JP2006193150A - トーコレクトブッシュおよびそれを用いたサスペンション機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両前後方向となる軸直角方向では、柔かいばね特性による優れた乗心地が発揮されると共に、サスペンション機構への装着状態下では、コーナリング時における横力ステアが抑えられて優れた操縦安定性が発揮されることにより、それら乗心地と操縦安定性を高次元で両立的に達成することの出来る新規な構造のトーコレクトブッシュを提供することを目的とする。
【解決手段】コンプレッションゴム42で弾性連結されたインナ側傾斜部18とアウタ側傾斜部26における対向面間において、それら各傾斜部18,26の対向面32,34からそれぞれ離隔して広がるように配設された、周方向で内方に凹となる湾曲区プレート形状の中間拘束部材36を配設すると共に、中間拘束部材36をコンプレッションゴム42に加硫接着せしめた。
【選択図】図1
【解決手段】コンプレッションゴム42で弾性連結されたインナ側傾斜部18とアウタ側傾斜部26における対向面間において、それら各傾斜部18,26の対向面32,34からそれぞれ離隔して広がるように配設された、周方向で内方に凹となる湾曲区プレート形状の中間拘束部材36を配設すると共に、中間拘束部材36をコンプレッションゴム42に加硫接着せしめた。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車のサスペンションブッシュの一種であるトーコレクトブッシュとそれを用いたサスペンション機構に係り、特に、トーションビーム式リジットアクスル型のサスペンション機構に用いられて、左右のトレーリングアームのボデー側への取付部位に装着される新規な構造のトーコレクトブッシュと、かかるトーコレクトブッシュを採用することによって実現される、車両の操縦安定性や乗心地などのチューニング特性に優れた新規な構造のサスペンション機構に関するものである。
従来から、自動車におけるトーションビーム式リジットアクスル型のサスペンション機構において、トーションビームで連結された左右のトレーリングアームのボデー側への取付部位に装着されるサスペンションブッシュの一種として、特開平9−104212号公報や特開平11−247914号公報,特開平11−257396号公報,特開2000−74117号公報等に開示されているように、インナ軸金具の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出するインナ側傾斜部を設けると共に、アウタ筒金具の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出し、インナ側傾斜部に対して略平行な対向面で離隔して対向位置するアウタ側傾斜部を形成する一方、それらインナ軸金具とアウタ筒金具の径方向対向面間に本体ゴム弾性体を介在せしめて両金具を弾性連結せしめると共に、インナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間に介装されてそれらを弾性的に連結するコンプレッションゴムを、かかる本体ゴム弾性体と一体的に形成した構造のトーコレクトブッシュが、知られている。かくの如き構造のトーコレクトブッシュは、その中心軸(インナ軸金具およびアウタ筒金具の中心軸)が車両横方向となり、インナ側およびアウタ側の傾斜部の突出する軸直角方向が車両前後方向となる状態で自動車に装着されることとなり、その特性が、自動車の走行時におけるトレーリングアーム、延いては車輪の変位に大きな影響を及ぼすことから、目的とする車両の乗心地や操縦安定性が発揮されるように、トーコレクトブッシュの特性がチューニングされる。
そして、このようなトーションビーム式サスペンション機構において目的とする特性は、車両の乗心地と操縦安定性の高次元での両立であり、一般に、車両の乗心地の向上のために車両前後方向のばね定数を柔らかく設定しつつ、コーナリング荷重の入力時におけるサスペンション部材の車両前後方向における変位を抑えて横力ステアによるオーバステアを防止乃至は軽減することにより車両の走行安定性を向上させることが重要とされる。
ところで、従来のトーコレクトブッシュでは、その設計および特性評価に際して、専ら、中心軸方向および軸直角方向でのばね特性と荷重−変位特性だけが考慮されていた。即ち、乗心地の設計や評価を、軸直角方向でのばね特性の柔らかさに基づいて行う一方、操縦安定性の設計や評価を、中心軸方向でのばね特性の硬さと、中心軸方向への入力に伴う軸直角方向の変位量(トーコレクト量)の抑制に基づいて行っていたのである。
そのために、従来構造のトーコレクトブッシュにおいては、前記公報等にも記載されているように、単に、インナ軸部材とアウタ筒部材の径方向対向面間を弾性連結する本体ゴム弾性体に対して、車両前後方向となる軸直角方向でインナ軸部材を挟んで対向位置する両側部分にそれぞれ軸方向に延びる一対のスリットを形成することにより、車両前後方向のばね特性を柔らかく設定する一方、車両横方向となる軸方向では、インナ軸部材とアウタ筒部材の相対変位量を弾性的に制限するストッパ手段を設けて軸方向の高ばね特性を確保すると共に、コンプレッションゴムで弾性連結されたインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部における互いに平行な傾斜面の傾斜角度を調節することにより、中心軸方向でのばね特性の硬さと、中心軸方向への入力に伴う軸直角方向の変位量(トーコレクト量)を調節していたに過ぎなかったのである。
しかしながら、このような従来構造のトーコレクトブッシュでは、サスペンション機構への装着状態下での荷重入力方向と、かかる方向への荷重入力に伴う変位特性が直接には考慮されていなかったのであり、そのために、前述の如き車両の乗心地と操縦安定性を高次元で両立させるようなブッシュ特性の最適チューニングを、トーコレクトブッシュ、延いてはサスペンション機構の全体を把握して行うことが難しかったのである。
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、サスペンション機構への装着状態下で発揮される乗心地と操縦安定性を、各個別でなく全体としてとらえることにより、それら乗心地と操縦安定性の両方の要求特性をより高次元で両立して達成することの出来る、新規な構造のトーコレクトブッシュと、それを用いた新規な構造のサスペンション機構を提供することにある。
すなわち、本発明者は、サスペンション機構への装着状態下におけるトーコレクトブッシュの荷重−変位特性をFEM(有限要素法)等を用いて詳細に検討した結果、かかるトーコレクトブッシュの設計に際しては、弾性主軸の方向と弾性主軸方向のばね定数を考慮することが有効であり、特に、上述のように、乗心地と操縦安定性の最適バランスを実現するためには、中心軸に対する弾性主軸の傾斜角度(主軸角度)を、外力の入力方向に応じて調節し、その上で、圧縮方向となる弾性主軸Iと剪断方向となる弾性主軸IIでのばね定数の比(主軸ばね比)の値を大きく設定することが有効である、との新たな知見を得たのである。即ち、このようなチューニングをトーコレクトブッシュに施すことにより、結果として、サスペンション部材の車両前後方向におけるボデーに対する支持ばね特性を柔らかくして優れた乗心地を確保しつつ、コーナリング時にサスペンション部材を略車両横方向に変位させて、オーバステアを抑制し、より好適には弱いアンダステア特性を付与することで、良好な操縦安定性を与えることが可能となる、との知見を得たのである。
そして、更に多数の実験と検討を重ねた結果、中心軸に対する弾性主軸の傾斜角度(主軸角度)を、外力の入力方向に応じて調節し、その上で、圧縮方向となる弾性主軸Iと剪断方向となる弾性主軸IIでのばね定数の比(主軸ばね比)の値を大きく設定することを実現する一つの具体的構成として、インナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間に介装されてそれら両傾斜部を弾性的に連結するコンプレッションゴムのばね特性をチューニングすることが有効であり、かかるコンプレッションゴムにおいて特定の構成を採用することが極めて有効であるとの知見を得たのであり、以て、かかる知見に基づいて、本発明が完成されるに至ったのである。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明の第一の態様は、インナ軸部材と、その外方に離隔配置されたアウタ筒部材を、それらの径方向対向面間に介装された本体ゴム弾性体で連結すると共に、該インナ軸部材の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出するインナ側傾斜部を設ける一方、該アウタ筒部材の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出し、該インナ側傾斜部に対して離隔して対向位置せしめられたアウタ側傾斜部を設けて、それらインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間にコンプレッションゴムを介在せしめたトーコレクトブッシュにおいて、前記コンプレッションゴムで弾性連結された前記インナ側傾斜部と前記アウタ側傾斜部における対向面間で、それら各傾斜部の対向面からそれぞれ離隔して広がる湾曲プレート形状の中間拘束部材を設けて、該中間拘束部材を該コンプレッションゴムに加硫接着せしめたことを特徴とする。
このような本態様に従う構造とされたトーコレクトブッシュにおいては、インナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間に中間拘束部材を配設してコンプレッションゴムに加硫接着せしめたことにより、コンプレッションゴムそれ自体において、柔らかい剪断方向、即ちインナ側及びアウタ側の各傾斜部の突出方向でのばね特性を維持しながら、圧縮方向、即ちインナ側及びアウタ側の各傾斜部の対向方向のばね特性が硬く設定される。その結果、トーコレクトブッシュの全体として、圧縮方向となる弾性主軸Iと剪断方向となる弾性主軸IIでのばね定数の比(主軸ばね比)の値を大きく設定することが可能となるのである。
そして、かくの如き中間拘束部材を配設した特定のコンプレッションゴム構造を採用したことにより、かかるトーコレクトブッシュにおいては、車両前後方向での柔らかいばね特性を有利に確保しつつ、コーナリングに際しての車両横方向荷重の入力時における横力ステアを抑えることが出来るのであり、以て、車両の乗心地と操縦安定性を高度に両立させることが可能となるのである。
なお、本態様において、コンプレッションゴムで弾性連結されるインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面や、それらインナ側及びアウタ側の各対向面と中間拘束板の対向面は、必ずしも相互に平行である必要はなく、弾性主軸方向やねじり方向、こじり方向等の各種方向で要求されるばね特性を考慮して、例えば中間拘束部材の肉厚寸法を部分的に乃至は次第に変化させること等によって、かかる対向面間の距離、換言すればコンプレッションゴムの肉厚寸法を、部分的に乃至は次第に異ならせて設定することも可能である。
また、中間拘束部材の大きさ等も、求められる要求特性に応じて設定されるものであって、特に限定されるものでないが、好ましくは、インナ側傾斜部およびアウタ側傾斜部の各対向面の面積の半分以上に設定されることとなり、より好ましくは、インナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間の実質的に全体に亘って配設される。このように中間拘束部材の大きさを十分に確保することによって、トーコレクトブッシュにおける主軸ばね比を一層有利に確保することが可能となる。
更にまた、中間拘束部材の突出方向の長さは、コンプレッションゴムの長さの半分以上あることが望ましく、コンプレッションゴムを貫通する長さであっても良い。また、中間拘束部材は、コンプレッションゴムの加硫成形型へのセッティング作業性を向上させるために、その一部をコンプレッションゴムに埋設せしめて、部分的に外部空間に突出させることが有効であるが、その全体が、コンプレッションゴムに埋設配置されていても良い。
また、中間拘束部材の材質としては、少なくともコンプレッションゴムよりは高い剛性を有する剛性材が用いられ、具体的には、合成樹脂材、金属等が好適に用いられる。更にまた、中間拘束部材には、その両側に配設されるコンプレッションゴムを相互に接続するために、板厚方向に貫通した連通孔を設けることも可能であり、それによって、中間拘束部材によって分断状態とされた両側のコンプレッションゴムの加硫時の圧力の均分化や、接着力の向上等が図られ得る。加えて、中間拘束部材を、コンプレッションゴム内に複数個配設することも可能である。
また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に従うトーコレクトブッシュにおいて、前記中間拘束部材における突出方向の先端部分は、前記コンプレッョンゴムから突出せしめられていると共に、前記インナ軸部材の軸直角方向外方に向かって屈曲されていることを、特徴とする。
また、本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に従うトーコレクトブッシュにおいて、前記インナ側傾斜部と前記アウタ側傾斜部の対向面間において、前記中間拘束部材が中央部分に広がって配設されていることを、特徴とする。
また、本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れか一の態様に従うトーコレクトブッシュにおいて、前記インナ側傾斜部と前記アウタ側傾斜部の各対向面は、該インナ側傾斜部よりも該アウタ側傾斜部の方が大きくされていると共に、前記中間拘束部材の面積が、それらインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の間とされていることを、特徴とする。
また、本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れか一の態様に従うトーコレクトブッシュにおいて、前記中間拘束部材は、その突出先端部分だけが該コンプレッションゴムから突出せしめられており、該中間拘束部材の内周側基端部分は前記コンプレッションゴム内に埋設されていることを、特徴とする。
また、本発明は、左右のトレーリングアームをトーションビームで連結したサスペンション部材を、自動車のボデーに対して揺動可能に防振連結せしめたサスペンション機構において、サスペンション部材における車両前方側の左右両側部分に対して、前記本発明の第一乃至第五の何れかの態様に係る構造とされたトーコレクトブッシュをそれぞれ装着せしめて、それらのトーコレクトブッシュを介して、該サスペンション部材をボデーに防振連結すると共に、かかる左右両側のトーコレクトブッシュの中心軸を車両左右方向に向けて、且つインナ側およびアウタ側の傾斜部を車両中央側に位置せしめたサスペンション機構も、特徴とする。
このような本発明に従う構造とされたサスペンション機構においては、各トーコレクトブッシュにおける前述の如き特性に基づいて、車両コーナリング時におけるサスペンション部材の外力による変位を、車両横方向に近い方向に向かわせて横力ステアをより一層抑えることが出来るのであり、それによって、良好なる車両の走行安定性を、車両の乗心地を確保しつつ達成することが可能となるのである。
本発明に従う構造とされたトーコレクトブッシュにおいては、インナ側傾斜部とアウタ側傾斜部を弾性的に連結するコンプレッションゴムに中間拘束部材を配設したことにより、圧縮方向となる弾性主軸Iと剪断方向となる弾性主軸IIでのばね定数の比(主軸ばね比)の値を大きく設定することが可能となるのであり、それ故、自動車のサスペンション機構に採用することによって、車両の乗心地と操縦安定性を、簡単な構造で高次元に両立させることが出来るのである。
また、本発明に従う構造とされたサスペンション機構においては、サスペンション部材の車両ボデーに対する車両前後方向での支持ばね特性が柔らかく設定され得ると共に、コーナリングに際して車両横方向の荷重が入力された際に、サスペンション部材の車両前後方向への変位、延いては横力ステアが抑えられ得ることから、車両の乗心地と操縦安定性を高次元で両立させることが出来るのである。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1〜4には、本発明の一実施形態としてのトーコレクトブッシュ10が、示されている。このトーコレクトブッシュ10は、インナ軸部材としての内筒金具12とアウタ筒部材としての外筒金具14が、互いに径方向に離隔して配されていると共に、それら内外筒金具12,14間に本体ゴム弾性体16が介装されて、両金具12,14が弾性的に連結された構造を有している。
より詳細には、内筒金具12は、小径の円筒形状を有しており、軸方向一方(図1中の左方)の端部近くには、略平板形状の固定プレート18が固着されている。この固定プレート18は、プレス金具等の剛性部材で形成されており、略扇形の平板形状を有しており、扇形の中心部分には、円弧形状の嵌着用切欠20が設けられている。そして、嵌着用切欠20に対して内筒金具12が挿通され、嵌着用切欠20が内筒金具12に溶着されることによって、固定プレート18が内筒金具12に固着されている。
そこにおいて、固定プレート18は、内筒金具12から離れるに従って幅広となる略扇形状を有しており、内筒金具12の中心軸22に対して外方に傾斜した平面上において、径方向一方(図1,2中の上方)の側に向かって斜めに突出せしめられており、かかる固定プレート18が中心軸22に対して略一定の傾斜角度を有する略平坦な傾斜面とされている。更に、固定プレート18は、その中心部分の幅寸法(図2中の左右方向寸法)が、内筒金具12の外径寸法と外筒金具14の内径寸法の略中間程度にされていると共に、その突出先端部の最も大きな幅寸法が、外筒金具14の内径寸法に略近い大きさとされている。なお、固定プレート18の突出先端面(外周面)は、内筒金具12の中心軸22を略中心とする円弧形状とされている。
また一方、外筒金具14は、大径の円筒形状を有しており、内筒金具12に外挿されることにより、内筒金具12の径方向外方に離隔して同軸的に配設されている。なお、外筒金具14の軸方向長さは、内筒金具12よりも短くされており、内筒金具12の軸方向両端部分が外筒金具14から軸方向外方に突出せしめられている。また、外筒金具14の軸方向一方(図1中の左方)の開口周縁部には、径方向外方に突出して周方向に連続して延びるフランジ状部24が一体形成されている。
そして、このフランジ状部24の周上の一部分(図1,2中の上側部分)は、径方向外方に延長されていると共に、軸方向外方に傾斜せしめられており、それによって、内筒金具12に突設された固定プレート18に対して斜め軸方向に離隔し、該固定プレート18に対して対向位置する傾斜板対向部26が形成されており、傾斜板対向部26が、外筒金具14の中心軸28に対して略一定の角度で傾斜した略平坦な傾斜面とされている。
なお、このことから明らかなように、本実施形態では、内筒金具12の固定プレート18によってインナ側傾斜部が構成されている一方、外筒金具14の傾斜板対向部26によってアウタ側傾斜部が構成されている。また、傾斜板対向部26は、その突出先端面30が、固定プレート18よりも大径の円弧状面とされていると共に、その周方向長さが、固定プレート18よりも十分に大きくされており、固定プレート18の周方向両側に張り出して位置せしめられている。また、本実施形態では、固定プレート18と傾斜板対向部26の各対向面32,34によって、相互に対向位置する傾斜面が構成されており、各対向面32,34は互いに平行とされている。
さらに、図5に示されるように、固定プレート18と傾斜板対向部26の対向面32,34間には、金属製の中間拘束部材36が配設されている。この中間拘束部材36は、図6,7にその単体図が示されているように、全体として略一定の板厚を有する円弧板形の湾曲プレート形状とされており、内筒金具12の中心軸22に対して外方に傾斜した平面上において、径方向一方(図5中の上方)の側に向かって斜めに突出せしめられている。また、その突出方向の先端部分38は、内筒金具12の径方向外方に向って屈曲されて、且つ、内筒金具12から離れるに従って幅広となる略扇形状とされている一方、その基端部分は、後述するすぐり部48にまで至らないように位置せしめられている。なお、先端部分38の突出先端面39は内筒金具12の中心軸22を略中心とし、且つ、傾斜板対向部26の突出先端面30よりも小径の円弧形状とされている。そして、かかる中間拘束部材36は、固定プレート18と傾斜板対向部26の各対向面32,34間の中央部分に配設されており、中間拘束部材36の各対向面33,33が、固定プレート18と傾斜板対向部26の各対向面32,34に互いに平行となるように、位置せしめられている。また、中間拘束部材36の対向面33,33の面積は、固定プレート18と傾斜板対向部26の各対向面32,34の面積の略中間程度とされている。更に、中間拘束部材36の対向面33には、図7に示されているように、中間拘束部材36を板厚方向に貫通するように複数個(本実施形態では8個)の連通孔40が設けられている。
また、本体ゴム弾性体16は、全体として略厚肉の円筒形状を有しており、内筒金具12と外筒金具14の径方向対向面間の略全体に亘って介在せしめられている。そして、本体ゴム弾性体16の内外周面が、内筒金具12の外周面と外筒金具14の内周面にそれぞれ加硫接着されることにより、本体ゴム弾性体16が、それら内外筒金具12,14を有する一体加硫成形品として形成されている。
更にまた、本体ゴム弾性体16は、固定プレート18と中間拘束部材36と傾斜板対向部26のそれぞれの対向面間にも延び出しており、以て、それら固定プレート18と中間拘束部材36と傾斜板対向部26の各対向面間の全体に亘って充填されたコンプレッションゴム42が、本体ゴム弾性体16と一体的に形成されている。また、中間拘束部材36の連通孔40により、中間拘束部材36を挟んだ両側のコンプレッションゴム42が相互に接続されている。ここにおいて、中間拘束部材36は、その突出先端部分38だけが、周方向の全周に亘って、コンプレッションゴム42の外周側端面に突出せしめられている。一方、中間拘束部材36の内周側基端部分は、固定プレート18と傾斜板対向部26の対向面32,34間の内周側端部近くまで延び出して位置せしめられている。更に、本体ゴム弾性体16は、コンプレッションゴム42側の軸方向端部が、内筒金具12の外周面に沿って固定プレート18まで軸方向に延び出しており、更に、内外筒金具12,14の径方向対向面間から連続して、固定プレート18と傾斜板対向部26の対向面32,34間のコンプレッションゴム42に対して、連続的に接続されている。また、固定プレート18の外周面にも、本体ゴム弾性体16から一体的にゴム層44が延び出しており、かかるゴム層44によって、固定プレート18が覆われている。
また、本体ゴム弾性体16には、固定プレート18や傾斜板対向部26が突出する径方向で内筒金具12を挟んだ両側において、内外筒金具12,14間を軸方向に延びる一対のスリット46,46が形成されている。更にまた、これら一対のスリット46,46の対向方向に直交する径方向で内筒金具12を挟んだ両側には、内外筒金具12,14間を軸方向に延びる一対のすぐり部48,48が形成されている。なお、各一対のスリット46,46とすぐり部48,48は、何れも、少なくともコンプレッションゴム42とは反対側(図1中の右側)の軸方向端面に開口して、略一定の断面形状で軸方向に直線的に形成されている。特に、固定プレート18側に形成された一方のスリット46は、固定プレート18に近接する軸方向深さで形成されていると共に、他方のスリット46は、本体ゴム弾性体16を軸方向に貫通して形成されている。また、一対のすぐり部48,48は、僅かな薄膜状の軸方向底部50,50を残しているが、実質的には本体ゴム弾性体16を貫通した軸方向深さをもって形成されている。これにより、一対のスリット46,46および一対のすぐり部48,48の対向位置する各径方向のばね特性が、十分に軟らかく設定されている。
さらに、各一対のスリット46,46とすぐり部48,48は、何れも、その断面形状において、外筒金具14側から内筒金具12側に向かって径方向内方に行くに従って次第に周方向幅寸法が小さくなる、換言すれば径方向外方に行くに従って次第に周方向幅寸法が大きくなる扇形断面形状を有している。なお、これらスリット46とすぐり部48は、何れも、実質的に内筒金具12の外周面から外筒金具14の内周面まで至る径方向寸法を有しており、これらスリット46とすぐり部48が形成された部分の内外筒金具12,14の表面には、本体ゴム弾性体16の成形時における型開閉性等の理由で形成された薄肉ゴム層だけが存在しているに過ぎない。
すなわち、本体ゴム弾性体16に対して、各一対のスリット46,46とすぐり部48,48が形成されることにより、本体ゴム弾性体16には、互いに周方向に隣接するスリット46とすぐり部48の間を径方向に延びて内筒金具12と外筒金具14を連結する四本の脚部構造の径方向連結部52が形成されているのである。そして、これらの径方向連結部52によって、スリット46およびすぐり部48の周方向両側の側壁部が構成されている。
さらに、一対のスリット46,46には、それぞれ、外周側壁面の周方向略中央部分から径方向内方に向かって突出する略台形断面のストッパ54が、突設されている。そして、内筒金具12と外筒金具14が、ストッパ54を挟んで相互に相対変位せしめられた際に、ストッパ54が内筒金具12側と外筒金具14側の間で圧縮変形せしめられることにより、それら内外筒金具12,14の相対変位量が緩衝的に制限されるようになっている。ここにおいて、ストッパ54は、本体ゴム弾性体16と一体成形されてゴム弾性体で形成されており、本体ゴム弾性体16の軸直角方向断面において、その周方向幅寸法および高さ寸法が、スリット46よりも小さくされている。そして、軸直角方向に大きな荷重が入力された際、ストッパ54の突出先端部がスリット46の内周側壁部を介して内筒金具12側に当接せしめられることにより、内外筒金具12,14の径方向の相対変位量を緩衝的に制限するストッパ機構が構成されている。
ところで、上述の如き構造とされたトーコレクトブッシュ10においては、予め目的とする形状で内外筒金具12,14および中間拘束部材36を形成した後、それらの間で本体ゴム弾性体16とコンプレッションゴム42を加硫成形して接着することによって製造することも可能であるが、望ましくは、目的寸法よりも大径の外筒金具14を用いて、内外筒金具12,14間に中間拘束部材36を配設すると共に、それらの間に本体ゴム弾性体16とコンプレッションゴム42を加硫成形して、内外筒金具12,14と中間拘束部材36に加硫接着せしめた後、外筒金具14の全体に対して絞り加工等の縮径加工を施すことにより目的とする形状寸法とされることとなり、それによって、本体ゴム弾性体16やコンプレッションゴム42に対して予圧縮が加えられ、加硫成形時の引張応力が解消される。より好適には、傾斜板対向部36の全体に対して絞り加工等の縮径加工を施すことにより、コンプレッションゴム42に対して予圧縮が加えられ、加硫成形時の引張応力が解消される。
具体的には、例えば、図8に示されているように、外筒金具14の筒壁部の外径寸法が目的とする寸法よりも全体的に大径とされた成形金具(外筒金具)14′を採用する。
そして、内筒金具12と外筒金具14′および中間拘束部材36を所定のゴム加硫成形型内にセットして、本体ゴム弾性体16とコンプレッションゴム42を、同時に一体加硫成形すると共に、内外筒金具12,14′および中間拘束部材36に加硫接着することによって、一体加硫成形品57を得る。その後、外筒金具14′の軸方向全体および傾斜板対向部26に対して八方絞り等の縮径加工を施すことによって、図1〜4に示されている如き、目的とする形状と寸法を有するトーコレクトブッシュ10を得ることが出来るのである。なお、特に本実施形態においては、図1に示されているように、外筒金具14が、その軸方向中間部分だけを所定長さに亘って大径部とした段付形状とされており、外筒金具14のサスペンション部材への圧入等による装着作業性の向上が図られている。
而して、このような構造とされたトーコレクトブッシュ10は、図9に示されているように、例えば、左右両側の車輪を支持する一対のトレーリングアーム56,56を車幅方向に延びるトーションビーム58で相互に連結固定せしめたトーションビーム式サスペンション機構に対して、一対が組み付けられる。即ち、その左右両側のトレーリングアーム56,56の各車両前端部分に形成された車両横方向に延びる装着孔に対して、外筒金具14を圧入固定する一方、内筒金具12を、ロッド等を介してボデーに固定することにより、図9において、その左右方向が車両左右方向で、上下方向が車両前後方向となる状態で装着される。また、各トレーリングアーム56の先端部分において、内筒金具12の固定プレート18と外筒金具14の傾斜板対向部26が、それぞれ、車両幅方向で内方に位置し、且つ車両の斜め前方に向かって突出せしめられるように、車両前後方向に延びる対称軸:X−Xを挟んで、互いに対称的に装着される。
すなわち、このような装着状態下においては、車両のコーナリング時には、タイヤ60,60から車両横方向に及ぼされる向心力:fによって、各トーコレクトブッシュ10には、中心軸に対して入力角度:θzだけ傾斜した方向で、内外筒金具12,14間に外力:Fが及ぼされることとなる。そして、かかる外力:Fによって、本体ゴム弾性体16とコンプレッションゴム42が弾性変形せしめられることにより、内外筒金具12,14が、相対的に変位せしめられて、サスペンション部材62の全体に、車両ボデーに対する相対的な変位が生ぜしめられることとなる。
そこにおいて、かかるトーコレクトブッシュ10においては、図10に示されるように、その弾性主軸I,IIが、マウント中心軸64および軸直角方向線66に対して、それぞれ、所定角度:γaだけ傾斜して設定されており、それら両弾性主軸I,IIの方向に設定されたばね特性に基づいて、優れた操縦安定性が発揮されるようになっている。
より具体的には、マウント中心軸64と軸直角方向線66を含む略水平な平面内において、ばね定数が最も大きくなる圧縮方向の弾性主軸Iと、ばね定数が最も小さくなる剪断方向の弾性主軸IIが、互いに直交して発現されることとなるが、それらは、何れも、マウント中心軸64および軸直角方向線66に対して、所定角度:γaだけ傾斜して設定されている。特に、本実施形態においては、弾性主軸Iのマウント中心軸64に対する傾斜角度:γaが、外力:Fのマウント中心軸64に対する傾斜角度:γb(なお、γbは図9におけるθzに等しい)よりも大きく設定されている。換言すれば、弾性主軸Iよりもコーナリング時の外力:Fのマウント中心軸64に対する傾斜角度:γbの方が車両横方向に近づく方向に傾斜して設定されている。それ故、外力:Fの分力が弾性主軸Iと弾性主軸IIの各方向に生ぜしめられるが、これらは、外力:Fの入力方向を挟んだ両側に位置せしめられており、特に、弾性主軸I側の分力の方向が、外力:Fの入力方向よりも車両後方側に傾斜している一方、弾性主軸II側の分力の方向が、外力:Fの入力方向よりも車両前方側に傾斜している。しかも、剪断側の弾性主軸IIの方が、圧縮側の弾性主軸Iよりもばね定数が十分に小さく設定されている。
それ故、外力:Fの弾性主軸II側の分力:F(II)と弾性主軸I側の分力:F(I)の比の値:F(II)/F(I)が、外力:Fによって生ぜしめられる内外筒金具12,14の相対的変位量:Sの弾性主軸IIに沿った方向の成分:δdと弾性主軸Iに沿った方向の成分:δcの比の値:δd/δcよりも、小さくされる。その結果、図10に示されているように、変位:Sのマウント中心軸64に対する傾斜角度:γcが、外力:Fの入力方向よりも車両横方向側に傾斜せしめられて、γc<γbとされ、以て、コーナリング時の横方向荷重に伴う内外筒金具12,14の変位方向が、外力:Fの入力方向よりも水平方向とされるようになっている。特に望ましくは、外力:Fの入力時に、マウント中心軸64の方向に生ぜしめられる弾性変形量:δaの方が、軸直角方向線66の方向に生ぜしめられる弾性変形量:δbより大きくなるようにされる。
ここにおいて、外力:Fの入力時における変位:Sの方向は、マウント中心軸64の方向に生ぜしめられる弾性変形量:δaおよび軸直角方向線66の方向に生ぜしめられる弾性変形量:δbで表される。以下に、これらの弾性変形量:δa,δbの値を求める計算方法を示す。
先ず、圧縮(弾性主軸I)側の弾性変形量:δc(mm)および剪断(弾性主軸II)側の弾性変形量:δd(mm)は、外力:F(N),弾性主軸Iのマウント中心軸64に対する傾斜角度:γa(度),外力:Fのマウント中心軸64に対する傾斜角度:γb(度),弾性主軸Iのばね定数:Ks1(N/mm)および弾性主軸IIのばね定数:Ks2(N/mm)を用いて、次のように表すことが出来る。
δc=(F×cos(γa−γb))/Ks1・・・(1)
δd=(F×sin(γa−γb))/Ks2・・・(2)
δc=(F×cos(γa−γb))/Ks1・・・(1)
δd=(F×sin(γa−γb))/Ks2・・・(2)
また、変位:Sのマウント中心軸64に対する傾斜角度:γc(度)は、弾性主軸Iのマウント中心軸64に対する傾斜角度:γa(度),圧縮(弾性主軸I)側の弾性変形量:δc(mm)および剪断(弾性主軸II)側の弾性変形量:δd(mm)を用いて、次のように表すことが出来る。
γc=γa−(tan-1(δd/δc))・・・(3)
γc=γa−(tan-1(δd/δc))・・・(3)
そして、マウント中心軸64の方向に生ぜしめられる弾性変形量:δa(mm)および軸直角方向線66の方向に生ぜしめられる弾性変形量:δb(mm)は、変位:Sのマウント中心軸64に対する傾斜角度:γc(度),圧縮(弾性主軸I)側の弾性変形量:δc(mm)および剪断(弾性主軸II)側の弾性変形量:δd(mm)を用いて、次のように表すことが出来る。
δa=√(δc2 +δd2 )×cos(γc)・・・(4)
δb=√(δc2 +δd2 )×sin(γc)・・・(5)
δa=√(δc2 +δd2 )×cos(γc)・・・(4)
δb=√(δc2 +δd2 )×sin(γc)・・・(5)
この(4),(5)式により、δaおよびδbを求めることが可能となる。そして、δaの値がδbの値より大きくなるように、且つ、δbの値が0に近づくようにチューニングすれば、目的とする特性を有するトーコレクトブッシュ10を得ることが出来る。
その結果、コーナリング時において、横方向荷重が入力された際のトーコレクトブッシュ10の弾性変位によってサスペンション部材62に生ぜしめられるオーバステア方向の変位が抑制されて、車両の優れた操縦安定性が発揮され得るのである。
しかも、圧縮側の高ばね定数の弾性主軸Iの方向は、車両前後方向に対して所定角度:θdだけ横方向に傾斜せしめられていることから、前後方向のばね特性も十分に柔らかく確保されるのであり、それによって、優れた乗心地も発揮され得るのである。
また、上述の説明からも明らかなように、コーナリング時において、横方向荷重が入力された際のトーコレクトブッシュ10の弾性変位によってサスペンション部材62に生ぜしめられるオーバステア方向の変位を抑制して操縦安定性を向上させるためには、トーコレクトブッシュ10の主軸ばね比を大きく設定することが有効である。ここにおいて、かかる主軸ばね比は、コンプレッションゴム42のばね特性の影響を大きく受けることから、かかるコンプレッションゴム42に対して、剪断方向に広がる中間拘束部材36を配設して加硫接着せしめることが有効となる。それによって、主軸ばね比を大きく設定し、以て、コーナリングに際しての荷重入力時において、サスペンション部材62の、オーバステア方向への変位を抑制せしめて、より一層横方向に近い方向に変位せしめることが可能となるのである。
しかも、圧縮側の高ばね定数の弾性主軸Iの方向は、車両前後方向に対して所定角度:θdだけ横方向に傾斜せしめられていることから、コンプレッションゴム42に中間拘束部材36を設けることによって、車両前後方向のばね特性も十分に柔らかく確保され得るのであり、それによって、優れた乗心地も達成され得るのである。
従って、上述の如き、中間拘束部材36をコンプレッションゴム42に配設せしめたトーコレクトブッシュ10においては、車両前後方向での柔らかいばね特性を確保しつつ、コーナリングに際しての車両横方向荷重の入力時に内筒金具12と外筒金具14の弾性変位に起因するオーバステア傾向を抑制乃至は防止し、好適には弱いアンダーステア特性を付与せしめることにより、走行安定性を向上させることが出来るのであり、以て、十分な耐久性のもとに、乗心地と操縦安定性を高度に両立させることが可能となるのである。
さらに、本実施形態においては、中間拘束部材36が、コンプレッションゴム42の厚さ方向略中央部分に広がって配設されていることから、中間拘束部材36の両側に位置せしめられたコンプレッションゴム42に対して応力が略均等に分布せしめられて、応力集中が回避されることにより、耐久性も有利に確保され得る。
また、本実施形態においては、内筒金具12と外筒金具14の径方向対向面間を弾性連結する本体ゴム弾性体16に対して、車両前後方向で対向位置する一対のスリット46,46が形成されていることにより、車両前後方向のばね特性が一層低ばね化されて、乗心地の更なる向上が図られ得るのである。
以上、本発明の一実施形態としてのトーコレクトブッシュについて詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでない。
例えば、インナ軸部材とアウタ筒部材は、装着状態下に及ぼされる静的荷重等を考慮して、装着前の非荷重入力状態下で軸直角方向で偏心位置せしめられていても良い。
また、軸方向と軸直角方向の入力荷重に対して分力作用を発揮する傾斜面の形状や大きさ等は、要求特性に応じて適宜に変更,設定されるものであって、何等、限定されるものではない。
更にまた、中間拘束部材36における連通孔40は、必ずしも設ける必要はない。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
また、本発明に係る上述の実施形態に開示されており、本発明と好適に組み合わせて採用され得る態様を、以下に、簡潔表現として請求項に類似の記載形式を採用して挙げておく。また、併せて、各態様によって発揮される格別の効果を記載しておく。
第一の態様は、本発明の請求項1乃至5の何れかに記載のトーコレクトブッシュにおいて、前記インナ軸部材および前記アウタ筒部材の中心軸と前記インナ側傾斜部および前記アウタ側傾斜部が突出する径方向線とを含む一平面内において、かかる平面内に位置せしめられた圧縮方向の弾性主軸Iにおける、該中心軸に対する傾斜角度を、自動車への装着状態下でコーナリングに際して及ぼされる横方向荷重による外力の入力方向における、該中心軸に対する傾斜角度よりも大きく設定したことを、特徴とする。このような本態様においては、圧縮方向の弾性主軸Iと剪断方向の弾性主軸IIが、横方向荷重による外力の入力方向を挟んだ両側に設定されることとなり、且つ、圧縮方向の弾性主軸Iが横方向荷重による外力の入力方向よりも車両前後方向に大きく傾斜して設定されると共に、剪断方向の弾性主軸IIが横方向荷重による外力の入力方向よりも車両横方向に大きく傾斜して設定されることとなる。従って、横方向荷重による外力の入力に際して、インナ軸部材とアウタ筒部材が相対変位せしめられる方向(変位方向)が、かかる外力の入力方向に対して、ばね特性が柔らかい弾性主軸方向II側、即ち車両横方向に傾斜せしめられることとなるのであり、その結果、コーナリングに際しての車両横方向荷重の入力時にインナ軸部材とアウタ筒部材が、より一層中心軸方向に近い方向に変位せしめられて、操縦安定性の更なる向上が図られ得るのである。
第二の態様は、本発明の請求項1乃至5及び前記第一の態様の何れかに記載のトーコレクトブッシュにおいて、前記コンプレッションゴムで弾性連結された前記インナ側傾斜部と前記アウタ側傾斜部の各対向面を、前記インナ軸部材および前記アウタ筒部材の中心軸に対して略一定の傾斜角度で径方向外方に延びる傾斜平坦面とすると共に、前記中間拘束部材を、それらインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間の中央部分を、該インナ軸部材および該アウタ筒部材の中心軸に対して略一定の傾斜角度で径方向外方に延びる平坦な傾斜板状としたことを、特徴とする。このような本態様においては、インナ側傾斜部およびアウタ側傾斜部と、それらの間に配設された中間拘束板との対向面間距離が、相互に略同一で、且つ全体に亘って略一定に設定されることとなり、それによって、荷重入力時における応力がコンプレッションゴムの全体に略均一に分布することとなり、優れた耐久性が発揮され得ると共に、コンプレッションゴムの圧縮方向と剪断方向のばね特性の比の値、延いてはトーコレクトブッシュにおける主軸ばね比の値を、一層大きく設定することが可能となるのである。
第三の態様は、本発明の請求項1乃至5及び前記第一又は二の態様の何れかに記載のトーコレクトブッシュにおいて、前記インナ側傾斜部および前記アウタ側傾斜部が突出する径方向で前記インナ軸部材を挟んだ両側に位置せしめられた、該インナ軸部材と前記アウタ筒部材の径方向対向面間において、それぞれ軸方向に延びる一対のスリットを設けたことを、特徴とする。このような本態様においては、本体ゴム弾性体に対して車両前後方向で対向位置する一対のスリットを形成したことにより、車両前後方向のばね特性が一層低ばね化されて乗心地の更なる向上が図られ得る。しかも、車両前後方向のばね特性が柔らかくされることにより、弾性主軸に対するコンプレッションゴムの影響が大きくなって、圧縮方向の弾性主軸Iを車両横方向側に一層近付けて傾斜設定することも容易となる。
第四の態様は、本発明の請求項1乃至5及び前記第一乃至三の態様の何れかに記載のトーコレクトブッシュにおいて、前記中間拘束部材を挟んで位置せしめられた前記インナ側傾斜部と前記アウタ側傾斜部の対向面間に前記コンプレッションゴムを介在せしめて、それらインナ側傾斜部およびアウタ側傾斜部と該中間拘束部材の各対向面に該コンプレッションゴムを固着せしめた後に、該アウタ側傾斜部の少なくとも一部を縮径させて該コンプレッションゴムに予圧縮を加えたことを、特徴とする。このような本態様においては、コンプレッションゴムに予圧縮を加えたことにより、コンプレッションゴムの加硫成形時に生じた引張応力や荷重入力に伴って発生する引張応力を軽減乃至は解消せしめることが出来るのであり、それによって、耐久性の向上が図られ得る。
10 トーコレクトブッシュ,12 内筒金具,14 外筒金具,16 本体ゴム弾性体,18 固定プレート,26 傾斜板対向部,32 固定プレートの対向面,33 中間拘束部材の対向面,34 傾斜板対向部の対向面,36 中間拘束部材,42 コンプレッションゴム
Claims (6)
- インナ軸部材と、その外方に離隔配置されたアウタ筒部材を、それらの径方向対向面間に介装された本体ゴム弾性体で連結すると共に、該インナ軸部材の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出するインナ側傾斜部を設ける一方、該アウタ筒部材の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出し、該インナ側傾斜部に対して離隔して対向位置せしめられたアウタ側傾斜部を設けて、それらインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間にコンプレッションゴムを介在せしめたトーコレクトブッシュであって、
前記コンプレッションゴムで弾性連結された前記インナ側傾斜部と前記アウタ側傾斜部における対向面間において、それら各傾斜部の対向面からそれぞれ離隔して広がる湾曲プレート形状の中間拘束部材を設けて、該中間拘束部材を該コンプレッションゴムに加硫接着せしめたことを特徴とするトーコレクトブッシュ。 - 前記中間拘束部材における突出方向の先端部分は、前記コンプレッョンゴムから突出せしめられていると共に、前記インナ軸部材の軸直角方向外方に向かって屈曲されている請求項1に記載のトーコレクトブッシュ。
- 前記インナ側傾斜部と前記アウタ側傾斜部の対向面間において、前記中間拘束部材が中央部分に広がって配設されている請求項1又は2に記載のトーコレクトブッシュ。
- 前記インナ側傾斜部と前記アウタ側傾斜部の各対向面は、該インナ側傾斜部よりも該アウタ側傾斜部の方が大きくされていると共に、前記中間拘束部材の面積が、それらインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の間とされている請求項1乃至3の何れか一項に記載のトーコレクトブッシュ。
- 前記中間拘束部材は、その突出先端部分だけが前記コンプレッションゴムから突出せしめられており、該中間拘束部材の内周側基端部分は該コンプレッションゴム内に埋設されている請求項1乃至4の何れか一項に記載のトーコレクトブッシュ。
- 左右のトレーリングアームをトーションビームで連結したサスペンション部材を、自動車のボデーに対して揺動可能に防振連結せしめたサスペンション機構において、
前記サスペンション部材における車両前方側の左右両側部分に対して、請求項1乃至5の何れかに記載のトーコレクトブッシュをそれぞれ装着せしめて、それらのトーコレクトブッシュを介して、該サスペンション部材を前記ボデーに防振連結すると共に、かかる左右両側のトーコレクトブッシュの中心軸を車両左右方向に向けて、且つ前記インナ側およびアウタ側の傾斜部を車両中央側に位置せしめたことを特徴とするサスペンション機構。
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