JP4912617B2 - 芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体、その製造方法及び組成物 - Google Patents

芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体、その製造方法及び組成物 Download PDF

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Description

本発明は、芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体、詳しくは変性フェノキシ樹脂に関する。
フェノキシ樹脂は、比較的高分子量の重合体としてよく知られている。フェノキシ樹脂は公知の方法、たとえば特公昭28−4494号公報に記載されているように、4,4'−イソプロピリデンジフェノール(以下、BPAという)と、BPAのジグリシジル化合物を、水酸化ナトリウムのような塩基性触媒のもとに製造することができる。フェノキシ樹脂は造膜剤などの添加剤を入れずとも、単独でフィルム形成能を有している。そのため、フィルム材料として使用されている分野、例えば支持体としての基板用途や、可とう性を必要とされる分野、例えば塗料材料、接着材料などに広く使われている。しかし、市販されているフェノキシ樹脂のほとんどはDSC法におけるガラス転移点温度が90℃未満であり、高熱下での使用を要求される用途でそのまま樹脂を適用することは難しい。
特許文献1には、耐熱性が改善されたフェノキシ樹脂としてBPAのジグリシジル化合物と、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン(以下、BPSという)から製造されるBPA/BPS型フェノキシ樹脂が開示されている。
特開平2−45575号公報
しかし、BPA/BPS型フェノキシ樹脂は、分子量が同程度のフェノキシ樹脂と比べて、粘度が高く、樹脂単体としてハンドリングするには大変な困難を伴う。その上、一般的にワニス溶剤として使用されるトルエンやメチルエチルケトンなどの低沸点溶剤、あるいはその混合溶液にはほとんど溶解しない。このように、BPAフェノキシ樹脂に比べて高いガラス転移点を持ちながらも用途に制限をもたらしている。このように、従来のフェノキシ樹脂はガラス転移温度と溶解性と溶融粘度の関係がトレードオフであるため、用途が限られているのが現状であった。
本発明者らは、極性の高いスルホン骨格をフェノキシ樹脂に導入することにより、ガラス転移温度が上昇することに着目し、鋭意検討を重ねた。然る結果、スルホン骨格を導入し、かつフェノキシ樹脂の持つ2級アルコール性水酸基部位(−OCH2CH(OH)CH2O−)をエーテル結合(−O−)に部分的に置換し、2級アルコール性水酸基量を低減することにより、溶融粘度が低く制御され、かつ、溶剤溶解性も改良された新規な芳香族エーテルスルホン重合体を得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、一般式(1)で表される構造単位からなり、重量平均分子量が10,000〜200,000である芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体である。
Figure 0004912617
式中、
lは0より大きい数を示し、nは0〜3の範囲の数を示し、
mは、1以上で、下記一般式(6)で表わしたときのフェノール性水酸基当量が200〜2500g/eq.となる範囲の数であり、
Figure 0004912617
A、Bは独立に、置換基を有してもよいフェニレン、ナフチレン又は一般式(2)で表わされる2価の芳香族基を示し、
Figure 0004912617
Xは2価の基又は単結合を示す。
一般式(1)において、A及びBは次のような基であることが好ましい。
Aは炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子が置換されていてもよいベンゼン環、ナフタレン環又は一般式(2’)で表わされる2価の芳香族基を示し、
Figure 0004912617
1、i2は0〜4の整数を示し、
Xは炭素数1〜20のアルキレン基、アラルキレン基、シクロアルキレン基、フルオレニル基、カルボニル基、スルホニル基、ジスルフィド基、酸素原子、硫黄原子又は下記一般式(3)表わされる2価の基又は単結合を示し、
Figure 0004912617
3は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、
1、R2は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子を示すが、i1、i2のうち、少なくともどちらかが2以上の場合、複数のR1、R2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣接している場合は互いに結合して環構成炭素原子とともに炭素環式芳香族環を形成してもよい;
Bは炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子が置換されていてもよいベンゼン環、ナフタレン環又は一般式(4)で表わされる2価の芳香族基を示し、
Figure 0004912617
4、i5は0〜4の整数を示し、
Yは炭素数1〜20のアルキレン基、アラルキレン基、シクロアルキレン基、フルオレニル基、カルボニル基、スルホニル基、ジスルフィド基、酸素原子、硫黄原子又は下記一般式(5)表わされる2価の基又は単結合を示し、
Figure 0004912617
6は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、
4、R5は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子を示すが、i4、i5のうち、少なくともどちらかが2以上の場合、複数のR4、R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣接している場合は互いに結合して環構成炭素原子とともに炭素環式芳香族環を形成してもよい;
AとBは同一でも異なっていてもよい:基であること。
更に、一般式(1)において、A及びBが次のような基であることが好ましい。
Aが一般式(2’)で表され、i1、i2が0であり、Xが双方のベンゼン環に対してパラ位に結合するイソプロピリデン基であり、Bが一般式(4)で表され、i4、i5が0であり、Yが双方のベンゼン環に対してパラ位に結合するイソプロピリデン基である基であること。
また、本発明は上記の芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体を製造する方法であって、一般式(6)
Figure 0004912617
式中、m及びAは一般式(1)と同じである;
で表される芳香族エーテルスルホンジオール前駆体と、一般式(7)
Figure 0004912617
式中、nは0以上の数を示し、Bは一般式(1)と同じである;
で表されるジグリシジル化合物を、有機溶媒中、塩基性触媒下で反応させることを特徴とする芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体の製造方法である。
更に、本発明は、上記の芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体と、硬化剤又は硬化促進剤を含むことを特徴とする樹脂組成物である。
更に、本発明を説明する。
本発明の芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体(以下、本発明の重合体ともいう)フェノキシ樹脂と類似構造を有するが基本骨格を異にする。本発明の重合体は、フェノキシ樹脂と類似の製造方法で製造することができるが、使用するモノマーが異なるだけでなく、共重合構造を有する重合体を形成する2種類以上のモノマーを使用する。
本発明の製造方法で使用する一般式(6)で表される芳香族エーテルスルホンジオール前駆体は、ジハロゲノジフェニルスルホンと、二価フェノール化合物を用いて公知の方法で製造することができる。例えば、特開平3−153737号公報では、無水アルカリ金属化合物の存在下、有機極性溶媒中で、ジクロロジフェニルスルホンと二価フェノール化合物を加熱、攪拌してこれを製造する方法が示されている。
このような芳香族エーテルスルホンジオール前駆体を製造する際に用いられる二価フェノール化合物は、HO‐A‐OHで表されるものが使用できる。式中、Aは一般式(1)で説明したと同様な意味を有する。したがって、好ましいAは以下に例示される二価フェノール化合物から理解される。
二価フェノール化合物としては、レソルシノール、ハイドロキノン、2,5−ジターシャリブチルヒドロキノンなどの単環型二価フェノール類;1,3−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオールなどのナフタレンジオール類;4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3',5,5'−テトラメチルジフェニルメタン、4,4’−セカンダリーブチリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−ターシャリーブチルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−ターシャリーブチル−2−メチル)フェノール、4,4’−(1−α−メチルベンジリデン)ビスフェノール、4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1,3−ジメチルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジメチルベンゼン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3',5,5'−テトラメチルジフェニルスルホン、2,2−ビス(3,3',5,5'−テトラブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3',5,5'−テトラブロモ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−チオビス(2−クロロフェノール)、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、4,4’−チオビス(2−ターシャリーブチル−5−メチルフェノール)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、4,4’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3',5,5'−テトラメチルジフェニル等のビスフェノール類;が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
これらの二価フェノール化合物は、本発明の範囲を損なわない限り、必要に応じて2種類以上使用してもよい。
二価フェノール化合物とジクロロジフェニルスルホン等を反応重合させることにより末端がOHのオリゴマーである芳香族エーテルスルホンジオール前駆体が得られる。この重合度mは1以上であるが、好ましくはフェノール性水酸基当量が200〜2500g/eq.、より好ましくは300〜1000g/eq.である。2500g/eq.を越えると、本発明の重合体の溶融粘度及び溶解性において良好な効果が得られない。また、200g/eq.未満では、重合体中のスルホン含有量が少なく、結果として、ガラス転移点において本発明の効果が大きく得られない。また、2級アルコール性水酸基部位の低減による溶融粘度の改善も大きくならない。
もう一方の反応原料として使用されるジグリシジル化合物は、上記一般式(7)で表される。一般式(7)において、Bは一般式(1)と同様な意味を有するので、以下に例示するジグリシジル化合物から、好ましいBが理解される。
ジグリシジル化合物の例としては、レソルシノール、ハイドロキノン、2,5−ジターシャリブチルヒドロキノンなどの単環型二価フェノール類、1,3−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオールなどのナフタレンジオール類、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3',5,5'−テトラメチルジフェニルメタン、4,4’−セカンダリーブチリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−ターシャリーブチルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−ターシャリーブチル−2−メチル)フェノール、4,4’−(1−α−メチルベンジリデン)ビスフェノール、4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1,3−ジメチルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジメチルベンゼン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3',5,5'−テトラメチルジフェニルスルホン、2,2−ビス(3,3',5,5'−テトラブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3',5,5'−テトラブロモ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−チオビス(2−クロロフェノール)、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、4,4’−チオビス(2−ターシャリーブチル−5−メチルフェノール)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、4,4’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3',5,5'−テトラメチルジフェニル等のビスフェノール類から誘導されるジグリシジル化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、必要に応じて2種以上を使用することもできる。
ジグリシジル化合物は上記のように2価のフェノール類をグリシジル化して得られるが、エピクロロヒドリンと2価のフェノール類を反応させる方法が一般的である。この反応ではnが0のものだけでなく1以上のものも得られるが、平均のnが0〜3の範囲にあることが好ましい。
本発明の製造方法で用いる芳香族エーテルスルホンジオール前駆体及びジグリシジル化合物は、上記の構造を満たしているものであれば、上記の製法で得られるものに限らず、公知のものを採用できる。有利には一般式(6)及び(7)において、A及びBがBPAから生じる残基であるものが挙げられる。
本発明の重合体は、芳香族エーテルスルホンジオール前駆体と、ジグリシジル化合物を、有機溶媒中、塩基性触媒下で反応させることにより製造することができる。以下、製造方法について詳述する。
芳香族エーテルスルホンジオール前駆体とジグリシジル化合物の使用割合は、芳香族エーテルスルホンジオール前駆体のフェノール性水酸基1当量当たり、ジグリシジル化合物のグリシジル基0.9〜1.1当量、好ましくは0.95〜1.05当量が好ましい。この使用割合の範囲内であれば実質的に直鎖状となり、かつフィルム形成能を有し、ガラス転移温度が高く溶融粘度が低く制御され、かつ、溶剤溶解性も改良された重合体を得ることができる。
本発明の重合体の製造の際に用いる有機溶媒については、反応に影響を与える化合物でなければとくに制限されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどの脂肪族ケトン類、ベンゼン、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの脂肪族アミド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類が挙げられる。これらの有機溶媒は、2種以上を選択して混合溶媒として使用してもよい。好ましい有機溶媒は、反応温度と溶解性から、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールジメチルエーテルである。
有機溶媒の使用量は、特に制限されないが、芳香族エーテルスルホンジオール前駆体とジグリシジル化合物の合計100重量部に対して、通常5〜1000重量部、好ましくは25〜400重量部である。5重量部より少ないと、反応が進行した際に均一に攪拌できなくなる恐れがあり、また1000重量部より多いと反応速度が遅くなり経済的に不利になる。
反応に用いる塩基性触媒としては、第三アミン化合物、第四アンモニウム化合物、イミダゾール化合物、第三ホスフィン化合物、第四ホスホニウム化合物、水酸化アルカリ金属化合物及び水酸化アルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が適する。
第三アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、トリベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エンなどを挙げることができる。
第四アンモニウム化合物としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−プロピルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、水酸化トリエチルベンジルアンモニウム等の水酸化第四アンモニウム化合物、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラ−n−プロピルアンモニウム、塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム、塩化トリエチルベンジルアンモニウム等の塩化第四アンモニウム化合物、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラ−n−プロピルアンモニウム、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、臭化トリメチルベンジルアンモニウム、臭化トリエチルベンジルアンモニウム等の臭化第四アンモニウム化合物、沃化テトラメチルアンモニウム、沃化テトラエチルアンモニウム、沃化テトラ−n−プロピルアンモニウム、沃化テトラ−n−ブチルアンモニウム、沃化トリメチルベンジルアンモニウム、沃化トリエチルベンジルアンモニウム等の沃化第四アンモニウム化合物などを挙げることができる。
イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2',4',6'−トリメチルベンゾイル)−2−エチルイミダゾール、1−(2',6'−ジクロロベンゾイル)−2−メチルイミダゾール、1−(2',4',6'−トリメチルベンゾイル)−2−メチルイミダゾール、1−(2',4',6'−トリメチルベンゾイル)−2−フェニルイミダゾールなどを挙げることができる。
第三ホスフィン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリノニルフェニルホスフィンなどを挙げることができる。第四ホスホニウム化合物としては、例えば、水酸化テトラメチルホスホニウムなどの水酸化第四ホスホニウム化合物;塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラ−n−ブチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム、臭化テトラ−n−ブチルホスホニウム、臭化メチルトリフェニルホスホニウム、臭化−n−ブチルトリフェニルホスホニウム、臭化メチルトリフェニルホスホニウム、臭化エチルトリフェニルホスホニウムなどのハロゲン化第四ホスホニウム化合物;エチルトリフェニルホスホニウムアセテートなどの酢酸第四ホスホニウム化合物などを挙げることができる。
水酸化アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを挙げることができる。水酸化アルカリ土類金属としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどを挙げることができる。
これら塩基性触媒はそれぞれ単独で、あるいは、溶解する溶媒にあらかじめ溶解させておき、しかる後反応系内に投入してもよい。塩基性触媒の使用割合は、芳香族エーテルスルホンジオール前駆体のフェノール性水酸基に対して、通常0.001〜10モル%、好ましくは0.05〜5モル%である。
本発明の重合体の合成時における温度条件については、特に制限されないが、通常20℃〜250℃、好ましくは50℃〜200℃である。20℃以下では反応が非常に遅く経済的ではない。また、250℃以上になると反応中に原料や生成物が副反応を起こし、所望の樹脂が得られなくなる恐れがある。
本発明の重合体の重量平均分子量は、GPC法における重量平均分子量がポリスチレン換算で10,000から200,000が好ましく、更には20,000から100,000であることが好ましい。重量平均分子量が10,000未満であれば、単独でフィルム能を形成しがたく、またフィルムとなっても非常に脆くなり好ましくない。また、200,000以上となると、溶剤に対する溶解性や溶融粘度が高くなり、ハンドリングが難しくなる。
本発明の重合体は、単独でフィルム形成能を有するため、フィルムとして使用することができる。フィルムは、溶融押出法、溶液キャスト法等公知の方法で製造することができる。
本発明の重合体には、次のような配合成分を加えて、塗料、接着剤、注型材、積層材、封止材、複合材等の用途に適する樹脂組成物とすることができる。本発明の重合体の2級アルコール性水酸基部位と反応性を持つ(A)硬化剤、(B)硬化促進剤、(C)各種添加剤を加えることができる。樹脂組成物とする場合は、硬化剤と、必要により硬化促進剤、各種添加剤又は両者を加えることが望ましい。
硬化剤としては、レゾール型フェノール樹脂類、アミノ樹脂類、尿素樹脂類、ジイソシアネート類、遊離イソシアネート基を有するポリウレタン、ウレタンプレポリマー、ウレタンエラストマー、無水ピロメリット酸等のテトラカルボン酸二無水物類及びそれらの混合物などが挙げられる。
硬化促進剤としては、レゾール型フェノール樹脂類、アミノ樹脂類、尿素樹脂類を硬化剤として使用する際には、無機酸や、トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸などの有機酸及びそれらの混合物を使用することができる。また、ジイソシアネート類や遊離イソシアネート基を有するウレタン樹脂、テトラカルボン酸二無水物を硬化剤として使用する際には、第四級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、イミダゾール類、ホスフィン類、第三級アミン類、無機塩基類、有機スズ化合物及びそれらの混合物などが挙げられる。
各種添加剤としては、体質顔料、着色顔料、その他各種充填剤、染料、離型剤、流れ調整剤、難燃剤、ゴム改質剤、界面活性剤、反応性希釈剤、各種オリゴマー類、各種ポリマー類などを複数選んで用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、当業者に知られている特定の用途によって、上記配合成分(A)〜(C)の1種以上を所望量配合し、当業者によく知られている条件から得ることができる。
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の重合体と共に、他の熱硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂システムを配合してブレンド型の樹脂組成物とすることもできる。
かかる熱硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂システムとしては、エポキシ樹脂/脂肪族アミン系、エポキシ樹脂/芳香族アミン系、エポキシ樹脂/脂環式アミン系、エポキシ樹脂/ポリアミドアミン系、エポキシ樹脂/酸無水物系、エポキシ樹脂/ノボラック型フェノール樹脂系、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂等が挙げられる。
また、本発明の重合体は、それ自身が有するフィルム性を活かすために、造膜剤として用いることもでき、塗料、接着剤、注型材、積層材、封止材、複合材用の樹脂組成物とすることができる。
フィルム形成能を有する樹脂組成物は、本発明の重合体に、公知の樹脂(主剤)と、必要であれば主剤と反応性を有する公知の硬化剤、硬化剤に応じた硬化促進剤や、前述した各種添加剤(C)を、当業者に知られている特定の用途によって所望の量を配合し、当業者によく知られている条件から得ることができる。
本発明の芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体は、従来のフェノキシ樹脂に比べてガラス転移温度が高く、溶融粘度を低く制御することができ、溶剤に対する溶解性を有し、フィルム形成能を有する材料として利用することが可能である。
次に本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これに限定されるものではない。まず、芳香族エーテルスルホンジオール前駆体の合成例を示す。部は重量部を示す。
合成例1
BPA(新日鐵化学社製)320部、無水炭酸カリウム194部、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)650部を、温度計、冷却管、窒素導入管、攪拌翼の付いた2Lの4つ口セパラブルフラスコに投入し、攪拌しながらマントルヒーターを用いて内温を165℃まで上昇させた。次いで、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(DCS)201部を溶解させたNMP400部を投入し、内温165℃を保持しつつ15時間攪拌し続けた。得られた濃茶色の溶液を80℃まで冷却し、氷酢酸170部を注意深く滴下し、発泡が収まったところでNMPを165℃、減圧下にて留去した。得られた残渣にメチルイソブチルケトン722部投入し、85℃にて攪拌しながら純水450部を投入し、そのまま5分攪拌を続けた。水層を分別し、更に同じ操作を3回行った。有機層を減圧蒸留し、溶媒を完全に留去してから190℃、5Torrにて1時間保持した。このようにして443部の芳香族エーテルスルホンジオール前駆体(PESD1)を得た。得られた樹脂のフェノール性水酸基当量は、337g/eq.であった。
合成例2
BPA285部、無水炭酸カリウム173部、DCS289部、氷酢酸150部とし、内温165℃での攪拌時間を24時間に延長した以外は合成例1と同じ操作を行い、フェノール性水酸基当量が1001g/eq.の芳香族エーテルスルホンジオール前駆体(PESD2)474部を得た。
合成例3
BPA251部、無水炭酸カリウム152部、DCS295部、氷酢酸65部とし、内温165℃での攪拌時間を29時間に延長した以外は合成例1と同じ操作を行った。このとき、メチルイソブチルケトンに溶解しない成分があり、水層も非常に分別し難かった。このようにして、フェノール性水酸基当量が2258g/eq.の芳香族エーテルスルホンジオール前駆体(PESD3)を369部得た。
合成例1で得た(PESD1)85部、BPA型エポキシ樹脂(YD−128:東都化成社製、エポキシ当量187.8g/eq.)49部、シクロヘキサノン34部を、温度計、冷却管、窒素導入管、攪拌翼の付いた500mlの4つ口セパラブルフラスコに投入し、マントルヒーターを用いて内温を120℃まで昇温した。樹脂が完全に溶解したところでトリ−n−ブチルアミン0.335部を投入し、155℃に昇温、15時間攪拌して芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体を合成した。この反応物をGPC測定すると、重量平均分子量(ポリスチレン換算)40,000の重合体(1)であった。
合成例2で得た(PESD2)100部、YD−128を19部、ジエチレングリコールジメチルエーテルを30部、トリ−n−ブチルアミン0.118部を用いた以外は実施例1と同じ操作を用いて芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体を合成した。得られた反応物は、重量平均分子量40,000の重合体(2)であった。
合成例2で得た(PESD2)100部、YD−128を19部、ジエチレングリコールジメチルエーテルを30部、トリ−n−ブチルアミン0.600部を用いた以外は実施例1と同じ操作を用いて芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体を合成した。得られた反応物は、重量平均分子量80,000重合体(3)であった。
合成例3で得た(PESD3)90部、YD−128を8部、ジエチレングリコールジメチルエーテルを42部、トリ−n−ブチルアミンを0.057部用い、反応時間を4時間とした以外は実施例1と同じ操作を用いて芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体を合成した。得られた反応物は、重量平均分子量80,000の重合体(4)であった。
実施例1〜4で得られた重合体(1)〜(4)を、各々の実施例で使用した溶媒で希釈して固形分濃度20重量%の溶液とし、PETフィルム上にバーコーターを用いて塗布、170℃の条件下で30分処理し、溶媒を留去させた。得られた処理物をはがし、フィルムを得た。このフィルムを用いて、IRスペクトルを測定した。このIRスペクトルを図1〜図4に示す。
実施例1〜4の重合体(1)〜(4)から得られたフィルム、並びに比較例としてフェノトートYP−50(東都化成社製、フェノキシ樹脂、重量平均分子量87,000)、フェノトートYPS−007(東都化成社製、BPS/BPA型フェノキシ樹脂、重量平均分子量45,000)のフィルムを用いて、20℃〜200℃の温度領域、10℃/minで昇温させたときのDSCを測定し、ガラス転移点を測定した。表1に実施例1〜4の重合体から得られたフィルム及び各フェノキシ樹脂のガラス転移点を示す。スルホン骨格を導入することで、ガラス転移点が高くなっていることが判る。
重合体(1)〜(4)、並びにYP−50、YPS−007を、1g測り取り、トルエン:メチルエチルケトン=1:1(体積%)の溶液を4g投入し、樹脂の溶解性を目視で確かめた。溶解度を表1に示す。BPS/BPA型フェノキシ樹脂に比べ、溶解性が改善されているのが分かるが、主骨格におけるエーテルスルホン骨格が多くなると溶解性が落ちることが分かる。溶解度の評価は、○:完全に溶解、△:部分的に溶解、×:ほとんど溶解しないとした。
Figure 0004912617
実施例1〜4で得られた重合体(1)〜(4)を、200℃にて2時間真空乾燥させ、樹脂単体として取り出した。これらの樹脂並びにYP−50、YPS−007を1.5g秤量し、油圧ジャッキを用いて直径1.1cm、長さ1.6cmのタブレットを成型した。得られたタブレットを、フローテスターを用いて、ずり速度が600〜800(/sec)となる条件で溶融粘度を測定した。測定された溶融粘度を表2に示す。重合平均分子量が同程度であれば、フェノキシ樹脂の2級アルコール部位をエーテルで部分置換することで、溶融粘度が減少していることが判るが、主骨格のエーテルスルホン構造が増えるにつれて溶融粘度が増大していることが判る。
Figure 0004912617
実施例1〜4で得た重合体(1)〜(4)のいずれかを100部、YD−128を25部、1−シアノグアニジン(関東化学(株)製)1.6部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.127部を、メチルセロソルブ:メチルエチルケトン=1:1(体積比)の溶液に溶解し、固形分濃度30重量%とした。この溶液をPETフィルム上にバーコーターを用いて塗布、170℃の条件下で120分処理し、焼き付け硬化を行った。得られた4種類の硬化物は、強靱なフィルム性を示した。このフィルムを0.1g測り取り、テトラヒドロフラン10gで浸漬させ、24時間静置した。4種類のフィルムのいずれもが溶解した様子は見られなかった。
実施例1で得られた重合体のフィルムのIRスペクトル。 実施例2で得られた重合体のフィルムのIRスペクトル。 実施例3で得られた重合体のフィルムのIRスペクトル。 実施例4で得られた重合体のフィルムのIRスペクトル。

Claims (5)

  1. 一般式(1)で表される構造単位からなり、重量平均分子量が10,000〜200,000である芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体。
    Figure 0004912617
    式中、
    lは0より大きい数を示し、nは0〜3の範囲の数を示し、
    mは、1以上で、下記一般式(6)で表わしたときのフェノール性水酸基当量が200〜2500g/eq.となる範囲の数であり、
    Figure 0004912617

    A、Bは独立に、置換基を有してもよいフェニレン、ナフチレン又は一般式(2)で表わされる2価の芳香族基を示し、
    Figure 0004912617
    Figure 0004912617
    Xは炭素数1〜20のアルキレン基、アラルキレン基、シクロアルキレン基、フルオレニル基、カルボニル基、スルホニル基、ジスルフィド基、酸素原子、硫黄原子又は上記一般式(3)表わされる2価の基又は単結合を示し、R 3 は炭素数1〜6のアルキレン基を示す。
  2. 一般式(1)において、Aは炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子が置換されていてもよいベンゼン環、ナフタレン環又は一般式(2')で表わされる2価の芳香族基を示し、
    Figure 0004912617
    1、i2は0〜4の整数を示し、
    Xは一般式(2)と同じである。
    1、R2は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子を示すが、i1、i2のうち、少なくともどちらかが2以上の場合、複数のR1、R2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣接している場合は互いに結合して環構成炭素原子とともに炭素環式芳香族環を形成してもよい;
    Bは炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子が置換されていてもよいベンゼン環、ナフタレン環又は一般式(4)で表わされる2価の芳香族基を示し、
    Figure 0004912617
    4、i5は0〜4の整数を示し、
    Yは炭素数1〜20のアルキレン基、アラルキレン基、シクロアルキレン基、フルオレニル基、カルボニル基、スルホニル基、ジスルフィド基、酸素原子、硫黄原子又は下記一般式(5)表わされる2価の基又は単結合を示し、
    Figure 0004912617
    6は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、
    4、R5は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子を示すが、i4、i5のうち、少なくともどちらかが2以上の場合、複数のR4、R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、隣接している場合は互いに結合して環構成炭素原子とともに炭素環式芳香族環を形成してもよい;
    AとBは同一でも異なっていてもよい;
    である請求項1記載の芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体。
  3. 一般式(1)において、Aが一般式(2')で表され、i1、i2が0であり、Xが双方のベンゼン環に対してパラ位に結合するイソプロピリデン基であり、Bが一般式(4)で表され、i4、i5が0であり、Yが双方のベンゼン環に対してパラ位に結合するイソプロピリデン基である請求項2記載の芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体。
  4. 請求項1又は2記載の芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体を製造する方法であって、一般式(6)
    Figure 0004912617
    式中、m及びAは一般式(1)と同じである;
    で表される芳香族エーテルスルホンジオール前駆体と、一般式(7)
    Figure 0004912617
    式中、n及びBは一般式(1)と同じである;
    で表されるジグリシジル化合物を、有機溶媒中、塩基性触媒下で反応させることを特徴とする芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体の製造方法。
  5. 請求項1又は2記載の芳香族エーテルスルホン骨格を有する重合体と、硬化剤又は硬化促進剤を含むことを特徴とする樹脂組成物。
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