分配装置4の制御部40は、幹線通信部43により幹線5aを介して送受信する場合には通信ポート「1」を使用し、幹線5bを介して送受信する場合には通信ポート「2」を使用する。
このように構成される実施の形態4におけるGW装置3a,3b,3c及び分配装置4間で幹線5a,5b,5c,5d,5eを介して送受信されるメッセージがループされないよう、GW装置3a,3b,3c及び分配装置4は、メッセージを集約する分配装置4をルートとした論理ツリーを作成し、これに応じた送信経路を選択する。このためGW装置3a,3b,3cは夫々、論理ツリーにおける自身からみてルート側の装置との接続に対応する幹線通信部33における通信ポートをルート側リンクとして認識する。また、GW装置3a,3b,3c及び分配装置4は、幹線通信部33,43における残りの通信ポートの内の、論理ツリーにおける自身からみてリーフ側の装置との接続に対応するゼロ又は複数の通信ポートをリーフ側リンクとして認識する。更に、GW装置3a,3b,3c及び分配装置4は、幹線通信部33,43におけるループを回避するために使用しない通信ポート、即ち残りのゼロ又は複数の全通信ポートを不使用リンクとして認識する。
これにより、ルートとなる分配装置4以外のGW装置3a,3b,3cの制御部30は夫々、ルート側リンクに対応する通信ポート及びリーフ側リンクに対応する通信ポートによりメッセージを送受信する。また、不使用リンクに対応する通信ポートでは、メッセージを送受信しないことによってメッセージのループを回避する。これにより、幹線5a,5b,5c,5d,5eにおける適切な送受信方向を定める送信経路が選択される。
GW装置3a,3b,3cの制御部30及び分配装置4の制御部40は夫々、送信経路を選択するための通知フレームを送受信することにより論理ツリーにおけるルート側及びリーフ側の装置を認識し、ルート側リンク、リーフ側リンク及び不使用リンクとして認識した幹線通信部33及び幹線通信部43における通信ポートの識別番号を記憶部31及び記憶部41に夫々記憶する。
GW装置3a,3b,3cの制御部30及び分配装置4の制御部40により、送信経路に対応する論理ツリーが作成され、送信経路を選択される処理手順について以下に説明する。論理ツリーの作成処理はまず、GW装置3a,3b,3cの制御部30が幹線通信部33における全通信ポートをリッスン状態にし、分配装置4を起点に送信されるツリー作成通知フレームを受信することにより開始される。なお、制御部40により送信されるツリー作成通知フレームには、ツリー作成通知フレーム自身が無限にループしないように、及び、より効率的な送信経路が選択されるようにフレーム寿命が含まれる。制御部40は、含まれているフレーム寿命に基づき、受信したツリー作成通知フレームに応じて各通信ポートをルート側リンク、リーフ側リンク、不使用リンクのいずれかとして認識する処理を行なう。また、以下に示す例では不使用リンクのいずれかとして認識した通信ポートにより夫々、他の装置へ不使用リンク通知フレームを送信する。
図23は、実施の形態4における車載通信システムを構成する分配装置4の制御部40が送信経路に対応する論理ツリーを作成する処理手順の一例を示すフローチャートである。
分配装置4の制御部40は、全通信ポートをリーフ側リンクとして対応付けて記憶部41に記憶し(ステップS61)、幹線通信部43における全通信ポートによりツリー作成通知フレームをGW装置3a,3bへ送信し(ステップS62)、処理を終了する。制御部40は、GW装置3a,3bへツリー作成通知フレームを送信する際には、このフレーム寿命として記憶部41に記憶してある与えられた値を読み出して設定する。
図24は、実施の形態4におけるGW装置3a,3b,3cの制御部30が送信経路に対応する論理ツリーを作成する処理手順の一例を示すフローチャートである。図24のフローチャートに示した処理手順は、分配装置4の制御部40により図23のフローチャートに示した処理手順が実行されて送信されたツリー作成通知フレームに対応して実行される。なお制御部30は幹線通信部33の全通信ポートをリッスン状態にしておく。
制御部30は、ツリー作成通知フレームを最初に受信してから一定期間が経過したか否かを判断する(ステップS71)。このときの一定期間は、例えば500マイクロ秒である。
制御部30は、ツリー作成通知フレームを最初に受信してから一定期間が経過していないと判断した場合(S71:NO)、リッスン状態にある全通信ポートのいずれかにより通知フレームを受信したか否かを判断する(ステップS72)。制御部30は、通知フレームを受信していないと判断した場合(S72:NO)、処理をステップS71へ戻す。制御部30は、通知フレームを受信したと判断した場合(S72:YES)、受信した通知フレームがツリー作成通知フレームであるか否かを判断する(ステップS73)。
制御部30は、受信した通知フレームがツリー作成通知フレームであると判断した場合(S73:YES)、自身がツリー作成通知フレームを未受信であるか否か、又は受信済みでもフレーム寿命が受信済みのフレーム寿命よりも大きいか否かを判断する(ステップS74)。制御部30は、ツリー作成通知フレームを未受信であると判断したか、又は受信済みでもフレーム寿命が受信済みのフレーム寿命よりも大きいと判断した場合(S74:YES)、ステップS72で通知フレームを受信した通信ポートをルート側リンクとして対応付けると共に、既に対応付けられていたものも含め他の全通信ポートをリーフ側リンクとして対応付け、記憶部31に記憶する(ステップS75)。制御部30は、ツリー作成通知フレームに含まれるフレーム寿命をデクリメントし(ステップS76)、フレーム寿命がデクリメントされたツリー作成通知フレームを、他の通信ポートにより送信する(ステップS77)。次に制御部30は、処理をステップS71へ戻す。
制御部30は、ステップS72で受信した通知フレームがツリー作成通知フレームであると判断したが(S73:YES)、ステップS74において既に受信済みであり、且つフレーム寿命が受信済みのフレーム寿命以下であると判断した場合(S74:NO)、ステップS72で通知フレームを受信した通信ポートにより、不使用リンク通知フレームを送信する(ステップS78)。次に制御部30は、ステップS72で通知フレームを受信した通信ポートを不使用リンクとして対応付けて記憶し(ステップS79)、処理をステップS71へ戻す。
また制御部30は、ステップS72で受信した通知フレームがツリー作成通知フレームでないと判断した場合(S73:NO)、受信した通知フレームは不使用リンク通知フレームであるので、処理をステップS79へ進める。
制御部30は、ステップS71において、ツリー作成通知フレームを最初に受信してから一定期間が経過したと判断した場合(S71:YES)、論理ツリーを作成する処理を終了する。
なお、上述の処理手順の内の、ステップS78における不使用リンク通知フレームの送信は必須ではない。この場合、GW装置3a,3b,3c及び分配装置4がステップS79において不使用リンクとして対応付けて記憶した通信ポートを介して接続するGW装置3a,3b,3c及び分配装置4では、対応する通信ポートをリーフ側リンクとして対応付けて記憶している。したがって、他方からは不使用リンクとして対応付けられているにも拘らず、GW装置3a,3b,3c及び分配装置4の制御部30,40は、不使用リンク通知フレームを受信しないので、不使用リンクとして対応付けて記憶し直すことはできない。しかしながら、後者のGW装置3a,3b,3c及び分配装置4が、リーフ側リンクとして対応付けている通信ポートからメッセージを送信した場合であっても、前者のGW装置3a,3b,3c及び分配装置4に置けてメッセージを受信する通信ポートは不使用リンクとして対応付けられているので、メッセージは破棄される。これにより、メッセージの無限ループが回避される。また、これに応じてステップS73における、受信した通知フレームがツリー作成通知フレームであるか否かの判断も必須ではない。したがって、制御部30は、通知フレームを受信したと判断した場合(S72:YES)、常に処理をステップS74へ進める構成としてもよい。
また、不使用リンク通知フレームの送信が行なわれる場合、分配装置4の制御部40も以下に示す処理を行なって通信ポートの不使用リンクとしての対応付けを確実にしてもよい。分配装置4の制御部40は、ツリー作成通知フレームを送信した後(S62)、通知フレームを受信したか否かを判断して待機し、不使用リンク通知フレームを受信した場合には当該不使用リンク通知フレームを受信した通信ポートを不使用リンクとして対応付けて記憶部41に記憶する。なお、通知フレームを受信したか否かを判断して待機する時間は、図24のフローチャートに示したステップS71における一定期間と同様に、例えば500マイクロ秒とする。
次に、図23及び図24のフローチャートに示した処理手順をGW装置3a,3b,3cの制御部30及び分配装置4の制御部40が実行することによりGW装置3a,3b,3c及び分配装置4間の送信経路に対応する論理ツリーが作成され、適切な送信経路が選択される過程について次に示す図25及び図26の模式図を参照して説明する。図25及び図26は、実施の形態4における車載通信システムで選択される送信経路の例を示す模式図である。図26の模式図は、図25の模式図に対して時間的に後の状態に相当する。図25及び図26の模式図では、各装置をブロックで表わし、ECU1,1,…及び支線2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hについては図示を省略している。図25及び図26中のGW装置3a,3b,3c及び分配装置4を表わすブロック内に示されている四角に囲まれた番号は各装置の識別番号を示し、三角に囲まれた番号は幹線5a,5b,5c,5d,5eに対応する幹線通信部33,43における通信ポートの識別番号を示す。
図25の模式図は、分配装置4の制御部40により、ツリー作成通知フレームが送信された場合のフレームの流れ、並びに、各装置で記憶されるルート側リンク、リーフ側リンク及び不使用リンクと通信ポートとの対応付けを示している。図25中のY1は、分配装置4から送信されるツリー作成通知フレームの内容例を示しており、白矢印はフレームの流れを表わしている。図25(a)はGW装置3aの記憶部31に記憶されるルート側リンク、リーフ側リンク及び不使用リンクと通信ポートとの対応付け、図25(b)は分配装置4における対応付け、図25(c)はGW装置3bにおける対応付け、図25(d)はGW装置3cにおける対応付けの例を示している。
まず、分配装置4の制御部40は、自身の幹線通信部43の通信ポートを全てリーフ側リンクと対応付けて記憶し(図25(b))、ツリー作成通知フレームY1を識別番号が「1」である通信ポート及び「2」である通信ポートにより送信する。送信されたツリー作成通知フレームY1は、図25の模式図に示すように、「7」「0」「1」「0」「1」「5」からなる。先頭から4番目までの「7」「0」「1」「0」はユニキャスト送信時のアドレス情報と同様である。つまり、ツリー作成通知フレームY1は分配装置4自身を送信元とし、全装置を送信先とするブロードキャスト送信(装置の識別番号を3ビットとした場合に全ビットが1(111b)、即ち「7」)であり、受信した各装置から支線2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hへは送信しないことを示している。次の「1」は、フレームの新旧を判別するためのシリアル番号であり、「5」はフレーム寿命を示している。
GW装置3a,3bの制御部30は夫々、リッスン状態にある通信ポートによりツリー作成通知フレームY1を受信する。制御部30は夫々、ツリー作成通知フレームを受信済みでないので、当該ツリー作成通知フレームY1を受信した識別番号が「1」である通信ポートをルート側リンクとして対応付け、他の通信ポート「2」、「3」をリーフ側リンクとして対応付けて記憶部31に記憶する(図25(a)及び(c)参照)。これにより送信経路として選択された幹線5a,5bが太線で示されている。次に、GW装置3a,3bの制御部30は後述の図26に示すようにツリー作成通知フレームY1のフレーム寿命をデクリメントしてGW装置3cへ送信する。
図26の模式図は、分配装置4からツリー作成通知フレームを受信したGW装置3a,3bにより更にツリー作成通知フレームが送信された場合のフレームの流れ、並びに、各装置で記憶されるルート側リンク、リーフ側リンク及び不使用リンクと通信ポートとの対応付けを示している。図26中のY2は、GW装置3a,3bから送信されるツリー作成通知フレームの内容例を示しており、白矢印はフレームの流れを表わしている。図26(a)はGW装置3aの記憶部31に記憶されるルート側リンク、リーフ側リンク及び不使用リンクと通信ポートとの対応付け、図26(b)は分配装置4における対応付け、図26(c)はGW装置3bにおける対応付け、図26(d)はGW装置3cにおける対応付けの例を示している。
GW装置3a,3bの制御部30は夫々、ツリー作成通知フレームY2を送信する際に、フレーム寿命をデクリメントする。図26の模式図に示すように、フレーム寿命は図25の模式図中のY1におけるフレーム寿命「5」から「4」へデクリメントされている。GW装置3cの制御部30は、リッスン状態にある通信ポートによりツリー作成通知フレームY2を受信する。この場合、ツリー作成通知フレームY2はGW装置3a及びGW装置3bのいずれからも送信されるので、GW装置3cの制御部30は、幹線通信部33における通信ポート「1」及び「2」のいずれからもツリー作成通知フレームY2を受信する。GW装置3cの制御部30は、GW装置3aから送信されたツリー作成通知フレームY2を時間的に先に受信するとする。この場合、GW装置3cの制御部30は、GW装置3aから送信されたツリー作成通知フレームY2を受信した通信ポート「1」をルート側リンクとして対応付け、他の通信ポート「2」を一旦リーフ側リンクとして対応付けて記憶部31に記憶する。その後、GW装置3cの制御部30は、GW装置3bから送信されたツリー作成通知フレームY2を受信した通信ポート「2」については、既に受信済みでフレーム寿命は受信済みのフレームの寿命と同じであるので不使用リンクとして対応付けて記憶する(図26(d)参照)。なお、GW装置3cの制御部30は、このようにフレーム寿命も同一の内容であるフレームを異なる通信ポートにより受信した場合、通信ポートの番号の小さい方を有効にしてもよい。また、GW装置3a,3bがツリー作成通知フレームを送信する際にアドレス情報に相当する部分に自身の装置の識別番号を更に付加する構成とし、GW装置3cの制御部30が、付加されている装置の識別番号がより小さいツリー作成通知フレームを受信した通信ポートを有効に対応付けてもよい。
なお、ツリー作成通知フレームY2は図26中の白矢印が示すように、幹線5eを介してGW装置3aからGW装置3bへ、GW装置3bからGW装置3aへも送信される。この場合、GW装置3aは幹線通信部33における通信ポート「3」によりツリー作成通知フレームY2を受信する。GW装置3aの制御部30は、既にツリー作成通知フレームY1を分配装置4から受信済みであり、フレーム寿命は受信済みのフレーム寿命以下であるので(「5」>「4」)、通信ポート「3」を不使用リンクとして対応付け直して記憶部31に記憶する(図26(a)参照)。同様にGW装置3bの制御部30も、通信ポート「3」を不使用リンクとして対応付け直して記憶部31に記憶する(図26(c)参照)。
GW装置3cの制御部30は、不使用リンクとして対応付けた幹線通信部33における通信ポート「2」により不使用リンク通知フレームを送信する。GW装置3bの制御部30は、これを幹線通信部33における通信ポート「2」により受信するので、通信ポート「2」を不使用リンクとして対応付けて記憶部31に記憶する(図26(c)参照)。
上述の処理により、GW装置3a,3b,3c及び分配装置4間の送信経路に対応する論理ツリーが作成され、適切な送信経路が選択されることによりメッセージのループを回避することができる。GW装置3a,3b,3cの制御部30及び分配装置4の制御部40が起動時に自動的に上述の処理を行なうことにより、GW装置3a,3b,3c及び分配装置4間の物理的な接続構成が多様に変更された場合であっても、効率的にメッセージを送受信することが可能な送信経路が選択される。
なお、リンク障害時の代替経路を設定する等の目的で、送信経路を一定周期で見直すために、ツリー作成通知フレームを送信して論理ツリーを作成する処理を一定周期で繰り返してもよい。この場合、一定周期で図23及び図24のフローチャートに示した処理が実行される。この場合の一定期間は例えば1ミリ秒とする。
分配装置4の制御部40は、データベースDBから読み出したデータを含むメッセージを、GW装置3a,3b,3cに支線2a,2b,2e,2f,2g,2hを介して接続しているECU1,1,…へ送信する際には、リーフ側リンクとして対応付けられている幹線通信部43における通信ポートによりメッセージを送信する。
GW装置3a,3b,3cの制御部30は、ルート側リンクに対応する幹線通信部33における通信ポートにより受信したメッセージは、自身を送信先としている場合以外はリーフ側リンクに対応する通信ポートにより更にメッセージを送信する。またGW装置3a,3b,3cの制御部30は原則として、リーフ側リンクに対応する通信ポートにより受信したメッセージは、自身を送信先としている場合以外はルート側リンクに対応する通信ポートにより更にメッセージを送信する。また、不使用リンクに対応付けられている通信ポートでは送受信しない。
これにより、GW装置3a,3b,3c及び分配装置4は、効率的に送受信がされるように選択された送信経路に基づいて送受信を行なうので、メッセージのループを回避しつつ更に通信負荷を低減させることができる。
ただし、ECU1,1,…から送信されるメッセージは、全てが分配装置4へ集約されて必ず一度データベースDBに記憶されるとは限らない。分配装置4を経由せずにGW装置3a,3b,3c間でメッセージを送信すべき場合がある。したがって、GW装置3a,3b,3cの制御部30は、リーフ側リンクに対応する通信ポートにより受信したメッセージについては無条件にルート側リンクに対応する通信ポートにより送信する構成とはしない。GW装置3a,3b,3cの制御部30は、リーフ側リンクに対応する通信ポートにより受信したメッセージの内容によっては、他のリーフ側リンクに対応する通信ポートにより送信する場合もある。この場合は、各通信ポートと各装置の識別番号との対応を記憶しておくか、又は後述の実施の形態6に示すように学習することにより、送信先のアドレス情報と対応する通信ポートによりメッセージを送信する。
(実施の形態5)
実施の形態5では、実施の形態3に示したように幹線5によって接続されているGW装置はいずれもデータベースとして使用される記憶領域を備え、いずれか1つが自動的に選出されて特定のGW装置である分配装置として動作し、且つ、実施の形態4に示したように幹線5における接続形態をスイッチ型ネットワークとする場合の構成について説明する。
つまり、実施の形態5は、実施の形態3に示したGW装置6a,6b,6c間を幹線5によりバス型に接続した構成に対し、GW装置6d,6eを更に含み、GW装置6a,6b,6c,6d,6e間がスイッチ型ネットワークにより接続される構成とする。
実施の形態5における車載通信システムでは、動的に分配装置として動作する装置を自動的に選出するが、GW装置6a,6b,6c,6d,6e間がスイッチ型ネットワークにより接続されるので、メッセージの送信経路についても分配装置として動作するGW装置6a,6b,6c,6d,6eのいずれかがルートとなるように構成されるべきである。したがって、実施の形態5における車載通信システムのGW装置6a,6b,6c,6d,6eは、以下に示すように分配装置として動作する装置を選出する処理を行なうと共に、実施の形態4に説明した処理を行なって論理ツリーを作成し、適切な送信経路を選択する。
実施の形態5における車載通信システムのハードウェア構成は、GW装置6d,6e、該GW装置6d,6eに接続されている通信線2g,2h,2i,2j及びECU1,1,…が追加されていること、幹線5の接続形態(トポロジー)がスイッチ型であることが異なり、他の構成は実施の形態3における車載通信システムと同様である。したがって、共通する構成については同一の符号を付し、幹線5がスイッチ型の接続形態である場合にいずれかのGW装置6a,6b,6c,6d,6eが分配装置として動作すべく自動的に選出される処理について以下に説明する。
図27は、実施の形態5における車載通信システムの構成を示すブロック図である。実施の形態5における車載通信システムは、ECU1,1,…と、支線である通信線2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2h,2i,2jと、ECU1,1,…間のデータの送受信を中継するGW装置6a,6b,6c,6d,6eと、幹線である通信線5a,5b,5c,5d,5e,5f,5gとを含む。
実施の形態5における車載通信システムを構成するGW装置6a,6b,6c,6d,6e間の幹線5a,5b,5c,5d,5e,5f,5gを介した接続形態は、図27に示すようにメッシュ型且つリング型であり、スイッチ型の接続形態を構成している。GW装置6aとGW装置6bとが幹線5aにより接続されており、GW装置6bとGW装置6cとが幹線5bにより接続されている。GW装置6cとGW装置6dとが幹線5cにより接続されており、GW装置6dとGW装置6aとが幹線5dにより接続されている。また、GW装置6aとGW装置6cとが幹線5eにより接続されており、GW装置6aとGW装置6eとが幹線5fにより接続されている。さらに、GW装置6bとGW装置6eとが幹線5gにより接続されている。
また、GW装置6a,6b,6c,6d,6eは、いずれも分配装置として動作する場合にデータベースDBa,DBb,DBc,DBd,DBeとして使用することが可能な領域を夫々備えている。
図28は、実施の形態5における車載通信システムを構成するGW装置6aの内部構成を示すブロック図である。GW装置6b,6c,6d,6eの内部構成は、GW装置6aの内部構成と同様であるので、詳細な説明を省略する。
なお、実施の形態5におけるGW装置6aの内部構成は、実施の形態3におけるGW装置6aの内部構成とほぼ同様であるので、共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
ただし、実施の形態5におけるGW装置6a,6b,6c,6d,6eは相互に1対1の関係で接続されていることから、図28のブロック図に示すように、GW装置6aの幹線通信部63は幹線5a,5d,5e,5fに接続されている。
幹線通信部63は、幹線5a,5d,5e,5fを介したメッセージ、通知フレームの送受信を実現する。GW装置6aの制御部60は、幹線通信部63における幹線5aとの通信ポート、幹線5dとの通信ポート、幹線5eとの通信ポート、及び幹線5fとの通信ポートを夫々区別することが可能である。制御部60は、幹線5aを介して送受信する場合には幹線通信部63における通信ポート「1」を使用し、幹線5dを介して送受信する場合には通信ポート「2」を使用する。制御部60はまた、幹線5eを介して送受信する場合には通信ポート「3」を使用し、幹線5fを介して送受信する場合には通信ポート「4」を使用する。
また、記憶部61に記憶されている各種情報には、GW装置6a自身を他のGW装置6b,6c,6d,6eと区別するための識別番号が含まれている。実施の形態5では、GW装置6aの識別番号は「2」、GW装置6bの識別番号は「1」、GW装置6cの識別番号は「3」、GW装置6dの識別番号は「4」、GW装置6eの識別番号は「5」とし、夫々の識別番号が記憶部61に記憶されている。
制御部60は基本的に、実施の形態1乃至4と同様に、支線2a,2bに接続されているECU1,1,…から送信されたメッセージを、分配装置として動作するGW装置6a,6b,6c,6d,6eのいずれかにデータを集約させるために送信する。これに際し制御部60は、自身の装置の識別番号及び支線通信部62における通信ポートの識別番号からなる送信元のアドレス情報を付加する。また、送信先の分配装置として動作するGW装置6a,6b,6c,6d,6eのいずれかの装置の識別番号及び通信ポートの識別番号からなる送信先のアドレス情報を付加する。さらに、実施の形態4におけるGW装置3a,3b,3cと同様に論理ツリーを作成して送信経路を選択する処理を実行し、選択した送信経路に基づいてメッセージを送信する。
また、実施の形態5におけるGW装置6a,6b,6c,6d,6eの制御部60は夫々、実施の形態3に示したように立候補通知フレーム及び当選通知フレームを送受信することにより、分配装置として動作するいずれか1つのGW装置6a,6b,6c,6d,6eを自動的に選出する。ただし、実施の形態5におけるGW装置6a,6b,6c,6d,6e間がスイッチ型ネットワークにより接続されているので、立候補通知フレーム及び当選通知フレームについても無限にループされないように回避する必要がある。
そこで、GW装置6a,6b,6c,6d,6eの制御部60は、立候補通知フレーム及び当選通知フレームについても、実施の形態4に示したツリー作成通知フレーム同様にフレーム寿命を含める。また、同一のフレーム寿命を有するフレームの新旧を判別するために、通知フレームにはシリアル番号がツリー作成通知フレーム同様に含まれる。
次に、上述のように構成されるGW装置6a,6b,6c,6d,6eの制御部60が夫々、立候補通知フレームを送信することによって分配装置として選出され、選出された場合には当選通知フレームを送信する処理をフローチャートを参照して説明する。なお、各処理は、実施の形態3同様に分配装置未知状態、落選状態及び当選状態のいずれかにある場合に夫々分けて説明する。
図29及び図30は、実施の形態5における車載通信システムを構成するGW装置6aの制御部60の分配装置未知状態における処理手順の一例を示すフローチャートである。GW装置6b,6c,6d,6eの制御部60による処理手順は、GW装置6aの制御部60による処理手順と同様であるので詳細な説明を省略する。なお、実施の形態3における図18のフローチャートに示したGW装置6aの制御部60による処理手順と共通する処理手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
制御部60は、起動時には分配装置未知状態にあるが、他に、動作中に分配装置として動作すべく選出された装置から当選通知フレームが送信されなくなった場合に分配装置未知状態へ遷移する。この場合、それまで作成されていた論理ツリーに従い、幹線通信部63における通信ポートを夫々ルート側リンク、リーフ側リンク、不使用リンクとして対応付けていたとしても、再度論理ツリーを作成し直す。したがって、制御部60は、ルート側リンク、リーフ側リンク、不使用リンクとしての対応付けに関係なく、立候補通知フレームの周期的送信を幹線通信部63における全通信ポートにより開始する(ステップS8101)。
制御部60は、ステップS5103において立候補通知フレームを受信したと判断した場合(S5103:YES)、立候補通知フレームに含まれるアドレス情報を読み出す(S5104)。制御部60は、ステップS5104で読み出したアドレス情報に示される送信元の装置からの立候補通知フレームを未受信であるか否か、又は受信済みでもフレーム寿命が受信済みのフレーム寿命よりも大きいか否かを判断する(ステップS8102)。
制御部60は、立候補通知フレームを未受信であると判断したか、又は受信済みでもフレーム寿命が受信済みのフレーム寿命よりも大きいと判断した場合(S8102:YES)、読み出したアドレス情報に示される送信元の装置の識別番号の値は、自身の装置の識別番号の値よりも小さいか否かを判断する(S5105)。制御部60は、送信元の装置の識別番号の値は自身の装置の識別番号の値以上であると判断した場合(S5105:NO)、処理をステップS5102へ戻す。
制御部60は、送信元の装置の識別番号の値は自身の装置の識別番号の値よりも小さいと判断した場合(S5105:YES)、他の装置へ無限ループを回避しつつ転送するために、立候補通知フレームに含まれているフレーム寿命をデクリメントする(ステップS8103)。次に制御部60は、ステップS5103で当該立候補通知フレームを受信した通信ポート以外の他の通信ポートにより、フレーム寿命をデクリメントした立候補通知フレームを他のGW装置6b,6c,6d,6eへ転送する(ステップS8104)。
制御部60は、ステップS8102において立候補通知フレームを受信済みであり、且つフレーム寿命が受信済みのフレーム寿命以下であると判断した場合(S8102:NO)、処理をステップS5102へ戻す。これにより同一の立候補通知フレームが無限にループすることを回避する。
制御部60は、ステップS5108において当選通知フレームを受信したと判断し(S5108:YES)、受信した当選通知フレームに含まれるアドレス情報に示される送信元の装置の識別番号を分配装置の装置の識別番号として記憶するが(S5109,S5110)、当該当選通知フレームを受信したルート側リンクとして対応付けると共に、既に対応付けられていたものも含め他の全通信ポートをリーフ側リンクとして対応付けて記憶部61に記憶する(ステップS8105)。
次に制御部60は、ステップS5108において受信した当選通知フレームに含まれるフレーム寿命をデクリメントし(ステップS8106)、フレーム寿命をデクリメントした当選通知フレームを他の通信ポートにより転送する(ステップS8107)。
なお、ステップS8105については後述する落選状態における処理中で同様の処理を行なうので省略可能である。
図31は、実施の形態5における車載通信システムを構成するGW装置6aの制御部60の落選状態における処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、実施の形態3における図19のフローチャートに示したGW装置6aの制御部60による処理手順と共通する処理手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
制御部60は、他の状態から落選状態へ遷移した場合、幹線通信部63における全通信ポートをリッスン状態とし、落選状態へ遷移してから一定期間が経過した否かを判断する(S521)。制御部60は、一定期間が経過していないと判断した場合(S521:NO)、幹線通信部63により他のGW装置6b,6c,6d,6eから通知フレームを受信したか否かを判断する(ステップS8201)。制御部60は、いずれの通知フレームも受信していないと判断した場合(S8201:NO)、処理をステップS521へ戻す。
制御部60は、通知フレームを受信したと判断した場合(S8201:YES)、受信した通知フレームが立候補通知フレームであるか否かを判断する(ステップS8202)。制御部60は、受信した通知フレームが立候補通知フレームであると判断した場合(S8202:YES)、既に落選状態にあるのでそのまま一定期間をリセットして(S523)処理をステップS521へ戻す。
制御部60は、受信した通知フレームが立候補通知フレームでないと判断した場合(S8202:NO)、受信した通知フレームが当選通知フレームであるか否かを判断する(ステップS8203)。制御部60は、受信した通知フレームが当選通知フレームでないと判断した場合(S8203:NO)、受信した通知フレームは不使用リンク通知フレームである。したがって制御部60は、当該不使用リンク通知フレームを受信した通信ポートを不使用リンクとして対応付けて記憶部61に記憶し(ステップS8204)、一定期間をリセットし(S523)、処理をステップS521へ戻す。
制御部60は、ステップS8203において受信した通知フレームが当選通知フレームであると判断した場合(S8203:YES)、当選通知フレームを受信した場合の処理を行ない(ステップS8205)、一定期間をリセットし(S523)、処理をステップS521へ戻す。
図32は、実施の形態5における車載通信システムを構成するGW装置6aの制御部60が落選状態にある場合に当選通知フレームを受信したときの処理手順の一例を示すフローチャートである。図32のフローチャートに示す処理手順は、図31のフローチャートに示した処理手順の内のステップS8205の処理の詳細に対応する。
制御部60は、受信した当選通知フレームに付加されているアドレス情報を読み出し(ステップS8206)、受信した当選通知フレームが分配装置として記憶した装置と同一の装置からの当選通知フレームであるか否かを判断する(ステップS8207)。なお、このとき制御部60は、未だ当選通知フレームを受信しておらず分配装置の装置の識別番号を記憶していない場合は、異なる装置からの当選通知フレームであると判断する。
制御部60は、受信した当選通知フレームが異なる装置からの当選通知フレームであると判断した場合(S8207:NO)、送信元の装置の識別番号を分配装置の装置の識別番号として記憶する(ステップS8208)。分配装置として動作する装置が変更されたので、再度論理ツリーを作成し直すため、制御部60は、当該当選通知フレームを受信した通信ポートをルート側リンクとして対応付けると共に、既に対応付けられていたものも含め他の全通信ポートをリーフ側リンクとして対応付けて記憶部61に記憶する(ステップS8209)。制御部60は、受信した当選通知フレームについては、含まれるフレーム寿命をデクリメントし(ステップS8210)、ルート側リンクとして対応付けた通信ポート以外の他の通信ポートにより転送し(ステップS8211)、図31のフローチャートにおけるステップS523へ処理を戻す。
制御部60は、受信した当選通知フレームが分配装置として記憶した装置と同一の装置からの当選通知フレームであると判断した場合(S8207:YES)、受信した当選通知フレームが未受信であるか否か、又は受信済みでもフレーム寿命が受信済みのフレーム寿命よりも大きいか否かを判断する(ステップS8212)。制御部60は、当選通知フレームは未受信であると判断したか、又は受信済みでもフレーム寿命が受信済みのフレーム寿命よりも大きいと判断した場合(S8212:YES)、処理をステップS8209へ進めて以降の処理を行なう。
次に、制御部60は、受信した当選通知フレームを受信済みであり、且つフレーム寿命が受信済みのフレーム寿命以下であると判断した場合(S8212:NO)、当該当選通知フレームを受信した通信ポートにより、不使用リンク通知フレームを送信する(ステップS8213)。次に制御部60は、当該当選通知フレームを受信した通信ポートを不使用リンクとして対応付けて記憶し(ステップS8214)、図31のフローチャートにおけるステップS523へ処理を戻す。これにより、同一の当選通知フレームが無限にループされることが回避される。
図31及び図32のフローチャートに示した処理手順を行ない、当選通知フレームを受信した通信ポートとフレーム寿命(ホップ数)に基づいて論理ツリーが作成され、適切な送信経路が選択される。
図33及び図34は、実施の形態5における車載通信システムを構成するGW装置6aの制御部60の当選状態における処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、実施の形態3における図20のフローチャートに示したGW装置6aの制御部60による処理手順と共通する処理手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
制御部60は、当選状態へ遷移した場合、当選通知フレームの周期的送信を幹線通信部63における全通信ポートにより開始する(S8301)。制御部60は、当選通知フレーム、立候補通知フレーム等の通知フレームを受信したか否かを判断する(ステップS8302)。制御部60は、いずれの通知フレームも受信していないと判断した場合(S8302:NO)、処理をステップS8302へ戻す。
制御部60は、通知フレームを受信したと判断した場合(S8302:YES)、受信した通知フレームが当選通知フレームであるか否かを判断する(ステップS8303)。制御部60は、受信した通知フレームが当選通知フレームでないと判断した場合(S8303:NO)、受信した通知フレームが立候補通知フレームであるか否かを判断する(ステップS8304)。制御部60は、受信した通知フレームが立候補通知フレームであると判断した場合(S8304:YES)、立候補通知フレームを破棄し(S534)、処理をステップS8302へ戻して他の通知フレームを受信したと判断するまで待機する。
制御部60は、ステップS8304において、受信した通知フレームが立候補通知フレームでないと判断した場合(S8304:NO)、受信した通知フレームは不使用リンク通知フレームである。したがって制御部60は、当該不使用リンク通知フレームを受信した通信ポートを不使用リンクとして対応付けて記憶部61に記憶し(ステップS8305)、処理をステップS8302へ戻す。
制御部60は、ステップS8303において、受信した通知フレームが当選通知フレームであると判断した場合(S8303:YES)、当選通知フレームに含まれているアドレス情報を読み出し(S535)、アドレス情報に示される送信元の装置からの当選通知フレームを未受信であるか、又は受信済みでもフレーム寿命が受信済みのフレーム寿命よりも大きいか否かを判断する(ステップS8306)。
制御部60は、当選通知フレームを受信済みであり、且つフレーム寿命が受信済みのフレーム寿命以下であると判断した場合(S8306:NO)、処理をステップS8302へ戻す。これにより同一の当選通知フレームが無限にループすることを回避する。
制御部60は、当選通知フレームを未受信であると判断したか、又は受信済みでもフレーム寿命が受信済みのフレーム寿命よりも大きいと判断した場合(S8306:YES)、処理をステップS536へ進める。制御部60は、当選通知フレームの送信元の装置の識別番号の値が自身の装置の識別番号の値より小さいと判断した場合に(S536:YES)、当選通知フレームの周期的な送信を停止した後(S538)、ステップS8302で他の装置から受信した当選通知フレームを他の装置へ送信するためにフレーム寿命をデクリメントする(ステップS8307)。次に制御部60は、ステップS8302で当該当選通知フレームを受信した通信ポート以外の他の通信ポートにより、フレーム寿命をデクリメントした当選通知フレームを他のGW装置6b,6c,6d,6eへ転送し(ステップS8308)、落選状態へ遷移し(S539)、当選状態における処理を終了する。
また、実施の形態5における車載通信システムの構成では、図29のフローチャートに示したステップS8101により開始される立候補通知フレームの送信周期、及び図33のフローチャートに示したステップS8301における当選通知フレームの送信周期は例えば1ミリ秒である。また、図29のフローチャートに示したステップS5102、及び、図31のフローチャートに示したステップS521における一定期間は例えば5ミリ秒とする。これにより、各装置が一斉に起動してから5ミリ秒後には、GW装置6a,6b,6c,6d,6eのいずれかが分配装置として動作すべく選出される。
なお、実施の形態5においても実施の形態3で説明したように、いずれか1つのGW装置、例えばGW装置6bが優先的に分配装置として動作すべく選出されるように構成する場合に、当選通知フレームと立候補通知フレームとを区別せずに処理を行なう構成としてもよい。この場合、制御部60は、分配装置未知状態にあるときには、未受信であるか、又はフレーム寿命がより大きい立候補通知フレーム又は当選通知フレームを受信したが送信元の装置の識別番号が自身よりも小さい場合、落選状態へ遷移する。また、当選状態にある場合には、制御部60は、立候補通知フレームを受信した場合でもこれを破棄せず、未受信であるか、又はフレーム寿命がより大きい立候補通知フレーム又は当選通知フレームを受信したが送信元の装置の識別番号が自身よりも小さい場合、落選状態へ遷移する。
次に、図29乃至図34のフローチャートに示した処理手順をGW装置6a,6b,6c,6d,6eの制御部60が夫々実行することにより、特定のGW装置が分配装置として選出される過程を次に示す図35及び図36の模式図を参照して説明する。図35及び図36は、実施の形態5における車載通信システムを構成するGW装置6a,6b,6c,6d,6eの内のいずれかが分配装置として動作すべく選出される例を示す模式図である。図35及び図36の模式図では、各装置をブロックで表わし、ECU1,1,…及び支線2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2h,2i,2jについては図示を省略している。図35及び図36中のGW装置6a,6b,6c,6d,6eを表わすブロック内に示されている四角に囲まれた番号は各装置の識別番号を示し、三角に囲まれた番号は幹線5a,5b,5c,5d,5e,5f,5gに対応する幹線通信部63における通信ポートの識別番号を示す。
図35の模式図は、各装置から送信される立候補通知フレームの内容例及び流れを示している。図35中のZ1は、GW装置6bから周期的に送信される立候補通知フレームの内容例を示しており、白矢印はフレームの流れを表わしている。GW装置6bから送信される立候補通知フレームZ1は例えば図35の内容例に示すように、「7」「0」「1」「0」「23」「5」からなる。先頭から4番目までの「7」「0」「1」「0」はユニキャスト送信時のアドレス情報と同様である(図4(a)参照)。つまり、立候補通知フレームZ1は、GW装置6bを送信元とし、全装置を送信先としてブロードキャスト送信される。マルチキャスト送信に対応する場合は、アドレス情報の先頭に送信先の数を示すが、「1」「7」「0」「1」「0」としてもよい。次の「23」は、フレームの内容の新旧を判別するためのシリアル番号であり、「5」は含まれるフレーム寿命である。
GW装置6bに隣接するGW装置6a,6c,6eの制御部60は夫々立候補通知フレームZ1を受信する。GW装置6a,6c,6eの制御部60は夫々、アドレス情報を読み出して装置の識別番号が「1」であるGW装置6bからの立候補通知フレームは受信済みでないと判断し、フレーム寿命をデクリメントして他の装置へ転送する。このときGW装置6a,6c,6eの制御部60は夫々、自身の装置の識別番号が「2」、「3」及び「5」であるのに対し、立候補通知フレームZ1から読み出したアドレス情報に示される装置の識別番号が「1」であることから、装置の識別番号は自身よりも小さいと判断する。GW装置6a,6c,6eの制御部60は夫々、落選状態へ遷移して立候補通知フレームの送信を停止する。
立候補通知フレームZ1を受信したGW装置6aの制御部60は、立候補通知フレームZ1を受信した通信ポート「1」以外の通信ポート「2」、「3」及び「4」により、フレーム寿命をデクリメントした立候補通知フレームZ2を送信する。立候補通知フレームZ1を既に受信したGW装置6c,6eの制御部60は、既に落選状態へ遷移しており、立候補通知フレームZ2を受信しても処理を行なわない。GW装置6dの制御部60は、GW装置6aから立候補通知フレームZ2を受信した場合、立候補通知フレームZ2に含まれる装置の識別番号「1」が自身の装置の識別番号「4」よりも小さいと判断し、落選状態へ遷移して立候補通知フレームの送信を停止する。ただし、GW装置6dの制御部60は、隣接するGW装置6a,6cから夫々立候補通知フレームを受信しているはずであり、それらの立候補通知フレームに含まれる装置の識別番号「2」及び「3」が自身の装置の識別番号「4」よりも小さいと判断し、既に落選状態へ遷移して立候補通知フレームの送信を停止していてもよい。なお、図35には、GW装置6aから通信ポート「3」により送信される立候補通知フレームZ2は図示を省略している。
GW装置6dの制御部60は、落選状態へ遷移する前に立候補通知フレームZ3を通信ポート「1」及び「2」により送信している。GW装置6dから送信される立候補通知フレームZ3は例えば図35の内容例に示すように、「7」「0」「4」「0」「23」「5」からなる。立候補通知フレームZ3は、隣接するGW装置6a,6cの制御部60により受信される。GW装置6a,6cの制御部60が立候補通知フレームZ3を受信した時点で落選状態へ遷移しておらず、分配装置未知状態であった場合、GW装置6a,6cの制御部60は、立候補通知フレームZ3に含まれる送信元の装置の識別番号「4」が夫々の自身の装置の識別番号「2」、「3」よりも大きいと判断して通知フレームZ3を破棄し、立候補通知フレームの周期的な送信を継続する。
GW装置6aの制御部60は、落選状態へ遷移する前に立候補通知フレームZ4を通信ポート「1」、「2」、「3」及び「4」により送信している。GW装置6aから送信される立候補通知フレームZ4は例えば図35の内容例に示すように、「7」「0」「2」「0」「23」「5」からなる。立候補通知フレームZ4は、隣接するGW装置6b,6c,6d,6eの制御部60により受信される。GW装置6bの制御部60は、立候補通知フレームZ4に含まれる送信元の装置の識別番号「2」が夫々の自身の装置の識別番号「1」よりも大きいと判断して立候補通知フレームZ4を破棄し、立候補通知フレームZ1の周期的な送信を継続する。
一定期間が経過した時点でGW装置6a,6c,6d,6eの制御部60は夫々、落選状態へ遷移している。しかしながら、GW装置6bの制御部60は依然として分配装置未知状態であり、立候補通知フレームZ1の周期的な送信を継続している。GW装置6bの制御部60は一定期間が経過したと判断し、他のGW装置6a,6c,6d,6eから当選通知フレームも受信しないので自身が当選状態へ遷移する。このように、GW装置6bが分配装置として動作すべく自動的に選出される。
図36の模式図は、分配装置として選出されたGW装置6bから送信される当選通知フレームの内容例及び流れを示している。分配装置として動作するGW装置6bの記憶部61のデータベースDBbは実線で示され、落選したGW装置6a,6c,6d,6eのデータベースDBa,DBc,DBd,DBeとしての記憶領域は使用されないので破線で示されている。落選状態へ遷移したGW装置6a,6c,6d,6eの制御部60は、図31のフローチャートに示す処理手順を開始し全通信ポートをリッスン状態として待機している。
分配装置として選出されたGW装置6bは当選状態へ遷移しており、自身の幹線通信部63における全通信ポートにより周期的に当選通知フレームを送信する。図36中のW1は、GW装置6bの制御部60により送信される当選通知フレームの内容例を示しており、白矢印はフレームの流れを表わしている。図36に示すように、当選通知フレームW1は「7」「0」「1」「0」「1」「5」からなる。先頭から4番目までの「7」「0」「1」「0」は、ユニキャスト送信時のアドレス情報と同様である。つまり、当選通知フレームW1はGW装置6bを送信元とし、全装置を送信先としてブロードキャスト送信(装置の識別番号を3ビットとした場合に全ビットが1(111b)、即ち「7」)されることを示している。次の「1」は、フレームの内容の新旧を判別するためのシリアル番号であり、「5」はフレーム寿命を示している。
GW装置6bに幹線5a,5b,5gを介して隣接しているGW装置6a,6c,6eの制御部60は夫々、リッスン状態にある通信ポートにより当選通知フレームW1を受信する。制御部60は、当選通知フレームW1に含まれる送信元の装置の識別番号「1」を分配装置として動作する装置の識別番号として記憶するか、又は既に記憶している。また、GW装置6a,6c,6eの制御部60はいずれも当選通知フレームW1については未受信であるので、受信した通信ポート「1」、「1」、「2」を夫々ルート側リンクとして対応付ける。これにより幹線5a,5b,5gが送信経路として選択され、図36で太線で示されている。次にGW装置6a,6c,6eの制御部60は夫々、当選通知フレームW1のフレーム寿命をデクリメントした当選通知フレームW2を、隣接するGW装置6a,6c,6d,6eへ送信する。なお、図36には、GW装置6eから送信される当選通知フレームW2は図示を省略している。
GW装置6eの制御部60は、GW装置6aから送信される当選通知フレームW2を幹線通信部63における通信ポート「1」により受信する。しかしながら、当選通知フレームW1を既に受信済みであり、フレーム寿命は受信済みのフレーム寿命「5」よりも小さい「4」であることからこれを破棄し、通信ポート「1」を不使用リンクに対応付ける。GW装置6eの制御部60からこれに応じて不使用通知フレームが送信される場合、これを幹線通信部63における通信ポート「4」により受信したGW装置6aの制御部60は、通信ポート「4」を不使用リンクに対応付ける。これにより、幹線5fは送信経路として選択されず不使用となる。
GW装置6a,6cの制御部60は同様に、幹線通信部63における通信ポート「3」により当選通知フレームW2を幹線5eを介して相互に送信するが、いずれも当選通知フレームW1を受信済みであることから通信ポート「3」を不使用リンクに対応付ける。これにより、幹線5eは送信経路として選択されず不使用となる。
GW装置6dの制御部60は、GW装置6a,6cから送信された当選通知フレームW2を、幹線通信部63における通信ポート「1」及び「2」のいずれからも受信する。GW装置6dの制御部60は、GW装置6aから当選通知フレームW2を時間的に先に受信するとする。この場合、GW装置6dの制御部60は、受信した当選通知フレームW2の送信元の装置の識別番号「1」を、分配装置として動作する装置の識別番号として記憶する。さらに、GW装置6dの制御部60は、GW装置6aから送信された当選通知フレームW2を受信した通信ポート「1」をルート側リンクとして対応付け、その後にGW装置6cから送信された当選通知フレームW2を受信した通信ポート「2」については既に受信済みであり、フレーム寿命は受信済みのフレームの寿命と同じであるので不使用リンクとして対応付ける。これにより、幹線5dは送信経路として選択されるが、幹線5cは送信経路として選択されず不使用となる。
このように、分配装置として動作すべく選出されたGW装置6bの制御部60から当選通知フレームが送信されることにより、他のGW装置6a,6c,6d,6eは当選通知フレームを受信して、GW装置6bが分配装置として選出されたことを装置の識別番号を記憶することにより認識する。同時に、GW装置6a,6c,6d,6eの制御部60は夫々、分配装置として動作するGW装置6bとの接続構成に応じて、GW装置6bをルートとする適切な送信経路を選択することができる。
このように、いずれのGW装置が特定のGW装置である分配装置として動作するか否かを動的に決定することができるように構成することにより、ECU1,1,…及びGW装置6a,6b,6c,6d,6eの多様な接続構成に応じて、ルートとなる分配装置の位置を適切にすることができる。また、車載通信システムの場合、例えば車種又はオプションによって構成自体が異なる装置を搭載するのではなく、いずれの車種及びオプションにも対応できるように同一の装置を搭載し、車輌の製造段階中、販売時等に事後的に運用構成を可変とすることが考えられる。したがって、実施の形態5に示したように事後的に多様な接続構成に応じて分配装置の位置及び送信経路を適切にすることができることにより、同一の装置で多様な車種及びオプションに対応させることが可能になる。
(実施の形態6)
実施の形態5において、GW装置6bの制御部60は、GW装置6dに支線2hを介して接続しているECU1へメッセージを送信するために、送信経路としてリーフ側リンクに対応する通信ポート「1」、「2」及び「3」のいずれから送信すべきかを判断するか否かについては言及しなかった。分配装置として動作するGW装置6bがGW装置6dに支線2hを介して接続しているECU1へメッセージへ送信する場合、当該メッセージをリーフ側リンクに対応する全通信ポートにより送信する構成としても、適切に送信経路が選択されているのでメッセージの無限ループを回避することができる。しかしながら、より効率的にメッセージを送受信して幹線5a,5b,5c,5d,5e,5f,5gにおける通信負荷を低減させるには、メッセージの送信先に応じていずれの通信ポートにより送信すべきかを判断できることが望ましい。
そこで実施の形態6におけるGW装置6a,6b,6c,6d,6eの制御部60は、いずれが特定のGW装置、即ち分配装置として動作するかが選出される際及び選出された後、各装置から送信されるアドレス情報が付加されたメッセージを幹線通信部63のいずれの通信ポートにより受信したか否かに基づいて、装置の識別番号と幹線通信部63における通信ポートの識別番号との対応を学習する。
実施の形態6における車載通信システムの構成は、GW装置6a,6b,6c,6d,6eの制御部60による送信経路の学習処理以外は、実施の形態5における構成と共通するので詳細な説明を省略する。実施の形態6に示す処理は、実施の形態5で説明したようにGW装置6bが分配装置として動作すべく選出された後の処理に対応する。以下に、実施の形態5と同一の符号を付し、GW装置6a,6b,6c,6d,6eの制御部60が装置の識別番号と通信ポートの識別番号との対応を記憶して送信経路を学習する処理についてフローチャートを参照して説明する。
図37は、実施の形態6における車載通信システムを構成するGW装置6aの制御部60による学習処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、GW装置6b,6c,6d,6eの制御部60も以下に示す処理と同様の処理手順で学習するので、詳細な説明を省略する。
制御部60は、幹線通信部63によりメッセージを受信し(ステップS91)、メッセージに付加されているアドレス情報を読み出す(ステップS92)。制御部60は、読み出したアドレス情報に示される送信先の装置の識別番号は自身を示しているか否かを判断する(ステップS93)。制御部60は、自身を示していると判断した場合(S93:YES)、それに応じた処理を行ない、後述のステップ97に処理を進める。
制御部60は、自身を示していないと判断した場合(S93:NO)、送信先の装置の識別番号に対応する通信ポートの識別番号は未学習であるか否かを判断する(ステップS94)。制御部60は、未学習であると判断した場合(S94:YES)、ステップS91でメッセージを受信した通信ポート以外の全通信ポートにより、ステップS91で受信したメッセージを送信し(ステップS95)、処理を後述のステップS97に進める。
制御部60は、ステップS94で学習済みであると判断した場合(S94:NO)、ステップS91で受信したメッセージを、送信先の装置の識別番号に対応する識別番号の通信ポートにより送信し(ステップS96)、処理を後述のステップS97に進める。
次に制御部60は、ステップS91でメッセージを受信した通信ポートの識別番号と、ステップS92で読み出したメッセージに付加されているアドレス情報に示される送信元の装置の識別番号との対応は、学習済みの対応関係と一致するか否かを判断する(ステップS97)。なお、ステップS97において、受信した通信ポートの識別番号と、送信元の装置の識別番号について未学習である場合は、学習済みの対応関係と一致しないと判断する。
制御部60は、学習済みの対応関係と一致しないと判断した場合(S97:NO)、メッセージを受信した通信ポートの識別番号と、送信元の装置の識別番号との対応を更新、変更又は未学習のときは学習して記憶部61に記憶し(ステップS98)、学習処理を終了する。制御部60は、ステップS97において学習済みの対応関係と一致すると判断した場合(S97:YES)、そのまま学習処理を終了する。
次に、GW装置6a,6b,6c,6d,6eの制御部60が夫々図37のフローチャートに示した学習処理を行なうことにより、幹線5a,5b,5c,5d,5e,5f,5gによりスイッチ型の接続形態をとっている場合も、アドレス情報により適切にメッセージが送信されることを具体例を挙げて説明する。またメッセージの送受信は、マルチキャスト送信に対応するとする。
図38及び図39は、実施の形態6における車載通信システムで送受信されるメッセージの内容例及び流れを示す模式図である。図38及び図39の模式図では、各装置をブロックで表わしている。図38及び図39中のGW装置6a,6b,6c,6d,6eを表わすブロック内に示されている四角に囲まれた番号は各装置の識別番号を示し、丸に囲まれた番号は支線2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2h,2i,2jに対応する支線通信部62における通信ポートの識別番号を示し、三角に囲まれた番号は幹線5a,5b,5c,5d,5e,5f,5gに対応する幹線通信部63における通信ポートの識別番号を示す。
図38及び図39の模式図を参照し、GW装置6a,6b,6c,6d,6e間の学習処理が行なわれる過程について説明する。図38の模式図は、分配装置として動作するGW装置6bの制御部60、送信されたメッセージの内容例及び流れを示している。なお、図38の模式図では、幹線5a,5b,5d,5fが送信経路として選択されているとし、白矢印はメッセージの流れを表わしている。他の幹線5c,5e,5gは送信経路として選択されておらず、各幹線5c,5e,5gに対応する幹線通信部63における通信ポートは不使用リンクとして対応付けられているとする。
分配装置として動作するGW装置6bの制御部60は、データベースDBbから読み出したデータを含むメッセージを、装置の識別番号が「4」であるGW装置6dの、識別番号が「1」である通信ポートに対応する支線2gに接続しているECU1へ送信する場合、図38中のX5に示されるように「1」「4」「1」「1」「0」からなるアドレス情報を付加する。なお、先頭の「1」は送信先の数を示しており、「4」及び「1」は送信先、「1」及び「0」は送信元を示している(図4(b)参照)。なお、GW装置6bの制御部60は、装置の識別番号が「4」であるGW装置6dへメッセージを送信する場合に、幹線通信部63における通信ポート「1」から送信すべきと学習していないときは、メッセージX5を幹線通信部63のリーフ側リンクに対応する全通信ポート「1」及び「2」により送信してもよい。
GW装置6aの制御部60は、図38中のX5に示されるメッセージを受信した場合、アドレス情報を読み出して送信先の装置の識別番号「4」は自身を示していないと判断する。またGW装置6aの制御部60は、送信先の装置の識別番号と幹線通信部63における通信ポートとの対応は未学習であるので、受信した通信ポート「1」以外で不使用リンクに対応していない全通信ポート「2」及び「4」によりメッセージX5を送信する。また、メッセージX5を受信した幹線通信部63における通信ポートの識別番号「1」と、アドレス情報が示す送信元の装置の識別番号「1」とを対応付けて学習する。これ以降GW装置6aの制御部60は、装置の識別番号が「1」であるGW装置6bへメッセージを送信する際には、幹線通信部63における通信ポート「1」により送信すればよいことを学習する。
なお、GW装置6cの制御部60が図38中のX5に示されるようなメッセージを受信した場合、送信先の装置の識別番号は自身を示しておらず、更に未学習であっても幹線通信部63における他の通信ポート「2」及び「3」は不使用リンクであるために送信は行なわない。GW装置6cの制御部60は、メッセージX5を受信した幹線通信部63における通信ポートの識別番号「1」と、アドレス情報が示す送信元の装置の識別番号「1」とを対応付けて学習する。
GW装置6dの制御部60は、GW装置6aの制御部60が幹線通信部63における通信ポート「2」により送信したメッセージX5を通信ポート「1」により受信する。GW装置6dの制御部60は、受信したメッセージX5の送信先の装置は自身を示していると判断する。GW装置6dの制御部60は、送信先のアドレス情報に示される支線通信部62における通信ポート「1」により支線2gに接続されているECU1へメッセージを送信する。また、GW装置6dの制御部60は、メッセージX5をGW装置6aから受信した際の幹線通信部63における通信ポートの識別番号「1」と、メッセージX5のアドレス情報が示す送信元の装置の識別番号「1」とを対応付けて学習する。
GW装置6eの制御部60も、GW装置6aの制御部60が幹線通信部63における通信ポート「4」により送信したメッセージX5を通信ポート「1」により受信する。GW装置6eの制御部60は、受信したメッセージX5の送信先の装置の識別番号は自身を示していないと判断するが、メッセージX5を受信した際の幹線通信部63における通信ポートの識別番号「1」と、メッセージX5のアドレス情報が示す送信元の装置の識別番号「1」とを対応付けて学習する。
GW装置6aの制御部60は、当選通知フレームの送信元の装置の識別番号「1」を記憶部61に記憶している。また、GW装置6aの制御部60は、メッセージX5を受信した際に、装置の識別番号が「1」であるGW装置6bへ送信する際には幹線通信部63における通信ポート「1」により送信することを学習している。したがって、GW装置6aの制御部60は、支線2bに接続されているECU1からメッセージを受信し、分配装置として動作するGW装置6bへ当該メッセージを送信する場合、図38中のX6に示されるようなアドレス情報を付加する。この場合のアドレス情報は「1」「1」「0」「2」「2」からなる。なお、先頭の「1」は送信先の数を示しており、「1」及び「0」は送信先、「2」及び「2」は送信元のアドレス情報を示している(図4(b)参照)。
GW装置6bの制御部60は、メッセージX6を幹線通信部63における通信ポート「1」により受信し、受信したメッセージX6に含まれるデータをデータベースDBbに記憶する処理を行なう。また、GW装置6bの制御部60は、メッセージX6を受信した際の幹線通信部63における通信ポートの識別番号「1」と、メッセージX6のアドレス情報に示される送信元の装置の識別番号「2」とを対応付けて学習する。
また、GW装置6dの制御部60は、当選通知フレームの送信元の装置の識別番号「1」を記憶部61に記憶しており、メッセージX5を受信した際に幹線通信部63における通信ポートの識別番号「1」と装置の識別番号「1」との対応を学習している。したがって、GW装置6dの制御部60は支線2hに接続されているECU1からメッセージを受信し、これを分配装置として動作するGW装置6bへ送信する場合、図38中のX7に示されるようなアドレス情報を付加する。この場合、アドレス情報は、「1」「1」「0」「4」「2」である。なお、先頭の「1」は送信先の数を示しており、「1」及び「0」は送信先、「4」及び「2」は送信元のアドレス情報を示している(図4(b)参照)。
GW装置6aの制御部60は、GW装置6dにより送信されたメッセージX7を幹線通信部63における通信ポート「2」により受信した場合、送信先の装置は自身を示していないと判断する。GW装置6aの制御部60は、受信したメッセージX7の送信先の装置の識別番号「1」については既に学習済みである。したがって、GW装置6aの制御部60はメッセージX7を、幹線通信部63における通信ポート「4」でなく、通信ポート「1」によりGW装置6bへ送信することが可能である。また、GW装置6aの制御部60は、メッセージX7を受信した際の幹線通信部63における通信ポートの識別番号「2」と、メッセージX7のアドレス情報に示される送信元の装置の識別番号「4」とを対応付けて学習する。
GW装置6bの制御部60は、GW装置6aにより送信されたメッセージX7を幹線通信部63における通信ポート「1」により受信した場合、送信先の装置は自身を示しており、受信したメッセージX7に含まれるデータをデータベースDBbに記憶する処理を行なう。またGW装置6bの制御部60は、メッセージX7を受信した際の幹線通信部63における通信ポートの識別番号「1」と、メッセージX7のアドレス情報に示される送信元の装置の識別番号「4」とを対応付けて学習する。GW装置6aの制御部60はこれ以降、装置の識別番号が「4」であるGW装置6dを送信先とする場合、幹線通信部63における通信ポート「1」により送信することを学習する。
図39の模式図は、図38の模式図に示された例に対して、幹線5dが切断された等の事情によりGW装置6a,6b,6c,6d,6e間の送信経路が変更された場合の例を示している。送信経路である幹線5a,5c,5e,5fが太線で示されている。また、図39中の白矢印はメッセージの流れを表わしている。他の幹線5b,5d,5gは送信経路として選択されておらず、各幹線5b,5d,5gに対応する幹線通信部63における通信ポートは不使用リンクとして対応付けられているとする。
送信経路が変更される前までは、図38の模式図を参照して説明したように、GW装置6aの制御部60は、装置の識別番号が「4」であるGW装置6dを送信先とする場合には幹線通信部63における通信ポート「2」によりメッセージを送信することを学習している。しかしながら、送信経路が再度自動的に選択された場合、GW装置6aの幹線通信部63における通信ポート「2」は不使用リンクとして対応付けられて記憶部61に記憶される。
送信経路が変更された後、GW装置6dから分配装置として動作するGW装置6bを送信先とするメッセージX8が送信される場合、メッセージに付加されるアドレス情報は図39中のX8に示されるように「1」「1」「0」「4」「2」である。GW装置6dの制御部60は、送信経路が変更されてルート側リンクとなった幹線通信部63における通信ポート「2」によりメッセージX8を送信する。GW装置6cの制御部60は、メッセージX8を受信した場合、受信した通信ポート「2」以外で不使用リンクに対応付けられていない通信ポート「3」によりメッセージX8を送信する。
GW装置6aの制御部60は、メッセージX8を受信した場合、アドレス情報が示す送信元の装置の識別番号「4」には、メッセージX8を受信した幹線通信部63における通信ポート「3」が対応するとしてこれを更新する。つまり、以降に送信経路が変更されるまでの間、GW装置6aの制御部60は、装置の識別番号が「4」であるGW装置6dへメッセージを送信する際には、幹線通信部63における通信ポート「3」により送信すればよいことを学習し直す。
分配装置として動作するGW装置6bの制御部60は、データベースDBbから読み出したデータを含むメッセージを、装置の識別番号が「5」であるGW装置6eの通信ポート「2」に対応する支線2jに接続しているECU1と、装置の識別番号が「3」であるGW装置6cの通信ポート「1」に対応する支線2eに接続しているECU1と、装置の識別番号が「4」であるGW装置6dの通信ポート「2」に対応する支線2hに接続しているECU1とへマルチキャスト送信するため、送信するメッセージに図39中のX9に示すアドレス情報を付加する。この場合のアドレス情報は「3」「5」「2」「3」「1」「4」「2」「1」「0」からなる。なお、先頭の「3」は送信先の数を示しており、「5」及び「2」は1つ目の送信先、「3」及び「1」は2つ目の送信先、「4」及び「2」は3つ目の送信先、「1」及び「0」は送信元を示している(図4(b)参照)。GW装置6bの制御部60は、幹線通信部63における通信ポート「2」及び「3」は不使用リンクであり、リーフ側リンクとして対応付けられている通信ポート「1」によりメッセージX9を送信する。
GW装置6aの制御部60は、メッセージX9を受信した場合、付加されているアドレス情報に示される送信先の装置の識別番号が自身を示していないので、送信先の装置の識別番号に対応付けられている通信ポートによりメッセージX9を送信する。なお、この場合、3つの送信先に応じてメッセージX9を3回送信する処理を行なうことなしに、複数の送信先の装置の識別番号に対応付けられている各々の通信ポートが同一の場合、1回だけ送信する。つまり、GW装置6aの制御部60は、1つ目の送信先の装置の識別番号「5」に対応付けられている通信ポート「4」によりメッセージX9を送信すると共に、2つ目及び3つ目の送信先の装置の識別番号「3」及び「4」については、学習により対応付けられている通信ポートの識別番号がいずれも「3」であることから、メッセージX9を通信ポート「3」により1回送信する。なお、メッセージに付加されるアドレス情報は、メッセージの送信先毎に必要なアドレス情報のみが残され、不要なアドレス情報は削除されるように構成してもよい。
これに対しGW装置6cの制御部60は、メッセージX9を受信した場合、メッセージX9に付加されているアドレス情報に示される送信先の数により、送信先が複数あることを判別可能である。GW装置6cの制御部60は、送信先の一つの装置の識別番号が自身を示していると判断して処理すると共に、他の送信先の装置の識別番号「4」に対応する通信ポート「2」からメッセージX9を送信する。
図40は、実施の形態6における車載通信システムを構成するGW装置6aの制御部60の学習処理により記憶部61に記憶される対応関係の内容例を示す説明図である。図40(a)の説明図に示す内容例は、GW装置6aの制御部60が図38の模式図に示したメッセージX5を受信した際に学習された装置の識別番号が「1」であるGW装置6bと通信ポート「1」との対応関係を示している。図40(a)の説明図に示すように、対応関係には更に、一定周期でカウントダウンされる有効期間が対応付けられている。有効期間の対応付けは必須ではないが、図39の模式図で示したように何らかの事情により接続構成が変更された場合、当該有効期間に基づいて古い情報を無効にすることが可能である。
図40(b)の説明図に示す内容例は、GW装置6aの制御部60が図38の模式図に示したメッセージX7を受信した際に学習された装置の識別番号が「4」であるGW装置6dと通信ポート「2」との対応関係、及び装置の識別番号が「5」であるGW装置6eと通信ポート「4」との対応関係を示している。図40(b)の説明図に示すように、装置の識別番号が「1」であるGW装置6bと通信ポート「1」との対応関係についての有効期間はカウントダウンされている。
図40(c)の説明図に示す内容例は、GW装置6aの制御部60が図39の模式図に示したメッセージX8を受信した際に学習された対応関係を示している。図40(c)の説明図が示すように、装置の識別番号「4」であるGW装置6dから送信されたメッセージX8が、GW装置6aの幹線通信部63における通信ポート「3」により受信されたことにより、接続先の装置の識別番号「4」に対応する通信ポートが「2」から「3」へ変更されていることが示されている。また、有効期間は改めて学習されたことにより「5」に更新されていることが示されている。
図40(d)の説明図に示す内容例は、GW装置6aの制御部60が図39の模式図に示したメッセージX9を受信した際に学習された対応関係を示している。図40(d)の説明図が示すように、装置の識別番号「4」、「5」についての対応関係についての有効期間は図40(c)の説明図に対してカウントダウンされている。これに対し図40(d)の説明図が示すように、装置の識別番号「1」であるGW装置6bから送信されたメッセージX9がGW装置6aの幹線通信部63における通信ポート「1」により受信されて改めて学習されたことにより、有効期間が「2」から「5」に更新されていることが示されている。
このように、メッセージが送受信される際に送信元の装置の識別番号と幹線通信部63における通信ポートとの対応関係を各GW装置6a,6b,6c,6d,6eの制御部60が学習することにより、多様な接続構成に対応させて効率的にメッセージの送受信を可能とするために適切なアドレス情報を付加することができる。これにより、幹線5a,5b,5c,5d,5e,5f,5gにおける通信負荷を低減させることが可能になる点、優れた効果を奏する。
なお、実施の形態6ではGW装置6a,6b,6c,6d,6eの制御部60は、メッセージの送受信時に通信ポートと装置の識別番号との対応関係を学習する例を示した。しかしながら、GW装置6a,6b,6c,6d,6eの制御部60はメッセージの送受信時だけでなく、論理ツリー作成時に立候補通知フレーム、当選通知フレームを送受信する際に、通信ポートと装置の識別番号との対応関係を学習することが可能である。