本発明は、転写紙等の転写材を所定のタイミングで送り出すレジスト回転部材や転写材にトナーを定着させる定着回転部材を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
従来、電子写真方式の画像形成装置では、図1に示すように、レジストローラ対16によって、所定のタイミングで搬送される転写材35に、中間転写ベルト10に担持された未定着画像を転写ローラ対19によって転写し、定着ローラ対17によって前記未定着画像を転写材35に定着し、図示しない排出ローラ対によって前記画像が定着された転写材を装置外に排出するようにしている。
定着ローラ対17は、未定着画像を転写材に対して加熱定着するが、この定着処理により定着ローラから一時的に奪われる熱は、転写材に転写された未定着画像をなす現像剤の付着量、定着ローラ対を通過する単位時間当たりの転写材の通過枚数、転写材の熱容量の違いなどによって様々に変化する。この定着ローラ対17に発生する一時的な温度変化は、ローラの外径変化となって現れる。このため、定着ローラ対17による転写材搬送速度と転写ローラ対19による記録媒体搬送速度とに差が生じる場合がある。
また、レジストローラ対16では、機内温度、特に定着部からの排熱によりレジストローラ温度が上昇し、外形変化が発生する。レジストローラの熱が転写材に伝達する現象があり、ここでもレジストローラ対を通過する転写材の枚数、転写材の熱容量の違いなどにより様々に変化する。
このようにレジストローラ対16、定着ローラ対17、転写ローラ対19それぞれの転写材搬送速度に差が生じると、画像劣化を招く場合がある。すなわち、定着ローラ対17による転写材搬送速度が転写ローラ対19による転写材搬送速度よりも速いと、定着ローラ対17と転写ローラ対19との間で転写材35が引っ張られ、転写ローラ対19による転写材35への転写時に画像の乱れなどが発生し、画像劣化を招く場合がある。一方、定着ローラ対17による転写材搬送速度が転写ローラ対19による転写材搬送速度よりも遅いと、定着ローラ対17と転写ローラ対19との間で転写材35を介して、押し合うように搬送し、転写時の画像の乱れなどが発生し、画像劣化を招く場合がある。
またカラー画像形成装置においては、プリントスピードの向上が強く望まれている。そのため、近年では、図1のように複数の像担持体の転写領域が並列配置するように構成された、いわゆるタンデム型で直接転写方式又は中間転写方式を採用したカラー画像形成装置が主流になっている。直接転写方式のタンデム型のカラー画像形成装置では、転写材を紙搬送ベルト(転写材搬送部材)の表面に担持して搬送する。そして、レジストローラ(レジスト回転部材)で送り出され紙搬送ベルトによって搬送されてくる転写材上に各像担持体上のトナー像を互いに重なり合うように順次転写することで、その転写材上にカラー画像を形成する。また、中間転写方式のタンデム型のカラー画像形成装置では、各像担持体上のトナー像を互いに重なり合うように中間転写体上に順次転写する。そして、レジストローラで送り出された転写材上に、中間転写体上のカラー画像を一括転写する。
このようなタンデム型のカラー画像形成装置においては、転写材搬送中に各像担持体上で画像を形成しているため、定着ローラ周面の移動速度(定着線速)やレジストローラの周面の移動速度(レジスト線速)が転写ベルトの表面移動速度(ベルト移動速度)と異なると、その影響が転写材に転写している画像のみならず、像担持体で形成中の画像にも影響し、カラー画像の劣化はより顕著なものとなる。
以下、4つの像担持体を備えた直接転写方式のタンデム型のカラー画像形成装置を例に挙げて、レジスト線速と紙搬送ベルトのベルト移動速度とが異なる場合に画像劣化が生じてしまう理由について説明する。なお、以下の説明では、転写ローラ19に近い順に、第1像担持体2y、第2像担持体2m、第3像担持体2c、第4像担持体2kとする。
まず、レジスト線速を紙搬送ベルトのベルト移動速度よりも大きく設定した場合について説明する。レジストローラから送り出された転写材は、中間転写ベルト10の駆動ローラ18と転写ローラ19とのニップ部の転写領域へ搬送される。この転写材と中間転写ベルトとは完全に密着し、外乱に対して全く影響を受けないのが理想的であり、そうであれば画像劣化はほとんど発生しない。しかし、実際は、外乱により転写材と中間転写ベルト10との間で数μm〜数百μm程度の滑りが起こる。このような滑りを生じさせる外乱は、主として、中間転写ベルト10のベルト移動速度と一致しないレジスト線速で駆動するレジストローラの影響である。
具体的に説明すると、レジスト線速Vrで駆動されているレジストローラ対16から転写材35が送り出されると、その転写材は、ベルト移動速度Vt(Vt<Vr)で駆動されている中間転写ベルト上に吸着する。このとき、中間転写ベルトにニップしている部分の転写材35の移動速度は、ベルト移動速度と同じVtではなく、Vta(Vt<Vta<Vr)であり、その移動速度をもって転写材の先端から画像が転写される。その後、転写材が搬送され、転写材後端がレジストローラ対16を抜けると、中間転写ベルトにニップしている部分の転写材35の移動速度は、中間転写ベルト10によって支配されるようになる。そして、転写材の後端の画像は、中間転写ベルトのベルト移動速度Vtと一致した状態で転写される。タンデム型のカラー画像形成装置においては、転写領域を通過する際の転写材の移動速度が一定でないと、画像劣化が生じてしまう。前記の例において、転写材の移動速度は、画像前半部の転写をする際にはVtaであるが、その後、画像後半部の転写をする際にはVtとなる。したがって、転写後のトナー像は、その差分だけ濃度差が発生する。
また、転写材と中間転写ベルト10との吸着力が強い場合、前記速度差によって中間転写ベルト10に加わる負荷が変化し、そのベルト移動速度が変動することもある。ベルト移動速度の変動はカラー画像の色ずれとなって劣化を招く。
以上のような現象は、転写材搬送方向における中間転写ベルトの下流側で転写材を挾持する定着ローラ等の定着回転部材の線速による外乱によっても発生する。
上述のような画像劣化を防止するために、従来、以下の技術が知られている。例えば、レジストローラによる転写材搬送速度を、紙搬送ベルト(転写ベルト)による転写材搬送速度よりも若干速い速度に設定すると共に、レジストローラを紙搬送ベルトの転写材進入口に対して、上下方向に斜めにずれた位置に配置する。このような速度設定とレジストローラの配置により、転写材を紙搬送ベルトとレジストローラとの間で撓ませて、ベルト移動速度とレジストローラによる転写材搬送速度との速度差が吸収されるようにした技術が知られている。この技術は定着回転部材と転写ベルトと間においても同様に適用可能である。
特許文献1では、用紙搬送ベルトとそのベルトに用紙を送り出すレジストローラとの線速差を検出して調整する手法を提案している。この技術は、ベルト及びレジストローラの両者に記録紙が接触しているときのベルトを支持する従動ローラ回転情報の値と、予め求めておいたベルト及びレジストローラの少なくとも一方に記録紙が接触していないときの従動ローラ回転情報の値と差が最小になるように回転駆動速度の目標値を決定する。駆動ローラ駆動手段及びレジスト回転部材駆動手段の少なくとも一方の駆動回転速度の設定を、前記決定した回転駆動速度の目標値に変更する。
しかしこの技術では、記録紙を搬送して従動ローラ回転情報から駆動速度の目標値を求める調整ステップを要する。基本的に製造工程で1度行なえばよいステップであるが、使用環境の変化が激しい場合には、頻繁にこの調整ステップを実施する必要が生じてしまう。
特許文献2では、回転軸にはすば歯車を用いて歯車のかみ合いにより発生するスラストを変位量または回転角度で測定して回転軸トルクを簡易的に検出するために、駆動軸にはすば駆動歯車が固定され、駆動軸に発生したトルクは受動歯車の回転とともにスラストを与え、このスラストは受動軸の左端に取り付けた変位検出器、または回転角度検出器により軸トルクに換算でき、電動機付自転車などの踏力による軸トルクを簡易的に検出し、電動機の付加トルク制御に有効なものである。
はすば歯車のスラスト方向に移動可能とする点は、前記特許文献2だけでなく、特許文献3、4などで公知ではあるが、これらの技術が画像形成装置のレジスト搬送装置や定着装置に利用されることは本願発明者が知る限りにおいて存在していなかった。
特開2006−195016号公報
特開平09−250958号公報
特開平06−262756号公報
特開2001−124153号公報
画像形成装置の小型化を図る場合には、紙搬送ベルトとレジストローラと間、紙搬送ベルトと定着回転部材との間の距離を短くしなければならない。そのため、両者の速度差を吸収できる分だけの転写材を撓ませるスペースを確保することが困難となる。また、厚紙等の搬送方向の撓みに対する剛性の高い転写材の場合には、紙搬送ベルトとレジストローラとの間で撓ませるようにしても、紙の剛性により上述した外乱が紙搬送ベルトに伝達される。さらに、温湿度等の使用環境によってレジストローラの径が変化したり、経時的な磨耗や紙紛等の付着による転写材との間の摩擦力が変化したりすることによって、レジストローラによる転写材搬送速度が変化することがある。そのため、当初設定された紙搬送ベルトの移動速度とレジストローラによる転写材搬送速度とを長期間維持することは困難である。
上述のような、転写材を撓ませて搬送するようにしたときの問題を解決するために、特許文献1では、転写ベルト(紙搬送ベルト)の回転速度を検出する検出手段と、記録紙の搬送速度を検出する検出手段とを用いた手法が提案されている。この手法では、転写ベルトの移動速度及びレジストローラによる転写材搬送速度を検出し、レジストローラによる転写材の搬送速度が、転写ベルトの移動速度よりも所定速度差を保って若干速くなるように、レジストモータの回転速度を駆動制御する。しかしながら、特許文献1に提案された2つの検出手段を用いて検出された速度で比較するには、それぞれの検出手段と、その結果に応じて高精度に駆動源の速度を調整する機構が必要となる。
本発明は、以上の背景にかんがみてなしたものであり、その目的とするところは、製品個々の部品精度や温度変化によらず、中間転写ベルトとレジストローラの転写材搬送トルク又は定着ローラの転写材搬送トルクが一定の状態を安定して維持することにより、転写材を介した過剰な引っ張りや押し合いによる変動要因がなく、高品質な画像形成が可能な画像形成装置を提供することである。
本発明の画像形成装置のうち請求項1に係るものは、前記目的を達成するために、圧接する2つの回転体の接触部分を、該回転体の回転により所定の長さをもつ転写材を搬送する搬送装置を2つ以上有する画像形成装置において、
該2つの搬送装置は、それぞれの接触部分間の距離が、該転写材の搬送方向の長さよりも短い位置関係に設置されており、
該回転体の回転駆動力を発生するひとつ以上駆動源と、それぞれの搬送装置には該駆動源によって発生される回転駆動力をそれぞれの搬送装置の該回転体に伝達する回転伝達機構を有し、
少なくとも前記回転伝達機構の一つは、前記駆動源の回転駆動力を回転体に伝達する少なくとも一対の互いに噛合った第一及び第二のはすば歯車を備えており、
前記第一及び第二のはすば歯車は、該転写材搬送時に他の搬送装置との線速差に起因して回転伝達機構の負荷トルクが増大する際に、該第一及び第二のはすば歯車に作用するスラスト方向の力により第一のはすば歯車に対して第二のはすば歯車がその回転軸方向に沿って移動されるように、それぞれ設けられており、
前記第二のはすば歯車の一方の端面に向かって付勢する第一の弾性部材と、前記第二のはすば歯車の他方の端面に向かって付勢する第二の弾性部材を有するとともに、
前記第一のはすば歯車の前記回転軸方向における長さが、前記第二のはすば歯車の前記回転軸方向における長さよりも長い、
ことを特徴とする。
請求項2に係るものは、転写材にトナー画像を2つの回転体で圧接搬送し、転写する転写搬送装置と、転写部に転写材を所定のタイミングで搬送するレジスト搬送装置を有する画像形成装置において、
前記転写搬送装置と前記レジスト搬送装置は、それぞれの接触部分間の距離が、該転写材の搬送方向の長さよりも短い位置関係に設置されており、
前記レジスト搬送装置の回転伝達機構は、駆動源の回転駆動力を回転体に伝達する少なくとも一対の互いに噛合った第一及び第二のはすば歯車を備えており、
前記第一及び第二のはすば歯車は、該転写材搬送時に転写搬送装置との線速差に起因して回転伝達機構の負荷トルクが増大する際に、前記第一及び第二のはすば歯車に作用するスラスト方向の力により第一のはすば歯車に対して第二のはすば歯車がその回転軸方向に沿って移動されるように、それぞれ設けられており、
前記第二のはすば歯車の一方の端面に向かって付勢する第一の弾性部材と、前記第二のはすば歯車の他方の端面に向かって付勢する第二の弾性部材を有するとともに、
前記第一のはすば歯車の前記回転軸方向における長さが、前記第二のはすば歯車の前記回転軸方向における長さよりも長い、
ことを特徴とする。
請求項3に係るものは、転写材にトナー画像を2つの回転体で圧接搬送し、転写する転写搬送装置と、転写された転写材上のトナー画像を2つの回転体で圧接搬送して定着する定着搬送装置を有する画像形成装置において、
前記転写搬送装置と前記定着搬送装置は、それぞれの接触部分間の距離が、前記転写材の搬送方向の長さよりも短い位置関係に設置されており、
前記定着搬送装置の回転伝達機構は、駆動源の回転駆動力を回転体に伝達する少なくとも一対の互いに噛合った第一及び第二のはすば歯車を備えており、
第一及び第二のはすば歯車は、該転写材搬送時に転写搬送装置との線速差に起因して回転伝達機構の負荷トルクが増大する際に、
該第一及び第二のはすば歯車に作用するスラスト方向の力により第一のはすば歯車に対して第二のはすば歯車がその回転軸方向に沿って移動されるように、それぞれ設けられており、
前記第二のはすば歯車の一方の端面に向かって付勢する第一の弾性部材と、前記第二のはすば歯車の他方の端面に向かって付勢する第二の弾性部材を有するとともに、
前記第一のはすば歯車の前記回転軸方向における長さが、前記第二のはすば歯車の前記回転軸方向における長さよりも長い、
ことを特徴とする。
請求項4に係るものは、転写材にトナー画像を2つの回転体で圧接搬送し、転写する転写搬送装置と、転写された転写材上のトナー画像を2つの回転体で圧接搬送して定着する定着搬送装置と、転写部に転写材を所定のタイミングで搬送するレジスト搬送装置を有する画像形成装置において、
該転写搬送装置と該定着搬送装置は、それぞれの接触部分間の距離が、該転写材の搬送方向の長さよりも短い位置関係に設置されており、
該定着搬送装置とレジスト搬送装置の回転駆動力を発生する1つの駆動源と、それぞれの搬送装置には該駆動源によって発生される回転駆動力を該回転体に伝達する回転伝達機構を有しており、
前記定着搬送装置及び前記レジスト搬送装置の回転伝達機構は、前記駆動源の回転駆動力を回転体に伝達する少なくとも一対の互いに噛合った第一及び第二のはすば歯車を備えており、
前記第一及び第二のはすば歯車は、該転写材搬送時に転写搬送装置との線速差に起因して回転伝達機構の負荷トルクが増大する際に、前記第一及び第二のはすば歯車に作用するスラスト方向の力により前記第一のはすば歯車に対して第二のはすば歯車がその回転軸方向に沿って移動されるように、それぞれ設けられており、
前記第二のはすば歯車の一方の端面に向かって付勢する第一の弾性部材と、前記第二のはすば歯車の他方の端面に向かって付勢する第二の弾性部材を有するとともに、
前記第一のはすば歯車の前記回転軸方向における長さが、前記第二のはすば歯車の前記回転軸方向における長さよりも長い、
ことを特徴とする。
請求項5に係るものは、請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記第二のはすば歯車の回転軸方向の任意の位置に移動及び固定可能な弾性部材保持機構を有することを特徴とする。
請求項6に係るものは、請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記第二のはすば歯車の回転軸方向に沿う移動により、該回転軸方向の任意の位置に該第二のはすば歯車が到達したことを認識する検知手段を有し、
該検知手段により前記第二のはすば歯車の到達を検知すると、前記駆動源の平均回転速度を変更することを特徴とする。
請求項7に係るものは、請求項1から6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記第二のはすば歯車の回転軸方向の移動を一時的に規制する規制手段を有することを特徴とする。
請求項8に係るものは、請求項7に記載の画像形成装置において、前記第二のはすば歯車の移動を一時的に規制する時間を、転写材の搬送経路上に設置された転写材検出手段の出力に基づいて行うことを特徴とする。
本発明によれば、2つの転写材搬送装置間の線速差によって発生する転写材を介した押し合い、引っ張り合いによる負荷トルク変動に対して、負荷トルク変動に応じて発生するはすば歯車のスラスト力によりはすば歯車スラスト方向に移動可能とすることによって、過剰な負荷トルク変動に対し、負荷トルク変動を吸収する(負荷トルク変動を逃がす)ようにはすば歯車が移動することによって、転写材をより安定した速度で搬送することが可能となる。
以下本発明を実施するための最良の形態を、図に示す実施例を参照して説明する。
本発明の実施対称となる画像形成装置の例を再び図1を参照して説明する。図1に示す本例の画像形成装置は、定着ローラ17、転写ローラ19、レジストローラ16の合計3対の転写材にニップして搬送力を伝達するローラ対搬送機構があり、これらのローラ対は1枚の転写材に複数のローラ対がニップする短い間隔で設置されている。また、このローラ対が転写材を搬送するための回転駆動力を発生する図示しないモータが設置されている。モータは、各ローラ対共通の駆動源として1個、または、各ローラ対の駆動源として複数個を設置してもよい。本発明の特徴部分は、モータの回転駆動力をローラ対に伝達する回転伝達機構9である。
図2は一例として、定着ローラ17への回転伝達機構を示す。モータの回転駆動力を定着ローラ17に伝達する一対の互いに噛合ったはすば歯車31及び32があり、歯車32は、定着ローラ17の回転軸に連結、又は一体成形された回転軸34に回転駆動力を伝達する。はすば歯車32は、回転軸34に対し回転軸方向Aに移動自在に嵌合され、回転軸34は、画像形成装置の筐体41に固定された軸受33を介して回転自在に支持されている。はすば歯車32の回転軸方向Aに沿う移動を弾性的に阻止する弾性手段36が設置されている。本例では弾性手段としてコイルばねを使用した。弾性手段36の一端は、はすば歯車32の一方の端面37に当接し、他端が定着ローラ17に固定されている。
定着ローラ17で転写材搬送中において、転写ローラ19との線速差によって生じる定着ローラ17の負荷トルク変動に応じて、はすば歯車31及び32に作用するスラスト方向Aの力により、はすば歯車31に対して、はすば歯車32がその回転軸方向Aに沿って移動する。はすば歯車31は、図示しないモータ出力軸に連結、又は一体成形された回転軸38に固着されており、回転軸38は筐体41に固定された軸受39を介して回転自在に支持されている。モータは筐体に取り付けられており、はすば歯車31に作用するスラスト方向Aの力は、軸受39により受容されるようになっている。一方、はすば歯車32は、回転軸方向Aに移動自在となるように回転軸34のスプライン40に嵌合され、はすば歯車32と回転軸34とが互いにスプライン連結されている。これによって、はすば歯車32に作用するスラスト方向Aの力と弾性手段36の圧接力が均衡する位置にはすば歯車32はスライドする。本例では、はすば歯車32と回転軸34間のトルク伝達の安定性を考慮して、連結方法をスプライン連結としたが、この他の凹凸を利用した連結としてもよい。また、はすば歯車32を回転軸34に固定し、はすば歯車31を回転軸38に対して回転軸方向に移動自在な構成としてもよい。
以上のように形成された回転伝達機構9は、画像形成装置の例えば定着ローラ対とレジストローラ対の伝達機構に設置される。図4は、本実施形態の模式図である。回転伝達機構9aは、定着ローラ対の伝達機構として設置されており、回転伝達機構9bは、レジストローラ対の伝達機構として設置されている。回転伝達機構9a、9bのはすば歯車対のそれぞれの減速比は、定着ローラ17とレジストローラ16がほぼ同一線速となるように設定されている。回転伝達機構9a、9bのはすば歯車対とは別に歯車対を連結して所望の減速比を実現してもよい。定着ローラ17やレジストローラ16の対向側ローラは、定着ローラ、レジストローラに加圧されており、同一線速で回転する。または、対向するローラ軸にも歯車を設けて、回転伝達するようにしてもよい。2次転写部となる駆動ローラ18はモータ44で一定速度に駆動されており、転写ローラ19が図1に示したように中間転写ベルト10を介して駆動ローラ18に圧接している。
本実施例のように、回転伝達機構9をレジストローラ16、2次転写部(駆動ローラ18)、定着ローラ17のうち、レジストローラ16と定着ローラ17に設置した理由を以下に述べる。回転伝達機構9は、ローラが設置された回転軸34にかかる過剰な負荷トルク変動を吸収する機能を有する。過剰な負荷トルク変動は、基準となるローラ対に対し回転伝達機構9を設置したローラの線速が異なる場合に、両ローラ対が転写材をニップして引っ張り合い、又は押し合う時に発生する。本実施形態では、基準のローラ対を駆動ローラ18と転写ローラ19対とし、このローラ対の線速に対し、レジストローラ対と定着ローラ対の線速が異なることによって生じる負荷トルク変動を回転伝達機構9a、9bが吸収する。
基準となるローラ対は、定着ローラ対やレジストローラ対とすることも可能だが、2次転写部の駆動ローラが好ましい。回転伝達機構9は負荷トルク変動を吸収する一方、ローラの線速も変化する。画像を転写材に転写する2次転写部の駆動ローラ軸に回転伝達機構9を設置した場合。駆動ローラの線速変化は搬送しているベルト上の画像形成に悪影響を及ぼす。
本実施例で説明すると、2次転写部の駆動ローラ18の線速変動が発生すると、書き込み装置1から感光体ドラム2k、2c、2m、2yへ書き込まれ、感光体ドラム2k〜2yから中間転写ベルト10へ1次転写している画像部分の濃度ムラが発生してしまう。よって、駆動ローラ18は、負荷トルク変動に対して一定線速で駆動することが望ましいため、回転伝達機構9を設置せずに基準ローラ対として、回転伝達機構9のような構成は設置しない。他のローラ対に回転伝達機構9を設置する。
回転伝達機構9a、9bの回転軸38にはそれぞれ共通駆動源のモータ43が連結されている。モータ2個で、それぞれ、別の駆動源を設けてもよい。本実施例では、低コスト化のためにモータ43で2つのローラ対を駆動する構成を採用している。また、レジストローラ対側では、モータ43の回転駆動力の伝達及び遮断を目的とするクラッチ機構46を設けている。これは、レジストローラは、所定のタイミングで転写材35を2次転写部へ搬送することを目的に設置されたローラであるため、レジストローラの起動及び停止を所望のタイミングで行なう必要があるためである。これによって、図示しない給送機構から搬送された転写材を、所定のタイミングでクラッチ46のON動作で2次転写部に搬送し、転写材上の画像転写位置が所望の位置となるようにしている。
クラッチ機構46は、定着ローラ側にも設置してもよい。定着ローラ側のクラッチ機構は、搬送不良により転写材が停止した場合の転写材除去の容易性を実現する。転写材がレジストローラ16または定着ローラ17にニップ中に停止し、停止した転写材を引き抜こうとするとき、回転伝達機構を介してモータ43までが連結していると非常に大きな力を要する。そこで、ローラからモータ間にクラッチ機構を設け、力の伝達を遮断し容易に引き抜くことを可能とする。クラッチ機構は、ローラとモータ間の伝達経路上のどの位置でも構わない。制御基板45は、モータ43へ駆動信号を送信する。制御基板45では要求されたタイミングで、所定の回転速度回転するようにモータ43へ駆動信号を送信する。モータ43は、ステッピングモータやDCサーボモータが使用されており、制御基板45からの駆動指令に応じて、一定の回転角速度で回転する。
なお以下では定着ローラ側回転伝達機構9aの各部品番号にaを添えて、レジストローラ側ではbを添えて説明する。
転写材35上に画像を転写及び定着して排紙するべく、モータ43が動作されると、回転伝達機構9aの回転軸38aが回転し、互いに噛合ったはすば歯車31a及び32aを介して回転軸34aに伝達される。回転軸34aが回転すると定着ローラ17が回転され、搬送されてくる転写材35に対し定着動作が行なわれる。一方、回転伝達機構9bは、所定のタイミングでクラッチ機構46がONして駆動力を伝達すると、回転軸38bが回転し、互いに噛合ったはすば歯車31b及び32bを介して回転軸34bに伝達される。回転軸34bが回転するとレジストローラ16が回転され、転写材35を2次転写部に送り出す。そして、転写材35は2次転写部に到達して駆動ローラ18と転写ローラ19のニップ部に搬送される。
例えば、製造誤差によりレジストローラ16の直径が狙いより大きく、レジストローラ16の線速が駆動ローラ18の線速よりも速い場合、レジストローラ16が2次転写部へ転写材35を押し込むような状態となる。転写材の剛性が低い場合は、レジストローラ16と駆動ローラ18の搬送量の差に応じて転写材35が撓むが、転写材の剛性が高い場合には、駆動ローラ18は一定速度で回転するように制御されており、レジストローラ16と駆動ローラ18が転写材35を介して押し合う状態が続く。レジストローラ16に回転力を伝達する回転伝達機構9bの回転軸34bの負荷トルクが増大する。
この時、はすば歯車31bへの噛合いによりはすば歯車32bに生じるスラスト方向Aの力が発生し、図3に示すように、はすば歯車31bに対してはすば歯車32bがその回転軸方向Aに沿って、図中右方向にコイルばねの弾性手段36を圧縮するように移動する。
この移動により負荷トルクの増加分が吸収される。つまり、負荷トルクの増加に伴い、はすば歯車32bが移動し、レジストローラ16の回転速度は低下する。常に一定速度で回転するモータ43とそれに連結した回転軸38b、はすば歯車31bに対し、はすば歯車32bのスラスト方向Aの移動により回転軸34bの回転速度は変化する。
本実施形態では、はすば歯車32が図3で右方向に移動する時、回転軸34bの回転速度は低下し、はすば歯車32が左方向に移動する時は、回転速度が増加する。このはすば歯車32bのスラスト方向の移動は、転写材35がレジストローラ16と駆動ローラ18の両方にニップしている間に発生する。転写材35の後端がレジストローラ16を抜けると、増加した負荷トルクは無くなり元の負荷トルクに戻る。転写材35を搬送中に移動したはすば歯車32bは、弾性手段36の加圧力で回転軸方向Aの元の位置に移動する。元の位置とは、図2に示すはすば歯車32bの位置であり、この位置は、レジストローラ16対を回転するための負荷トルクによるスラスト方向Aの力と弾性手段36の加圧力とが均衡した位置である。これに加えて、レジストローラ対のみに転写材35がニップして搬送する時には、転写材を搬送する分の負荷トルクが増加して、スラスト方向Aの弾性手段36を圧縮する方向に少し移動する。転写材35を搬送する際の負荷トルクの増加量は、先述した線速差による負荷トルク変動に対して非常に小さいため、この時のはすば歯車32bの移動量は少ない。
また、レジストローラ16の線速が駆動ローラ18の線速よりも遅い場合、はすば歯車32bは先述した方向とは逆の方向に移動する。これは、転写材35を介して、レジストローラ16が駆動ローラ18に引っ張られるように回転し負荷トルクが減少するためである。
定着ローラ17側の回転伝達機構9aの動作も同様である。定着ローラ17の線速が駆動ローラ18の線速よりも速い場合、定着ローラ17の負荷トルクが増大し、はすば歯車32aは、スラスト方向Aの図中右方向に移動する。また、定着ローラ17の線速が駆動ローラ18の線速よりも遅い場合、定着ローラ17の負荷トルクが減少し、はすば歯車32aは、スラスト方向Aの図中左方向に移動する。
次に、定着ローラ17、レジストローラ16にかかる負荷トルク変動の実例を示し、本発明の回転伝達機構9の動作とその効果について具体的に説明する。
定着ローラ17の線速が駆動ローラ18の線速(2次転写部の線速)よりも速い場合の、定着ローラ17の回転軸にかかる負荷の変動を計測した結果を図5に示す。本計測では、定着ローラ17の伝達機構に本発明の回転伝達機構9は設置されていない構成、または、はすば歯車32のスラスト方向Aの移動が規制された状態で計測を行った。
図5の時間帯52は、モータ43が起動し、定着ローラ17が回転を開始し、所望の回転速度で回転している時間帯である。この時、転写材を搬送していない状態の定着ローラ17は、負荷トルク約100mN・mが回転軸にかかっている。時間帯53は、2次転写部と定着ローラ17に転写材35がニップしている時間帯である。
定着ローラ17は、2次転写部よりも速い線速で転写材35を搬送するため、2次転写部にニップしている転写材35を引っ張る状態で負荷トルクが増加する。ニップ部でのローラと転写材との滑りが無い場合、この負荷トルクは右肩上がりに上昇し、転写材の破断や伝達歯車の破損が発生する。しかし、実際には、接触部のすべりが発生する。本実施形態では、2次転写部の中間転写ベルト10と転写材35との摩擦力が最も弱く、滑りが生じる。2次転写部でトナー画像を転写材35に転写しているため、トナーが潤滑材として働き、中間転写ベルト10と転写材35とで滑りを発生させる。この時間帯の負荷トルクは上昇せずに、ある一定範囲で変動する。本計測では、約250mN・mの負荷トルクであった。
このような、負荷トルクの上昇による2次転写部での転写材35と中間転写ベルト10の滑りは画像劣化につながる。トナー画像は崩れ、線画が不明瞭になってしまう。時間帯54は、2次転写部を転写材35の後端が抜けて、定着ローラ17のみにニップしている時間帯である。時間帯52と比較して転写材35を搬送するために若干の負荷トルクの増加がみられるが、負荷トルク約100mN・mに戻っている。時間帯53の最初に見られるショック的な変動51については、膜厚が大きい転写材を搬送した際に顕著に発生する現象で、その詳細については、後述(実施例2で説明)する。
回転伝達機構9aでは、時間帯52の一定の負荷トルク状態において、はすば歯車32aのスラスト方向の位置は、弾性手段36の加圧力と定着ローラ17の駆動トルクによるスラスト力との平衡位置である。時間帯53で負荷トルクが増加すると、はすば歯車32aはスラスト方向Aの図2中右方向に移動する。時間帯35の間、この移動は常に起こり、はすば歯車32aは右方向に移動を続ける。この移動により負荷トルクの増加を吸収する。トルク増加分の吸収とは、本実施形態では2次転写部において、中間転写ベルト10の線速に対し、転写材35をより速い線速で引っ張る過剰な搬送力を吸収する意味をもつ。負荷トルクの増加に伴い、一定回転速度で回転するはすば歯車31aに対し、はすば歯車32aがスラスト方向Aに移動することで、はすば歯車対の回転伝達トルクが低下し、回転軸34aの回転速度は低下する。回転軸34aの回転速度の低下は、定着ローラ17と2次転写部の線速を一致させる方向であり、2次転写部での滑りが抑制され、高画質な転写画像が得られるようになる。時間帯54では、負荷トルクの増加は無くなり、はすば歯車32aは、弾性手段36の加圧力により、時間帯52の位置と同じ位置に戻り、次の転写材35ニップ時の負荷トルク変動に備える。
次に、定着ローラ17の線速が駆動ローラ18の線速(2次転写部の線速)よりも遅い場合の、定着ローラ17の回転軸にかかる負荷の変動を計測した結果を図6に示す。時間帯55は、2次転写部と定着ローラ17に転写材35がニップしている時間帯である。定着ローラ17は、2次転写部よりも低い線速で転写材35を搬送するため、2次転写部にニップしている転写材35に定着ローラ17が回転方向に押される負荷トルクが発生する。つまり、定着ローラ回転軸34aの負荷トルクが減少する。実際には定着ローラと2次転写部間において転写材の撓みが生じた後、2次転部での転写材35と中間転写ベルト10との滑りが発生し、図6に示すように、緩やかに負荷トルクが減少した後、一定の負荷トルクとなる。
回転伝達機構9aでは、時間帯55で負荷トルクが減少すると、はすば歯車32aはスラスト方向Aの図2中左方向に移動する。時間帯35の間、この移動は常に起こり、はすば歯車32aは左方向に移動を続ける。この移動により負荷トルクの減少を補足する。トルク減少分の補足とは、本実施形態では2次転写部において、中間転写ベルト10の線速に対し、転写材35をより遅い線速のために不足している搬送量を増加させる意味をもつ。負荷トルクの減少に伴い、一定回転速度で回転するはすば歯車31aに対し、はすば歯車32aがスラスト方向Aの左方向に移動することで、回転軸34aの回転速度は増加する。回転軸34aの回転速度の増加は、定着ローラ17と2次転写部の線速を一致させる方向であり、2次転写部での滑りが抑制され、高画質な転写画像が得られるようになる。
同様に、レジストローラ16の線速が駆動ローラ18の線速(2次転写部の線速)よりも速い場合の、レジストローラ16の回転軸にかかる負荷の変動を計測した結果を図7に示す。本計測も、レジストローラ16の伝達機構に本発明の回転伝達機構9は設置されていない構成、または、はすば歯車32のスラスト方向Aの移動が規制された状態で計測を行なった。図7の時間帯57は、モータ43が起動し、レジストローラ16が回転を開始し、所望の回転速度で回転している時間帯である。この時、転写材を搬送していない状態のレジストローラ16は、負荷トルク約40mN・mが回転軸にかかっている。時間帯58は、2次転写部とレジストローラ16に転写材35がニップしている時間帯である。レジストローラ16は、2次転写部よりも速い線速で転写材35を搬送するため、2次転写部にニップしている転写材35を押し込む負荷トルクが発生する。
実際には、レジストローラ16と2次転写部との間で、転写材35は撓みながら搬送される。転写材35の撓み方で、この時間帯の負荷トルク変動は変化する。本計測では、最大約100mN・mまで負荷トルクが増加した。このような、負荷トルクの上昇でも同様に転写画像の劣化は発生する。時間帯59は、転写材35の後端がレジストローラ16を通過した時間帯である。時間帯57の最初に見られるショック的な変動56については、後述する。
次に、レジストローラ16の線速が駆動ローラ18の線速(2次転写部の線速)よりも遅い場合の、レジストローラ16の回転軸にかかる負荷の変動を計測した結果を図8に示す。時間帯62は、2次転写部とレジストローラ16に転写材35がニップしている時間帯である。レジストローラ16は、2次転写部よりも低い線速で転写材35を搬送するため、2次転写部にニップしている転写材35に、レジストローラ16が回転方向に引っ張られて負荷トルクが減少する。つまり、レジストローラ回転軸34bの負荷トルクが減少する。実際には、2次転部での転写材35と中間転写ベルト10との滑りが発生し、図8に示すように、ある範囲の負荷トルク変動となる。
このように転写材35がレジストローラ16と2次転写部にニップしている時の負荷トルクの増加、減少に対する回転伝達機構9bのはすば歯車32bの動きは、先述した定着ローラ17の回転伝達機構9aと同様である。負荷トルクが増加すると、はすば歯車32bはスラスト方向Aの図2中右方向に移動する。負荷トルクが減少すると、はすば歯車32aはスラスト方向Aの図2中左方向に移動する。その結果、回転軸34bの回転速度がレジストローラ16と2次転写部の線速を一致させるように変化し、2次転写部での滑りが抑制され、高画質な転写画像が得られるようになる。
次に、回転軸34にかかる負荷トルクと、その時、はすば歯車32のスラスト方向Aに発生する力の関係について説明する。この関係は、弾性部材36の設計において重要な特性となる。設計したはすば歯車対における負荷トルクと、スラスト方向Aに発生する力(以下、並進力という。)の関係を求める。転写材35搬送時に発生する負荷トルク変動を計測することで、はすば歯車32の並進力が得られ、効果的に、はすば歯車がスラスト方向Aに移動するように弾性部材36の加圧力を設定する。
図9は、はすば歯車対が噛合う際の力の関係を示す説明図である。はすば歯車はねじれ角βで設計及び製造されている場合、噛合い力Ft、回転方向の駆動力Fθ、軸方向の並進力Fzは、図9の関係となる。はすば歯車のねじれ角βによって、噛合い力Ftが回転方向の駆動力Fθと軸方向の並進力Fzに分けられ、これらの関係は、Fz=Fθ・tanβとなる。つまり、負荷トルク増加時には、駆動力Fθが大きくなり、それに伴い、並進力Fzも大きくなる。また、はすば歯車では、複数の歯が順次に噛合ってトルクを伝達するため、この並進力は常に発生している。
この関係式と、はすば歯車32がスラスト方向Aに移動する際のスプライン40の連結部の摩擦係数を考慮して、はすば歯車32の回転軸34にかかる負荷トルクとはすば歯車32の並進力の関係を求める。負荷トルクと並進力の関係を実験データと関係式を用いた近似で導出した例を図10に示す。先述したように、定着ローラ線速が2次転写部よりも速い場合の負荷トルク変動は図5である。時間帯53の負荷トルクは約250mN・mであり、この負荷トルクに対してはすば歯車32がスラスト方向に移動するように弾性手段36の加圧力を設計する。時間帯53の負荷トルクをTfとして、図10から、はすば歯車32の並進力Hfを導出する。弾性手段36の加圧力は、この並進力Hfよりも弱く設計する。また、図5の時間帯52および54の負荷トルク約100mN・mをTf‘として、図10から、はすば歯車32の並進力Hf’を導出する。弾性手段36の加圧力は、この並進力Hf‘から、時間帯52及び54において、はすば歯車32が平衡してスプライン連結上で停止するように設計する。このように設計することで、定着ローラと2次転写部に転写材がニップしているときに発生する負荷トルク変動に対して、はすば歯車32がスラスト方向に移動して、所望の効果が得られるようになる。また、時間帯53の負荷トルク変動量は、各ローラの製造公差や転写材の膜厚などによって変化する。そのため、設計時には図10の幅65のようにトルク変動範囲から、はすば歯車32並進力の変動範囲66を求めて、弾性部材36の加圧力を設計する。
また、図6に示す定着ローラ線速が2次転写部よりも遅い場合の負荷トルクの減少については、時間帯52及び54において、はすば歯車32が平衡してスプライン連結上で停止するように設計することで、同様の効果が得られる。
図11に示すように異なる弾性部材36と36‘を用意し、はすば歯車32の側面を両側から加圧する機構としてもよい。これによって、負荷トルクの増加と減少の両方に対応したより高精度な加圧力設計が可能となる。弾性部材36’は、回転軸34に固定されたフランジ47に固定されている。
また図15に示すように弾性部材36の加圧力を調整する機構を設けても良い。弾性部材36の一端を回転部材81に固定する。回転部材81は、はすば歯車32と同様にスプライン40の連結部上をスラスト方向に移動可能で、回転軸34と伴に回転する。接触部材82は、回転部材81の側面部に接触してスラスト方向の移動を規制している。回転部材81のスラスト方向の位置は、はすば歯車83の回転によって調整される。このような機構により、はすば歯車32にかかる弾性部材36の加圧力を調整することが可能となり、環境や経時、製品固体差が大きい場合にも対応することが可能である。
さらに、図14に示すようにリミットスイッチ85を設置してもよい。転写材35の搬送中の負荷トルク変動により、はすば歯車32がスラスト方向に移動し、スプライン連結40の端部に到達すると、期待する効果は得られなくなってしまう。そこで、はすば歯車32がスプライン連結部の端部に到達したことを検知する手段を設ける。リミットスイッチ85は、筐体固定され、はすば歯車32がセンサ部に到達すると、リミットスイッチの作動棒に接触してスラスト方向に押し込むことでリミットスイッチが動作して、はすば歯車32の到達を検知する。はすば歯車32が端部に到達する状態とは、2次転写部とレジストローラ16や定着ローラ17の線速差が想定以上となっており、大きな負荷トルク変動が発生している状態である。リミットスイッチ85の動作信号を受信すると、制御基板45は負荷トルクが減少するようにモータ43の平均速度を変更して調整する。または、異常として図示じない画像形成装置本体に送信する。
次に、図3に示した、はすば歯車32のスラスト方向の移動量Bと、それに基づいたスプライン連結幅Cの設計方法について説明する。はすば歯車32は、図5に示した負荷トルクが変動している時間帯53において、常にスラスト方向に移動していく。図3に示したスラスト方向移動量Bは、以下に説明するように試算することが可能である。試算したスラスト方向移動量に基づいて、はすば歯車32のスラスト移動を可能とするスプライン連結の幅Cを設計する。
以下に定着ローラ側の回転伝達機構9aについて説明するが、レジストローラ側についても同様である。下記表1は、歯車32aのスラスト方向の移動量(表中「歯車スライド量」)を算出した結果と、算出に用いた各設計数値を示している。
まず、負荷トルク変動の要因である定着ローラ17と2次転写部の線速差を求める。この線速差は、以下に挙げる各部品の寸法公差と熱膨張から算出される。部品寸法としては、定着ローラ17の直径、駆動ローラ18の直径、中間転写ベルト10の公差である。また、定着ローラと駆動ローラの対向ローラの加圧力と各ローラの表層ゴムの変形量も考慮することが望ましい。本実施形態では、定着ローラ17と2次転写部の線速差は、最大で1.2%生じると算出された。定着ローラ17の線速が2次転写部より1.2%だけ速い場合、A3サイズの転写材35縦(長さ420mm)を搬送する際には、約5mmの搬送量の差が生じる。つまり、2次転写部がA3サイズ420mmの転写材を搬送する際に、定着ローラは、約5mm分多く、425mm分回転する。転写材35に撓みやローラとの滑りが無いと仮定すると、回転伝達機構9aのはすば歯車32aは、この定着ローラの過剰な回転量(円周5mm分)を吸収するようにスラスト方向に移動する。定着ローラ17の直径が30mm、はすば歯車32のピッチ円直径が40mm、はすば歯車のねじれ角βが10度(0.17rad)のとき、定着ローラの周上5mmの回転に相当するはすば歯車32aのスラスト方向の移動量は、過剰な搬送量×はすば歯車のピッチ円直径/定着ローラの直径/tan(ねじれ角)より算出され、38mmが求められる。これが、A3サイズの転写材35を搬送した際のはすば歯車32のスラスト方向の最大移動量となる。スプライン連結幅Cは、最大移動量を確保できる幅に設計される。
本実施例では、搬送する転写材の最大サイズをA3と想定して、はすば歯車32の最大移動量を算出した。最大サイズが異なる場合には、別途算出する必要がある。転写材35の長さが大きくなれば、より広いスプライン連結幅Cが必要となる。本発明はロール状のエンドレスな転写材には対応することができないため、転写材を適当な長さでカットして搬送する必要がある。
図2に示したような実施例1においては、膜厚が大きい転写材35を搬送した際に、膜厚が大きい転写材35がレジストローラ16や定着ローラ17のニップ部に突入する際に大きな負荷トルクが発生し、はすば歯車32がスラスト方向に移動してしまうことがある。本発明においてはすば歯車32に要求する機能は、2つのローラ対に転写材35がニップしている際に発生する負荷トルク変動を吸収するようにスラスト方向に移動することである。先に示した図5から図8の負荷トルク変動は、膜厚が約300μmの転写材を使用した計測値である。転写材35が定着ローラ17のニップ部に突入する際に定着ローラ17の回転軸にかかる負荷トルクの変動を示しているのが、図5及び図6の変動51である。また、レジストローラ16の場合を示すのが図7及び図8の変動56である。どちらも、加圧されているローラニップ部に転写材35が進入する際に、ローラを転写材35の膜厚分だけ押上げて進入するために必要となるトルクである。転写材35の膜厚が大きいほど変動51及び56は顕著となる。
このような、転写材35突入時の負荷トルク変動にはすば歯車32が反応してスラスト方向に移動してしまうと、既にはすば歯車32が移動している状態となるため、転写材35がニップ時の負荷トルク変動に対し、十分に機能できない可能性がある。また、転写材35突入時の負荷トルク変動に対して、はすば歯車32がスラスト方向に移動すると同時に、ローラ回転速度が低下し、定着ローラ17突入時には、2次転写部での転写画像にブレが生じ、レジストローラ16突入時には、2次転写部への転写材35の到着時間が遅れ、画像先頭位置に誤差が生じてしまう。
これについて、転写材35がレジストローラ16や定着ローラ17のニップ部に突入する際に、一時的にはすば歯車32がスラスト方向に移動しないように規制部材を設けた実施例を図12に示す。なお以下では、図2で示した構成に追加された構成のみを説明する。
スラスト方向規制手段は、転写材35がニップ部に進入する時に一時的にはすば歯車32をスラスト方向に規制する機構である。この規制手段は、回転軸にかかる負荷トルクが減少してはすば歯車32が移動する方向には自由に移動し、負荷トルクが増加するときにはロックされるワンウェイクラッチを採用する。図12では、ラチェット式ワンウェイクラッチを採用している(ローラ式ワンウェイクラッチを用いてもよい)。はすば歯車32の側面に接触してはすば歯車32のスラスト方向の移動に従い、スラスト方向に移動する接触部材71がある。接触部材71には、第1のクラッチプレート72が固定されている。第1クラッチプレート72と対向する位置で、第1クラッチプレート72に対して接離自在な第2のクラッチプレート73が配置されている。第2クラッチプレートは、図示しない筐体に固定されたプレートガイド部材74によって、図中鉛直方向に移動可能で、水平方向に固定されている。
また、第2クラッチプレートは、クラッチ付勢手段75によって、第1クラッチプレートに押し付けように付勢される。第1、第2クラッチプレート72、73の対向面には、のこぎり形状の突起が形成されており、噛合うことでロック状態となる。このクラッチ機構は、はすば歯車32が負荷トルクが増加した際に移動する方向に対し規制し、ロックする。一方、負荷トルクが減少する際に移動する方向に自在としている。第2クラッチプレート73の突起部を第1クラッチプレートの突起部から強制的に離すリリース機構として、図示しないプル型のソレノイドを用いている。ソレノイドは、図示しない筐体に固定され、第2クラッチプレートをクラッチ付勢部材に抗してソレノイド側に移動させる。これによって、第1クラッチプレートのロック状態が解除される。プレート付勢手段としては、圧縮バネのほか、板バネ、ゴム材を利用してもよい。
はすば歯車32のスラスト方向規制手段の動作について説明する。本実施例では、一時的にスラスト方向の移動を規制するタイミングを、図13に示す位置に設置した転写材35の検知センサ76及び77の出力を基に決定する。定着ローラ17側では、定着ローラ17の下流側近傍に設置された検知センサ76の出力を基に、1枚目の転写材35を搬送する前、または1枚目以降の転写材35の後端を検知するとソレノイドが動作し、回転伝達機構9aの接触部材71aはスラスト方向にロックされ、1枚目又は次の転写材35の先端突入時には、確実にはすば歯車32aはスラスト方向にロックされた状態となる。次に、検知センサ76で転写材35の先端を検知すると、ロックが解除されてはすば歯車32aはスラスト方向に自在に移動する。
一方、レジストローラ16側では、2次転写部の下流側近傍に検知センサ77を設置した。レジストローラ16側でも定着ローラ側と同様にレジストローラ近傍に検知センサ77を設置してもよい。本実施形態では、所望の時刻に転写材35を2次転写部に搬送するレジストローラの機能を精度良く実施できるように2次転写部の下流側近傍に設置した。検知センサ77の出力を基に、1枚目の転写材35を搬送する前、または1枚目以降の転写材35の後端を検知するとソレノイドが動作し、回転伝達機構9bの接触部材71bはスラスト方向にロックされ、1枚目又は次の転写材35の先端突入から2次転写部にニップする期間は、確実にはすば歯車32bはスラスト方向にロックされた状態となる。
次に、検知センサ77で転写材35の先端を検知すると、ロックが解除されてはすば歯車32bはスラスト方向に自在に移動する。このように動作することで、レジストローラや定着ローラにおいて、膜厚が大きい転写材の搬送においても、本来の搬送機能と本発明の負荷トルク変動を吸収する機能を両立することが可能となる。なお、転写材35の検知センサ76及び77の設置位置はこれに限るものではなく、転写材35がレジストローラ16、定着ローラ17のニップ部に突入する時刻が推定できればどこでもよい。また、動作タイミングに関してもこれに限るものではなく、転写材35がそれぞれのローラニップ部に突入する際にロック状態となるように動作すればよい。
以上二つの実施例により本発明を説明してきたが、本発明は、圧接する2つの回転体の接触部分を、該回転体の回転により所定の長さをもつ転写材を搬送する搬送装置を2つ以上有する画像形成装置において、該2つの搬送装置は、それぞれの接触部分間の距離が、該転写材の搬送方向の長さよりも短い位置関係に設置されており、該回転体の回転駆動力を発生するひとつ以上駆動源と、それぞれの搬送装置には該駆動源によって発生される回転駆動力をそれぞれの搬送装置の該回転体に伝達する回転伝達機構を有しており、少なくとも1つの回転伝達機構は、駆動源の回転駆動力を回転体に伝達する少なくとも一対の互いに噛合った第一及び第二のはすば歯車を具備しており、第一及び第二のはすば歯車は、該転写材搬送時に他の搬送装置との線速差に起因して回転伝達機構の負荷トルクが増大する際に、該第一及び第二のはすば歯車に作用するスラスト方向の力により第一のはすば歯車に対して第二のはすば歯車がその回転軸方向に沿って移動されるように、それぞれ設けられており、第二のはすば歯車の一方の端面に向かって付勢する弾性部材を具備していることを特徴とするが、ここで、「所定の長さをもつ」とは、カット紙のことを示す。一般的なロール紙では本発明の適用は難しい面があるが、本発明がカット紙のみに限定されることを意味するものではない。そして、本発明では、2つの転写材搬送装置間の線速差によって発生する転写材を介した押し合い、引っ張り合いによる負荷トルク変動に対して、負荷トルク変動に応じて発生するはすば歯車のスラスト力によりはすば歯車スラスト方向に移動可能とすることによって、過剰な負荷トルク変動に対し、負荷トルク変動を吸収する(負荷トルク変動を逃がす)ようにはすば歯車が移動することによって、転写材をより安定した速度で搬送することを可能としている。
また、転写材にトナー画像を2つの回転体で圧接搬送し、転写する転写搬送装置と、転写部に転写材を所定のタイミングで搬送するレジスト搬送装置を有する画像形成装置において、該転写搬送装置と該レジスト搬送装置は、それぞれの接触部分間の距離が、該転写材の搬送方向の長さよりも短い位置関係に設置されており、レジスト搬送装置の回転伝達機構は、駆動源の回転駆動力を回転体に伝達する少なくとも一対の互いに噛合った第一及び第二のはすば歯車を具備しており、第一及び第二のはすば歯車は、該転写材搬送時に転写搬送装置との線速差に起因して回転伝達機構の負荷トルクが増大する際に、該第一及び第二のはすば歯車に作用するスラスト方向の力により第一のはすば歯車に対して第二のはすば歯車がその回転軸方向に沿って移動されるように、それぞれ設けられており、第二のはすば歯車の一方の端面に向かって付勢する弾性部材を具備していることを特徴とするとし、転写ローラとレジストローラの線速差によって発生する転写材を介した押し合い、引っ張り合いによる負荷トルク変動に対して、過剰な負荷トルク変動に対し、負荷トルク変動を吸収する(負荷トルク変動を逃がす)ようにはすば歯車が移動することによって、レジストローラの線速が転写ローラの線速に近づくように変化することで、転写中の転写材をより安定した速度で搬送することを可能としている。
また、転写材にトナー画像を2つの回転体で圧接搬送し、転写する転写搬送装置と、転写された転写材上のトナー画像を2つの回転体で圧接搬送して定着する定着搬送装置を有する画像形成装置において、該転写搬送装置と該定着搬送装置は、それぞれの接触部分間の距離が、該転写材の搬送方向の長さよりも短い位置関係に設置されており、定着搬送装置の回転伝達機構は、駆動源の回転駆動力を回転体に伝達する少なくとも一対の互いに噛合った第一及び第二のはすば歯車を具備しており、第一及び第二のはすば歯車は、該転写材搬送時に転写搬送装置との線速差に起因して回転伝達機構の負荷トルクが増大する際に、該第一及び第二のはすば歯車に作用するスラスト方向の力により第一のはすば歯車に対して第二のはすば歯車がその回転軸方向に沿って移動されるように、それぞれ設けられており、第二のはすば歯車の一方の端面に向かって付勢する弾性部材を具備していることを特徴とし、転写ローラと定着ローラの線速差によって発生する転写材を介した押し合い、引っ張り合いによる負荷トルク変動に対して、過剰な負荷トルク変動に対し、負荷トルク変動を吸収する(負荷トルク変動を逃がす)ようにはすば歯車が移動することによって、定着ローラの線速が転写ローラの線速に近づくように変化することで、転写中の転写材をより安定した速度で搬送することを可能とする。
また、転写材にトナー画像を2つの回転体で圧接搬送し、転写する転写搬送装置と、転写された転写材上のトナー画像を2つの回転体で圧接搬送して定着する定着搬送装置と、転写部に転写材を所定のタイミングで搬送するレジスト搬送装置を有する画像形成装置において、該転写搬送装置と該定着搬送装置は、それぞれの接触部分間の距離が、該転写材の搬送方向の長さよりも短い位置関係に設置されており、該定着搬送装置とレジスト搬送装置の回転駆動力を発生する1つの駆動源と、それぞれの搬送装置には該駆動源によって発生される回転駆動力を該回転体に伝達する回転伝達機構を有しており、該定着搬送装置及び該レジスト搬送装置の回転伝達機構は、駆動源の回転駆動力を回転体に伝達する少なくとも一対の互いに噛合った第一及び第二のはすば歯車を具備しており、第一及び第二のはすば歯車は、該転写材搬送時に転写搬送装置との線速差に起因して回転伝達機構の負荷トルクが増大する際に、該第一及び第二のはすば歯車に作用するスラスト方向の力により第一のはすば歯車に対して第二のはすば歯車がその回転軸方向に沿って移動されるように、それぞれ設けられており、第二のはすば歯車の一方の端面に向かって付勢する弾性部材を具備していることを特徴とし、1個のモータでレジストローラと定着ローラの2つの搬送装置を駆動する画像形成装置において、スラスト方向に移動可能なはすば歯車を有する伝達機構を設置することで、レジストローラと定着ローラがそれぞれ、転写ローラの線速に近づくように変化することで、転写中の転写材をより安定した速度で搬送することを可能とする。
また、モータ1個の構成では、モータ2個の構成に対し、低コストである反面、レジストローラと定着ローラ線速をそれぞれ調整することが不可能であったが、本発明により、低コストかつはすば歯車の移動による線速調整が行なわれることで、高精度な転写材の搬送が実現できる。
また、第二のはすば歯車の一方の端面に向かって付勢する第一の弾性部材と、第二のはすば歯車の他方の端面に向かって付勢する第二の弾性部材を有することで、両側から弾性部材を付勢することによって、負荷トルク変動の増加と減少の両方に対応することが可能となる。また、2つの弾性部材を設計することで、より精度の高い加圧力設計が可能となり、上述の点が顕著となる。
また第二のはすば歯車の端面に固定された該弾性部材の端部とは別のもう一方の端部に固定され、該第二のはすば歯車の回転軸方向の任意の位置に移動及び固定可能な弾性部材保持機構を有することを特徴とすることで、はすば歯車に加圧する弾性部材の他方の固定端をスラスト方向に調整可能とすることにより、はすば歯車に対するスラスト方向の加圧力を調整することが可能となる。これによって、環境、経時変化や画像形成装置の個体差による誤差を調整することが可能となる。
また、モータ個体差によってモータの平均速度が所望の速度から異なる場合があるような場合に、歯車等の伝達部品公差から想定した以上の負荷トルク変動が発生し、はすば歯車のスラスト方向の移動はスプライン連結部のリミットまで行なわれるが、第二はすば歯車の回転軸方向に沿う移動により、回転軸方向の任意の位置に該はすば歯車が到達したことを認識する検知手段を有し、この検知手段によりはすば歯車の到達を検知すると、駆動源の平均回転速度を変更することで、このようなはすば歯車の移動を検知して、モータの平均速度を調整することで、モータ固体差による平均速度についての問題を解決し得る。
さらに、はすば歯車の移動は、2つの搬送装置の線速差に基づいた負荷トルク変動に応じて設置された搬送装置の線速を変化させるが、レジスト搬送装置が単独で転写材を搬送しているとき(2つの搬送装置に転写材が跨っていないとき)は、一定の線速で搬送して欲しい。すなわち、変化すると画像先頭位置がずれてしまうし、また転写材が定着やレジスト搬送装置に進入する際の負荷トルク変動でも、一定の線速で搬送して欲しい(はすば歯車は、ニップ後の負荷トルク変動に備えて、スラスト移動して欲しくない。)。このように、2つの相反する要求が存在し、特に膜厚の大きな転写材の場合には、ニップ部進入時の負荷トルク変動が大きく、両立が困難であるが、第二はすば歯車の回転軸方向の移動を一時的に規制する規制手段を有することで、転写材の膜厚によらず、上述の作用、効果が得られる。
またさらに、第二はすば歯車の一時的に規制する時間を、転写材の搬送経路上に設置された転写材検出手段の出力に基づいて行なうことで、転写材が搬送装置に進入するタイミングを確実に把握することができる。
本発明の実施対称となる画像形成装置の例の要部を示す概念図
定着ローラへの回転伝達機構の一例を示す断面図
一のはすば歯車に対して他のはすば歯車がその回転軸方向に沿って弾性手段を圧縮するように移動する状態を示す断面図
本発明の実施形態の模式図
定着ローラの線速が2次転写線速より大きい場合の負荷トルクと時間の関係を示す図
定着ローラの線速が2次転写線速より小さい場合の負荷トルクと時間の関係を示す図
レジストローラの線速が2次転写線速より大きい場合の負荷トルクと時間の関係を示す図
レジストローラの線速が2次転写線速より小さい場合の負荷トルクと時間の関係を示す図
はすば歯車対が噛合う際の力の関係を示す説明図
負荷トルクと並進力の関係を実験データと関係式を用いた近似で導出した例を示す図
異なる二つの弾性部材ではすば歯車の側面を両側から加圧する機構の例を示す図
ラチェット式ワンウェイクラッチを採用している例を示す図
はすば歯車のスラスト方向規制手段とその動作を示す図
リミットスイッチ85を設置する例を示す図
弾性部材の加圧力を調整する機構を示す図
符号の説明
1:書き込み装置
2k、2c、2m、2y:感光体ドラム
9:回転伝達機構
10:中間転写ベルト
16:レジストローラ対
17:定着ローラ対
18:駆動ローラ
19:転写ローラ対
31、32:はすば歯車
33:軸受
34:回転軸
35:転写材
36、36‘:弾性手段
37:はすば歯車の一方の端面
38:回転軸
39:軸受
40:スプライン
41:画像形成装置の筐体
43、44:モータ
45:制御基板
46:クラッチ機構
47:フランジ
51、56:変動
52〜55、57〜62:時間帯
65:負荷トルクの幅
66:変動範囲
71:接触部材
72、73:クラッチプレート
74:プレートガイド部材
75:クラッチ付勢手段
76、77:検知センサ
81:回転部材
82:接触部材
83:はすば歯車
85:リミットスイッチ