ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、インナ軸部材とアウタ筒部材の軸直角方向での相対変位を緩衝的に制限すると共に、インナ軸部材とアウタ筒部材のこじり方向での相対変位を有効に制限することが出来る新規な構造のストラットアームブッシュを提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた耐久性と段差の乗り越え時等における良好な乗り心地を実現することが出来る、新規な構造のダブルジョイント式サスペンションを提供することも、目的とする。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、ストラットアームブッシュに関する本発明は、インナ軸部材とその外周側に離隔配置されたアウタ筒部材が本体ゴム弾性体で連結された構造を有しており、サスペンションアームの車両ボデー側への取付部位に装着されるストラットアームブッシュにおいて、前記インナ軸部材に該インナ軸部材とは別体とされた軸端ストッパ部材を組み付け、該インナ軸部材の軸方向両端部からそれぞれ前記アウタ筒部材に向かって軸直荷重入力方向に突出する軸端ストッパゴムを形成して、該軸端ストッパゴムを介して該インナ軸部材と該アウタ筒部材が軸直荷重入力方向で当接せしめられるようにすると共に、該軸端ストッパゴムが当接せしめられる該アウタ筒部材側の当接面に緩衝ゴム層を設けて、該緩衝ゴム層を介して該軸端ストッパゴムが該アウタ筒部材に当接せしめられるようになっており、更に、該軸端ストッパゴムの一部を該緩衝ゴム層の軸方向端部よりも軸方向外側に位置せしめると共に、該軸端ストッパゴムが当接せしめられる該緩衝ゴム層の当接面を軸方向外方に行くに従って次第に軸直角方向外方に向かって傾斜する傾斜面として、該インナ軸部材と該アウタ筒部材のこじり方向での相対変位によって該軸端ストッパゴムと該緩衝ゴム層が当接せしめられる際に該軸端ストッパゴムと該緩衝ゴム層の当接面が相互に平行となるようにする一方、軸直荷重入力方向で前記インナ軸部材を挟んだ径方向両側において前記本体ゴム弾性体に一対のすぐり部を設けて、該すぐり部の軸方向中央部分で該インナ軸部材と前記アウタ筒部材の少なくとも一方の側から該すぐり部内に突出する中央ストッパゴムを設けると共に、前記軸端ストッパゴムにおける軸直荷重入力方向の突出頂部には軸方向に延びる凹部を形成して該軸端ストッパゴムの突出高さを周方向で変化させて、該インナ軸部材と該アウタ筒部材の軸直荷重入力方向における相対変位に際して、該中央ストッパゴムと、該軸端ストッパゴムにおける該凹部の周方向両側部分と、該軸端ストッパゴムにおける該凹部とが、順次に当接するようにしたことを特徴とする。
このような本発明に従う構造とされたストラットアームブッシュにおいては、軸端ストッパゴムの軸方向外側部分が、緩衝ゴム層よりも軸方向外側に位置するように配設されている。それ故、軸直角方向での荷重入力によって、インナ軸部材とアウタ筒部材が相対変位せしめられた場合に、緩衝ゴム層を介してアウタ筒部材に当接せしめられる軸端ストッパゴムの当接面積を小さくすることが出来る。これにより、軸端ストッパゴムの当接に際しての衝撃を緩和して、段差乗り越え時等における良好な乗り心地を実現することが出来る。
しかも、軸端ストッパゴムが当接せしめられる緩衝ゴム層の当接面を、インナ軸部材の中心軸に対して傾斜させることにより、こじり方向での荷重が入力されて、インナ軸部材とアウタ筒部材がこじり方向で相対的に変位せしめられた場合に、軸端ストッパゴムと緩衝ゴム層の当接面が相互に平行となるようになっている。これにより、インナ軸部材とアウタ筒部材がこじり方向で相対変位せしめられる場合には、軸端ストッパゴムと緩衝ゴム層の当接面積が軸直角方向での相対変位時に比して大きくなって、ストッパ効果を有利に得ることが出来る。従って、ステアリング操作に対する車輪の切れ角の安定化等の効果を有利に実現することが出来る。
また、アウタ筒部材の内周面における軸端ストッパゴムが当接する部分に緩衝ゴム層を設けることにより、緩衝ゴム層を介して軸端ストッパゴムとアウタ筒部材を当接させて、当接時の衝撃を緩和することが出来る。これにより、緩衝的なストッパ効果を有利に実現することが出来る。
さらに、緩衝ゴム層の当接面を、インナ軸部材とアウタ筒部材のこじり方向での相対変位による軸端ストッパゴムと緩衝ゴム層の当接時に、それら軸端ストッパゴムと緩衝ゴム層の当接面が相互に平行となるように傾斜させることにより、インナ軸部材とアウタ筒部材が軸直角方向で相対変位せしめられた場合における軸端ストッパゴムと緩衝ゴム層の当接面積を、より小さくすることが出来る。
また、緩衝ゴム層の傾斜方向を軸方向外方に行くに従って次第に軸直角方向外方に向かって傾斜するように設定することにより、傾斜面を当接面として有する緩衝ゴム層を容易に形成することが出来る。
なお、インナ軸部材とアウタ筒部材のこじり方向での相対変位による軸端ストッパゴムと緩衝ゴム層の当接に際して、軸端ストッパゴムと緩衝ゴム層の当接面が少なくとも一部において相互に平行となっていれば良い。より好適には、こじり方向荷重入力時における軸端ストッパゴムと緩衝ゴム層の当接に際して、軸端ストッパゴムの軸方向中央部分が緩衝ゴム層に対して平行となるように当接せしめられる。
また、中央ストッパゴムと、周方向で段付形状とされた軸端ストッパゴムを、順次に当接させることにより、インナ軸部材とアウタ筒部材の軸直角方向での相対変位をより緩衝的に制限することが出来る。それ故、段差の乗り越え等に際して、軸直角方向に荷重が入力される場合に、本体ゴム弾性体の耐久性を確保しつつ、良好な乗り心地を維持することが出来る。
さらに、上述の如き構造を採用する場合には、前記軸端ストッパ部材を構成する前記軸端ストッパゴムの突出頂部における周方向の曲率が該インナ軸部材の外周面の曲率以下とされていると共に、該軸端ストッパゴムの突出頂部の曲率が該アウタ筒部材の内周面の曲率以上とされており、更に、該軸端ストッパゴムの突出頂部の曲率中心が該インナ軸部材の外周面の曲率中心に対して該軸端ストッパゴムの突出方向とは反対側に偏倚せしめられている構造を合わせて採用することも出来る。
これによれば、インナ軸部材とアウタ筒部材の相対変位に際して、軸端ストッパゴムと緩衝ゴム層の周方向での当接領域を大きくとることが出来て、ストッパ効果をより有効に発揮させることが出来る。
また、ストラットアームブッシュに関する本発明は、インナ軸部材とその外周側に離隔配置されたアウタ筒部材が本体ゴム弾性体で連結された構造を有しており、サスペンションアームの車両ボデー側への取付部位に装着されるストラットアームブッシュにおいて、前記インナ軸部材に該インナ軸部材とは別体とされた軸端ストッパ部材を組み付け、該インナ軸部材の軸方向両端部からそれぞれ前記アウタ筒部材に向かって軸直荷重入力方向に突出する軸端ストッパゴムを形成して、該軸端ストッパゴムを介して該インナ軸部材と該アウタ筒部材が軸直荷重入力方向で当接せしめられるようにすると共に、該軸端ストッパゴムの一部を該アウタ筒部材側の当接面の軸方向端部よりも軸方向外側に位置せしめる一方、該軸端ストッパゴムの突出頂部における周方向の曲率が該インナ軸部材の外周面の曲率以下とされていると共に、該軸端ストッパゴムの突出頂部における周方向の曲率が該アウタ筒部材の内周面の曲率以上とされており、更に、該軸端ストッパゴムの突出頂部の曲率中心が該インナ軸部材の外周面の曲率中心に対して該軸端ストッパゴムの突出方向とは反対側に偏倚せしめられており、且つ、軸直荷重入力方向で前記インナ軸部材を挟んだ径方向両側において前記本体ゴム弾性体に一対のすぐり部を設けて、該すぐり部の軸方向中央部分で該インナ軸部材と前記アウタ筒部材の少なくとも一方の側から該すぐり部内に突出する中央ストッパゴムを設けると共に、前記軸端ストッパゴムにおける軸直荷重入力方向の突出頂部には軸方向に延びる凹部を形成して該軸端ストッパゴムの突出高さを周方向で変化させて、該インナ軸部材と該アウタ筒部材の軸直荷重入力方向における相対変位に際して、該中央ストッパゴムと、該軸端ストッパゴムにおける該凹部の周方向両側部分と、該軸端ストッパゴムにおける該凹部とが、順次に当接するようにしたことを特徴とする。
このような本発明に従う構造とされたストラットアームブッシュにおいては、軸端ストッパゴムの軸方向外側部分が、アウタ筒部材側の当接面よりも軸方向で外側に位置せしめられていることにより、インナ軸部材とアウタ筒部材が軸直角方向で相対変位せしめられた場合には、全面で当接する場合に比して、軸端ストッパゴムとアウタ筒部材側の当接面の軸方向での当接領域が小さくなる。それ故、軸直角方向での荷重入力時には、緩衝的なストッパ効果の発現によって良好な乗り心地が実現されるようになっている。
しかも、軸端ストッパゴムの曲率と曲率中心を適当に設定することにより、周方向では軸端ストッパゴムとアウタ筒部材側の当接面の当接領域を大きく確保して、有効なストッパ効果を得られるようになっている。
さらに、上述の如き本発明に従う構造のストラットアームブッシュにおいては、前記軸端ストッパゴムが当接せしめられる前記アウタ筒部材側の当接面に緩衝ゴム層を設けると共に、該軸端ストッパゴム側の当接面と該アウタ筒部材側の該緩衝ゴム層における当接面との少なくとも一方を前記インナ軸部材の中心軸に対して傾斜せしめて、該インナ軸部材と該アウタ筒部材のこじり方向での相対変位によって該軸端ストッパゴムと該緩衝ゴム層が当接せしめられる際に該軸端ストッパゴム側の当接面と該アウタ筒部材側の該緩衝ゴム層における当接面とが相互に平行となるようにした構造を合わせて採用することも出来る。
このような構造を採用することによって、軸直角方向での荷重入力時におけるインナ軸部材とアウタ筒部材の緩衝的な変位制限と、こじり方向での荷重入力時におけるインナ軸部材とアウタ筒部材の効果的な変位制限を、より有利に両立して実現することが出来る。蓋し、上述の如き構造を採用することにより、インナ軸部材とアウタ筒部材が軸直角方向で相対変位せしめられた場合には、軸端ストッパゴム側の当接面の傾斜とアウタ筒部材側の当接面の傾斜の違いによって、当接面積が小さくなる。更に、インナ軸部材とアウタ筒部材がこじり方向で相対変位せしめられた場合には、軸端ストッパゴム側の当接面とアウタ筒部材側の当接面が平行となって当接せしめられることから、当接面積を大きくとることが出来るからである。
なお、インナ軸部材とアウタ筒部材のこじり方向での相対変位による軸端ストッパゴムと緩衝ゴム層の当接に際して、軸端ストッパゴムと緩衝ゴム層の当接面が少なくとも一部において相互に平行となっていれば良い。より好適には、こじり方向荷重入力時における軸端ストッパゴムと緩衝ゴム層の当接に際して、軸端ストッパゴムの軸方向中央部分が緩衝ゴム層に対して平行となるように当接せしめられる。
更にまた、上述の如き本発明に従う構造のストラットアームブッシュにおいては、前記軸端ストッパゴムが当接せしめられる該アウタ筒部材側の当接面に緩衝ゴム層を設けて、該軸端ストッパゴムが該緩衝ゴム層を介して該アウタ筒部材に当接せしめられるようにすると共に、該軸端ストッパゴムが当接せしめられる該緩衝ゴム層の当接面を軸方向外方に行くに従って次第に軸直角方向外方に向かって傾斜する傾斜面として、該インナ軸部材と該アウタ筒部材のこじり方向での相対変位によって該軸端ストッパゴムと該緩衝ゴム層が当接せしめられる際に該軸端ストッパゴムと該緩衝ゴム層の当接面が相互に平行となるようにした構造を合わせて採用することも可能である。
これによれば、軸直荷重の入力によってインナ軸部材とアウタ筒部材が相対変位せしめられて、緩衝ゴム層を介して軸端ストッパゴムとアウタ筒部材が当接せしめられる際に、軸端ストッパゴムと緩衝ゴム層の軸方向での当接領域を小さくすることが出来る。それ故、インナ軸部材とアウタ筒部材の軸直角方向での相対変位を制限する軸直ストッパ効果を、緩衝的に実現することが出来る。
しかも、こじり方向での荷重入力によってインナ軸部材とアウタ筒部材が相対変位せしめられる場合には、軸端ストッパゴムの当接面と緩衝ゴム層の当接面が、相互に平行となって、より広い面積で当接せしめられるようになっている。それ故、インナ軸部材とアウタ筒部材のこじり方向での相対変位を効果的に防いで、操縦安定性の向上等を有利に実現することが出来る。
また、緩衝ゴム層を介して軸端ストッパゴムをアウタ筒部材に当接せしめることにより、当接時の衝撃を緩和して、緩衝的に当接せしめることが出来る。それ故、ストッパの当接による異音や振動の発生を有利に防ぐことが出来る。
また、緩衝ゴム層の当接面の傾斜方向を、軸方向外方に行くに従って次第に軸直角方向外方に向かって傾斜するように設定することによって、テーパ面を有する緩衝ゴム層を容易に形成することが出来る。
また、本発明に係るストラットアームブッシュにおいては、前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材のこじり方向での相対変位によって前記軸端ストッパゴムと該アウタ筒部材側の当接面が当接せしめられる際に、該軸端ストッパゴムが、軸直荷重入力方向の突出頂部に形成された前記凹部の周方向両側部分において、軸方向で広がる部分の全面に亘って、該アウタ筒部材側の当接面に当接せしめられるようになっている構造を採用することも出来る。
このような構造を採用することにより、こじり方向での荷重入力によってインナ軸部材とアウタ筒部材が相対変位せしめられて、軸端ストッパゴムがアウタ筒部材側の当接面に当接せしめられる際に、軸端ストッパゴムとアウタ筒部材側の当接面を、大きな面積で有利に当接させることが出来る。蓋し、軸端ストッパゴム側の当接面の全面に亘って該アウタ筒部材側の当接面に当接せしめられるようになっていることから、軸端ストッパゴムの軸方向でのサイズに対して軸方向での当接領域を効率的に確保することが出来るからである。
また、本発明に係るストラットアームブッシュにおいては、前記インナ軸部材における前記本体ゴム弾性体が固着された部分よりも軸方向外側部分に段差部が設けられており、該インナ軸部材の該段差部よりも軸方向外側部分が軸方向中央部分よりも小径とされている一方、固定筒金具の外周面に緩衝ゴム弾性体を加硫接着して前記軸端ストッパゴムを形成せしめた構造をもって前記軸端ストッパ部材が構成されており、該固定筒金具が該インナ軸部材の該小径部分に外嵌固定されることによって該軸端ストッパ部材が該インナ軸部材に組み付けられている構造を採用することも出来る。
このような構造によれば、軸端ストッパゴムの軸直角方向での突出高さや、軸端ストッパゴムとアウタ筒部材側の当接面との離隔距離(ストッパクリアランス)の設計自由度を大きくとることが出来る。
また、本発明に係るストラットアームブッシュにおいては、前記軸端ストッパゴムにおける軸直荷重入力方向両側の突出頂部に多数の小突起を一体形成した構造が採用され得る。
このような構造を採用することにより、軸端ストッパゴムの当接時に、当接面が擦れて異音が発生するのを防ぐことが出来る。
また、本発明に係るストラットアームブッシュにおいては、前記軸端ストッパ部材が、該軸端ストッパ部材の軸方向中央で軸直角方向に広がる平面を対称面とする面対称な形状とされている構造を採用することも出来る。
このような構造の軸端ストッパ部材を採用することにより、軸端ストッパ部材をインナ軸部材に対して組付ける際に、誤って軸方向で逆向きに組み付けてしまうのを防いで、本発明に係るストラットアームブッシュを容易に製造することが出来る。
また、ダブルジョイント式サスペンションに関する本発明は、ストラットアームを含む複数のサスペンション部材によって構成されており、該ストラットアームにおける長手方向一方の端部がストラットアームブッシュを介して車両ボデー側に取り付けられると共に、該ストラットアームにおける長手方向他方の端部がボールジョイントを介してキャリア側に取り付けられたダブルジョイント式サスペンションにおいて、上述の各態様に記載されたストラットアームブッシュを用いると共に、前記ストラットアームにおける軸方向両端部の前記車両ボデー側および前記キャリア側への取付位置をつなぐアーム軸方向線に対して該ストラットアームブッシュの中心軸が直交するようにして、該ストラットアームブッシュを該ストラットアームと該車両ボデーの間に装着したことを特徴とする。
このような本発明に従う構造とされたストラットアームブッシュにおいては、ストラットアームブッシュに対して軸直角方向での荷重が入力される段差の乗り越え時等において、良好な乗り心地を実現することが出来ると共に、ストラットアームブッシュに対してこじり方向での荷重が入力されるステアリング操作時等において、ステアリングの操作量に対する車輪の切れ角を一定に保って、操縦安定性の向上を実現することが出来る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1,2には、本発明の一実施形態としての自動車用ストラットアームブッシュ10が示されている。ストラットアームブッシュ10(以下、「ブッシュ10」と称する)は、インナ軸部材としての内筒金具12とアウタ筒部材としての外筒金具14を本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結した構造となっている。そして、ブッシュ10は、内筒金具12が図示しない自動車のボデー側に固定されて取り付けられていると共に、外筒金具14がストラットアーム18に固定されて取り付けられることにより、ストラットアーム18の車両ボデーに対する取付部位に装着されて、ストラットアーム18を車両ボデーに対して防振連結するようになっている。なお、以下の説明において、軸方向とは、図1における左右方向を言うものとする。また、ブッシュ10の車両への装着状態下における主たる荷重入力方向は、軸直角方向であって、図1,図2における上下方向である。また、図1,2には、車両への非装着状態下におけるブッシュ10が示されている。
より詳細には、内筒金具12は、小径の厚肉円筒形状を呈しており、金属等で形成された剛性材とされている。また、内筒金具12の軸方向両端部分の外周面には、段差部20がそれぞれ設けられており、内筒金具12の軸方向両端部における外径寸法が、軸方向中央部分における外径寸法よりも小さくなっている。なお、本実施形態において、内筒金具12の内径寸法は軸方向の略全長に亘って一定とされており、内筒金具12は、その軸方向両端部分が軸方向中央部分に比して僅かに薄肉となっている。
また、内筒金具12の外周側には、外筒金具14が配設されている。外筒金具14は、薄肉大径の略円筒形状を呈しており、金属等で形成された剛性材とされている。また、外筒金具14は、内筒金具12よりも大径とされていると共に、内筒金具12に対して所定の径方向(図2中、上下)で偏心して配設されており、全周に亘って内筒金具12の外周側に所定距離を隔てて位置せしめられている。更に、本実施形態においては、外筒金具14の軸方向長さが内筒金具12の軸方向長さよりも短くなっており、外筒金具14の軸方向両側から内筒金具12の軸方向両端部が突出している。なお、内筒金具12の段差部20が、外筒金具14の軸方向端部よりも軸方向内側に位置せしめられている。
また、内筒金具12と外筒金具14の間には、図3,4に示されているように、本体ゴム弾性体16が配設されている。本体ゴム弾性体16は、厚肉の略円筒形状を呈しており、その内周面が内筒金具12の外周面に加硫接着されていると共に、その外周面が外筒金具14の内周面に加硫接着されている。このことからも明らかなように、本実施形態における本体ゴム弾性体16は、内筒金具12と外筒金具14を一体的に備えた一体加硫成形品22として形成されている。また、本実施形態において、本体ゴム弾性体16の内周面は、内筒金具12に形成された段差部20よりも軸方向中央側の大径部分に加硫接着されている。また、本実施形態では、内筒金具12と外筒金具14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品22において、外筒金具14に八方絞り等の縮径加工が施されており、本体ゴム弾性体16に作用する引張応力を低減乃至は回避できるようになっている。なお、図3,4には、縮径加工後の一体加硫成形品22が示されている。
また、本体ゴム弾性体16の外周端縁部には、軸方向両側で外方に向かって延び出す薄肉筒状の緩衝ゴム層としての軸端緩衝ゴム層24が一体形成されている。この軸端緩衝ゴム層24は、外筒金具14の内周面を軸方向端部付近まで覆うように加硫接着されている。また、図1に示されているように、軸端緩衝ゴム層24は、その内周面が軸方向外方に向かって次第に拡開するように傾斜角度:αだけ傾斜したテーパ面とされている。更に、この軸端緩衝ゴム層24の内周面の傾斜角度:αは、車両のストラットアーム18に設定する最大こじり角となるように設定されている。
なお、軸端緩衝ゴム層24は、その内周面の傾斜が、軸方向外側に行くに従って次第に径方向外方に位置するように設定されていることから、本体ゴム弾性体16の加硫成形時に、所定の傾斜角度で容易に一体形成することが可能である。それ故、軸端緩衝ゴム層の内周面を所定の傾斜角度とするために外筒金具を特定の形状に加工する必要はなく、外筒金具14の絞り加工後の形状を高い自由度で設定することが可能である。
さらに、本実施形態では、軸端緩衝ゴム層24の周上の一箇所において、ストッパ部25が設けられている。ストッパ部25は、軸端緩衝ゴム層24と一体形成されており、軸端緩衝ゴム層24の内周面から径方向内方に向かって突出せしめられている。また、ストッパ部25は、後述する一対の凹所26が位置せしめられた径方向一方向に位置せしめられている。
そして、このような本体ゴム弾性体16によって、内筒金具12と外筒金具14が弾性的に連結されている。また、本体ゴム弾性体16の軸方向両端部には、径方向一方向(図2中、左右方向)で内筒金具12を挟んで対向位置する一対の凹所26が形成されている。この凹所26は、軸方向外方に開口する凹状の縦断面形状(図1参照)で周方向に所定の長さに亘って形成されており、それによって、本体ゴム弾性体16の引張変形による応力集中や歪みが軽減されるようになっている。
また、本体ゴム弾性体16には、一対の凹所26が対向する径方向に対して直交する径方向(図2中、上下方向)で対向位置する一対のすぐり部28が形成されている。これらのすぐり部28は、本体ゴム弾性体16を軸方向に貫通するように形成されている。また、各すぐり部28の周方向での長さは、1/6周〜1/3周(本実施形態では、略1/5周)程度とされている。なお、すぐり部28の内周面は、全体に亘って本体ゴム弾性体16で形成されており、すぐり部28内には内筒金具12や外筒金具14が直接に露出しないようになっている。
また、これらのすぐり部28には、中央ストッパゴム30が突出せしめられている。中央ストッパゴム30は、本体ゴム弾性体16と一体形成されており、内筒金具12の軸方向中央部分から径方向外方に向かってすぐり部28内に突出せしめられている。また、中央ストッパゴム30は、略錐体形状とされており、径方向外方に向かって先細となっている。
また、すぐり部28の形成部位では、外筒金具14の内周面が薄肉の中央緩衝ゴム層32で覆われている。この中央緩衝ゴム層32は、本体ゴム弾性体16および軸端緩衝ゴム層24と一体的に形成されており、外筒金具14の軸方向中央部分に加硫接着されている。これにより、中央ストッパゴム30と中央緩衝ゴム層32が径方向で所定距離を隔てて対向位置せしめられており、内筒金具12と外筒金具14が軸直角方向で相対変位せしめられることにより、中央ストッパゴム30が中央緩衝ゴム層32を介して外筒金具14に当接せしめられるようになっている。
一方、内筒金具12には、軸端ストッパ部材としての別体ストッパ部材34が組み付けられている。別体ストッパ部材34は、図5,6に示されているように、略円筒形状の固定筒金具36と、固定筒金具36の外周面に固着された軸端ストッパゴム38を含んで構成されている。
より詳細には、固定筒金具36は、略円筒形状を呈しており、金属等の硬質の材料で形成されている。また、本実施形態における固定筒金具36は、その軸方向両端部分の内周面が傾斜面で構成されており、固定筒金具36の内周面が軸方向外側に向かって僅かに拡径せしめられている。
また、軸端ストッパゴム38は、図5,6に示されているように、固定筒金具36の外周面に固着されており、径方向一方向の両側に向かってそれぞれ突出するように一対の軸端ストッパゴム38,38が形成されている。この軸端ストッパゴム38は、軸方向に所定の長さとされており、軸方向中央部分が軸方向に平行に広がる当接面40とされた略台形の縦断面を有している。
さらに、軸端ストッパゴム38は、その周方向の中央部分に凹部42を有している。凹部42は、軸端ストッパゴム38の外周面に開口して、軸方向の全長に亘って連続して延びる溝状とされている。かかる凹部42が形成されていることにより、軸端ストッパゴム38は、凹部42の形成箇所において径方向での突出高さが小さくなっており、周方向に二分されているような形態となっている。また、溝状とされた凹部42の周方向端面(側壁面)が径方向に広がっていることにより、凹部42は、径方向外方(外周側)に向かって次第に拡幅する断面形状を有している。また、軸端ストッパゴム38の周方向両端面が、軸端ストッパゴム38の突出方向に平行な軸直角方向に広がっていることにより、軸端ストッパゴム38における凹部42を挟んだ周方向両側部分(以下、突出部44)が、突出先端側に向かって次第に周方向で狭幅となっている。
また、軸端ストッパゴム38における突出部44の外周面(径方向の突出頂部)には、周方向に所定の長さで延びる複数の小突起としての緩衝突起46が設けられている。これにより、各突出部44の突出先端面である当接面40が凹凸形状を呈している。なお、本実施形態では、周方向に所定の長さで延びる緩衝突起46が、軸方向で所定の距離を隔てて複数設けられることにより、突出部44の突出先端における凹凸形状が実現されている。
また、突出部44の突出先端面は、円弧状の湾曲面で構成されており、内筒金具12よりも曲率が小さくされていると共に、外筒金具14よりも曲率が大きくされている。また、図2に示されているように、突出部44の外周面の曲率中心は、内筒金具12の曲率中心に対して、軸端ストッパゴム38の突出方向と反対側にずれて位置せしめられている。なお、本実施形態では、突出部44の曲率や曲率中心の位置が、こじり方向で荷重が入力された際に、周方向のより広い範囲に亘って突出部44が外筒金具14に当接せしめられるように設定されている。また、図2において、(a)が内筒金具12の曲率中心を示していると共に、(b)が突出部44の突出先端面の曲率中心を示している。
また、本実施形態では、一対の軸端ストッパゴム38が、連結部45によって周方向で連結されている。連結部45は、軸端ストッパゴム38よりも径方向での突出高さが小さくされており、一対の軸端ストッパゴム38の周方向間に形成されて、固定筒金具36の外周面に加硫接着されている。なお、本実施形態においては、一対の軸端ストッパゴム38と連結部45が一体的に形成されており、全体として略円環形状とされている。
このような構造とされた別体ストッパ部材34は、内筒金具12に外嵌固定される。即ち、一組の別体ストッパ部材34は、軸端ストッパゴム38の突出方向が周方向で相互に位置合わせされた状態で、固定筒金具36が内筒金具12に対して軸方向両側からそれぞれ圧入されることにより、内筒金具12の軸方向両端部分に組み付けられている。本実施形態において、固定筒金具36は、内筒金具12における段差部20よりも軸方向外側の小径部分に対して圧入固定されている。
なお、本実施形態に係る別体ストッパ部材34は、軸方向中央において軸直角方向に広がる平面を対称面とする面対称な形状とされている。これにより、内筒金具12への組付時に、軸方向での表裏に関らず所定の態様に組み付けることが出来て、内筒金具12への誤組付けが有利に防がれるようになっている。
また、本実施形態では、内筒金具12の軸方向端縁部の外周面がテーパ面で構成されており、内筒金具12の外径が軸方向外方に向かって次第に小径となっている。更に、別体ストッパ部材34の軸方向両端縁部の内周面がテーパ面とされており、別体ストッパ部材34の内径が軸方向外方に向かって次第に大きくなっている。これにより、圧入時における別体ストッパ部材34と内筒金具12の径方向での位置合わせが、テーパ面による案内作用によって容易に実現されるようになっている。
かかる組付状態下において、軸端ストッパゴム38は、主たる軸直荷重入力方向である径方向一方向において、内筒金具12を挟んだ両側に突出するように設けられている。これにより、後述するように、軸直荷重の入力による内筒金具12と外筒金具14の相対変位に際して、内筒金具12と外筒金具14が軸端ストッパゴム38を介して当接せしめられるようになっている。また、本実施形態では、軸端ストッパゴム38は、中央ストッパゴム30の突出方向と同じ径方向に突出するように設けられている。
また、軸端ストッパゴム38の外周面は、内筒金具12の軸方向中央部分に設けられた中央ストッパゴム30の突出先端よりも径方向内側に位置せしめられている。これにより、内筒金具12と外筒金具14が中央ストッパゴム30の突出する径方向一方向で相対変位せしめられると、中央ストッパゴム30が軸端ストッパゴム38よりも先に外筒金具14に当接せしめられるようになっている。
さらに、別体ストッパ部材34の組付状態下において、軸端ストッパゴム38の軸方向内側部分が、軸直角方向の投影において外筒金具14と重ね合わされていると共に、軸端ストッパゴム38の軸方向外側部分が外筒金具14の軸方向端部よりも軸方向外方に位置せしめられている。なお、かかる別体ストッパ部材34の組付状態下において、軸端ストッパゴム38は、外筒金具14に対して全周に亘って径方向で離隔して配設されている。
また、本実施形態においては、図1に示されているように、軸端緩衝ゴム層24が外筒金具14の軸方向端部よりも僅かに軸方向中央側までを覆うように形成されていると共に、軸方向両端部において外筒金具14が内周側に露出せしめられている。そして、本実施形態では、軸端ストッパゴム38の当接面40の軸方向内側部分が、軸端緩衝ゴム層24の軸方向での端部に対して、軸直角方向の投影において重ね合わせられていると共に、当接面40の軸方向外側部分が、軸端緩衝ゴム層24よりも軸方向外側に外れて位置せしめられている。これにより、内筒金具12と外筒金具14の相対変位に際して、軸端ストッパゴム38は、軸端緩衝ゴム層24を介して外筒金具14に当接せしめられるようになっている。なお、軸端緩衝ゴム層24の内周面の一部が、後述する内筒金具12と外筒金具14の相対変位によって軸端ストッパゴム38の当接面40が当接せしめられる被当接面47とされている。
このような構造とされた自動車用ストラットアームブッシュ10は、例えば、操舵輪(前輪)のサスペンション機構を構成するダブルウィッシュボーン式サスペンションであって、キャリアとしてのハブキャリアに対して一対のロアアームが連結されるダブルジョイント構造のサスペンションに好適に採用される。かかるダブルジョイント式サスペンションは、前述の特許文献1,2にも示されている周知構造であるから、その詳細な説明を省略するが、操舵輪が取り付けられるキングピンを備えたハブキャリアと、車両ボデーとの間に配設された複数のサスペンション部材を含んで構成される。
具体的には、図7に概略的に示されているように、ロアアームが車両前後方向に離隔配置された第一のロアアーム18と第二のロアアーム48を含む一対のサスペンションアームからなり、各アーム18,48の一方の端部がボールジョイントを介してハブキャリア(図示せず)に連結されている。
特に本実施形態では、第一のロアアーム18が第二のロアアーム48よりも車両前方に配されており、平面視において、第二のロアアーム48のキャリアに対する取付位置が車輪50の略中央(車軸となるキングピンの中心軸上付近)に位置せしめられていると共に、第一のロアアーム18のキャリアに対する取付位置が、車輪50の中央から外れた車両前方に位置せしめられている。そして、第二のロアアーム48が、車両の略横方向(車幅方向乃至は車軸方向であって、図7中の左右方向)に延びていると共に、第一のロアアーム18が、車両前後方向や車幅方向に対して所定の角度で傾斜して延びている。
さらに、これら第一のロアアーム18と第二のロアアーム48の各他方の端部には、車両ボデー側への取付部位としてのアームアイ52(図1参照)が形成されている。本実施形態では、第一及び第二のロアアーム18,48として湾曲形状等のものも採用され得るが、図7では、そのアーム中心軸を簡易的に図示するものとする。なお、アーム中心軸は、ロアアーム18,48において、その長手方向一方の端部におけるキャリアへの取付位置と、長手方向他方の端部における車両ボデーへの取付位置とを直線でつないだ線を言うものとする。また、車両ボデーは、ボデー本体(メインフレーム)の他、サスペンションフレーム等のサブフレームであっても良い。
また、本実施形態に係るブッシュ10は、外筒金具14が第一のロアアーム18の端部に設けられたアームアイ52に圧入されて、第一のロアアーム18が外筒金具14の略軸方向中央部分に位置せしめられた状態で嵌着固定されている。本実施形態では、第一のロアアーム18のアーム中心軸に対してブッシュ10の中心軸(内外筒金具12,14の中心軸)が直交するように装着されている。また、ブッシュ10は、その中心軸が略水平方向に延びるようにして自動車に装着される。なお、外筒金具14に縮径加工を施す際に、軸方向両端部分の縮径率(変形量)が軸方向中央部分よりも大きくなるように加工されており、外筒金具14の軸方向両端部分の外径寸法が軸方向中央部分の外径寸法よりも小さくなっている。これにより、外筒金具14をアームアイ52に圧入する際に、外筒金具14の軸方向両端部分の外周面における塗装の剥げやキズ等の問題を防ぐことが出来る。
また、ブッシュ10の内筒金具12は、その内孔に図示しない固定ボルトが挿通されて、この固定ボルトを介して車両ボデー側の部材に固定される。特に本実施形態では、各一対のすぐり部28や中央ストッパゴム30、軸端ストッパゴム38が設けられたブッシュ10の軸直角方向一方向(図2中、上下)が、アーム中心軸が延びる方向となるように組み付けられている。
なお、図2に示されているように、本実施形態に係るブッシュ10は、車両への非装着状態下において、内筒金具12と外筒金具14が径方向一方向(図2中、上下)で偏心せしめられている。そして、ブッシュ10を車両に対して装着することにより、ブッシュ10に対して径方向一方向(図2中、下)に静的荷重が及ぼされて、内筒金具12と外筒金具14が相対変位せしめられ、内筒金具12と外筒金具14が同一中心軸上に位置せしめられるようになっている。
これにより、第一のロアアーム18、第二のロアアーム48が、ハブキャリアと車両ボデー側の部材の間において、ボールジョイントの変位およびブッシュ10における本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて、それぞれ独立して揺動可能に配設されていると共に、操舵輪がそれらロアアーム18,48を含む複数のサスペンション部材を介して車両ボデーに懸架されている。そして、ストラットアームブッシュ10を介して車両ボデーに連結された第一のロアアーム18は、車両前後方向に対して所定の角度で傾斜して延びていて、サスペンションの車両前後方向の力を支えることとなる。
ここにおいて、車両の通常走行状態下では、車輪50は略前後方向に向いており、その状態で入力される段差乗り越え等の荷重はストラットアーム18の略軸方向に及ぼされることから、ブッシュ10には略軸直角方向の荷重として及ぼされることとなる。この際、本実施形態に従う構造とされたストラットアームブッシュ10では、ストラットアーム18の軸方向である軸直角方向一方向において、一対のすぐり部28が設けられており、良好な乗り心地が実現されるようになっている。
また、ブッシュ10には、ストラットアーム18の軸方向においてストッパ機構が設けられている。即ち、ブッシュ10において、中央ストッパゴム30と軸端ストッパゴム38,38がストラットアーム18の軸方向に各一対設けられている。これにより、内筒金具12と外筒金具14が軸直角方向で相対変位せしめられると、それら内筒金具12と外筒金具14が、中央ストッパゴム30と軸端ストッパゴム38を介して緩衝的に当接せしめられるようになっている。それ故、内筒金具12と外筒金具14の軸直角方向での相対変位が緩衝的に制限されて、良好な乗り心地と優れた耐久性が両立して実現されるようになっている。
より詳細には、本実施形態に係るストラットアームブッシュ10では、中央ストッパゴム30が、軸端ストッパゴム38の外周縁部よりも径方向外側に突出せしめられている。それ故、ブッシュ10に段差乗り越え等による軸直角方向の荷重が作用せしめられて、内筒金具12と外筒金具14が大きく相対変位せしめられると、図8に示されているように、先ず、中央ストッパゴム30が外筒金具14に当接せしめられる。この中央ストッパゴム30は、比較的に柔らかくされており、当接時の衝撃が小さく抑えられている。これにより、内筒金具12と外筒金具14が大きく相対変位せしめられた場合には、先ず、中央ストッパゴム30による緩衝的なストッパ効果が発現されるようになっており、比較的に小さい段差の乗り越え時等における良好な乗り心地が実現されるようになっている。
さらに、内筒金具12と外筒金具14の相対変位によって、中央ストッパゴム30が所定量以上に弾性変形せしめられた場合には、比較的に硬い軸端ストッパゴム38が軸端緩衝ゴム層24を介して外筒金具14に当接することによって、内筒金具12と外筒金具14の相対変位がより確実に制限され得るようになっている。
ここにおいて、本実施形態に係る軸端ストッパゴム38は、径方向で突出せしめられていると共に、その先端部分(外周部分)が凹部42によって周方向で段付き形状とされている。これにより、軸端ストッパゴム38は、内筒金具12と外筒金具14の軸直角方向での相対変位に際して、比較的にばね定数の小さい突出部44と、比較的にばね定数が大きい凹部42が、外筒金具14に対して段階的に当接せしめられるようになっている。
すなわち、中央ストッパゴム30が所定量以上に弾性変形せしめられると、図9に示されているように、先ず、軸端ストッパゴム38の突出部44が、軸端緩衝ゴム層24を介して外筒金具14に当接せしめられる。この突出部44は、図2等からも明らかなように、凹部42に比して突出方向での厚さ(突出高さ)が大きく設定されており、凹部42に比して柔らかいばね特性となっている。それ故、当接時における衝撃の発生を抑えて、緩衝的なストッパ効果が発揮される。
特に本実施形態においては、外筒金具14に当接せしめられる突出部44の外周面が、主たる荷重の入力方向であるストラットアーム18の軸方向に対して傾斜せしめられている。それ故、入力荷重が当接面40(突出部44の外周面)に対して傾斜した方向で作用せしめられて、突出部44に圧縮変形と併せて剪断変形が生ぜしめられる。これにより、軸直角方向での荷重入力による当接に際して、突出部44のばね特性が比較的に柔らかくなって、緩衝的なストッパ効果を有利に実現することが出来る。
また、突出部44が内筒金具12と外筒金具14の対向面間で圧縮されて所定量以上に弾性変形せしめられると、図10に示されているように、軸端ストッパゴム38の凹部42の底壁部が、軸端緩衝ゴム層24を介して外筒金具14に当接せしめられるようになっている。ここで、凹部42の形成箇所における軸端ストッパゴム38は、突出部44に比して突出高さが小さくなっており、軸直荷重入力方向で薄肉とされている。それ故、凹部42の底壁部の外筒金具14への当接によって、内筒金具12と外筒金具14の軸直角方向での相対変位を効果的に制限することが出来る。
さらに、凹部42の底壁部は、主たる荷重の入力方向である径方向一方向に位置するように、軸端ストッパゴム38の周方向中央部分に形成されている。それ故、凹部42の底壁部は、内筒金具12と外筒金具14の間で圧縮されて、比較的に硬いばね特性で内筒金具12と外筒金具14の相対変位を効果的に制限することが出来る。
以上の如く、本実施形態に係るストラットアームブッシュ10では、中央ストッパゴム30と、軸端ストッパゴム38の突出部44と、軸端ストッパゴム38の凹部42が、順次に外筒金具14に当接せしめられるようになっており、ストッパ作用の緩衝的な発現と、入力荷重に応じた有効なストッパ作用の発揮を、両立して実現することが出来る。
なお、本実施形態では、外筒金具14の内周面において中央ストッパゴム30が当接せしめられる部分に、中央緩衝ゴム層32が被着形成されている。これにより、中央ストッパゴム30の外筒金具14への当接をより緩衝的に実現することが出来る。
また、中央ストッパゴム30が突出先端に向かって先細状の形状とされていることにより、中央ストッパゴム30の変形量の増大に伴って当接面積が次第に大きくなる。これにより、中央ストッパゴム30によるストッパ作用が徐々に大きくなるように発現されて、緩衝的なストッパ効果を有効に得ることが出来る。
また、本実施形態では、外筒金具14における軸端ストッパゴム38の当接箇所に、軸端緩衝ゴム層24が設けられている。そして、内筒金具12と外筒金具14の軸直角方向での相対変位時において、軸端ストッパゴム38が軸端緩衝ゴム層24を介して外筒金具14に対して緩衝的に当接せしめられるようになっている。これにより、軸端ストッパゴム38の外筒金具14への当接に起因する乗り心地の悪化を軽減することが出来る。
また、外筒金具14の内周面には軸端緩衝ゴム層24が加硫接着されており、外筒金具14側の当接面が軸端緩衝ゴム層24によってテーパ面とされている。これにより、突出部44および凹部42と外筒金具14の当接初期における軸方向での当接領域が小さくなると共に、内筒金具12と外筒金具14の相対変位量が大きくなるに従って当接面積が次第に大きくなる。それ故、ストッパ効果をより緩衝的に発現せしめることが出来る。
また、本実施形態においては、突出部44の外周面が緩衝突起46によって凹凸形状とされている。これにより、突出部44の外筒金具14(軸端緩衝ゴム層24)への当接時に、擦れる等して異音が生じるのを防ぐことが出来る。
また、本実施形態に係る軸端ストッパゴム38は、図11に拡大して示すように、その軸方向外側部分が軸端緩衝ゴム層24の軸方向端部よりも軸方向で外側に位置せしめられている。これにより、内筒金具12と外筒金具14の軸直角方向での相対変位に際して、軸端ストッパゴム38と軸端緩衝ゴム層24の当接面積を小さくなっている。それ故、軸端ストッパゴム38が軸端緩衝ゴム層24を介して外筒金具14に当接することによって得られるストッパ効果が、より緩衝的に発現されるようになっている。
さらに、本実施形態において、操舵によって車輪50の向きが車両前後方向に対して傾斜せしめられて、ストラットアーム18が傾動し、ストラットアームブッシュ10にこじり方向で荷重が及ぼされると、図12に示すように、内筒金具12と外筒金具14が相対的にこじり方向で変位せしめられる。この際に、軸端ストッパゴム38が軸端緩衝ゴム層24を介して外筒金具14に当接せしめられことにより、内筒金具12と外筒金具14のこじり方向での相対変位が別体ストッパ部材34によって効果的に制限されるようになっている。
しかも、軸端緩衝ゴム層24の内周面の一部を構成する被当接面47が最大操舵角に応じて傾斜したテーパ面とされており、内筒金具12と外筒金具14のこじり方向での相対変位による軸端ストッパゴム38と軸端緩衝ゴム層24の当接に際して、軸端ストッパゴム38の当接面40と軸端緩衝ゴム層24の被当接面47が相互に平行となるようにされている。それ故、軸端緩衝ゴム層24を介して軸端ストッパゴム38が外筒金具14に対して充分に広い当接面積で当接せしめられて、内筒金具12と外筒金具14のこじり方向での相対的な変位が、充分に大きな当接面積を備えたストッパ機構によって有利に制限されるようになっている。
特に本実施形態では、こじり方向荷重の入力によって内筒金具12と外筒金具14が相対変位せしめられると、図13に拡大して示すように、軸端ストッパゴム38の突出先端面における軸方向で広がる部分(当接面40)が、全面に亘って軸端緩衝ゴム層24の内周面(被当接面47)に当接せしめられるようになっている。それ故、内筒金具12と外筒金具14がこじり方向で相対変位せしめられた場合には、軸端ストッパゴム38の当接面40の面積を効率良く利用して、ストッパ効果を有利に発揮させることが出来る。
要するに、別体ストッパ部材34によって実現される軸端ストッパ機構は、軸直角方向での荷重入力に際しては、軸端ストッパゴム38の当接面40が軸端緩衝ゴム層24の被当接面47に対して部分的に当接せしめられることにより、緩衝的なストッパ効果が発揮されるようになっている。一方、こじり方向での荷重入力に際しては、当接面40が被当接面47に対して全面に亘って当接せしめられることにより、内筒金具12と外筒金具14のこじり方向での相対変位をより有利に制限することが出来るようになっている。
なお、図14には、本実施形態に係るブッシュ10の軸直角方向での荷重−たわみ曲線が示されている。これによれば、本実施形態に係るブッシュ10では、全周に亘って一定の断面形状を有する軸端ストッパゴムを備えた従来構造のブッシュに比して、軸端ストッパゴム38の外筒金具14(軸端緩衝ゴム層24)への当接に際して、ストッパ効果の急激な発現(荷重−たわみ曲線の急激な立ち上がり)が防がれて、緩衝的にストッパ効果が発揮されていることが分かる。このことは、図14において、軸端ストッパゴム38の当接時を示す特性線の(A)領域で、傾きの変化が比較的に小さいことによって示されている。なお、図14における荷重−たわみ曲線において、実線で示された荷重−たわみ曲線は、本実施形態に係るブッシュに関するものであり、破線で示された荷重−たわみ曲線は、従来構造のブッシュに関するものである。
また、本実施形態に係るストラットアームブッシュ10では、ストッパ機構を構成する別体ストッパ部材34を、一体加硫成形品22とは別体の部材としている。それ故、別体ストッパ部材34を構成する軸端ストッパゴム38のゴム材料として、本体ゴム弾性体16とは異なるゴム材料を適宜に選択して採用することが出来る。
また、ストッパ機構のゴム弾性体(軸端ストッパゴム38)を本体ゴム弾性体16とは別体として形成することにより、ブッシュ10(本体ゴム弾性体16)のばね特性とストッパ機構のばね特性を各別に設定することが出来る。それ故、本体ゴム弾性体16のばね特性への悪影響を防止して、目的とする防振性能を有効に実現することが出来る。
また、軸端ストッパゴム38を本体ゴム弾性体16とは別体とすることにより、軸端ストッパゴム38の自由表面の面積を大きくとることが出来る。
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記実施形態においては、こじり方向での荷重入力時において、軸端ストッパゴム38の当接面40が全面に亘って軸端緩衝ゴム層24の被当接面47に当接するようになっているが、軸端ストッパゴム38の当接面40が軸端緩衝ゴム層24の被当接面47に対して全面で当接する必要はない。具体的には、例えば、別体ストッパ部材34の軸方向での装着位置を、前記実施形態よりも軸方向外側に設定することにより、内筒金具12と外筒金具14のこじり方向での相対変位時にも、軸端ストッパゴム38の軸方向外側部分が軸端緩衝ゴム層24の軸方向端部よりも軸方向で外方に位置するようになっていても良い。
また、前記実施形態においては、軸端ストッパゴム38の当接面40が軸方向に対して平行に広がる面で構成されていると共に、軸端緩衝ゴム層24の内周面が軸方向に対して傾斜したテーパ面で構成されており、内筒金具12と外筒金具14のこじり方向での相対変位時において、相互に平行に当接せしめられるようになっている。しかしながら、軸端ストッパゴムの当接面や軸端緩衝ゴム層の内周面の形状は、前記実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものではない。具体的には、例えば、軸端ストッパゴムの当接面と軸端緩衝ゴム層の当接面を、何れもブッシュの軸方向に対して傾斜して広がるテーパ面で構成しても良い。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
10:ストラットアームブッシュ,12:内筒金具,14:外筒金具,16:本体ゴム弾性体,18:ストラットアーム,24:軸端緩衝ゴム層,28:すぐり部,30:中央ストッパゴム,34:別体ストッパ部材,36:固定筒金具,38:軸端ストッパゴム,40:当接面,42:凹部,46:緩衝突起